説明

電動車両識別装置及び電動車両識別方法

【課題】電動車両とガソリン車等とを互いに識別する装置又は方法を提供する。
【解決手段】感知エリア内に入った自動車5を感知し、感知した自動車5が発生する音の情報を、指向性マイク3を通して収集し、収集した音の情報に、電動車両固有の特徴(例えば音圧が閾値より低い。)が含まれているか否かを判定部10により判定する。そして、当該特徴が含まれている場合は電動車両であり、含まれていない場合は電動車両ではない、とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭載した電池によりモータを回転駆動して道路を走行する電動車両に関する。なお、本発明における電動車両とは、モータのみで走行する電気自動車(EV:Electric Vehicle)の他、モータとエンジンとを併用するハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)がモータのみで走行する場合も含むものとする。
【背景技術】
【0002】
HEVの普及が既に急速に進んでいるが、さらにEVが普及するようになれば、COやNOの大幅減少による都市環境の改善が期待される(例えば、非特許文献1参照。)。特に、大気汚染物質であるNOは人の健康への直接的な影響が大きいので、これが減少することは極めて好ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】電中研ニュース463、財団法人電力中央研究所、2009年12月25日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現実には、ガソリンや軽油を燃料として用いるエンジン駆動のみの自動車(以下、ガソリン車等という。)も、まだまだ併存していくと考えられる。かかる状況下で、例えば、少なくとも住宅地、病院、学校付近、及び、通学路等に限定して大気汚染物質を低下させた、いわばクリーンエリアを実現しようとするならば、このようなエリアに、ガソリン車等が侵入しない対策が必要である。例えば、電動車両か否かを判定することによって、クリーンエリアに入るゲートを開閉する、ということが考えられる。この場合には、電動車両と、ガソリン車等とを自動的に識別する装置が必要である。しかしながら、そのような技術は未だ提案されていない。
【0005】
かかる課題に鑑み、本発明は、電気自動車等の電動車両とガソリン車等とを互いに識別する装置又は方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の電動車両識別装置は、感知エリア内に入った車両を感知する車両感知器と、感知した車両が発生する音の情報を収集する音情報収集部と、収集した音の情報に、電動車両固有の音の特徴が含まれているか否かを判定する判定部とを備えたものである。
上記のように構成された電動車両識別装置では、電動車両固有の音の特徴に着目し、収集した音の情報にそのような特徴が含まれているか否かを判定することにより、電動車両とガソリン車等とを互いに識別することができる。
【0007】
(2)また、上記(1)の電動車両識別装置において、判定部は、収集した音の分布に基づいて判定を行うことができる。
例えば電動車両が人工音を発している場合であっても、電動車両の音の分布(パワースペクトル分布)は、ガソリン車等とは異なる。従って、音の分布に基づいて、電動車両をガソリン車等から識別することができる。
【0008】
なお、上記(2)の電動車両識別装置において、判定部は、収集した音の分布が、エンジン音の分布と、人工音の分布とを含んでいるときは、ハイブリッド車であると判定することも可能である。これにより、ハイブリッド車(HEV)と、電気自動車(EV)とを識別することが可能となる。
【0009】
(3)また、上記(1)又は(2)の電動車両識別装置において、判定部は、収集した音の音圧に基づいて判定を行うようにしてもよい。
この場合、人工音を発しない電動車両は、音圧のレベルがガソリン車等よりも、かなり低いので、閾値を設けることで、電動車両をガソリン車等から識別することができる。
【0010】
(4)また、上記(1)〜(3)のいずれかの電動車両識別装置において、判定部は、収集した音の周波数に基づいて判定を行うようにしてもよい。
例えば電動車両の発する人工音のみが特定周波数の音を含む場合には、収集した音に当該周波数が含まれているか否かによって、電動車両をガソリン車等から容易に識別することができる。
【0011】
(5)一方、本発明の電動車両識別方法は、感知エリア内に入った車両を感知し、感知した車両が発生する音の情報を収集し、収集した音の情報に、電動車両固有の特徴が含まれているか否かを判定し、当該特徴が含まれている場合は電動車両であり、含まれていない場合は電動車両ではないと判定する、というものである。
上記のような電動車両識別方法では、電動車両固有の音の特徴に着目し、収集した音の情報にそのような特徴が含まれているか否かを判定することにより、電動車両と、それ以外のガソリン車等とを互いに識別することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電動車両識別装置又は方法によれば、電動車両と、それ以外のガソリン車等とを互いに識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】道路を走行する自動車と、本発明の一実施形態に係る電動車両識別装置における各センサとの位置関係の一例を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る電動車両識別装置のブロック図である。
【図3】判定部の処理動作を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態に係る電動車両識別装置のブロック図である。
【図5】判定部の処理動作を示すフローチャートである。
【図6】ハイブリッド車(HEV)と、電気自動車(EV)とを識別することが必要な場合に実行されるフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《第1実施形態》
図1は、道路を走行する自動車と、本発明の一実施形態に係る電動車両識別装置における各センサとの位置関係の一例を示す図である。
図において、道路Rに設置された支柱1には、車両感知器2、指向性マイク3、及び、これらと接続される回路を収容した制御箱4が取り付けられている。車両感知器2としては、種々の既知の装置が使用可能であり、例えば、遠赤外線センサ、画像センサ、超音波センサ、ループコイル、又は、光ビーコン等を使用することができる。車両感知器2は、例えば図示のような感知エリアを有しているものとする。感知エリアに入った自動車5は、車両感知器2によって感知される。
【0015】
一方、指向性マイク3は強い指向性を持ち、例えば、図の斜線を付した空間領域で発生する音を敏感に集音することができる。当該空間領域が道路Rと交わる面は、感知エリアと概ね一致している。但し、当該面は、感知エリアよりも自動車5の走行方向へ若干ずれていてもよい。要するに、車両感知器2によって1台の自動車が感知されたとき、実質的にその自動車の発する音のみを集音できるように、指向性マイク3が配置されていればよい。また、車両感知器2と、指向性マイク3とは、互いに別々の支柱に設置してもよい。
【0016】
図2は、第1実施形態に係る電動車両識別装置のブロック図である。図において、車両感知器2の出力すなわち、車両感知情報は、判定部10に入力される。一方、指向性マイク3の出力は、音圧演算部6に入力され、演算して得られた音圧が判定部10に入力される。指向性マイク3及び音圧演算部6は、自動車5が発生する音の情報(ここでは音圧)を収集する音情報収集部9を構成している。
【0017】
図3は、判定部10の処理動作を示すフローチャートである。図において、判定部10は、新たに車両を感知したか否かの判定(ステップS1)を繰り返しながら、新たに車両を感知するのを待つ。感知すると、判定部10は、音圧レベルが閾値より低いか否かを判定する(ステップS2)。ここで、閾値より低いときは、対象が電動車両であると判定する(ステップS3)。逆に、閾値以上であれば、電動車両ではない、すなわち、ガソリン車等であると判定する(ステップS4)。判定後は、次の車両感知を待って(ステップS1)、同様の処理が行われる。
【0018】
以上のように、上記の電動車両識別装置では、電動車両固有の音の特徴である音圧の低さ、すなわち、電動車両は、音圧レベルがガソリン車等よりも、かなり低いことに着目し、閾値を設けることで、電動車両をガソリン車等から容易に識別することができる。
【0019】
《第2実施形態》
第2実施形態は、走行音の小さすぎる電動車両が歩行者等に気付かれにくいことに対する予防安全対策として人工音を発生させる場合における電動車両の識別に関するものである。
【0020】
図4は、第2実施形態に係る電動車両識別装置のブロック図である。図において、車両感知器2の出力すなわち、車両感知情報は、判定部10に入力される。一方、指向性マイク3の出力は、音圧演算部6に入力され、演算して得られた音圧が判定部10に入力される。また、指向性マイク3の出力に基づいて、パワースペクトル演算部7ではパワースペクトル分布の演算が行われる。さらに、パワースペクトル分布に対して、これを、複数の周波数帯域にサブバンド化する処理が、サブバンド化演算部8によって行われ、その出力が判定部10に入力される。
【0021】
サブバンド化は、例えば、パワースペクトル分布を周波数の一定小範囲ごとに平均化して棒グラフ状にする処理である。なお、指向性マイク3、音圧演算部6、パワースペクトル演算部7、及び、サブバンド化演算部8は、自動車5が発生する音の情報(音圧及び、パワースペクトル分布をサブバンド化したデータ)を収集する音情報収集部9Aを構成している。
【0022】
判定部10は、予め、電動車両が発する人工音スペクトル分布(人工音のパワースペクトル分布)をサブバンド化したデータを記憶している。記憶したデータに基づいて、判定部10は、音情報収集部9Aが収集した音の情報の中に、人工音スペクトル分布が含まれているかどうかを、判定することができる。
【0023】
図5は、判定部10の処理動作を示すフローチャートである。図において、判定部10は、新たに車両を感知したか否かの判定(ステップS1)を繰り返しながら、新たに車両を感知するのを待つ。感知すると、判定部10は、音圧のレベルが閾値より低いか否かを判定する(ステップS2)。ここで、閾値より低いときは、対象が電動車両であると判定する(ステップS3)。逆に、閾値以上であれば、判定部10は、人工音スペクトル分布が有るか否かを判定する(ステップS5)。ここで判定部10は、人工音スペクトル分布が有る場合は電動車両であると判定し(ステップS3)、無い場合は、電動車両ではない、すなわち、ガソリン車等であると判定する(ステップS4)。判定後は、次の車両感知を待って(ステップS1)、同様の処理が行われる。
【0024】
第2実施形態に係る電動車両識別装置では、第1実施形態と同様の音圧に基づく判定に加えて、上記のように、判定部10は、収集した音の分布に基づいて判定を行う。電動車両が人工音を発している場合であっても、電動車両の音の分布(パワースペクトル分布)は、ガソリン車等とは異なる。従って、音の分布に基づいて、電動車両をガソリン車等から識別することができる。
なお、将来的に全ての電動車両が人工音を発することを義務づけられる場合には、図4における音圧演算部6、及び、図5におけるステップS2の処理は、省略する(ステップS1のイエスからステップS5へ進む。)ことができる。
【0025】
なお、ハイブリッド車(HEV)と、電気自動車(EV)とを識別することが必要な場合は、例えば、図6のフローチャートに示す処理動作を行うようにすればよい。この場合の判定部10は、エンジンが発するエンジン音スペクトル分布(典型的あるいは平均的なエンジン音のパワースペクトル分布)をサブバンド化したデータも記憶している。従って、判定部10は、音情報収集部9Aが収集した音の情報の中に、エンジン音スペクトル分布が含まれているかどうかも、判定することができる。
【0026】
図6が図5と異なる点は、ステップS6,S7,S8を設けたことと、図5におけるステップS2を省略したことであり、その他のステップは同じである。すなわち、図6において、人工音スペクトル分布があるとき又は音圧レベルが閾値より低いとき、判定部10は、エンジン音スペクトル分布が有るか否かを判定する(ステップS6)。
【0027】
ここで、エンジン音スペクトル分布が有るときは、判定部10は、対象がHEVであると判定し(ステップS7)、無いときは、EVであると判定する(ステップS8)。このように、判定部10は、収集した音の分布が、エンジン音の分布と、人工音の分布とを共に含んでいるときは、ハイブリッド車であると判定することによって、ハイブリッド車(HEV)と、電気自動車(EV)とを識別することが可能となる。
【0028】
《その他》
なお、上記第2実施形態ではスペクトル分布(処理上はサブバンドごとのパワー)に着目しているが、単に、特定の周波数の音の有無に基づいて電動車両か否かを判定することも可能である。すなわち、例えば電動車両の発する人工音のみが特定周波数の音(超音波でもよい。)を含む場合には、収集した音に当該周波数が含まれているか否かによって、電動車両をガソリン車等から容易に識別することができる。
【0029】
なお、上記各実施形態においては自動車5を識別の対象として説明したが、二輪車においても同様に、例えば電動バイクと、他のガソリンエンジンバイクとを互いに識別可能である。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
上記のような電動車両識別装置(又は識別方法)を用いて、例えば、電動車両のみがゲートを通過できるような通行制限のある都市構造を実現すれば、所望の区域内で大気環境を改善することが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
2:車両感知器
5:自動車
9,9A:音情報収集部
10:判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感知エリア内に入った車両を感知する車両感知器と、
感知した車両が発生する音の情報を収集する音情報収集部と、
収集した音の情報に、電動車両固有の音の特徴が含まれているか否かを判定する判定部と
を備えていることを特徴とする電動車両識別装置。
【請求項2】
前記判定部は、収集した音の分布に基づいて判定を行う請求項1記載の電動車両識別装置。
【請求項3】
前記判定部は、収集した音の音圧に基づいて判定を行う請求項1又は2に記載の電動車両識別装置。
【請求項4】
前記判定部は、収集した音の周波数に基づいて判定を行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動車両識別装置。
【請求項5】
感知エリア内に入った車両を感知し、
感知した車両が発生する音の情報を収集し、
収集した音の情報に、電動車両固有の特徴が含まれているか否かを判定し、当該特徴が含まれている場合は電動車両であり、含まれていない場合は電動車両ではないと判定することを特徴とする電動車両識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−3646(P2013−3646A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131089(P2011−131089)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】