説明

電動歯ブラシ

【課題】 歯肉炎や歯槽膿漏など歯周病の治療や予防により効果的な電動歯ブラシの提供
【解決手段】 本発明に係る電動歯ブラシ1は、ブラシ体44が中空の毛43を備えており、薬液タンク13からブラシ体44の中空の毛に43薬液を送り、中空の毛43の先から薬液を吐出させるポンプ14とを備えている。この電動歯ブラシによれば、ブラッシング中に中空の毛43の先から薬液を吐出させることができる。これにより歯周ポケットに直接的に薬液を供給することができ、歯肉炎や歯槽膿漏など歯周病の治療や予防により効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯周病の予防と治療に効果的な電動歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動歯ブラシは、モータと駆動機構を有する把持部と、把持部の駆動機構に連結されて往復動又は回転駆動等をするブラシ本体とを備えたものである。近年、電動歯ブラシは、虫歯予防や歯垢除去のためブラッシングを補助するものとして、また、歯肉炎や歯槽膿漏など歯周病の治療や予防などに用いられている。
【0003】
電動歯ブラシには、例えば、特開平11−235234号にはブラシ本体に備えられているブラシ体が回転するものが記載されており、特開平7−303524号には長軸周囲の振動運動や縦軸方向の前後運動するものが記載されている。また、特開平9−322823号には、ブラシ体に植設された剛毛が長手方向に出入する構造、及び、ポンプによって薬液が抽出されるノズルを備えた構造が開示されている。
【特許文献1】特開平11−235234号
【特許文献2】特開平7−303524号
【特許文献3】特開平9−322823号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歯肉炎や歯槽膿漏などの歯周病では、歯と歯茎との間の歯肉溝やさらに奥深くの位置に形成される歯周ポケットに炎症部が生じる。特開平9−322823号には、ブラシ本体の基端に薬液が抽出されるノズルを組み合わせたものが開示されているが、歯と歯茎との間の歯周ポケットは入口が狭いため、ブラシ近傍に薬液を供給することができても、歯と歯茎との間の歯周ポケットの内部に十分に薬液を供給することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電動歯ブラシは、電気駆動機構と、電気駆動機構により駆動するブラシ体と、薬液を貯留した貯留部とを備えた電動歯ブラシにおいて、ブラシ体に植設された中空の毛と、前記貯留部からブラシ体の中空の毛を通して薬液を供給する薬液供給部とを備えていることを特徴としている。また、ブラシ体は植設された中空の毛の長手方向に往復動するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0006】
この電動歯ブラシによれば、ブラシ体に植設された中空の毛と、前記貯留部からブラシ体の中空の毛を通して薬液を供給する薬液供給部とを備えているので、薬液供給部によりブラッシング中に中空の毛の先から薬液を吐出させることができ、歯周ポケット等の炎症部に直接的に薬液を供給することができる。これにより、歯肉炎や歯槽膿漏など歯周病の治療や予防により効果が得られる。また、植設された中空の毛の長手方向に往復動するようにブラシ体を構成することにより、ブラッシング中に中空の毛の毛先で歯周ポケットなど、歯と歯茎との間の奥深いところに生じる炎症部を突くことができるとともに、斯かる炎症部に直接的に薬液を吐出させることができるので、歯肉炎や歯槽膿漏など歯周病の治療により効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態に係る電動歯ブラシを図面に基づいて説明する。
【0008】
第1実施形態に係る電動歯ブラシ1は、図1に示すように、把持部2と、ブラシ本体3で構成されている。
【0009】
把持部2は、電気駆動機構としてのモータ11及び駆動機構12と、薬液を貯留する貯留部としてのタンク13と、薬液供給部としてのポンプ14と、電池室15を備えている。
【0010】
この実施形態では、駆動機構12は、モータ11に取り付けられたピニオン21と噛合するクランク22と、駆動シャフト23で構成されている。クランク22は、把持部2の基材2aに回動自在に軸支された歯車で構成され、ピニオン21に噛合して回転する部材であり、偏心した位置にピン24を備えている。駆動シャフト23は、図1(a)に示すように、基端にピン24が係合する横向きのガイド25を備えており、ガイド25とピン24が係合したスライダ機構により、クランク22の回転に伴って前後動するようになっている。
【0011】
駆動シャフト23は、先端にブラシ本体3を連結する連結部26を備えており、中間部にはポンプ14に内蔵される送り羽27を備えている。
【0012】
ポンプ14は駆動シャフト23の送り羽27を収容した容器構造を備えており、図示は省略するが、送り羽27には逆止弁28が取り付けられている。送り羽27を挟んで一方に薬液タンク13の薬液供給配管31に接続された薬液吸上空間32を備えており、他方にブラシ本体3側の薬液供給配管45に接続された薬液排出空間34を備えている。このポンプ14は駆動シャフト23が前後動すると送り羽27がポンプ14内で前後動し、薬液タンク13から薬液吸上空間32に薬液を吸い上げる。薬液吸上空間32に吸い上げられた薬液は、送り羽27に取り付けた逆止弁28を介して薬液排出空間34に送られ、薬液排出空間34からブラシ本体3側の薬液供給配管45に排出されるようになっている。
【0013】
ブラシ本体3は、把持部2の先端に交換可能に取り付けられた部材であり、中空の基材3aの内部に前後動可能に配設された従動シャフト41と、クランク42と、ブラシ43が植設されたブラシ体44と、薬液供給配管45が内蔵されている。ブラシ本体3の基材3aには、先端にブラシ43が突出し進退する開口46が形成されている。
【0014】
従動シャフト41と薬液供給配管45は、ブラシ本体3の基端側にそれぞれ接続部51、52を有し、それぞれブラシ本体3を把持部2に取り付ける際に、把持部2の駆動シャフト23とポンプ14に接続される。
【0015】
従動シャフト41は、駆動シャフト23の動きに伴い、ブラシ本体3内で軸方向に前後動するようになっている。従動シャフト41の先端にクランク42の一端56をピン係合で連結している。クランク42はL字形の部材であり、L字の角部57を支点として、ブラシ本体3の基材3aに回動自在に取り付けられており、従動シャフト41の前後動により揺動し、他端58が進退させるようになっている。クランク42の他端58にはブラシ体44が接続されている。
【0016】
ブラシ体44は、図1(b)に拡大して示すように、基部61と、植設されたブラシ43とで構成されており、図示は省略するが、基材3aの開口46の近傍に設けたガイド機構を介して取り付け、従動シャフト41及びクランク42の動きに応じて開口46から突出したブラシ43が進退するように配設されている。
【0017】
基部61は中空の部材で、薬液供給配管45から供給される薬液が溜まるようになっている。この実施形態では、ブラシ43はチューブ状の中空の毛で構成されており、その基端は基部61に連通している。中空の基部61はマニホルドとしての機能を備えており、基部61に供給された薬液をブラシ体44の各中空の毛43に流通させ、各中空の毛43の先端から吐出させるようになっている。
【0018】
中空の毛43は、先端が歯周ポケットに入り得るように、所要の剛性と細さを備えており、薬液のスムーズな流通が可能な程度の内径を備えている。この実施形態では先端の外径を0.2mmから0.6mm程度の細さにしている。
【0019】
なお、ブラシ体44に植設されるブラシは、図示例のように全ての毛を中空の毛としても良いが、中空でない毛と中空の毛を混在させたものでも良い。また、中空の毛43は、ブラシとしての剛性を確保するため、又は、剛性を調節するために、例えば、図2(a)(b)に示すように、芯材71a、71bを内部に装着してもよい。この際、芯材は薬液の流通を阻害しないように中空の芯材71a(図2(a)参照)や、内部に偏在させて装着した中実の芯材71b(図2(b)参照、図示例では芯材71bは薬液がスムーズに流通するように軸方向に溝71b1を備えている。)を用いるとよい。芯材は剛性を備えたプラスチック製又は金属製でもよい。また、芯材を取り付ける代りに、中空の毛はブラシの基端部の外径を太くして剛性を確保してもよい。また、ブラシ43は、中空の毛と中空でない毛とを混合させて又は中空の毛を毛束として剛性を調整してもよい。
【0020】
この電動歯ブラシ1は、モータ11の駆動により、駆動シャフト23が駆動し、それを受けて、従動シャフト41、クランク22およびブラシ体44がそれぞれ動く。ブラシ体44はクランク22の動きに連れて植設された中空の毛の長手方向に往復動するようになっており、ブラシ本体3の開口46から突出したブラシ43が進退するようになっている。またそれと同時に、駆動シャフト23の動きにより、ポンプ14が作動してブラシ43の毛先から薬液が吐出されるようになっている。
【0021】
これにより、この電動歯ブラシ1を用いれば、ブラシ本体3が植設された中空の毛の長手方向に往復動するようにを構成することにより、使用者は、ブラッシングの際、ブラッシング中に中空の毛の毛先で歯周ポケットなど、歯と歯茎との間の奥深いところに生じる炎症部を突くことができるとともに、ブラシ43の毛先が歯周ポケットなどの炎症部に入り、斯かる炎症部に直接的に薬液を吐出させることができる。これにより、歯周ポケットなどの炎症部の洗浄や炎症の治療をより効果的に行なえるので、より効果的に歯肉炎や歯槽膿漏など歯周病を治療することができる。
【0022】
以上、本発明の一実施形態に係る電動歯ブラシを図面に基づいて説明したが、本発明に係る電動歯ブラシは上述した実施形態に限定されるものではない。
【0023】
例えば、この電動歯ブラシ1は、ポンプ14を内蔵し、薬液タンク13から薬液を自動的に供給するようにしているが、ポンプ14の作動を操作するスイッチを設けて、使用者が所望するときに薬液が吐出されるようにしてもよい。また、ポンプの構造も上述した形態に限定されるものではない。
【0024】
また、薬液供給部としての上述した電動ポンプに変えて、例えば、図3に示すように、薬液タンク13を柔軟なプラスチック又はゴム材質で構成し、薬液タンク13を指で押えると薬液が供給されるようにし、使用者が所望するタイミングで手動で薬液を吐出させることができるようにしてもよい。これにより、電池への負担を軽減させることができ、長時間の使用を可能とし、携帯性を向上させることができる。また、薬液供給部を手動でタンクから薬液を供給する構造としては、タンク内に空気を送り、タンク内の空気圧を上げてタンクから薬液を押し出す構造にしてもよい。
【0025】
また、中空の毛81は、図4に示すように、先端81aを複数本に分かれさせてもよい。なお、この図示例では、中空の毛81の先端81aはささくれた状態で複数本に分けている。この場合、中空チューブ状の毛81の先端81aをより細くすることができるので、先端81aが歯肉溝やさらにその奥の歯周ポケットへ入り易くなる。斯かる中空チューブ状の毛81によれば、歯周病のより初期の段階などで炎症部が小さい場合などの治療がより効果的に行なえる。
【0026】
また、ブラシ体の駆動機構は、上述した実施形態に限定されるものではなく、ブラシ体が回転するもの、振動するものなどを採用してもよい。なお、上述した実施形態では、ブラシ体が進退する構造であり、歯茎を押圧刺激する歯周病治療に好適なものである。同様にブラシ体が進退する構造を備えたものとして、ブラシ本体3は、図5に示すように、把持部2の駆動シャフト23にブラシ体44が直接取り付けられるようになっており、所要の剛性を有するブラシ82がブラシ本体3の中空部を通って開口から突出したものとしてもよい。このブラシ本体3は、駆動シャフト23の前後動に応じて、ブラシ本体3の開口46から突出したブラシ82がその突出した方向に前後動するようになっている。図1で示すものと同様に、ブラッシング中に中空の毛の毛先で歯周ポケットなど、歯と歯茎との間の奥深いところに生じる炎症部を突くことができるとともに、斯かる炎症部に直接的に薬液を吐出させることができるので、歯肉炎や歯槽膿漏など歯周病の治療に効果的である。
【0027】
また、ブラシ体44に植設する毛束に硬柔2種の剛性を付与し、狭い歯肉溝やその奥の歯周ポケット等への毛先の侵入性を向上させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動歯ブラシを示す縦断側面図、(a)は駆動機構の構造を示す図であり、(b)はブラシ体の構造を示す図である。
【図2】(a)(b)はそれぞれ本発明の一実施形態に係る中空の毛の芯材を示す断面図。
【図3】本発明の他の実施形態に係る電動歯ブラシを示す縦断面図。
【図4】中空の毛の他の実施形態を示す図。
【図5】本発明の他の実施形態に係る電動歯ブラシを示す縦断面図。
【符号の説明】
【0029】
1 電動歯ブラシ
2 把持部
3 ブラシ本体
11 モータ
12 駆動機構
13 薬液タンク
14 ポンプ
15 電池室
21 ピニオン
22 クランク
23 駆動シャフト
24 ピン
25 ガイド
26 連結部
27 送り羽
28 逆止弁
31 薬液供給配管
32 薬液吸上空間
34 薬液排出空間
41 従動シャフト
42 クランク
43 ブラシ(中空の毛)
44 ブラシ体
45 薬液供給配管
46 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気駆動機構と、前記電気駆動機構により駆動するブラシ体と、薬液を貯留した貯留部とを備えた電動歯ブラシにおいて、
前記ブラシ体に植設された中空の毛と、前記貯留部からブラシ体の中空の毛を通して薬液を供給する薬液供給部とを備えていることを特徴とする電動歯ブラシ。
【請求項2】
前記ブラシ体は、植設された中空の毛の長手方向に往復動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項3】
前記中空の毛は毛先が複数本に分かれていることを特徴とする請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項4】
前記中空の毛は、内部に装着された中空の芯材又は内部に偏在させて装着した中実の芯材により、剛性が調整されていることを特徴とする請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項5】
薬液供給部は前記電気駆動機構から動力を得て薬液を供給するものであることを特徴とする請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項6】
前記薬液供給部は手動で貯留部から薬液を供給するものであることを特徴とする請求項1に記載の電動歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−61486(P2006−61486A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248587(P2004−248587)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000112576)フカイ工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】