説明

電力系統設備データベース管理システム

【課題】 電力系統設備データベースを効率的に、かつ、処理装置にかかる負荷を分散する電力系統設備データベース管理システムを提供する。
【解決手段】 監視制御装置は、個別オブジェクトデータ24Cを生成する個別DB生成タスク25と、制御所DB24Aを管理サーバ12から受信するダウンロードタスク27と、個別オブジェクトデータ24Cと制御所DB24Aとを管理サーバ12に送信するアップロードタスク26と、を有し、管理サーバ12は、共有オブジェクトデータ13Eを生成する共有マスタ生成タスク121と、共有オブジェクトデータ13Eと個別オブジェクトデータ13Fを合成する共有マスタ合成タスク122と、当該設備を監視対象とする監視制御装置に共有オブジェクトデータ13Eと個別オブジェクトデータ13Fとを配信する配信タスク123を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力系統設備の監視制御に必要な電力系統設備データベース管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力会社の電力系統は、例えば、送電線、変圧器などの電力系統設備(設備)を有しており、このような設備は、所管の制御所に設置された監視制御装置によって常時、遠隔で監視制御されている。このため、設備に関する設備情報などは、データベースとして管理されている。この設備情報は、複数の制御所の監視制御装置によって使用(作成、参照、更新、削除)される場合もあるので、データの重複を防ぎ、また、データに不整合が生じないように一元化管理されている。
【0003】
図7、図8は、従来の電力系統設備データベースの管理方法を示している。図7に示すように、制御所ごとに設置された端末装置(DBT)としての監視制御装置200は、自所の所管する(監視対象の)設備の監視制御に必要な、制御所ごとのデータベース200Aを有している。データベース200Aは、複数の制御所で共通で使用する制御所情報や超高圧系統情報やシステム情報などを制御所共通データベース200Bとして格納し、監視対象設備に関する設備情報を制御所個別データベース200Cとして格納し、さらに制御所ごとの画面200Dを格納している。そして、制御所共通データベース200Bと制御所個別データベース200Cとにもとづいて、制御所ごとの設備を表すアイコンとその運転状況を画面200Dに表示可能としている。このようにして、監視制御装置200は、自所の監視対象の設備を監視制御可能となっている。
【0004】
データベースサーバとしての管理サーバ装置100は、中央制御所などに設置され、データベースを一元管理するためのサーバ装置で、データマスタ100Aとして、制御所共通データベース100Bと、制御所ごとの制御所個別データベース100Cと、制御所ごとの画面100Dとを格納している。そして、制御所共通データベース100Bと制御所個別データベース100Cとにもとづいて、制御所ごとの設備を表すアイコンとその運転状況を画面100Dに表示可能としている。このようにして、管理サーバ装置100は、すべての制御所の監視対象の設備(すべての設備)を監視制御可能となっている。
【0005】
そして、このような構成の電力系統設備データベースについて、設備の追加や変更があった場合は、図8に示すように、監視制御装置200において制御所個別データベース200Cが作成、更新され、当該更新データが管理サーバ装置100にアップロードされる。そして、管理サーバ装置100によって、追加や変更があった設備情報を含む制御所個別データベース100Cと、制御所共通データベース100Bとが、一括して生成されて制御所個別データベースのオブジェクトデータ(個別オブジェクトデータ)100Eとなり、当該オブジェクトデータが各制御の試験卓20Tに配信されるようになっている。
【0006】
このように従来の電力系統設備データベースは、管理サーバ装置100において、データマスタ100Aにもとづいて、制御所共通データベース100Bと制御所個別データベース100Cとのオブジェクトデータが一括生成されるようになっている。
【0007】
ところで、データベース管理システムについては、従来から、例えば、サーバを階層的に接続し、共通情報とそれ以外の個別情報とに分類して管理する分散データ管理システムに関する技術(例えば、特許文献1参照。)が知られている。また、各業務アプリケーションの一つが個別に持つDBを更新したことに同期して、共通マスタDBを更新する共通マスタDB更新手段と、基幹システムから登録されるデータで共通マスタDBを更新することにより、業務アプリケーションごとに前記データを振分け、それぞれが個別に持つDBの更新を行う全社統合システムにおける共通処理装置などに関する技術も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−05618955号公報
【特許文献2】特開2002−053889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、図7および図8に示す従来の電力系統設備データベースの管理方法では、管理サーバ装置100において、すべてのデータベースのオブジェクトデータが一括生成されるため、優先順による処理待ちや割込処理、排他制御による処理待ちが生ずるという問題がある。また、通信回線の制約などにより処理時間が長時間化したり、サーバ装置に重負荷がかかることにより通信回線に障害が発生したりするおそれがある。
【0010】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、電力系統設備データベースを効率的に運用することができ、かつ、サーバ装置にかかる負荷を分散することが可能な電力系統設備データベース管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、電力系統設備を監視制御する監視制御装置と、複数の前記監視制御装置と通信可能で前記各監視制御装置を管理する管理サーバ装置と、を備え、前記各監視制御装置は、監視対象とする前記電力系統設備の設備情報を記憶する個別設備情報データベースと、前記個別設備情報データベースにもとづいて個別オブジェクトデータを生成する個別設備情報データベース生成手段と、前記個別設備情報データベースを、前記管理サーバ装置から、データベースメンテナンス端末に受信するダウンロード手段と、前記個別設備情報データベース生成手段で生成した前記個別オブジェクトデータと前記個別設備情報データベースとを、前記管理サーバ装置に送信するアップロード手段と、を有し、前記管理サーバ装置は、前記個別設備情報データベースのマスタデータである個別設備情報マスタデータと、複数の監視制御装置が監視対象とする前記設備の設備情報を記憶する共有設備情報マスタデータと、前記アップロード手段によって前記個別オブジェクトデータと前記個別設備情報データベースとがアップロードされると、前記共有設備情報マスタデータにもとづいて共有オブジェクトデータを生成する共有設備情報マスタデータ生成手段と、前記共有設備情報マスタデータ生成手段が生成した前記共有オブジェクトデータと、前記個別オブジェクトデータとを合成するマスタデータ合成手段と、前記マスタデータ合成手段で合成した前記個別オブジェクトデータの前記個別設備情報マスタデータの前記設備情報に該当する前記設備を監視対象とする前記監視制御装置に対して、前記共有オブジェクトデータと前記個別オブジェクトデータとを配信する配信手段と、を有する、ことを特徴とする電力系統設備データベース管理システムである。
【0012】
この発明によれば、個別設備情報データベース生成手段によって個別オブジェクトデータが生成され、ダウンロード手段によって、個別設備情報データベースがサーバ装置からデータベースメンテナンス端末に受信され、アップロード手段によって個別オブジェクトデータと個別設備情報データベースがサーバ装置に送信される。また、個別オブジェクトデータと個別設備情報データベースがアップロードされると、共有設備情報マスタデータ生成手段によって共有オブジェクトデータが生成され、マスタデータ合成手段によって共有オブジェクトデータと個別オブジェクトデータとが合成され、配信手段によって個別設備情報マスタデータの設備情報に該当する設備を監視対象とする監視制御装置に対して、共有オブジェクトデータと個別オブジェクトデータとが配信される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、個別設備情報データベースは、各監視制御装置によってオブジェクトデータが生成されるので、サーバ装置の負荷を大幅に軽減することができ、重負荷によるサーバ装置および通信回線の障害を回避することができる。また、優先順による処理待ちや割込処理、排他制御による処理待ちが生ずるという問題も回避できるので、電力系統設備データベースを効率的に運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態に係る電力系統設備データベース管理システムを示す概略構成図である。
【図2】図1の電力系統設備データベース管理システムの中の共有部データベースと制御所個別データベースを示す概念図である。
【図3】図1の電力系統設備データベース管理システムの設備データベースのデータ構成図である。
【図4】図1の電力系統設備データベース管理システムの監視対象設備データベースのデータ構成図である。
【図5】図1の電力系統設備データベース管理システムのデータの流れを示す概念図である。
【図6】図1の電力系統設備データベース管理システムのデータベース生成タイミングを示す概略図である。
【図7】従来の電力系統設備データベースの管理方法によるデータの流れを示す概念図である。
【図8】従来の電力系統設備データベースの管理方法によるデータベース生成タイミングを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を図示の実施の形態にもとづいて説明する。
【0016】
図1〜図6は、この発明の実施の形態を示している。図1に示すように、電力系統設備データベース管理システム1は、管理サーバ装置10と、制御所ごとに設置されたA監視制御装置20〜B監視制御装置30と、遠隔監視制御装置40〜50とを備えている。この管理サーバ装置10と、各監視制御装置20〜30と、遠隔監視制御装置40〜50とは、有線または無線から構成される通信網NWを介して通信可能に接続されている。これにより、管理サーバ装置10と、各監視制御装置20〜30と、遠隔監視制御装置40〜50とはデータ通信が可能な状態にある。さらに、各監視制御装置20〜30には、データベースメンテナンス端末(DBM)20M〜30Mが、有線または無線から構成される通信網NWを介して通信可能に接続されている。
【0017】
この実施の形態では、制御所は制御所1〜制御所3(A制御所〜B制御所)とし、A監視制御装置(以下、単に「監視制御装置」という。)20は制御所1に設置され、B監視制御装置(以下、単に「監視制御装置」という。)30は制御所3に設置されているものとする。具体的には、例えば、制御所1の監視制御装置20は通信網NWを介して、自所の遠隔監視制御装置40によって自所の所管する(監視対象の)電力系統設備(設備)61〜62を監視制御できるようになっている。また、制御所3の監視制御装置30は通信網NWを介して、自所の遠隔監視制御装置50によって監視対象の設備71〜72を監視制御できるようになっている。さらに、管理サーバ装置10は、すべての制御所の運転状況を把握できるようになっている。
【0018】
管理サーバ装置10は、データベースサーバとして電力会社の管理部門などに設置され、主として、通信制御装置11と、管理サーバ12と、記憶装置13と、端末14とを備えている。この管理サーバ装置10は、複数の制御所1〜3の監視制御装置20〜30を管理するもので、各監視制御装置20〜30が使用するデータベースのデータマスタ(マスタデータ)13Aとして一元的に管理するものである。
【0019】
通信制御装置11は、各監視制御装置20〜30から送信される各種データを受信すると、社内ネットワーク11Aを経て、受信したデータを管理サーバ12に送る。また、通信制御装置11は、管理サーバ12からのデータを、通信網NWを経て各監視制御装置20〜30に送信する。
【0020】
管理サーバ12は、マスタデータ13A等の一元管理をするために各種の処理を行う。この処理として、管理サーバ12は、制御所個別データベース(個別マスタデータベース)13C1〜13C3の更新処理を行う。つまり、各制御所1〜3が管理する設備61〜62、・・・、71〜72が新設、更新されると、管理サーバ12は、当該制御所から設備更新データ(更新データ)を受け取る。これにより、管理サーバ12は、更新データにもとづいて、当該設備の個別マスタデータベース13C1〜13C3を作成、更新する。さらに、管理サーバ12は、個別マスタデータベース13C1〜13C3と制御所画面13D1〜13D3とのリンクを生成、再生成する。さらにまた、管理サーバ12は、後述する共有マスタ生成タスク121と、共有マスタ合成タスク122と、配信タスク123とを記憶、実行するようになっている。
【0021】
記憶装置13は、電力系統設備データベース管理システム1が使用する全データ(データベース、画面など)を、管理サーバ12によって一元管理するためにマスタデータ13Aとし記憶している。マスタデータ13Aとして管理されるデータには、図5に示すように、全制御所で共通して使用する共有設備情報マスタデータ(共有部データベース)13Bと、各制御所が個別に使用する個別マスタデータベース13C1〜13C3と制御所画面13D1〜13D3とを格納している。さらに、共有部データベース13Bは、制御所共通データベース(共通データベース)13B1と、制御所共通画面(共通画面)13B2とを格納している。また、記憶装置13は、共有部データベース13Bのオブジェクトデータ(共有オブジェクトデータ)13Eと、個別マスタデータベースのオブジェクトデータ(個別オブジェクトデータ)13Fとを格納している。
【0022】
共有設備情報マスタデータとしての共有部データベース13Bは、複数の制御所において共通で使用する共通データベース13B1と共通画面13B2とをデータとして記憶している。共有部データベース13Bは、給電所からの系統情報である入り切り状態を示す二値情報(SV)、電圧や周波数などの計測情報(TM)や設備情報などにもとづいて、生成される。
【0023】
共通データベース13B1は、複数の制御所において共通で使用するデータベースで、例えば全社共通データベース13B11、気象・地震データベース13B12、発雷データベース13B13、超高圧系統SV・TMデータベース13B14などを格納している。全社共通データベース13B11とは、例えば制御所の名前や位置などの制御所情報、設備ごとに当該設備を監視対象とする制御所を記憶した監視対象設備データベース13B111や、システムの起動に必要な定数情報などである。
【0024】
監視対象設備データベース13B111は、具体的には例えば、図4に示すように、設備ごとに、所管する制御所には「◎」を、非所管の制御所で監視対象の制御所には「○」を記憶しており、設備「61」は、制御所「01」が「◎(所管制御所)」で、制御所「03」は「○(非所管制御所)」であることがわかるようになっている。つまり、設備「61」は、制御所1と制御所3が監視対象としており、データを使用することがわかる。
【0025】
共通画面13B2は、複数の制御所で共通で使用する画面であり、例えば気象画面13B21、LLS画面13B22、超高圧系統画面13B23などである。気象画面13B21は、電力会社の営業地方全域の天気図や雨量などを表示する画面であり、LLS画面13B22は、電力会社の営業地方全域の発雷情報や発雷予報を表示する画面であり、超高圧系統画面13B23は、電力会社の営業地方全域の超高圧の電力系統を表示する画面である。
【0026】
個別マスタデータベース13C1〜13C3は、制御所ごとに監視対象とする設備データベースを格納している。個別マスタデータベース13C1〜13C3は、図3に示すように、設備ごとに、つまり、設備を識別する設備IDごとに、監視制御装置、種類、機器番号、定数などが記憶されている。すなわち、監視制御装置には、当該設備の所管の(当該設備を監視対象とする)監視制御装置IDが記憶されている。種類、機器番号、定数により、当該設備を特定する情報が記憶されている。
【0027】
制御所画面13D1〜13D3は、制御所ごとの監視対象の設備の運転状況などが表示される画面である。当該画面で、表示されている設備を選択して操作することで、当該設備を遠隔で制御可能となるもので、個別マスタデータベース13C1〜13C3にもとづいて、設備を表すアイコンとその運転状況を表示するようになっている。
【0028】
共有オブジェクトデータ13Eは、共通データベース13B1から生成したオブジェクトデータで、共有マスタ生成タスク121によって生成される。
【0029】
個別オブジェクトデータ13Fは、後述するようにDBM20Mで生成され、アップロードされるようになっている。
【0030】
共有設備情報マスタデータ生成手段としての共有マスタ生成タスク121は、DBM20Mから個別オブジェクトデータ13Fがアップロードされると、共有部データベース13B、すなわち、共通データベース13B1と共通画面13B2とにもとづいて共有オブジェクトデータ13Eを生成する機能を有している。また、この共有マスタ生成タスク121は、処理が終了すると共有マスタ合成タスク122を起動する。共有マスタ生成タスク121は、プログラム、タスクとして管理サーバ12に格納されている。この処理は、データベース間の整合性を保持し、データ領域を最適に再構築することなどを目的として、個別マスタデータベース13C1〜13C3が生成、更新されると、つまり、個別オブジェクトデータ13Fがアップロードされると行うものである。
【0031】
マスタデータ合成手段としての共有マスタ合成タスク122は、アップロードされた個別オブジェクトデータ13Fと、生成された共有オブジェクトデータ13Eとを合体(合成)させる機能を有している。この共有マスタ合成タスク122によって合成されたファイルは、通信網NWを介して容易に委託先試験卓Tや制御所ごとの試験卓20T〜30Tに配信(送信、ダウンロード)できるようになっている。共有マスタ合成タスク122は、プログラム、タスクとして管理サーバ12に格納されている。
【0032】
配信手段としての配信タスク123は、生成された個別オブジェクトデータ13Fを使用する(監視対象とする)制御所を、監視対象設備データベースにもとづいて取得し、委託先試験卓T、当該制御所の試験卓20T〜30Tに、共有オブジェクトデータ13E、個別オブジェクトデータ13Fを配信(送信、ダウンロード)する機能を有している。具体的には例えば、図4に示すように、監視対象設備データベース13B111から、設備「61」は、制御所1と制御所3が監視対象としており、データを使用することがわかる。つまり、設備「61」のデータが更新された場合であれば、制御所1と制御所3にデータを送信する必要があることがわかる。また、配信タスク123は、プログラム、タスクとして管理サーバ12に格納されている。
【0033】
端末14は、管理部門の担当者によって操作される専用のコンピュータ装置であり、例えば、各監視制御装置20〜30から受信する設備更新データを表示する。
【0034】
監視制御装置20〜30は、電力系統の設備を監視制御するもので、制御所1〜制御所3にそれぞれ設置され、通信網NWを介して、自所の遠隔監視制御装置40〜50に接続されている。これにより、各監視制御装置20〜30は、遠隔監視制御装置40〜50をそれぞれ監視制御する。この監視制御装置20は、通信部と、表示部と、入力部と、設備データなどを記憶する記憶部と、個別データベース生成タスク25と、アップロードタスク26と、ダウンロードタスク27と、これらの制御を行う制御部とを備えている。この実施の形態では、監視制御装置20について説明するが、その他の監視制御装置も、監視制御装置20と同様に構成されている。
【0035】
この監視制御装置20は、記憶部に記憶されたデータベースの作成、更新などのメンテナンスを行うDBM20Mを有している。DBM20Mは、制御所の担当者によって操作されるパーソナルコンピュータなどの端末装置である。
【0036】
記憶部には、電力系統設備データベース管理システム1が使用するデータの中で、当該監視制御装置20で使用する(データベース、画面など)を制御所データベース24Aとし記憶している。データベース24Aとして管理されるデータには、図5に示すように、制御所が個別に使用する制御所個別データベース(個別データベース)24A1〜24A2と制御所画面24Bとを格納している。さらに、記憶部は、個別データベース24A1のオブジェクトデータ(個別オブジェクトデータ)24Cを有している。
【0037】
個別設備情報データベースとしての個別データベース24A1は、自所(例えば、制御所1)が監視対象とする設備データが記憶され、図3に示すように、設備ごとに、つまり、設備を識別する設備IDごとに、監視制御装置、種類、機器番号、定数などが記憶されている。すなわち、監視制御装置には、当該設備の所管の(当該設備を監視対象とする)監視制御装置IDが記憶されている。種類、機器番号、定数には、当該設備を特定する情報が記憶されている。個別データベース24A1は、制御所1からの系統情報にもとづいて、生成される。
【0038】
個別データベース24A2は、制御所1からの系統情報にもとづいて、ダウンロードされたものであり、自所(例えば、制御所1)が使用する他所(例えば、制御所3)のデータを記憶している。このように、制御所1の監視制御装置20において、制御所3の系統情報を記憶しているのは、次の理由による。すなわち、図2に示すように、電力系統は複数の制御所を経由して構成されているため、監視制御装置20は、自所(例えば、制御所1)が管理する設備の運転状況を監視制御するためには、隣接する制御所(例えば、制御所3)の設備の運転状況を応じて取り込んで監視制御画面(例えば、後述する制御所画面24B)に表示する必要がある。電力系統は、制御所間で連係するため、データの送受信が行われるため、運転状況の確認に、多所の設備情報が必要となる場合があるからである。この個別データベース24A2は、制御所3のDBM30によって更新されるものであり、制御所1のDBM20Mによって参照されるが、更新されないものである。
【0039】
このため、監視制御装置20は、自所が管理する設備データである個別データベース24A1に加えて、隣接する制御所が管理する設備データである個別データベース24A2を必要とする。この実施の形態では、例えば、制御所1はA変電所とB変電所とC変電所とを所管し、各変電所A〜Cの設備を監視対象としている。ところで、制御所1の所管エリア(図中、破線で図示)の境界では、隣接する制御所3のD変電所の一部の設備データ(図中、一点鎖線で図示)も監視対象として使用している。このため、制御所1においては、自所の監視対象の設備データを含む個別データベース24A1だけでなく、隣接する制御所3のD変電所の一部の設備データを含む個別データベース24A2も記憶している。なお、設備データは、図3に示すように設備61〜62、・・・、設備71〜72の性能や機能を示すデータであり、例えば、設備ID、所管の監視制御装置ID、種類、機器番号、定数などがある。
【0040】
制御所画面24Bは、自所の監視対象の設備の運転状況などが表示される画面である。当該画面で、表示されている設備を選択して操作することで、当該設備を遠隔で制御可能となるもので、個別データベース24A1、24A2にもとづいて、設備を表すアイコンとその運転状況を表示するようになっている。
【0041】
個別オブジェクトデータ24Cは、制御所データベース24A、すなわち、個別データベース24A1、24A2、制御所画面24Bから生成したオブジェクトデータである。
【0042】
個別設備情報データベース生成手段としての個別データベース生成タスク25は、個別データベース24A1が作成、更新されると、制御所データベース24Aにもとづいて個別オブジェクトデータ24Cを生成する機能を有している。この個別データベース生成タスク25は、プログラム、タスクとしてDBM20Mに格納されている。
【0043】
ダウンロード手段としてのダウンロードタスク27によって、データベース作成、更新に必要な制御所データベース24Aを管理サーバ12の個別マスタデータベース13C1、自所(例えば、制御所1)が使用する個別マスタデータベース13C3の一部と、制御所画面13D1からダウンロード(受信)する機能を有している。またアップロード手段としてのアップロードタスク26によって、個別データベース生成タスク25で生成した個別オブジェクトデータ24Cと、個別データベース24A1の更新データを含む制御所データベース24Aとを管理サーバ12にアップロードする機能を有している。このアップロードタスク26と、ダウンロードタスク27は、プログラム、タスクとしてDBM20Mに格納されている。
【0044】
このような構成の監視制御装置20は、管理サーバ装置10に、現在自所で使用している設備の更新データと、生成した個別オブジェクトデータ24Cとを送信(アップロード)する。また、監視制御装置20は、管理サーバ装置10から、自所で使用している設備の個別データベース24A1をダウンロード(受信)する。
【0045】
この実施の形態においては、上述の共有マスタ生成タスク121と、共有マスタ合成タスク122と、配信タスク123と、個別データベース生成タスク25と、アップロードタスク26と、ダウンロードタスク27によって電力系統設備データベース管理プログラムが構成されている。
【0046】
制御所試験卓20T〜30Mは、各制御所に設置され、監視制御画面や設備データを記憶したデータベースなどを備え、実際の運用で使用される運転卓(実機)と同等の構成で、運転卓と同様の操作、制御ができるようになっているトレーニング用の装置である。
【0047】
委託先試験卓Tは、委託先に設置され、制御所試験卓20T〜30Mと同等の構成となっている。
【0048】
遠隔監視制御装置40〜50は、監視対象の設備を遠隔で監視制御するもので、制御所1〜制御所2(A制御所〜B制御所)の監視制御装置20〜監視制御装置30によってそれぞれ管理されている。例えば、遠隔監視制御装置40は設備61〜62を監視して制御し、同様に、遠隔監視制御装置50は設備71〜72を監視して制御する。遠隔監視制御装置40〜50の監視制御の対象である設備61〜62および設備71〜72は、例えば電力系統の変圧器、遮断器、断路器、送電線等である。
【0049】
次に、電力系統設備データベース管理システム1の処理手順および作用について説明する。ここで、制御所1の監視対象設備(設備「61」)が更新された場合を例にして説明する。
【0050】
まず、制御所1において、監視対象の設備「61」が更新されると、図6に示すように、ステップS1として、ダウンロードタスク27により、管理サーバ12の個別マスタデータベース13C1、自所(例えば、制御所1)が使用する個別マスタデータベース13C3の一部と、制御所画面13D1から、設備「61」に関する個別データベース24A1を含む制御所データベース24Aが、DBM20Mにダウンロードされる。次に、ステップS2において、設備「61」に関する更新データが担当者によりDBM20Mによって入力され、個別データベース24A1が更新される。さらに、ステップS3において、個別データベース生成タスク25によって、個別データベース24A1を含む制御所データベース24Aがオブジェクトデータ化されて、個別オブジェクトデータ24Cが生成される。そして、ステップS4において、アップロードタスク26によって、生成された個別オブジェクトデータ24Cがサーバ装置12にアップロードされ、更新データがサーバ装置12にアップロードされる。
【0051】
つづいて、サーバ装置12によって、ステップS5において、共有マスタ生成タスク121により、共有オブジェクトデータ13Eが生成され、オブジェクトデータ化される。ステップS6において、共有マスタ合成タスク122によって、共有オブジェクトデータ13Eと個別オブジェクトデータ13Fとが合成される。そして、委託先試験卓Tに共有オブジェクトデータ13Eと個別オブジェクトデータ13Fとがダウンロード(配信)される。
【0052】
つづいて、委託先試験卓Tでは、ステップS7において、ダウンロードしたオブジェクトデータ(共有データベースと個別データベース)にもとづいて、データに不備や不整合などが生じていないことの確認試験をする。例えば、各種画面を表示したり、帳票を出力したりして、正しく表示、出力されていることが確認される。そして、管理サーバ12に確認試験の結果が送信される。
【0053】
つづいて、管理サーバ12では、送信された確認試験の結果にもとづいて、問題がない場合は、ステップS8に進んで配信タスク123が起動される。そして、配信タスク123によって、生成された個別オブジェクトデータ13Fを使用する各制御所の試験卓20T〜30Tに、共有オブジェクトデータ13Eと個別オブジェクトデータ13Fとが配信(ダウンロード)される。より詳しくは、図4に示す監視対象設備データベース13B111から、設備「61」は、制御所1と制御所3が監視対象としており、データを使用することがわかるので、制御所1の試験卓20Tに制御所1の全オブジェクトデータと、制御所3の設備「61」のオブジェクトデータが、配信される。
【0054】
つづいて、試験卓20T〜30Tでは、ステップS9において、ダウンロードしたオブジェクトデータ(共有データベースと個別データベース)にもとづいて、データに不備や不整合などが生じていないことが確認試験される。例えば、各種画面を表示したり、帳票などを出力したりして、正しく表示、出力されていることが確認される。自所のデータベースが問題ない場合は、ステップS10において、同様に制御所間でのデータに不備や不整合などが生じていないことが確認試験される。
【0055】
そして、すべての試験卓20T〜30Tでの確認試験が完了し、問題がないことが確認された場合は、ステップS11に進んで、すべての試験卓20T〜30Tに対してデータの等価操作が行われた後に、ステップS12に進んで、更新されたデータに基づいた運用が開始される。
【0056】
このようにして、制御所1の監視対象設備が更新された場合は、制御所1のDBM20Mによって、個別データベース24A1がオブジェクトデータ化されてから、サーバ装置12にアップロードされる。そして、サーバ装置12によって、共通データベース13B1がオブジェクトデータ化された後に、個別オブジェクトデータ13Fと合成される。そして、合成されたデータが更新データの設備を監視対象とする制御所1、3に配信される。また、制御所1の監視対象設備が新設された場合も同様に処理することができる。
【0057】
以上のように、この電力系統設備データベース管理システム1によれば、データベースの生成は、各監視制御装置20〜30において、当該監視制御装置20〜30が監視対象とする個別データベース24A1の個別オブジェクトデータ24Cが生成され、管理サーバ12において、共通データベース13B1の共有オブジェクトデータ13Eが生成されるので、データベースが生成される装置が分散され、管理サーバ12の負荷が軽減される。これにより、重負荷による管理サーバ装置10および通信網NWの障害を回避することができる。
【0058】
また、各監視制御装置20〜30が生成するのは、当該監視制御装置20〜30が監視対象とする個別データベース(この実施の形態では24A1)を含む制御所データベース(この実施の形態では24A)のみであるため、データベース生成時の排他制御は最小範囲となり、処理待ちや割込処理の発生も最小となる。したがって、電力系統設備データベースを効率的に運用することができる。さらに、共有マスタ合成タスク122によって、アップロードされた個別オブジェクトデータ13Fと、生成された共有オブジェクトデータ13Eとを合体(合成)するので、データ容量を削減することができ、かつ、1ファイルとして配信できるので、通信網NWを介して容易に委託先試験卓Tや制御所ごとの試験卓20T〜30Tに配信できる。
【0059】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、個別データベース生成タスク25と、共有マスタ生成タスク121と、共有マスタ合成タスク122と、配信タスク123とは一つのタスクとして一連で処理するようにしてもよい。また、これらのタスクによる処理は、システムの負荷が少なく、運用への影響が少ない深夜、早朝などに行うようにしてもよい。
【0060】
また、共有マスタ生成タスク121は、上記の実施の形態では個別オブジェクトデータ13Fがアップロードされると実行されるようにして説明したが、前回の実行時から共有部データベース13Bに更新がない場合は、再生成しないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 管理サーバ装置
11 通信制御装置
12 管理サーバ
121 共有マスタ生成タスク(共有設備情報マスタデータ生成手段)
122 共有マスタ合成タスク(マスタデータ合成手段)
123 配信タスク(配信手段)
13 記憶装置
13A マスタデータ
13B 共有部データベース(共有設備情報マスタデータ)
13C1〜13C3 個別マスタデータベース(個別設備情報マスタデータ)
13E 共有オブジェクトデータ(共有部データベースのオブジェクトデータ)
13F 個別オブジェクトデータ(個別マスタデータベースのオブジェクトデータ)
14 端末
20〜30 制御所監視制御装置
20M DBM(データベースメンテナンス端末)
20T〜30T 制御所試験卓
24A 制御所データベース
24A1、24A2 個別データベース(個別設備情報データベース)
24C 個別オブジェクトデータ
25 個別データベース生成タスク(個別設備情報データベース生成手段)
26 アップロードタスク(アップロード手段)
27 ダウンロードタスク(ダウンロード手段)
40〜50 遠隔監視制御装置
61〜72 設備(電力系統設備)
NW 通信網
T 委託先試験卓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統設備を監視制御する監視制御装置と、
複数の前記監視制御装置と通信可能で前記各監視制御装置を管理する管理サーバ装置と、
を備え、
前記各監視制御装置は、
監視対象とする前記電力系統設備の設備情報を記憶する個別設備情報データベースと、
前記個別設備情報データベースにもとづいて個別オブジェクトデータを生成する個別設備情報データベース生成手段と、
前記個別設備情報データベースを、前記管理サーバ装置から、データベースメンテナンス端末に受信するダウンロード手段と、
前記個別設備情報データベース生成手段で生成した前記個別オブジェクトデータと前記個別設備情報データベースとを、前記管理サーバ装置に送信するアップロード手段と、を有し、
前記管理サーバ装置は、
前記個別設備情報データベースのマスタデータである個別設備情報マスタデータと、
複数の監視制御装置が監視対象とする前記設備の設備情報を記憶する共有設備情報マスタデータと、
前記アップロード手段によって前記個別オブジェクトデータと前記個別設備情報データベースとがアップロードされると、前記共有設備情報マスタデータにもとづいて共有オブジェクトデータを生成する共有設備情報マスタデータ生成手段と、
前記共有設備情報マスタデータ生成手段が生成した前記共有オブジェクトデータと、前記個別オブジェクトデータとを合成するマスタデータ合成手段と、
前記マスタデータ合成手段で合成した前記個別オブジェクトデータの前記個別設備情報マスタデータの前記設備情報に該当する前記設備を監視対象とする前記監視制御装置に対して、前記共有オブジェクトデータと前記個別オブジェクトデータとを配信する配信手段と、を有する、
ことを特徴とする電力系統設備データベース管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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