説明

電動歯ブラシ

【課題】電動歯ブラシの付加機能を有効に動作させるための技術を提供する。
【解決手段】電動歯ブラシは、ブラシ(210)を有するブラシ部材(2)と、ブラシ部材に設けられ、歯、歯と歯茎の間、若しくは歯肉に対して、光、不可視光(赤外線、紫外線など)、熱、電気刺激、超音波振動、液体、気体、又は、粉体を出力する機能を有する出力手段(50〜57)と、ブラシの姿勢を検出する姿勢検出手段(15)と、検出されたブラシの姿勢に応じて出力手段の出力を制御する制御手段(120;58)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯垢除去力や施療感の向上、口内環境の改善、商品価値の向上などを目的とし、様々な付加機能をもつ歯ブラシが提案されている。たとえば、光照射により口腔内の殺菌を行う機能をもつ歯ブラシ(特許文献1〜3参照)、ヒータや赤外線により歯肉の血行促進や施療感の向上を図る機能をもつ歯ブラシ(特許文献3〜6参照)、超音波振動による歯垢除去機能をもつ歯ブラシ(特許文献7、8参照)、ブラシやブラシ部材から薬液若しくは気体を吐出する機能をもつ歯ブラシ(特許文献9〜12参照)、歯肉に対して電気刺激を与える機能をもつ歯ブラシ(特許文献13参照)などが存在する。
【0003】
これらの付加機能は主に歯肉組織や歯周ポケットに対して効果を与えるものである。しかしながら、従来の歯ブラシでは、口腔内のどこをブラッシングしているかに拘わらず付加機能を動作させているため、それらの機能が必ずしも有効に発揮されないことがあった。たとえば、噛み合わせ面を磨いている最中に光や赤外線を照射しても歯肉へは光が到達しにくく、十分な効果は得られない。同じように、噛み合わせ面に対して熱や電気刺激を与えたり薬液や気体を吐出しても、目的とする効果は十分に得られない。また、超音波振動は、液体中ではキャビテーション効果により殺菌作用が期待できるが、気体中ではその効果が発揮できない。それゆえ、噛み合わせ面のように唾液の分泌が期待できない箇所では、超音波振動の効果はほとんど得られない。
【0004】
このように、従来の歯ブラシでは、本来の効果が期待できない部位に対しても付加機能を無駄に動作させている。このような無駄な動作は、特にコードレスタイプの電動歯ブラシにあっては、充電池の消耗を早めるため好ましくない。しかも、無駄な動作は付加機能の寿命を短くする(薬液等の消耗を含む)ことにもつながり、好ましくない。
【0005】
なお、特許文献14には、歯ブラシ本体の軸周りの向きを4段階または8段階に検出し、その検出結果からブラッシング部位を推定するというアイデアが開示されている。具体的には、本体内部に複数の扇状の区画が周方向に設けられており、導電性の球がどの区画に入っているかを電気抵抗の変化から検知することで、歯ブラシ本体の向きを推定している。ただしこのような機構は小型化が難しく、実施可能性に乏しい。
【特許文献1】特表2006−521875号公報
【特許文献2】特開平3−251207号公報(特許第2615505号公報)
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0271714号明細書
【特許文献4】特開2001−137046号公報
【特許文献5】特開2001−299454号公報
【特許文献6】特開平2−55005号公報
【特許文献7】特開平2006−42991号公報
【特許文献8】特開2003−245288号公報(特許第3586252号公報)
【特許文献9】特表2007−516029号公報
【特許文献10】特開2006−61486号公報
【特許文献11】特開2007−167088号公報
【特許文献12】実用新案登録第3100425号公報
【特許文献13】特開2002−325634号公報
【特許文献14】特開2005−152217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、電動歯ブラシの付加機能を有効に動作させるための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用する。
【0008】
本発明の電動歯ブラシは、ブラシを有するブラシ部材と、前記ブラシ部材に設けられ、歯、歯と歯茎の間、若しくは歯肉に対して、光、不可視光(赤外線、紫外線など)、熱、電気刺激、超音波振動、液体、気体、又は、粉体を出力する機能を有する出力手段と、前記ブラシの姿勢を検出する姿勢検出手段と、検出された前記ブラシの姿勢に応じて前記出力手段の出力を制御する制御手段と、を備える。
【0009】
「出力手段」は、ブラシによるブラッシングとは別に、歯、歯と歯茎の間、若しくは歯肉に対して何らかの効果(たとえば、殺菌効果、温熱効果、血行促進効果、清浄効果、治療効果、審美効果など)を与えるための付加機能である。本発明の構成によれば、これらの付加機能が適切な場所やタイミングで有効に動作するように、ブラシの姿勢に応じて出力を自動的に制御することが可能となる。
【0010】
前記姿勢検出手段は、前記ブラシの姿勢が噛み合わせ面を磨く姿勢であるか否かを少なくとも検出するものであり、前記制御手段は、噛み合わせ面を磨く姿勢である場合の前記出力手段の出力が、噛み合わせ面を磨く姿勢でない場合の出力よりも、相対的に小さくなるように、前記出力手段の出力を制御することが好ましい。
【0011】
噛み合わせ面を磨く姿勢のときに、光、不可視光、熱、電気刺激、超音波振動、液体、気体、又は、粉体を出力しても、それらが歯肉若しくは歯周ポケットに到達せず、期待する効果が得られない可能性がある。一方、噛み合わせ面を磨く姿勢でないとき(つまり、歯の側面や歯と歯茎の間などを磨く姿勢の場合)は、ブラシが歯肉や歯周ポケットに接触又は近接しているため、出力手段の出力が歯肉や歯周ポケットに届きやすい。それゆえ、上記のように出力を制御することで、付加機能の効果を適切に発揮させることができる。
【0012】
具体的には、前記制御手段は、前記ブラシの姿勢が噛み合わせ面を磨く姿勢である場合に、前記出力手段の出力を低下又は停止させることが好ましい。これにより、出力手段の無駄な動作が抑制されるため、消費電力を抑えることができるとともに、出力手段の消耗を抑えることができる。
【0013】
さらに、前記制御手段は、前記ブラシの姿勢が噛み合わせ面を磨く姿勢でない場合に、前記出力手段の出力を増大させることが好ましい。このように、効果が期待できる部位に対して出力を増大あるいは集中させることにより、効率的に最大の効果を得ることが可能となる。
【0014】
前記姿勢検出手段は、加速度センサの出力に基づいて前記ブラシの姿勢を検出するものであることが好ましい。これにより、高精度にブラシの姿勢を判定できる。また加速度センサは小型ゆえ、電動歯ブラシ本体への組み込みも容易である。1軸の加速度センサを用いることもできるし、好ましくは、多軸(2軸、3軸、又は、それ以上)の加速度センサを用いることもできる。
【0015】
前記姿勢検出手段は、電動歯ブラシの把持部に設けられた複数の接触感知センサの出力に基づいて前記ブラシの姿勢を検出するものであることも好ましい。接触感知センサも小
型ゆえ、電動歯ブラシ本体(把持部)への組み込みが容易である。
【0016】
なお、上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電動歯ブラシの付加機能を有効に動作させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0019】
<第1実施形態>
(電動歯ブラシの構成)
図1、図2、図3を参照して、電動歯ブラシの構成を説明する。図1は第1実施形態の電動歯ブラシのブロック図であり、図2は第1実施形態の電動歯ブラシの内部構成を示す断面図であり、図3は電動歯ブラシの外観を示す斜視図である。
【0020】
電動歯ブラシは、駆動源であるモータ10を内蔵する電動歯ブラシ本体1(以下、単に「本体1」ともいう。)と、ブラシ210を有するブラシ部材2とを備えている。本体1は、概ね円筒形状を呈しており、歯を磨く際に使用者が手で握るための把持部を兼ねている。
【0021】
本体1には、電源のオン/オフを行うためのスイッチSが設けられている。また本体1の内部には、駆動源であるモータ10、駆動回路12、2.4V電源である充電池13、充電用のコイル14などが設けられている。充電池13を充電する際には、充電器100に本体1を載置するだけで、電磁誘導により非接触で充電可能である。駆動回路12は、各種演算・制御を実行するCPU(入出力処理部)120、プログラムや各種設定値を記憶するメモリ121、タイマ122などを有している。
【0022】
(加速度センサ)
本体1の内部には、加速度センサ15が設けられている。加速度センサ15としては多軸(たとえばx,y,zの3軸)の加速度センサを用いてもよいし、1軸の加速度センサを用いてもよい。3軸加速度センサの場合は、図3に示すように、x軸がブラシ面に対して平行になり、y軸が本体1の長手方向に一致し、z軸がブラシ面に対して垂直になるように設置するとよい。1軸加速度センサの場合は、図3のz軸方向もしくはx軸方向の加速度を検出するように設置するとよい。加速度センサ15の出力はCPU120に入力され、ブラシの三次元姿勢を検出するために利用される。
【0023】
加速度センサ15としては、ピエゾ抵抗タイプ、静電容量タイプ、もしくは熱検知タイプのMEMSセンサを好ましく利用できる。MEMSセンサは非常に小型であるため、本体1の内部への組み込みが容易だからである。ただし、加速度センサ15の形式はこれに限らず、動電式、歪みゲージ式、圧電式などのセンサを利用しても構わない。また特に図示しないが、各軸のセンサの感度のバランス、感度の温度特性、温度ドリフトなどを補正するための補正回路を設けるとよい。また、動加速度成分やノイズを除去するためのバンドパスフィルタ(ローパスフィルタ)を設けてもよい。また、加速度センサの出力波形を平滑化することによりノイズを低減してもよい。
【0024】
(ブラシの駆動機構)
本体1は、本体1の外筐体の先端側(ブラシ側)の開口部から突き出るように設けられたステム3を有している。上記のブラシ部材2は、このステム3を覆うように装着される
。ブラシ部材2の先端には、ブラシ210が植毛されている。ブラシ部材2は消耗部品ゆえ、新品に交換できるよう、ステム3に対して着脱自在な構成となっている。ステム3は、樹脂材からなる、先端(ブラシ側の端部)が閉じた筒状の部材であり、内部に軸受203を有している。モータ10の回転軸11に連結された偏心軸30の先端が、この軸受203に挿入される。偏心軸30は、軸受203の近傍に重り300を有しており、偏心軸30の重心はその回転中心からずれている。CPU120が動作モードに応じた駆動信号(たとえばパルス幅変調信号)をモータ10に供給し、モータ10の回転軸11を回転させると、回転軸11の回転に伴って偏心軸30も回転するが、偏心軸30は重心がずれているために回転中心の回りに旋回するような運動を行う。よって、偏心軸30の先端が軸受203の内壁に対して衝突を繰り返し、ブラシ210を高速に振動(運動)させることとなる。つまり、モータ10が、ブラシ210を振動(運動)させる駆動手段の役割を担い、偏心軸30が、モータ10の出力(回転)をブラシ210の振動に変換する運動伝達機構(運動変換機構)の役割を担う。
【0025】
(超音波振動素子)
ブラシ部材2の先端(ブラシ210の根元部分)には、超音波振動素子50が埋設されている。超音波振動素子50は、所定周波数(たとえば数百kHz〜数MHz)の超音波振動を出力することによって、歯周ポケットなどに付着した歯垢や細菌嚢を除去・破壊する機能を提供するものである。超音波振動素子50としては、ピエゾタイプの振動素子を好ましく利用できる。なお歯ブラシの付加機能として利用される超音波振動素子の具体的構造は公知ゆえ、ここではその詳しい説明を省略する。ステム3の先端にはキャップ形状の接点端子32が設けられている。駆動回路12からステム内壁に沿って延びるリード線31が、ステム3の先端に設けられたコンタクトホールを通じて接点端子32に電気的に接続される。一方、ブラシ部材内の超音波振動素子50にはバネ状端子33が接続されている。ブラシ部材2をステム3に装着すると、バネ状端子33が接点端子32に接触し、電気的接続が図られる。これにより、超音波振動素子50への電力供給と、CPU120による音圧や発信周波数の制御が可能となる。
【0026】
(超音波振動素子の制御)
超音波振動素子50は、超音波振動により液体中に真空の空洞(キャビテーション)を発生させ、その空洞が破裂するときに生じる衝撃波により歯垢や細菌の除去・破壊を行うものである(これをキャビテーション効果という)。したがって、液体中では超音波振動による歯垢除去・殺菌作用は期待できるものの、気体中ではその効果はほとんど発揮できない。言い換えれば、超音波振動素子50が埋設されたブラシ部材2の先端部が口腔内の液体(唾液や洗浄液)にほとんど触れていない状況下では、超音波振動を出力してもほとんど意味がないのである。これをブラッシング部位別に考察すると、歯面(歯の側面)や歯と歯茎の間などを磨いている場合には、口腔内に溜まった液体にブラシ部材2の先端部が触れやすい。しかしながら、歯の噛み合わせ面を磨いている場合には、ブラシ部材2が口腔内の液体に触れにくく、また唾液の分泌も期待できないので、超音波振動による効果はほとんど得られない。
【0027】
そこで、本実施形態の電動歯ブラシは、加速度センサ15の出力に基づきブラシの姿勢を検出し、ブラシの姿勢に応じて超音波振動素子50の出力を自動的に制御する。以下、フローチャートを参照しながら、具体的な制御の内容について説明する。
【0028】
図4は電動歯ブラシのメインフローを示すフローチャートであり、図5は図4のS20における姿勢検出処理を示すフローチャートである。なお以下に説明する処理は、特にことわりのない限り、CPU120がプログラムに従って実行する処理である。
【0029】
電動歯ブラシの電源がONになると、CPU120は、モータ10を制御してブラシ2
10の駆動を開始する(S10)。以下に述べるS20〜S50の処理は一定時間ごとに繰り返し実行され、電動歯ブラシの電源がOFFになるか、タイマによって計時されていた継続動作時間が所定時間(たとえば2分間)に達すると、図4のルーチンは終了する。
【0030】
S20において、CPU120は、加速度センサ15の出力に基づきブラシの姿勢を検出する。
【0031】
本実施形態では、ブラシの姿勢が噛み合わせ面を磨く姿勢であるかどうかを判別するだけでよいので、ブラシ角に着目すればよい。ブラシ角とは、歯軸(歯の頭と根に沿った軸)に対するブラシの当たり角であり、簡易的には、y軸周りの角度(ヨー角γ)として検出することができる。
【0032】
図6の上段は、歯面を磨いている状態を示しており、図6の下段は、噛み合わせ面を磨いている状態を示している。歯面を磨いている姿勢では、ブラシ角(ヨー角γ)は約90度になり、重力加速度のx軸方向成分は約1gもしくは−1gとなり(gは重力加速度、正負は歯列の左右に対応する)、重力加速度のz軸方向成分はほぼ0となる。一方、噛み合わせ面を磨いている姿勢では、ブラシ角はほぼ0度になるため、重力加速度のx軸方向成分はほぼ0となり、重力加速度のz軸方向成分は約1gもしくは−1gとなる。このように、ブラシ角の変化は、x軸方向及びz軸方向の加速度成分に有意な変化をもたらす。したがって、x軸又はz軸の加速度センサの出力に基づいて、ブラシ角を推定することが可能である。
【0033】
図5は、z軸の加速度センサによる姿勢検出処理のフローチャートである。CPU120は、加速度センサ15からz軸方向の加速度成分Azを取得する(S200)。そして、CPU120は、Azの絶対値と所定の閾値(たとえば0.7g)とを比較する(S210)。Azの絶対値が閾値より大きい場合は、噛み合わせ面を磨いているものと判定し(S220)、閾値以下の場合は、噛み合わせ面でない部位を磨いているものと判定する(S230)。本実施形態では加速度センサ15及びCPU120のこの機能が、本発明の姿勢検出手段に対応する。
【0034】
図4のフローに戻り、S30において、CPU120はブラシの姿勢が噛み合わせ面を磨く姿勢であるか否かで処理を分岐する。ブラシの姿勢が噛み合わせ面を磨く姿勢である場合は(S30;YES)、CPU120は、超音波振動素子50の出力を停止する(S40)。一方、ブラシの姿勢が噛み合わせ面を磨く姿勢でない場合は(S30;NO)、CPU120は、超音波振動素子50の出力をONにする(S50)。
【0035】
(本実施形態の利点)
以上述べた本実施形態の制御によれば、噛み合わせ面を磨いている間は超音波振動素子50の動作を自動的に停止することができる。これにより、超音波振動素子の無駄な動作が抑制されるため、消費電力を抑えることができるとともに、振動素子自体の消耗を抑えることができる。なお消費電力の低減は、本実施形態のような電池式(コードレスタイプ)の電動歯ブラシにおいては極めて有益である。
【0036】
なお、上記実施形態では噛み合わせ面の場合に超音波振動素子の動作を停止しているが、制御の仕方はこれに限らない。たとえば、噛み合わせ面の場合に超音波振動素子の出力を低下させる(音圧を小さくする)だけでも、消費電力を低減する効果が得られる。また、逆に、噛み合わせ面でない場合に、出力を増大させるようにしてもよい。これにより効率的に超音波振動の効果を発揮させることができる。
【0037】
また、上記実施形態では、z軸方向の加速度成分Azからブラシの姿勢を判定したが、
姿勢判定の手法はこれに限らない。たとえば、x軸方向の加速度成分Axを用いてもよい。また多軸の加速度センサを用いた場合には、AxとAzの両方(たとえばAxとAzの合成ベクトルの方向)からブラシの姿勢を推定してもよい。
【0038】
<第2実施形態>
第2実施形態の電動歯ブラシは、出力手段(付加機能)として、光を出力する発光素子を具備している。
【0039】
図7は、第2実施形態の電動歯ブラシの断面図である。ブラシ部材2の先端(ブラシ210の根元部分)には、発光素子51が設けられている。発光素子51は、歯肉や歯周ポケットに対して光を照射することによって、口腔内の殺菌を行うものである。発光素子51としては、たとえば、LEDやレーザー発光素子などを好適に用いることができる。なお歯ブラシの付加機能として利用される発光素子の具体的構造は公知ゆえ、ここではその詳しい説明を省略する。発光素子51は、リード線31、接点端子32、及びバネ状端子33を介して、駆動回路12に電気的に接続されており、CPU120により発光のON/OFFや光量の制御が可能である。
【0040】
噛み合わせ面を磨いている最中に発光素子51による光照射を行っても、歯肉や歯周ポケットには光が到達しにくいため、十分な殺菌効果は得られない。したがって、前述の実施形態と同じように、CPU120は、噛み合わせ面では発光素子51の出力を低下または停止させ、逆に噛み合わせ面でない場合は発光素子51の出力をONまたは増大させる。これにより、電池や発光素子の消耗を抑えつつ、付加機能による効果を効率的に得ることができる。
【0041】
なお、出力手段として、赤外線や紫外線などの不可視光を出力する素子をブラシ部材2の先端に設けてもよい。歯肉に赤外線を照射することにより、温熱効果や血行促進効果が期待できる。また紫外線の照射により、殺菌効果が期待できる。いずれの場合も、噛み合わせ面に対しては十分な効果が期待できないため、上記実施形態と同様、ブラシの姿勢に基づく出力制御を行うことが好ましい。
【0042】
<第3実施形態>
第3実施形態の電動歯ブラシは、出力手段(付加機能)として、熱エネルギを出力する発熱素子を具備している。
【0043】
図8は、第3実施形態の電動歯ブラシの断面図である。ブラシ部材2の先端(ブラシ210の根元部分)には、発熱素子52が設けられている。発熱素子52は、歯肉や歯周ポケットに熱エネルギを与えて、温熱効果や血行促進効果などを得るものである。発熱素子52としては、たとえば、電流により発熱するヒータなどを好適に用いることができる。なお歯ブラシの付加機能として利用される発熱素子の具体的構造は公知ゆえ、ここではその詳しい説明を省略する。発熱素子52は、リード線31、接点端子32、及びバネ状端子33を介して、駆動回路12に電気的に接続されており、CPU120により発熱のON/OFFや発熱量の制御が可能である。
【0044】
噛み合わせ面を磨いている最中に発熱素子52から熱エネルギを出力しても、歯肉や歯周ポケットには熱が伝わりにくいため、十分な効果は得られない。したがって、前述の実施形態と同じように、CPU120は、噛み合わせ面では発熱素子52の出力を低下または停止させ、逆に噛み合わせ面でない場合は発熱素子52の出力をONまたは増大させる。これにより、電池や発熱素子の消耗を抑えつつ、付加機能による効果を効率的に得ることができる。
【0045】
<第4実施形態>
第4実施形態の電動歯ブラシは、出力手段(付加機能)として、電気刺激を出力する電極を具備している。
【0046】
図9は、第4実施形態の電動歯ブラシの断面図である。ブラシ部材2の先端(ブラシ210の根元部分)には、電極54が設けられている。電極54は、歯肉や歯周ポケットに対し、直接もしくはブラシ毛を介して電気パルスを出力し、歯肉の血行促進効果やイオン効果などを得るものである。なお歯ブラシの付加機能として利用される電極の具体的構造は公知ゆえ、ここではその詳しい説明を省略する。電極54は、リード線31、接点端子32、及びバネ状端子33を介して、駆動回路12に電気的に接続されており、CPU120により出力パルスの制御が可能である。
【0047】
噛み合わせ面を磨いている最中に電気刺激を出力しても、歯肉や歯周ポケットには電気刺激が到達しにくいため、十分な効果は得られない。したがって、前述の実施形態と同じように、CPU120は、噛み合わせ面では電気刺激の出力を低下または停止させ、逆に噛み合わせ面でない場合は電気刺激の出力をONまたは増大させる。これにより、電池や電極の消耗を抑えつつ、付加機能による効果を効率的に得ることができる。
【0048】
<第5実施形態>
第5実施形態の電動歯ブラシは、出力手段(付加機能)として、液体を出力する機能を具備している。この機能は、歯肉や歯周ポケットに対して液体(薬液や洗浄液など)を吐出することで、殺菌効果や治療効果やマッサージ効果などを得るものである。
【0049】
図10は、第5実施形態の電動歯ブラシの断面図である。電動歯ブラシの本体には、液体を収容するタンク56と、タンク56から液体を送り出すポンプ57と、吐出量を調整するためにポンプ57を制御する制御素子58が設けられている。またブラシ部材2の先端(ブラシ210の根元部分)には、液体を吐出するノズル55が設けられている。ノズル55とタンク56の間の接続構造はたとえば次のように構成可能である。すなわち、タンク56からステム3の先端部分まで、本体1の筐体内壁及びステム内壁に沿うようにチューブ34を配設し(不図示)、そのチューブ34の先端をステム3の外側に突出させる。チューブ34の先端にはゴム部材35が装着されている。なお、ステム3の内部空間の断面形状を楕円形にするなどして、チューブ34を配置するためのスペースを確保するとよい。一方、ノズル55にはパイプ36が設けられており、パイプ36の先端がブラシ部材2の内部空間に突出している。ブラシ部材2をステム3に装着すると、パイプ36の先端がゴム部材35の孔に突き刺さり、ノズル55とチューブ34との接続が図られる。
【0050】
この場合も、噛み合わせ面を磨いている最中に液体を吐出しても歯肉や歯周ポケットには到達しないため、十分な効果は得られない。したがって、前述の実施形態と同じように、CPU120は、噛み合わせ面では液体の吐出量を少なくしたり吐出を停止させ、逆に噛み合わせ面でない場合は液体の吐出をONまたは吐出量を増加させる。これにより、電池や液体の消耗を抑えつつ、付加機能による効果を効率的に得ることができる。
【0051】
なお、付加機能として、液体ではなく、ノズルから気体若しくは粉体を吐出する機能を設けてもよい。たとえば、歯肉や歯周ポケットにオゾンや薬剤を噴霧することにより、殺菌効果や治療効果などを得ることができる。
【0052】
<第6実施形態>
前述の実施形態では、加速度センサの出力に基づいてブラシの姿勢を検出したが、第6実施形態では、電動歯ブラシの把持部に設けられた複数の接触感知センサの出力に基づいてブラシの姿勢を検出する。もちろん本実施形態の姿勢検出処理は前述のいずれの実施形
態にも適用可能である。
【0053】
図11A及び図11Bに示すように、本実施形態の電動歯ブラシは、把持部に4つの接触感知センサ60〜63を有している。接触感知センサとしては、静電容量センサ、圧力センサ、光電センサ、温度センサ、スイッチ式のセンサなど、どのようなタイプのセンサを用いることもできる。この種のセンサは小型ゆえ本体1への実装が容易である。接触感知センサは、駆動回路に電気的に接続されている。
【0054】
接触感知センサ60〜63は、把持部のうちブラシ側の端部(つまり、ちょうど人差し指と親指が置かれる部分)において、把持部の周方向に配置される。具体的には、図11Aのようにブラシ面を上に向けたときの歯ブラシの姿勢を基準に考えたときに、接触感知センサ60は把持部の上面側、接触感知センサ62は把持部の下面側、接触感知センサ61及び63は把持部の側面側に配置されている。
【0055】
上顎の噛み合わせ面を磨く場合には、利用者は、図11A及び図11Bのように電動歯ブラシ本体1を把持するため、接触感知センサ60及び62には指が触れるが、接触感知センサ61及び63には指がほとんど触れない。下顎の噛み合わせ面を磨く場合にも同様である。したがって、噛み合わせ面を磨く姿勢の場合には、接触感知センサ60及び62から有意な出力が得られる蓋然性が高い。
【0056】
一方、歯面を磨く場合には、利用者は、図12A及び図12Bのように電動歯ブラシ本体1を把持する。そのため、接触感知センサ61及び63には指が触れるが、接触感知センサ60及び62には指がほとんど触れない。したがって、歯面を磨く姿勢の場合には、接触感知センサ61及び63から有意な出力が得られる蓋然性が高い。
【0057】
以上の考察に基づき、本実施形態では、図13のように姿勢検出を行う。まずCPU120は、それぞれの接触感知センサ60〜63の出力C0〜C3を取得する(S300)。ここでは、接触圧が大きいほどセンサ出力は大きくなるものとする。次にCPU120は、出力C0とC2の和を閾値T1と比較するとともに、出力C1とC3の和を閾値T2(ただしT1>T2)と比較する(S310)。そして、C0+C2>T1かつC1+C3<T2の場合は、噛み合わせ面を磨いているものと判定し(S320)、それ以外の場合は、噛み合わせ面でない部位を磨いているものと判定する(S330)。以降の処理は前述の実施形態と同様である。
【0058】
以上述べた本実施形態の構成によっても、ブラシの姿勢を検知することが可能であり、前述の実施形態と同様の作用効果を奏することが可能である。
【0059】
<その他>
上述した実施形態の構成は本発明の一具体例を例示したものにすぎない。本発明の範囲は上記実施形態に限られるものではなく、その技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。たとえば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせることも好ましい。また、上記実施形態では、偏心分銅による振動方式の電動歯ブラシを例示したが、本発明は他の運動方式の電動歯ブラシにも適用可能である。例えば、回転往復運動や直線往復運動やブラシ毛回転運動やそれらを切り替えて組み合わせた電動歯ブラシにおいても適用可能である。また、充電式でなく、乾電池式の電動歯ブラシや電源コードを接続して使用するタイプにも本発明を適用可能である。
【0060】
また上述した実施形態では、姿勢検出に加速度センサまたは接触感知センサを利用しているが、他のセンサを用いてもよい。たとえば、加速度センサにジャイロスコープや方位センサを組み合わせることで、姿勢検出の精度を向上してもよい。また、ブラシ部材2の
先端部分に設けた小型カメラで口腔内を撮影し、その画像情報をブラシの姿勢検出に活用してもよい。さらに、ブラシ部材2の先端部分に温度センサや光センサを設け、それらの検出結果をブラシの姿勢検出に活用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は第1実施形態の電動歯ブラシのブロック図である。
【図2】図2は第1実施形態の電動歯ブラシの内部構成を示す断面図である。
【図3】図3は電動歯ブラシの外観を示す斜視図である。
【図4】図4はメインフローを示すフローチャートである。
【図5】図5は姿勢検出処理を示すフローチャートである。
【図6】図6はブラシの姿勢と加速度センサ出力の関係を示す図である。
【図7】図7は第2実施形態の電動歯ブラシの内部構成を示す断面図である。
【図8】図8は第3実施形態の電動歯ブラシの内部構成を示す断面図である。
【図9】図9は第4実施形態の電動歯ブラシの内部構成を示す断面図である。
【図10】図10は第5実施形態の電動歯ブラシの内部構成を示す断面図である。
【図11】図11A及び図11Bは第6実施形態の電動歯ブラシにおける、噛み合わせ面を磨く場合の持ち方を示す図である。
【図12】図12A及び図12Bは第6実施形態の電動歯ブラシにおける、噛み合わせ面を磨く場合の持ち方を示す図である。
【図13】図13は第6実施形態における姿勢検出処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1 電動歯ブラシ本体
2 ブラシ部材
3 ステム
10 モータ
11 回転軸
12 駆動回路
13 充電池
14 コイル
15 加速度センサ
30 偏心軸
31 リード線
32 接点端子
33 バネ状端子
34 チューブ
35 ゴム部材
36 パイプ
50 超音波振動素子
51 発光素子
52 発熱素子
54 電極
55 ノズル
56 タンク
57 ポンプ
58 制御素子
60、61、62、63 接触感知センサ
100 充電器
120 CPU
121 メモリ
122 タイマ
203 軸受
210 ブラシ
300 重り
S スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシを有するブラシ部材と、
前記ブラシ部材に設けられ、歯、歯と歯茎の間、若しくは歯肉に対して、光、不可視光、熱、電気刺激、超音波振動、液体、気体、又は、粉体を出力する機能を有する出力手段と、
前記ブラシの姿勢を検出する姿勢検出手段と、
検出された前記ブラシの姿勢に応じて前記出力手段の出力を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする電動歯ブラシ。
【請求項2】
前記姿勢検出手段は、前記ブラシの姿勢が噛み合わせ面を磨く姿勢であるか否かを少なくとも検出するものであり、
前記制御手段は、噛み合わせ面を磨く姿勢である場合の前記出力手段の出力が、噛み合わせ面を磨く姿勢でない場合の出力よりも、相対的に小さくなるように、前記出力手段の出力を制御することを特徴とする請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ブラシの姿勢が噛み合わせ面を磨く姿勢である場合に、前記出力手段の出力を低下又は停止させることを特徴とする請求項2に記載の電動歯ブラシ。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ブラシの姿勢が噛み合わせ面を磨く姿勢でない場合に、前記出力手段の出力を増大させることを特徴とする請求項2又は3に記載の電動歯ブラシ。
【請求項5】
前記姿勢検出手段は、加速度センサの出力に基づいて前記ブラシの姿勢を検出するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電動歯ブラシ。
【請求項6】
前記姿勢検出手段は、電動歯ブラシの把持部に設けられた複数の接触感知センサの出力に基づいて前記ブラシの姿勢を検出するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電動歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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