電動機の電機子および電動機
【課題】 モータ効率を向上させることができる電動機の電機子を提供する。
【解決手段】 ステータ3は、コア12と、巻線4とを備える。コア12は、複数のスロットと、スロットの間に形成される複数のティースとを有する。巻線4は、複数本の素線からなる。また、巻線4は、コイル部4a〜4hと、連結部4p〜4vとを有する。コイル部4a〜4hは、スロットに挿入され、複数のティースに渡って巻回される。連結部4p〜4vは、コイル部4a〜4h同士を連結する。そして、巻線4は、連結部4p〜4vにおいて捻られた形状を有する。
【解決手段】 ステータ3は、コア12と、巻線4とを備える。コア12は、複数のスロットと、スロットの間に形成される複数のティースとを有する。巻線4は、複数本の素線からなる。また、巻線4は、コイル部4a〜4hと、連結部4p〜4vとを有する。コイル部4a〜4hは、スロットに挿入され、複数のティースに渡って巻回される。連結部4p〜4vは、コイル部4a〜4h同士を連結する。そして、巻線4は、連結部4p〜4vにおいて捻られた形状を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の電機子および電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電動機の電機子は、コアと、このコアに巻回された巻線とを備えている。巻線は、複数本の素線が束ねられて構成されており、コイル状に形成された複数のコイル部と、コイル部同士の間を渡る連結部とを有している。コアには、複数のスロットが設けられており、コイル部のコイル辺がスロットに埋め込まれている。
【0003】
上記のような電機子の製造方法として、例えば、特許文献1に開示されているものがある。
【0004】
まず、巻線を巻枠に巻きつけることにより1つのコイル部が形成される。ここでは、図8に示すように、複数の素線Wからなる巻線110を案内するフライヤ120が巻枠130の周りを回ることによって、巻線110が巻枠130に巻回される。これにより、コイル部100は、帯状の複数の素線Wが螺旋状に巻回された形状に成形される。次に、コイル部100は、巻枠130から下方に押し出され、トランスファツール140に移される。このトランスファツール140は、巻線110をコア150(図11参照)に組み付けるための部材であり、複数のコイル部100〜107を円形に配列して保持することができる(図9および図10参照)。
【0005】
上記のコイル部100がトランスファツール140に移された後、次のコイル部101を巻回するまでの間に、連結部111が形成される。連結部111は、上記のコイル部100を形成した巻線110から続けて形成され、隣り合うコイル部100を渡る部分である。連結部111は、トランスファツール140あるいは巻枠130がトランスファツール140の軸線周りに回転移動することによって形成される。その後、さらに同じ巻線110から次のコイル部102が形成され、トランスファツール140に移される。
【0006】
上記の動作が繰り返されて、所要数のコイル部100〜107および連結部111〜117の形成およびトランスファツール140への移送が完了すると、図9に示す状態となる。ここでは、複数のコイル部100〜107が、上面視において、トランスファツール140のストリッパ141の周囲に円形に配列されている。なお、隣接するコイル部100〜107同士は、巻回方向が互いに逆向きになるように形成される。
【0007】
次に、図10に示すように、トランスファツール140の上方にコア150が配置される。なお、図10は、図9におけるX−X断面図である。コア150は、内周面に複数のスロットが形成されている(図2参照)。そして、ストリッパ141が上昇することにより、コイル部100〜107が上方に持ち上げられる。これにより、図11に示すように、各コイル部100〜107のコイル辺が、それぞれ対応するスロットに挿入される。なお、図11では、コイル部100のコイル辺121(図9参照)がコア150のスロットS100に挿入され、コイル部103のコイル辺122(図9参照)がスロットS103に挿入された状態を示している。
【特許文献1】特開2005−110342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のような手法では、複数のコイル部100〜107がトランスファツール140上に保持された状態では、複数のコイル部100〜107に渡って巻線110の巻き始めから巻き終わりまで、複数の素線Wの相対的な配置が維持されている。例えば、図10において、あるコイル部100のあるターンの部分のなかで最も上方に位置する素線W1は、同じコイル部100の他のターンの部分においても、最も上方に位置している。また、この素線W1は、他のコイル部101〜107のいずれのターンの部分においても、最も上方に位置することになる。このように、1本の巻線110に含まれる第1素線W1から第N素線WnまでのN本の素線について、全てのコイル部100〜107の各ターンの部分において、第1素線W1から第N素線Wnの相対的な配置が概ね維持されることになる。
【0009】
上記のように、トランスファツール140にセットされているコイル部100〜107が、ストリッパ141を用いてスロット内に挿入されると、複数の素線W1〜Wnは、必ずトランスファツール140の上部側に位置する素線W1から順番にスロットに挿入されて行く。このため、スロット内においても第1素線W1から第N素線Wnまでが奥側からほぼ順序通りに収められて行く。
【0010】
従って、上記のような従来の手法によって製造された電動機の電機子では、巻線の各ターンの部分において、複数の素線は、概ね挿入の順序にしたがって奥側から順にスロット内に詰め込まれることになる。
【0011】
この結果、図12に示すように、スロット内に収まった各素線のうち、第1素線W1は常に他の素線よりもスロット奥側を通りながらコイル部100〜107を形成し、第N素線Wnは常に他の素線よりもスロット手前側を通りながらコイル部100〜107を形成する。このため、図13に示すように、各素線で形成されるコイル部のインダクタンスが第1素線W1で最も大きく、第N素線Wn(図13のW15)で最も小さくなる。このような、素線ごとのインダクタンスのばらつきは、コイルの効率を低下させ、モータ効率を低下させる要因となる。
【0012】
本発明の課題は、モータ効率を向上させることができる電動機の電機子および電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明に係る電動機の電機子は、コアと、巻線とを備える。コアは、複数のスロットと、スロットの間に形成される複数のティースとを有する。巻線は、複数本の素線からなる。また、巻線は、コイル部と、連結部とを有する。コイル部は、スロットに挿入され、複数のティースに渡って巻回される。連結部は、コイル部同士を連結する。そして、巻線は、連結部において捻られた形状を有する。
【0014】
この電動機の電機子では、いわゆる分布巻きのコイル構造において、巻線が連結部において捻られた形状を有することにより、巻線内の複数の素線の相対的な配置が変化する。このため、素線ごとのコイルのインダクタンスのばらつきが低減される。これにより、モータ効率を向上させることができる。
【0015】
第2発明に係る電動機の電機子は、第1発明の電動機の電機子であって、連結部は、ティースの歯先側から歯元側に渡って設けられる。
【0016】
この電動機の電機子では、製造時において、連結部で連結された複数のコイル部を予め形成しておき、複数のコイル部をまとめてコアに取り付ける際の作業が容易になる。このため、製造工程を容易に自動化することができる。
【0017】
第3発明に係る電動機の電機子は、第1発明または第2発明の電動機の電機子であって、巻線の連結部における捻り角度は180度である。
【0018】
この電動機の電機子では、捻り部分の前後において、素線の配置が反対になる。例えば、ある素線は、捻り部分の前後において、ティースの最も歯先側の位置と、ティースの最も歯元側の位置とに入れ替わる。これにより、素線ごとのコイルのインダクタンスのばらつきがさらに低減される。
【0019】
第4発明に係る電動機は、請求項1から3のいずれかに記載の電機子をステータとして備える。
【0020】
この電動機では、ステータとしての電機子の効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、巻線において素線ごとのコイルのインダクタンスのばらつきが低減される。これにより、モータ効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<構成>
本発明の一実施形態に係る電動機1を図1に示す。この電動機1は、例えば埋め込み磁石式モータなどの三相同期モータであり、ロータ2とステータ3とを備える。
【0023】
ロータ2は、8極の永久磁石ロータである。ロータ2は、ロータ本体21と、複数の永久磁石22とを有する。ロータ本体21は、円筒形状を有し、回転軸を中心に、図示しない本体ケーシングに対して、回転可能に設けられている。永久磁石22は、ロータ本体21に取り付けられている。なお、図1では一部の永久磁石にのみ符号を付し、他は省略している。
【0024】
ステータ3は、3相48スロットの、いわゆる分布巻きステータである。ステータ3は、コア31と、巻線4〜6とを有する。
【0025】
図2に示すように、コア31は、概ね円筒形の外形を有しており、中心軸に沿って延びる貫通孔32が設けられている。コア31の内周面には、複数のスロットS1〜S48が設けられている。スロットS1〜S48は、それぞれ中心軸に平行な方向に沿って延びている。スロットS1〜S48の間にはティースT1〜T48が形成されている。ここでは、48個のスロットS1〜S48およびティースT1〜T48が設けられている。なお、図2では、一部のスロットおよびティースにのみ符号を付し、他は省略している。
【0026】
図1に示すように、巻線4〜6には、U相巻線4、V相巻線5、W相巻線6の3つの巻線がある。U相巻線4の一端にはU相端子40が設けられている。V相巻線5の一端にはV相端子50が設けられている。W相巻線6の一端にはW相端子60が設けられている。また、U相巻線4、V相巻線5、W相巻線6の各他端は、中性点10によって終端されている。これらの巻線4は、挿入されるスロット33が異なることを除いて概ね同様の構造であるため、以下、U相巻線4についてのみ説明する。
【0027】
U相巻線4は、図3に示すように、第1巻線11と第2巻線12とを有する。第1巻線11と第2巻線12とは、それぞれ複数本の素線Wが束ねられて構成されており(図6参照)、例えば、15本の素線Wからなる。図1および図3に示すように、U相巻線4は、8個のコイル部4a〜4hと、6個の連結部4p〜4uとを有する。なお、図3は、U相巻線4の展開図である。U相巻線4において第1巻線11と第2巻線12とは並列に連結されており、第1巻線11の一端と第2巻線12の一端とはU相端子40に連結され、第1巻線11の他端と第2巻線12の他端とは中性点10に連結されている。上記のコイル部4a〜4hのうち、コイル部4a〜4dは第1巻線11に設けられており、それぞれ直列に連結されている。また、コイル部4e〜4hは第2巻線12に設けられており、それぞれ直列に連結されている。
【0028】
コイル部4a〜4dは、巻線4がコイル状に形成された部分である。以下の説明において、第1巻線11の4個のコイル部4a〜4dを、U相端子40側から順に、第1コイル部4a〜第4コイル部4dと呼ぶものとする。また、第2巻線11の4個のコイル部4e〜4hをU相端子40側から順に、第5コイル部4e〜第8コイル部4hと呼ぶものとする。各コイル部4a〜4hは、複数のティースに渡って巻回されている。例えば、図2において、第1コイル部4aは、第1ティースT1から第5ティースT5に渡って巻回されている。なお、48個のスロットS1〜S48のうち、第1コイル部4aの入力線Inが挿入されるスロットを第1スロットS1として、図2において第1スロットS1から左回りに順に第2スロットS2〜第48スロットS48と呼ぶものとする。また、第1スロットS1と第2スロットS2の間に位置するティースを第1ティースT1として、図2において第1ティースT1から左回りに順に第2ティースT2〜第48ティースT48と呼ぶものとする。また、各スロットS1〜S48および各ティースT1〜T48において、径方向内側を「歯先側」と呼び、径方向外側を「歯元側」と呼ぶものとする。なお、図1および図2では、各コイル部4a〜4hの巻回方向を「ドット(・印)」と「クロス(×印)」で示している。ドット(・印)は、紙面手前側から奥側に向かう方向に電流が流れることを示している。クロス(×印)は、紙面奥側から手前側に向かう方向に電流が流れることを示している。
【0029】
第1コイル部4aは、第1スロットS1と第6スロットS6に挿入されている。図2に示すように、第1コイル部4aの複数のコイル辺のうち最もU相端子40側のコイル辺41aは、第1スロットS1内のコイル辺のなかで最も歯先側に位置している。また、第1コイル部4aの複数のコイル辺のうち最も終端側のコイル辺42aは、第6スロットS6内のコイル辺のなかで最も歯元側に位置している。なお、「コイル辺」とは、各コイル部4a〜4hのうちスロットS1〜S48内に挿入されておりスロットS1〜S48に沿って(図2の紙面に垂直な方向に)延びる部分を意味する。
【0030】
第2コイル部4bは、第7スロットS7と第12スロットS12に挿入されている。第2コイル部4bの複数のコイル辺のうち最もU相端子40側のコイル辺41bは、第12スロットS12内のコイル辺のなかで最も歯先側に位置している。また、第2コイル部4bの複数のコイル辺のうち最も終端側のコイル辺42bは、第7スロットS7内のコイル辺のなかで最も歯元側に位置している。そして、第2コイル部4bの巻回方向は、第1コイル部4aの巻回方向と逆になっている。
【0031】
第3コイル部4cは、第13スロットS13と第18スロットS18に挿入されている。第3コイル部4cの複数のコイル辺のうち最もU相端子40側のコイル辺41cは、第13スロットS13内のコイル辺のなかで最も歯先側に位置している。また、第3コイル部4cの複数のコイル辺のうち最も終端側のコイル辺42cは、第18スロットS18内のコイル辺のなかで最も歯元側に位置している。そして、第3コイル部4cの巻回方向は、第1コイル部4aの巻回方向と同じであり、第2コイル部4bの巻回方向と逆になっている。
【0032】
第4コイル部4dは、第19スロットS19と第24スロットS24に挿入されている。第4コイル部4dの複数のコイル辺のうち最もU相端子40側のコイル辺41dは、第24スロットS24内のコイル辺のなかで最も歯先側に位置している。また、第4コイル部4dの複数のコイル辺のうち最も終端側のコイル辺42dは、第19スロットS19内のコイル辺のなかで最も歯元側に位置している。そして、第4コイル部4dの巻回方向は、第2コイル部4bの巻回方向と同じであり、第1コイル部4a及び第3コイル部4cの巻回方向と逆になっている。
【0033】
第5コイル部4eから第8コイル部4h(図1参照)についても、上記の第1コイル部4aから第4コイル部4dの構造と同様である。すなわち、第5コイル部4e、第7コイル部4gの巻回方向は、第1コイル部4aの巻回方向と同じであり、第6コイル部4f、第8コイル部4hの巻回方向は、第2コイル部4bの巻回方向と同じである。すなわち、U相巻線4の8個のコイル部4a〜4hは、巻回方向が交互に逆向きになっている。
【0034】
図1に示す連結部4p〜4uは、巻線4のうちコイル部4a〜4dおよびコイル部4e〜4h同士の間を渡っている部分である。上述したように、各コイル部4a〜4hのコイル辺のうち最もU相端子40側のコイル辺(例えば、図2に示すコイル辺41a,41b,41c,41d)は、各スロットS1〜S48の歯先側に位置しており、最も中性点10側のコイル辺(例えば、図2に示すコイル辺42a,42b,42c,42d)は、各スロットS1〜S48の歯元側に位置している。このため、図2に示すように、連結部4p〜4rは、コイル部4a〜4d同士の間を歯先側から歯元側に渡って設けられている。図示していないが連結部4e〜4hも同様である。以下、図3に示すように、第1巻線11において第1コイル部4aと第2コイル部4bとを繋ぐ連結部を第1連結部4pと呼び、以下、第3コイル部4cと第4コイル部4dとを繋ぐ連結部までを順に第2連結部4q、第3連結部4rと呼ぶ。また、第2巻線12についても同様に、第5コイル部4eと第6コイル部4fとを繋ぐ連結部から第7コイル部4gと第8コイル部4hとを繋ぐ連結部までを順に第4連結部4sから第6連結部4uと呼ぶ。
【0035】
第1連結部4pは、第6スロットS6の歯元側から第12スロットS12の歯先側に渡って設けられている。第2連結部4qは、第7スロットS7の歯元側から第13スロットS13の歯先側に渡って設けられている。第3連結部4rは、第18スロットS18の歯元側から第24スロットS24の歯先側に渡って設けられている。第4連結部4sは、第19スロットS19の歯元側から第25スロット(図示せず)の歯先側とに渡って設けられている。第5連結部4t〜第6連結部4uについては、第1連結部4p〜第3連結部4rと同様の構成であるため、説明を省略する。
【0036】
第1連結部4pでは、図4および図5に示すように、巻線4が180度捻られた形状となっている。このため、図6に示すように、第6スロットS6の最も歯元側のコイル辺42aにおいて、複数の素線Wのなかで最も歯元側に位置している第1素線W1は、第12スロットS12の最も歯先側のコイル辺41bにおいて、複数の素線Wのなかで最も歯先側に位置している。また、第6スロットS6の最も歯元側のコイル辺42aにおいて、最も歯先側に位置している第15素線W15は、第12スロットS12の最も歯先側のコイル辺41bにおいて、最も歯元側に位置している。従って、図5に示すように、第1素線W1は、第6スロットS6の各コイル辺では最も歯元側に位置しているが、第12スロットS12の各コイル辺では最も歯先側に位置している。また、第15素線W15は、第6スロットS6の各コイル辺では最も歯先側に位置しているが、第12スロットS12の各コイル辺では最も歯元側に位置している。なお、図5において、白抜きの丸印は全て第1素線W1を示しており、ハッチングを施した丸印は全て第15素線W15を示している。
【0037】
他の素線Wについても、第6スロットS6の各コイル辺と第12スロットS12の各コイル辺とでは、歯先側と歯元側とで位置が入れ替わっている。
【0038】
第2連結部4q〜第6連結部4uにおいても、第1連結部4pと同様に、巻線4が180度捻られた形状となっている。
【0039】
<特徴>
上記のステータコイルのインダクタンスの実測データを図7に示す。このデータは、本実施形態に係るステータ3の第1素線W1から第15素線W15のインダクタンスと、従来の電動機が備えるステータの素線W1〜W15のインダクタンスとを、第1巻線11の4個のコイル部の両端部で実測したものである。図7において、ラインL1は、本実施形態にかかる電動機1における各素線W1〜W15のインダクタンスを示している。ラインL2は、従来の電動機における各素線W1〜W15のインダクタンスを示している。
【0040】
従来のステータでは、素線W1から素線W15にかけてインダクタンスが著しく低下しているのに対し、本実施形態にかかるステータ3では、素線W1から素線W15に渡ってインダクタンスの低下が、かなり抑制されている。
【0041】
従来のステータでは、素線ごとのインダクタンスの大きさのばらつきが大きいため、素線Wの束に一斉に同じ交番電圧がかかった場合、インダクタンスの小さい素線Wにより多くの電流が流れ、コイルの全体効率を引き下げる。一方、本実施形態にかかるステータ3によれば、素線W間のインダクタンスのばらつきが抑えられているため、全体的な効率の低下が抑制され、結果として従来の電動機よりも高いコイル効率を得ることができる。
【0042】
さらに、同じ電流を流しても、コイル効率が高いほど、すなわち、多くの磁束を生じさせるほど、大きなトルクを発生させることにつながるため、モータ効率も高くなる。このため、本実施形態にかかる電動機1では、従来の電動機よりもモータ効率を向上させることができる。また、従来よりもモータ効率が向上することにより、従来に比して、高出力化、小型化、軽量化を実現することができる。
【0043】
<他の実施形態>
(a)
コアのスロットおよびティースの数、巻線を構成する素線の数、コイル部および連結部の数は、上記のものに限られず、異なる数のものが用いられてもよい。
【0044】
(b)
上記の実施形態では、本発明に係る電機子をステータとして備えた電動機について説明したが、本発明に係る電機子がロータとして電動機に備えられてもよい。
【0045】
(c)
上記の実施形態では、全ての連結部において巻線が捻られた形状となっているが、巻線が一部の連結部において捻られた形状となっていてもよい。例えば、第2,第5連結部4q,4tにおいて捻られた形状であってもよい。この場合も上記と同様にインダクタンスの平均化が可能となり、上記と同様の効果が得られる。
【0046】
(d)
上記の実施形態では、U相巻線4は、並列に接続された第1巻線11と第2巻線12とを有しているが、全てのコイル部が直列に連結されたものであってもよい。例えば、上記の実施形態のような8個のコイル部が全て直列に連結されていてもよい。この場合も、全ての連結部において巻線が捻られた形状となってもよく、また、巻線が一部の連結部において捻られた形状となっていてもよい。
【0047】
また、ねじりが形成される連結部の位置は、モータのロータ2の極数によって異なる。ステータの巻線におけるコイルの数は、モータのロータ2の極数に対応しており、例えば、モータのロータ2の極数が4個の場合、コイルの数も4個となる。この場合、連結部の数は3個となり、素線間のコイルインダクタンスを揃えるためには、2つ目の渡り線でのみ180°のねじれを形成するか、もしくは、全ての渡り線で180°のねじれを形成することが望ましい。
【0048】
なお、多相モータの場合、各相のコイル状態をバランスさせるために、ねじりが形成される連結部の位置は、各相とも統一させることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、モータ効率を向上させることができる効果を有し、電動機の電機子および電動機として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態にかかる電動機の構成を示す模式図。
【図2】第1実施形態にかかるステータの構成を示す模式図。
【図3】巻線の展開図。
【図4】巻線の連結部を示す図。
【図5】コイル部と連結部とを示す模式図。
【図6】コイル部における素線の位置を示す図。
【図7】素線のインダクタンスを示すグラフ。
【図8】従来のステータコイルの製造装置を示す図。
【図9】従来のステータコイルの製造装置を示す図。
【図10】従来のステータコイルの製造装置を示す図。
【図11】従来のステータコイルの製造装置を示す図。
【図12】従来のステータコイルにおけるコイル部と連結部とを示す模式図。
【図13】従来のステータコイルにおける素線Wのインダクタンスを示すグラフ。
【符号の説明】
【0051】
1 電動機
3 ステータ(電機子)
4 U相巻線(巻線)
4a〜4h コイル部
4p〜4u 連結部
31 コア
S1〜S48 スロット
T1〜T48 ティース
W 素線
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の電機子および電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電動機の電機子は、コアと、このコアに巻回された巻線とを備えている。巻線は、複数本の素線が束ねられて構成されており、コイル状に形成された複数のコイル部と、コイル部同士の間を渡る連結部とを有している。コアには、複数のスロットが設けられており、コイル部のコイル辺がスロットに埋め込まれている。
【0003】
上記のような電機子の製造方法として、例えば、特許文献1に開示されているものがある。
【0004】
まず、巻線を巻枠に巻きつけることにより1つのコイル部が形成される。ここでは、図8に示すように、複数の素線Wからなる巻線110を案内するフライヤ120が巻枠130の周りを回ることによって、巻線110が巻枠130に巻回される。これにより、コイル部100は、帯状の複数の素線Wが螺旋状に巻回された形状に成形される。次に、コイル部100は、巻枠130から下方に押し出され、トランスファツール140に移される。このトランスファツール140は、巻線110をコア150(図11参照)に組み付けるための部材であり、複数のコイル部100〜107を円形に配列して保持することができる(図9および図10参照)。
【0005】
上記のコイル部100がトランスファツール140に移された後、次のコイル部101を巻回するまでの間に、連結部111が形成される。連結部111は、上記のコイル部100を形成した巻線110から続けて形成され、隣り合うコイル部100を渡る部分である。連結部111は、トランスファツール140あるいは巻枠130がトランスファツール140の軸線周りに回転移動することによって形成される。その後、さらに同じ巻線110から次のコイル部102が形成され、トランスファツール140に移される。
【0006】
上記の動作が繰り返されて、所要数のコイル部100〜107および連結部111〜117の形成およびトランスファツール140への移送が完了すると、図9に示す状態となる。ここでは、複数のコイル部100〜107が、上面視において、トランスファツール140のストリッパ141の周囲に円形に配列されている。なお、隣接するコイル部100〜107同士は、巻回方向が互いに逆向きになるように形成される。
【0007】
次に、図10に示すように、トランスファツール140の上方にコア150が配置される。なお、図10は、図9におけるX−X断面図である。コア150は、内周面に複数のスロットが形成されている(図2参照)。そして、ストリッパ141が上昇することにより、コイル部100〜107が上方に持ち上げられる。これにより、図11に示すように、各コイル部100〜107のコイル辺が、それぞれ対応するスロットに挿入される。なお、図11では、コイル部100のコイル辺121(図9参照)がコア150のスロットS100に挿入され、コイル部103のコイル辺122(図9参照)がスロットS103に挿入された状態を示している。
【特許文献1】特開2005−110342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のような手法では、複数のコイル部100〜107がトランスファツール140上に保持された状態では、複数のコイル部100〜107に渡って巻線110の巻き始めから巻き終わりまで、複数の素線Wの相対的な配置が維持されている。例えば、図10において、あるコイル部100のあるターンの部分のなかで最も上方に位置する素線W1は、同じコイル部100の他のターンの部分においても、最も上方に位置している。また、この素線W1は、他のコイル部101〜107のいずれのターンの部分においても、最も上方に位置することになる。このように、1本の巻線110に含まれる第1素線W1から第N素線WnまでのN本の素線について、全てのコイル部100〜107の各ターンの部分において、第1素線W1から第N素線Wnの相対的な配置が概ね維持されることになる。
【0009】
上記のように、トランスファツール140にセットされているコイル部100〜107が、ストリッパ141を用いてスロット内に挿入されると、複数の素線W1〜Wnは、必ずトランスファツール140の上部側に位置する素線W1から順番にスロットに挿入されて行く。このため、スロット内においても第1素線W1から第N素線Wnまでが奥側からほぼ順序通りに収められて行く。
【0010】
従って、上記のような従来の手法によって製造された電動機の電機子では、巻線の各ターンの部分において、複数の素線は、概ね挿入の順序にしたがって奥側から順にスロット内に詰め込まれることになる。
【0011】
この結果、図12に示すように、スロット内に収まった各素線のうち、第1素線W1は常に他の素線よりもスロット奥側を通りながらコイル部100〜107を形成し、第N素線Wnは常に他の素線よりもスロット手前側を通りながらコイル部100〜107を形成する。このため、図13に示すように、各素線で形成されるコイル部のインダクタンスが第1素線W1で最も大きく、第N素線Wn(図13のW15)で最も小さくなる。このような、素線ごとのインダクタンスのばらつきは、コイルの効率を低下させ、モータ効率を低下させる要因となる。
【0012】
本発明の課題は、モータ効率を向上させることができる電動機の電機子および電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明に係る電動機の電機子は、コアと、巻線とを備える。コアは、複数のスロットと、スロットの間に形成される複数のティースとを有する。巻線は、複数本の素線からなる。また、巻線は、コイル部と、連結部とを有する。コイル部は、スロットに挿入され、複数のティースに渡って巻回される。連結部は、コイル部同士を連結する。そして、巻線は、連結部において捻られた形状を有する。
【0014】
この電動機の電機子では、いわゆる分布巻きのコイル構造において、巻線が連結部において捻られた形状を有することにより、巻線内の複数の素線の相対的な配置が変化する。このため、素線ごとのコイルのインダクタンスのばらつきが低減される。これにより、モータ効率を向上させることができる。
【0015】
第2発明に係る電動機の電機子は、第1発明の電動機の電機子であって、連結部は、ティースの歯先側から歯元側に渡って設けられる。
【0016】
この電動機の電機子では、製造時において、連結部で連結された複数のコイル部を予め形成しておき、複数のコイル部をまとめてコアに取り付ける際の作業が容易になる。このため、製造工程を容易に自動化することができる。
【0017】
第3発明に係る電動機の電機子は、第1発明または第2発明の電動機の電機子であって、巻線の連結部における捻り角度は180度である。
【0018】
この電動機の電機子では、捻り部分の前後において、素線の配置が反対になる。例えば、ある素線は、捻り部分の前後において、ティースの最も歯先側の位置と、ティースの最も歯元側の位置とに入れ替わる。これにより、素線ごとのコイルのインダクタンスのばらつきがさらに低減される。
【0019】
第4発明に係る電動機は、請求項1から3のいずれかに記載の電機子をステータとして備える。
【0020】
この電動機では、ステータとしての電機子の効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、巻線において素線ごとのコイルのインダクタンスのばらつきが低減される。これにより、モータ効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<構成>
本発明の一実施形態に係る電動機1を図1に示す。この電動機1は、例えば埋め込み磁石式モータなどの三相同期モータであり、ロータ2とステータ3とを備える。
【0023】
ロータ2は、8極の永久磁石ロータである。ロータ2は、ロータ本体21と、複数の永久磁石22とを有する。ロータ本体21は、円筒形状を有し、回転軸を中心に、図示しない本体ケーシングに対して、回転可能に設けられている。永久磁石22は、ロータ本体21に取り付けられている。なお、図1では一部の永久磁石にのみ符号を付し、他は省略している。
【0024】
ステータ3は、3相48スロットの、いわゆる分布巻きステータである。ステータ3は、コア31と、巻線4〜6とを有する。
【0025】
図2に示すように、コア31は、概ね円筒形の外形を有しており、中心軸に沿って延びる貫通孔32が設けられている。コア31の内周面には、複数のスロットS1〜S48が設けられている。スロットS1〜S48は、それぞれ中心軸に平行な方向に沿って延びている。スロットS1〜S48の間にはティースT1〜T48が形成されている。ここでは、48個のスロットS1〜S48およびティースT1〜T48が設けられている。なお、図2では、一部のスロットおよびティースにのみ符号を付し、他は省略している。
【0026】
図1に示すように、巻線4〜6には、U相巻線4、V相巻線5、W相巻線6の3つの巻線がある。U相巻線4の一端にはU相端子40が設けられている。V相巻線5の一端にはV相端子50が設けられている。W相巻線6の一端にはW相端子60が設けられている。また、U相巻線4、V相巻線5、W相巻線6の各他端は、中性点10によって終端されている。これらの巻線4は、挿入されるスロット33が異なることを除いて概ね同様の構造であるため、以下、U相巻線4についてのみ説明する。
【0027】
U相巻線4は、図3に示すように、第1巻線11と第2巻線12とを有する。第1巻線11と第2巻線12とは、それぞれ複数本の素線Wが束ねられて構成されており(図6参照)、例えば、15本の素線Wからなる。図1および図3に示すように、U相巻線4は、8個のコイル部4a〜4hと、6個の連結部4p〜4uとを有する。なお、図3は、U相巻線4の展開図である。U相巻線4において第1巻線11と第2巻線12とは並列に連結されており、第1巻線11の一端と第2巻線12の一端とはU相端子40に連結され、第1巻線11の他端と第2巻線12の他端とは中性点10に連結されている。上記のコイル部4a〜4hのうち、コイル部4a〜4dは第1巻線11に設けられており、それぞれ直列に連結されている。また、コイル部4e〜4hは第2巻線12に設けられており、それぞれ直列に連結されている。
【0028】
コイル部4a〜4dは、巻線4がコイル状に形成された部分である。以下の説明において、第1巻線11の4個のコイル部4a〜4dを、U相端子40側から順に、第1コイル部4a〜第4コイル部4dと呼ぶものとする。また、第2巻線11の4個のコイル部4e〜4hをU相端子40側から順に、第5コイル部4e〜第8コイル部4hと呼ぶものとする。各コイル部4a〜4hは、複数のティースに渡って巻回されている。例えば、図2において、第1コイル部4aは、第1ティースT1から第5ティースT5に渡って巻回されている。なお、48個のスロットS1〜S48のうち、第1コイル部4aの入力線Inが挿入されるスロットを第1スロットS1として、図2において第1スロットS1から左回りに順に第2スロットS2〜第48スロットS48と呼ぶものとする。また、第1スロットS1と第2スロットS2の間に位置するティースを第1ティースT1として、図2において第1ティースT1から左回りに順に第2ティースT2〜第48ティースT48と呼ぶものとする。また、各スロットS1〜S48および各ティースT1〜T48において、径方向内側を「歯先側」と呼び、径方向外側を「歯元側」と呼ぶものとする。なお、図1および図2では、各コイル部4a〜4hの巻回方向を「ドット(・印)」と「クロス(×印)」で示している。ドット(・印)は、紙面手前側から奥側に向かう方向に電流が流れることを示している。クロス(×印)は、紙面奥側から手前側に向かう方向に電流が流れることを示している。
【0029】
第1コイル部4aは、第1スロットS1と第6スロットS6に挿入されている。図2に示すように、第1コイル部4aの複数のコイル辺のうち最もU相端子40側のコイル辺41aは、第1スロットS1内のコイル辺のなかで最も歯先側に位置している。また、第1コイル部4aの複数のコイル辺のうち最も終端側のコイル辺42aは、第6スロットS6内のコイル辺のなかで最も歯元側に位置している。なお、「コイル辺」とは、各コイル部4a〜4hのうちスロットS1〜S48内に挿入されておりスロットS1〜S48に沿って(図2の紙面に垂直な方向に)延びる部分を意味する。
【0030】
第2コイル部4bは、第7スロットS7と第12スロットS12に挿入されている。第2コイル部4bの複数のコイル辺のうち最もU相端子40側のコイル辺41bは、第12スロットS12内のコイル辺のなかで最も歯先側に位置している。また、第2コイル部4bの複数のコイル辺のうち最も終端側のコイル辺42bは、第7スロットS7内のコイル辺のなかで最も歯元側に位置している。そして、第2コイル部4bの巻回方向は、第1コイル部4aの巻回方向と逆になっている。
【0031】
第3コイル部4cは、第13スロットS13と第18スロットS18に挿入されている。第3コイル部4cの複数のコイル辺のうち最もU相端子40側のコイル辺41cは、第13スロットS13内のコイル辺のなかで最も歯先側に位置している。また、第3コイル部4cの複数のコイル辺のうち最も終端側のコイル辺42cは、第18スロットS18内のコイル辺のなかで最も歯元側に位置している。そして、第3コイル部4cの巻回方向は、第1コイル部4aの巻回方向と同じであり、第2コイル部4bの巻回方向と逆になっている。
【0032】
第4コイル部4dは、第19スロットS19と第24スロットS24に挿入されている。第4コイル部4dの複数のコイル辺のうち最もU相端子40側のコイル辺41dは、第24スロットS24内のコイル辺のなかで最も歯先側に位置している。また、第4コイル部4dの複数のコイル辺のうち最も終端側のコイル辺42dは、第19スロットS19内のコイル辺のなかで最も歯元側に位置している。そして、第4コイル部4dの巻回方向は、第2コイル部4bの巻回方向と同じであり、第1コイル部4a及び第3コイル部4cの巻回方向と逆になっている。
【0033】
第5コイル部4eから第8コイル部4h(図1参照)についても、上記の第1コイル部4aから第4コイル部4dの構造と同様である。すなわち、第5コイル部4e、第7コイル部4gの巻回方向は、第1コイル部4aの巻回方向と同じであり、第6コイル部4f、第8コイル部4hの巻回方向は、第2コイル部4bの巻回方向と同じである。すなわち、U相巻線4の8個のコイル部4a〜4hは、巻回方向が交互に逆向きになっている。
【0034】
図1に示す連結部4p〜4uは、巻線4のうちコイル部4a〜4dおよびコイル部4e〜4h同士の間を渡っている部分である。上述したように、各コイル部4a〜4hのコイル辺のうち最もU相端子40側のコイル辺(例えば、図2に示すコイル辺41a,41b,41c,41d)は、各スロットS1〜S48の歯先側に位置しており、最も中性点10側のコイル辺(例えば、図2に示すコイル辺42a,42b,42c,42d)は、各スロットS1〜S48の歯元側に位置している。このため、図2に示すように、連結部4p〜4rは、コイル部4a〜4d同士の間を歯先側から歯元側に渡って設けられている。図示していないが連結部4e〜4hも同様である。以下、図3に示すように、第1巻線11において第1コイル部4aと第2コイル部4bとを繋ぐ連結部を第1連結部4pと呼び、以下、第3コイル部4cと第4コイル部4dとを繋ぐ連結部までを順に第2連結部4q、第3連結部4rと呼ぶ。また、第2巻線12についても同様に、第5コイル部4eと第6コイル部4fとを繋ぐ連結部から第7コイル部4gと第8コイル部4hとを繋ぐ連結部までを順に第4連結部4sから第6連結部4uと呼ぶ。
【0035】
第1連結部4pは、第6スロットS6の歯元側から第12スロットS12の歯先側に渡って設けられている。第2連結部4qは、第7スロットS7の歯元側から第13スロットS13の歯先側に渡って設けられている。第3連結部4rは、第18スロットS18の歯元側から第24スロットS24の歯先側に渡って設けられている。第4連結部4sは、第19スロットS19の歯元側から第25スロット(図示せず)の歯先側とに渡って設けられている。第5連結部4t〜第6連結部4uについては、第1連結部4p〜第3連結部4rと同様の構成であるため、説明を省略する。
【0036】
第1連結部4pでは、図4および図5に示すように、巻線4が180度捻られた形状となっている。このため、図6に示すように、第6スロットS6の最も歯元側のコイル辺42aにおいて、複数の素線Wのなかで最も歯元側に位置している第1素線W1は、第12スロットS12の最も歯先側のコイル辺41bにおいて、複数の素線Wのなかで最も歯先側に位置している。また、第6スロットS6の最も歯元側のコイル辺42aにおいて、最も歯先側に位置している第15素線W15は、第12スロットS12の最も歯先側のコイル辺41bにおいて、最も歯元側に位置している。従って、図5に示すように、第1素線W1は、第6スロットS6の各コイル辺では最も歯元側に位置しているが、第12スロットS12の各コイル辺では最も歯先側に位置している。また、第15素線W15は、第6スロットS6の各コイル辺では最も歯先側に位置しているが、第12スロットS12の各コイル辺では最も歯元側に位置している。なお、図5において、白抜きの丸印は全て第1素線W1を示しており、ハッチングを施した丸印は全て第15素線W15を示している。
【0037】
他の素線Wについても、第6スロットS6の各コイル辺と第12スロットS12の各コイル辺とでは、歯先側と歯元側とで位置が入れ替わっている。
【0038】
第2連結部4q〜第6連結部4uにおいても、第1連結部4pと同様に、巻線4が180度捻られた形状となっている。
【0039】
<特徴>
上記のステータコイルのインダクタンスの実測データを図7に示す。このデータは、本実施形態に係るステータ3の第1素線W1から第15素線W15のインダクタンスと、従来の電動機が備えるステータの素線W1〜W15のインダクタンスとを、第1巻線11の4個のコイル部の両端部で実測したものである。図7において、ラインL1は、本実施形態にかかる電動機1における各素線W1〜W15のインダクタンスを示している。ラインL2は、従来の電動機における各素線W1〜W15のインダクタンスを示している。
【0040】
従来のステータでは、素線W1から素線W15にかけてインダクタンスが著しく低下しているのに対し、本実施形態にかかるステータ3では、素線W1から素線W15に渡ってインダクタンスの低下が、かなり抑制されている。
【0041】
従来のステータでは、素線ごとのインダクタンスの大きさのばらつきが大きいため、素線Wの束に一斉に同じ交番電圧がかかった場合、インダクタンスの小さい素線Wにより多くの電流が流れ、コイルの全体効率を引き下げる。一方、本実施形態にかかるステータ3によれば、素線W間のインダクタンスのばらつきが抑えられているため、全体的な効率の低下が抑制され、結果として従来の電動機よりも高いコイル効率を得ることができる。
【0042】
さらに、同じ電流を流しても、コイル効率が高いほど、すなわち、多くの磁束を生じさせるほど、大きなトルクを発生させることにつながるため、モータ効率も高くなる。このため、本実施形態にかかる電動機1では、従来の電動機よりもモータ効率を向上させることができる。また、従来よりもモータ効率が向上することにより、従来に比して、高出力化、小型化、軽量化を実現することができる。
【0043】
<他の実施形態>
(a)
コアのスロットおよびティースの数、巻線を構成する素線の数、コイル部および連結部の数は、上記のものに限られず、異なる数のものが用いられてもよい。
【0044】
(b)
上記の実施形態では、本発明に係る電機子をステータとして備えた電動機について説明したが、本発明に係る電機子がロータとして電動機に備えられてもよい。
【0045】
(c)
上記の実施形態では、全ての連結部において巻線が捻られた形状となっているが、巻線が一部の連結部において捻られた形状となっていてもよい。例えば、第2,第5連結部4q,4tにおいて捻られた形状であってもよい。この場合も上記と同様にインダクタンスの平均化が可能となり、上記と同様の効果が得られる。
【0046】
(d)
上記の実施形態では、U相巻線4は、並列に接続された第1巻線11と第2巻線12とを有しているが、全てのコイル部が直列に連結されたものであってもよい。例えば、上記の実施形態のような8個のコイル部が全て直列に連結されていてもよい。この場合も、全ての連結部において巻線が捻られた形状となってもよく、また、巻線が一部の連結部において捻られた形状となっていてもよい。
【0047】
また、ねじりが形成される連結部の位置は、モータのロータ2の極数によって異なる。ステータの巻線におけるコイルの数は、モータのロータ2の極数に対応しており、例えば、モータのロータ2の極数が4個の場合、コイルの数も4個となる。この場合、連結部の数は3個となり、素線間のコイルインダクタンスを揃えるためには、2つ目の渡り線でのみ180°のねじれを形成するか、もしくは、全ての渡り線で180°のねじれを形成することが望ましい。
【0048】
なお、多相モータの場合、各相のコイル状態をバランスさせるために、ねじりが形成される連結部の位置は、各相とも統一させることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、モータ効率を向上させることができる効果を有し、電動機の電機子および電動機として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態にかかる電動機の構成を示す模式図。
【図2】第1実施形態にかかるステータの構成を示す模式図。
【図3】巻線の展開図。
【図4】巻線の連結部を示す図。
【図5】コイル部と連結部とを示す模式図。
【図6】コイル部における素線の位置を示す図。
【図7】素線のインダクタンスを示すグラフ。
【図8】従来のステータコイルの製造装置を示す図。
【図9】従来のステータコイルの製造装置を示す図。
【図10】従来のステータコイルの製造装置を示す図。
【図11】従来のステータコイルの製造装置を示す図。
【図12】従来のステータコイルにおけるコイル部と連結部とを示す模式図。
【図13】従来のステータコイルにおける素線Wのインダクタンスを示すグラフ。
【符号の説明】
【0051】
1 電動機
3 ステータ(電機子)
4 U相巻線(巻線)
4a〜4h コイル部
4p〜4u 連結部
31 コア
S1〜S48 スロット
T1〜T48 ティース
W 素線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットと、前記スロットの間に形成される複数のティースとを有する鉄芯と、
複数本の素線の束からなる巻線であって、前記スロットに挿入され複数の前記ティースに渡って巻回される複数のコイル部と、前記コイル部同士を連結する連結部と、を有し、前記連結部において捻られた形状を有する前記巻線と、
を備える電動機の電機子。
【請求項2】
前記連結部は、前記ティースの歯先側から歯元側に渡って設けられる、
請求項1に記載の電動機の電機子。
【請求項3】
前記巻線の前記連結部における捻り角度は180度である、
請求項1または2に記載の電動機の電機子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電機子をステータとして備える、
電動機。
【請求項1】
複数のスロットと、前記スロットの間に形成される複数のティースとを有する鉄芯と、
複数本の素線の束からなる巻線であって、前記スロットに挿入され複数の前記ティースに渡って巻回される複数のコイル部と、前記コイル部同士を連結する連結部と、を有し、前記連結部において捻られた形状を有する前記巻線と、
を備える電動機の電機子。
【請求項2】
前記連結部は、前記ティースの歯先側から歯元側に渡って設けられる、
請求項1に記載の電動機の電機子。
【請求項3】
前記巻線の前記連結部における捻り角度は180度である、
請求項1または2に記載の電動機の電機子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電機子をステータとして備える、
電動機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−158096(P2010−158096A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334044(P2008−334044)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
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