説明

電力需給調整装置及び電力管理システム

【課題】電力需要の削減をより柔軟に行うことが可能な電力需給調整装置及び電力管理システム。
【解決手段】複数の電気機器を有する需要家において、前記電気機器の電力制御単位となる制御区分毎に、当該制御区分の環境状態を示す環境情報を取得する環境情報取得手段と、前記制御区分の各々で削減可能な電力を需要削減量として算出する需要削減量算出手段と、前記制御区分各々の環境情報又は需要削減量を用いて、当該需要削減量の実施に伴う影響の大きさを示す影響指数を決定する影響指数決定手段と、前記影響指数に基づいて前記制御区分を組み合わせ、当該制御区分の各組により前記需要削減量の合計値を段階的に増加させた複数の需要削減プランを生成する需要削減プラン生成手段と、前記複数の需要削減プランのうち、外部装置により選択された需要削減プランに含まれる各制御区分の需要削減量に従って、当該制御区分に属する前記電気機器を制御する機器制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力需給調整装置及び電力管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力管理に係る技術として、電力の流れを需要家と供給者との双方で制御するデマンドレスポンスが注目されている。デマンドレスポンスは、スマートグリッドを構成する要素の一つであり、供給者から各需要家へ電力需要の削減を要請し、その要請に従い需要家側で電力消費機器を制御等により電力需要を削減する仕組みである。電力需要の削減については、従来、電力消費機器に設定された優先度に従い電力需要を削減する技術が提案されている。
【0003】
ところで、各需要家に削減目標を適切に設定する技術として、各需要家の電力需要を管理し、全体の削減目標を各需要家に分配する方法がある。この方法では、各需要家が申告した自身の電力需要の削減可能量(調整余力)を収集し、その調整余力を基に各需要家の削減目標を決定する。調整余力は一般的に、ビル等を利用する人の快適性・生産性を損なわない範囲で設定される。この調整余力に申告に基づいて削減目標を分配することで、需要家にとって無理のない分配を実施することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−75015号公報
【特許文献2】特開2010−161849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の技術では、各需要家の調整余力を合計しても全体の削減目標に満たない場合に対応することができず、柔軟性に欠けるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態の電力需給調整装置は、環境情報取得手段と、需要削減量算出手段と、影響指数決定手段と、需要削減プラン生成手段と、機器制御手段とを備える。環境情報取得手段は、複数の電気機器を有する需要家において、電気機器の電力制御単位となる制御区分毎に、当該制御区分の環境状態を示す環境情報を取得する。需要削減量算出手段は、制御区分の各々で削減可能な電力を需要削減量として算出する。影響指数決定手段は、制御区分各々の環境情報又は需要削減量を用いて、当該需要削減量の実施に伴う影響の大きさを示す影響指数を決定する。需要削減プラン生成手段は、影響指数に基づいて制御区分を組み合わせ、当該制御区分の各組により需要削減量の合計値を段階的に増加させた複数の需要削減プランを生成する。機器制御手段は、複数の需要削減プランのうち、外部装置により選択された需要削減プランに含まれる各制御区分の需要削減量に従って、当該制御区分に属する電気機器を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る電力管理システムの構成を示す図である。
【図2】図2は、制御区分の一例を示す図である。
【図3】図3は、制御区分管理ファイルのデータ構成の一例を示す図である。
【図4】図4は、図3に示した制御区分管理ファイルのソート結果を示す図である。
【図5】図5は、需要削減プランの生成方法の一例を説明するための図である。
【図6】図6は、図5に示す生成方法で生成された需要削減プランを示す図である。
【図7】図7は、需要削減プランの他の生成方法の一例を説明するための図である。
【図8】図8は、図7に示す生成方法で生成された需要削減プランを示す図である。
【図9】図9は、制御区分管理ファイルのデータ構成の他の例を示す図である。
【図10】図10は、図9に示した制御区分管理ファイルのソート結果を示す図である。
【図11】図11は、人数及び需要削減量の予測方法を説明するための図である。
【図12】図12は、人数及び需要削減量の予測方法を説明するための図である。
【図13】図13は、需要削減量分配部の動作を説明するための図である。
【図14】図14は、第1の実施形態に係る電力管理システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
【図15】図15は、削減可能量導出処理の手順を示すフローチャートである。
【図16】図16は、需要削減量分配処理の手順を示すフローチャートである。
【図17】図17は、第2の実施形態に係る電力需給調整装置の構成を示す図である。
【図18】図18は、第2の実施形態に係る電力管理システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
【図19】図19は、電力管理システムの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る電力需給調整装置及び電力管理システムの実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態においては、需要家が示した電力削減可能量を、電力系統運用者を相対であるいは電力市場で対価と取引するシステムが予め構築されているものとする。
【0009】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る電力管理システムの構成を示す図である。同図に示すように、本実施形態の電力管理システムは、電力を使用する各需要家に設けられた電力需給調整装置10と、電力需給調整装置10の各々に対応し各需要家の電力を管理する電力管理装置20とが接続されて構成されている。
【0010】
電力需給調整装置10は、調整余力算出部11と、需要削減量算出部12と、人数計測部13と、制御区分管理部14と、需要削減プラン生成部15と、機器制御部16と、通信制御部17とを備えている。
【0011】
調整余力算出部11は、電力消費機器ELの状態に基づいて、自己の需要家で削減可能な電力を示す調整余力を算出する。ここで、調整余力は、人の快適性・生産性を損なわない範囲で設定される需要家にとって無条件に削減可能な電力であり、デマンドレスポンスにおいて受け入れ可能な消費電力を表す。
【0012】
調整余力は、例えば、予め定めた照明の光量の下限(例えば30%)に従い、ビル内の照明の光量を下限に調光したとき削減される電力である。また、空調については、夏場の設定温度の上限(例えば29℃)、冬場の設定温度の下限(例えば18℃)を予め設定し、現在の設定温度から上限或いは下限に設定を変更したときに削減される電力である。なお、照明については、光量だけでなく明るさセンサ等によって計測される照度を基準として照度の下限を設定してもよいし、空調については、温度だけでなく湿度や風量、PMV(Predicted Mean Vote)を基準としてもよい。
【0013】
なお、調整余力の算出方法は特に問わず、例えば、調整余力が予め定められている形態としてもよいし、公知の技術を用いて算出する形態としてもよい。また、電力需給調整装置10を操作するオペレータにより入力される形態としてもよい。
【0014】
需要削減量算出部12は、予め定められた制御区分毎に、前記制御区分の各々で削減可能な電力を需要削減量として算出する。ここで、制御区分は、需要家内に設けられた電力消費機器ELの電力供給を制御する上で、制御単位となるものである。制御区分は、例えば、需要家の施設を一又は複数のエリアに区分けしたときの、それぞれのエリアに該当する。
【0015】
図2は、制御区分の一例を示す図である。図2では、オフィス30を二つのエリアA11、A21に区分けした例を示しており、エリアA11、A21のそれぞれが制御区分となる。この場合、需要削減量算出部12は、エリアA11内に設けられた電力消費機器EL11〜EL15、エリアA21内に設けられた電力消費機器EL21〜EL25の状態に基づき、制御区分となったエリアA11、A21についての需要削減量をそれぞれ算出する。なお、制御区分は、空間的なエリアに限らず、例えば、同一種別の電力消費機器EL(例えば照明、空調)を、一の制御区分として区分けし、これら制御区分毎に需要削減量を算出する形態としてもよい。
【0016】
また、需要削減量は、電力消費機器での現在の消費電力と、消費を抑えた場合での消費電力との差である。例えば、照明においては、光量100%で点灯する現在の消費電力と、光量を10%や0%(照明オフ)等の削減値に落とした場合での消費電力と、の差が需要削減量となる。ここで、需要削減量は、削減可能な電力という点で調整余力と共通するが、調整余力との違いとして、制御区分毎に算出される値であること、ある程度の快適性・生産性を損なう値であることを特徴としている。つまり、全制御区分での需要削減量の合計値は、調整余力を上回ることになる。
【0017】
なお、需要削減量の算出方法は特に問わず、例えば、各電力消費機器ELの削減値は予め定められている形態としてもよいし、公知の技術を用いて算出する形態としてもよい。また、電力需給調整装置10を操作するオペレータにより入力される形態としてもよい。
【0018】
図1に戻り、人数計測部13は、制御区分の各々に設けられたセンサ機器SNでのセンシング結果に基づいて、各制御区分やその周辺に存在する人の数を環境情報として取得する。
【0019】
ここで、センサ機器SNは、制御区分内に存在する人を検知するための各種のセンサ装置であって、制御区分毎に1又は複数個設けられている。センサ機器SNは、自己の装置が設けられた制御区分をセンシングし、そのセンシング結果を人数計測部13へ出力する。なお、センサ機器SNとして用いるセンサ装置の種別は特に問わず、各種のセンサ装置を用いることが可能である。例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサや、赤外線、超音波、可視光等を利用した人感センサを、センサ機器SNとして用いる形態としてもよい。また、オフィス30等の制御区分の出入口に設けた入退室センサや、制御区分内の各椅子に設けた着席センサ(圧力センサ等)を、センサ機器SNとして用いる形態としてもよい。
【0020】
また、人数計測の方法は、特に問わず、センサ機器SNからの出力に応じた公知・公用の技術を用いることができる。例えば、センサ機器SNがイメージセンサである場合、人数計測部13は、センサ機器SNからデータ(画像データ)が入力される毎に、当該データを構成する各画素について輝度値の差分を取り、輝度値の変化が所定値以上の場合に人が存在すると判断する。そして、存在と判断した人の数を、その制御区分に存在する人数として取得する。
【0021】
制御区分管理部14は、需要削減量算出部12が算出した制御区分毎の需要削減量と、人数計測部13が計測した制御区分毎の人数とを関連付け、制御区分管理ファイル141に記憶・管理する機能部である。なお、制御区分管理ファイル141自体は、図示しない記憶装置に保持されているものとする。また、制御区分管理ファイル141は、履歴として、所定期間(例えば、1週間や1年)分の制御区分毎の人数及び需要削減量を記憶しているものとする。
【0022】
図3は、制御区分管理ファイル141のデータ構成の一例を示す図である。同図に示すように、制御区分管理ファイル141は、制御区分毎に、需要削減量[kW]と人数[人]とを関連付けて記憶している。なお、制御区分管理ファイル141のデータ構成は、図3の例に限らず、例えば、各制御区分が存在するフロア[階]等を関連付けて記憶する形態としてもよい。
【0023】
需要削減プラン生成部15は、制御区分管理ファイル141に記憶された制御区分毎の需要削減量と人数とに基づき、複数の需要削減プランを生成する。ここで、需要削減プランとは、各制御区分の環境情報や需要削減量から求まる影響指数に基づいて、制御区分を組み合わせることで、当該制御区分の各組により需要削減量の合計値が段階的に増加するよう立案された電力需要削減のための計画である。
【0024】
以下、需要削減プラン生成部15の動作例について説明する。まず、需要削減プラン生成部15は、制御区分管理ファイル141を参照し、当該制御区分管理ファイル141の各エントリを、人数又は需要削減量の昇順に並び替える。例えば、制御区分管理ファイル141が図3に示す状態にある場合、需要削減プラン生成部15は、図4に示すように、制御区分管理ファイル141の各エントリを人数又は需要削減量の昇順にソートする。ここで、図4は、図3に示した制御区分管理ファイル141のソート結果を示す図である。
【0025】
次に、需要削減プラン生成部15は、環境情報又は需要削減量を用いて、需要削減量の実施に伴う影響の大きさを示す影響指数を決定する。そして、需要削減プラン生成部15は、影響指数に基づいてソート後のエントリを段階的に組み合わせ、その組み合わせ結果を需要削減プランとして生成する。ここで、影響指数には「需要削減量」や「人数」を用いることができる。
【0026】
以下、図4〜図6を参照し、需要削減プランの生成方法の一例について説明する。ここでは、需要削減量の合計値を影響指数とし、独立した需要削減プランとして生成する際の基準となる尺度を5kW毎(1〜5、6〜10、11〜15…)とした場合について説明する。また、人数の昇順に制御区分を組み合わせる例について説明するが、これに限らず、需要削減量の昇順に制御区分を組み合わせてもよい。
【0027】
まず、需要削減プラン生成部15は、図4に示したエントリのうち、最も人数の少ない「制御区分1」の需要削減量5[kW]を参照する。この場合、最初の尺度となる1〜5[kW]の範囲内であるため、需要削減プラン生成部15は、図5に示すように、制御区分1に係るエントリを独立した需要削減プランとし、当該エントリに含まれる需要削減量及び人数を含んだ需要削減プラン(プランP11)を生成する。
【0028】
次に、需要削減プラン生成部15は、人数の昇順に従い「制御区分1」と「制御区分3」との組について需要削減量の合計値11[kW]を算出する。この場合、その合計値は、11〜15[kW]の範囲内となるため、需要削減プラン生成部15は、図5に示すように、制御区分1及び制御区分3の組を独立した需要削減プランとし、この組のエントリに含まれる需要削減量及び人数を合計した需要削減プラン(プランP12)を生成する。
【0029】
続いて、需要削減プラン生成部15は、人数の昇順に従い「制御区分1」、「制御区分3」及び「制御区分2」の組について需要削減量の合計値21[kW]を算出する。この場合、その合計値は、21〜25[kW]の範囲内となるため、需要削減プラン生成部15は、図5に示すように、制御区分1、制御区分3及び制御区分2の組を独立した需要削減プランとし、この組のエントリに含まれる需要削減量及び人数を合計した需要削減プラン(プランP13)を生成する。
【0030】
さらに、需要削減プラン生成部15は、人数の昇順に従い「制御区分1」、「制御区分3」、「制御区分2」及び「制御区分4」の組についての需要削減量の合計値41[kW]を算出する。この場合、その合計値41[kW]は、41〜45[kW]の範囲内となるため、需要削減プラン生成部15は、図5に示すように、制御区分1、制御区分3、制御区分2及び制御区分4の組を独立した需要削減プランとし、この組のエントリに含まれる需要削減量及び人数を合計した需要削減プラン(プランP14)を生成する。
【0031】
図6は、図5に示す生成方法で生成された需要削減プランを示す図である。同図に示すように、各需要削減プラン(P11〜P14)に対し、重要削減量と人数とが関連付けられる。また、図6では、各需要削減プランの人数に基づき需要削減により影響を受ける人数の影響レベルを、影響指数として関連付けている。
【0032】
ここで、人数が1〜5人のときレベル1、人数が6〜10人のときレベル2と、5人刻みでレベルを増加させた例を示しており、レベルが上がるほど影響度が大きくなる。なお、影響人数レベルのレベル分けは、上記の例に限らず、例えば制御区分管理ファイル141に格納されたエントリ全体の人数(図3の場合38人)に対する各需要削減プランの人数の割合に応じてレベル分けする形態としてもよい。また、図6では、人数に基づき影響レベルを導出しているが、需要削減量に基づいて影響レベルを導出してもよい。
【0033】
また、上記例では、レベル分けにより影響指数を離散的な値としたが、連続値としてもよい。この場合、例えば、人数又は需要削減量そのものとしてもよいし、制御区分管理ファイル141に格納されたエントリ全体の人数(図3の場合38人)に対する各需要削減プランの人数の割合そのものとしてもよい。
【0034】
また、需要削減プランの他の生成方法として、人数の合計を影響指数とする方法が挙げられる。以下、図4、図7及び図8を参照し、人数の合計を影響指数とした場合での需要削減プランの生成方法の一例について説明する。ここでは、独立した需要削減プランとして生成する際の基準を6人以上とし、且つその尺度を5人毎(6〜10、11〜15…)とした場合について説明する。また、人数の昇順に制御区分を組み合わせる例について説明するが、これに限らず、需要削減量の昇順に制御区分を組み合わせてもよい。
【0035】
まず、需要削減プラン生成部15は、図4に示したエントリのうち、最も人数の少ない「制御区分1」の人数2[人]を参照する。この場合、基準となる6人に満たないため、需要削減プラン生成部15は、「制御区分1」についての需要削減プランは生成しない。
【0036】
次に、需要削減プラン生成部15は、人数の昇順に従い「制御区分1」と「制御区分3」との組について人数の合計値6[人]を算出する。この場合、その合計値は、6〜10[人]の範囲内となるため、需要削減プラン生成部15は、図7に示すように、制御区分1及び制御区分3の組を独立した需要削減プランとし、この組のエントリに含まれる需要削減量及び人数を合計した需要削減プラン(プランP21)を生成する。
【0037】
続いて、需要削減プラン生成部15は、人数の昇順に従い「制御区分1」、「制御区分3」及び「制御区分2」の組について人数の合計値13[人]を算出する。この場合、その合計値は、11〜15[人]の範囲内となるため、需要削減プラン生成部15は、図7に示すように、制御区分1、制御区分3及び制御区分2の組を独立した需要削減プランとし、この組のエントリに含まれる需要削減量及び人数を合計した需要削減プラン(プランP22)を生成する。
【0038】
さらに、需要削減プラン生成部15は、人数の昇順に従い「制御区分1」、「制御区分3」、「制御区分2」及び「制御区分4」の組についての人数の合計値38[人]を算出する。この場合、その合計値38[人]は、36〜40[kW]の範囲内となるため、需要削減プラン生成部15は、図7に示すように、制御区分1、制御区分3、制御区分2及び制御区分4の組を独立した需要削減プランとし、この組のエントリに含まれる需要削減量及び人数を合計した需要削減プラン(プランP23)を生成する。
【0039】
図8は、図7に示す生成方法で生成された需要削減プランを示す図である。同図に示すように、各需要削減プラン(P21〜P23)に対し、重要削減量と人数とが関連付けられる。また、図8では、図6と同様、各需要削減プランの人数に基づき需要削減により影響を受ける人数のレベルを関連付けている。
【0040】
さらに、影響指数として上記例以外の要素を用いる形態としてもよく、例えば、人数を需要削減量で割った値[人/kW]を影響指数としてもよい。この場合、例えば、図9に示すように、制御区分毎の電気削減量と人数とを制御区分管理ファイル141に格納する段階で、その人数を需要削減量で割った値(影響指数)を算出する形態としてもよい。ここで、図9は、制御区分管理ファイル141のデータ構成の他の例を示す図であり、制御区分毎に、需要削減量[kW]と影響指数[人/kW]とを関連付けて記憶している。
【0041】
また、図9に示す制御区分管理ファイル141を用いる場合、需要削減プラン生成部15は、影響指数[人/kW]の昇順にソートすることで、図10に示すソート結果を取得する。そして、需要削減プラン生成部15は、需要削減量や影響指数の合計値を基準とし、上記と同様の生成方法を用いることで需要削減プランを生成する。
【0042】
なお、需要削減プラン生成部15において、人数を需要削減量で割った値を算出する形態としてもよく、この場合、例えば制御区分管理ファイル141の各エントリのソート時に、各エントリに含まれた人数と需要削減量とから影響指数[人/kW]を算出し、この算出した値に基づいてソートを行ってもよい。これにより、図10と同様のソート結果を取得することができる。
【0043】
さらに、上述した影響指数の算出に、制御区分毎の温度や湿度、照度等の環境情報を用いる形態としてもよい。これら環境情報の取得方法は、特に問わず、種々の方法を用いることが可能である。例えば、制御区分内に設置された空調機により測定された温度、湿度を、通信を介して取得する形態としてもよいし、照明制御向けに設置された照度センサにより計測された照度を、通信を介して取得する形態とてもよい。また、制御区分内に設置された専用のセンサにより計測された温度、湿度及び照度を、通信を介して取得する形態としてもよい。また、人数計測に用いるカメラの撮影映像に基づいて照度を計測する形態としてもよい。
【0044】
環境情報として温度を用いる場合、例えば、下記式(1)や(2)を用いて影響指数を決定することができる。なお、下記式(1)、(2)中の「需要削減に伴う温度の変化量」は、予め定数で与える方法や、季節や外気温等に基づく温度変化のモデルを用いて求めることができる。また、湿度についても同様の手法で影響指数を算出することができる。
需要削減に伴う温度の変化量の絶対値/現在の温度 …(1)
需要削減に伴う温度の変化量の絶対値×人数 …(2)
【0045】
環境情報として照度を用いる場合には、例えば、下記式(3)や(4)を用いることで制御区分毎の影響指数を算出することができる。ここで、下記式(3)、(4)中の「需要削減に伴う照度の変化量」は、予め定数で与える方法や、照度変化のモデル(消費電力に対する照度の関数等)を用いて求めることができる。
需要削減に伴う照度の低下量/現在の照度 …(3)
需要削減に伴う照度の低下量×人数 …(4)
【0046】
また、需要削減プランの生成対象となる時期は、現在(当日)に限らず、1日後や1週間後等の将来を対象としてもよい。将来分の需要削減プランを生成する場合には、制御区分管理ファイル141に記憶された各制御区分での人数及び需要削減量の履歴に基づいて、将来の制御区分毎の人数及び需要削減量を公知の統計処理方法により予測する。
【0047】
予測方法は、例えば、図11に示すように、過去7日間分の履歴の平均を予測結果とする方法や、図12に示すように、予測対象の日から1年前の履歴を予測結果とする方法等を用いることができる。ここで、図11、図12は、人数及び需要削減量の予測方法を説明するための図である。さらに、これらの方法で予測した結果に、天気予報から天候や気温を取得し、夏場において、予測に用いた日よりも予測対象の日の気温が高い時には上方修正する等、補正を実施してもよい。これらの方法で求めた制御区分毎の人数及び需要削減量の予測値を用いることで、将来分の需要削減プランを生成することができる。
【0048】
機器制御部16は、各制御区分に設けられた電力消費機器ELへの電力供給量を制御する機能部である。機器制御部16は、電力管理装置20から需要削減量の通知を受け付けると、この通知された需要削減量に従い、各制御区分に設けられた電力消費機器ELが需要削減量を満たすような制御を行う。例えば、照明であれば光量を低下させることや、夏場の空調であれば設定温度を上昇させることを行う。また、機器制御部16は、電力管理装置20から電力削減プランの通知を受け付けると、この需要削減プランに含まれる各制御区分の需要削減量に従って、各制御区分に設けられた電力消費機器ELへの電力供給量を削減する。
【0049】
なお、電力管理装置20から、需要削減プランを特定可能な識別子が通知された場合には、その通知された識別子に対応する需要削減プランを需要削減プラン生成部15から取得し、この需要削減プランに基づいて各制御区分に設けられた電力消費機器ELが需要削減量を満たすような制御を行うものとする。
【0050】
通信制御部17は、インターネット等のネットワークに接続可能な通信インターフェース(図示せず)を用いて、電力管理装置20との間でデータ通信を行う。具体的に、通信制御部17は、調整余力算出部11で算出された調整余力と、需要削減プラン生成部15で生成された需要削減プランとの組を、電力管理装置20に送信する。また、通信制御部17は、電力管理装置20から送信される需要削減量を受信する。
【0051】
また、電力需給調整装置10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のコンピュータ構成や、HDDやSSD等の記憶装置、インターネット等のネットワークに接続するためのインターフェース等を有する(何れも図示せず)。なお、上述した調整余力算出部11、需要削減量算出部12、人数計測部13、制御区分管理部14、需要削減プラン生成部15、機器制御部16及び通信制御部17は、CPUとROM又は記憶装置に記憶された所定のプログラムとの協働により実現される形態としてもよいし、ハードウェア構成により実現される形態としてもよい。
【0052】
一方、電力管理装置20は、情報収集部21と、需要削減量分配部22と、需要削減量通知部23、通信制御部24とを備える。
【0053】
情報収集部21は、各需要家の調整余力算出部11及び需要削減プラン生成部15から、調整余力と需要削減プランとを収集する。収集は、インターネット等のネットワークを通じて実施する。
【0054】
需要削減量分配部22は、収集された各需要家の調整余力及び需要削減プランに基づいて、各需要家に依頼する需要削減量を算出する機能部である。
【0055】
具体的に、需要削減量分配部22は、各需要から収集された調整余力を合計し、その合計値が予め定められた目標削減量以上か否かを判定する。ここで、調整余力の合計が目標削減量以上の場合、需要削減量分配部22は、各需要家から収集された調整余力の範囲内で、需要削減量を分配する。ここで、分配方法は特に限らず、種々の方法を用いることが可能である。例えば、各需要家の需要削減量が均等になるように分配してもよいし、各需要家の調整余力に対する需要削減量の割合が均等になるように分配してもよい。
【0056】
また、調整余力の合計が目標削減量を下回る場合、需要削減量分配部22は、各需要家から収集された需要削減プランに基づいて需要削減量の分配を行う。以下、需要削減プランに基づく需要削減量の分配方法について説明する。
【0057】
例として、需要家全体(需要家A及びB)で削減すべき目標の電力(目標削減量)を60[kW]、需要家Aの調整余力4[kW]、需要家Bの調整余力を11[kW]とする。この場合、調整余力を合計しても目標削減量の60[kW]を達成することはできず、45[kW]分が未達となる。そこで、需要削減量分配部22は、需要家A及び需要家Bから収取された需要削減プランを統合(マージ)する。
【0058】
例えば、図13(a)が需要家Aの需要削減プラン、図13(b)が需要家Bの需要削減プランであったとすると、需要削減量分配部22は、これらの需要削減プランを統合することで、図13(c)に示す統合結果(以下、統合需要削減プランという)を得る。ここで、図13は、需要削減量分配部22の動作を説明するための図であり、図13(a)及び図13(b)の需要削減プランでは、人数そのものを影響指数とした例を示している。また、図13(c)では、統合の際に、人数の昇順にソートを施した結果を示している。
【0059】
需要削減量分配部22は、統合需要削減プランから、目標削減量の未達分を満たす需要削減プランを選択することで、各需要家に需要削減量を分配する。ここで、需要削減プランの選択方法は、特に問わないものとするが、人数の合計値がより小さくなる需要削減プランの組を選択することが好ましい。また、各需要家の需要削減プランを組み合わせて選択することが好ましい。
【0060】
例えば、図13(c)の統合需要削減プランの場合、未達分の45[kW]を満たし、且つ人数の合計値が最小となる需要削減プランを選択すると、需要家Aの需要削減プランP34と、需要家Bの需要削減プランP41との組が選択されることになる。なお、各需要家において実施可能な需要削減プランは一つであるため、同一の需要家において複数のプランを選択することはできない。
【0061】
なお、選択した需要削減プランの影響指数に応じて、需要削減量分配部22が、対応する需要家に対価(インセンティブ)やペナルティを与える形態としてもよい。例えば、図13(c)の需要削減プランP34及び需要削減プランP41が選択された場合、各プランに含まれる人数(38人、15人)に応じて、消費電力量1[kWh]あたりの電気料金を所定金額値引き(或いは値上げ)する形態としてもよい。また、上述したように、影響指数をレベルとして離散的に示す場合、各レベルに応じてインセンティブやペナルティを与える形態としてもよい。
【0062】
需要削減量通知部23は、需要削減量分配部22が調整余力に基づいて分配した需要削減量を、通信制御部24を介して対応する需要家の機器制御部16に通知する。また、需要削減量通知部23は、需要削減量分配部22が選択した需要削減プランを、通信制御部24を介して対応する需要家の機器制御部16に通知してもよい。
【0063】
例えば、図13(c)の需要削減プランP34及び需要削減プランP41が需要削減量分配部22で選択された場合、需要削減量通知部23は、需要家Aの機器制御部16に需要削減プランP34を通知するとともに、需要家Bの機器制御部16に需要削減プランP41を通知する。なお、需要削減プランP34に含まれる需要削減量を通知する形態としてもよいし、需要削減プランP34を特定可能な識別子を通知する形態としてもよい。
【0064】
通信制御部24は、インターネット等のネットワークに接続可能な通信インターフェース(図示せず)を用いて、各需要家の電力需給調整装置10との間でデータ通信を行う。具体的に、通信制御部24は、各需要家の電力需給調整装置10から送信される調整余力と需要削減プランとの組を受信する。また、通信制御部24は、需要削減量通知部23の制御に従い、各需要家の電力需給調整装置10に需要削減量を送信する。
【0065】
また、電力管理装置20は、CPU、ROM、RAM等のコンピュータ構成や、HDDやSSD等の記憶装置、インターネット等のネットワークに接続するためのインターフェース等を有する(何れも図示せず)。なお、上述した情報収集部21、需要削減量分配部22、需要削減量通知部23及び通信制御部24は、CPUとROM又は記憶装置に記憶された所定のプログラムとの協働により実現される形態としてもよいし、ハードウェア構成により実現される形態としてもよい。
【0066】
各需要家の電力需給調整装置10では、機器制御部16が需要削減量の通知を受け付けると、この需要削減量に基づいて電力消費機器ELが需要削減量を満たすような制御を行う。これにより、目標削減量が達成される。
【0067】
次に、上述した構成の電力管理システムの動作について説明する。ここで、図14は、第1の実施形態に係る電力管理システムの動作の一例を示すシーケンス図である。なお、図14では、二つの需要家(需要家A、B)を示しているが、その数は特に問わないものとする。
【0068】
まず、需要家A及び需要家Bの電力需給調整装置10では、調整余力及び需要削減プラン導出のための削減可能量導出処理が開始される(ステップS11、S12)。ここで、削減可能量導出処理を実行するタイミングは特に問わず、例えば、電力管理装置20から需要削減要求が通知されたタイミングや、所定の時間間隔(例えば、30分)毎に実行する形態としてもよい。以下、図15を参照して、削減可能量導出処理について説明する。
【0069】
図15は、削減可能量導出処理の手順を示すフローチャートである。まず、調整余力算出部11は、自己の装置が設けられた需要家の調整余力を算出する(ステップS21)。
【0070】
需要削減量算出部12は、制御区分毎に需要削減量を算出する(ステップS22)。次いで、人数計測部13は、各センサ機器SNからの出力に基づいて、各制御区分に存在する人の数を計測する(ステップS23)。なお、需要削減量算出部12で算出された各制御区分の需要削減量と、人数計測部13で計測された各制御区分の人数は、制御区分管理ファイル141が管理する制御区分管理ファイル141に格納される。
【0071】
続いて、需要削減プラン生成部15は、所定の影響指数に基づいて制御区分管理ファイル141に記憶された制御区分を順次組み合わせ、当該制御区分の各組により前記需要削減量の合計値を段階的に増加させた複数の需要削減プランを生成し(ステップS24)、本処理を終了する。
【0072】
なお、情報出力処理を実行するタイミングは特に問わず、例えば、電力管理装置20から調整余力及び需要削減プランの収集が通知された際に実行する形態としてもよいし、所定の時間間隔毎に実行する形態としてもよい。
【0073】
図14に戻り、需要家A及び需要家Bの各々では、通信制御部17が、削減可能量導出処理により得られた調整余力及び需要削減プランの組を電力管理装置20に送信する(ステップS13、S14)。
【0074】
一方、電力管理装置20では、需要家A及び需要家Bの電力需給調整装置10から送信された調整余力及び需要削減プランの組を、情報収集部21が収集すると、需要削減量分配部22は、これら収集された各需要家の調整余力及び需要削減プランに基づいて、需要削減量分配処理を実行する(ステップS15)。以下、図16を参照して、需要削減量分配処理について説明する。
【0075】
図16は、需要削減量分配処理の手順を示すフローチャートである。まず、需要削減量分配部22は、収集された各需要家の調整余力の合計値を算出する(ステップS31)。次に、需要削減量分配部22は、ステップS31で算出した合計値が、予め定められた目標削減量以上か否かを判定する(ステップS32)。ここで、調整余力の合計が目標削減量以上の場合(ステップS32;Yes)、需要削減量分配部22は、各需要から収集された調整余力の範囲内で、目標削減量を満たすよう需要削減量を各需要家に分配し(ステップS33)、本処理を終了する。
【0076】
また、調整余力の合計が目標削減量を下回る場合(ステップS32;No)、需要削減量分配部22は、各需要家から収集された需要削減プランを統合することで、統合需要削減プランを生成する(ステップS34)。次いで、需要削減量分配部22は、統合需要削減プランから、目標削減量の未達分を満たす需要削減プランを選択する(ステップS35)。そして、需要削減量分配部22は、ステップS34で選択した需要削減プランに含まれる需要削減量を、当該需要削減プランに対応する需要家に分配し(ステップS36)、本処理を終了する。
【0077】
図14に戻り、需要削減量通知部23は、需要削減量分配処理で各需要家に分配された需要削減量を、対応する需要家の電力需給調整装置10に通知する(ステップS16、S17)。なお、上述したように、需要削減プランが選択された場合には、その需要削減プラン又は当該需要削減プランを特定可能な識別子を通知してもよい。
【0078】
電力管理装置20から需要削減量の通知を受け取った機器制御部16では、この需要削減量に従い、各制御区分に設けられた電力消費機器ELが需要削減量を満たすような制御を行う(ステップS18、S19)。
【0079】
以上のように、本実施形態によれば、各需要家の調整余力の合計値が目標削減量に満たない場合に、各需要家で生成された需要削減プランに基づいて需要削減量を分配することができるため、電力需要の削減をより柔軟に行うことができる。また、各需要家の需要削減プランを用いることで、各需要者に与える影響の大きさ(影響指数)に基づいて需要削減量を分配することができるため、人の快適性・生産性を考慮しながら目標削減量を達成することができる。
【0080】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態では、需要家同士で調整余力の調整を行うことが可能な形態について説明する。なお、第1の実施形態と同様の要素については、同一の符号を付与し説明を省略する。
【0081】
図17は、第2の実施形態に係る電力需給調整装置10aの構成を示す図である。同図に示すように、電力需給調整装置10aは、調整余力算出部11と、需要削減量算出部12と、人数計測部13と、制御区分管理部14と、需要削減プラン生成部15と、機器制御部16と、通信制御部17と、調整余力調整部18とを備えている。
【0082】
ここで、調整余力調整部18は、通信制御部17を介して、他の需要家の調整余力調整部18とデータ通信を行い、当該他の需要家の調整余力調整と協働することで調整余力の調整を行う。
【0083】
具体的に、調整余力調整部18は、調整余力算出部11で算出された自己の需要家の調整余力が所定の基準値に到達しない場合、他の需要家の調整余力調整部18に調整余力の調整提案を送信する。ここで、調整提案には、代行を依頼する不足分の電力が含まれているものとする。また、調整提案に、代行より発生する報酬額(例えば、1[kWh]あたり100円等)を含めてもよい。
【0084】
一方、他の需要家(調整余力調整部18)から調整提案を受けた場合、調整余力調整部18は、調整余力算出部11を制御することで自己の需要家の調整余力を算出させ、算出された調整余力に応じて、調整提案を承認するか否かを判定する。調整提案を承認した場合、調整余力調整部18は、この調整提案を送信した他の需要家の調整余力調整部18に承認する旨を通知するとともに、自己の需要家の調整余力に調整提案で指示された電力を追加する。また、調整提案を拒否する場合、調整提案を送信した他の需要家の調整余力調整部18に拒否する旨を通知するものとする。
【0085】
調整提案を送信した調整余力調整部18では、承認の旨の通知を受け付けると、自己の需要家の調整余力をそのまま保持する。なお、調整提案が拒否された場合は、調整提案の送信を停止する形態としてもよいし、さらに他の需要家の調整余力調整部18に調整提案を送信する形態としてもよい。
【0086】
例として、各需要家(需要家A,B)は調整余力を100[kW]以上とする義務があるとする(不足した場合、1[kWh]あたり1000円のペナルティを支払う等)。ここで、需要家Aの調整余力算出部11が調整余力を算出し、その値が40[kW]となった場合、60[kW]の不足が生じることになる。そこで、需要家Aの調整余力調整部18は、需要家Bの調整余力調整部18に、不足分となる60[kW]の代行を依頼する調整提案を送信する。
【0087】
需要家Bの調整余力調整部18では、調整提案を受け付けると、自己の需要家の調整余力算出部11を制御し、調整余力を算出させる。調整余力調整部18は、算出された調整余力に基づいて、調整提案で依頼された60[kW]を代行することが可能か否かを判定し、可能と判定した場合に承認の旨の通知を需要家Aの調整余力調整部18に行う。なお、代行することが可能か否かの判定方法は、特に問わず、例えば、依頼された電力が算出された調整余力の所定の割合(例えば30%)以内である場合に可能と判定してもよいし、依頼された電力と算出された調整余力との合計値が所定の閾値以下である場合に可能と判定してもよい。また、調整提案に、報酬額が含まれる場合には、この報酬額が予め定められた基準額を充足するか否かに応じて、可能か否かを判定してもよい。
【0088】
ここで、需要家Bの調整余力調整部18は、調整提案を承認した場合、算出された調整余力に調整提案で依頼された60[kW]を加算する。また、承認の通知を受け付けた需要家Aの調整余力調整部18は、調整余力40[kW]を保持する。
【0089】
次に、上述した電力需給調整装置10aを有する電力管理システムの動作について説明する。ここで、図18は、第2の実施形態に係る電力管理システムの動作の一例を示すシーケンス図である。なお、図18では、二つの需要家(需要家A,B)を示しているが、その数は特に問わないものとする。
【0090】
まず、需要家Aにおいて、調整余力算出部11が調整余力を算出すると(ステップS41)。需要家Aの調整余力調整部18は、ステップS41で算出された調整余力と所定の基準値とを比較し、この基準値に調整余力が満たない場合、不足分の代行を依頼する調整提案を、需要家Bの調整余力調整部18に送信する(ステップS42)。
【0091】
ここで、ステップS41、S42の処理は、上述した削減可能量導出処理内で実行することが好ましい。具体的には、図15に示したステップS21(ステップS41)と連動してステップS42を実行することで、電力管理装置20への調整余力及び需要削減プランの送出に先がけて、当該調整余力の調整を行うことができる。なお、図18では、削減可能量導出処理の表記を省略している。
【0092】
一方、調整提案を受け付けた需要家Bの調整余力調整部18では、自己の需要家の調整余力算出部11に調整余力を算出させると(ステップS43)、算出された調整余力と調整提案で指示された電力とに基づき、代行することが可能か否かを判定する。ここで、代行することが可能と判定した場合、需要家Bの調整余力調整部18は、承認する旨を需要家Aの調整余力調整部18に送信する(ステップS44)。その後、需要家Bの調整余力調整部18は、自己の需要家の調整余力に調整提案で指示された電力を加算する。
【0093】
需要家Aの調整余力調整部18では、需要家Bの調整余力調整部18から承認する旨を受け付けると、自己の需要家の調整余力をそのまま保持する。そして、需要家A及び需要家Bでは、電力管理装置20からの要求等に応じて、調整後の調整余力を需要削減プランとともに電力管理装置20に送信する(ステップS45、S46)。
【0094】
電力管理装置20では、需要家A及び需要家Bの各々から送信された調整余力(及び需要削減プラン)を、情報収集部21が収集すると、需要削減量分配部22は、需要削減量分配処理を実行する(ステップS47)。なお、以降のステップS47〜S51の処理は、上述した第1の実施形態のステップS15〜S19と同様であるため説明を省略する。
【0095】
以上のように、本実施形態によれば、需要家間で調整余力を調整することで、自己の需要家での調整余力が所定の基準値に満たない場合等に、その調整余力の不足分を他の需要家に代行させることができるため、電力需要の削減をより柔軟に行うことができる。また、電力管理装置20への調整余力及び需要削減プランの送出に先がけて、当該調整余力の調整を行うことで、電力管理装置20側では調整後の調整余力に基づいて需要削減量を分配することができるため、電力需要の削減をより柔軟に行うことができる。
【0096】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせ、追加等を行うことができる。また、上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0097】
例えば、上記実施形態の電力管理システムでは、一の需要家内に一の電力需給調整装置10を設ける構成としたが、需要家内での電力需給調整装置10の個数はこれに限らないものとする。例えば、図19に示す電力管理システムのように、一の需要家内に存在するテナント毎に電力需給調整装置10を設ける構成としてもよい。また、図19に示すように、需要家内に電力管理装置20を設ける構成としてもよい。なお、図19は、電力管理システムの他の構成例を示す図である。
【0098】
また、図19の構成例では、テナント毎に調整余力算出部11、需要削減量算出部12及び需要削減プラン生成部15を備える構成としているが、これに限らず、調整余力算出部11、需要削減量算出部12及び需要削減プラン生成部15を需要家内に一つ備え、これらの機能部を用いて全テナントでの調整余力算出、需要削減量算出及び需要削減プラン生成を実施する構成としてもよい。また、この構成においては、電力管理装置20の需要削減量分配部22を、調整余力算出部11、需要削減量算出部12及び需要削減プラン生成部15と接続することで、一の需要家内において調整余力算出、需要削減量算出、需要削減プラン生成及び需要削減量の分配を実施する構成としてもよい。
【0099】
また、上記実施形態の電力需給調整装置10(10a)、電力管理装置20で実行されるプログラムは、各装置が備える記憶媒体に予め組み込んで提供するものとするが、これに限らず、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。さらに、記憶媒体は、コンピュータ或いは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LANやインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶又は一時記憶した記憶媒体も含まれる。
【0100】
また、上記実施形態の電力需給調整装置10(10a)、電力管理装置20で実行されるプログラムをインターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよく、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0101】
10、10a 電力需給調整装置
11 調整余力算出部
12 需要削減量算出部
13 人数計測部
14 制御区分管理部
141 制御区分管理ファイル
15 需要削減プラン生成部
16 機器制御部
17 通信制御部
18 調整余力調整部
20 電力管理装置
21 情報収集部
22 需要削減量分配部
23 需要削減量通知部
24 通信制御部
EL 電力消費機器
SN センサ機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気機器を有する需要家において、前記電気機器の電力制御単位となる制御区分毎に、当該制御区分の環境状態を示す環境情報を取得する環境情報取得手段と、
前記制御区分の各々で削減可能な電力を需要削減量として算出する需要削減量算出手段と、
前記制御区分各々の環境情報又は需要削減量を用いて、当該需要削減量の実施に伴う影響の大きさを示す影響指数を決定する影響指数決定手段と、
前記影響指数に基づいて前記制御区分を組み合わせ、当該制御区分の各組により前記需要削減量の合計値を段階的に増加させた複数の需要削減プランを生成する需要削減プラン生成手段と、
前記複数の需要削減プランのうち、外部装置により選択された需要削減プランに含まれる各制御区分の需要削減量に従って、当該制御区分に属する前記電気機器を制御する機器制御手段と、
を備える電力需給調整装置。
【請求項2】
前記影響指数決定手段は、前記環境情報又は需要削減量を所定の尺度でレベル分けすることで、前記影響指数を決定する請求項1に記載の電力需給調整装置。
【請求項3】
前記環境情報取得手段は、前記環境情報として前記制御区分の各々に係る人数を取得し、
前記影響指数決定手段は、前記人数そのもの又は当該人数を所定の尺度でレベル分けした値を、前記影響指数と決定する請求項2に記載の電力需給調整装置。
【請求項4】
前記環境情報取得手段は、前記環境情報として前記制御区分の各々に係る温度、湿度及び照度の何れか又は全てを取得し、
前記影響指数決定手段は、前記制御区分各々の温度、湿度及び照度の何れかを用いて、前記影響指数を決定する請求項1〜3の何れか一項に記載の電力需給調整装置。
【請求項5】
前記需要削減プラン生成手段は、前記影響指数が少ない制御区分から順に組み合わせて前記需要削減プランを生成する請求項1〜4の何れか一項に記載の電力需給調整装置。
【請求項6】
前記環境情報取得手段が取得した環境情報と、前記需要削減量算出手段が算出した需要削減量とを関連付けて所定期間分記憶する記憶手段を更に備え、
前記需要削減プラン生成手段は、前記記憶手段に記憶された過去の環境情報及び需要削減量から、前記制御区分各々の将来の環境情報及び需要削減量を予測し、この予測した環境情報及び需要削減量に基づいて前記需要削減プランを生成する請求項1〜5の何れか一項に記載の電力需給調整装置。
【請求項7】
前記需要家で削減可能な電力を示す調整余力を算出する調整余力算出手段を更に備え、
前記需要削減プラン生成手段は、少なくとも前記調整余力を上回る需要削減量を実現可能な需要削減プランを生成し、
前記機器制御手段は、外部装置により前記調整余力に基づき分配された需要削減量又は前記選択された需要削減プランに含まれる各制御区分の需要削減量に従って、前記電気機器を制御する請求項1〜6の何れか一項に記載の電力需給調整装置。
【請求項8】
他の電力需給調整装置との間で前記調整余力の調整を行う調整手段を更に備え、
前記調整手段は、前記他の電力需給調整装置から電力削減の代行が依頼された場合、前記調整余力算出手段で算出された自装置の調整余力に応じて、前記代行を承認するか否かを決定する請求項7に記載の電力需給調整装置。
【請求項9】
前記調整手段は、前記調整余力算出手段で算出された自装置の調整余力が、所定の目標需要削減量に達しない場合、この目標需要削減量の不足分の電力の削減を、他の電力需給調整装置に依頼する請求項8に記載の電力需給調整装置。
【請求項10】
複数の電力需給調整装置と、電力管理装置とを含む電力管理システムであって、
前記電力需給調整装置の各々は、複数の電気機器を有する需要家において、前記電気機器の電力制御単位となる制御区分毎に、当該制御区分の環境状態を示す環境情報を取得する環境情報取得手段と、前記制御区分の各々で削減可能な電力を需要削減量として算出する需要削減量算出手段と、前記制御区分各々の環境情報又は需要削減量を用いて、当該需要削減量の実施に伴う影響の大きさを示す影響指数を決定する影響指数決定手段と、前記影響指数に基づいて前記制御区分を複数組み合わせ、当該制御区分の各組により前記需要削減量の合計値を段階的に増加させた複数の需要削減プランを生成する需要削減プラン生成手段と、前記複数の需要削減プランのうち、前記電力管理装置から通知される需要削減プランに含まれた各制御区分の需要削減量に従って、当該制御区分に属する前記電気機器を制御する機器制御手段と、
を備え、
前記電力管理装置は、前記電力需給調整装置の各々で生成された需要削減プランから、所定の目標需要削減量を満たす需要削減プランを選択する選択手段と、前記選択手段により選択された需要削減プランを、対応する前記電力需給調整装置に通知する通知手段と、
を備える電力管理システム。
【請求項11】
前記選択手段は、前記電力需給調整装置の各々で生成された需要削減プランのうち、標需要削減量を満たし、且つ当該需要削減プランに係る前記影響指数が最小となる需要削減プランの組を選択する請求項10に記載の電力管理システム。
【請求項12】
前記電力需給調整装置の各々は、自己の需要家で削減可能な電力を示す調整余力を算出する調整余力算出手段を更に備え、
前記需要削減プラン生成手段は、少なくとも前記調整余力を上回る需要削減量を実現可能な需要削減プランを生成し、
前記選択手段は、前記力需給調整装置の各々で算出された調整余力の合計値が前記目標需要削減量以上の場合に、当該合計値の範囲内で前記電力需給調整装置の各々に需要削減量を分配し、前記合計値が前記目標需要削減量未満の場合に、前記電力需給調整装置の各々で生成された需要削減プランから、所定の目標需要削減量を満たす需要削減プランを選択し、
前記通知手段は、前記選択手段で分配された需要削減量又は選択された需要削減プランを、対応する前記電力需給調整装置に通知し、
前記機器制御手段は、前記機器制御手段から通知される需要削減量又は需要削減プランに含まれる各制御区分の需要削減量に従って、前記電気機器を制御する請求項10又は11に記載の電力管理システム。
【請求項13】
前記電力管理装置は、前記選択手段で選択された需要削減プランに係る影響指数に応じて、当該需要削減プランに対応する前記電力需給調整装置の需要家にインセンティブ又はペナルティを付与する付与手段を更に備える請求項10〜12の何れか一項に記載の電力管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−99141(P2013−99141A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240510(P2011−240510)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】