説明

電動車両用試験測定システム

【課題】路上走行状態を収集しこれを再現して各種測定を行うためのモータを動力源とする電動車両の試験測定システムの提供。
【解決手段】モータを動力源とする電動車両の開発試験等を行うために試験対象電動車両の走行状態を再現対象試験装置10において再現する電動車両用試験測定システム1である。再現対象試験装置10は試験対象電動車両のモータ4に対応するモータを被測定モータ15とし、モータ4の基準位置からの回転位置情報に応じて被測定モータ15を回転制御する同期制御部を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動自動車や電動二輪車(電動バイク、電動自転車)などの電動車両の開発試験等を行うための電動車両用試験測定システムに関し、特に、モータを動力源とする電動車両の路上走行状態を収集しこれを再現して各種測定を行うための電動車両用試験測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レシプロエンジンやロータリエンジンなどの内燃機関を動力源とした四輪自動車及び二輪自動車などを模擬的に走行させて開発試験等を行う車両用試験測定システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、試験対象となる二輪自動車を走行試験台の上に載せて模擬的に走行させ、走行状態における各種測定を行う試験測定システムが開示されている。この走行試験台では、二輪自動車の駆動輪である後車輪に後輪用ローラを接触させて回転させ、これに連動させて前輪用ローラで前車輪を後車輪と等しい速度で回転させて走行状態を模擬している。ここで、二輪自動車の速度は、後輪用ローラに取り付けられたロータリーエンコーダから回転速度に応じて出力される電気信号を検知し算出している。
【0004】
上記したような走行試験台において、試験対象となる車両をまず実際に路上走行させ、収集された走行状態の測定結果から、これを走行試験台で再現しながら各種測定を行う走行再現試験も多く行われている。
【0005】
例えば、特許文献2では、乗員が二輪自動車に乗車した状態での走行路面からの負荷を忠実に再現することができる試験測定システムを開示している。所定の方法で加振自在に支持した二輪自動車について、実走行時と同程度のボトミングを与えることができて、その時点での伝達関数を求め実際の走行路面からの負荷を再現する反復修正処理を行っている。これにより非線形な応答系でも実走行路面からの負荷に近い状態の加振を行い得ると述べている。すなわち、試験対象となる二輪自動車をまず路上走行させ、収集された振動情報を基にかかる走行試験台上に加振自在に支持された二輪自動車を加振制御して、走行状態を忠実に再現し走行再現試験を行い得る。
【0006】
ところで、内燃機関を動力源とした車両だけでなく、モータを動力源とする電動車両についても上記したと同様な走行再現試験が考慮される。しかしながら、動力機構が大きく異なることから、開発試験等の課題においても全く相違し、測定すべき項目にも差異があるため、多くの場合、異なった車両用試験測定システムとなる。
【0007】
例えば、特許文献3では、電気自動車を走行試験台の上に載せて模擬的に走行させて、走行効率の算出及び航続距離の定量的な評価を与える試験測定システムを開示している。旧来の試験測定システムでは、疑似走行抵抗を電気自動車に与えるに過ぎず、前記したような定量的な評価を与え得ないものであったことを述べ、電気自動車のモータに電力を供給するバッテリの供給電力値や電圧値、走行前後の電圧降下値を測定してかかる評価を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−175564号公報
【特許文献2】特開平5−87693号公報
【特許文献3】特開平10−123018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
回転子を含むモータは、形成される複数の磁場の相互作用によりその回転子を回転駆動させている。ここで磁場の連続的な相対的距離の変化や、複数の磁場間の形成の切り替えのタイミングなどで、回転子が一回転する中での出力トルクが変化する。特に、電動車両に使用される同期モータの如きは、この出力トルク変化が大きく、回転子への過負荷などによって磁場間の相対的距離が突然変化してしまうと、出力トルク変化は非常に大きなものとなる。すなわち、上記した走行再現試験においても、モータのトルク変化について考慮しないと、正確な試験を行うことはできない。
【0010】
本発明は以上のような点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、モータを動力源とする電動車両の開発試験等を行うシステムであって、路上走行状態を収集しこれを再現して各種測定を行うための電動車両用試験測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による電動車両用試験測定システムは、モータを動力源とする電動車両の開発試験等を行うために試験対象電動車両の走行状態を再現対象試験装置において再現する電動車両用試験測定システムであって、前記再現対象試験装置は前記試験対象電動車両のモータに対応するモータを被測定モータとし、前記モータの基準位置からの回転位置情報に応じて前記被測定モータを回転制御する同期制御部を有することを特徴とする。
【0012】
かかる発明によれば、試験対象電動車両の走行状態を再現対象試験装置において忠実に再現できるのである。
【0013】
上記した発明において、前記試験対象電動車両の前記モータに取り付けられた回転位置測定装置と、前記回転位置測定装置に接続され前記回転位置情報を収集するデータロガーと、前記データロガーに接続されこれに収集した収集情報を記録する記録手段と、を更に含み、前記同期制御部は前記記録手段の前記収集情報を回収するように接続可能であることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、試験対象電動車両の走行状態を記録手段に記録された収集情報に基づいて、何度でも再現対象試験装置において忠実に再現できるのである。
【0014】
上記した発明において、前記データロガーは前記モータを制御するコントローラに接続され前記モータの駆動波形情報を更に収集することを特徴としてもよい。また、上記した発明において、前記データロガーは前記モータを駆動するためのバッテリに接続され電圧及び/又は電流の変動情報を更に収集することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、試験対象電動車両の走行状態を再現対象試験装置においてより忠実に再現できるのである。
【0015】
上記した発明において、前記回転位置測定装置はロータリーエンコーダを含むことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、試験対象電動車両の走行状態を再現対象試験装置においてより簡便且つ忠実に再現できるのである。
【0016】
上記した発明において、前記モータはインホイールモータであり、前記ロータリーエンコーダとの間を機械的係合手段で機械的に係合されていることを特徴としてもよい。また、前記機械的係合手段はベルト機構からなることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、ホイール内に収容されるインホイールモータであっても、回転位置測定を外部で出来て、試験対象電動車両の走行状態を再現対象試験装置においてより簡便且つ忠実に再現できるのである。
【0017】
上記した発明において、前記被測定モータは回転子を外周側に有するアウターローター型モータであり、前記再現対象試験装置は回転軸を有するトルク検出器と、前記回転子及び前記回転軸を接続するアダプタと、を含むことを特徴としてもよい。かかる発明によれば、試験対象車両電動車両のモータがアウターローター型モータであっても再現対象試験装置によって忠実にその走行状態を再現できて、さらに、モータの駆動状態を再現した被測定モータの出力トルクを容易に測定できる。
【0018】
さらに上記した発明において、前記同期制御部は前記収集情報を独立可搬記録媒体を介して回収することを特徴としてもよい。かかる発明によれば、試験対象電動車両の走行状態を独立可搬記録媒体で搬送できるとともに、その複製も容易となるので、再現対象試験装置を同時に複数台設け、しかも異なる場所に設置できるなど自由度を与えるのである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、試験対象電動車両の走行状態を再現対象試験装置において忠実に再現可能な電動車両用試験測定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるシステムを示すブロック図である。
【図2】本発明によるシステムに組み込まれる電動車両の要部を示す断面図である。
【図3】本発明によるシステムのモータ試験装置を示すブロック図である。
【図4】モータの回転子及び固定子の位置関係を示す図である。
【図5】サンプリング周期と記録媒体毎の記録時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による1つの実施例である電動車両用試験測定システムについて、図1乃至図4を用いてその詳細を説明する。
図1に示すように、走行試験を行う電動車両に搭載されるシステム1は、電動車両の動力源であるバッテリ2、モーターコントローラ3、モータ4と、これらに接続されるロータリーエンコーダ5及びデータロガー6とを含む。なお、本実施例において、電動車両は2輪車のスクーターであるが、システム1は電動自転車、4輪車等の他の電動車両によっても同様に構成可能である。
【0022】
バッテリ2、モーターコントローラ3及びモータ4は、走行試験を行う電動車両によって異なり得る。その一例としては、バッテリ2は64Vの充電可能な密閉型鉛蓄電池である。バッテリ2には、インバータの搭載されたモーターコントローラ3が接続されて、直流電力を三相交流電力に変換できる。モーターコントローラ3は、入力されるアクセル信号やブレーキ信号に応じた三相交流電力を供給してモータ4を駆動する。モータ4は、ブラシレスの三相同期モータで、インホイールモータとして電動車両に搭載されており、電動車両を走行させる動力源となる。
【0023】
図2を併せて参照すると、モータ4は、車軸47に固定された固定子42の外周側に回転子41を有するアウターローター型モータである。回転子41には、その側面及び外周面を覆うようにしてホイール45が固定され、円筒状の延長部46を車軸47の周囲に有する。
【0024】
再び、図1を参照すると、モータ4には、ロータリーエンコーダ5がモータ4の回転子41と同期するように機械的に係合されている。詳細には、回転子41とともに回転するホイール45の延長部46とロータリーエンコーダ5の有する回転体とを回転ベルトにより係合させている。これにより、モータ4の回転子41が一回転すると、ロータリーエンコーダ5の回転体も同様に一回転し、互いに同期して回転する。なお、ロータリーエンコーダ5の回転体をホイール45に直接固定させるなどの他の取り付け方法を用いることもできる。
【0025】
ロータリーエンコーダ5は、例えば、回転体に設けられたスリットを通過する光を検知してパルスを発生させる光学センサにより、A相、B相及びZ相のパルスを回転角度に応じて出力するインクリメンタル方式を採用し得る。インクリメンタル方式によれば、所定の回転角度毎に発生される互いに1/4位相だけシフトされたA相及びB相のパルスによって回転方向と回転角度を測定できる。
例えば、A相及びB相においてパルス数は1回転あたり180であり、これによりその4倍の分解能、すなわち0.5度の分解能を得られる。また、1回転につき1回だけ発生されるZ相のパルスによりロータリーエンコーダ5の回転体の基準位置を特定することができる。つまり、ロータリーエンコーダ5によって、モータ4の回転子41の基準位置からの回転方向と回転角度、すなわちモータ4の回転位置を測定できる。また、ロータリーエンコーダ5をアブソリュート方式とし、基準位置を検出させるための初期化処理を不要としてもよい。
【0026】
データロガー6は電動車両に搭載されたバッテリ2、モーターコントローラ3、ロータリーエンコーダ5にそれぞれ接続されて、内蔵された電流計等の測定機器を介して各種データを収集可能である。データロガー6は、A/D入力チャンネル6a及びデジタル入力チャンネル6bを備えている。A/D入力チャンネル6aには、モーターコントローラ3が接続され、モータ4に出力される三相交流のU相、V相、W相それぞれの電流値を駆動波形情報として収集できる。同様に、バッテリ2が接続され、モータコンとローラ3へ供給される電流値及び電圧値を、電流及び電圧の変動情報として収集できる。その他にアクセル信号、モーターコントローラ3内のインバータの温度を示す信号や脱調信号なども収集できる。
また、デジタル入力チャンネル6bには、少なくとも、ロータリーエンコーダ5から出力されるA相、B相及びZ相のパルス信号が入力され、これをモータ4の回転位置情報として収集できる。デジタル入力チャンネル6bには、他にも、ブレーキ信号や回転子41の極の位置に対応して出力されるホールセンサー信号も入力される。
【0027】
システム1は、更に、データロガー6に接続されその情報を記憶するUSBメモリのような可搬記録媒体7と、電動車両の走行状態を再現するための再現対象試験装置10と、この試験装置10の動作を制御する試験装置制御部21を含む。
【0028】
記録媒体7はデータロガー6に接続されて、データロガー6に収集されたデータ、すなわちモータ4の回転位置情報、駆動波形情報、電流及び電圧の変動情報などの収集情報を記録した後に取り外される。そして、試験装置10の試験装置制御部21に接続されることで、この収集情報を試験装置制御部21に転送するのである。本実施例においては、記録媒体7はUSBメモリの如き独立可搬記録媒体であり、試験装置制御部21はUSBスロットを備えたパーソナルコンピュータである。なお、データロガー6で収集されたデータを試験装置制御部21へ無線で転送できるように接続してもよい。
【0029】
図3に示すように、再現対象試験装置10は、試験対象となる電動車両のモータ4に対応し、その駆動状態を再現させる被測定モータとしての試験モータ15を含む。試験モータ15はモータ4と同形式のアウターローター型の三相同期モータであり、アダプタ14に接続される。アダプタ14は試験モータ15の回転子に接続される略円筒状の回転子接続部14aと回転軸16aに接続される略円板状の回転軸接続部14bとを有している。これにより、アダプタ14は、回転子41を外周側に備えるアウターローター型の試験モータ15のトルクを回転軸16aに伝達させることができる。
アダプタ14から伸びる回転軸16aにはカップリング17aを介してトルク検出器13の回転軸16bが接続され、さらにカップリング17bを介してブレーキモータ12の回転軸16cが接続されて、互いにトルクを伝達できる。回転軸16cは一方の取付金具18により回転可能に軸支されるとともに、試験モータ15の固定子は他方の取付金具19に固定されている。
【0030】
トルク検出器13はトルクメータ27に接続され、試験モータ15の出力トルク及び回転数を測定できる。また、ブレーキモータ12はブレーキモータドライバ26に接続されて駆動用の電力を供給されるとともに、試験装置制御部21から入力されるブレーキ信号とトルクメータ27から入力される回転数を示す信号とに応じてその動作を制御される。
【0031】
試験モータ15は、ワークドライバ22に接続されて、駆動用の電力を供給されるとともにその動作が制御される。ワークドライバ22は、試験装置制御部21からのアクセル信号に応じて、電源25からの直流電力を三相交流電力に変換して試験モータ15に供給できる。
【0032】
ワークドライバ22から試験モータ15に供給される三相交流電力についての、U相、V相、W相それぞれの電流値をパワーメータ23により測定し、その測定値をデータロガー24で収集できるよう、それぞれが接続されている。データロガー24はまた、電源25からワークドライバ22に供給される直流電力の電流及び電圧、トルクメータ27から出力される試験モータ15の出力トルクと回転数も収集できるように接続される。データロガー24は、試験装置制御部21にUSBケーブルやLANケーブル等の通信用ケーブルで接続されており、収集したデータを試験装置制御部21によって回収される。試験装置制御部21は回収した各種データをフィードバック制御の入力値などとして適宜利用できる。
【0033】
ここで、図4に示すように、モータ4の回転子41と固定子42の位置関係について説明する。本例において、外周側の回転子41の内面には永久磁石43が、内周側の固定子42の外周面には電磁石44が、それぞれ回転方向に所定の角度毎に配置されている。
図3(a)に示すように、固定子42の基準位置Pに対して回転子41の基準点Aが重なった位置から回転を開始し、固定子42に対して回転子41が角度θだけ回転する場合と、図3(b)に示すように、固定子42の基準位置Pに対して回転子41の基準点Aがずれた位置から回転を開始する場合とでは、永久磁石43と電磁石44との位置関係が異なっている。つまり、回転子41と固定子42の互いの磁極の位置関係が異なるため、電磁石の磁極の切替えのタイミングが異なり、出力トルクも異なる。また、連続駆動中の回転角度θの間における駆動状態を抽出した場合においても同様である。
【0034】
電動車両の走行再現試験において、速度の変化や路面の勾配の変化などを加味した試験を行うが、これらの変化のタイミングに対して出力トルクが異なれば、モータの駆動状態が異なり、電動車両の走行状態も異なる。つまり、モータ4と同型の試験モータ15によっても、磁極の位置関係を路面の変化に対して忠実に再現できなければ、電動車両の走行状態を忠実に再現することが困難になってしまう。特に、同期モータの如きは、1回転の間における出力トルク変化が大きいため、この傾向が顕著になる。
【0035】
そこで、システム1では、回転子41の基準位置Pからの回転角度の情報、すなわち、モータ4の回転位置情報を収集し、これを試験装置制御部21に回収させる。試験装置制御部21は回転位置情報に基づいて、モータ4の回転子41の基準位置からの回転角度を再現させるように試験モータ15を駆動させて、特に、モータ4の出力のトルク変化を忠実に再現できる。つまり、試験モータ15をモータ4の駆動状態の履歴に合わせて同期制御を行って、モータ4の駆動状態、特にトルク変化において、電動車両の走行状態を忠実に再現できるのである。
【0036】
次に、上記したシステム1の使用方法及び動作について図1、図3及び図5を適宜、用いて説明する。
【0037】
図1を参照すると、まず、電動車両の試験走行を行って、データロガー6によって収集したモータ4の回転位置情報、駆動波形情報、電流や電圧の変動情報などの収集情報を記録媒体7に記録させる。次に記録媒体7をデータロガー6から取り外し、試験装置10の試験装置制御部21に接続させる。そして、試験装置制御部21に記録媒体7から収集情報を回収させて、試験装置10を稼働させる。
【0038】
このとき、図5に示すように、記録媒体7を512MBの容量を有するUSBメモリとした場合は、サンプリング周期を1msとすると約2時間の試験走行における収集情報を記録できる。サンプリング周期を1msとした場合のデータロガー6の内蔵RAMや内蔵フラッシュメモリへの記録可能な時間はそれぞれ約16分40秒及び約1時間であり、走行試験開始からその時間より以前に記録媒体7へ収集データを記録させることで、内蔵RAMや内蔵フラッシュメモリへの再度の記録を可能にする。これにより、記録媒体7であるUSBメモリの容量に応じた記録時間を得ることができる。
【0039】
図3を参照すると、試験装置制御部21は、記録媒体7から回収した収集情報、すなわちモータ4の回転位置情報、駆動波形情報、電流及び電圧の変動情報などに基づき、アクセル信号及びブレーキ信号を生成してワークドライバ22とブレーキモータドライバ26とにそれぞれ送出する。ワークドライバ22はアクセル信号に基づき、ブレーキモータドライバ26はブレーキ信号に基づき、それぞれ試験モータ15及びブレーキモータ12を稼働させ、試験モータ15にモータ4の駆動状態を再現させる。
つまり、試験装置制御部21は、モータ4の回転位置情報に合わせて、試験モータ15の回転を同期させるように制御を行う。これにより、モータ4の駆動状態とこれにより出力されるトルクを試験モータ15で忠実に再現させ、かかるトルクを容易に測定できる。つまり、電動車両の走行状態を試験装置10により忠実に再現させることができる。
【0040】
また、試験装置制御部21は、モーターコントローラ3からモータ4に供給された電力の情報である駆動波形情報や、バッテリ2からモーターコントローラ3に供給される電流や電圧の変動情報も回収できるので、これらに基づいてより忠実にモータ4の駆動状態を再現させることもできる。さらに、データロガー24により収集した試験モータ15の駆動状態に関するデータに基づいてフィードバック制御を行い、モータ4の駆動状態をさらに正確に再現させてもよい。
【0041】
なお、試験装置10はコンピュータ上で電動車両の走行状態を再現させるシミュレーターとすることもできる。この場合においては、モータ4に対応する仮想上の試験モータを計算によって表現し、上記と同様に回転位置情報によりモータ4の駆動状態を忠実に再現させた走行状態の再現試験を行うことができる。
【0042】
ここまで本発明による代表的実施例及びこれに基づく変形例について説明したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0043】
1 ・・・ システム
2 ・・・ バッテリ
3 ・・・ モータコントローラ
4 ・・・ モータ
5 ・・・ ロータリーエンコーダ
6 ・・・ データロガー
7 ・・・ 記録媒体
10・・・ 再現対象試験装置
13・・・ トルク検出器
14・・・ アダプタ
15・・・ 被測定モータ(試験モータ)
21・・・ 試験装置制御部
41・・・ 回転子
42・・・ 固定子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを動力源とする電動車両の開発試験等を行うために試験対象電動車両の走行状態を再現対象試験装置において再現する電動車両用試験測定システムであって、
前記再現対象試験装置は前記試験対象電動車両のモータに対応するモータを被測定モータとし、前記モータの基準位置からの回転位置情報に応じて前記被測定モータを回転制御する同期制御部を有することを特徴とする電動車両用試験測定システム。
【請求項2】
前記試験対象電動車両の前記モータに取り付けられた回転位置測定装置と、前記回転位置測定装置に接続され前記回転位置情報を収集するデータロガーと、前記データロガーに接続されこれに収集した収集情報を記録する記録手段と、を更に含み、前記同期制御部は前記記録手段の前記収集情報を回収するように接続可能であることを特徴とする請求項1に記載の電動車両用試験測定システム。
【請求項3】
前記モータは三相同期モータであって、前記データロガーは前記モータを制御するコントローラに接続され前記モータの駆動波形情報を更に収集することを特徴とする請求項2に記載の電動車両用試験測定システム。
【請求項4】
前記データロガーは前記モータを駆動するためのバッテリに接続され電圧及び/又は電流の変動情報を更に収集することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電動車両用試験測定システム。
【請求項5】
前記回転位置測定装置はロータリーエンコーダを含むことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一に記載の電動車両用試験測定システム。
【請求項6】
前記モータはインホイールモータであり、前記ロータリーエンコーダとの間を機械的係合手段で機械的に係合されていることを特徴とする請求項5に記載の電動車両用試験測定システム。
【請求項7】
前記機械的係合手段はベルト機構からなることを特徴とする請求項6に記載の電動車両用試験測定システム。
【請求項8】
前記被測定モータは回転子を外周側に有するアウターローター型モータであり、前記再現対象試験装置は回転軸を有するトルク検出器と、前記回転子及び前記回転軸を接続するアダプタと、を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一に記載の電動車両用試験測定システム。
【請求項9】
前記同期制御部は前記収集情報を独立可搬記録媒体を介して回収することを特徴とする請求項2乃至請求項8のいずれか一に記載の電動車両用試験測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−198181(P2012−198181A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64169(P2011−64169)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度経済産業省、戦略的基盤技術高度化支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(509023643)株式会社イーバイク (5)
【Fターム(参考)】