説明

電圧バランス補正回路

【課題】スイッチング素子を一括で同期制御することによって、スイッチング素子が同時にオンすることを防止し、スイッチング素子の短絡を防ぎ、無用なエネルギーのロスを低減することを目的とする。
【解決手段】直列に接続された第1、第2、第3の電池の電圧バランス補正回路であって、第1、第2の電池の電圧バランスの補正を行う際駆動する第1、第2のスイッチング手段と、第2、第3の電池の電圧バランスの補正を行う際駆動する第3、第4のスイッチング手段と、第1、第2の電池の電圧バランスの補正を行う際、第3、第4のスイッチング手段の駆動を停止し、第1、第2の電池の電圧値に従って第1、第2のスイッチング手段をオン、オフし、インダクタに蓄積する電磁エネルギーを使用して第1、第2の電池の電圧バランスの補正を行う制御手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直列に接続された複数の二次電池の電圧バランスを補正する電圧バランス補正回路に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、リチウムイオン電池やニッケル水素蓄電池等の二次電池は、所謂ハイブリットカーや電気自動車のみならず、フォークリフトや各種産業用機械のバックアップ電源としても広く使用されている。したがって、このような用途に使用される二次電池には大きな出力が要求され、多数の電池を直列に接続して使用している。この場合、特に直列に接続した各電池の出力電圧が一致することが重要であり、このため電圧バランス補正回路が組み込まれている。
【0003】
例えば、特許文献1はこのような電圧バランス補正回路を開示する。図4は特許文献1に開示された電圧バランス補正回路の一例である。電池B1とB2は直列に接続され、インダクタLの一端を電池B1の負極端子と電池B2の正極端子に接続し、電池B1の正極端子とインダクタLの他端間にスイッチング素子S1を配設し、電池B2の負極端子とインダクLの他端間にスイッチング素子S2を配設して構成されている。
【0004】
また、直列に接続された電池B1とB2には並列に分圧抵抗R1、R2が接続されている。コンパレータ21は電池B1の負極端子と電池B2の正極端子の接続部Vmと分圧抵抗R1とR2の接続部Vn間の電位差を検出し、検出された電位差に基づいて可変パルス発生回路12から制御信号Φ1、Φ2が出力される。
【0005】
この制御信号は対応するスイッチング素子S1、S2に出力され、例えば電池B1の出力電圧が電池B2の出力電圧より高い時、先ずスイッチング素子S1をオンすると共にスイッチング素子S2をオフし、インダクタLに矢印(実線)方向の電流を流し、インダクタLに発生する誘導起電力によって電磁エネルギーを蓄積し、次にスイッチング素子S1をオフすると共にスイッチング素子S2をオンし、インダクタLに蓄積された電磁エネルギーによって電池B2を充電する。一方、電池B2の出力電圧が電池B1の出力電圧より高い時には、上記とは逆に、先にスイッチング素子S2をオンすると共にスイッチング素子S1をオフし、次にスイッチング素子S1をオンすると共にスイッチング素子S2をオフすることによって、インダクタLに矢印(点線)方向の電流を流し、インダクタLに蓄積した電磁エネルギーによって電池B1を充電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−17605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の電圧バランス補正回路では効率を向上するため、多数の電池を直列接続して電圧バランスの補正を行っている。このため、直列に接続された2個の電池間でそれぞれ独立して電圧バランスの補正を行うと、上記2個の電池の電圧バランス補正を行う2個のスイッチング素子にそれぞれ隣り合う、他のスイッチング素子が同時にオンする場合がある。この場合、スイッチング素子が短絡し、回路の破損や電池の劣化の原因となる。
【0008】
そこで、本発明は多数の電池を直列接続して電圧バランスの補正を行う回路において、スイッチング素子を一括で同期制御することによって、スイッチング素子の短絡を防止する電圧バランス補正回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は本発明によれば、直列に接続された第1、第2、第3の電池と、上記第1、第2の電池の電圧バランスの補正を行う際駆動する第1、第2のスイッチング手段と、上記第2、第3の電池の電圧バランスの補正を行う際駆動する第3、第4のスイッチング手段と、上記第1、第2の電池の電圧バランスの補正を行う際、第3、第4のスイッチング手段の駆動を停止し、上記第1、第2の電池の電圧値に従って該第1、第2のスイッチング手段をオン、オフし、インダクタに蓄積する電磁エネルギーを使用して上記第1、第2の電池の電圧バランス補正を行う制御手段と、を有する電圧バランス補正回路を提供することによって達成できる。すなわち、このように構成することによって、第1、第2の電池の電圧バランスの補正を行なっている間、他のスイッチング手段、即ち第3、第4のスイッチング手段の駆動を停止し、例えば第2、第3のスイッチング手段が同時にオンすることによるスイッチング手段の短絡を防止する。
【0010】
また、上記第1、第2の電池の電圧値の差が閾値以上であるとき、該第1、第2のスイッチング手段をオン、オフし、上記第1、第2の電池の電圧バランスの補正を行う構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によればスイッチング手段を一括で同期制御することによって、スイッチング手段が同時にオンすることを防止し、スイッチング手段の短絡を防ぎ、無用なエネルギーのロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の電圧バランス補正回路の回路図である。
【図2】本実施形態の電圧バランス補正回路の具体的な回路図である。
【図3】本実施形態の処理動作を説明するフローチャートである。
【図4】特許文献に開示するバランス補正回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態の電圧バランス補正回路の回路図である。同図において、電池E1、E2、E3、E4は直列に多数の電池が接続された中の任意の4個の電池を示し、電池E1の正極端子には同じ構成の不図示の電池が順次接続され、電池E4の負極端子にも同じ構成の不図示の電池が順次接続されている。尚、電池E1〜E4、及び本実施形態に使用される電池は、例えばリチウムイオン電池である。
【0014】
また、上記電池E1、E2、E3、E4の電圧バランスを補正するため6個のスイッチング素子SW1〜SW6が使用され、スイッチング素子SW1、SW2の接続部にはインダクタL1の一端が接続され、インダクタL1の他端は上記電池E1の負極端子と電池E2の正極端子に接続されている。また、スイッチング素子SW3、SW4の接続部にはインダクタL2の一端が接続され、インダクタL2の他端は上記電池E2の負極端子と電池E3の正極端子に接続されている。さらに、スイッチング素子SW5、SW6の接続部にはインダクタL3の一端が接続され、インダクタL3の他端は上記電池E3の負極端子と電池E4の正極端子に接続されている。
【0015】
スイッチング素子SW1、SW2と、インダクタL1は、前述の図4において説明した場合と同様、電池E1とE2の電圧バランスの補正を行い、上記スイッチング素子SW3、SW4と、インダクタL2は、電池E2とE3の電圧バランス補正を行い、上記スイッチング素子SW5、SW6と、インダクタL3は、電池E3とE4の電圧バランス補正を行う。
【0016】
また、電池E1には並列に抵抗素子等で構成される電圧計V1が接続され、電池E1の電圧が測定される。また、同様に電池E2には並列に電圧計V2が接続され、電池E2の電圧が測定され、以下電池E3には並列に電圧計V3が接続され、電池E4には並列に電圧計V4が接続され、電池E5には並列に電圧計V5が接続され、電池E6には並列に電圧計V6が接続され、それぞれ対応する電池の電圧が測定される。また、上記電圧計V1〜V6で測定された電圧値のデータは制御部2に送信される。
【0017】
制御部2は上記電圧値のデータに基づいて制御信号を作成し、スイッチ制御部3に制御信号を送る。スイッチ制御部3は制御信号に従って、対応するスイッチング素子SW1〜SW6の駆動制御を行う。
【0018】
図2は上記構成の電圧バランス補正回路であり、図1の回路図に対して、電圧測定部4及び電流測定部5を追加した構成である。ただし、電圧測定部4は前述の電圧計V1〜V6を含む概念であり、電圧測定部4はマルチプレクサ6及びアナログデジタル変換器(A/D)7で構成されている。
【0019】
制御部2は電圧測定部4に制御信号を送信し、マルチプレクサ6を駆動して電圧計V1〜V6によって測定される電池E1〜E4の電圧値のデータを順次取り込む。具体的には、先ず電池E1とE2の電圧値のデータを電圧計V1とV2から取り込み、A/D7を介してデジタル値に変換された電池E1とE2の電圧値のデータを取り込む。以下、電池E2とE3、電池E3とE4、・・・の順に、順次2個ずつ電池の電圧値のデータを取り込む。 制御部2は上記電圧測定部4から送信される電圧値のデータに基づいてスイッチ制御部3に制御信号を出力し、スイッチング素子SW1〜SW6の駆動を行う。
【0020】
尚、電流測定部5は直列に接続された電池E1〜E6、及び電池E6に更に接続される多数の電池に流れる電流の値を測定する回路であり、抵抗r、アナログアンプ9、及びアナログデジタル変換器(A/D)10で構成されている。抵抗rの前後の電圧値の差をアナログアンプ9で測定し、抵抗rの抵抗値に基づいて、回路に流れる電流をA/D10によってデジタル値に変換し、制御部2に出力する。
【0021】
以上の構成において、本例の電圧バランス補正回路の回路動作を説明する。
図4は本例の電圧バランス補正回路の回路動作を説明するフローチャートである。先ず、各電池の電圧値を測定する(ステップ(以下、Sで示す)1)。具体的には、前述のようにマルチプレクサ6を駆動し、先ず電池E1とE2の電圧値のデータを電圧計V1とV2から取り込む。
【0022】
次に、電池E1とE2の電圧値の最大最小の差を計算する(S2)。すなわち、制御部2は電圧測定部4から取得した電池E1とE2の電圧値の最大最小の差を計算する。そして、電池E1とE2の電圧値の最大最小の差が閾値以上であるか判断する(S3)。上記閾値は予め設定されており、電池E1とE2の電圧値の最大最小の差が閾値以上であればスイッチング制御を開始する(S4)。一方、電池E1とE2の電圧値の最大最小の差が閾値以下である場合にはスイッチング制御を開始することなく終了する(S5)。
【0023】
尚、上記スイッチング制御を開始する場合、制御部2は先ず電池E1とE2の電圧値を比較し、例えば電池E1の電圧値が電池E2の電圧値より高い場合、スイッチ制御部3に制御信号を送り、スイッチ制御部3によって、先ずスイッチング素子SW1をオンし、スイッチング素子SW2をオフし、電池E1によってインダクタL1に電磁エネルギーを蓄積させる。次に、スイッチング素子SW2をオンし、スイッチング素子SW1をオフし、インダクタL1に蓄積された電磁エネルギーによって電池E2を充電する。一方、電池E2の電圧値が電池E1の電圧値より高い場合、上記と逆に先ずスイッチング素子SW2をオンし、スイッチング素子SW1をオフし、電池E2によってインダクタL1に電磁エネルギーを蓄積させ、次にスイッチング素子SW1をオンし、スイッチング素子SW2をオフして、インダクタL1に蓄積された電磁エネルギィーによって電池E1を充電する。
【0024】
上記電池E1とE2の電圧バランスの補正は終了した後、次に電池E2とE3の電圧値のデータを電圧測定部4から取り込む(S1)。この場合、電池E2の電圧値については、電圧の時間的変化も考慮して新たな電圧値を測定する。
【0025】
次に、上記と同様電池E2とE3の電圧値の最大最小の差を計算し(S2)、最大最小の差が閾値以上であるか判断する(S3)。そして、電池E2とE3の電圧値の最大最小の差が閾値以上であればスイッチング制御を開始し(S4)、閾値以下であれば終了する(S5)。
【0026】
上記スイッチング制御を開始する場合、前述と同様、制御部2は先ず電池E2とE3の電圧値を比較し、電池E2とE3の電圧値の何れが高いかによって、スイッチング素子SW3とSW4のオン、オフ制御を行い、電池E2とE3の電圧バランスの補正を行う。
【0027】
したがって、上記のように処理することによって、スイッチング素子SW3とSW4が駆動する時、スイッチング素子SW1とSW2は駆動することなく、オフの状態である。すなわち、本例のように制御することによって、例えばスイッチング素子SW2とSW3が同時におオンすることはなく、回路の破損を防止することができる。
【0028】
同様に、上記電池E2とE3の電圧バランスの補正が終了した後、次に電池E3とE4の電圧バランスの補正処理が行われる。この場合も制御部2は電圧測定部4から電池E3とE4の電圧値のデータを取り込み(S1)、両電池の電圧値の最大最小の差を計算し(S2)、最大最小の差が閾値以上であるか判断し(S3)、電池E2とE3の電圧値の最大最小の差が閾値以上であればスイッチング制御を行われるが(S4)、この時駆動するのはスイッチング素子はSW5とSW6であり、同時にスイッチング素子SW3とSW4が駆動することはなく、オフの状態である。
【0029】
したがって、本例のように制御することによって、例えばスイッチング素子SW4とSW5が同時にオンすることはなく、またスイッチング素子SW2とSW5が同時にオンすることもなく、スイッチング素子の短絡を防止することができる。また、スイッチング素子の短絡により大きな電流が回路に流れ、無用なエネルギーのロスや素子の劣化、電池の劣化を引き起こす。
【0030】
以下、同様に電池E4とE5以降の電圧バランスの補正処理においても、駆動するスイッチング素子SWと他のスイッチング素子SWが同時に駆動することはなく、回路の短絡を防止することができる。
【0031】
また、上記実施形態の説明では、電池E1〜E4は直列に多数の電池が接続された中の任意の4個の電池を示すものであり、連続する他の電池の電圧バランス補正についても同様に実施することができる。
【0032】
また、上記実施形態の説明では、電池En、電池En+1の電圧バランス補正を行なった後、次の電池En+1、電池En+2の電圧バランス補正を行う際、電池En+1についても新たな電圧値を測定したが、前に測定した電圧値のデータを使用するようにしてもよい。
【0033】
また、上記実施形態の説明では、電池E1、E2、・・・の順に電圧バランス補正を行なったが、逆に電池En、En−1、・・・の順に電圧バランス補正を行なっても良い。
さらに、上記実施形態の説明では、電池E1〜E4としてリチウムイオン電池の例で説明したが、ニッケル水素蓄電池やニッケルカドミウム蓄電池等であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1・・・電圧バランス補正回路
2・・・制御部
3・・・スイッチ制御部
4・・・電圧測定部
5・・・電流測定部
6・・・マルチプレクサ
7・・・アナログデジタル変換器
9・・・アナログアンプ
10・・アナログデジタル変換器
E1〜E4・・電池
SW1〜SW6・・スイッチング素子
L1〜L3・・インダクタ
V1〜V6・・電圧計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された第1、第2、第3の電池と、
前記第1、第2の電池の電圧バランスの補正を行う際駆動する第1、第2のスイッチング手段と、
前記第2、第3の電池の電圧バランスの補正を行う際駆動する第3、第4のスイッチング手段と、
前記第1、第2の電池の電圧バランスの補正を行う際、前記第3、第4のスイッチング手段の駆動を停止し、前記第1、第2の電池の電圧値に従って前記第1、第2のスイッチング手段をオン、オフし、インダクタに蓄積する電磁エネルギーを使用して前記第1、第2の電池の電圧バランスの補正を行う制御手段と、
を有することを特徴とする電圧バランス補正回路。
【請求項2】
前記第3、第4のスイッチング手段の駆動の停止は、該第3、第4のスイッチング手段のオフ状態の維持であることを特徴とする請求項1に記載の電圧バランス補正回路。
【請求項3】
前記第1、第2の電池の電圧値の差が閾値以上であるとき、該第1、第2のスイッチング手段をオン、オフし、前記第1、第2の電池の電圧バランスの補正を行うことを特徴とする請求項1、又は2に記載の電圧バランス補正回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−115882(P2013−115882A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258385(P2011−258385)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】