説明

電動巻上下装置用電源装置

【課題】未使用の電気二重層キャパシタを搭載したときに、電動巻上下装置を通常に運転しながら、電気二重層キャパシタの初期充電を適切に行うことができる電動巻上下装置用電源装置を提供すること。
【解決手段】直流回路12に開閉器18を介して電気二重層キャパシタ17を接続し、昇降用電動機15の回生電力をインバータ14により直流に変換し、電気二重層キャパシタに蓄電し、直流回路12の電圧が所定電圧を超えた場合、制動用開閉素子19を閉じて直流回路12から制動用抵抗器20に通電する充放電と、電気二重層キャパシタ17の電圧VEが所定電圧値Vより小さい場合、充放電を停止し、制動用開閉素子19を閉じて初期充電抵抗器21を通して回生電力を電気二重層キャパシタ17に蓄電すると共に、電圧VEが所定電圧値Vになった場合、充放電制御手段による電気二重層キャパシタ17の充放電を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動チェーンブロックや電動ホイスト等の電動巻上下装置用電源装置に関し、特に荷巻下時の昇降用電動機が発電する回生電力を効率良く電気二重層キャパシタに蓄電できると共に、電気二重層キャパシタの初期充電や自己放電による蓄電電圧の低下による充電を特別意識することなく通常の運転を行うだけで簡単に行うことのできる省エネルギーに好適な電動巻上下装置用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、全産業分野において省エネルギー化が強く要望されている。電動チェーンブロックや電動ホイスト等の電動巻上下装置においても、荷巻下時に昇降用電動機が発電する回生電力を蓄電器に蓄電し、荷巻上時に利用することが要望されている。
【0003】
図1は従来のこの種の電動巻上下装置用電源装置の構成例を示す図である。図示するように、電動巻上下装置用電源装置は、整流器101と、平滑コンデンサ103を備えた直流回路102と、インバータ104を備えている。そして交流電源(ここでは3相交流電源)106からの交流を整流器101で直流に変換し、直流回路102からインバータ104に供給し、該インバータ104で所定周波数の交流に変換して昇降用電動機105に供給するように構成されている。
【0004】
直流回路102には、開閉器107を介して電気二重層キャパシタ108が接続されている。交流電源106が投入された時に、制御部109は、キャパシタ電圧VEと電源電圧VIを比較し、両者が等しいときには、開閉器107の動作コイル107Xに作動電流を通電し、開閉器107を閉じる。これにより、直流回路102に電気二重層キャパシタ108が接続され、昇降用電動機105の回生時(巻下げ時)の回生電力はインバータ104で直流に変換され、該直流に変換された回生電力電流は直流回路102から電気二重層キャパシタ108に蓄電される。また、制御部109は直流回路102の電圧VDCを監視し、直流回路の電圧VDCがキャパシタ上限電圧となった場合、電気二重層キャパシタ108の満充電と判断し、制動抵抗用素子(トランジスタ等)110を閉じて、回生電力を制動用抵抗器111で消費し、電気二重層キャパシタ108の過充電を防止する。ここで電源電圧VIとは、交流電源(3相交流電源)106の電圧をVACとした場合、VI=√2×VACである。
【0005】
上記電動巻上下装置用電源装置において、電気二重層キャパシタ108が新品(未使用)であったり、電気二重層キャパシタ108の自己放電などにより電圧が低下していると、運転前に初期充電を行い、電気二重層キャパシタ108の電圧VEを電源電圧VIと等しくしてから、開閉器107を閉じる必要がある。運転と同時に初期充電を開始するようにするには、運転時電流と初期充電電流の両電流に耐えられる容量の整流回路101を用意する必要があり、コスト低減や装置の小型化が困難になる。よって、従来装置では、初期充電では、開閉器107を開、且つ開閉器112を閉とし、直流回路102から初期充電用抵抗器113を通して、所定時間(例えば3分程度)かけて、電気二重層キャパシタ108の初期充電を行っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来の電動巻上下装置用電源装置においては、電気二重層キャパシタ108の初期充電を行う場合は、初期充電を意識し、初期充電用の開閉器112を閉じて、所定時間かけて行っているが、この初期充電作業が煩わしいという問題があった。また、従来は、電気二重層キャパシタ108の初期充電は、三相交流電源からの電力を用いて行なっていたので、運転準備を行なうだけで充電電力を必要とし、消費電力の削減が困難であった。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、未使用の電気二重層キャパシタを搭載したときでも、又電気二重層キャパシタが自己放電等で蓄電電圧が低くなった場合でも、それを意識することなく、電動巻上下装置を通常に運転しながら、電気二重層キャパシタの初期充電や自己放電等による電圧低下の充電を適切に行うことができる電動巻上下装置用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明は、整流器と、直流回路と、インバータとを備え、交流電源からの交流を前記整流器で直流に変換し、直流回路を介して前記インバータに供給し、該インバータで交流に変換して昇降用電動機に供給すると共に、該昇降用電動機の回生時に発生する回生電力をインバータにより直流に変換して直流回路に供給し、該回生電力により直流回路電圧が所定電圧V0に達したら、制動用開閉素子を閉じて直流回路から回生電力電流を制動用抵抗器に通電し消費するように構成した電動巻上下装置用電源装置であって、直流回路に開閉素子を介して接続した電気二重層キャパシタと、昇降用電動機の回生時に開閉素子を閉じて回生電力を直流回路から電気二重層キャパシタに蓄電し、昇降用電動機の力行運転時に電気二重層キャパシタの蓄電電力を直流回路及びインバータを介して昇降用電動機に供給する充放電制御手段と、電気二重層キャパシタの初期充電を行うための所定抵抗値を有する初期充電用抵抗器と、電気二重層キャパシタの電圧VEが所定電圧値Vより小さい(VE<V)場合、充放電制御手段による前記電気二重層キャパシタの充放電を停止し、回生電力により直流回路電圧が前記所定電圧V0に達した場合に制動用開閉素子を閉じて該回生電力を初期充電用抵抗器を通して電気二重層キャパシタに蓄電すると共に、電気二重層キャパシタの電圧VEが所定電圧値V以上(VE≧V)になった場合、充放電制御手段による電気二重層キャパシタの充放電を再開する充放電・初期充電切替制御手段と、を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記電動巻上下装置用電源装置において、前記所定電圧値Vは、交流電源電圧をVACとした場合、VはV=√2×VACであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記電動巻上下装置用電源装置において、電動巻上下装置用電源装置は、汎用インバータ制御装置と、該汎用インバータ制御装置に制御指令信号を送る制御部とを備え、汎用インバータ制御装置は、充放電制御手段及び充放電・初期充電切替制御手段が有する機能を除く、インバータの基本的制御及び制動用開閉素子の開閉制御を行うインバータ基本制御部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、充放電・初期充電切替制御手段を設け、該充放電・初期充電切替制御手段により、電気二重層キャパシタの電圧VEが所定電圧値Vより小さい(VE<V)場合、充放電制御手段による電気二重層キャパシタの充放電を停止し、回生電力が発生しているときに制動用開閉素子を閉じて回生電力電流を直流回路から初期充電用抵抗器を通して電気二重層キャパシタに蓄電すると共に、電圧VEが所定電圧値V以上(VE≧V)の場合、充放電制御手段による電気二重層キャパシタの充放電を再開するので、電動巻上下装置用電源装置に未使用の蓄電電圧がゼロの電気二重層キャパシタを搭載した場合、或いは自己放電などにより蓄電電圧が低くなっている場合でも、電動巻上下装置用電源装置の通常の運転を通じて回生電力を使って電気二重層キャパシタを適正に充電することができ、上記のような煩わしい初期充電作業を行う必要がない。また、上記の通り電気二重層キャパシタの初期充電も回生電力のみを使って充電するようにしているので、無駄な電力消費を大幅に削減できる。
【0012】
また、電動巻上下装置用電源装置を、インバータ基本制御部を備えた汎用インバータ制御装置と、インバータ基本制御部に制御指令信号を送る制御部を備えた構成とすることにより、汎用インバータ制御装置に何ら変更を加えることなく、該汎用インバータ制御装置に制御部を構成する電子部品を実装した基板を搭載するだけで、本発明に係る電動巻上下装置用電源装置を低コストで実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態例を図面に基づいて詳細に説明する。図2は本発明に係る電動巻上下装置用電源装置のシステム構成例を示すブロック図である。図示するように、本電動巻上下装置用電源装置は、整流器11と、平滑コンデンサ13を備えた直流回路12と、インバータ14を備え、交流電源16からの交流を整流器11で直流に変換し、直流回路12からインバータ14に供給し、該インバータ14で所定周波数の交流に変換して昇降用電動機15に供給するように構成されている。直流回路12には開閉器18を介して電気二重層キャパシタ17が接続されている。また、直流回路12には所定の抵抗値を有する制動用抵抗器20が開閉器24と制動用開閉素子(ランジスタ等)19の直列回路を介して接続されている。また、直流回路12には所定の抵抗値を有する初期充電用抵抗器21と開閉器22と制動用開閉素子19の直列回路を介して電気二重層キャパシタ17が接続されている。
【0014】
制御部23には、電源電圧VI、電気二重層キャパシタ17の蓄電電圧VEの測定値、及び直流回路12の直流電圧VDCの測定値が入力されるようになっている。また、制御部23には、開閉器18の動作コイル18X、開閉器22の動コイル22X、開閉器24の動コイル24Xが接続されている。制御部23は蓄電電圧VE、直流電圧VDCを監視し、下記の初期充電モード、充放電モードに設定できるようになっている。
【0015】
〔初期充電モード〕
制御部23は蓄電電圧VEを監視し、該蓄電電圧VEが電源電圧VIより小さい(VE<VI)場合、開閉器18の動作コイル18Xに作動電流を通電せず該開閉器18を開(OFF)とし、開閉器22の動作コイル22Xに作動電流を通電して開閉器22を閉(ON)とし、更に開閉器24の動作コイル24Xへの作動電流を通電せず開閉器24を開(OFF)とする。
【0016】
〔充放電モード〕
制御部23は蓄電電圧VEを監視し、蓄電電圧VEが電源電圧VIより大きい場合、開閉器18の動作コイル18Xへ作動電流を通電して開閉器18を閉(ON)とし、開閉器22の動作コイル22Xへの作動電流を遮断して開閉器22を開(OFF)とし、更に開閉器24の動作コイル24Xへの作動電流を通電して開閉器24を閉(ON)とする。なお、ここで電源電圧VIは、交流電源16の電圧をVACとすると、VI=√2×VACである。
【0017】
上記電動巻上下装置用電源装置において、蓄電電圧VEがゼロ、即ち、未使用(未充電)の電気二重層キャパシタ17を搭載した場合、蓄電電圧VEは電源電圧VIより小さいから、初期充電モードとなり、制御部23は動作コイル18X及び動作コイル24Xへの作動電流を遮断し、開閉器18及び開閉器24を開(OFF)にし、動作コイル22Xに作動電流を通電し、開閉器22を閉(ON)とする。これにより、昇降用電動機15の回生時(巻下時)に発生する回生電力はインバータ14で直流に変換され、直流回路12に供給される。そして直流回路12の電圧VDCが電源電圧VIを超える(VDC>VI)と、制御部23は制動用開閉素子19をONとする。これにより、直流に変換された回生電力電流は直流回路12から初期充電用抵抗器21を通して電気二重層キャパシタ17に蓄電される。
【0018】
電気二重層キャパシタ17の蓄電電圧VEが上昇し、電源電圧VIを超えると充放電モードとなり、制御部23は動作コイル18Xに作動電流を通電して開閉器18を閉(ON)とすると共に、動作コイル22Xへの作動電流を遮断して開閉器22を開(OFF)とし、更に動作コイル24Xへの作動電流を通電して開閉器24を閉(ON)とする。これにより、昇降用電動機15の回生時の回生電力はインバータ14で直流に変換され、直流回路12に供給されるから、該回生電力電流は開閉器18を通って電気二重層キャパシタ17に蓄電されると共に、昇降用電動機15の力行運転時(巻上運転時)は、該蓄電された電流は直流回路12を通ってインバータ14に供給され、該インバータ14で所定周波数の交流に変化され、昇降用電動機15に供給される。
【0019】
電気二重層キャパシタ17の蓄電電圧VEが電源電圧VIを超えて所定の電圧値になったら、制御部23は制動用開閉素子19をONにする。これにより昇降用電動機15の回生時(巻下時)の直流に変換された回生電力電流を制動用抵抗器20に通電させて消費し、直流回路12の過電圧、及び電気二重層キャパシタ17の過充電を防止している。
【0020】
上記のように、制御部23により、電気二重層キャパシタ17の蓄電電圧VEが電源電圧VIより小さい(VE<VI)場合、開閉器18を開(OFF)とし、昇降用電動機15の回生時の直流に変換された回生電力電流を電気二重層キャパシタ17に蓄電し、該蓄電した電力を昇降用電動機15の力行運転時に供給する充放電を停止し、開閉器22を閉(ON)とし、上記昇降用電動機15の回生時の回生電力により直流回路12の電圧VDCが所定電圧VOに達したら、制動用開閉素子19を閉(ON)とし、回生電力を直流回路12から初期充電用抵抗器21を通じて電気二重層キャパシタ17に蓄電(初期充電)すると共に、蓄電電圧VEが所定の電源電圧VI以上(VE≧VI)の場合、開閉器18を閉じて充放電を再開するので、電動巻上下装置用電源装置に未使用の蓄電電圧がゼロの電気二重層キャパシタ17を搭載した場合、或いは自己放電で蓄電電圧が低くなっている場合でも、電動巻上下装置用電源装置の通常の運転を通して電気二重層キャパシタ17を回生電力によって適正に充電することができる。これにより、上記のような煩わしい初期充電作業が不必要になる。更に、初期充電に回生電力のみを使用するようにしているので、消費電力の削減ができる。
【0021】
図4は図2に示す電動巻上下装置用電源装置の制御部23の動作の流れを示すフロー図である。ステップST1で電源投入されると、ステップST2で蓄電電圧VEが電源電圧VIより小さいか(VI>VE)を判断し、イエス(Y)の場合ステップST3に移行し、ノー(N)の場合ステップST6に移行する。ステップST3では、開閉器18を開(OFF)、開閉器22を閉(ON)、開閉器24を開(OFF)とし、ステップST4に移行する。また、ステップST6では、開閉器18を閉(ON)、開閉器22を開(OFF)、開閉器24を閉(ON)とし、ステップST4に移行する。ステップST4では直流回路12の電圧VDCが所定電圧V0を超えたかを判断し、イエス(Y)の場合はステップST5に移行し、ノー(N)場合はステップST7に移行する。
【0022】
ステップST5では制動用開閉素子19を閉(ON)とし、昇降用電動機15で発生しインバータ14で直流に変換し直流回路に供給される回生電力を、ステップST3にて開閉器22を閉(ON)かつ開閉器24を開(OFF)としている場合には初期充電用抵抗器21を通して電気二重層キャパシタに蓄電し、ステップST6にて開閉器22を開(OFF)かつ開閉器24を閉(ON)としている場合には制動用抵抗器20に通電し回生電力を消費する。ステップST7では制動用開閉素子19を開(OFF)として、開閉器22及び開閉器24の閉(ON)開(OFF)いずれの場合も直流回路から制動用抵抗器20及び初期充電用抵抗器21への通電は遮断される。このように、図2に示す電動巻上下装置用電源装置では、開閉器18、開閉器22、開閉器24、及び制動用開閉素子19の開閉制御を全て制御部23で行う。
【0023】
電源電圧VIは、常時交流電源電圧VACを測定して前記電源電圧VIを算出することが望ましいが、予め定められた電源電圧VIを用いるようにしても良い。常時交流電源電圧VACを測定し電源電圧VIを算出すれば、初期充電モードから充放電モードに切り替える際に、電気二重層キャパシタ17の蓄電電圧VEと直流回路12の電圧VDCとの差がなく、開閉器18の接点負荷を減じることが出来る。また、電源電圧VIの値に規定値を用いるようにすると、装置を簡略化できコスト低減や小型化に効果がある。また、制動用開閉素子19は、回生電力が発生しているかどうかを直流回路12の電圧VDCを監視することで判断している。直流回路12の電圧VDCが交流電源電圧VACの√2倍を超えたら回生電力が発生していると見なすことができるが、予め定めた交流電源電圧の許容範囲の1割増とすることが現実的である。例えば、AC240Vまでを交流電源電圧として許容している装置である場合、制動用開閉素子19を閉じる直流回路12の電圧V0は、1.1×√2×240=373V以上と決められる。この値は、交流電源事情や、制御する昇降用電動機15、電気二重層キャパシタ17、その他制御素子の仕様により、適宜決定される。電気二重層キャパシタ17の蓄電量を多くするには、電圧V0と電源電圧VIの差を大きくすることが望ましい。
【0024】
図3は本発明に係る電動巻上下装置用電源装置の他のシステム構成例を示すブロック図である。本電動巻上下装置用電源装置が図2に示す電動巻上下装置用電源装置と相違する点は、本電動巻上下装置用電源装置では、インバータ(INV)基本制御部31を備えた汎用インバータ制御装置30を使用し、該汎用インバータ制御装置30を制御部23で制御する構成を採用している。汎用インバータ制御装置30のインバータ基本制御部31に図2の制御部23が接続され、該制御部23に巻上巻下を指示する押釦スイッチ32a、32bを備えた操作ボックス32が接続されている。
【0025】
制御部23には、図2と同様、開閉器18の作動コイル18X、開閉器22の作動コイル22X、開閉器24の作動コイル24Xが接続され、開閉器18、開閉器22、開閉器24の開閉制御は該制御部23で行うようになっている。また、インバータ14の基本制御、制動用開閉素子19の開閉制御はインバータ基本制御部31で行うようになっている。図5は本電動巻上下装置用電源装置の制御部23及びインバータ基本制御部31の動作の流れを示す図である。以下、図5に基いて動作を説明する。
【0026】
先ず、ステップST11において、電源スイッチ(図示せず)を操作し、電源を投入する。続いてステップST12においては、直流回路12の電圧VDCが380Vを超えたかを判断し、ステップST15においては、電気二重層キャパシタ17の蓄電電圧VEが電源電圧VIより小さいかを判断する。ステップST12において、イエス(Y)の場合はステップST13に移行し、ノー(N)であればステップST14に移行する。また、ステップST15において、イエス(Y)の場合はステップST16に移行し、ノー(N)であればステップST17に移行する。
【0027】
ステップST13ではインバータ基本制御部31は制動用開閉素子19を閉(ON)とし、ステップST14ではインバータ基本制御部31は制動用開閉素子19を開(OFF)とする。また、ステップST16では制御部23は作動コイル18Xへの作動電流の通電を遮断して開閉器18を開(OFF)、作動コイル22Xへ作動電流を通電して開閉器22を閉(ON)、作動コイル24Xへの作動電流の通電を遮断して開閉器24を開(OFF)とする。また、ステップST17では制御部23は作動コイル18Xへ作動電流を通電して開閉器18を閉(ON)、作動コイル22Xへの作動電流の通電を遮断して開閉器22を開(OFF)、作動コイル24Xへ作動電流を通電して開閉器24を開(ON)とする。上記ステップST12、ST13、ST14はインバータ基本制御部31の処理であり、ステップST15、ST16、ST17は制御部23の処理である。
【0028】
電源投入があって、ステップST15で電気二重層キャパシタ17の蓄電電圧VEが電源電圧VIより小さく、ステップST16で制御部23により開閉器18を開(OFF)、開閉器22を閉(ON)、開閉器24を開(OFF)とした状態で、ステップST12で直流回路12の電圧VDCが380Vより大きく(>380V)なり、ステップST13において、インバータ基本制御部31が制動用開閉素子19を閉(ON)とすると、昇降用電動機15で発生した回生電力は直流回路12から初期充電用抵抗器21を通して電気二重層キャパシタ17に蓄電される。
【0029】
電気二重層キャパシタ17の蓄電電圧VEが上昇し、蓄電電圧VEが電源電圧VI以上(VE≧VI)となり、ステップST17で開閉器18を閉(ON)、開閉器22を開(OFF)、開閉器24を閉(ON)とすると、昇降用電動機15で発生した回生電力は直流回路12から開閉器18を通して電気二重層キャパシタ17に蓄電される。この状態で電気二重層キャパシタ17が満充電となり、直流回路12の電圧VDCが380Vを超える(VDC>380V)。ステップST13においてインバータ基本制御部31により、制動用開閉素子19が閉じる(ON)と、昇降用電動機15で発生した回生電力電流は直流回路12から制動用抵抗器20、開閉器24を通して流れ、該制動用抵抗器20で消費される。
【0030】
ステップST12においてノー(N)で、ステップST14において制動用開閉素子19が開(OFF)、ステップST17で開閉器18を閉(ON)、開閉器22を開(OFF)、開閉器24を閉(ON)になると、昇降用電動機15で発生した回生電力は直流回路12から開閉器18を通して電気二重層キャパシタ17に蓄電されると共に、昇降用電動機15の力行運転時(巻上運転時)に電気二重層キャパシタ17に蓄電された電力が直流回路12に供給され、インバータ14により所定の周波数に変換されて昇降用電動機15に供給される。即ち、電気二重層キャパシタ17の充放電が行われる。
【0031】
上記のように図3に示す構成の電動巻上下装置用電源装置において、制動用開閉素子19を閉(ON)とするための直流回路12の電圧VDCは、汎用インバータ制御装置毎に決められている。この機能を電気二重層キャパシタ17の初期充電に利用することで、汎用インバータ制御装置30の基本構成を変更することなく、該汎用インバータ制御装置30に制御部23を構成する電子部品を実装した基板を搭載するだけで、本発明に係る電動巻上下装置用電源装置を低コストで提供できる。
【0032】
なお、制動用抵抗器20及び初期充電用抵抗器21は全部又は一部を兼用することができる。また、上記電動巻上下装置用電源装置は、昇降用電動機15のみを備えた電動巻上下装置を例に説明したが、昇降用電動機15の他に、例えば東西方向に移動するための横行用電動機、南北方向に移動するための走行用電動機を備えた複数軸に移動する電動巻上下装置で、電源装置から、昇降用電動機、横行用電動機、走行用電動機等に電力を供給するようにした複数軸移動用の電動巻上下装置の電源装置として利用できる。
【0033】
電気二重層キャパシタ17としては、例えば、株式会社明電舎製のバイポーラ型電気二重層キャパシタを使用する。この電気二重層キャパシタは、イオン吸脱着反応で化学反応を伴わないため、応答が早く、大電流の充放電が可能で、サイクル寿命が長く、補水等のメンテナンスが不要という特徴を有する。また、比表面積の大きい活性炭を電極に用いるため、従来型コンデンサに比べて静電容量が大きいという特徴も有している。更に、電解質は重金属を含まず、回収等に規制が無く、環境に優しい電力貯蔵デバイスとされている。
【0034】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】従来の電動巻上下装置用電源装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る電動巻上下装置用電源装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る電動巻上下装置用電源装置の他のシステム構成を示すブロック図である。
【図4】図2に示す電動巻上下装置用電源装置の動作の流れを示す図である。
【図5】図3に示す電動巻上下装置用電源装置の動作の流れを示す図である。
【0036】
11 整流器
12 直流回路
13 平滑コンデンサ
14 インバータ
15 昇降用電動機
16 交流電源
17 電気二重層キャパシタ
18 開閉器
19 制動用開閉素子
20 制動用抵抗器
21 初期充電用抵抗器
22 開閉器
23 制御部
24 開閉器
30 汎用インバータ制御装置
31 インバータ(INV)基本制御部
32 操作ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流器と、直流回路と、インバータとを備え、交流電源からの交流を前記整流器で直流に変換し、前記直流回路を介して前記インバータに供給し、該インバータで交流に変換して昇降用電動機に供給すると共に、該昇降用電動機の回生時に発生する回生電力を前記インバータにより直流に変換して前記直流回路に供給し、該回生電力により前記直流回路電圧が所定電圧V0に達したら、制動用開閉素子を閉じて前記直流回路から前記回生電力電流を制動用抵抗器に通電し消費するように構成した電動巻上下装置用電源装置であって、
前記直流回路に開閉素子を介して接続した電気二重層キャパシタと、
前記昇降用電動機の回生時に前記開閉素子を閉じて前記回生電力を前記直流回路から前記電気二重層キャパシタに蓄電し、前記昇降用電動機の力行運転時に前記電気二重層キャパシタの蓄電電力を前記直流回路及び前記インバータを介して前記昇降用電動機に供給する充放電制御手段と、
前記電気二重層キャパシタの初期充電を行うための所定抵抗値を有する初期充電用抵抗器と、
前記電気二重層キャパシタの電圧VEが所定電圧値Vより小さい(VE<V)場合、前記充放電制御手段による前記電気二重層キャパシタの充放電を停止し、前記回生電力により前記直流回路電圧が前記所定電圧V0に達した場合に前記制動用開閉素子を閉じて該回生電力を前記初期充電用抵抗器を通して前記電気二重層キャパシタに蓄電すると共に、前記電気二重層キャパシタの電圧VEが前記所定電圧値V以上(VE≧V)になった場合、前記充放電制御手段による前記電気二重層キャパシタの充放電を再開する充放電・初期充電切替制御手段と、を設けたことを特徴とする電動巻上下装置用電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動巻上下装置用電源装置において、
前記所定電圧値Vは、前記交流電源電圧をVACとした場合、VはV=√2×VACであることを特徴とする電動巻上下装置用電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動巻上下装置用電源装置において、
電動巻上下装置用電源装置は、汎用インバータ制御装置と、該汎用インバータ制御装置に制御指令信号を送る制御部とを備え、
前記汎用インバータ制御装置は、前記充放電制御手段及び前記充放電・初期充電切替制御手段が有する機能を除く、前記インバータの基本的制御及び前記制動用開閉素子の開閉制御を行うインバータ基本制御部を備えていることを特徴とする電動巻上下装置用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−148243(P2010−148243A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322862(P2008−322862)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000129367)株式会社キトー (101)
【Fターム(参考)】