説明

電動巻上横行装置用電源装置

【課題】部品点数を増やすことなく、電源投入後蓄電デバイスへの初期充電待ち時間なしに直に昇降・横行運転ができ、昇降用電動機、横行用電動機の回生時には発電する回生電力を蓄電デバイスに蓄電でき、力行時にはこの蓄電した力を昇降用電動機、横行用電動機に供給できる省エネルギー型の電動巻上横行装置用電源装置を提供すること。
【解決手段】交流電源19の投入時、蓄電デバイス18の蓄電量がゼロ又は放電により少なくなっている場合横行制動用開閉素子17及び初期充電用抵抗器16を介して昇降用電動機M2及び横行用電動機M1の回生電力により初期充電を行い、横行制動用開閉素子17の満充電後は充放電用開閉接点32を閉じて力行・回生時に蓄電デバイス18の放電・充電を行い、更に蓄電デバイス18が過充電になるときは昇降制動用開閉素子27を介して回生電力電流を昇降制動用抵抗器29に通電し、発熱消費させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動チェーンブロックや電動ホイスト等の電動巻上横行装置用電源装置に関し、特に電源投入後、蓄電デバイスへの初期充電待ち時間なしに直に昇降運転及び横行運転でき、且つ昇降用電動機及び横行用電動機の回生時に発電する回生電力を効率よく電気二重層キャパシタやリチュウムイオンキャパシタ等からなる蓄電デバイスに蓄電し、力行時にこの蓄電した電力を昇降用電動機及び横行用電動機に供給することができる省エネルギー型の電動巻上横行装置用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、全産業分野において省エネルギー化が強く要望されている。天井クレーン等に用いられる電動チェーンブロックや電動ホイスト等の電動巻上横行装置用電源装置においても、荷巻下げ時に昇降用電動機が発電する回生電力のみではなく、横行時に荷振れによる短周期で発生する力行・回生時の回生電力も蓄電することが要望されている。
【0003】
図1は従来のこの種の電動巻上横行装置用電源装置のシステム構成例を示す図である。図示するように、電動巻上横行装置用電源装置は、横行用電源回路110と昇降用電源回路120を備えている。横行用電源回路110は、整流器111と、平滑コンデンサ113を備えた直流回路112と、横行インバータ114を備えている。また、昇降用電源回路120は、整流器121と、平滑コンデンサ123を備えた直流回路122と、昇降インバータ124を備えている。交流電源116は昇降用電源回路120の整流器121にのみ接続され、該整流器121で交流電源116からの交流を直流に変換し、直流電力を昇降用電源回路120の直流回路122と横行用電源回路110の直流回路112に供給するようになっている。横行用電源回路110の直流回路112から横行インバータ114に供給された直流電力は所定周波数の交流電力に変換され、横行用電動機M1に供給され、昇降用電源回路120の直流回路122から昇降インバータ124に供給された直流電力は所定周波数の交流電力に変換され、昇降用電動機M2に供給されるようになっている。
【0004】
横行用電源回路110の直流回路112と昇降用電源回路120の直流回路122とに、共通に1台の蓄電デバイス117が接続され、整流器121で変換された直流、横行用電動機M1の回生電力を横行インバータ114で変換した直流、及び昇降用電動機M2の回生電力を昇降インバータ124で変換した直流を蓄電デバイス117に蓄電するようになっている。また、蓄電デバイス117に蓄電された直流は横行用電源回路110の直流回路112及び昇降用電源回路120の直流回路122を介して横行インバータ114や昇降インバータ124に供給され、該横行インバータ114や昇降インバータ124で交流に変換され、横行用電動機M1や昇降用電動機M2に供給するようになっている。
【0005】
134、133はそれぞれ横行用電源回路110の突入電流抑制抵抗器、及び該突入電流抑制抵抗器134をバイパス(無効と)する開閉接点であり、136、135はそれぞれ昇降用電源回路120の突入電流抑制抵抗器、及び該突入電流抑制抵抗器136をバイパス(無効と)する開閉接点である。また、蓄電デバイス117は初期充電用抵抗器137と初期充電用開閉器接点138の直列回路と、充放電用開閉接点139との並列回路を介して横行用電源回路110の直流回路112及び昇降用電源回路120の直流回路122に接続されている。なお、整流器111及び横行インバータ114を含む横行用電源回路110はインバータユニットINU1として構成されており、整流器121及び昇降インバータ124を含む昇降用電源回路120はインバータユニットINU2として構成されている。インバータユニットINU1,INU2の基本的ハード構成はそれぞれ汎用インバータユニットであり、市販されているものを使用することもできる。
【0006】
上記システム構成の電動巻上横行装置用電源装置において、モータ容量としては、昇降用電動機M2に例えば定格容量3.7kw、横行用電動機M1に例えば定格容量0.4kwのものを用いる。このように横行用電動機M1の定格容量が昇降用電動機M2の定格容量に比べて十分小さいことから、横行インバータ114の電源を昇降用電源回路120から横行用電源回路110の直流回路112を経由して供給するようにしても容量的に問題ない。また、電源投入時は、制御部141、制御部144の制御により開閉接点133、開閉接点135、初期充電用開閉器接点138、充放電用開閉接点139が開いている状態で交流電源116を投入する。これにより突入電流抑制抵抗器134、突入電流抑制抵抗器136を通して直流回路112、直流回路122に電流が供給されるから、過大な突入電流は抑制される。突入電流が終了した時点で開閉接点133、開閉接点135を閉じる。平滑コンデンサ113、平滑コンデンサ123は電源投入後約1秒で充電される。蓄電デバイス117の蓄電量がゼロ又は長時間蓄電されず自然放電により蓄電量が微量となった場合は初期充電用開閉器接点138を閉じて初期充電用抵抗器137を通して蓄電デバイス117を充電する。初期充電は約180秒程度で完了となる。初期充電完了となった時点で初期充電用開閉器接点138を開いて、充放電用開閉接点139を閉じる。これにより横行用電動機M1や昇降用電動機M2の力行時及び回生時に蓄電デバイス117の充放電が可能となる。
【0007】
また、横行用電源回路110、昇降用電源回路120にはそれぞれ制御部141、制御部144が設けられている。制御部141には電圧センサ143により検出された直流回路112の直流電圧Vが入力され、制御部144には電圧センサ146により検出された直流回路122の直流電圧Vが入力されるようになっている。また、142は横行制動用開閉素子(トランジスタ)であり、制御部141は蓄電デバイス117の満充電で、横行用電動機M1の回生時に該横行制動用開閉素子142を閉じて、回生電流を制動抵抗器148に通電して発熱消費するようになっている。また、145は昇降制動用開閉素子(トランジスタ)であり、制御部144は蓄電デバイス117が満充電で、昇降用電動機M2の回生時に該昇降制動用開閉素子145を閉じて、回生電流を制動抵抗器149に通電して発熱消費するようになっている。このようにして直流回路112と直流回路122の過電圧、及び蓄電デバイス117の過充電を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−100384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術では、蓄電デバイス117に、例えば電気二重層キャパシタ又はリチュウムイオンキャパシタ等を使用するが、新たな蓄電デバイス117が設置されたばかりで蓄電量がゼロ又は長期間の放電により蓄電量が微小になっている場合、所定の抵抗値を有する初期充電用抵抗器137を通して昇降用電源回路120の直流回路122の電圧を印加し所定値の電流で電気二重層キャパシタ又はリチュウムイオンキャパシタ等からなる蓄電デバイス117をその蓄電電圧が所定電圧に達するまで充電(初期充電)する必要がある。そのためこの初期充電の間(例えば180秒)電動巻上横行装置の運転ができないという問題がある。
【0010】
また、日々の電源投入の都度、初期充電のために交流電源116からの交流を整流器121で直流に変換した電流を使用するため、その分余分な電力を消費するという問題もある。また、初期充電用抵抗器137や該初期充電用抵抗器137を直流回路122と蓄電デバイス117の間に接続・開放するための初期充電用開閉器接点138、充放電用開閉接点139等の部品が必要となり、部品点数が増え、その分電動巻上横行装置の価格が高くなるという問題もある。
【0011】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、部品点数を増やすことなく、電源投入後蓄電デバイスへの初期充電待ち時間なしに直に昇降・横行運転ができ、昇降用電動機、横行用電動機の回生時には発電する回生電力を蓄電デバイスに蓄電でき、力行時にはこの蓄電した力を昇降用電動機、横行用電動機に供給できる省エネルギー型の電動巻上横行装置用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、整流器と、直流回路と、昇降インバータとを備え、交流電源からの交流を整流器で直流に変換し直流回路を介して昇降インバータに供給し、該昇降インバータで交流に変換して昇降用電動機に供給する昇降用電源回路と、横行インバータを備え、直流回路からの直流を横行インバータに供給し、該横行インバータで交流に変換して横行用電動機に供給する横行用電源回路と、昇降用電源回路と横行用電源回路とで共用する蓄電デバイスと、直流回路に該直流回路の電圧値に応じてON・OFFする第1制動用開閉素子を介して接続された制動用抵抗器と、直流回路に第1制動用開閉素子がONする直流回路の電圧値より低い直流回路の電圧値でONする第2制動用開閉素子を介して接続され蓄電デバイスと接続する初期充電用抵抗器と、直流回路に接続され蓄電デバイスと接続する充放電用開閉素子と、を設けたことを特徴とする電動巻上横行装置用電源装置にある。
【0013】
また、本発明は、上記電動巻上横行装置用電源装置において、充放電用開閉素子は、蓄電デバイスの端子間電圧が初期充電完了した初期充電完了電圧値以上でONし、整流器の出力電圧値をVo、蓄電デバイスの初期充電完了電圧値をVs、蓄電デバイスの許容最大電圧値をVmax、第2制動用開閉素子をONする電圧値V、第1制動用開閉素子をONする電圧値Vとした場合、下記の関係が成立することを特徴とする。
0.95×Vo≦Vs<Vo
Vmax/1.05≦V≦Vmax
Vo<V<V
【0014】
また、本発明は、上記電動巻上横行装置用電源装置において、蓄電デバイスは電気二重層キャパシタ又はリチュウムイオンキャパシタであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記電動巻上横行装置用電源装置において、昇降用電源回路と横行用電源回路に、少なくとも整流器、平滑コンデンサを備えた直流回路、インバータ及び制御部を備えた汎用インバータユニットを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、昇降用電源回路と横行用電源回路とで共用する蓄電デバイスと、直流回路に該直流回路の電圧値に応じてON・OFFする第1制動用開閉素子を介して接続された制動用抵抗器と、直流回路に第1制動用開閉素子がONする直流回路の電圧値より低い直流回路の電圧値でONする第2制動用開閉素子を介して接続され蓄電デバイスと接続する初期充電用抵抗器と、直流回路に接続され蓄電デバイスと接続する充放電用開閉素子と、を設けたので、交流電源を投入時、蓄電デバイスが初期充電を完了していない場合には、充放電用開閉素子をOFFとするので、蓄電デバイスの蓄電量に関係なく、直ちに昇降及び横行運転を行うことができる。
【0017】
また、蓄電デバイスへの初期充電は、横行用電動機及び昇降用電動機の回生時に発生する回生電力を用いて、第2制動用開閉素子から初期充電用抵抗器を介して蓄電デバイスに充電を行うので、初期充電のための電力を節約できる。また、第2制動用開閉素子がONする直流回路の電圧を昇降制動用開閉素子がONする直流回路の電圧よりも低く設定した構成としたので、蓄電デバイスへの蓄電によって処理することができる回生電力を超える回生電力が発生した場合には、初期充電中及び充放電運転中に係わらず第1制動用開閉素子を介して制動用抵抗器で熱エネルギーに自動的に変換処理されるので、横行用電動機や昇降用電動機が力行運転か回生運転かを判別する部品等を必要とせず、初期充電、横行・昇降の力行・回生時の放電・充電、蓄電デバイスの過充電防止をするから、必要部品点数が少なくて済み、装置のコストダウン及びコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の電動巻上横行装置用電源装置のシステム構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る電動巻上横行装置用電源装置のシステム構成例を示す図である。
【図3】充放電用開閉接点32と昇降制動用開閉素子27と横行制動用開閉素子17の動作条件を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図2は本発明に係る電動巻上横行装置用電源装置のシステム構成例を示す図である。図示するように、本電動巻上横行装置用電源装置は、横行用電源回路10と昇降用電源回路20を備えている。昇降用電源回路20は、整流器21と、平滑コンデンサ23を備えた直流回路22と、昇降インバータ24を備え、交流電源19からの交流(R相、S相、T相の3相交流電流)を整流器21で直流に変換し、直流回路22を介して昇降インバータ24に供給し、該昇降インバータ24で所定周波数の交流に変換して昇降用電動機M2に供給するように構成されている。横行用電源回路10は、整流器11と、平滑コンデンサ13を具備し、昇降用電源回路20の直流回路22に接続された直流回路12を備え、直流回路22からの直流を該直流回路12を経由して横行インバータ14に供給し、該横行インバータ14で交流に変換して横行用電動機M1に供給するように構成されている。
【0020】
交流電源19は図1の従来例と同様、昇降用電源回路20の整流器21のみに接続されているが、昇降用電動機M2、横行用電動機M1の定格容量は図1の場合と同様、例えば昇降用電動機M2が3.7kw、横行用電動機M1が0.4kwとなっており、昇降用電動機M2の定格容量が横行用電動機M1の定格容量に対して十分大きい(通常横行用電動機M1の容量は昇降用電動機M2の1/8〜1/4)から昇降用電源回路20から横行用電源回路10に電力を供給するようにしても容量的に問題ない。なお、図1の場合と同様、整流器11及び横行インバータ14を含む横行用電源回路10はインバータユニットINU1として構成されており、整流器21及び昇降インバータ24を含む昇降用電源回路20はインバータユニットINU2として構成されている。インバータユニットINU1,INU2のハード構成はそれぞれ汎用インバータユニットであり、市販されているものを使用することもできる。ここで、インバータユニットINU1では整流器11は使用していない。
【0021】
18は電気二重層キャパシタ又はリチュウムイオンキャパシタ等で構成される蓄電デバイスであり、該蓄電デバイス18は昇降用電源回路20と横行用電源回路10とで共用、即ち、充放電用開閉接点32を介して、昇降用電源回路20の直流回路22と横行用電源回路10の直流回路12とに接続されている。また、蓄電デバイス18は第2制動用開閉素子である横行制動用開閉素子(トランジスタ)17と初期充電用抵抗器16を通して直流回路12に接続されている。インバータユニットINU1、インバータユニットINVU2はそれぞれ制御部25、制御部26を備えている。制御部25には電圧センサ15で検出された直流回路12の直流電圧Vが入力され、制御部26には電圧センサ28で検出された直流回路22の直流電圧Vが入力されるようになっている。また、制御部25には蓄電電圧センサ31で検出された蓄電デバイス18の蓄電電圧(端子間電圧)Vが入力されるようになっている。34は横行用電源回路10の電源投入時の突入電流を抑制する突入電流抑制抵抗器、33は該突入電流抑制抵抗器36をバイパス(無効と)する開閉接点、36は昇降用電源回路20の電源投入時の突入電流を抑制する突入電流抑制抵抗器、35は該突入電流抑制抵抗器36をバイパス(無効と)する開閉接点である。開閉接点33、35はそれぞれ制御部25、制御部26の制御により電源投入時所定時間(例えば1秒間)開放して突入電流抑制抵抗器34、36を有効とし、該突入電流抑制抵抗器34、36を通して直流回路22、12に電流が供給されるようにし、過大の突入電流を抑制している。
【0022】
ここで、交流電源19は3相200Vの商用電源である。初期充電完了電圧Vは、整流器21が出力する直流電圧V(=200V×(2)1/2)の95%(≒270V)に設定することが好ましい。95%以下では、充放電用開閉接点32をONとした時にも過大な突入電流が流れ、蓄電デバイスの寿命が低下する。制御部25は電圧センサ15で検出した直流回路12の直流電圧V、蓄電電圧センサ31で検出した蓄電デバイス18の蓄電電圧Vを監視し、図3に示すように、V>Vでは充放電用開閉接点32をOFFとし、V≦Vでは充放電用開閉接点32をONとする。また、直流回路12の直流電圧が、横行・昇降用電動機の回生運転によって所定の電圧値(ここでは370V)に達したら横行制動用開閉素子(トランジスタ)17をONとし直流回路12と蓄電デバイス18を初期充電用抵抗器16を介して接続する。更に、直流回路12の直流電圧Vが所定電圧値(ここでは380V)に達したら第1制動用開閉素子である昇降制動用開閉素子(トランジスタ)27をONとし、昇降制動用抵抗器29を直流回路22に接続する。なお、初期充電が完了し充放電用開閉接点32をOFFからONに切り換えるときに直流回路電圧が高すぎる場合には、直流回路電圧が蓄電デバイスの端子間電圧まで下がるのを待ってONすることが好ましい。
【0023】
上記電動巻上横行装置用電源装置において、予め制御部25を介して横行制動用開閉素子17のONする直流回路12の直流電圧V(370V)を昇降制動用開閉素子27のONする直流回路22の直流電圧V(380V)より低く(V<V)設定する。3相200Vの交流電源19が投入されたら、制御部25は蓄電デバイス18の蓄電電圧Vと初期充電完了電圧Vを比較し、上記のようにV>Vでは、充放電用開閉接点32をOFFとする。続いて操作ボックス(図示せず)の巻上、巻下、及び右横行、左横行の押釦スイッチを操作することにより、電動巻上横行装置の昇降運転及び横行運転を行う。荷巻上の力行時は直流回路22から直流が昇降インバータ24に供給され、該昇降インバータ24で所定周波数の交流に変換して昇降用電動機M2に供給することにより、荷巻上が行われる。荷巻下の回生時は昇降用電動機M2が発電する回生交流電力を昇降インバータ24により直流変換し直流回路22に供給する。横行運転の力行時は直流回路12から直流が横行インバータ14に供給され、該横行インバータ14で所定周波数の交流に変換して横行用電動機M1に供給し、回生(減速)運転時には、横行用電動機M1が発電する回生電力は横行インバータ14により直流変換し直流回路12に供給する。昇降用電動機M2及び横行用電動機M1の回生電力により、直流回路12及び直流回路22の直流電圧は同時に昇圧する。
【0024】
制御部25は直流回路12の直流電圧Vを監視し、該直流電圧Vが横行制動用開閉素子17をONする直流電圧V(ここでは370V)以上になったら、該横行制動用開閉素子17をONとし、直流回路12からの直流電流を初期充電用抵抗器16を通して蓄電デバイス18に供給し、蓄電する。この初期充電用抵抗器16は蓄電デバイス18の初期充電に適する電流値以上の電流が流れないように抵抗値に設定されている。初期充電に適した電流値以上の回生電流(電力)が発生し、直流回路22(=直流回路12)の直流電圧が昇降制動用開閉素子27をONとする直流電圧値V(ここでは380V)以上になったら、昇降制動用開閉素子27をONとし、昇降制動用抵抗器29に通電し発熱消費させ、直流回路12、直流回路22の過電圧を防止し、巻下げ又は横行運転を継続することができる。
【0025】
蓄電デバイス18の回生電力による蓄電が進み、蓄電デバイス18の蓄電電圧Vが初期充電完了電圧Vに到達した後に充放電用開閉接点32をONし、蓄電デバイス18を直流回路11及び直流回路22と接続し、以後、昇降用電動機M2及び横行用電動機M1の力行・回生運転に伴い効率的に充放電が繰り返される。
【0026】
なお、三相200Vの商用電源が投入された時、蓄電デバイス18の蓄電電圧Vが初期充電完了電圧V以上だったときには、制御部25は充放電用開閉接点32をONとする。三相200V商用電源又は蓄電デバイス18からの電力は、突入電流抑制抵抗器34、突入電流抑制抵抗器36を通って直流回路12、直流回路22へ供給される。突入電流抑制抵抗器34、突入電流抑制抵抗器36は汎用のインバータユニットに標準的に装備されており、電源投入時から約1秒間は突入電流抑制抵抗器34、突入電流抑制抵抗器36を有効とし、約1秒経過したら開閉接点33、35をONとして突入電流抑制抵抗器34、突入電流抑制抵抗器36をバイパスして無効とする。
【0027】
上記のように充放電用開閉接点32がON状態で昇降及び横行運転を行うと、力行時には蓄電デバイス18に蓄電されている直流電力が直流回路22の突入電流抑制抵抗器36又は開閉接点35、及び直流回路12の突入電流抑制抵抗器34又は開閉接点33を通って、昇降インバータ24及び横行インバータ14に供給され、該昇降インバータ24及び横行インバータ14でそれぞれ所定周波数の交流に変換され、昇降用電動機M2及び横行用電動機M1に供給される。回生時には昇降用電動機M2及び横行用電動機M1で発電された交流回生電力はそれぞれ昇降インバータ24及び横行インバータ14により直流に変換され直流回路22及び直流回路12に供給され、該直流回路22の突入電流抑制抵抗器36又は開閉接点35、及び直流回路12の突入電流抑制抵抗器34又は開閉接点33を通って、蓄電デバイス18に供給され蓄電される。
【0028】
直流回路12(=直流回路22)の電圧Vが上昇し、昇降制動用開閉素子27をONする電圧V2(ここでは380(V))以上になったら上記のように昇降制動用開閉素子27がONとなり、直流回路22及び直流回路12から昇降制動用抵抗器29に電流が通電され発熱消費される。これにより、蓄電デバイス18が満充電になった後の回生電流を昇降制動用抵抗器29に通電し、発熱消費するから、直流回路12(=直流回路22)の過電圧、電気二重層キャパシタ又はリチュウムイオンキャパシタ等からなる蓄電デバイス18の過充電を防止できる。
【0029】
上記のように昇降用電動機M2及び横行用電動機M1を備えた電動巻上横行装置では、通常横行用電動機M1の容量は昇降用電動機M2の容量の1/8〜1/4に設定されており、横行用電動機M1の制動抵抗器である初期充電用抵抗器16の容量も昇降制動用抵抗器29の1/8〜1/4である。蓄電デバイス18への初期充電には、巻上制動用開閉素子27より容量の小さい横行制動用開閉素子17を用いて(ONすることによって)、初期充電用抵抗器16を介して充電を行うようにし、蓄電デバイス18への蓄電によって消費しきれない回生電力は昇行制動用開閉素子27を介して横行電動機M1と昇降電動機M2の回生電力を発熱消費可能な容量の昇降制動用抵抗器29に通電させ発熱消費させるから蓄電デバイス18の過充電、及び直流回路12、直流回路22の過電圧を防止することができる。また、横行用のインバータユニットINU1の制御部25に、蓄電デバイス18を接続するための上記制御機能を備え、昇降用のインバータユニットINU2は、横行用のインバータユニットINU1の直流回路12と並列接続するだけで、特別に蓄電デバイス18を接続するための改良を必要としないので、装置が簡単でコストダウンが可能となる。
【0030】
また、交流電源19の投入後、別途設けた初期充電手段により蓄電デバイス18の初期充電を行うことなく、直ちに電動巻上横行装置の昇降及び横行運転を行うことができる。また、蓄電デバイス18の初期充電も直流回路12の直流電圧Vが所定値以上となると横行用制動開閉素子17がONとなり、初期充電用抵抗器16を通して直流回路12からの電流で行うことができるので、電力利用の無駄がない。
【0031】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。蓄電デバイス18として、上記例では電気二重層キャパシタやリチュウムイオンキャパシタを使用できるが、これに限定されるものではなく、充放電特性のよいリチュウムイオン電池等も利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、電気二重層キャパシタやリチュウムイオンキャパシタ等からなる蓄電デバイスを搭載し、昇降用電動機及び横行用電動機の回生時の回生電力を蓄電デバイスに蓄電し、昇降用電動機及び横行用電動機の力行時に、蓄電デバイスに蓄電した電力を昇降用電動機及び横行電動機に供給するようにした電動巻上横行装置用電源装置において、昇降用電源回路及び横行用電源回路に整流器及びインバータを備えた市販されている汎用のインバータユニットを用いて、部品点数を増やすことなく、蓄電デバイスの初期充電の待ち時間がなく、電源投入後直ちに運転を実行でき、電動巻上横行装置用電源装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 横行用電源回路
11 整流器
12 直流回路
13 平滑コンデンサ
14 横行インバータ
15 電圧センサ
16 初期充電用抵抗器
17 横行制動用開閉素子
18 蓄電デバイス
19 交流電源
20 昇降用電源回路
21 整流器
22 直流回路
23 平滑コンデンサ
24 昇降インバータ
25,26 制御部
27 昇降制動用開閉素子
28 電圧センサ
29 昇降制動用抵抗器
31 蓄電電圧センサ
32 充放電用開閉接点
33 開閉接点
34 突入電流抑制抵抗器
35 開閉接点
36 突入電流抑制抵抗器
M1 横行用電動機
M2 昇降用電動機
INU1 インバータユニット
INU2 インバータユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流器と、直流回路と、昇降インバータとを備え、交流電源からの交流を前記整流器で直流に変換し前記直流回路を介して前記昇降インバータに供給し、該昇降インバータで交流に変換して昇降用電動機に供給する昇降用電源回路と、
横行インバータを備え、前記直流回路からの直流を前記横行インバータに供給し、該横行インバータで交流に変換して横行用電動機に供給する横行用電源回路と、
前記昇降用電源回路と前記横行用電源回路とで共用する蓄電デバイスと、
前記直流回路に該直流回路の電圧値に応じてON・OFFする第1制動用開閉素子を介して接続された制動用抵抗器と、
前記直流回路に前記第1制動用開閉素子がONする前記直流回路の電圧値より低い前記直流回路の電圧値でONする第2制動用開閉素子を介して接続され前記蓄電デバイスと接続する初期充電用抵抗器と、
前記直流回路に接続され前記蓄電デバイスと接続する充放電用開閉素子と、
を設けたことを特徴とする電動巻上横行装置用電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動巻上横行装置用電源装置において、
前記充放電用開閉素子は、前記蓄電デバイスの端子間電圧が初期充電完了した初期充電完了電圧値以上でONし、
前記整流器の出力電圧値をVo、前記蓄電デバイスの初期充電完了電圧値をVs、蓄電デバイスの許容最大電圧値をVmax、前記第2制動用開閉素子をONする電圧値V、前記第1制動用開閉素子をONする電圧値Vとした場合、下記の関係が成立することを特徴とする。
0.95×Vo≦Vs<Vo
Vmax/1.05≦V≦Vmax
Vo<V<V
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動巻上横行装置用電源装置において、
前記蓄電デバイスは電気二重層キャパシタ又はリチュウムイオンキャパシタであることを特徴とする電動巻上横行装置用電源装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電動巻上横行装置用電源装置において、
前記昇降用電源回路と横行用電源回路に少なくとも整流器、平滑コンデンサを備えた直流回路、インバータ及び制御部を備えた汎用インバータユニットを用いることを特徴とする電動巻上横行装置用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−121664(P2012−121664A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272786(P2010−272786)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000129367)株式会社キトー (101)