電動工具
【課題】簡易機構により出力部を回転不能にできる電動工具を提供する。
【解決手段】モーター2により回転駆動する出力部を備える。内周部に出力部の外周部に係合可能なスプライン部32が形成されたロックリング30を備える。スイッチ5を備える。スイッチ5の動作に応じてロックリング30をスプライン部32が出力部の外周部との係合が外れたアンロック位置から出力部の外周部に係合して出力部を回転不能にするロック位置まで移動させる連動機構を備える。
【解決手段】モーター2により回転駆動する出力部を備える。内周部に出力部の外周部に係合可能なスプライン部32が形成されたロックリング30を備える。スイッチ5を備える。スイッチ5の動作に応じてロックリング30をスプライン部32が出力部の外周部との係合が外れたアンロック位置から出力部の外周部に係合して出力部を回転不能にするロック位置まで移動させる連動機構を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力部に設けられた先端工具を用いて手動でねじ締めを行う電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハンマーとアンビルを備え、電動モーターによりハンマーを回転させ、このハンマーによってアンビルを打撃することで、アンビルに装着されたねじ締めビットに衝撃的なトルクを付加するインパクト式のねじ締め機が開示されている。このねじ締め機は、アンビルをねじ締め機の本体ケースに対して回転不能にするロック機構を備えており、アンビルをロックすることでアンビルに装着された状態のねじ締めビットを用いて手動でねじの増し締めを行うことができる。
【0003】
前記ロック機構では、本体ケースに固定した係合リングの内周側にアンビルが配置され、係合リングとアンビルの周面に設けられた平坦な逃がし面との間に円柱状の係合部材が配置されている。係合部材は、アンビルに対して本体ケースを相対的に回動したとき、係合リングとの摩擦により係合リングと逃がし面の端部との間に移動して食い込むようになっており、これによりアンビルは本体ケースに対して回転不能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−283471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、上記のようにアンビルを回転不能にするために、アンビルに対して本体ケースを回動した際に、係合部材を係合リングと逃がし面の端部との間に食い込む位置に移動させる必要がある。しかし、このように係合部材を係合リングとアンビルの狭い隙間において移動させるには、高精度の係合リング、係合部材、及びアンビルが必要となる。また、これらを正確に位置決めして配置する必要があるため、他の部品も高い寸法精度が要求され、高精度の部品が多く必要となってコストが増すことが懸念される。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、簡易機構により出力部を回転不能にできる電動工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の電動工具は、モーターにより回転駆動する出力部と、内周部に前記出力部の外周部に係合可能なスプライン部が形成されたロックリングと、スイッチと、このスイッチの動作に応じて前記ロックリングを前記スプライン部が前記出力部の外周部との係合が外れたアンロック位置から前記出力部の外周部に係合して前記出力部を回転不能にするロック位置まで移動させる連動機構を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、前記スイッチは前記モーターのON・OFFを切り替える駆動スイッチであり、前記連動機構は、前記スイッチと前記ロックリングを連結し、前記スイッチのON側への動作に応じて前記ロックリングを前記アンロック位置にまで移動させると共に、前記スイッチのOFF側への動作に応じて前記ロックリングを前記ロック位置にまで移動させるものであることが好ましい。
【0009】
また、前記スイッチが、前記モーターを正回転させる正回転位置と、前記モーターを逆回転させる逆回転位置と、前記正回転位置と前記逆回転位置の間に位置して前記モーターをOFFにする中間位置とに切り替え可能なシーソースイッチであることが好ましい。
【0010】
また、前記スイッチが前記モーターの駆動を制御するトリガースイッチであることが好ましい。
【0011】
また、ハンマー及びアンビルを有するインパクト機構を具備し、前記モーターにより前記ハンマーを回転駆動し、このハンマーによって前記アンビルを打撃して前記アンビルの軸部に保持された先端工具に回転力を伝達する電動工具であって、前記軸部の外周面に係合部が形成され、前記ロックリングは前記スプライン部を前記係合部に係合させて前記アンビルを回転不能にするものであることが好ましい。
【0012】
また、ハンマー及びアンビルを有するインパクト機構を具備し、前記モーターの動力により前記ハンマーを回転駆動し、このハンマーによって前記アンビルを打撃して前記アンビルの軸部に保持された先端工具に回転力を伝達する電動工具であって、前記アンビルに外周側に突出して前記ハンマーの打撃を受けるアンビル爪が形成され、前記ロックリングは前記スプライン部を前記アンビル爪に係合させて前記アンビルを回転不能にするものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明にあっては、簡易機構により出力部を回転不能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第一実施形態の電動工具の断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】同上の電動工具のロックリングをロック位置に配置した状態を示す要部断面図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】同上のシーソースイッチを中間位置に配置したときのシーソースイッチと連結部材を示し、(a)は正面図であり、(b)は平面図である。
【図6】同上のシーソースイッチを正回転位置に配置したときのシーソースイッチと連結部材を示し、(a)は正面図であり、(b)は平面図である。
【図7】同上のシーソースイッチを逆回転位置に配置したときのシーソースイッチと連結部材を示し、(a)は正面図であり、(b)は平面図である。
【図8】第二実施形態の電動工具を示す要部断面図である。
【図9】図8のC−C断面においてロックリングとアンビル爪の係合状態を示す断面図である。
【図10】同上の中間位置に配置したシーソースイッチの平面図である。
【図11】第三実施形態の電動工具の要部断面図である。
【図12】同上の電動工具の要部断面図である。
【図13】同上のトリガースイッチ、連結部材、ロックリング、アンビル、及び筒体を示す断面図である。
【図14】同上のトリガースイッチを引き込んだときの電動工具の要部断面図である。
【図15】同上の電動工具の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
(第一実施形態)
図1乃至図7に示す第一実施形態の電動工具1は、ハンマー3及びアンビル4を有するインパクト機構を具備したインパクト回転工具である。
【0017】
図1に示すように、電動工具1の外殻は、略筒状のケーシング8と、一端部がケーシング8の端部に回動可能に連結された略筒状のグリップ7とで構成されている。使用時に把持されるグリップ7は、前記ケーシング8に対する回動により、ケーシング8と一直線上に並べて配置したり、図1に示すようにケーシング8に対して交差する方向に突出させたりすることができる。以下、ケーシング8の軸方向を前後方向とし、ケーシング8のグリップ7を連結した側を後側とし、また、前記グリップ7の回動軸方向を左右方向として説明する。
【0018】
ケーシング8には、モーター2、減速機構9、及びインパクト機構が後側から前側に向かって順に内装されている。グリップ7の内部には電源となる電池パック6が設けられている。
【0019】
モーター2は、ケーシング8の後端部に設けられたスイッチ5を介して電池パック6に電気的に接続されており、これにより電池パック6から電力が供給される。スイッチ5を切り替えることで、モーター2のON・OFFを切り替え可能となっている。
【0020】
スイッチ5はシーソースイッチ10であり、図5に示すように正面視円形のスイッチ本体39と、スイッチ本体39の外周面に沿う略円弧状でスイッチ本体39に揺動可能に支持された操作体40を有している。操作体40はスイッチ本体39に対して揺動することで、スイッチ本体39の外周面に沿って上下に移動可能となっている。略円弧状の操作体40の周方向における中央部には外側に突出してケーシング8の外面に露出する操作部41が形成されている。
【0021】
操作体40は、操作部41を手動で操作することにより、図6に示す正回転位置と、図7に示す逆回転位置と、正回転位置と逆回転位置の間の図5に示す中間位置とに移動可能である。操作体40を正回転位置に移動させた場合、モーター2の出力軸15が正回転し、電動工具1の出力部を構成するアンビル4がねじを締める方向に回転する。操作体40を逆回転位置に移動させた場合、モーター2の出力軸15が逆回転し、アンビル4がねじを緩める方向に回転する。また、操作体40を中立状態となる中間位置に移動させた場合、モーター2が停止される。
【0022】
モーター2の動力は図3等に示される減速機構9で減速されてハンマー3に伝達される。本実施形態の減速機構9は遊星歯車機構であり、サンギア11、プラネットギア12、リングギア13、及びキャリア14を有している。
【0023】
サンギア11はモーター2の出力軸15に固定され、出力軸15と共に回転する。リングギア13はケーシング8に対して回転不能に固定され、サンギア11の周囲に配置されている。プラネットギア12はサンギア11とリングギア13の間に配置され、サンギア11の周方向に複数設けられている。各プラネットギア12は、サンギア11及びリングギア13の両者と噛み合い、サンギア11の回転に伴いサンギア11を中心に公転しつつ自転する。各プラネットギア12はその自転中心となる中心部に設けられた連結ピン18を介して回転自在にキャリア14に連結されている。
【0024】
キャリア14は、前記複数のプラネットギア12の公転に伴い、サンギア11の回転中心軸と同心で回転する。キャリア14の回転中心となる中心部には前方に突出する駆動軸部19が形成されている。駆動軸部19はハンマー3の中心部に形成された前後方向に貫通する孔20に回転可能に挿入されている。
【0025】
駆動軸部19の外周面にはキャリア側カム溝22が形成されている。ハンマー3の孔20の内周面において各キャリア側カム溝22に対応する箇所にはハンマー側カム溝23が形成されている。各ハンマー側カム溝23には対応するキャリア側カム溝22に片側略半部を嵌め込んだ鋼球21の他側略半部が嵌め込まれ、これによりハンマー3は複数の鋼球21を介して駆動軸部19に連結されている。
【0026】
各キャリア側カム溝22は後側に開いたV字状に形成されている。各鋼球21はこのV字状のキャリア側カム溝22内において移動可能であり、これによりハンマー3は、駆動軸部19に対する回動に伴い、キャリア側カム溝22のガイドによって前後方向に移動するようになっている。
【0027】
ハンマー3とこの後方に位置するキャリア14の後端部の間には、ハンマー3を前方のアンビル4側に付勢する付勢手段としてばね24が設けられており、このばね24とハンマー3とアンビル4によりインパクト機構が構成されている。
【0028】
モーター2の停止時には、ハンマー3はばね24の付勢力により図3に示す前進位置に配置されるように設定されており、このとき各鋼球21はキャリア側カム溝22の前端部に配置される。この状態からハンマー3がキャリア14の駆動軸部19に対して回動すると、各鋼球21はキャリア側カム溝22内における後側に移動し、これら鋼球21のガイドによりハンマー3は、ばね24の弾性力に抗って駆動軸部19に対して後退する。また、ハンマー3の駆動軸部19に対するトルクが小さくなると、ばね24の弾性力によりハンマー3が前進位置に復帰し、同時に各鋼球21がキャリア側カム溝22の前端部に移動する。
【0029】
アンビル4は前方に突出する軸部16を有している。軸部16の前端部はケーシング8の前端部で回転自在に支持されている。また、軸部16の後端面中心部には挿入穴27が形成され、挿入穴27にはキャリア14の駆動軸部19の中心部から前方に突出した軸支部28が回転自在に挿入され、この軸支部28によりアンビル4はキャリア14に軸支されている。このようにしてアンビル4はキャリア14の回転軸と同心で回転可能に設けられている。なお、アンビル4の前後方向の移動は規制されている。
【0030】
アンビル4は、軸部16の後端部から外周側に向けて一体に突出するアンビル爪26を有している。アンビル爪26は軸部16の周方向に複数形成されている。一方、ハンマー3には前方に突出するハンマー爪25が形成されており、ハンマー爪25はハンマー3の周方向にアンビル爪26と同数形成されている。なお、ハンマー爪25の数とアンビル爪26の数は異なってもよい。
【0031】
図1に示すようにハンマー3が前進位置にあるとき、各ハンマー爪25は各アンビル爪26と前後方向において同位置に配置され、アンビル爪26の側面に当接可能な状態となる。
【0032】
アンビル4の軸部16の前端部には、ケーシング8の前端部から前方に突出するチャック機構17が設けられている。チャック機構17には図示しないドライバービット等の先端工具が着脱自在に装着され、これにより先端工具はアンビル4に保持される。
【0033】
電動工具1を用いてねじやナット等を締めるには、チャック機構17に先端工具を装着した状態で、シーソースイッチ10を正回転位置に切り替える。このようにすると、モーター2の出力軸15は正回転し、減速機構9のキャリア14と共に前記前進位置にあるハンマー3が正回転する。これにより各ハンマー爪25がアンビル爪26の側面に係合して当該ハンマー3と共にアンビル4及び先端工具がねじやナットを締める方向に回転する。
【0034】
ねじやナットを緩める際には、シーソースイッチ10を逆回転位置に切り替える。このようにすると、モーター2の出力軸15は逆回転し、減速機構9のキャリア14と共に前進位置にあるハンマー3が逆回転する。これにより各ハンマー爪25がアンビル爪26の側面に係合して当該ハンマー3と共にアンビル4及び先端工具がねじやナットを緩める方向に回転する。
【0035】
上記モーター2の駆動時においてねじやナットから先端工具を介してアンビル4に加わる負荷が大きくなると、各ハンマー爪25がアンビル爪26を乗り越えてアンビル爪26との係合が外れ、ハンマー3はばね24に抗って後退する。このようにハンマー3が後退してアンビル4との係合が外れると、ハンマー3はばね24の弾性力により前進に転じる。そして、ハンマー3が前進位置まで前進すると、キャリア14と共に回転するハンマー3の各ハンマー爪25によってアンビル爪26の側面が打撃され、これによりアンビル4には強い回転力が伝えられ、さらにこの回転力は先端工具に伝達される。以後、アンビル4に加わる負荷が大きくなる度に前記ハンマー3によるアンビル4の打撃がなされ、これにより間欠的に発生する衝撃的なトルクによりねじやナットを締めたり緩めたりすることができる。
【0036】
電動工具1は、モーター2の停止時において出力部であるアンビル4を回転不能にするロック機構を具備している。このロック機構を設けることで、前記アンビル4に装着された先端工具を用い、手回しドライバーと同様にグリップ7を把持して手動でケーシング8を回転してねじの増し締め等の作業を行うことができる。
【0037】
ロック機構は、シーソースイッチ10の操作体40がOFF側(すなわち中間位置側)に切り替えられた際にアンビル4を回転不能にし、操作体40がON側(すなわち正回転位置及び逆回転位置)に切り替えられた際にアンビル4を回転可能にする。
【0038】
ロック機構は、アンビル4に係合可能なロックリング30と、シーソースイッチ10の動作に応じてロックリング30をアンビル4に係合するロック位置とアンビル4に係合しないアンロック位置とに移動させる連動機構で構成されている。
【0039】
ロックリング30は図4に示されるように外周面が大略矩形状で非円形となった環状に形成されており、ケーシング8の内周面に形成された保持部33に回転不能且つ前後方向に移動自在に嵌め込まれている。
【0040】
ロックリング30はアンビル4の軸部16を囲む位置に前後方向に移動可能に設けられており、ロックリング30の内周面には周方向に亘ってスプライン部32が形成されている。スプライン部32は、ロックリング30の内周面に周方向に複数条形成した山形の歯部31で構成されている。スプライン部32の内方に突出する各歯部31の頂面及びこれら歯部31間に形成される各凹部37の奥面は正面視円弧状に形成されており、歯部31の頂面と凹部37の奥面は稜線なく滑らかに接続されている。
【0041】
図1に示すようにアンビル4の軸部16においてアンビル爪26より前方に位置する部分の外周面には、外周側に突出する鍔状の係合部34が周方向に亘って一体に形成されている。図4に示すように係合部34の外周端面には、ロックリング30のスプライン部32に係合可能なスプライン部35が周方向に亘って形成されている。このスプライン部35も、係合部34の外周面に周方向に複数条形成した山形の歯部36で構成されており、各歯部36の頂面及びこれら歯部36間に形成される各凹部44の奥面は正面視円弧状に形成されて滑らかに接続されている。なお、スプライン部32、35の形状は上記に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。
【0042】
ロックリング30は、図4に示すように、スプライン部32を構成する多数の歯部31を、アンビル4のスプライン部35を構成する多数の歯部36の間に形成された凹部44に嵌合して噛み合わせることにより、アンビル4に係合する。これによりアンビル4は回転不能になる。
【0043】
連動機構は、図1に示すようにロックリング30とシーソースイッチ10の操作体40とを連結して、操作体40の動作をロックリング30に機械的に伝達してロックリング30を移動させる連結部材38で構成されている。
【0044】
連結部材38はケーシング8内の上下に設けられており、各連結部材38は前後方向に移動自在となっている。棒状に形成された各連結部材38は、一端部がシーソースイッチ10の操作体40に連結され、他端部がロックリング30に接続されている。
【0045】
図5(b)に示すように、各連結部材38が連結されるシーソースイッチ10は、円弧状の操作体40の周方向の両側部分に、後側に開いたV字状のガイド溝42が形成されている。各連結部材38の後端部は上下方向に直角に曲げられた被挿入部43としてあり、各連結部材38の被挿入部43は対応するガイド溝42にスライド自在に挿入されている。
【0046】
図6や図7に示すように、シーソースイッチ10の操作体40がON側(すなわち正回転位置及び逆回転位置)にあるとき、各連結部材38の被挿入部43はガイド溝42の後端部に位置し、このとき各連結部材38は図1に示す後退位置に配置される。各連結部材38が後退位置に配置された状態では、ロックリング30は、アンビル4の係合部34よりも後方にずれたアンロック位置に配置される。このようにロックリング30をアンロック位置に配置した状態では、スプライン部32がアンビル4のスプライン部35に係合せず、アンビル4は回転可能となる。
【0047】
上記のようにON側に配置した操作体40を図5に示すようにOFF側(すなわち中間位置)に移動すると、各連結部材38の被挿入部43はガイド溝42のガイドのもとガイド溝42の前端部に移動し、各連結部材38は図3に示す前進位置に配置される。この状態では、ロックリング30はアンビル4の係合部34と前後方向において重なるロック位置に配置され、スプライン部32がアンビル4のスプライン部35に係合してアンビル4は回転不能になる。
【0048】
図5に示すOFF側に配置した操作体40を図6や図7に示すON側に移動すると、各連結部材38の被挿入部43はガイド溝42の後端部に移動し、各連結部材38は後退位置に移動し、ロックリング30はアンロック位置に移動する。
【0049】
また、上記のように操作体40をON側に移動した際には、ロックリング30とアンビル4の係合が解除された後に、スイッチ本体39の接点が導通状態に切り替わり、モーター2が駆動するように設定されている。
【0050】
以上説明した本実施形態の電動工具1は、モーター2により回転駆動する出力部(アンビル4)と、内周部に出力部の外周部に係合可能なスプライン部32が形成されたロックリング30と、スイッチ5を備えている。さらに、スイッチ5の動作に応じてロックリング30をスプライン部32が出力部の外周部との係合が外れたアンロック位置から出力部の外周部に係合して出力部を回転不能にするロック位置まで移動させる連動機構(連結部材38)を備えている。この構成により、ロックリング30のスプライン部32を出力部の外周部に係合してアンビル4を回転不能にし、この電動工具1を回転させることで、出力部に保持された先端工具を用いてねじの増し締め等を行うことができる。また、このロック機構は、ロックリング30のスプライン部32を出力部の外周部に係合させる簡易構造であり、高精度の部品を多数必要とせず、コストを抑えることができる。
【0051】
また、本実施形態の連動機構(連結部材38)は、モーター2の駆動スイッチとして機能するスイッチ5とロックリング30を連結するものである。この連動機構は、スイッチ5のON側への動作に応じてロックリング30をアンロック位置にまで移動させると共に、スイッチ5のOFF側への動作に応じてロックリング30をロック位置にまで移動させる。この構成により、モーター2を駆動するためにスイッチ5をON側に切り替えるだけで、ロックリング30を自動的にアンロック位置に移動させて出力部を回転可能にできる。また、モーター2を停止するためにスイッチ5をOFF側に切り替えるだけで、ロックリング30を自動的にロック位置に移動させて出力部を回転不能にできる。つまり、電動で電動工具1を使用する場合も手動で電動工具1を使用する場合も、ロックリング30を移動させるための操作を別途する必要がなく、操作性が向上する。
【0052】
また、本実施形態のスイッチ5は、モーター2を正回転させる正回転位置と、モーター2を逆回転させる逆回転位置と、正回転位置と逆回転位置の間に位置してモーター2をOFFにする中間位置とに切り替え可能なシーソースイッチ10である。すなわち、本実施形態では、このようなシーソースイッチ10を採用した電動工具1において、簡易機構により出力部を回転不能にすることができる。
【0053】
また、電動工具1は、ハンマー3及びアンビル4を有するインパクト機構を具備し、モーター2によりハンマー3を回転駆動し、このハンマー3によってアンビル4を打撃してアンビル4の軸部16に保持された先端工具に回転力を伝達する電動工具である。そして、本実施形態では、アンビル4側においては、軸部16の外周面にロックリング30のスプライン部32が係合される係合部34を形成するだけで、インパクト式の電動工具1において出力部であるアンビル4をロックするロック機構を設けることができる。また、係合部34を本実施形態のように軸部16の周方向に亘って設けて、係合部34の外周面に亘ってスプライン部35を形成することも可能になる。この場合、ロックリング30をアンビル4にしっかりと係合させてアンビル4を回転不能にでき、前述した手動によるねじ締め等の作業をより強い力で行うことが可能になる。
【0054】
(第二実施形態)
次に第二実施形態について説明する。なお、以下では第一実施形態と同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0055】
図8乃至図10に示す本実施形態の電動工具1は、アンビル4に係合部34が形成されておらず、ロックリング30のスプライン部32はアンビル爪26に係合してアンビル4を回転不能にするようになっている。
【0056】
図9に示すように、アンビル4の軸部16から外周側に突出する各アンビル爪26の先端面には、ロックリング30のスプライン部32を係合可能な係合部45が形成されている。各係合部45は、アンビル爪26の幅方向に複数条形成した歯部46で構成されている。また、ロックリング30のスプライン部32をアンビル爪26の係合部45に係合したときに、確実にアンビル4を回転不能にするため、スプライン部32の歯部31と各係合部45の歯部46は角のある台形状に形成されている。
【0057】
なお、スプライン部32の歯部31と各係合部45の歯部46の形状は前記台形状に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。また、本実施形態のロックリング30は図9に示すように外周面を円形に形成してあるが、勿論、ロックリング30はケーシング8に対して回動不能に設けられている。また、本実施形態のロックリング30の外周面は、第一実施形態と同様に非円形とすることで、ケーシング8に対して回転不能にしてもよい。
【0058】
図10に示すように、シーソースイッチ10の操作体40において、各連結部材38の被挿入部43が挿入されるガイド溝42は前側に開いたV字状に形成されている。すなわち、操作体40をON側(すなわち正回転位置及び逆回転位置)に配置したとき、各連結部材38の被挿入部43は図10に示すようにガイド溝42の前端部に位置し、各連結部材38は図8に示す前進位置に配置される。この状態のロックリング30は、アンビル爪26よりも前方にずれた位置、すなわちアンビル4が回転可能となるアンロック位置に配置される。
【0059】
操作体40をON側に配置した状態で、操作体40をOFF側(すなわち中間位置側)に移動すると、各連結部材38の被挿入部43はガイド溝42の後端部に移動し、各連結部材38は後退位置に配置される。この状態のロックリング30は、アンビル爪26と前後方向において重なる位置、すなわち、スプライン部32の周方向の一部が各アンビル爪26の係合部45に係合してアンビル4を回転不能にするロック位置に配置される。
【0060】
本実施形態では、ロックリング30のスプライン部32がアンビル爪26に係合してアンビル4を回転不能にする。このため、アンビル4にはスプライン部32を係合させるために第一実施形態の係合部34のような部分を形成する必要がなく、アンビル4を簡易形状にできる。
【0061】
(第三実施形態)
次に第三実施形態について説明する。なお、以下では第一実施形態と同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0062】
図11乃至図15に示す本実施形態の電動工具1は、モーター2の駆動を制御するスイッチ5が、モーター2の回転速度を変更するトリガースイッチ48で構成されている。
【0063】
図11等に示すように、トリガースイッチ48は、ケーシング8とグリップ7で構成された電動工具1の外殻となるハウジング47において、グリップ7に設けられている。なお、本実施形態のグリップ7はケーシング8からケーシング8の軸方向に対して交差する下側に向けて突出しており、ケーシング8に対して固定的に設けられている。
【0064】
トリガースイッチ48は、グリップ7の上端部に内装したスイッチ本体49と、グリップ7の上端部から前方に突出する操作体50で構成されている。
【0065】
操作体50はグリップ7に対して所定範囲内において前後方向に移動可能に設けられている。操作体50はスイッチ本体49に設けられた付勢手段(不図示)により前方に押圧されており、非操作時には図11及び図12に示す前進位置に配置され、モーター2はOFFとなる。操作体50をグリップ7を握る手の指で前記付勢手段に抗って図14及び図15に示すように後方に引き込むことにより、スイッチ本体49が動作してモーター2が駆動する。また、この際のスイッチ本体49の引き込み量が大きくなる程モーター2の回転速度が速くなるようになっている。
【0066】
ロック機構は、操作体50が前進位置にあってトリガースイッチ48がOFF側に切り替えられる際にアンビル4を回転不能にし、操作体50が引き込まれてトリガースイッチ48がON側に切り替えられた際にアンビル4を回転可能にする。
【0067】
本実施形態のアンビル4は、第二実施形態と同様に、各アンビル爪26の先端面に係合部45が形成されており、第一実施形態における係合部34は形成されていない。すなわち、本実施形態のロック機構が有するロックリング30は、スプライン部32をアンビル爪26に係合させてアンビル4を回転不能にする。また、ロックリング30はケーシング8の内部に設けられた円筒状の筒体52の内周面に沿って前後方向に移動自在に収納されている。
【0068】
ロック機構が有する連動機構は、ロックリング30とトリガースイッチ48の操作体50とを連結して、操作体50の動作をロックリング30に機械的に伝達してロックリング30を移動させる連結部材51で構成されている。
【0069】
連結部材51はケーシング8の内部に前後方向に移動自在に設けられており、ロックリング30に取り付けられる被取付体53と、一端部が被取付体53に連結されると共に他端部がトリガースイッチ48の操作体50に連結される棒状の連結体54とで構成されている。
【0070】
被取付体53は図13に示すように正面視半円弧状に形成され、前記ロックリング30を収納した筒体52の下部外周面に沿って前後方向に移動可能に設けられている。なお、図13に示すロックリング30は外周面を円形に形成してあるが、勿論、ロックリング30はケーシング8に対して回動不能に設けられている。なお、ロックリング30の外周面を第一実施形態と非円形に形成し、筒体52の内周面をロックリング30の外周面に合致する形状とし、これによりロックリング30を回転不能にしてもよい。
【0071】
被取付体53の周方向の両端部の夫々には、筒体52に形成した前後方向に伸びる長孔56(図12参照)を通して筒体52内に突出するピン55が設けられている。各ピン55は筒体52内部のロックリング30に連結され、これにより被取付体53はロックリング30に取り付けられている。連結体54は前端部が被取付体53の下端部に連結されており、連結体54の後端部は下方に折曲されてトリガースイッチ48の操作体50に連結されている。
【0072】
図11及び図12に示すように、トリガースイッチ48の操作体50が前進位置にあるとき、連結部材51は前進位置に配置され、各ピン55は長孔56の前端部に配置される。この状態のロックリング30は、アンビル爪26と前後方向において重なる位置、すなわち、スプライン部32の周方向の一部が各アンビル爪26に係合してアンビル4を回転不能にするロック位置に配置される。
【0073】
前進位置にある操作体50を図14及び図15に示すように後方に引き込むと、連結部材51は後退位置に配置され、各ピン55は長孔56の後端部に配置される。この状態のロックリング30は、アンビル爪26よりも後方にずれた位置、すなわちアンビル4を回転可能にするアンロック位置に配置される。
【0074】
また、前記操作体50の引き込みを解除する又は引き込み力を弱めると、前記付勢手段により操作体50は前進位置まで前進し、連結部材51は前進位置に移動し、ロックリング30はロック位置に移動する。
【0075】
なお、前記操作体50を引き込んだ際には、ロックリング30とアンビル4の係合が解除された後に、スイッチ本体49の接点が導通状態に切り替わり、モーター2が駆動するように設定されている。
【0076】
本実施形態のスイッチ5は、モーター2の駆動を制御するトリガースイッチ48であり、本実施形態ではこのようなトリガースイッチ48を採用した電動工具1において、簡易機構により出力部(アンビル4)を回転不能にすることができる。
【0077】
なお、本実施形態では、ロックリング30をアンビル爪26に係合するようにしたが、第一実施形態と同様にアンビル4の軸部16に係合するようにしてもかまわない。
【0078】
また、前記各実施形態においては、モーター2のON・OFFを切り替えるスイッチ5とは別にスイッチを設け、このスイッチを操作してロックリング30をロック位置及びアンロック位置に切り替えられるようにしてもよい。また、前記各実施形態においては、スイッチ5の動作を電気的に検知し、この検知結果に基づいてロックリング30をロック位置及びアンロック位置に切り替える連動機構を設けてもよい。また、本発明はインパクト機構を具備しない電動ドリル等にも適用可能である。すなわち、この場合、モーターにより回転駆動し、先端工具を保持する出力軸部を前記各実施形態と同様の構成のロックリングを用いて回転不能にすればよい。
【符号の説明】
【0079】
1 電動工具
2 モーター
3 ハンマー
4 アンビル
5 スイッチ
10 シーソースイッチ
16 軸部
26 アンビル爪
30 ロックリング
32 スプライン部
34 係合部
38 連結部材
48 トリガースイッチ
51 連結部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力部に設けられた先端工具を用いて手動でねじ締めを行う電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハンマーとアンビルを備え、電動モーターによりハンマーを回転させ、このハンマーによってアンビルを打撃することで、アンビルに装着されたねじ締めビットに衝撃的なトルクを付加するインパクト式のねじ締め機が開示されている。このねじ締め機は、アンビルをねじ締め機の本体ケースに対して回転不能にするロック機構を備えており、アンビルをロックすることでアンビルに装着された状態のねじ締めビットを用いて手動でねじの増し締めを行うことができる。
【0003】
前記ロック機構では、本体ケースに固定した係合リングの内周側にアンビルが配置され、係合リングとアンビルの周面に設けられた平坦な逃がし面との間に円柱状の係合部材が配置されている。係合部材は、アンビルに対して本体ケースを相対的に回動したとき、係合リングとの摩擦により係合リングと逃がし面の端部との間に移動して食い込むようになっており、これによりアンビルは本体ケースに対して回転不能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−283471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、上記のようにアンビルを回転不能にするために、アンビルに対して本体ケースを回動した際に、係合部材を係合リングと逃がし面の端部との間に食い込む位置に移動させる必要がある。しかし、このように係合部材を係合リングとアンビルの狭い隙間において移動させるには、高精度の係合リング、係合部材、及びアンビルが必要となる。また、これらを正確に位置決めして配置する必要があるため、他の部品も高い寸法精度が要求され、高精度の部品が多く必要となってコストが増すことが懸念される。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、簡易機構により出力部を回転不能にできる電動工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の電動工具は、モーターにより回転駆動する出力部と、内周部に前記出力部の外周部に係合可能なスプライン部が形成されたロックリングと、スイッチと、このスイッチの動作に応じて前記ロックリングを前記スプライン部が前記出力部の外周部との係合が外れたアンロック位置から前記出力部の外周部に係合して前記出力部を回転不能にするロック位置まで移動させる連動機構を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、前記スイッチは前記モーターのON・OFFを切り替える駆動スイッチであり、前記連動機構は、前記スイッチと前記ロックリングを連結し、前記スイッチのON側への動作に応じて前記ロックリングを前記アンロック位置にまで移動させると共に、前記スイッチのOFF側への動作に応じて前記ロックリングを前記ロック位置にまで移動させるものであることが好ましい。
【0009】
また、前記スイッチが、前記モーターを正回転させる正回転位置と、前記モーターを逆回転させる逆回転位置と、前記正回転位置と前記逆回転位置の間に位置して前記モーターをOFFにする中間位置とに切り替え可能なシーソースイッチであることが好ましい。
【0010】
また、前記スイッチが前記モーターの駆動を制御するトリガースイッチであることが好ましい。
【0011】
また、ハンマー及びアンビルを有するインパクト機構を具備し、前記モーターにより前記ハンマーを回転駆動し、このハンマーによって前記アンビルを打撃して前記アンビルの軸部に保持された先端工具に回転力を伝達する電動工具であって、前記軸部の外周面に係合部が形成され、前記ロックリングは前記スプライン部を前記係合部に係合させて前記アンビルを回転不能にするものであることが好ましい。
【0012】
また、ハンマー及びアンビルを有するインパクト機構を具備し、前記モーターの動力により前記ハンマーを回転駆動し、このハンマーによって前記アンビルを打撃して前記アンビルの軸部に保持された先端工具に回転力を伝達する電動工具であって、前記アンビルに外周側に突出して前記ハンマーの打撃を受けるアンビル爪が形成され、前記ロックリングは前記スプライン部を前記アンビル爪に係合させて前記アンビルを回転不能にするものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明にあっては、簡易機構により出力部を回転不能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第一実施形態の電動工具の断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】同上の電動工具のロックリングをロック位置に配置した状態を示す要部断面図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】同上のシーソースイッチを中間位置に配置したときのシーソースイッチと連結部材を示し、(a)は正面図であり、(b)は平面図である。
【図6】同上のシーソースイッチを正回転位置に配置したときのシーソースイッチと連結部材を示し、(a)は正面図であり、(b)は平面図である。
【図7】同上のシーソースイッチを逆回転位置に配置したときのシーソースイッチと連結部材を示し、(a)は正面図であり、(b)は平面図である。
【図8】第二実施形態の電動工具を示す要部断面図である。
【図9】図8のC−C断面においてロックリングとアンビル爪の係合状態を示す断面図である。
【図10】同上の中間位置に配置したシーソースイッチの平面図である。
【図11】第三実施形態の電動工具の要部断面図である。
【図12】同上の電動工具の要部断面図である。
【図13】同上のトリガースイッチ、連結部材、ロックリング、アンビル、及び筒体を示す断面図である。
【図14】同上のトリガースイッチを引き込んだときの電動工具の要部断面図である。
【図15】同上の電動工具の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
(第一実施形態)
図1乃至図7に示す第一実施形態の電動工具1は、ハンマー3及びアンビル4を有するインパクト機構を具備したインパクト回転工具である。
【0017】
図1に示すように、電動工具1の外殻は、略筒状のケーシング8と、一端部がケーシング8の端部に回動可能に連結された略筒状のグリップ7とで構成されている。使用時に把持されるグリップ7は、前記ケーシング8に対する回動により、ケーシング8と一直線上に並べて配置したり、図1に示すようにケーシング8に対して交差する方向に突出させたりすることができる。以下、ケーシング8の軸方向を前後方向とし、ケーシング8のグリップ7を連結した側を後側とし、また、前記グリップ7の回動軸方向を左右方向として説明する。
【0018】
ケーシング8には、モーター2、減速機構9、及びインパクト機構が後側から前側に向かって順に内装されている。グリップ7の内部には電源となる電池パック6が設けられている。
【0019】
モーター2は、ケーシング8の後端部に設けられたスイッチ5を介して電池パック6に電気的に接続されており、これにより電池パック6から電力が供給される。スイッチ5を切り替えることで、モーター2のON・OFFを切り替え可能となっている。
【0020】
スイッチ5はシーソースイッチ10であり、図5に示すように正面視円形のスイッチ本体39と、スイッチ本体39の外周面に沿う略円弧状でスイッチ本体39に揺動可能に支持された操作体40を有している。操作体40はスイッチ本体39に対して揺動することで、スイッチ本体39の外周面に沿って上下に移動可能となっている。略円弧状の操作体40の周方向における中央部には外側に突出してケーシング8の外面に露出する操作部41が形成されている。
【0021】
操作体40は、操作部41を手動で操作することにより、図6に示す正回転位置と、図7に示す逆回転位置と、正回転位置と逆回転位置の間の図5に示す中間位置とに移動可能である。操作体40を正回転位置に移動させた場合、モーター2の出力軸15が正回転し、電動工具1の出力部を構成するアンビル4がねじを締める方向に回転する。操作体40を逆回転位置に移動させた場合、モーター2の出力軸15が逆回転し、アンビル4がねじを緩める方向に回転する。また、操作体40を中立状態となる中間位置に移動させた場合、モーター2が停止される。
【0022】
モーター2の動力は図3等に示される減速機構9で減速されてハンマー3に伝達される。本実施形態の減速機構9は遊星歯車機構であり、サンギア11、プラネットギア12、リングギア13、及びキャリア14を有している。
【0023】
サンギア11はモーター2の出力軸15に固定され、出力軸15と共に回転する。リングギア13はケーシング8に対して回転不能に固定され、サンギア11の周囲に配置されている。プラネットギア12はサンギア11とリングギア13の間に配置され、サンギア11の周方向に複数設けられている。各プラネットギア12は、サンギア11及びリングギア13の両者と噛み合い、サンギア11の回転に伴いサンギア11を中心に公転しつつ自転する。各プラネットギア12はその自転中心となる中心部に設けられた連結ピン18を介して回転自在にキャリア14に連結されている。
【0024】
キャリア14は、前記複数のプラネットギア12の公転に伴い、サンギア11の回転中心軸と同心で回転する。キャリア14の回転中心となる中心部には前方に突出する駆動軸部19が形成されている。駆動軸部19はハンマー3の中心部に形成された前後方向に貫通する孔20に回転可能に挿入されている。
【0025】
駆動軸部19の外周面にはキャリア側カム溝22が形成されている。ハンマー3の孔20の内周面において各キャリア側カム溝22に対応する箇所にはハンマー側カム溝23が形成されている。各ハンマー側カム溝23には対応するキャリア側カム溝22に片側略半部を嵌め込んだ鋼球21の他側略半部が嵌め込まれ、これによりハンマー3は複数の鋼球21を介して駆動軸部19に連結されている。
【0026】
各キャリア側カム溝22は後側に開いたV字状に形成されている。各鋼球21はこのV字状のキャリア側カム溝22内において移動可能であり、これによりハンマー3は、駆動軸部19に対する回動に伴い、キャリア側カム溝22のガイドによって前後方向に移動するようになっている。
【0027】
ハンマー3とこの後方に位置するキャリア14の後端部の間には、ハンマー3を前方のアンビル4側に付勢する付勢手段としてばね24が設けられており、このばね24とハンマー3とアンビル4によりインパクト機構が構成されている。
【0028】
モーター2の停止時には、ハンマー3はばね24の付勢力により図3に示す前進位置に配置されるように設定されており、このとき各鋼球21はキャリア側カム溝22の前端部に配置される。この状態からハンマー3がキャリア14の駆動軸部19に対して回動すると、各鋼球21はキャリア側カム溝22内における後側に移動し、これら鋼球21のガイドによりハンマー3は、ばね24の弾性力に抗って駆動軸部19に対して後退する。また、ハンマー3の駆動軸部19に対するトルクが小さくなると、ばね24の弾性力によりハンマー3が前進位置に復帰し、同時に各鋼球21がキャリア側カム溝22の前端部に移動する。
【0029】
アンビル4は前方に突出する軸部16を有している。軸部16の前端部はケーシング8の前端部で回転自在に支持されている。また、軸部16の後端面中心部には挿入穴27が形成され、挿入穴27にはキャリア14の駆動軸部19の中心部から前方に突出した軸支部28が回転自在に挿入され、この軸支部28によりアンビル4はキャリア14に軸支されている。このようにしてアンビル4はキャリア14の回転軸と同心で回転可能に設けられている。なお、アンビル4の前後方向の移動は規制されている。
【0030】
アンビル4は、軸部16の後端部から外周側に向けて一体に突出するアンビル爪26を有している。アンビル爪26は軸部16の周方向に複数形成されている。一方、ハンマー3には前方に突出するハンマー爪25が形成されており、ハンマー爪25はハンマー3の周方向にアンビル爪26と同数形成されている。なお、ハンマー爪25の数とアンビル爪26の数は異なってもよい。
【0031】
図1に示すようにハンマー3が前進位置にあるとき、各ハンマー爪25は各アンビル爪26と前後方向において同位置に配置され、アンビル爪26の側面に当接可能な状態となる。
【0032】
アンビル4の軸部16の前端部には、ケーシング8の前端部から前方に突出するチャック機構17が設けられている。チャック機構17には図示しないドライバービット等の先端工具が着脱自在に装着され、これにより先端工具はアンビル4に保持される。
【0033】
電動工具1を用いてねじやナット等を締めるには、チャック機構17に先端工具を装着した状態で、シーソースイッチ10を正回転位置に切り替える。このようにすると、モーター2の出力軸15は正回転し、減速機構9のキャリア14と共に前記前進位置にあるハンマー3が正回転する。これにより各ハンマー爪25がアンビル爪26の側面に係合して当該ハンマー3と共にアンビル4及び先端工具がねじやナットを締める方向に回転する。
【0034】
ねじやナットを緩める際には、シーソースイッチ10を逆回転位置に切り替える。このようにすると、モーター2の出力軸15は逆回転し、減速機構9のキャリア14と共に前進位置にあるハンマー3が逆回転する。これにより各ハンマー爪25がアンビル爪26の側面に係合して当該ハンマー3と共にアンビル4及び先端工具がねじやナットを緩める方向に回転する。
【0035】
上記モーター2の駆動時においてねじやナットから先端工具を介してアンビル4に加わる負荷が大きくなると、各ハンマー爪25がアンビル爪26を乗り越えてアンビル爪26との係合が外れ、ハンマー3はばね24に抗って後退する。このようにハンマー3が後退してアンビル4との係合が外れると、ハンマー3はばね24の弾性力により前進に転じる。そして、ハンマー3が前進位置まで前進すると、キャリア14と共に回転するハンマー3の各ハンマー爪25によってアンビル爪26の側面が打撃され、これによりアンビル4には強い回転力が伝えられ、さらにこの回転力は先端工具に伝達される。以後、アンビル4に加わる負荷が大きくなる度に前記ハンマー3によるアンビル4の打撃がなされ、これにより間欠的に発生する衝撃的なトルクによりねじやナットを締めたり緩めたりすることができる。
【0036】
電動工具1は、モーター2の停止時において出力部であるアンビル4を回転不能にするロック機構を具備している。このロック機構を設けることで、前記アンビル4に装着された先端工具を用い、手回しドライバーと同様にグリップ7を把持して手動でケーシング8を回転してねじの増し締め等の作業を行うことができる。
【0037】
ロック機構は、シーソースイッチ10の操作体40がOFF側(すなわち中間位置側)に切り替えられた際にアンビル4を回転不能にし、操作体40がON側(すなわち正回転位置及び逆回転位置)に切り替えられた際にアンビル4を回転可能にする。
【0038】
ロック機構は、アンビル4に係合可能なロックリング30と、シーソースイッチ10の動作に応じてロックリング30をアンビル4に係合するロック位置とアンビル4に係合しないアンロック位置とに移動させる連動機構で構成されている。
【0039】
ロックリング30は図4に示されるように外周面が大略矩形状で非円形となった環状に形成されており、ケーシング8の内周面に形成された保持部33に回転不能且つ前後方向に移動自在に嵌め込まれている。
【0040】
ロックリング30はアンビル4の軸部16を囲む位置に前後方向に移動可能に設けられており、ロックリング30の内周面には周方向に亘ってスプライン部32が形成されている。スプライン部32は、ロックリング30の内周面に周方向に複数条形成した山形の歯部31で構成されている。スプライン部32の内方に突出する各歯部31の頂面及びこれら歯部31間に形成される各凹部37の奥面は正面視円弧状に形成されており、歯部31の頂面と凹部37の奥面は稜線なく滑らかに接続されている。
【0041】
図1に示すようにアンビル4の軸部16においてアンビル爪26より前方に位置する部分の外周面には、外周側に突出する鍔状の係合部34が周方向に亘って一体に形成されている。図4に示すように係合部34の外周端面には、ロックリング30のスプライン部32に係合可能なスプライン部35が周方向に亘って形成されている。このスプライン部35も、係合部34の外周面に周方向に複数条形成した山形の歯部36で構成されており、各歯部36の頂面及びこれら歯部36間に形成される各凹部44の奥面は正面視円弧状に形成されて滑らかに接続されている。なお、スプライン部32、35の形状は上記に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。
【0042】
ロックリング30は、図4に示すように、スプライン部32を構成する多数の歯部31を、アンビル4のスプライン部35を構成する多数の歯部36の間に形成された凹部44に嵌合して噛み合わせることにより、アンビル4に係合する。これによりアンビル4は回転不能になる。
【0043】
連動機構は、図1に示すようにロックリング30とシーソースイッチ10の操作体40とを連結して、操作体40の動作をロックリング30に機械的に伝達してロックリング30を移動させる連結部材38で構成されている。
【0044】
連結部材38はケーシング8内の上下に設けられており、各連結部材38は前後方向に移動自在となっている。棒状に形成された各連結部材38は、一端部がシーソースイッチ10の操作体40に連結され、他端部がロックリング30に接続されている。
【0045】
図5(b)に示すように、各連結部材38が連結されるシーソースイッチ10は、円弧状の操作体40の周方向の両側部分に、後側に開いたV字状のガイド溝42が形成されている。各連結部材38の後端部は上下方向に直角に曲げられた被挿入部43としてあり、各連結部材38の被挿入部43は対応するガイド溝42にスライド自在に挿入されている。
【0046】
図6や図7に示すように、シーソースイッチ10の操作体40がON側(すなわち正回転位置及び逆回転位置)にあるとき、各連結部材38の被挿入部43はガイド溝42の後端部に位置し、このとき各連結部材38は図1に示す後退位置に配置される。各連結部材38が後退位置に配置された状態では、ロックリング30は、アンビル4の係合部34よりも後方にずれたアンロック位置に配置される。このようにロックリング30をアンロック位置に配置した状態では、スプライン部32がアンビル4のスプライン部35に係合せず、アンビル4は回転可能となる。
【0047】
上記のようにON側に配置した操作体40を図5に示すようにOFF側(すなわち中間位置)に移動すると、各連結部材38の被挿入部43はガイド溝42のガイドのもとガイド溝42の前端部に移動し、各連結部材38は図3に示す前進位置に配置される。この状態では、ロックリング30はアンビル4の係合部34と前後方向において重なるロック位置に配置され、スプライン部32がアンビル4のスプライン部35に係合してアンビル4は回転不能になる。
【0048】
図5に示すOFF側に配置した操作体40を図6や図7に示すON側に移動すると、各連結部材38の被挿入部43はガイド溝42の後端部に移動し、各連結部材38は後退位置に移動し、ロックリング30はアンロック位置に移動する。
【0049】
また、上記のように操作体40をON側に移動した際には、ロックリング30とアンビル4の係合が解除された後に、スイッチ本体39の接点が導通状態に切り替わり、モーター2が駆動するように設定されている。
【0050】
以上説明した本実施形態の電動工具1は、モーター2により回転駆動する出力部(アンビル4)と、内周部に出力部の外周部に係合可能なスプライン部32が形成されたロックリング30と、スイッチ5を備えている。さらに、スイッチ5の動作に応じてロックリング30をスプライン部32が出力部の外周部との係合が外れたアンロック位置から出力部の外周部に係合して出力部を回転不能にするロック位置まで移動させる連動機構(連結部材38)を備えている。この構成により、ロックリング30のスプライン部32を出力部の外周部に係合してアンビル4を回転不能にし、この電動工具1を回転させることで、出力部に保持された先端工具を用いてねじの増し締め等を行うことができる。また、このロック機構は、ロックリング30のスプライン部32を出力部の外周部に係合させる簡易構造であり、高精度の部品を多数必要とせず、コストを抑えることができる。
【0051】
また、本実施形態の連動機構(連結部材38)は、モーター2の駆動スイッチとして機能するスイッチ5とロックリング30を連結するものである。この連動機構は、スイッチ5のON側への動作に応じてロックリング30をアンロック位置にまで移動させると共に、スイッチ5のOFF側への動作に応じてロックリング30をロック位置にまで移動させる。この構成により、モーター2を駆動するためにスイッチ5をON側に切り替えるだけで、ロックリング30を自動的にアンロック位置に移動させて出力部を回転可能にできる。また、モーター2を停止するためにスイッチ5をOFF側に切り替えるだけで、ロックリング30を自動的にロック位置に移動させて出力部を回転不能にできる。つまり、電動で電動工具1を使用する場合も手動で電動工具1を使用する場合も、ロックリング30を移動させるための操作を別途する必要がなく、操作性が向上する。
【0052】
また、本実施形態のスイッチ5は、モーター2を正回転させる正回転位置と、モーター2を逆回転させる逆回転位置と、正回転位置と逆回転位置の間に位置してモーター2をOFFにする中間位置とに切り替え可能なシーソースイッチ10である。すなわち、本実施形態では、このようなシーソースイッチ10を採用した電動工具1において、簡易機構により出力部を回転不能にすることができる。
【0053】
また、電動工具1は、ハンマー3及びアンビル4を有するインパクト機構を具備し、モーター2によりハンマー3を回転駆動し、このハンマー3によってアンビル4を打撃してアンビル4の軸部16に保持された先端工具に回転力を伝達する電動工具である。そして、本実施形態では、アンビル4側においては、軸部16の外周面にロックリング30のスプライン部32が係合される係合部34を形成するだけで、インパクト式の電動工具1において出力部であるアンビル4をロックするロック機構を設けることができる。また、係合部34を本実施形態のように軸部16の周方向に亘って設けて、係合部34の外周面に亘ってスプライン部35を形成することも可能になる。この場合、ロックリング30をアンビル4にしっかりと係合させてアンビル4を回転不能にでき、前述した手動によるねじ締め等の作業をより強い力で行うことが可能になる。
【0054】
(第二実施形態)
次に第二実施形態について説明する。なお、以下では第一実施形態と同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0055】
図8乃至図10に示す本実施形態の電動工具1は、アンビル4に係合部34が形成されておらず、ロックリング30のスプライン部32はアンビル爪26に係合してアンビル4を回転不能にするようになっている。
【0056】
図9に示すように、アンビル4の軸部16から外周側に突出する各アンビル爪26の先端面には、ロックリング30のスプライン部32を係合可能な係合部45が形成されている。各係合部45は、アンビル爪26の幅方向に複数条形成した歯部46で構成されている。また、ロックリング30のスプライン部32をアンビル爪26の係合部45に係合したときに、確実にアンビル4を回転不能にするため、スプライン部32の歯部31と各係合部45の歯部46は角のある台形状に形成されている。
【0057】
なお、スプライン部32の歯部31と各係合部45の歯部46の形状は前記台形状に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。また、本実施形態のロックリング30は図9に示すように外周面を円形に形成してあるが、勿論、ロックリング30はケーシング8に対して回動不能に設けられている。また、本実施形態のロックリング30の外周面は、第一実施形態と同様に非円形とすることで、ケーシング8に対して回転不能にしてもよい。
【0058】
図10に示すように、シーソースイッチ10の操作体40において、各連結部材38の被挿入部43が挿入されるガイド溝42は前側に開いたV字状に形成されている。すなわち、操作体40をON側(すなわち正回転位置及び逆回転位置)に配置したとき、各連結部材38の被挿入部43は図10に示すようにガイド溝42の前端部に位置し、各連結部材38は図8に示す前進位置に配置される。この状態のロックリング30は、アンビル爪26よりも前方にずれた位置、すなわちアンビル4が回転可能となるアンロック位置に配置される。
【0059】
操作体40をON側に配置した状態で、操作体40をOFF側(すなわち中間位置側)に移動すると、各連結部材38の被挿入部43はガイド溝42の後端部に移動し、各連結部材38は後退位置に配置される。この状態のロックリング30は、アンビル爪26と前後方向において重なる位置、すなわち、スプライン部32の周方向の一部が各アンビル爪26の係合部45に係合してアンビル4を回転不能にするロック位置に配置される。
【0060】
本実施形態では、ロックリング30のスプライン部32がアンビル爪26に係合してアンビル4を回転不能にする。このため、アンビル4にはスプライン部32を係合させるために第一実施形態の係合部34のような部分を形成する必要がなく、アンビル4を簡易形状にできる。
【0061】
(第三実施形態)
次に第三実施形態について説明する。なお、以下では第一実施形態と同一の構成については同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0062】
図11乃至図15に示す本実施形態の電動工具1は、モーター2の駆動を制御するスイッチ5が、モーター2の回転速度を変更するトリガースイッチ48で構成されている。
【0063】
図11等に示すように、トリガースイッチ48は、ケーシング8とグリップ7で構成された電動工具1の外殻となるハウジング47において、グリップ7に設けられている。なお、本実施形態のグリップ7はケーシング8からケーシング8の軸方向に対して交差する下側に向けて突出しており、ケーシング8に対して固定的に設けられている。
【0064】
トリガースイッチ48は、グリップ7の上端部に内装したスイッチ本体49と、グリップ7の上端部から前方に突出する操作体50で構成されている。
【0065】
操作体50はグリップ7に対して所定範囲内において前後方向に移動可能に設けられている。操作体50はスイッチ本体49に設けられた付勢手段(不図示)により前方に押圧されており、非操作時には図11及び図12に示す前進位置に配置され、モーター2はOFFとなる。操作体50をグリップ7を握る手の指で前記付勢手段に抗って図14及び図15に示すように後方に引き込むことにより、スイッチ本体49が動作してモーター2が駆動する。また、この際のスイッチ本体49の引き込み量が大きくなる程モーター2の回転速度が速くなるようになっている。
【0066】
ロック機構は、操作体50が前進位置にあってトリガースイッチ48がOFF側に切り替えられる際にアンビル4を回転不能にし、操作体50が引き込まれてトリガースイッチ48がON側に切り替えられた際にアンビル4を回転可能にする。
【0067】
本実施形態のアンビル4は、第二実施形態と同様に、各アンビル爪26の先端面に係合部45が形成されており、第一実施形態における係合部34は形成されていない。すなわち、本実施形態のロック機構が有するロックリング30は、スプライン部32をアンビル爪26に係合させてアンビル4を回転不能にする。また、ロックリング30はケーシング8の内部に設けられた円筒状の筒体52の内周面に沿って前後方向に移動自在に収納されている。
【0068】
ロック機構が有する連動機構は、ロックリング30とトリガースイッチ48の操作体50とを連結して、操作体50の動作をロックリング30に機械的に伝達してロックリング30を移動させる連結部材51で構成されている。
【0069】
連結部材51はケーシング8の内部に前後方向に移動自在に設けられており、ロックリング30に取り付けられる被取付体53と、一端部が被取付体53に連結されると共に他端部がトリガースイッチ48の操作体50に連結される棒状の連結体54とで構成されている。
【0070】
被取付体53は図13に示すように正面視半円弧状に形成され、前記ロックリング30を収納した筒体52の下部外周面に沿って前後方向に移動可能に設けられている。なお、図13に示すロックリング30は外周面を円形に形成してあるが、勿論、ロックリング30はケーシング8に対して回動不能に設けられている。なお、ロックリング30の外周面を第一実施形態と非円形に形成し、筒体52の内周面をロックリング30の外周面に合致する形状とし、これによりロックリング30を回転不能にしてもよい。
【0071】
被取付体53の周方向の両端部の夫々には、筒体52に形成した前後方向に伸びる長孔56(図12参照)を通して筒体52内に突出するピン55が設けられている。各ピン55は筒体52内部のロックリング30に連結され、これにより被取付体53はロックリング30に取り付けられている。連結体54は前端部が被取付体53の下端部に連結されており、連結体54の後端部は下方に折曲されてトリガースイッチ48の操作体50に連結されている。
【0072】
図11及び図12に示すように、トリガースイッチ48の操作体50が前進位置にあるとき、連結部材51は前進位置に配置され、各ピン55は長孔56の前端部に配置される。この状態のロックリング30は、アンビル爪26と前後方向において重なる位置、すなわち、スプライン部32の周方向の一部が各アンビル爪26に係合してアンビル4を回転不能にするロック位置に配置される。
【0073】
前進位置にある操作体50を図14及び図15に示すように後方に引き込むと、連結部材51は後退位置に配置され、各ピン55は長孔56の後端部に配置される。この状態のロックリング30は、アンビル爪26よりも後方にずれた位置、すなわちアンビル4を回転可能にするアンロック位置に配置される。
【0074】
また、前記操作体50の引き込みを解除する又は引き込み力を弱めると、前記付勢手段により操作体50は前進位置まで前進し、連結部材51は前進位置に移動し、ロックリング30はロック位置に移動する。
【0075】
なお、前記操作体50を引き込んだ際には、ロックリング30とアンビル4の係合が解除された後に、スイッチ本体49の接点が導通状態に切り替わり、モーター2が駆動するように設定されている。
【0076】
本実施形態のスイッチ5は、モーター2の駆動を制御するトリガースイッチ48であり、本実施形態ではこのようなトリガースイッチ48を採用した電動工具1において、簡易機構により出力部(アンビル4)を回転不能にすることができる。
【0077】
なお、本実施形態では、ロックリング30をアンビル爪26に係合するようにしたが、第一実施形態と同様にアンビル4の軸部16に係合するようにしてもかまわない。
【0078】
また、前記各実施形態においては、モーター2のON・OFFを切り替えるスイッチ5とは別にスイッチを設け、このスイッチを操作してロックリング30をロック位置及びアンロック位置に切り替えられるようにしてもよい。また、前記各実施形態においては、スイッチ5の動作を電気的に検知し、この検知結果に基づいてロックリング30をロック位置及びアンロック位置に切り替える連動機構を設けてもよい。また、本発明はインパクト機構を具備しない電動ドリル等にも適用可能である。すなわち、この場合、モーターにより回転駆動し、先端工具を保持する出力軸部を前記各実施形態と同様の構成のロックリングを用いて回転不能にすればよい。
【符号の説明】
【0079】
1 電動工具
2 モーター
3 ハンマー
4 アンビル
5 スイッチ
10 シーソースイッチ
16 軸部
26 アンビル爪
30 ロックリング
32 スプライン部
34 係合部
38 連結部材
48 トリガースイッチ
51 連結部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターにより回転駆動する出力部と、内周部に前記出力部の外周部に係合可能なスプライン部が形成されたロックリングと、スイッチと、このスイッチの動作に応じて前記ロックリングを前記スプライン部が前記出力部の外周部との係合が外れたアンロック位置から前記出力部の外周部に係合して前記出力部を回転不能にするロック位置まで移動させる連動機構を備えたことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記スイッチは前記モーターのON・OFFを切り替える駆動スイッチであり、前記連動機構は、前記スイッチと前記ロックリングを連結し、前記スイッチのON側への動作に応じて前記ロックリングを前記アンロック位置にまで移動させると共に、前記スイッチのOFF側への動作に応じて前記ロックリングを前記ロック位置にまで移動させるものであることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記スイッチが、前記モーターを正回転させる正回転位置と、前記モーターを逆回転させる逆回転位置と、前記正回転位置と前記逆回転位置の間に位置して前記モーターをOFFにする中間位置とに切り替え可能なシーソースイッチであることを特徴とする請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記スイッチが前記モーターの駆動を制御するトリガースイッチであることを特徴とする請求項2に記載の電動工具。
【請求項5】
ハンマー及びアンビルを有するインパクト機構を具備し、前記モーターにより前記ハンマーを回転駆動し、このハンマーによって前記アンビルを打撃して前記アンビルの軸部に保持された先端工具に回転力を伝達する電動工具であって、前記軸部の外周面に係合部が形成され、前記ロックリングは前記スプライン部を前記係合部に係合させて前記アンビルを回転不能にするものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項6】
ハンマー及びアンビルを有するインパクト機構を具備し、前記モーターの動力により前記ハンマーを回転駆動し、このハンマーによって前記アンビルを打撃して前記アンビルの軸部に保持された先端工具に回転力を伝達する電動工具であって、前記アンビルに外周側に突出して前記ハンマーの打撃を受けるアンビル爪が形成され、前記ロックリングは前記スプライン部を前記アンビル爪に係合させて前記アンビルを回転不能にするものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項1】
モーターにより回転駆動する出力部と、内周部に前記出力部の外周部に係合可能なスプライン部が形成されたロックリングと、スイッチと、このスイッチの動作に応じて前記ロックリングを前記スプライン部が前記出力部の外周部との係合が外れたアンロック位置から前記出力部の外周部に係合して前記出力部を回転不能にするロック位置まで移動させる連動機構を備えたことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記スイッチは前記モーターのON・OFFを切り替える駆動スイッチであり、前記連動機構は、前記スイッチと前記ロックリングを連結し、前記スイッチのON側への動作に応じて前記ロックリングを前記アンロック位置にまで移動させると共に、前記スイッチのOFF側への動作に応じて前記ロックリングを前記ロック位置にまで移動させるものであることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記スイッチが、前記モーターを正回転させる正回転位置と、前記モーターを逆回転させる逆回転位置と、前記正回転位置と前記逆回転位置の間に位置して前記モーターをOFFにする中間位置とに切り替え可能なシーソースイッチであることを特徴とする請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記スイッチが前記モーターの駆動を制御するトリガースイッチであることを特徴とする請求項2に記載の電動工具。
【請求項5】
ハンマー及びアンビルを有するインパクト機構を具備し、前記モーターにより前記ハンマーを回転駆動し、このハンマーによって前記アンビルを打撃して前記アンビルの軸部に保持された先端工具に回転力を伝達する電動工具であって、前記軸部の外周面に係合部が形成され、前記ロックリングは前記スプライン部を前記係合部に係合させて前記アンビルを回転不能にするものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項6】
ハンマー及びアンビルを有するインパクト機構を具備し、前記モーターの動力により前記ハンマーを回転駆動し、このハンマーによって前記アンビルを打撃して前記アンビルの軸部に保持された先端工具に回転力を伝達する電動工具であって、前記アンビルに外周側に突出して前記ハンマーの打撃を受けるアンビル爪が形成され、前記ロックリングは前記スプライン部を前記アンビル爪に係合させて前記アンビルを回転不能にするものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電動工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−107166(P2013−107166A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253569(P2011−253569)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(509119153)パナソニックESパワーツール株式会社 (107)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(509119153)パナソニックESパワーツール株式会社 (107)
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