説明

電力需給制御の無線通信システム及びその制御方法

【課題】安定した情報通信を可能とする電力需給制御の無線通信システム及びその制御方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、電力需給制御の無線通信システムは、複数の無線機器により自律分散型無線ネットワークを形成し、前記自律分散型無線ネットワークを介して複数の集約装置または管理装置に情報を伝送する。前記管理装置は、前記無線機器に対する所属変更命令を生成する第1の制御部を備える。前記無線機器は、第1の集約装置に所属する情報を記憶する記憶部と、前記所属変更命令に基づいて前記第1の集約装置から第2の集約装置に所属先を変更する第2の制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電力需給制御の無線通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地球規模のエネルギー消費の増加に伴い、COガス排出量の増加による地球温暖化・地球規模の環境破壊が問題となっている。特にエネルギー利用の中で、様々な目的に利用可能な電力需要の増加が著しい。これまでの電力制御システムでは、需要の変化を追いかける形で発電量を制御する形態をとっていた。このため、電力制御システムでは、需要と供給のバランス差によるロスの発生や、需要自体を制御できていないことによるロスにより、必ずしも効率の良い制御が行えていない問題があった。
【0003】
近年、需要側、発電側を通信などによる情報的な密結合関係を持たせ、必要に応じて需要(特に無駄な需要)を減らす制御を加え、社会的容量により見合う需要となるような新たな考えの電力制御システムが注目されている。このような需給(需要・供給)制御は、これまで電力を消費する機器のみしかなかった需要側に対して、自然エネルギー(太陽光・風力等)を利用した小型の発電設備や、電力が余った際に電力を保存できる蓄電装置を配備することで、より効果的な需給制御を行う提案も行われている。
【0004】
こうした電力制御システムは、需給制御を行うために、発電側と、需要側を効率よく結合するネットワークを必要とする。既に需要側となる一般家庭や事務所には、インターネットをはじめとする一般的な通信設備が導入されている。しかしながら、需給制御は、関係する全需要設備を一斉に制御可能にする必要があるため、こうした一般通信網はコスト高となること、また、社会インフラに関わる情報であることから、一定の共通した安全が保証されている必要があること等から、簡易で高い安全性を持つ専用ネットワークを必要とする。
【0005】
さらに、需給制御は、積極的に行われるために、発電側と需要側が情報交換の密結合の形態をとることを必要とする。具体的には、需給制御は、各需要側と発電側間に通信網を配置し、双方向の情報通信を必要とする。
【0006】
需給制御は、双方向に情報通信することで、需要過多となった場合に需要側に需要の削減を要求したり、必要に応じて需要側に配備される蓄電池や、太陽光などの発電設備の稼動を指示したりすることを可能とする。つまり、需給制御は、需要側に対して、社会的な容量に見合う発電量に抑える等制御できる。そのため、各需要側(家側)の計量機器に無線機器を結合し、各地域の無線装置を交互に中継することで、全需要側の電力需要情報を収集する多段無線中継方式の無線通信システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−128810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような無線通信システムは、故障や、無線状態の変化等により、一時的、または恒久的に通信が途絶える需要側の無線機器が発生し、安定して情報通信できないという問題がある。
【0009】
本発明は、安定した情報通信を可能とする電力需給制御の無線通信システム及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、電力需給制御の無線通信システムは、複数の無線機器により自律分散型無線ネットワークを形成し、前記自律分散型無線ネットワークを介して複数の集約装置または管理装置に情報を伝送する。前記管理装置は、前記無線機器に対する所属変更命令を生成する第1の制御部を備える。前記無線機器は、第1の集約装置に所属する情報を記憶する記憶部と、前記所属変更命令に基づいて前記第1の集約装置から第2の集約装置に所属先を変更する第2の制御部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る電力需給制御の無線通信システムの全体ブロック構成図。
【図2】実施形態に係る電力需給制御の無線通信システムにおける管理装置のブロック構成図。
【図3】実施形態に係る電力需給制御の無線通信システムにおける集約装置のブロック構成図。
【図4】実施形態に係る電力需給制御の無線通信システムにおける無線機器のブロック構成図。
【図5】実施形態に係る電力需給制御の無線通信システムの適用例を示す図。
【図6】実施形態に係る電力需給制御の無線通信システムの適用例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は、本実施形態に係る電力需給制御の無線通信システムの全体ブロック構成の一例を示す図である。本実施形態に係る無線通信システム(ネットワークシステム)は、無線機能を有する複数の無線機器(無線単局)により自律分散型無線ネットワークを形成し、自律分散型無線ネットワークを介して複数の集約装置または管理装置に各無線機器において収集されるセンシング情報(パケット)を伝送することにより、多所に拡散するセンシング情報を効率良く収集するためのものである。とりわけ、本実施形態に係る自律分散型無線ネットワークは、電力送配電システムにおいて需要側と発電側間で双方向の情報通信を行い、双方の制御装置により適正な電力需要量を制御すると共に、それに応じた適正な発電量の維持・制御を実現するために用いられる多段無線中継方式によるものである。
【0013】
無線通信システムは、一例として、管理装置101、集約装置102、111、無線機器103〜110、112〜118が配備されている。なお、集約装置102、111を総称して単に集約装置という場合がある。同様に、無線機器103〜110、112〜118を総称して単に無線機器という場合がある。無線機器103〜110、112〜118は、互いに無線通信可能な範囲で、分散して配置されている。各無線機器103〜110、112〜118には、後述するようにセンサーが接続されている。各無線機器103〜110、112〜118は、センサーが収集する情報(センシング情報)を無線で送信する。各無線機器103〜110、112〜118は、例えば、各家庭の電力量計がそれぞれセンサーとして接続されている。各無線機器103〜110、112〜118は、需要側が利用した電力量を無線で送信することができる。
【0014】
集約装置102、111は、無線機器103〜110、112〜118のうち少なくとも1つと無線通信可能な範囲に配置されている。集約装置102は、多段無線中継方式により互いに無線通信する各無線機器103〜110で構成されるネットワークを統括する。集約装置102は、多段無線中継方式により互いに無線通信する各無線機器112〜118で構成されるネットワークを統括する。集約装置102、111は、各無線機器103〜110、112〜118が収集した情報を集約する。なお、図1における各無線機器103〜110、112〜118、各集約装置102、111との間で示す実線は、互いに無線通信の接続関係(接続状態)が存在することを示している。各無線機器103〜110、112〜118は、接続関係にある隣接機器間で無線により情報(データ)通信する。したがって、各無線機器103〜110、112〜118は、直接または間接的に、集約装置102、111に情報を送信する。
【0015】
管理装置101は、集約装置102、111との間で情報通信可能となるように配置されている。管理装置101は、集約装置102、111を管理する。管理装置101は、集約装置102、111との間において、有線等の確実な通信手段により接続されている。管理装置101は、集約装置102、111を介して、分散配置された各無線機器103〜110、112〜118が収集した情報の全てを収集することができる。例えば、無線機器110のセンサーが収集した情報は、接続関係のある無線機器107、103を経由し、集約装置102に転送される。集約装置102が収集した全ての情報は、最終的に管理装置101に転送され管理される。各無線機器103〜110、112〜118が収集した情報は、情報収集した対象物または対象物が存在する地域などの状態解析に利用される。
【0016】
なお、集約装置102に接続される無線機器103〜110は、集約装置111に接続される無線機器112〜118と異なる無線(通信)チャネルを利用することにより、隣接するネットワーク間における無線通信との混信を抑える形態がとられている。例えば、集約装置102に接続される無線機器103〜110は無線チャネルA、集約装置111に接続される無線機器112〜118は無線チャネルBを利用する。
【0017】
図2は、実施形態に係る管理装置101の一例となるブロック構成図である。管理装置101は、操作インタフェース201、制御部202、通信部203、無線機器情報記憶部205、無線状態情報記憶部206、経路情報記憶部207、入力インタフェース208を有する。
【0018】
操作インタフェース201は、制御部202と入力インタフェース208とをつなぐインタフェース装置である。制御部202は、管理装置101の各部の動作を制御する。制御部202は、自動またはオペレータ209の操作により、各無線機器103〜110、無線機器112〜118に対する操作命令を生成し、送信する。操作命令の内容については後述する。通信部203は、管理装置101と接続されている集約装置102、111との間で双方向に情報通信する。無線機器情報記憶部205、無線状態情報記憶部206、経路情報記憶部207は、制御部202による自動的な操作命令の発行に対応するための無線機器情報、無線状態情報、経路情報を記憶する。無線機器情報は、管理装置101が管理する無線ネットワークシステムに含まれる各無線機器103〜110、112〜118に関する情報(識別番号(ID)など)である。無線状態情報は、管理装置101が管理する無線ネットワークシステムに含まれる各無線機器103〜110、112〜118及び集約装置102、111における無線状態(無線チャネルの状態も含む)の管理情報である。経路情報は、管理装置101が管理する無線ネットワークシステムに含まれる各無線機器103〜110、112〜118及び集約装置102、111における無線通信の接続関係(経路)に関する情報である。
【0019】
制御部202は、これらの情報を用いて、操作命令を生成する。入力インタフェース208は、オペレータ209が操作するためのインタフェース装置である。入力インタフェース208でのオペレータ209による操作内容は、操作インタフェース201を介して、制御部202に伝送される。したがって、オペレータ209は、制御部202が生成した操作命令に対して運用面での補正を行うことができる。上記構成により、制御部202は、自動またはオペレータ209の操作により、集約装置102、111を経由した対象となる無線機器に対して、操作命令を送信できる。
【0020】
次に、管理装置101が集約装置102、111に送信する操作命令の内容について説明する。操作命令は、例えば、以下に示す所属変更命令、無線チャネル変更命令、既定所属情報設定命令のうちのいずれかであってもよい。所属変更命令は、各集約装置102、111を介して各無線機器103〜110、112〜118に対して、各無線機器が所属する集約装置(所属集約装置という)の設定(または変更)を指定する命令である。ここで、所属する集約装置とは、各無線機器が直接的または間接的に接続関係にある集約装置である。例えば、無線機器109は、図1に示すように、無線機器107に直接的な接続関係があり、間接的な接続関係がある集約装置102に所属する。管理装置101は、無線機器109に対して、所属変更命令として無線機器109が集約装置111に所属するような変更を指定する命令を送信できる。所属変更命令は、所属変更先となる集約装置を示す識別番号(ID)が設定されている。これにより、無線機器109は、所属変更命令に設定されている識別番号に基づいて、所属集約装置を集約装置102から集約装置111へ変更することができる。無線機器109は、所属変更先となる集約装置(この例では、集約装置111)に所属する近隣の無線機器を検索し、検索した無線機器への接続を確立する。なお、所属変更命令は、所属集約装置の変更を実行するタイミングを示す時機情報が設定されていてもよい。時機情報は、所属集約装置の変更を実行するタイミングを任意に指定できる。時機情報は、例えば、時刻を指定しての無線機器設置工事など、運用の際に適用可能である。
【0021】
無線チャネル変更命令は、所属集約装置の設定の指定に代えて、各無線機器に無線チャネルの変更を指定する命令である。管理装置101は、所属集約装置の設定を指定することなく、無線通信環境のみを考慮した各無線機器の接続先の切替指定を行うことが可能である。したがって、隣接する各無線機器同士は、干渉を防ぐことができる。なお、無線チャネル変更命令は、時機情報が設定されていてもよい。
【0022】
既定所属情報設定命令は、無線通信システムの立ち上がり時に自動的に接続処理が行われた後、安定的な接続関係が確保されたところで、各無線機器が安定して所属できる集約装置を既定所属情報((既定の所属先の情報))として記憶することを指定する命令である。各無線機器は、既定所属情報設定命令に基づく既定の所属情報を記憶するので、無線通信システムの再起動時などであっても、安定した所属関係を確立するために要する時間を短縮することが可能となる。
【0023】
図3は、実施形態に係る集約装置102の一例となるブロック構成図である。なお、集約装置111は、集約装置102と同様の構成であるため、説明を省略する。集約装置102は、通信部301、制御部302、無線通信部303、無線機器情報記憶部304、経路情報記憶部305、ID記憶部306を有する。通信部301は、管理装置101との間で双方向に情報通信する。制御部302は、集約装置102の各部の動作を制御する。さらに、制御部302は、通信部301を介して管理装置101からの操作命令を受信する。無線通信部303は、無線機器との間で双方向に情報通信する。無線通信部303は、選択可能な複数の無線チャネルを切り換えて設定することが可能である。例えば、無線通信部303が選択可能な無線チャネルとして無線チャネルA、無線チャネルBが存在する場合、制御部302は、無線通信部303に無線チャネルの変更指示を行うことで、無線通信部303が利用する無線チャネルの変更を制御できる。無線機器情報記憶部304は、管理装置101が管理する無線ネットワークシステムに含まれる各無線機器103〜110、112〜118に関する無線機器情報(識別番号(ID)など)を記憶する。経路情報記憶部305は、管理装置101が管理する無線ネットワークシステムに含まれる各無線機器103〜110、112〜118及び集約装置102、111における無線通信の接続関係(経路)に関する経路情報を記憶する。ID記憶部306は、無線通信ネットワーク内で自装置を特定するための集約装置102の識別番号(ID)情報を記憶する。上記構成により、制御部303は、無線機器情報及び経路情報を用いて、管理装置101からの操作命令を目的の無線機器に送信できる。
【0024】
図4は、実施形態に係る無線機器103の一例となるブロック構成図である。なお、無線機器104〜110、112〜118は、無線機器103と同様の構成であるため、説明を省略する。無線機器103は、無線通信部401、制御部402、インタフェース403、隣接無線機器情報記憶部404、無線状態情報記憶部405、ID記憶部406、所属装置記憶部407を有する。無線通信部401は、無線機器または集約装置との間で双方向に情報通信する。無線通信部401は、電界強度測定部4011を有する。電界強度測定部4011は、通信先との間の無線の電界強度を測定する。無線通信部303は、選択可能な複数の無線チャネルを切り換えて設定することが可能である。制御部402は、無線機器103の各部の動作を制御する。さらに、制御部402は、管理装置101からの操作命令を、隣接して接続する集約装置または無線機器を経由して、無線通信部401を介して受信する。さらに、制御部402は、タイマー4021を有する。タイマー4021は、現在時刻をカウントする。インタフェース403は、無線機器103に接続されたセンサー(例えば電力量計)408と制御部402との間をつなぐ。隣接無線機器情報記憶部404は、親ノードとなる無線機器に関する情報(識別番号など)だけでなく無線機器103に隣接する無線機器に関する情報(識別番号など)を記憶する。無線状態情報記憶部405は、無線機器103に隣接する無線機器の無線状態(無線チャネルの状態も含む)の管理情報を記憶する。ID記憶部406は、無線通信ネットワーク内で自機器を特定するための無線機器103の識別番号(ID)を記憶する。所属装置記憶部407は、現在所属している集約装置に関する情報を記憶する。例えば、所属装置記憶部407は、集約装置102に所属していれば、集約装置102に所属する情報を記憶する。さらに、所属装置記憶部407は、既定所属情報設定命令に基づく既定所属情報を記憶する。
【0025】
次に、無線機器103における操作命令に基づく接続先の検索動作について説明する。まず、所属変更命令について説明する。制御部402は、管理装置101から所属変更命令を受信すると、所属変更命令に含まれる所属変更先となる集約装置の識別番号に基づいて、所属変更先となる集約装置に所属している無線機器が隣接する無線機器に存在するかを検索し、適切な接続先となる無線機器を選択する。つまり、制御部402は、隣接無線機器情報及び無線状態情報を使用し、最も安定的に通信が行える無線機器の中から、指定される条件に合致する無線機器を選択することで、現在所属している集約装置から所属変更先となる集約装置に所属先を変更する。その後、制御部402は、所属装置記憶部407に記憶させる所属集約装置に関する情報を変更する。以上の処理により、制御部402は、センサー408で収集された情報を、インタフェース403を介して管理装置1010に送信できる。なお、所属変更命令に時機情報が設定されている場合、制御部402は、タイマー4021がカウントする時刻及び時期情報に基づいて、所属集約装置を変更する時機を制御すればよい。
【0026】
次に、無線チャネル変更命令について説明する。制御部402は、管理装置101から無線チャネル変更命令を受信すると、無線チャネル変更命令で指定された無線チャネルで無線通信可能な無線機器が隣接する無線機器に存在するかを検索し、適切な接続先となる無線機器を選択する。つまり、制御部402は、選択可能な複数の無線チャネルの中から無線チャネル変更命令で指定された無線チャネルを選択し、無線通信部303に設定する無線チャネルを切り替える。そして、制御部402は、隣接無線機器情報及び無線状態情報を使用し、所属変更先となる集約装置に所属している無線機器の中から、最も安定的に通信が行える無線機器を選択して接続関係を確立することで、所属変更先となる集約装置への経路を探索する。さらに、制御部402は、所属装置記憶部407に記憶させる所属集約装置に関する情報を変更する。以上の処理により、制御部402は、センサー408で収集された情報を、インタフェース403を介して管理装置1010に送信できる。ここで、同一の無線ネットワークに所属する各無線機器は、それぞれが接続関係を持つ可能性があるため、同一の無線チャネルを利用する必要がある。このため、異なる無線ネットワーク間では、各無線機器は、異なる無線チャネルを利用することにより、混信を回避し、より効率的な無線ネットワークを構築できる。本実施形態によれば、制御部402は、無線チャネル変更命令に基づいて異なる無線ネットワークへの接続先の変更及び無線チャネルの変更を行なうため、選択可能な無線チャネルを使用する無線ネットワークの検索処理、無線チャネルの検索処理に要する遅延時間を解消することができる。
【0027】
なお、制御部402は、最適な接続先を効率的に選択するために、所属変更命令または無線チャネル変更命令を受信した場合であっても、所属変更先となる集約装置が現在所属している集約装置と異なる指定でない場合、無線機器の検索処理、無線チャネルの検索処理等を行わないようにしてもよい。
【0028】
次に、既定所属情報設定命令について説明する。制御部402は、管理装置101から既定所属情報設定命令を受信すると、既定所属情報設定命令に基づく既定所属情報を所属装置記憶部407に記憶させる。既定所属情報設定命令は、短時間の障害回復等に対応する方式として、自機器の再起動直前の所属集約装置を既定所属情報と設定して所属装置記憶部407に記憶することを指定する命令であってもよい。また、既定所属情報設定命令は、比較的長時間の停止後の復旧に適した方式として、自機器が最初に電源投入された際に初めて所属した集約装置を既定所属情報と設定して所属装置記憶部407に記憶することを指定する命令であってもよい。なお、既定所属情報設定命令は、前記2つの既定所属情報を選択的に設定し、所属装置記憶部407に記憶することを指定する命令であってもよい。また、既定所属情報設定命令は、制御部402が既定所属情報設定命令を受信した際に所属している集約装置を既定所属情報と設定して所属装置記憶部407に記憶することを指定する命令であってもよい。この場合、オペレータ209は、各無線装置の過去の接続関係によらず、現時点の所属集約装置を明示的に既定集約装置として指定することができる。
【0029】
既定所属情報設定命令によれば、制御部402は、無線通信システムの立ち上がり時に自動的に接続処理が行われた後、安定的な接続関係が確保されたところで、既定所属情報に設定された所属集約装置に所属先を変更するように制御する。さらに、制御部402は、所属装置記憶部407に記憶させる所属集約装置に関する情報を変更する。
【0030】
図5は、障害発生時における無線通信システムの各構成要素の動作を示す図である。図5に示す例は、無線機器107に何らかの障害が発生し、無線機器107が、接続していた無線機器109、110との間で通信できなくなった場合である。無線機器109、110は、自律的な自動ルート切替機能により、最も安定した無線通信を行える無線機器として、それぞれ無線機器113、114を選択する。無線機器109(無線機器110も同様)の制御部402は、例えば、隣接する無線機器のうち、電界強度測定部4011が最も強く電界強度を測定可能な無線機器を接続先として選択するようにしてもよい。また、無線機器109(無線機器110も同様)の制御部402は、例えば、隣接する無線機器との通信の成功率を計算し、隣接する無線機器のうち成功率の最も高い無線機器を接続先として選択するようにしてもよい。無線機器109、110が無線機器113、114へ接続先を切り替えることにより、無線機器109、110の所属集約装置は、集約装置102から集約装置111に変更となる。なお、無線機器109(無線機器110も同様)の制御部402は、接続先の無線機器の所属集約装置に応じて、無線通信部303で設定する無線チャネルを適宜切り替えてもよい。このとき、無線機器109(無線機器110も同様)の制御部402は、隣接無線機器情報記憶部404に親ノードの無線機器として無線機器113(無線機器110に関しては無線機器114)の情報を記憶する。また、無線機器109(無線機器110も同様)の制御部402は、所属集約装置に関する情報を所属装置記憶部407に記憶する。また、無線機器109(無線機器110も同様)の制御部402は、無線通信する無線機器、集約装置を介して、接続先が無線機器113(無線機器110に関しては無線機器114)に変更したことの情報を管理装置101に転送する。管理装置101の制御部202は、この変更情報に基づいて、経路情報記憶部207に記憶されている経路情報を更新する。このような自律分散型無線ネットワークにおいて、各無線機器は、自律的な自動ルート切替機能により、迅速に無線通信の不通状態を回避することができる。
【0031】
なお、無線機器109、110は、障害発生した無線機器107が復旧した後であっても、無線状態を中心に判定を行う自律分散処理では、無線機器113、114との間の接続関係が不安定とならない限り、短期間に無線機器107との間の無線接続を復活することが難しい。無線機器109、110は、無線機器113、114との間の無線接続関係が不安定とならない限り、自律的な自動ルート切替機能を起動させないからである。そのため、一時的な障害発生による各無線機器の暫定的な迂回経路の接続関係は、障害復旧後も残存する。したがって、無線通信システムには、各無線機器の接続関係を複雑なまま放置する状態が存続したり、特定の集約装置に大量の無線機器が所属(直接的にまたは間接的に接続)した状態が存続したりする等のネットワークバランスに支障をきたす状態が発生する。
【0032】
管理装置101は、このようなネットワークバランスに支障をきたす状態において、上記説明した操作命令を各無線機器に送信することにより、図5に示す障害発生後の接続関係から、図1に示す障害発生前の接続関係に戻すことができる。例えば、管理装置101は、はじめに、無線機器107の復旧を認知する。復旧は現地での機器交換や修理、自動ソフト復旧などで果たされるが、管理装置101は、集約装置102を経由して復旧完了情報を無線機器107から受信する。管理装置101の制御部202は、復旧完了情報に基づいて無線機器107の復旧を認知できる。オペレータ209も、インタフェース208を介して、無線機器107の復旧を認知できる。管理装置101は、無線機器107の復旧を認知した後、自動またはオペレータ209による操作による操作命令を、集約装置111を介して、接続先を変更した無線機器109、110に対して送信する。操作命令が所属変更命令であれば、所属変更命令は、集約装置111から集約装置102への所属集約装置の変更を指定する命令である。操作命令が無線チャネル変更命令であれば、無線チャネル変更命令は、無線機器113、114と無線通信する無線チャネルから無線機器107と無線通信可能な無線チャネルへの変更を指定する命令である。無線機器109、110は、操作命令を受信することにより、自律分散処理に関わらず、接続先を無線機器107に戻すことができる。したがって、無線通信システム内の接続関係は、図5に示す接続関係から図1に示す接続関係に復旧する。なお、制御部402は、自機器における過去の接続関係の履歴情報を保持するようにしてもよい。この場合、制御部402は、操作命令を受信した際、または、自機器に再起動が発生した場合であっても、無線通信可能な全ての無線機器の検索処理を行うことなく、短時間に安定した接続先を選択できる。
【0033】
図6は、障害発生時における無線通信システムの各構成要素の他の動作を示す図である。図6に示す例は、集約装置102に何らかの障害が発生し、集約装置が、直接的または間接的に接続していた無線機器103〜110との間で通信できなくなくなった場合である。無線機器103〜110は、自律的な自動ルート切替機能により、最も安定した無線通信を行える無線機器を選択する。つまり、無線機器103〜110の所属集約装置は、集約装置102から集約装置111に変更される。このような状態の無線通信システムは、一時的な障害回避には有効であるが、全ての無線機器が集約装置111に所属(直接的または間接的に接続)している。そのため、無線通信システムは、全ての無線機器で最低限の通信を行えるが、全体的な通信能力が低下した高負荷な状態を生じさせる。無線機器103〜110は、障害発生した無線機器107が復旧した後であっても、他の無線機器との間の接続関係が不安定とならない限り、元の接続先との接続関係を復活することが難しい。
【0034】
管理装置101は、このような状態において、接続先を変更した無線機器103〜110に対して操作命令を送信することで、図6に示す障害発生後の接続状関係から、図1に示す障害発生前の接続関係に戻すことができる。なお、管理装置101は、所属集約装置を変更する対象となる無線機器が複数段に連なる場合(図6に示す例では、無線機器106、107、104・・・の順)、先頭の無線機器106のみに操作命令を送信するようにしてもよい。また、管理装置101は、集約装置102、111に所属する全ての無線機器に対して操作命令を送信するようにしてもよい。この場合、無線機器103〜110は、管理装置101から経路上近い順に、操作命令に基づいて元の経路を回復する。したがって、無線通信システム内の接続関係は、図6に示す接続関係から図1に示す接続関係に復旧する。
【0035】
本実施形態によれば、簡易な構成の複数の無線機器による多段無線中継方式の自律分散型無線ネットワークにおいて、発電側、需要側の間で安定した通信を行なえる無線通信システムを構成、制御できる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
101…管理装置、102…集約装置、103〜110…無線機器、111…集約装置、112〜118…無線機器、202…制御部、203…通信部、301…通信部、302…制御部、303…無線通信部、401…無線通信部、402…制御部、407…所属装置記憶部、408…センサー、4011…電界強度測定部、4021…タイマー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線機器により自律分散型無線ネットワークを形成し、前記自律分散型無線ネットワークを介して複数の集約装置または管理装置に情報を伝送する電力需給制御の無線通信システムであって、
前記管理装置は、
前記無線機器に対する所属変更命令を生成する第1の制御部を備え、
前記無線機器は、
第1の集約装置に所属する情報を記憶する記憶部と、
前記所属変更命令に基づいて前記第1の集約装置から第2の集約装置に所属先を変更する第2の制御部と、
を備える電力需給制御の無線通信システム。
【請求項2】
前記所属変更命令は命令を実行する時機情報を備え、
前記無線機器は、時刻をカウントするタイマーを備え、
前記第2の制御部は、前記タイマーでカウントする時刻及び前記時機情報に基づいて、所属先の集約装置を変更する時機を制御する、請求項1記載の電力需給制御の無線通信システム。
【請求項3】
前記第2の制御部は、前記所属変更命令に含まれる前記第2の集約装置の識別番号に基づいて、所属先の集約装置を変更する、請求項1または2記載の電力需給制御の無線通信システム。
【請求項4】
前記第1の制御部は、前記無線機器に対する無線チャネル変更命令を生成し、
前記第2の制御部は、前記無線チャネル変更命令に基づいて、選択可能な複数の無線チャネルの中から1つを選択し、前記第2の集約装置への経路を確立する、
請求項1から3のいずれか1項記載の電力需給制御の無線通信システム。
【請求項5】
前記第1の制御部は、前記無線機器に対する既定所属情報設定命令を生成し、
前記第2の制御部は、前記既定所属情報設定命令に基づいて、所属先の集約装置を変更する、請求項1から4のいずれか1項記載の電力需給制御の無線通信システム。
【請求項6】
前記既定所属情報設定命令は、前記無線機器の電源が投入された際に初めて所属した集約装置を既定の所属先と設定する情報を含む、請求項5記載の電力需給制御の無線通信システム。
【請求項7】
前記既定所属情報設定命令は、前記無線機器が前記既定所属情報設定命令を受信した際に所属していた集約装置を既定の所属先と設定する情報を含む、請求項5記載の電力需給制御の無線通信システム。
【請求項8】
前記第1の制御部は、前記第1の集約装置に所属する全ての無線機器に対して前記所属変更命令を送信する、請求項1から7のいずれか1項記載の電力需給制御の無線通信システム。
【請求項9】
複数の無線機器により自律分散型無線ネットワークを形成し、前記自律分散型無線ネットワークを介して複数の集約装置または管理装置にパケットを伝送する電力需給制御の無線通信システムの制御方法であって、
前記管理装置は、
前記無線機器に対する所属変更命令を生成し、
前記無線機器は、
前記所属変更命令に基づいて前記第1の集約装置から第2の集約装置に所属先を変更する、
電力需給制御の無線通信システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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