説明

電動自転車用のスイッチ装置および電動自転車

【課題】ハンドルへの取付作業を能率良く行え、かつハンドルに取り付けた際に良好な操作性を維持できる電動自転車用のスイッチ装置を提供する。
【解決手段】第1の筐体部31Aと第2の筐体部31Bとを有する筐体31と、操作用の押圧部32aを有し、筐体31から外部に出退自在に取り付けられた押ボタン32と、接点部品33と、押ボタン32の押圧動作を弾性変形しながら接点部品33に伝達する弾性伝達部材34と、ハンドル5に取り付けられ、側面視略C字形状の取付バンド部35とを備え、第2の筐体部31Bと取付バンド部35とが一体形成され、第2の筐体部31Bおよび取付バンド部35が、第1の筐体部31Aよりも柔らかな材料で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータにより発生する補助駆動力を人力駆動力に加えて走行することが可能である電動自転車に備えられたハンドルに取り付けられる電動自転車用のスイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動モータにより発生する補助駆動力を人力駆動力に加えて走行することが可能である電動自転車は既に知られている。この電動自転車は、電動モータにより発生する補助駆動力を利用しながら走行するので、補助駆動力の出力などの各種の電動機能を設定したり切換えたりするスイッチ装置が備えられている。各種の電動機能を走行中でも切り換え可能に構成されているスイッチ装置は、走行中でも手で操作し易いようにハンドルに取り付けられることが多い。また、電動自転車は屋外で使用されるので、電気回路が設けられたスイッチ装置には、ある程度の防水性も必要となる。
【0003】
この種のスイッチ装置は、タクトスイッチとも称される接点部品を操作用の押ボタンの押圧力で切り換えるよう構成されている場合が多い。このスイッチ装置は、例えば特許文献1〜3等に開示されている。前記接点部品は筐体(ケース)の内部に配設され、また、操作用の押ボタンが筐体より外側に露出する状態で出退自在に取り付けられている。筐体の内部には、押ボタンの押圧動作を弾性変形しながら前記接点部品に伝達する弾性伝達部材がさらに配設されている。なお、弾性伝達部材は、特許文献1では作動杆と称され、特許文献2では弾性部材と称され、特許文献3では弾性保護部材と称されている。また、特許文献1においては防水用のシール部材を弾性伝達部材が貫通する状態で防水用のシール部材が配設された構造が開示されている。また、特許文献3においては弾性伝達部材により防水機能を付与している。このような構造のスイッチ装置によれば、ある程度の耐久性や防水性を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−42603号公報
【特許文献2】特開2007−95601号公報
【特許文献3】特開2004−273208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1〜3などに開示されているスイッチ装置は、スピーカーマイクなどの電気機器の一部に組み込まれる構造であり、電動自転車のハンドルなどの剛体に取り付けて使用することは想定されていない。このようなスイッチ装置を電動自転車のハンドルに取り付けるためには、側面視して略C字の形状(周方向に対して1箇所切欠部を有する)の取付バンド部を設けて、この取付バンド部に前記スイッチ装置を固定することが考えられる。この場合に、スイッチ装置の筐体部分と前記取付バンド部とを一体形成すれば、部品点数を少なめに抑えることができて製造コストも低減できる。
【0006】
また、スイッチ装置の筐体は、押ボタンを良好に支持しなければならないため、ある程度、固めの材料を用いることが好ましい。しかし、これに応じて、取付バンド部も硬めの材料で一体形成すると、取付バンド部を大きく曲げることが困難となるため、取付バンド部を少しだけ曲げた状態でハンドルの端部から通して装着せざるを得ず、スイッチ装置の取付作業に多くの手間や時間がかかる恐れがある。つまり、電動自転車のハンドルの両端部には、それぞれブレーキレバーなどが取り付けられるため、スイッチ装置をハンドルに取り付けようとする際に、予めブレーキレバーやハンドルの把持部を取り外す作業が必要になることがあり、この結果、多くの手間や時間がかかってしまう。また、ハンドルの端部に、変速機操作用の太径部などがある場合には、ハンドルの端部を通してスイッチ装置を取り付けること自体が行えなくなるおそれもある。
【0007】
また、ブレーキレバーも取付バンド部を有しており、この取付バンド部を介してハンドルに組付けられるが、ブレーキレバーとスイッチ装置とを接近させて配設しようとすると、ブレーキレバーの取付バンド部とスイッチ装置とが干渉し易くなる。したがって、このような不具合を生じないように、ブレーキレバーの取り付け箇所から離れた位置にスイッチ装置を配設することが考えられる。しかし、この場合には、スイッチ装置をハンドルの中央寄り位置に配設することとなって、走行時等にスイッチ装置を手で操作し難くなり、操作性が低下するおそれがある。
【0008】
また、スイッチ装置において、抵抗などが設けられている基板に前記接点部品が搭載される場合に、前記基板に対して防水機能が不十分となるおそれもあった。
本発明は上記課題を解決するもので、ハンドルへの取付作業を能率良く行え、かつハンドルに取り付けた際に良好な操作性を維持でき、しかも、基板に対しても良好な防水機能を得られる電動自転車用のスイッチ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、電動モータにより発生する補助駆動力を人力駆動力に加えて走行することが可能である電動自転車に備えられたハンドルに取り付けられる電動自転車用のスイッチ装置であって、第1の筐体部と第2の筐体部とを有する筐体と、操作用の押圧部を有し、前記筐体から外部に露出する状態で出退自在に取り付けられた押ボタンと、前記筐体の内部に配設された接点部品と、前記筐体の内部に配設されて、前記押ボタンの押圧動作を弾性変形しながら前記接点部品に伝達する弾性伝達部材と、前記ハンドルに取り付けられ、側面視略C字形状の取付バンド部とを備え、前記第2の筐体部と前記取付バンド部とが一体形成され、前記第2の筐体部および前記取付バンド部が、前記第1の筐体部よりも柔らかな材料で形成されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、押ボタンを出退自在に支持する第1の筐体部が、第2の筐体部よりも硬い材料で形成されることとなるので、第1の筐体部として比較的大きな剛性を有せしめることが可能となり、このように比較的大きな剛性を有する第1の筐体部により押ボタンを良好に支持することができる。また、第2の筐体部および取付バンド部が、第1の筐体部よりも柔らかな材料で形成されているので、スイッチ装置のハンドルへの取付作業を行う際に、取付バンド部を曲げ易くなり、ブレーキレバーをハンドルに取り付けたままの状態で、取付バンド部を大きく曲げながらハンドルに直接嵌め込んで取り付けることが可能となる。
【0011】
また、本発明は、前記第2の筐体部に、ブレーキレバーをハンドルに取り付けるブレーキレバー取付バンド部が、前記第2の筐体部とハンドルとの間で嵌まり込むことを可能とする凹部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、スイッチ装置とブレーキレバーとを隣接した位置に配設しようとした場合でも、ブレーキレバー取付バンド部が凹部に嵌まり込むことで、スイッチ装置とブレーキレバー取付バンド部とが干渉せず、支障をきたさない。これによりスイッチ装置を、ハンドルにおけるブレーキレバーと隣接した位置、すなわち、ハンドルにおける把持部に近い位置に配設できて、スイッチ装置の押ボタンを操作し難くなるなどの不具合を生じなくなる。
【0013】
また、本発明は、前記押ボタンが前記第1の筐体部において出退自在に支持された状態で取り付けられていることを特徴とする。この構成によれば、押ボタンが損傷したり、押ボタンと第1の筐体部との間に異物が入り込むなどして押ボタンが良好には出退できない状態となったりした場合でも、押ボタンと第1の筐体部とを交換するだけで対処できて、補修時の費用を最小限で抑えることができる。
【0014】
また、本発明は、接点部品を搭載する基板が、樹脂などの封止材で埋められた状態で前記第2の筐体部内に配設されていることを特徴とする。この構成によれば、基板が、樹脂で埋められているので、万一、筐体内に雨水等が浸入した場合でも、基板が水に浸からず、支障をきたさない。
【0015】
また、本発明は、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部とが互いに筐体結合ねじで結合されているとともに、前記第1の筐体部に、前記第2の筐体部に係合可能な結合用爪部が一体形成され、この結合用爪部によっても前記第1の筐体部と前記第2の筐体部とが結合されていることを特徴とする。この構成により、第1の筐体部と第2の筐体部とを固定するねじが万一緩んだり外れたりした場合でも、第1の筐体部に形成した結合用爪部が第2の筐体部に係合しているので、第1の筐体部と第2の筐体部とが分離することが防止される。
【0016】
また、本発明は、前記筐体において、前記第1の筐体部が上側に配設され、前記第2の筐体部が下側に配設され、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との接合部が、前記第1の筐体部の下端外周縁により覆われ、前記第2の筐体部における側面の一部に、前記第1の筐体部に形成した爪部が挿通される挿通孔が上下に貫通した状態で形成されていることを特徴とする。
【0017】
この構成により、雨水などが第1の筐体部から第2の筐体部側に流れ落ちても、第1の筐体部の下端外周縁により第1の筐体部と記第2の筐体部との接合部が覆われているので、前記雨水などが第1の筐体部と記第2の筐体部との接合部を通して内部に侵入することが防止される。また、第2の筐体部における側面の一部に、第1の筐体部に形成した爪部が挿通される挿通孔が上下に貫通した状態で形成されているので、雨水等が爪部をつたわって挿通孔に侵入した場合でも、前記雨水等は挿通孔の下端部の開口部から外部に排出される。
【0018】
また、本発明の電動自転車は、前記スイッチ装置を備えていることを特徴とする。また、この場合に、スイッチ装置の押ボタンを押圧して接点部品をON状態とすることで、ペダルを踏み込まなくても自走するように構成されている電動自転車に装備することが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第2の筐体部と取付バンド部とを一体形成し、第2の筐体部および取付バンド部を、第1の筐体部よりも柔らかな材料で形成したことにより、比較的大きな剛性を有する第1の筐体部により押ボタンを良好に支持することができながら、当該スイッチ装置をハンドルに取り付ける際に、柔らかな材料で形成されている取付バンド部を曲げながらハンドルに直接嵌め込んで取り付けることができる。この結果、当該スイッチ装置の取付作業を能率よく行うことができる。
【0020】
また、第2の筐体部に、ブレーキレバーをハンドルに取り付けるブレーキレバー取付バンド部が、前記第2の筐体部とハンドルとの間で嵌まり込むことを可能とする凹部を形成したことにより、スイッチ装置を、ハンドルにおけるブレーキレバーと隣接した位置、すなわち、ハンドルにおける把持部に近い位置に配設できるので、スイッチ装置の押ボタンの操作性が向上する。
【0021】
また、操作用の押圧部を有する押ボタンを、第1の筐体部において出退自在に支持された状態で取り付けたことにより、押ボタンが損傷したり、押ボタンと第1の筐体部との間に異物が入り込むなどして押ボタンが良好には出退できない状態となったりした場合でも、押ボタンと第1の筐体部とを交換するだけで対処できて、補修時の費用を最小限で抑えることができる。
【0022】
また、接点部品を搭載する基板を、樹脂などの封止材で埋められた状態で前記第2の筐体部内に配設したことにより、万一、筐体内に雨水等が浸入した場合でも、基板が水に浸からず、支障をきたさず、当該スイッチ装置の信頼性が向上する。
【0023】
また、第1の筐体部と第2の筐体部とが互いに筐体結合ねじで結合されているとともに、前記第1の筐体部に、前記第2の筐体部に係合可能な結合用爪部が一体形成され、この結合用爪部によっても前記第1の筐体部と前記第2の筐体部とが結合されていることにより、第1の筐体部と前記第2の筐体部とを固定するねじが万一緩んだり外れたりした場合でも、第1の筐体部に形成した結合用爪部が第2の筐体部に係合しているので、第1の筐体部と前記第2の筐体部とが分離することが防止されて良好な信頼性が保たれ、これによっても、当該スイッチ装置の信頼性が向上する。
【0024】
また、前記筐体において、第1の筐体部を上側に、第2の筐体部を下側に配設し、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との接合部を、前記第1の筐体部の下端外周縁により覆い、前記第2の筐体部における側面の一部に、前記第1の筐体部に形成した爪部が挿通される挿通孔を上下に貫通した状態で形成したことにより、防水性が良好に保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係るスイッチ装置が設けられた電動自転車の全体側面図
【図2】同電動自転車のハンドルなどを示す図
【図3】同電動自転車のスイッチ装置を示す斜視図
【図4】同スイッチ装置の縦断面図
【図5】同スイッチ装置の分解斜視図
【図6】同スイッチ装置の側面図
【図7】同スイッチ装置の底面図
【図8】本発明の他の実施の形態に係る電動自転車用のスイッチ装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係る電動自転車用のスイッチ装置を備えた電動自転車について図面に基づき説明する。
図1、図2に示すように、1は電動自転車であり、この電動自転車1は、フレーム2と、前車輪3および後車輪4と、ハンドル(ハンドルバーとも称せられる)5およびハンドルステム22と、サドル23と、ペダル6と、前ブレーキ本体7および後ブレーキ本体8と、電動モータ(図示せず)を有して補助駆動力(アシスト力)を発生させるモータ駆動ユニット9と、モータ駆動ユニット9の電動モータに駆動用の電力を供給する二次電池からなるバッテリ10と、ライト(前照灯)11と、操作部12と、制御装置13などを備えている。また、この電動自転車1は、これらの構成要素に加えて、本発明の実施の形態に係る電動自転車用のスイッチ装置14を有している。
【0027】
図1などに示すように、フレーム2は、ヘッドパイプ15、フロントフォーク16、上パイプ17、下パイプ18、立パイプ19、チェーンステー20、バックフォーク21などからなる。前車輪3は、フロントフォーク16の下端部に回転自在に組み付けられている。後車輪4は、チェーンステー20の後端に回転自在に取り付けられている。ハンドル5およびハンドルステム22は、ヘッドパイプ15に上方から挿入されてフロントフォーク16と一体的に回転するように組み付けられている。サドル23は、立パイプ19に挿入されたシートポスト24の上端部に取り付けられている。ペダル6はクランク25の両端部に回転自在に取り付けられ、人力駆動力としての踏力が加えられる。そして、図示しないが、クランク軸と一体的に回転するクランクギヤや、チェーン26、後輪のハブに連結された後部ギヤなどを介して、ペダル6に加えられた踏力に基づく人力駆動力により後車輪4が回転駆動される。なお、この電動自転車1では、図1に示すように、モータ駆動ユニット9が前ハブ内に配設されている場合を示しているが、これに限るものではなく、バッテリ10の下方箇所や、後ハブ内に配設されていてもよい。
【0028】
電動自転車1は、モータ駆動ユニット9の電動モータにより発生する補助駆動力を、人力駆動力に加えて走行することが可能であるが、特にこの電動自転車1では、ペダル6を踏み込まなくても、すなわち人力駆動力を加えなくても、補助駆動力を出力して自走できるように構成されている。なお、自走しない場合は、ペダル6に加えられた踏力をクランク軸近傍に配設されたトルクセンサなどにより検知して、踏力(人力駆動力)に応じた補助駆動力を出力可能とされている。そして、後述するスイッチ装置14の押ボタン32を押圧して接点部品33をON状態とすることで、ペダル6を踏み込まなくても当該電動自転車1を自走させることができるよう構成されている。
【0029】
図2などに示すように、ハンドル5の両端部には運転者によって握られる把持部29が設けられているが、ハンドル5における把持部29の近傍箇所には、前ブレーキ本体7を作動させるブレーキレバー27や、後ブレーキ本体8を作動させるブレーキレバー28が取り付けられているとともに操作部12やスイッチ装置14、変速段切換操作部51なども取り付けられている。ブレーキレバー27、28は、ブレーキレバー本体27a、28aが、ハンドル5に外嵌されたブレーキレバー取付バンド部27b、28bと、このブレーキレバー取付バンド部27b、28bに取り付けられたレバー台27c、28cとを介して、揺動自在に取り付けられている。そして、ブレーキレバー本体27a、28aが手で引かれるなどして操作された際に、この動作がワイヤケーブル30を介して前ブレーキ本体7や後ブレーキ本体8に伝達されて、これらの前ブレーキ本体7や後ブレーキ本体8が作動される。なお、速段切換操作部51は、後ハブに内装された変速機の変速段を手動操作により切り換えるものであり、ハンドル5よりも太径とされている。
【0030】
前記スイッチ装置14は、前ブレーキ本体7を作動させるブレーキレバー27のブレーキレバー取付バンド部27bと極めて近接して配設されている。図4、図5などに示すように、スイッチ装置14は、筐体(ケース)31と、押ボタン32と、接点部品33と、弾性伝達部材34と、取付バンド部35と、基板36と、付勢手段としての付勢ばね38などから構成されている。筐体31は第1の筐体部31Aと第2の筐体部31Bとからなり、この実施の形態では、第1の筐体部31Aが筐体31の上半部をなし、第2の筐体部31Bが筐体31の下半部をなすように配設されている。押ボタン32は、操作用の押圧部32aを有し、この押圧部32aが第1の筐体部31Aから外部に露出する状態で出退自在に取り付けられている。接点部品33はタクトスイッチとも称され、筐体31の内部に配設され、接点部品33自体は防水機能を有しており、突部33aを押圧された際にON状態となる。弾性伝達部材34は、合成ゴムなどの弾性を有する材料で形成され、筐体31の内部に配設されて、押ボタン32の押圧動作を弾性変形しながら接点部品33に伝達する。取付バンド部35は、ハンドル5に取り付けられ、側面視して略C字形状(環状部の一部を切欠いた形状)とされ、固定用のねじ37Aやナット37Bが装着されている。基板36上には抵抗や前記接点部品33が搭載されており、筐体31の内部、詳しくは第2の筐体部31Bの底面部上に載置されている。また、基板36には、スイッチ装置14の出力信号を制御装置13(図2参照)に伝達するコード39が接続されている。
【0031】
ここで、押ボタン32は第1の筐体部31Aにおいて出退自在に支持された状態で取り付けられている。詳細に説明すると、図4、図5に示すように、押ボタン32には、押圧部32aの外周部より太径状態で下方に筒状に延びる太径筒状部32bと、押圧部32aの中央部より細径状態で下方に筒状に延びる細径筒状部32cと、太径筒状部32bの下縁から周方向3箇所において下方に延びる爪部32dと、太径筒状部32bの一部に設けられたグリス充填用の溝部32eなどが一体形成されている。また、第1の筐体部31Aには、筐体31の外殻部分をなす筐体本体部31Acと、押ボタン32の太径筒状部32bを案内する太径案内壁部31Aaと、押ボタン32の細径筒状部32cを案内する細径案内壁部31Abと、太径案内壁部31Aaの端部と細径案内壁部31Abの端部とを接続する接続壁部31Adと、接続壁部31Adにおいて押ボタン32の爪部32dを通す挿通孔部31Aeなどが一体形成されている。そして、押ボタン32の押圧部32aの裏面と第1の筐体部31Aの接続壁部31Adとの間に、押ボタン32を突出方向に付勢するコイルスプリングからなる付勢ばね(付勢手段)38が配設されている。また、押ボタン32の爪部32dが、第1の筐体部31Aの太径案内壁部31Aaの端部に弾性的に係止可能とされて、押ボタン32が第1の筐体部31Aから離脱することを阻止されている。これにより、押ボタン32は、第1の筐体部31Aの太径案内壁部31Aaおよび細径案内壁部31Abにより案内されながら、押ボタン32の爪部32dが第1の筐体部31Aの太径案内壁部31Aaの端部に当接する範囲内で外部に出退自在な状態で、第1の筐体部31Aに支持されている。なお、押ボタン32の太径筒状部32bの一部に設けられたグリス充填用の溝部32eには、グリス(図示せず)などの防水用充填材が充填されて防水性がより高められているが、この溝部32eや防水用充填材は必要に応じて設けるとよく、必ずしも設けなくてもよい。
【0032】
また、押ボタン32の細径筒状部32cの下端部に弾性伝達部材34が嵌め込まれた状態で取り付けられ、押ボタン32が押し込まれると、弾性伝達部材34が弾性変形しながら接点部品33の突部33aを押圧して、接点部品33をON状態とさせる。
【0033】
また、スイッチ装置14において、第2の筐体部31Bと、スイッチ装置14をハンドル5に取り付ける取付バンド部35とは、一体形成されている。そして、これらの第2の筐体部31Bおよび取付バンド部35は、第1の筐体部31Aよりも柔らかな材料で形成されている。例えば、第1の筐体部31Aと第2の筐体部31B(および取付バンド部35)とは合成樹脂製とされ、第1の筐体部31Aは、ABS樹脂などの比較的剛性の大きな材料で形成され、第2の筐体部31Bおよび取付バンド部35は、ポリプロピレンなどの柔軟性が大きな材料で形成されている。なお、これらの材料に限定するものではない。
【0034】
また、第2の筐体部31Bの底面部上に載置されている基板36はねじなどにより固定されているが、図4に示すように、第2の筐体部31B内には樹脂などからなる封止材42が充填されて硬化されており、いわゆるポッティング処理されている。そして、基板36や、基板36と接点部品33との接続部、基板36とコード39との接続部、基板36に取り付けられた抵抗などは、前記封止材42で埋められている。
【0035】
また、図4に示すように配置された状態で第1の筐体部31Aの下端縁内周寄り部分と第2の筐体部31Bの上端縁となる箇所で互いに接合されるが、この接合部分Sの外周側が第1の筐体部31Aの下端外周縁31Afで覆われて、雨水等が接合部Sから筐体31の内部に浸入し難いよう図られている。
【0036】
また、第1の筐体部31Aと第2の筐体部31Bとは、第2の筐体部31Bを貫通して第1の筐体部31A内のねじ孔31Ahに向けて上方に挿入される筐体結合ねじ40により2箇所で結合されている。しかし、さらに、第1の筐体部31Aには、その側面部分から下方に突出する結合用爪部31Agが2箇所に一体形成されている。そして、これらの結合用爪部31Agが、第2の筐体部31Bに形成した爪挿入孔31Bcを通って爪挿入孔31Bcの外側の被係合部31Bfに弾性的に係合すること(いわゆるスナップフィット構造)によっても、第1の筐体部31Aと第2の筐体部31Bとが結合されるよう構成されている。また、第2の筐体部31Bに形成された爪挿入孔31Bcは上下に貫通しており、下方はそのまま外部空間に開口されている。
【0037】
なお、第1の筐体部31Aを第2の筐体部31Bから取り外す際に、結合用爪部31Agを内側に変形させ難くならないように、図3、図5、図6に示すように、結合用爪部31Agの根元部分に対応する第1の筐体部31Aの最外周下端部31Afが切欠かれている。これに伴い、結合用爪部31Agの根元部分から雨水等が侵入することはあるが、結合用爪部31Agが挿入される爪挿入孔31Bcは、爪挿入孔31Bcの外周壁部分により筐体31の内部とは隔離されており、かつ下方へ貫通しているので、雨水等は爪挿入孔31Bcを通して下方から排出され、これによっても防水性が良好に維持される。
【0038】
ここで、スイッチ装置14は、電動自転車1の走行中、または電動自転車1を押し歩きする際に、押ボタン32の押圧動作を行って、自走する(または電動自転車1を押し歩きする際は低速で並んで自走する)際に用いられる。したがって、スイッチ装置14は、ハンドル5の把持部29から手を離すことなく、その押ボタン32の押圧動作を行えることが望ましい。したがって、できるだけ、スイッチ装置14が、ハンドル5の両端の把持部29から近い位置に配設できるよう、第2の筐体部31Bに、ブレーキレバー27をハンドル5に取り付けるブレーキレバー取付バンド部27bが、第2の筐体部31Bとハンドル5との間で嵌まり込むことができるような凹部31Bdが形成されている。これにより、スイッチ装置14の取付バンド部35を、ブレーキレバー取付バンド部27bに近接して配設しても、スイッチ装置14の筐体31がブレーキレバー取付バンド部27bに干渉することがないよう図られている。
【0039】
上記構成によれば、押ボタン32を出退自在に支持する第1の筐体部31Aが、第2の筐体部31Bよりも硬い材料で形成されることとなるので、第1の筐体部31Aを比較的大きな剛性を有する構造とすることができて、このように比較的大きな剛性を有する第1の筐体部31Bにより押ボタン32を良好に支持することができる。
【0040】
また、第2の筐体部31Bおよび取付バンド部35が、第1の筐体部31Aよりも柔らかな材料で形成されているので、取付バンド部35を曲げ易くなる。したがって、スイッチ装置14のハンドル5への取付作業を行う際に、ブレーキレバー27や速段切換操作部51をハンドル5に取り付けたままの状態で、取付バンド部35を容易に曲げながらハンドル5に直接外側から嵌め込んで取り付けることができる。この結果、当該スイッチ装置14の取付作業を能率よく行うことができる。
【0041】
また、上記構成によれば、押ボタン32を、第1の筐体部31Aだけで、出退自在に支持する構造としたので、押ボタン32が損傷したり、押ボタン32と第1の筐体部31Aとの間に異物が入り込むなどして押ボタン32が良好には出退できない状態となったりした場合でも、押ボタン32と第1の筐体部31Aとを交換するだけで対処できる。したがって、スイッチ装置14全体を交換する場合と比較して、補修時の費用を最小限で抑えることができる。
【0042】
また、上記構成によれば、第2の筐体部31Aに、ブレーキレバー27をハンドル5に取り付けるブレーキレバー取付バンド部27bが嵌まり込み可能な凹部31Bdを形成したので、スイッチ装置14を、ハンドル5におけるブレーキレバー27と隣接した位置、すなわち、ハンドル5における把持部29に近い位置に支障なく配設できる。この結果、スイッチ装置14の押ボタン32を操作し易くなり、良好な操作性を維持できる。
【0043】
また、上記構成によれば、接点部品33を搭載する基板36が、樹脂などの封止材42で埋められた状態(ポッティング処理)で第2の筐体部31B内に配設されているので、万一、筐体31内に雨水等が浸入した場合でも、基板36が水に浸からず、支障をきたさない。これにより、スイッチ装置14としての信頼性を向上させることができる。また、上記構成によれば、第1の筐体部31Aと第2の筐体部31Bとの接合部分Sの外周側が、第1の筐体部31Aの最外周下端部31Afで覆われているので、雨水等が接合部S(図4参照)から筐体31の内部に浸入し難く、これによっても、防水性が向上されてスイッチ装置14としての信頼性が良好に維持される。さらに、上記構成によれば、第1の筐体部31Aと第2の筐体部31Bとを結合させるための結合用爪部31Agを通す爪挿入孔31Bcが下方へも貫通しているので、雨水等が爪挿入孔31Bcに侵入した場合でもこの爪挿入孔31Bcを通して外部に排出され、これによっても防水性が良好に維持される。
【0044】
また、上記構成によれば、第1の筐体部31Aと第2の筐体部31Bとが、筐体結合ねじ40で結合されているだけでなく、第1の筐体部31Aに形成された結合用爪部31Agによっても結合されているので、第1の筐体部31Aと第2の筐体部31Bとを固定する筐体結合ねじ40が万一緩んだり外れたりした場合でも、第1の筐体部31Aに形成した爪部結合用爪部31Agが第2の筐体部31Bに係合して、第1の筐体部31Aと第2の筐体部31Bとが分離することが防止され、スイッチ装置14として良好な信頼性が保たれる。
【0045】
ところで、スイッチ装置14のいわゆるタクトスイッチとも称される接点部品33は、突部33aが出退するストロークが0.3〜0.8mmであり、極めて小さい押し量(ストローク)である。このように押し量が小さいと、押ボタン32を押した際に、クリック感(押ボタン32を押して切り換わったと感じる感触)があまりないという難点がある。また、接点部品33を押し過ぎると壊れてしまうという問題もある。これに対して、本実施の形態に係るスイッチ装置14では上記のように、押ボタン32自体は、付勢ばね32を介して第1の筐体部31Aから出退自在に配設されているので、比較的大きなストロークで押ボタン32を押圧することができる。また、押ボタン32と接点部品33との間に、押ボタン32の押圧動作を弾性変形しながら接点部品33に伝達する弾性伝達部材34を配設したので、接点部品33が極めて小さなストロークしか有しない場合でも、比較的大きなストロークで押圧できるとともに良好に接点部品33をONすることができて、操作性を向上させることができ、かつ信頼性も良好に維持できる。
【0046】
なお、上記実施の形態においては、スイッチ装置14として、押ボタン32を突出方向に付勢する付勢ばね38が、押ボタン32の太径筒状部32bと細径筒状部32cとの間に配設されている場合を述べたが、押ボタン32を突出方向に付勢できればどのような配置でもよい。また、スイッチ装置14の弾性伝達部材34も、押ボタン32の押圧動作を接点部品に伝達できれば、図4、図5などに示すような形状に限らなくてもよい。例えば、図8に示すように、押ボタン32を突出方向に付勢する付勢ばね38’が、押ボタン32の細径筒状部32cの内部に配設されて、押ボタン32の押圧部32aの裏面と弾性伝達部材34とに付勢ばね38’の端部が当接するように配設していてもよい。なお、図8においては、押ボタン32の爪部32dなどが図面では省かれているが、前記図4などに示されている場合と同様の爪部が設けられている。
【0047】
また、上記実施の形態においては、押ボタン32が上向きになるようにスイッチ装置14が配設されている場合を述べたが、これに限るものではなく、押ボタン32が斜め後方に向いたり、後方に向いたりするようにスイッチ装置14が配設されている場合にも適用可能であることはもちろんである。
【0048】
また、上記実施の形態においてスイッチ装置14は、このスイッチ装置14の押ボタン32を押圧して接点部品33をON状態とすることで、ペダル6を踏み込まなくても当該電動自転車1が自走するように機能するものであり、特にこの種の機能を有する電動自転車1のスイッチ装置14として好適である。ただし、このような機能以外のスイッチ装置としても適用可能である。例えば、図2における操作部12も、同様にハンドル5に取り付けられたスイッチ装置の1種であり、この操作部12は、電動自転車の補助駆動力発生機能(いわゆるアシスト機能)のON・OFFを切り換えるスイッチ機能や、補助駆動力の強弱を調整する切換機能を有するが、このような操作部12としても、スイッチ装置14と同様な構造を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、電動モータにより発生する補助駆動力を人力駆動力に加えて走行することが可能である電動自転車用のスイッチ装置として特に適しているが、一般の自転車に取り付けられるスイッチ装置としても用いることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 電動自転車
2 フレーム
3 前車輪
4 後車輪
5 ハンドル
6 ペダル
7 前ブレーキ本体
8 後ブレーキ本体
9 モータ駆動ユニット
10 バッテリ
12 操作部
13 制御装置
14 スイッチ装置
25 クランク
27、28 ブレーキレバー
27a、28a ブレーキレバー本体
27b、28b ブレーキレバー取付バンド部
27c、28c レバー台
29 把持部
31 筐体
31A 第1の筐体部
31Ac 筐体本体部
31Aa 太径案内壁部
31Ab 細径案内壁部
31Ad 接続壁部
31Ae 挿通孔部
31Af 下端外周縁
31Ag 結合用爪部
31B 第2の筐体部
31Bc 爪挿入孔
31Bd 凹部
32 押ボタン
32a 押圧部
32b 太径筒状部
32c 細径筒状部
32d 爪部
32e 溝部
33 接点部品
34 弾性伝達部材
35 取付バンド部
36 基板
38、38’ 付勢ばね(付勢手段)
39 コード
40 筐体結合ねじ
42 樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータにより発生する補助駆動力を人力駆動力に加えて走行することが可能である電動自転車に備えられたハンドルに取り付けられる電動自転車用のスイッチ装置であって、
第1の筐体部と第2の筐体部とを有する筐体と、
操作用の押圧部を有し、前記筐体から外部に露出する状態で出退自在に取り付けられた押ボタンと、
前記筐体の内部に配設された接点部品と、
前記筐体の内部に配設されて、前記押ボタンの押圧動作を弾性変形しながら前記接点部品に伝達する弾性伝達部材と、
前記ハンドルに取り付けられ、側面視略C字形状の取付バンド部とを備え、
前記第2の筐体部と前記取付バンド部とが一体形成され、
前記第2の筐体部および前記取付バンド部が、前記第1の筐体部よりも柔らかな材料で形成されている
ことを特徴とする電動自転車用のスイッチ装置。
【請求項2】
前記第2の筐体部に、ブレーキレバーをハンドルに取り付けるブレーキレバー取付バンド部が嵌まり込み可能な凹部が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の電動自転車用のスイッチ装置。
【請求項3】
前記押ボタンが前記第1の筐体部において出退自在に支持された状態で取り付けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電動自転車用のスイッチ装置。
【請求項4】
接点部品を搭載する基板が、封止材で埋められた状態で前記第2の筐体部内に配設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電動自転車用のスイッチ装置。
【請求項5】
前記第1の筐体部と前記第2の筐体部とが互いに筐体結合ねじで結合されているとともに、
前記第1の筐体部に、前記第2の筐体部に係合可能な結合用爪部が一体形成され、この結合用爪部によっても前記第1の筐体部と前記第2の筐体部とが結合されている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電動自転車用のスイッチ装置。
【請求項6】
前記筐体において、前記第1の筐体部が上側に配設され、前記第2の筐体部が下側に配設され、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部との接合部が、前記第1の筐体部の下端外周縁により覆われ、前記第2の筐体部における側面の一部に、前記第1の筐体部に形成した爪部が挿通される挿通孔が上下に貫通した状態で形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の電動自転車用のスイッチ装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載のスイッチ装置を備えていることを特徴とする電動自転車。
【請求項8】
スイッチ装置の押ボタンを押圧して接点部品をON状態とすることで、ペダルを踏み込まなくても自走するように構成されていることを特徴とする請求項7記載の電動自転車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−20587(P2012−20587A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157394(P2010−157394)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)