説明

電動式ブラシ装置

【課題】頭皮のあらゆる箇所にブラシ部を正対させると共に、泡漏れを防ぐことができるようにする。
【解決手段】駆動部としての装置本体2と、この装置本体2により動作するブラシ部3とを有する。このブラシ部3は、可撓性を有する材質から成る基板4と、この基板4の表面4Sに突出して設けられた複数の突起5を有して構成される。前記基板4の周縁を保持する枠体6を、前記装置本体2に対して支持手段7を介して揺動可能に設ける。前記枠体6の内側部6Aにパッキン20の下部20Bを接続し、このパッキン20の上部20Aを装置本体2の底板9に対し摺動自在に接触させる。更に、前記装置本体2と枠体6とブラシ部3とパッキン20とで画定される拡縮空間29内にシャンプーの収容体26を収容し、前記基板4に内外の連通孔21,22を設ける。これによって、前記連通孔21,22以外から泡が漏れないようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式ブラシ装置に関するものであり、特に、頭皮の洗浄やマッサージ等に使用することができる電動式ブラシ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動式ブラシ装置として、駆動部と、この駆動部によって動作する施療部(本願発明のブラシ部に相当する)とを有し、前記駆動部に、前記施療部の基板の周縁を前記駆動部に対する位置関係が固定された状態で着脱自在に保持する枠体を設けると共に、前記基板の中心に接続して該基板の面と交差する方向にこの基板を撓ませる往復駆動手段を設け、前記施療部が、可撓性を有する材質から成る前記基板と、この基板に突出して設けられた複数の突起とで構成されるマッサージ装置が知られている。そして、このマッサージ装置では、使用者は、駆動部を把持し、突起の先端部を頭皮に押し当てて手で保持し、前記往復駆動手段によって前記施療部の基板を撓ませることで、この基板の撓みに伴って、この基板に設けられた複数の前記突起を繰り返し倒したり起こしたりさせることで相互に開閉させ、これらの相互に開閉する突起によって、揉んだり擦ったり叩いたりするように、頭皮を複雑にマッサージすることができるものである。これは、図8及び図9に示すように、駆動部101により駆動される施療部102における基板103が下に撓んだ湾曲凸状態と上に撓んだ湾曲凹状態との間で変形を繰り返す際、中心側から周辺側に配置された複数種類の突起104,105が、前記基板103の撓みに伴って動くことで、頭皮Sに押し当てられた前記突起104,105によって頭皮Sを指先で行うようにマッサージすることができるというものであり、基板103の外周は枠体106に取り付けられており、また基板103とその上方にある伸縮可能な覆い体107との間に、例えば洗髪用シャンプーの収容体108を設け、この収容体108は、弾性体である連続気泡型の発泡ポリウレタンや発泡ゴム等から成る合成スポンジ或いは海綿(天然スポンジ)等によって形成されており、図8に示すように、基板103が下に撓んだ湾曲凸状態のときに、収容体108はほぼ非圧縮状態或いはやや圧縮状態となり、一方、図9に示すように基板103が上に撓んだ湾曲凹状態のときに、収容体108は圧縮状態となり、洗髪用シャンプーを突起105に設けた連通部109より外部に噴出させるようになっているものである(例えば特許文献1)。
【0003】
また、このような電動式ブラシ装置において、駆動部の枠体に対して基板の縁を摺動自在に設けたものも知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−228922号公報
【特許文献2】特開2006−187544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術にあっては、使用者は、複数の突起104,105を頭皮Sに数多くほぼ均等に当てるためには、前記施療部102が頭皮Sに対して正対するように前記駆動部101を保持する必要がある。
【0006】
しかしながら、頭皮は頭頂部では上向き、頭側部では横向きとなっており、このような頭皮に前記施療部が正対するように前記マッサージ装置本体を保持するには、頭皮Sの位置によって前記施療部102の向きを変えるようにする必要があるが、手首をひねったり前記駆動部を持ち直したりしなければ、前記施療部102を頭皮Sに正対させることができないという虞があった。また、人間の頭部は単純な形状ではないため、従来のマッサージ装置では、頭部の表面、即ち頭皮Sを良好にマッサージ或いは洗浄することができないという虞もあった。
【0007】
このような問題を解決する手段として、本出願人は、特願2009−10335号に係る電動式ブラシ装置を提案している。この先願発明では、駆動部に対してブラシ部の基板の周縁を保持する枠体が支持手段を介して前記駆動部に対して可動に設けられ、ブラシ部が頭皮に正対する状態に自動修正できる、というものである。そして、このような自動修正できるようにしたときであっても、その可動をよりスムーズにすることが要求される。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、駆動装置にブラシ部を接続して、このブラシ部の突起を頭皮に押し当てて頭皮を指先で行うように洗浄又はマッサージする電動式ブラシ装置において、頭部のいかなる箇所の頭皮に対しても、前記ブラシ部の突起をスムーズに正対できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、駆動部と、この駆動部によって動作するブラシ部とを有し、このブラシ部が、可撓性を有する材質から成る基板と、この基板の表面に突出して設けられた複数の突起とで構成され、前記駆動部に、前記基板の周縁を保持する枠体を設けた電動式ブラシ装置において、前記枠体が前記駆動部に対して支持手段を介して可動に設けられ、一側を前記駆動部に接続すると共に、他側を前記枠体に接続して前記駆動部と前記枠体との間に内外を区画するパッキンを介在させ、このパッキンの前記一側を前記駆動部に対し摺動自在に接触させるか或いは前記他側を前記枠体に対し摺動自在に接触させると共に、前記駆動部と前記パッキンと前記枠体と前記基板とで画定される拡縮空間内に液状洗剤の収容体を設け、前記拡縮空間の内外を連通する連通部を前記ブラシ部に設けたことを特徴とする電動式ブラシ装置である。
【0010】
請求項2の発明は、前記パッキンの前記一側又は他側が、前記駆動部又は枠体に対して圧接することを特徴とする請求項1記載の電動式ブラシ装置である。
【0011】
請求項3の発明は、前記支持手段が、軸及びこの軸と接続される軸受部とから構成されると共に、前記軸の揺動中心軸線が、前記基板の中心軸線に対して直交することを特徴とする請求項1記載の電動式ブラシ装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、前記突起の当接状態に起因して、前記ブラシ部を支持する枠体が前記支持手段によって前記駆動部に対して動くので、前記ブラシ部が頭皮に正対する状態に自動修正でき、さらに前記駆動部と前記枠体との間に内外を区画するパッキンがあっても、このパッキンは固定して接続されるのではなく、摺動自在に圧接していることで、パッキンの接続抵抗を小さくでき、前記枠体を前記駆動部に対してスムーズに動かすことができる。そして、前記拡縮空間の拡縮に伴って圧縮と復元を繰り返す前記収容体に収容された液状洗剤の泡が、前記連通部以外から漏れることを、前記パッキンによって阻止することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、前記パッキンの前記一側又は他側が、前記駆動部又は枠体に対して圧接するので、液状洗剤の泡が前記連通部以外から漏れることを、より確実に阻止することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、前記支持手段を、軸及びこの軸と接続される軸受部とで構成し、前記軸の揺動中心軸線を、前記基板の中心軸線に対して直交させたことで、前記軸を中心に、前記枠体に保持された前記ブラシ部を頭皮に対し自動的に正対させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1を示す上方からの全体斜視図である。
【図2】同、下方からの全体斜視図である。
【図3】同、断面図である。
【図4】同、枠体周りの分解斜視図である。
【図5】同、ブラシ部周りの分解斜視図である。
【図6】本発明の実施例2を示す断面図である。
【図7】同、枠体周りの分解斜視図である。
【図8】従来例を示す湾曲凸状態のブラシ部周りの断面図である。
【図9】従来例を示す湾曲凹状態のブラシ部周りの断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0017】
図1〜図5は実施例1を示している。なお、本例においては、図3の静止した姿勢を基準として上下を規定する。1は本発明の電動式ブラシ装置である。この電動式ブラシ装置1は、駆動部としての装置本体2と、この装置本体2の下部側に着脱自在に保持されるブラシ部3とを有して構成されている。
【0018】
そして、前記ブラシ部3は、基板4と、この基板4の下面である表面4Sと交差する方向である下方側に突出して一体に設けられた複数の突起5とで構成されている。なお、前記基板4は、前記装置本体2に取り付けられていない自然状態において、前記突起5が突出した表面4S側が凸となるように形成されている。また、前記基板4は、平面視で楕円状であって、可撓性及び弾性を有するエラストマーによって形成されている。また、複数の前記突起5も前記基板4と一体的に設けられており、この突起5は内側のものの下方への突出長さaより、外側のものの下方への突出長さAが大きくなるように形成されている(a<A)。そして、前記基板4の縁4Aは、前記装置本体2と一体的に形成された底面部2B側に設けられた枠体6の縁に固定されている。
【0019】
なお、ここで言う「固定」とは、多少の動きを許容して接続される状態を含むものであり、本実施例では、前記基板4の縁4Aを前記枠体6に嵌合させることで、両者を全周に亘って着脱自在に接続している。また、図中4Hは、前記基板4の平面の中心Oと直交する中心軸線Xと直交する長径方向Yの一端に、一体に設けられた摘みである。更に、図中Zは前記基板4の短径方向を示している。
【0020】
前記枠体6は、前記ブラシ部3を構成するエラストマーほど変形し易くはないものの、弾性変形可能な合成樹脂製であり、平面視で前記基板4とほぼ一致するような楕円環状に形成されている。そして、前記中心軸線X上に、平面視における前記枠体6の中心が配置されている。また、前記枠体6は、前記装置本体2の底面部2Bから隙間Lを隔ててやや下方に設けられている。
【0021】
また、前記枠体6は、前記装置本体2に対して支持手段7を介して揺動自在に設けられている。この支持手段7は、前記基板4の中心軸線Xと直交する短径方向Z´の両端に配置されている。
【0022】
そして、前記枠体6の形状は、この枠体6の長径方向Y´においては、中心軸線Xの通る中心部O´側となる内側部6Aよりも、反中心部O´側となる外側部6Bが装置本体2から離間するように形成されている。即ち、長径方向Y´においては、図3において水平な底面部2Bを含む仮想水平面2B´を基準面としたときに、中心部O´側の内側部6Aとそれに正対向する仮想水平面2B´までの距離mよりも、外側部6Bとそれに正対向する仮想水平面2B´までの距離Mが次第に大きくなっている(m<M)。このため、前記枠体6の長径方向Y´の形状は、中心部O´側の内側部6Aが高く、外側部6B側に向かって次第に低くなるようにほぼ円弧状に形成されている。なお、前記枠体6の円弧の曲率は、頭皮Sの平均的な曲率とほぼ同じであると共に、前記枠体6の外縁6Cが同一の球面上を通るように形成されている。
【0023】
一方、前記枠体6の短径方向Z´の形状は、短径方向Z´に沿った各部位においては、短径方向Z´に沿った各部位とそれに正対向する仮想水平面2B´までの距離Nはほぼ同じに形成されている。即ち、前記枠体6は、短径方向Z´においては平坦に形成されている。なお、前記枠体6を短径方向Z´でも円弧状となるように形成してもよい。
【0024】
また、前記枠体6の外側部6Bの外縁6Cには、下向きの小突部が形成されている。そして、前記ブラシ部3の基板4の、上向き内側に倒U字状或いはコ字状に折り返された前記縁4Aが、前記枠体6の外縁6Cに嵌合している。なお、前記枠体6の内側に形成された窓孔6Dは、中心軸線Xを中心とした平面視円形であって、この窓孔6Dとケース本体2Aの底面部2Bとの間には、エラストマー等の可撓性及び弾性を有する材質から成る後述するパッキン20が設けられている。
【0025】
前記支持手段7は、軸8と、軸受部8Aとで構成されている。そして、前記軸8は、前記装置本体2の底面部2Bを構成する底板9の左右にそれぞれ設けられている。即ち、前記軸8は、中心軸線Xと直交する短径方向Z´と平行でやや上方の揺動回動中心Z´´の両側に外向きに突設している。一方、前記軸8を受ける前記軸受部8Aは、前記枠体6の左右にそれぞれ設けられている。実施例では、前記軸受部8Aは、前記枠体6の上面に突設した一対の吊下部材6Fの上部に、揺動回動中心Z´´が短径方向Z´と平行になるように設けられている。そして、前記吊下部材6Fの上部に設けられた前記軸受部8Aは、前記軸8によって回動自在に接続され、これにより、前記枠体6は前記軸8を回動中心として揺動できるようになっている。なお、図中8Bは、前記軸受部8Aの外側を覆う蓋板を示している。
【0026】
前記装置本体2は、底面側が開口すると共に片手で把握可能な大きさを有する前記ケース本体2Aと、このケース本体2Aの開口した底面側を閉塞する前記底面部2Bとを有して構成されている。この底面部2Bは、前記底板9と覆い体11とを有する。そして、前記底板9は、平面視において前記枠6と外形がほぼ等しい楕円状に形成されており、前記ケース本体2Aの底縁にその外周が固定されていると共に、前記底板9の中央部には上下方向に貫通する円形の窓孔10が形成されており、この窓孔10を覆って伸縮可能な前記覆い体11が設けられている。この覆い体11は、例えばゴム或いは合成ゴムやエラストマー等の可撓性を有する材質から成る蛇腹状の膜によって、前記窓孔10を水密に封ずるように設けられているもので、その外縁を前記装置本体2のシャシー2Cと前記底板9とで挟持することで、前記底板9に対し気密に接続されている。
【0027】
そして、前記装置本体2の内部に設けられた前記シャシー2Cには、前記基板4の中心部Oを上下方向に往復動させる往復駆動手段12が設けられている。この往復駆動手段12は、駆動源としてのモータ13と、このモータ13のモータ軸(図示せず)に減速歯車機構14を介して接続されるクランク15と、このクランク15の偏心軸15Aと結合したヨーク16と、このヨーク16と一体に形成されたロッド16Aを備えている。このように、本実施例では、所謂スコッチ・ヨーク機構を採用したが、クランク機構を採用してもよい。
【0028】
なお、前記覆い体11のほぼ中央には、接続中継部材17が一体的に取り付けられている。この接続中継部材17は、その上面側と前記ロッド16Aの下端とで前記覆い体11を挟持して水密に固定すると共に、その下面側にフック17Aが設けられており、このフック17Aに、前記基板4中央の上面に設けられたフック受け部4Bが着脱自在に接続されている。従って、前記接続中継部材17は、前記モータ13の回転運動が前記クランク15とヨーク16とで往復運動に変換されることで、上下方向に往復運動するようになっている。これにより、前記フック受け部4Bが設けられた位置が、前記基板4における最大振幅部となり、その振幅は、前記クランク15の中心軸から前記偏心軸15Aまでの偏心距離Fの2倍(2F)となる。また、前記フック受け部4B及び接続中継部材17は、中心軸線X上に配置される。また、前記装置本体2の内部に設けられた前記シャシー2Cには、前記モータ13に電力を供給するための電池18が設けられていると共に、前記装置本体2の上面側表面には、前記モータ13を操作するためのスイッチ19が設けられている。
【0029】
次に、前記パッキン20について説明する。このパッキン20は、例えばゴム或いは合成ゴムやエラストマー等の可撓性を有する材質から成り、前記中心軸線Xを中心とした平面が円形リング状あって、その上部20Aの直径dが、下部20Bの直径Dよりも大きい(d<D)ほぼ裁頭円錐形となっており、さらに、前記パッキン20の上部20Aは、前記底板9の内周面9Aに線接触状に圧接して、両者を気密に接続して後述する拡縮空間29を画定している。前記内周面9Aは、その上部の直径eより下部の直径Eが次第に大きくなるように(e<E)、ほぼ裁頭円錐形状のテーパ面に形成されている。そして、後述するように、前記基板4が下に撓んだ湾曲凸状態と上に撓んだ湾曲凹状態との間で変形を繰り返すときや、前記軸8を中心として前記枠体6が揺動したときにおいて、前記パッキン20の上部20Aが前記内周面9Aより逸脱しないようになっている。このため、前記直径dの範囲は、ほぼ直径eと同じかそれ以上であり、且つ、ほぼ直径Eと同じかそれ以下に形成されるようになっている(e≦d≦E)。一方、前記パッキン20の下部20Bは、インサート成形によって、前記枠体6の内側部6Aと一体的に形成されている。
【0030】
更に、前記基板4には、前記枠体6と、この枠体6の上方に接続された前記パッキン20と、このパッキン20が当接した前記底板9と、前記底板9に対し気密に接続された前記覆い体11と、前記枠体6の下方に接続された前記基板4とで囲まれる拡縮空間29の内外を連通する小貫通孔状の第一連通部21及び第二連通部22が設けられる。そして、前記拡縮空間29には、前記各連通部21,22に連通すると共に前記基板4の撓みに応動する液状洗剤としてのシャンプーの収容体26が設けられる。また、前記中心軸線Xを中心として、複数の小突起27が前記基板4の表面4Sに環状に並べて設けられていると共に、これらの小突起27同士を接続するように、環状壁28が設けられている。また、前記基板4の表面4Sからの前記環状壁28の突出寸法は、前記小突起27の突出寸法より小さくなっている。なお、前記小突起27と環状壁28によって、前記基板4が内外に区画される。そして、前記第二連通部22は、前記小突起27と環状壁28によって囲まれた区域に形成されている。一方、前記第一連通部21は、前記小突起27と環状壁28の外側の区域に形成されている。
【0031】
前記収容体26は、前記基板4の撓みに応動して、圧縮及び復元を繰り返すことで、前記シャンプーを前記各連通部21,22から吸引したり吐出したりさせるようになっている。なお、前記収容体26は、実施例では弾性体である連続気泡型の発泡ポリウレタンや発泡ゴム等から成る合成スポンジ或いは海綿(天然スポンジ)等によって形成されており、前記基板4が下に撓んだ湾曲凸状態のときに、前記収容体26はほぼ非圧縮状態或いはやや圧縮状態となって、前記拡縮空間29に介在している。即ち、前記基板4が下に撓んだ湾曲凸状態のときに、前記収容体26の上面26Aは前記枠体6の下面及び覆い体11に接するか或いは近接し、前記収容体26の下面26Bは前記基板4の上面に接するか或いは近接し、更に前記収容体26の外周26Cは前記基板4の縁4A及び前記枠体6の外縁6Cに形成された下向きの小突部に接するか或いは近接している。一方、前記収容体26の中心部には、前記中心軸線Xに沿って貫通孔26Dが形成されている。そして、この貫通孔26Dを通して、前記フック受け部4Bと前記フック17Aが接続できるように構成されている。
【0032】
次に、上記構成について、その作用を説明する。まず使用者は、前記装置本体2を裏返し、前記枠体6に前記収容体26を乗せた後、前記フック17Aを、前記収容体26の貫通孔26Dを通して前記ブラシ部3の基板4のフック受け部4Bに接続し、更に、前記ブラシ部3の基板4の縁4Aを前記枠体6の外縁6Cに係合させる。このようにして、前記電動式ブラシ装置1が使用可能な状態となる。この際、前述したように、前記ブラシ部3の基板4は、自然状態において湾曲凸状態となっているが、前記ブラシ部3を取り付ける前記枠体6自体が長径方向Y´に対して湾曲凹状態となっていることで、前記枠体6に取り付けられた前記ブラシ部3の基板4は、その突出量が少なくとも長径方向Yでは、従来の構造に比べ小さくなる。逆に、短径方向Zでは、前記ブラシ部3の基板4の突出量は、従来の構造に比べ大きくなる。従って、湾曲凸状態において、前記突起5は、長径方向Yでは従来の構造に比べやや閉じており、短径方向Zでは従来の構造に比べやや開いている。なお、短径方向Zの両端部に設けられた前記突起5の湾曲凹状態における内側への傾斜角度は、従来構造と殆ど変わらない。
【0033】
そして、頭皮Sを洗浄したりマッサージしたりする場合、使用者は、予め前記収容体26に適量の水を含ませておく。なお、水は前記電動式ブラシ装置1を水に浸けることで、前記各連通部21,22を介して前記収容体26に吸収される。そして、前記電動式ブラシ装置1を図3の状態から裏返して前記基板4の表面4Sを上向きとし、前記小突起27と環状壁28に囲まれた区域に適量のシャンプーをシャンプー容器(図示せず)から注ぐ。この際、前記小突起27と環状壁28で囲まれた区域に注がれた前記シャンプーは、過剰に注がない限り、前記小突起27と環状壁28の外側の区域に流れ出すことはなく、少量のシャンプーは、前記第二連通部22から前記収容体26側に染み込む。
【0034】
次に、前記スイッチ19を操作すると、前記電池18から電力が給電されることで、前記モータ13が作動して前記モータ軸13Aが回転する。このモータ軸13Aの回転に伴い、このモータ軸13Aに前記減速歯車機構14を介して接続された前記クランク15が回転し、このクランク15及びこのクランク15の偏心軸15Aと結合した前記ヨーク16によって、前記モータ軸13Aの回転運動が往復運動に変換され、前記ヨーク16と一体に形成されたロッド16Aの下端に取り付けられた前記接続中継部材17が上下に往復動する。そして、前記基板4は、前記接続中継部材17に設けられた前記フック17Aに接続された前記フック受け部4B、即ち、前記基板4の中央が最大振幅箇所となるように、従来技術と同様に下に撓んだ湾曲凸状態と上に撓んだ湾曲凹状態との間で変形を繰り返し、その前記最大振幅個所における振幅は、前記クランク15の中心軸から偏心軸15Aまでの偏心距離Fの2倍(2F)となる。
【0035】
このように、前記基板4が下に撓んだ湾曲凸状態と上に撓んだ湾曲凹状態との間で変形を繰り返すことで、前記拡縮空間29が圧縮、復元を繰り返すことになり、この結果、前記拡縮空間29内の前記収容体26は、前記基板4の撓みに応動して、圧縮と復元を繰り返す。そして、前記収容体26が圧縮状態から復元する際に、前記拡縮空間29が減圧状態となることで、前記環状小突起27と環状壁28の内側区域に注がれた前記シャンプーが前記第二連通部22から吸引されて前記拡縮空間29内に流入し、前記収容体26に収容される。逆に、前記収容体26が圧縮される際に、この収容体26に収容された前記シャンプーは、前記第二連通部22より噴出されることとなる。なお、前記シャンプーは、前記第二連通部22を通して押し出される際に空気と混じり合うことで泡立つ。そして、このように前記収容体26の変形が繰り返されることで、前記シャンプーが徐々に前記収容体26の中央から外周側に広がってゆき、これによって、前記第一連通部21からも、泡立てられた前記シャンプーが押し出されることになる。このように、湾曲凸状態と湾曲凹状態との間で繰り返される前記基板4の変形に応動して前記収容体26が圧縮、復元を繰り返すことで、前記小突起27及び環状壁28の内側区域に注がれた前記シャンプーは、泡立てられて、前記ブラシ部3全体から外部に供給される。なお、前記シャンプーは、前記連通部21,22を通過する際に細かく泡立てられることになる。そして、前記シャンプーは、前記連通部21,22の孔の径が小さい程、細かく泡立てられることになる。
【0036】
このように、前記シャンプーが泡立てられた状態で、使用者は、前記装置本体2を把持し、前記突起5の先端部を前記頭皮Sに押し当てて手で保持する。これにより、主として前記突起5は、前記中心軸線Xを中心としてその内側方向に傾斜したり、或いはその後起立したりすることを繰り返すことで、前記頭皮Sを擦って洗浄したり、刺激を与えてマッサージしたりすることができる。
【0037】
なお、従来の構造では、頭皮Sの形状にもよるが、短径方向Zの両端部に設けられた前記突起5は、頭皮Sに対して強く押し当てられる一方、長径方向Yの両端部に設けられた前記突起5は、頭皮Sに対して弱く押し当てられる傾向がある。しかしながら、本実施例では、前述したように、前記突起5は、長径方向Yでは従来の構造に比べやや閉じており、短径方向Zでは従来の構造に比べやや開いているので、長径方向Yの両端部に設けられた前記突起5の頭皮Sへの当たりはやや強くなり、短径方向Zの両端部に設けられた前記突起5の頭皮Sへの当たりはやや弱くなる。この結果、前記突起5全体としては、頭皮Sに対する当たりを均等化することができることになるので、従来の構造に比べて洗浄又はマッサージの効果を高めることができる。
【0038】
また、従来の構造では、前記基板4の中心Oを中心として同心円状に撓みが進行するため、前記ブラシ部3の長径方向Yの両端部では殆ど基板4が撓まず、この部分に設けられた前記突起5は殆ど洗浄又はマッサージに関与しない。しかしながら、本実施例では、前述したように、前記枠体6の外縁6Cが同一球面上を通るように構成されているため、前記基板4の中心Oを中心として撓みが進行する点では従来構造と共通するものの、同心円状に撓みが進行せず、前記基板4全体を撓ませることができる。従って、従来、洗浄又はマッサージに殆ど関与しなかった突起5も洗浄又はマッサージに関与させることができるので、洗浄又はマッサージの効果を高めることができる。また、前述したように、前記基板4の湾曲凸状態時に、前記突起5が、短径方向Zでは従来の構造よりもやや開いた状態となっていると共に、湾曲凹状態時における前記突起5の傾斜角度が従来構造と殆ど変わらないので、前記突起5の短径方向Zへの動きを大きくすることができる。これらの相乗効果により、本実施例の電動ブラシ装置1は、従来の構造に比べて洗浄又はマッサージの効果を高めることができる。
【0039】
また、洗浄又はマッサージを行う際に、頭皮Sに前記ブラシ部3を正対させることにより複数の前記突起5を頭皮Sに均等に当接させる必要があるが、使用者はこの状態を正確に視認できないので、前記装置本体2を把持した状態では、前記ブラシ部3は頭皮Sに対して大まかに対向する状態となる。しかしながら、前記ブラシ部3が頭皮Sに正対していない(前記中心軸線Xが頭皮Sに対して傾斜している)状態にあっては、矢印Tに示すように、前記ブラシ部3が前記装置本体2に対して前記軸8の揺動中心軸線Z´´を中心に揺動することで、前記ブラシ部3が自動的に頭皮Sに正対した状態で当接できるようになるので、複数の前記突起5によって、頭皮Sを均一に洗浄したりマッサージしたりすることができる。
【0040】
そして、前記ブラシ部3が前記軸8を中心に揺動する際に、前記パッキン20の上部20Aは、前記底板9の内周面9Aに圧接して両者を気密に接続することで、シャンプーが前記パッキン20の外側に漏れ出すようなことがない。また、前記パッキン20の上部20Aは、前記底板9の内周面9Aに固定ではなく摺動自在に圧接していることで、前記ブラシ部3が前記軸8を揺動中心として揺動駆動する力に対して、前記圧接の箇所では、動摩擦抵抗力或いは静止摩擦抵抗力が生成されることになり、圧接に代えて固定した場合に比較して可及的に抵抗力を低減できる。この結果、前記ブラシ部3が前記軸8を揺動中心としてスムーズに揺動することができるようになる。
【0041】
なお、人間の頭部は、実際には単純な形状ではないので、前記ブラシ部3が頭部表面、即ち頭皮Sに正対しただけでは、必ずしも突起5によって頭皮Sが良好に洗浄されたりマッサージされたりするとは限らない。しかしながら、前述したように、前記枠体6は合成樹脂であっても弾性変形可能に構成されているので、前記ブラシ部3を頭皮Sに押しつけることで、頭皮Sの形状に応じて前記ブラシ部3の基板4が撓み、この基板4の撓みに応じて、前記ブラシ部3を固定している前記枠体6も撓むことになる。そして、前記枠体6が頭皮Sに沿って撓んだ状態で、前記ブラシ部3の基板4を湾曲凸状態と湾曲凹状態の間で繰り返し撓ませることで、前記ブラシ部3を頭皮Sに沿わせて良好に洗浄又はマッサージすることができる。
【0042】
以上のように、上記実施例では、駆動部としての装置本体2と、この装置本体2によって動作するブラシ部3とを有し、このブラシ部3が、可撓性を有する材質から成る基板4と、この基板4の表面4Sに突出して設けられた複数の突起5とで構成され、前記装置本体2に、前記基板4の周縁4Aを着脱自在に保持する枠体6を設け、前記枠体6を、前記装置本体2に対し支持手段7を介して揺動可能に設けたことにより、前記ブラシ部3が頭皮Sに正対していない状態で前記突起5が当接したとしても、前記突起5の当接状態に応じて前記ブラシ部3が前記装置本体2に対して揺動するので、前記ブラシ部3が頭皮Sに正対するように自動修正でき、前記ブラシ部3の複数の突起5を頭皮Sに均一に当接させて、頭皮Sを良好に洗浄或いはマッサージすることができる。
【0043】
また、前記パッキン20の上部20Aを、前記装置本体2の底板9の内周面9Aに摺動自在に接触させて接続すると共に、前記装置本体2と前記パッキン20と前記枠体6と前記基板4とで拡縮空間29を画定し、この拡縮空間29内に液状洗剤としてのシャンプーの収容体26を設け、前記拡縮空間29の内外を連通する連通部21,22を前記ブラシ部3の基部4に設けたことにより、前記拡縮空間29の圧縮と復元により発生したシャンプーの泡を前記連通部21,22からのみ吐出することができるばかりでなく、前記ブラシ部3が前記装置本体2に対して揺動する際の抵抗が従来に比べて比較的小さく、前記揺動をスムーズに行うことができる。
【0044】
さらに、前記パッキン20の上部20Aを、前記装置本体2の底板9の内周面9Aに摺動自在に圧接させることで、前記連通部21,22以外からの泡漏れをより確実に防止することができる。
【0045】
しかも、前記枠体6が、軸8及び軸受部8Aから構成される前記支持手段7によって接続されると共に、前記軸8の揺動中心軸線Z´´を、前記基板4の中心軸線Xに対して直交させることで、前記軸8を揺動中心軸線Z´´として、前記枠体6に保持された前記ブラシ部3を頭皮Sに対し自動的に正対させることができる。
【実施例2】
【0046】
図6〜7は実施例2を示しており、前記実施例1と同一部分には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。実施例2の支持手段7´においては、底板9側に軸受部8Aを設けると共に、枠体6側に前記軸受部8Aに挿入する軸8を設けたものである。さらに、パッキン20´においては、一側である上部20A´を前記底板9に固定し、一方他側である下部20B´を前記枠体6の内側部6Aの上面に摺動可能に気密に線接触状に圧接させたものである。
【0047】
このような変形例でも実施例1と同様な作用効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように本発明に係る電動式ブラシ装置は、以上の実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施例では、頭皮等の洗浄及びマッサージに使用可能な電動式ブラシ装置について述べたが、人体のあらゆる箇所に対して使用可能なマッサージ装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 電動式ブラシ装置
2 装置本体(駆動部)
3 ブラシ部
4 基板
4S 表面
5 突起
6 枠体
8 軸
8A 軸受
20 パッキン
20A 上部(一側)
20B 下部(他側)
21,22 連通部
29 拡縮空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部と、この駆動部によって動作するブラシ部とを有し、このブラシ部が、可撓性を有する材質から成る基板と、この基板の表面に突出して設けられた複数の突起とで構成され、前記駆動部に、前記基板の周縁を保持する枠体を設けた電動式ブラシ装置において、前記枠体が前記駆動部に対して支持手段を介して可動に設けられ、一側を前記駆動部に接続すると共に、他側を前記枠体に接続して前記駆動部と前記枠体との間に内外を区画するパッキンを介在させ、このパッキンの前記一側を前記駆動部に対し摺動自在に接触させるか或いは前記他側を前記枠体に対し摺動自在に接触させると共に、前記駆動部と前記パッキンと前記枠体と前記基板とで画定される拡縮空間内に液状洗剤の収容体を設け、前記拡縮空間の内外を連通する連通部を前記ブラシ部に設けたことを特徴とする電動式ブラシ装置。
【請求項2】
前記パッキンの前記一側又は他側が、前記駆動部又は枠体に対して圧接することを特徴とする請求項1記載の電動式ブラシ装置。
【請求項3】
前記支持手段が、軸及びこの軸と接続される軸受部とから構成されると共に、前記軸の揺動中心軸線が、前記基板の中心軸線に対して直交することを特徴とする請求項1記載の電動式ブラシ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−197(P2011−197A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143697(P2009−143697)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000109325)ツインバード工業株式会社 (176)
【Fターム(参考)】