説明

電動歯ブラシ

【課題】 プラークの除去性能に優れ、安価に製造可能で、しかも全体的な口腔清掃能力が高いことは当然のことながら、う蝕や歯周病等の歯科疾患のリスク部位における、その原因であるプラークの除去効果が極めて高い電動歯ブラシを提供する。
【解決手段】 反転往復運動するブラシヘッド30を有する電動歯ブラシ10において、ブラシヘッド30の反転角度θを65°≦θ≦85°に設定し、反転スピードVを55Hz≦V≦75Hzに設定するか、ブラシヘッド30の反転角度θを40°≦θ≦65°に設定し、反転スピードVを65Hz≦V≦85Hzに設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基台に複数の毛束を植設してなるブラシヘッドを反転往復運動するようになした電動歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
電動歯ブラシとして、モータの回転軸の回転運動をクランク機構やギア機構やカム機構などを介して出力軸の軸方向の往復直線運動に変換し、出力軸の軸方向の往復直線運動をブラシヘッドの反転往復運動に変換するように構成したものが広く実用化されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
一方、駆動方向や振幅やスピードについて工夫、改良を加えることにより、複雑な歯牙や歯列への毛の到達性やそこでの適切な運動状態を実現することにより清掃効果や歯科疾患予防効果の高い電動歯ブラシの開発が検討されている。
【0004】
特許文献3には、駆動機構の軸方向または軸直角方向に沿って往復運動する場合、その変位量が3〜7mmである電動歯ブラシが開示されている。特許文献4、5にはストロークの幅がそれぞれ5mm以上、0.5mm〜5mmである本体軸方向への往復直線運動をする電動歯ブラシが開示されている。しかし、その駆動は直線的な運動に限られる。
【0005】
特許文献6には、毛の運動を歯磨き流体に伝え、毛先が接触する更にその先まで洗浄作用を生み出すべく、毛先の先端の速度が、約1.5m/秒以上の速度で運動する音波式電動歯ブラシが開示されているが、駆動の回転方向への要素は考慮されていない。
【0006】
特許文献7には、モータ駆動時に振動を発生される偏心錘をモーターに取り付けた電動歯ブラシが記載されている。この電動歯ブラシは、そのモーターが毎分6000〜8000回で回転することにより、毎分6000〜8000回の振動を発生させることにより、歯磨き時の不快感を低減し、歯磨き効果を向上させるとともに振動により歯ぐきのマッサージ効果も同時に実現することが開示されている。偏心部材を用いた駆動機構に関しては、特許文献8にも記載があり、その振動数が毎分17000〜24000回であることが開示されている。しかしその駆動方向は、歯ブラシの軸方向に対して直角かつ微細な円運動である。
【0007】
このようにいろいろな駆動方式についての、振動やスピードに関する検討がなされているが、世界的に最も一般的に利用されている反転方式に関してはこれまでに十分な検討がなされていなかった。
【0008】
反転往復タイプの電動歯ブラシにおける一般的な傾向として、ブラシヘッドの反転角度θを大きく設定した場合には、反転スピードVを小さく設定し、ブラシヘッドの反転角度θを小さく設定した場合には、反転スピードVを大きく設定している。
【0009】
【特許文献1】特開平8−103331号公報
【特許文献2】特開平7−116020号公報
【特許文献3】特開昭61−064204号公報
【特許文献4】特開平11−318954号公報
【特許文献5】特開2003−061987号公報
【特許文献6】特表平7−505069号公報
【特許文献7】特開平6−269317号公報
【特許文献8】特開2003−164473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の反転往復運動タイプの電動歯ブラシでは、歯肉炎や歯周炎の歯周病、う蝕等の歯科疾患予防、進行の抑制を十分に考えた設計になっていなかった。歯周疾患の発症リスク部位、好発部位は、通常のブラッシングでは、十分な清掃効果が得られにくい、プラークが残存しやすい部位である。う蝕では、隅角部(歯間部)や咬合部の小窩裂溝であり、歯周病では、硬組織と軟組織とが接する部分で隅角部(歯間部)や歯肉辺縁部である。これらの部位に共通していることは、その歯ブラシによる清掃面が、単純な平面でなく、複雑な形状を持つ曲面であり、その清掃面上も平坦ではなく、複雑な溝や窪みや隆起した部分を持つ複雑な形状である。
【0011】
これらの複雑な形状を有した曲面を、効率よく清掃するためには、単純に反転スピードを高めてみたり、反転角度を大きく、または小さくしてみたりすることで解決できるものではない。つまり、歯ブラシのフィラメント部分が、十分にその除去すべき部位に到達でき、かつ十分にプラークを捉えて取り去ることができなければならない。回転角が大きすぎる場合、速いスピードでは、それらの凹凸形状を捉えることなく、単に行き過ぎてしまうし、遅すぎると十分な除去力を発揮することができない。また、回転角が小さすぎるときは、フィラメントの運動距離が小さすぎてプラークを捉えて除去するだけの仕事量が不十分であるという問題点があり、臨床的な効果を最大限に引き出す機能の開発が求められていた。
【0012】
本発明の目的は、プラークの除去性能に優れ、安価に製造可能で、しかも全体的な口腔清掃能力が高いことは当然のことながら、う蝕や歯周病等の歯科疾患のリスク部位における、その原因であるプラークの除去効果が極めて高い電動歯ブラシを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本出願人は、口腔内衛生具の様々な使用を考慮し、う蝕や歯周病等の歯科疾患患者でも好適に利用でき、しかもプラークの除去性能を高め得る電動歯ブラシについて鋭意検討した結果、反転角度と反転スピードとを適正に設定することでその目的を達成できることを見出し、本発明を完成にするに至った。但し、本明細書において、反転スピードV(Hz)とは、1秒間におけるブラシヘッドの反転往復運動の回数を意味する。
【0014】
本発明に係る第1の電動歯ブラシは、反転往復運動するブラシヘッドを有する電動歯ブラシにおいて、前記ブラシヘッドの反転角度θが65°≦θ≦85°であり、反転スピードVが55Hz≦V≦75Hzであるものであり、反転角度θと反転スピードVとを図7に示す領域C1の範囲内に設定したものである。
【0015】
この第1の電動歯ブラシでは、反転角度θを65°≦θ≦85°に設定し、反転スピードVを55Hz≦V≦75Hzに設定しているので、口腔全体のプラークはもとより、歯科疾患のリスク部位、好発部位におけるプラークを効率的に除去することができる。
【0016】
本発明に係る第2の電動歯ブラシは、反転往復運動するブラシヘッドを有する電動歯ブラシにおいて、前記ブラシヘッドの反転角度θが40°≦θ≦65°であり、反転スピードVが65Hz≦V≦85Hzであるものであり、反転角度θと反転スピードVとを図7に示す領域C2の範囲内に設定してものである。
【0017】
この第2の電動歯ブラシでは、反転角度θを40°≦θ≦65°に設定し、反転スピードVを65Hz≦V≦85Hzに設定しているので、口腔全体のプラークはもとより、歯科疾患のリスク部位、好発部位におけるプラークを効率的に除去することができる。
【0018】
ここで、前記ブラシヘッドの基台に植設される複数の毛束からなるブラシ部の座屈強度が50N/cm2以下であること、出力軸の往復直線運動をブラシヘッドの反転往復運動に変換する変換手段を備えること、などが好ましい実施例である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る第1及び第2の電動歯ブラシによれば、反転角度θと反転スピードとを適正に設定しているので、口腔全体のプラークはもとより、歯科疾患のリスク部位、好発部位におけるプラークを効率的に除去することができる。特に、第2の電動歯ブラシは、子供や歯茎の弱った人に好適である。
【0020】
ここで、ブラシヘッドの基台に植設される複数の毛束からなるブラシ部の座屈強度は、JISS3016「歯ブラシ」記載の、歯ブラシの毛のかたさによる測定及び計算方法により算出したものである。ブラシ部の座屈強度が50N/cm2以下になることにより、プラークの除去率が60%以上になることが認められる。
【0021】
出力軸の往復直線運動をブラシヘッドの反転往復運動に変換する変換手段を備えると、替えブラシを交換することで往復直線運動タイプの電動歯ブラシをそのまま反転往復運動タイプの電動歯ブラシとして使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0023】
第1の電動歯ブラシは、反転往復運動するブラシヘッドを有する電動歯ブラシにおいて、ブラシヘッドの反転角度θを65°≦θ≦85°に設定し、反転スピードVを55Hz≦V≦75Hzしたものであり、第2の電動歯ブラシは、ブラシヘッドの反転角度θを40°≦θ≦65°に設定し、反転スピードVを65Hz≦V≦85Hzに設定したものである。本発明は、電動歯ブラシにおけるブラシヘッドの反転角度θと反転スピードVとを適正に設定した電動歯ブラシに関するものであり、電動歯ブラシ自体の構成は、ブラシヘッドを反転往復運動できるものであれば任意の構成のものを採用できる。
【0024】
次に、電動歯ブラシの具体的な一例について説明すると、図1、図2に示す電動歯ブラシ10のように、ハンドルを兼ねる上下方向に細長い筒状のケーシング11が設けられ、ケーシング11の下端部には蓋部材12が着脱自在に螺合されている。
【0025】
ケーシング11の下部内には一次電池又は二次電池からなる電池13が内装され、ケーシング11の上部内には略筒状のモータケース11aが内嵌装着され、モータケース11aの下部内には直流電動モータ14が組み付けられ、モータ14は、ケーシング11に組みつけられた図示外の配線及びスイッチによりON状態とOFF状態とに切り替えられる。尚、電池13として一次電池を用いる場合には、該電池13をケーシング11に対して交換可能に内装する必要があるが、二次電池を用いる場合には、該電池をモータ14とともにケーシング11に内臓し、無接点で電池13に充電するように構成することができる。
【0026】
モータケース11aの上部内には、モータ14の回転軸15の回転運動を出力軸16の上下方向の往復直線運動に変換する第1変換手段17が設けられ、出力軸16はその途中部においてケーシング11の上壁部を貫通して上下方向に移動自在に設けられ、ケーシング11の上端部には出力軸16とケーシング11との摺動部分から水等が浸入しないようにゴムカバー18が設けられている。ケーシング11の上端部にはカバー部材19が着脱可能に固定され、カバー部材19には上方へ延びる替えブラシ20が着脱可能に取付けられ、替えブラシ20には出力軸16の上下方向への往復直線運動をブラシヘッド30の反転往復運動に変換する第2変換手段32が設けられている。
【0027】
第1変換手段17について説明すると、モータ14の回転軸15には第1傘歯車21が固定され、モータケース11aの内壁部には第1傘歯車21に噛合する第2傘歯車22が軸部23を中心として回転自在に設けられている。出力軸16の下端部には水平方向に細長いカム孔24が設けられ、第2傘歯車22の偏心位置にはカム孔24内に延びる係合ピン25が突出状に設けられている。そして、第1及び第2傘歯車21、22によりモータ14の回転軸15の上下方向軸心周りの回転運動が軸部23の水平方向軸心周りの回転運動に変換され、この回転運動がカム孔24及び係合ピン25を介して出力軸16の上下方向への往復直線運動に変換されるように構成されている。
【0028】
歯車21、22の歯数は、一定時間内におけるブラシヘッド30の反転往復運動の回数(反転スピード)が要求値になるような歯数に設定されている。
【0029】
替えブラシ20について説明すると、カバー部材19には中空の柄体26が上下方向に移動不能に固定され、柄体26の上端部には、略円板状の基台33と、基台33から右側へ突出状に複数の毛束を植設してなるブラシ部29とを有するブラシヘッド30が設けられている。柄体26内には出力軸16に着脱自在に固定される操作ロッド27が軸方向に移動自在に設けられ、柄体26の上端部には軸部材28が左右方向に設けられ、軸部材28にはブラシヘッド30の基台33が回転自在に設けられ、操作ロッド27の上端部には上方へ延びる連結ピン31が設けられ、連結ピン31の上端部は基台33の偏心位置に回動自在に連結され、出力軸16とともに操作ロッド27が上下方向に往復駆動されることで、連結ピン31を介してブラシヘッド30が軸部材28を中心に一定角度の範囲内で反転往復運動するように構成されている。反転角の大きさは、出力軸の振幅の大きさにより大きく影響を受け、その出力軸の振幅の大きさは、第2傘歯車22、係合ピン25、カム孔24の組み合わせによる偏心度により決定される。更に基台33の回転中心P1と基台33に対する連結ピン31の連結位置P2との偏心距離Lによっても角度の調整をすることができ、偏心距離Lを大きく設定することで、ブラシヘッド30の反転角度θが小さくなり、偏心距離Lを小さく設定することで、ブラシヘッド30の反転角度θが大きくなるように構成されている。
【0030】
基台33の形状やブラシ部29の毛束の個数や配列は任意に設定可能である。また、毛束の植設固定方法としては、フィラメントを束ねて構成されるタフトを、基台33に設けられた多数個の植毛孔に平線で打ち込んだり熱で融着させたりする方法などを好適に利用できる。更に、フィラメントの材質や直径や長さ、先端形状は任意に設定したものを採用できる。更に、フィラメントとしては、単一素材又は複合素材からなるものを採用しても良い。物理的及び/又は化学的に処理を行い先端が複数に枝分かれしたフィラメント、先端部分を物理的及び/又は化学的に処理を行いテーパー状の先端を両側または片側に有するフィラメント、先端がテーパー状で途中に段差を持つフィラメント、先端が球状のフィラメント、断面形状が円形でないフィラメント、エンボス状の表面構造をもつフィラメント、断面形状を捻じるとにより製造されたスパイラル状のフィラメント、研磨剤等の粒子を内部及び表面(界面)に保持しているフィラメント、ナイロン以外のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、エラストマー、天然高分子等の1種以上の素材により製造されたフィラメントをその目的に応じて使うことができ、またここに例示したフィラメントに本発明が限られるわけではない。またそれらのフィラメントは、本発明の電動歯ブラシのブラシ部の全部に使っても良いし、一部に使っても良い。また1種のフィラメントのみを使ってもよいし、2種以上のフィラメントを植毛孔別に、または同じ植毛孔に混ぜ合わせて使っても良く、それらを更に組み合わせて使用してもよい。
【0031】
次に、プラーク除去率の評価試験を行うために用いた試験装置について説明する。尚、この試験装置40は、特開平10−239304号公報に記載の試験装置と同様の構成のものである。
【0032】
図3、図4に示すように、電動歯ブラシ10の試験装置40は、試験する電動歯ブラシ10をX軸方向(左右方向)に向けて保持した状態で、該電動歯ブラシ10をX軸方向、Y軸方向(上下方向)、Z軸方向(前後方向)の3つの方向と、X軸回りのθ方向に回動操作する操作手段41と、操作手段41に保持させた電動歯ブラシ10が、所望のブラッシング法でブラッシング運動するように操作手段41を制御する制御手段(図示略)と、顎模型42の所望の歯が操作手段41に保持させた電動歯ブラシ10のブラシヘッド30に対面するように、顎模型42を姿勢切換え可能に保持する保持手段43と、顎模型42に対する電動歯ブラシ10のブラッシング圧を測定する測定手段44とを備えている。
【0033】
測定手段44は、ストレインゲージ45からの出力に基づいて電動歯ブラシ10のブラシヘッド30に作用する圧力(ブラッシング圧)を測定するものである。このストレインゲージ45は、金属或いは半導体などの抵抗体からなる周知の構成のもので、電動歯ブラシ10を操作手段41に着脱自在に固定保持するために設けたホルダ46の支持枠47の前面に付設されている。
【0034】
次に、電動歯ブラシ10の評価試験方法について説明する。
【0035】
電動歯ブラシ10として、ブラシヘッド30の反転角度θを20度、40度、65度、70度、85度に設定した5種類の電動歯ブラシ10を用いた。
【0036】
替えブラシ20としては、ブラシヘッド30の基台33として、植毛孔が21穴、植毛孔の穴径が1.5mm、最外周に配置される植毛孔の中心を通る円周の直径が9.4mmの基台33を備え、フィラメントとして、直径がφ0.160mmの普通のかたさのフィラメントであって、毛丈が10mmで、先端部に先丸加工を施し、毛束をフラット毛切したフィラメントを備えたものを用いた。
【0037】
そして、前記5種類の電動歯ブラシ10に対して、ブラシヘッド30の反転スピードVを40Hz、55Hz、65Hz、75Hz、85Hz、100Hzの6段階に切り替えて、顎模型42に対して下記の要領でブラッシングを行なって、顎模型42の歯に付着させた人工プラークの除去率を測定した。但し、反転スピードは、ブラシヘッド30の1往復を1回とカウントし、1秒間における反転往復運動の繰り返し回数を指す。
【0038】
図5に示すように、顎模型42のうちブラッシングする上顎頬側の第1小臼歯Aと第2小臼歯Bと第1大臼歯Cに人工プラークを塗布するとともに、所定の往復振動回数で電動歯ブラシ10を駆動させ、ブラシヘッド30を歯A、B、Cに対して150gのブラッシング圧で順次圧接させながら3.16mm/secの移動速度で、第1大臼歯Cから第1小臼歯A側(前側)へ移動させてブラッシングを行った。
【0039】
こうして顎模型42の3つの歯A、B、Cをブラッシングしてから、次のようにして設定した歯A、B、Cの隅角部の領域におけるプラーク除去率を画像解析にて求めた。その結果を表1に示す。歯A、B、Cの隅角部2の設定方法は、図6に示すように、先ず歯肉3よりも下側へ突出した歯1の外側面を撮像手段にて撮影し、この歯1の基準画像4の外形に接する四角形の枠5の中心Pを求める。次に、基準画像4を80%に縮小した縮小画像6を作成し、両画像4、6をその中心Pが重なるように重ねあわせる。次に、縮小画像6に接する上下方向の区画直線7で基準画像4を区画し、区画直線7の外側のハッチングで示す領域を隅角部2と設定した。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示すように、反転角度θが65°≦θ≦85°であり、反転スピードVが55Hz≦V≦75Hzである場合と、反転角度θが40°≦θ≦65°であり、反転スピードVが65Hz≦V≦85Hzである場合とでは、十分なプラーク除去性能が得られることが判る。
【0042】
次に、ブラシ部29の座屈強度を適正に設定するために行った試験について説明する。
【0043】
電動歯ブラシ10として、ブラシヘッド30の反転角度θを65度、反転スピードVを65Hzに設定した電動歯ブラシを用いた。替えブラシ20としては、ブラシヘッド30の基台33として、植毛孔が21穴、植毛孔の穴径が1.5mm、最外周に配置される植毛孔の中心を通る円周の直径が9.4mmの基台33を備え、フィラメントとして、直径がφ0.127mm、φ0.160mm、φ0.190mmの3種類のフィラメントであって、毛丈が10mmで、先端部に先丸加工を施し、毛束をフラット毛切したフィラメントを植設した3種類のブラシヘッド30を備えたものを用いた。
【0044】
そして、前記3種類の替えブラシ20を電動歯ブラシ10に順次取り付けて、上記と同様の要領でブラッシング試験を行なって、顎模型42の歯に付着させた人工プラークの除去率を測定した。また、JISS3016「歯ブラシ」の規定に準じてブラシ部29の座屈強度を測定し、その結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表2から判るように、隅角部におけるプラーク除去率は、フィラメントの直径が細くなるにしたがって、即ち隅角部の奥部にフィラメントが入り易くなるにしたがって高くなり、フィラメントの直径を0.16mm以下で、座屈強度を50N/cm2以下に設定することで、プラーク除去率60%以上を確保できることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】電動歯ブラシの縦断面図
【図2】電動歯ブラシの第1及び第2変換手段の説明図
【図3】試験装置の正面図
【図4】試験装置の平面図
【図5】試験する歯の説明図
【図6】歯の隅角部の説明図
【図7】本発明に係る電動歯ブラシにおける反転スピードと反転角度との関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0048】
1 歯 2 隅角部
3 歯肉 4 基準画像
5 枠 6 縮小画像
7 区画直線
10 電動歯ブラシ 11 ケーシング
11a モータケース
12 蓋部材 13 電池
14 モータ 15 回転軸
16 出力軸 17 第1変換手段
18 ゴムカバー 19 カバー部材
20 替えブラシ 21 第1傘歯車
22 第2傘歯車 23 軸部
24 カム孔 25 係合ピン
26 柄体 27 操作ロッド
28 軸部材 29 ブラシ部
30 ブラシヘッド 31 連結ピン
32 第2変換手段 33 基台
40 試験装置 41 操作手段
42 顎模型 43 保持手段
44 測定手段 45 ストレインゲージ
46 ホルダ 47 支持枠
A 第1小臼歯 B 第2小臼歯
C 第1大臼歯


【特許請求の範囲】
【請求項1】
反転往復運動するブラシヘッドを有する電動歯ブラシにおいて、
前記ブラシヘッドの反転角度θが65°≦θ≦85°であり、反転スピードVが55Hz≦V≦75Hzである、
ことを特徴とする電動歯ブラシ。
【請求項2】
反転往復運動するブラシヘッドを有する電動歯ブラシにおいて、
前記ブラシヘッドの反転角度θが40°≦θ≦65°であり、反転スピードVが65Hz≦V≦85Hzである、
ことを特徴とする電動歯ブラシ。
【請求項3】
前記ブラシヘッドの基台に植設される複数の毛束からなるブラシ部の座屈強度が50N/cm2以下である請求項1又は2記載の電動歯ブラシ。
【請求項4】
出力軸の往復直線運動をブラシヘッドの反転往復運動に変換する変換手段を備えた請求項1〜3のいずれか1項記載の電動歯ブラシ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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