説明

電動歯磨器

【課題】充電式で密閉式の電動歯磨器について、コストの高騰や防水性の低下を伴うことなく発生した水素ガスを確実に排出できるようにする。
【解決手段】上部ボディ12と下部ボディ11の開口端側を互いに嵌合することで内側を密閉状態にして電気部品を内装した本体部10と、歯磨き動作を行う作動部20Aを備えて、上部ボディ12又は下部ボディ11にガス抜き孔125が穿設されてこれが内圧調整シート130で塞がれており、内圧調整シート130で水の侵入を防止しながら内部圧力が上昇した場合に内側のガスを外部に放出する電動歯磨器1Aにおいて、上部ボディ12又は下部ボディ11のうち一方に内圧調整シート130で塞がれたガス抜き孔125が設けられ、他方の開口端から舌片110が外周面と面一に延設されて、上部ボディ12と下部ボディ11を嵌合することによりガスの流通を確保しながら内圧調整シート130の外面を覆って保護するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動歯磨器に関し、殊に、電動歯ブラシやステインクリーナなど、充電池を内装して防水機能を備えた手持ち式の電動歯磨器に関する。
【背景技術】
【0002】
電動歯磨器のように洗面所で使用される電気機器には、電気系統を備えた内側部分に水が侵入しないように密閉構造による防水機能を付与したものが多い。また、斯かる電気機器は、手に持った状態で使用されるものが殆どであるため、その使い勝手をよくする観点から、充電池で電動モータを駆動させる方式が一般的である。
【0003】
このように充電池を備えた電気機器の場合、充電作業を初めとする種々の要因により内部で水素ガスが発生することがある。そして、その電気機器が防水機能を有しているものでは、内部で発生した水素ガスが充満したまま外部に放出されないため、電気系統におけるスパークの発生等により爆発事故を起こす心配がある。
【0004】
この問題に対し、密閉式で充電式の電気機器における充電池パックの収納部にガス抜き孔を有したキャップを設け、このキャップ内に内側の圧力上昇で開弁するガス抜き弁を設けて、水素ガスの発生で内部圧力が増すことにより開弁してガス抜きを行うものが、特開平4−269448号公報に提案されている。
【0005】
しかし、ガス抜き弁が何らかの理由で固着した場合には、ガス抜きが不充分となって水素ガスの充満を防止できない事態となり、また、構造上の制約でガス抜き用のキャップを設けることができない機種も多々ある。そこで、例えば特開平5−168776号公報に記載されているように、密閉式で充電式の電気機器において、上部外周面に穿設したガス抜き孔に非通水性の内圧調整シート(フィルター)を配設することで、防水性を損なうことなく内部で発生した水素ガスを外部に確実に放出可能としたものが近年普及している。
【0006】
しかしながら、この電気機器の場合、ガス抜き孔及び内圧調整シートが外部に露出しているものにあっては、強度に乏しい内圧調整シートに外側から衝撃が加わることでこれを破損しやすくなり、また、ガス抜き孔や内圧調整シート表面側に水が侵入して水垢等が溜まった場合には、充分なガス抜きが行われなくなる心配がある。そのため、前述した特許文献1に記載のものでは、ガス抜き孔を電気かみそり付設のトリマー取付け壁面に設けて、板状のトリマーでこれを覆って保護する構成としながら内圧調整シート表面側に水が侵入しにくい構成とし、もし侵入した場合でもトリマーを開いて比較的容易に掃除できるようにしている。
【0007】
ところが、密閉式で充電式の電池機器のうち、電動歯ブラシやステインクリーナ等の電動歯磨器には、トリマーのように開閉自在の保護部材となりうるものは付設されていない。そこで、本体部外周面に露出した内圧調整シートをカバーするように覆い部材を別途設けることが考えられるが、この覆い部材を開閉式にして侵入した水や溜まった水垢を除去可能とする必要があるため、構成を複雑化して高コスト化を招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−269448号公報
【特許文献2】特開平5−168776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、充電式で密閉式の電動歯磨器について、コストの高騰や防水性の低下を伴うことなく発生した水素ガスを確実に排出できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、上部ボディと下部ボディの2つの部材の開口端側を互いに嵌合することにより内側を密閉状態にして電動モータ及び充電池を含む電気部品を内装してなる本体部と、電動モータの駆動により歯磨き動作を行う作動部を備えて、上部ボディ又は下部ボディにガス抜き孔が穿設されてそのガス抜き孔が内圧調整シートで塞がれており、この内圧調整シートで水の侵入を防止しながら内部圧力が外部圧力よりも所定レベル以上に上昇した場合に、ガス抜き孔及び内圧調整シートを介して内側のガスを外部に放出する電動歯磨器において、その上部ボディ又は下部ボディのうち一方に、内圧調整シートで塞がれたガス抜き孔が開口端寄りに設けられ、他方には開口端から外周面と面一に舌片が延設されており、両ボディを嵌合することにより、ガス抜き孔によるガスの流通を確保しながら舌片で内圧調整シートの外面を覆って保護するものとした。
【0011】
このように、上部ボディと下部ボディの嵌合部分において一方のボディに内圧調整シートで塞がれたガス抜き孔を設けて、他方のボディには嵌合時に内圧調整シートの外面側を覆う舌片を設けただけの簡易な構成により、コストの高騰を伴うことなく破損しやすい内圧調整シートを保護可能とするとともにその表面に水が付着しにくいものとし、且つ、水が内圧調整シートに付着したり水垢が付いたりした場合でも、上部ボディと下部ボディの嵌合を外すことで、容易にこれを除去可能なものとなる。
【0012】
また、この場合、その内圧調整シートは、ボディの外周面から所定形状・所定深さで陥凹させてなる凹部の底面に配置され、その凹部の輪郭が舌片の輪郭と略一致したものとされて、両ボディの嵌合により舌片が内圧調整シートの外面を覆った状態で舌片の外面がボディの外周面と略面一状態となり、両輪郭により形成された隙間でガスの流通が行われるものとすれば、ガス抜き孔付設部分の外面が本体外周面と面一になってデザイン的に優れるとともに、内圧調整シート側への水の侵入をより防止しやすいものとなる。
【0013】
さらに、上述した電動歯磨器において、その舌片及び凹部は輪郭が逆U字状とされて、舌片の基端側両直線部に沿って内側面から2本の突条が突設され、この突条に一致する位置・形状で凹部に2本の溝が設けられており、嵌合動作により突条が溝の中を滑りながら嵌合位置で互いに密着状態となる、ことを特徴としたものとすれば、舌片と凹部の輪郭により外周面に形成された弧状の隙間部分のみでガスの流通を行うものとなって、一層水が侵入しにくいものとなる。
【発明の効果】
【0014】
上部ボディと下部ボディの嵌合部分において、一方のボディに内圧調整シートで覆われたガス抜き孔を設け、他方のボディに舌片を設けて両ボディの嵌合時に舌片で内圧調整シート外面を覆うものとした本発明によると、コストの高騰や防水性の低下を伴うことなく、発生した水素ガスを確実に排出できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は本発明における実施の形態の電動歯ブラシの左側面図であり、(B)は(A)の背面図である。
【図2】(A)は図1(B)のガス抜き孔配設部の部分拡大図であって両ボディの嵌合を外した状態を示しており、(B)は(A)の部分縦断面図である。
【図3】図1の電動歯ブラシのガス抜き機能を説明するための拡大した部分縦断面図である。
【図4】図1(A)の応用例としてのステインクリーナの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0017】
図1(A)は本実施の形態の電動歯磨器としての電動歯ブラシ1Aの側面図を示しており、(B)はその背面図を示している。電動歯ブラシ1Aは、上部ボディ12と下部ボディ11の2つの部材の開口端を互いに嵌合することにより、内側を密閉状態にして図示しない電動モータ及び充電池を含む電機部品を内装して手に持ちやすい略棒状に形成された本体部10と、電動モータの駆動により歯磨き動作を行う着脱自在の歯ブラシからなる作動部20Aとからなる。
【0018】
また、この電動歯ブラシ1Aは、上部ボディ12の周壁を貫通してガス抜き孔125(図2参照)が穿設され、その外側開口部が内圧調整シート130(図2参照)で塞がれており、この内圧調整シート130で水の侵入を防止しながら内部圧力が外部圧力よりも所定レベル以上に上昇した場合に、内側のガスを外部に放出するようになっており、充電等により内部で発生した水素ガスを排出することにより、爆発事故を回避可能としている。尚、以上の構成部分は従来例にも共通した周知のものである。
【0019】
そして、本発明において、図2(A),(B)に示すように、上部ボディ12の開口端に近接した位置の外周面に、ボディ周壁の厚さの半分程度の深さで逆U字状に陥凹させて凹部120が形成され、ガス抜き孔125が凹部120の略中央位置に穿設されており、この凹部120の底面にはガス抜き孔125の開口部を塞ぐように円盤状の内圧調整シート130が配設されている。
【0020】
また、下部ボディ11の開口端からは、輪郭が凹部120の輪郭に略一致して厚さが凹部120の深さよりもやや小さい舌片110が、外面をボディ外周面と面一にして延設されており、上部ボディ12下端側の嵌入部121を下部ボディ11の開口端から挿入して嵌合することにより、舌片110が凹部120に対し下方からスライドしながら挿入され、その外面が上部ボディ11の外周面と面一になりながらその両輪郭により逆U字状の隙間126を形成して、内圧調整シート130の外側を覆うようになっている点を特徴としている。
【0021】
このように、上部ボディ12のガス抜き孔125開口部を塞いだ内圧調整シート130の外面を、下部ボディ11を嵌合することによりその開口端から延設した舌片110で本体部10外面と面一になるように覆う構成としたことにより、簡易な構成でデザイン的にも優れたものとしながら、コストの高騰を招くことなく内圧調整シート130を確実に保護できるようになり、且つ、内圧調整シート130側に水が侵入することを最小限に抑えることを可能としている。
【0022】
また、本実施の形態において、輪郭が逆U字状の舌片110には基端側の両直線部に沿って内側面から2本の突条110a,110bが突設されており、この両突条110a,110bに一致する位置・形状で凹部120に2本の溝120a,120bが内圧調整シート130を跨ぎながら設けられている。
【0023】
これにより、嵌合動作によりその突条110a,110bが各々溝120a,120bの中を滑りながら嵌合位置で互いに密着するものとされ、本体部10外周面に形成された逆U字状の隙間126のうち、左右の直線部分ではガスの流通を行わず、弧状の部分のみ
でガスの流通を行うものとなっており、外部からの水が内圧調整シート130側により侵入しにくいものとしている。
【0024】
図3は、本実施の形態の電動歯磨器1Aのガス抜き機能を説明するための拡大した部分縦断面図を示している。本体部10内で発生した水素ガスは、空気よりも比重が軽いことから上部ボディ11の頂壁側から溜まってくる。そして、内圧が外部圧力よりも所定レベル以上に上昇(水素ガスの濃度がスパークにより爆発する畏れが生じる前の段階)すると、破線で示すように水素ガスを含んだガスがガス抜き孔125に入り、その開口部を塞いだ内圧調整シート130を通過して、舌片110内側面で覆われた凹部120内を通り、弧状に形成された隙間126から外部に排出されて、本体部10の水素ガス濃度を安全なレベルまで低下させる。
【0025】
また、このようなガス抜き機能に加え、上述したように簡易な構成にてコストの高騰を伴うことなく破損しやすい内圧調整シート130を覆って外部の衝撃から保護可能としている。さらに、凹部120に舌片110が下から挿入されてU字状の隙間126のみでガスの流通を行うようにしたことで、内圧調整シート130の表面に水が付着しにくくしている。
【0026】
しかも、水が内圧調整シート130に付着したり水垢が付いたりした場合でも、上部ボディ12と下部ボディ11の嵌合を外すことで容易にこれを除去可能な状態となり、ガス排出機能の確実な発揮を容易に維持することを可能としている。尚、内圧調整シートとしては、防水型又は簡易防水型のふっ素樹脂多孔質フィルムの市販品を使用することができ、例えば日東電工社製のS−NTF2131A−PS06Tが好適である。
【0027】
図4は、図1(A)の電動歯ブラシ1Aの応用例を示すものであり、電動歯磨器としてのステインクリーナ1Bを示している。このステインクリーナ1Bも本体部10は電動歯ブラシ1Aと共通しており、歯ブラシからなる作動部20Aをゴムカップを備えたステイン除去用の作動部20Bに交換してなるものである。この応用例においても、前述と同様にガス抜き機能、内圧調整シート130の保護機能及び防水機能を発揮することができる。
【0028】
以上、述べたように、充電式で密閉式の電動歯磨器について、本発明により、コストの高騰や防水性の低下を伴うことなく、発生した水素ガスを確実に排出できるものとなった。
【符号の説明】
【0029】
1A 電動歯ブラシ、1B ステインクリーナ、10 本体部、11 下部ボディ、12 上部ボディ、20A,20B 作動部、110 舌片、110a,110b 突条、120 凹部、120a,120b 溝、125 ガス抜き孔、126 隙間、130 内圧調整シート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部ボディと下部ボディの2つの部材の開口端側を互いに嵌合することにより内側を密閉状態にして電動モータ及び充電池を含む電気部品を内装してなる本体部と、前記電動モータの駆動により歯磨き動作を行う作動部を備えて、前記上部ボディ又は前記下部ボディにガス抜き孔が穿設されて該ガス抜き孔が内圧調整シートで塞がれており、前記内圧調整シートで水の侵入を防止しながら内部圧力が外部圧力よりも所定レベル以上に上昇した場合に、前記ガス抜き孔及び前記内圧調整シートを介して内側のガスを外部に放出する電動歯磨器において、前記上部ボディ又は前記下部ボディのうち一方に、前記内圧調整シートで塞がれたガス抜き孔が開口端寄りに設けられ、他方には開口端から外周面と面一に舌片が延設されており、前記両ボディを嵌合することにより、前記ガス抜き孔によるガスの流通を確保しながら前記舌片で前記内圧調整シートの外面を覆って保護することを特徴とする電動歯磨器。
【請求項2】
前記内圧調整シートは、前記ボディの外周面から所定形状・所定深さで陥凹させてなる凹部の底面に配置され、該凹部の輪郭が前記舌片の輪郭と略一致したものとされて、前記両ボディの嵌合により前記舌片が前記内圧調整シートの外面を覆った状態で前記舌片外面が前記ボディの外周面と略面一状態となり、前記両輪郭により形成された隙間でガスの流通が行われることを特徴とする請求項1に記載した電動歯磨器。
【請求項3】
前記舌片及び前記凹部は輪郭が逆U字状とされて、前記舌片の基端側両直線部に沿って内側面から2本の突条が突設され、該突条に一致する位置・形状で前記凹部に2本の溝が設けられており、前記嵌合の動作により前記突条が前記溝の中を滑りながら嵌合位置で互いに密着状態となることを特徴とする請求項1または2に記載した電動歯磨器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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