説明

電力系統測定装置

【目的】計器用変流器の再接続を行うことなく、計器用変流器を用いた測定値の符号を容易に反転させる。
【構成】CTユニット1は電力系統に流れる電流(の比例成分)を検出し、A/D変換器4はその出力信号をディジタルデータに変換する。CPU5は極性選択スイッチ8の状態を読み取り、選択状態である時、A/D変換されたディジタルデータまたは測定結果の符号を演算により反転する。
【効果】計器用変流器の再接続を行うことなく、単にスイッチ操作を行うだけで測定値符号の誤りを訂正することができ、停電等の所定の手続きが不要となる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、電力系統に生じる系統現象等を測定する電力系統測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
変電所等に設置されている監視盤には種々の測定器が備えられているが、例えば電力測定盤は、一般に、系統の電圧および電流を計器用変成器および計器用変流器でそれぞれ検出して電力の演算を行っている。
【0003】
ところが、このような電力測定盤では、その測定盤を設置し、運用を開始した後に、測定結果の符号が異常であることに気付く場合があった。これは、系統に流れる電流を検出する計器用変流器の二次側に現れる電流信号の極性が、結果として設計上(回路図上)の極性とは逆になってしまったことに起因する。
【0004】
このような測定値の符号誤りが判明すれば、これを訂正するには、計器用変流器の結線接続を変更しなければならない。図3に従来の電力測定盤の入力部の構成を示す。図3のように、測定装置の入力部にCTユニットを設けていて、系統に接続されている測定対象CTの二次側をCTユニットの一次側に結線している。前述のように極性の誤りが判明すれば、測定対象CTの二次側とCTユニットの一次側の結線部分において、k−l間を交差させて接続しなおしていた。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
ところが、このような再接続を行う際、測定対象CTの二次側が一時開放されるため、仮に通電状態のまま再接続を行えば、測定対象CTの二次端子に高電圧が発生し、また鉄芯が過熱する。そのため、このような再接続を行う際には、停電等の所定手続きを踏んで作業を行わなければならず、直ちに変更することは不可能であった。
【0006】
この考案の目的は、通電状態のまま、しかもCTユニット入力部の結線を変更することなく、正しい符号で測定値を出力することのできる電力系統測定装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この考案の電力系統測定装置は、電力系統に流れる電流を検出する計器用変流器と、前記計器用変流器の出力信号をディジタルデータに変換するA/D変換器と、 極性選択スイッチと、 前記極性選択スイッチの状態を読み取り、その極性選択スイッチが選択状態である時、前記ディジタルデータに一定の演算処理を施した結果の符号または前記ディジタルデータの符号を反転する符号反転手段、 とを備えてなる。
【0008】
【作用】
この考案の電力系統測定装置では、計器用変流器は電力系統に流れる電流を検出し、A/D変換器は計器用変流器の出力信号をディジタルデータに変換する。
【0009】
一方、符号反転手段は、極性選択スイッチの状態を読み取り、その極性選択スイッチが選択状態である時、A/D変換されたディジタルデータに一定の演算処理を施した結果の符号またはA/D変換されたディジタルデータの符号を反転する。したがって、極性選択スイッチを選択状態にすれば、測定結果の符号が自動的に反転され、極性選択スイッチを非選択状態にすれば、そのままの符号で測定結果が求められる。したがって、計器用変流器の極性を反転するための再接続を行う必要がなく、通電中であっても容易に符号反転を行うことができ、測定結果の符号異常が判明した時点で、スイッチ操作だけで直ちに訂正できるようになる。
【0010】
【実施例】
この考案の実施例である電力系統測定装置の構成をブロック図として図1に示す。図1において1はCTユニットであり、その一次側に測定対象CTの二次側を接続する。CTユニット1の二次側にはサンプルホールド回路2を接続している。A/D変換器4はマルチプレクサ3を介して、サンプルホールド回路2の出力電圧をディジタルデータに変換する。マルチプレクサ3の一つの入力にはサンプルホールド回路2を接続し、他の入力には、たとえば系統の線間電圧を検出する計器用変成器の二次出力電圧をサンプルホールドする回路等を接続する。CPU5はROM6に予め書き込んだプログラムを実行する。RAM7はたとえば電力計算を行う際のワーキングエリアとして用いる。スイッチ8は極性選択を行うスイッチであり、CPU5はI/Oポート9を介してスイッチ8の状態を読み取る。表示部10は測定結果等を表示し、CPU5はインタフェース11を介して表示データを表示部10へ出力する。プリンタ12は測定結果の経時変化等を記録し、CPU5はインタフェース13を介して印字データをプリンタ12へ出力する。
【0011】
次に、図1に示したCPUの実行するプログラムの主要部の処理手順をフローチャートとして図2に示す。図2において、まず測定対象信号をA/D変換し、ディジタルデータを一時記憶する。続いて、極性選択スイッチ8の状態を読み取る(n2)。極性選択スイッチが選択状態であれば、A/D変換により求めたディジタルデータ(A/D値)に対し−1を掛ける(n3→n4)。その後、この符号反転されたディジタルデータと、他の測定値を用いて所定の演算を行い、たとえば電力等の測定結果を求める(n5)。もし、極性選択スイッチが非選択状態であれば、A/D変換値はそのまま演算に用いる(n3→n5)。その後、測定結果を表示部およびプリンタへ出力する(n6)。
【0012】
前記の符号反転の方法としては、複数ビットの2進データのうちの所定ビットを符号ビットとして用いるコード体系であれば、符号ビットの0/1を反転する。また、負の値を2の補数で表すコード体系であれば、2の補数演算を行うことによって符号反転を行えばよい。さらに、計器用変流器または計器用変成器の二次側の信号を用いて求めた結果から、一次側の値に換算するためにテーブル演算を行う際、ビットの重みに対して正値と負値をもったテーブルを予め設けておき、通常は正値のテーブルを用い、極性選択スイッチが選択状態であるとき、負値のテーブルを採用すればよい。
【0013】
なお、以上に述べた実施例では、A/D変換して求めたディジタルデータの符号を反転するようにしたが、所定の演算により仮の測定結果を求め、その測定結果の符号を反転させるようにしてもよい。
【0014】
【考案の効果】
この考案によれば、極性選択スイッチの操作によって、計器用変流器の極性を実質的に反転することができる。そのため、計器用変流器の再接続を必要とせず、停電等の所定の手続きに従って結線作業を行う必要もなくなり、測定値符号の異常が判明した時点で、直ちにこれを訂正することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この考案の実施例である電力系統測定装置のブロック図である。
【図2】図1に示すCPUの処理手順を表すフローチャートである。
【図3】従来の電力系統測定装置における計器用変流器の結線接続の変更例を示す図である。
【符号の説明】
1−CTユニット
8−極性選択スイッチ

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】電力系統に流れる電流を検出する計器用変流器と、前記計器用変流器の出力信号をディジタルデータに変換するA/D変換器と、極性選択スイッチと、前記極性選択スイッチの状態を読み取り、その極性選択スイッチが選択状態である時、前記ディジタルデータに一定の演算処理を施した結果の符号または前記ディジタルデータの符号を反転する符号反転手段、とを備えてなる電力系統測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】実開平5−34580
【公開日】平成5年(1993)5月7日
【考案の名称】電力系統測定装置
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−83900
【出願日】平成3年(1991)10月16日
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)