説明

電圧検出装置

【課題】電池に接続される電圧検出装置の識別を容易に可能とする。
【解決手段】外部に露出されていると共に加工により配線の接続状態と非接続状態とを切替可能な切替加工部3と、切替加工部3における配線の接続状態あるいは非接続状態によって電圧検出装置自体の識別情報設定を行う識別情報設定部2とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池を有する電池装置においては、複数の電池から構成される電池モジュールごとに、接続された電池の電圧を検出するための電圧検出装置が設けられている。
【0003】
現在のところ、HEV(Hybrid Electric Vehicle)やEV(Electric Vehicle)では複数の電池モジュールを搭載する必要があり、このような場合に複数の電圧検出装置を識別する必要が生じる。
例えば、特許文献1には、電源投入時に電圧検出装置に対して異なる電圧を供給し、各電圧検出装置が入力電圧に基づいて自らを識別する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−213297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、各電圧検出装置に対して異なる電圧を供給するためには、電圧検出装置ごとに電位設定を行う必要が生じ、さらには各電圧検出装置の各々に対して異なるコネクタ配線を設ける必要があり、電池装置構成が複雑化する。
特に、HEVやEVでは、多数の電池モジュールが搭載されることから、電池装置構成が特に複雑化することとなる。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、電池に接続される電圧検出装置の識別を容易に可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
第1の発明は、電池の電圧を検出する電圧検出装置であって、外部に露出されていると共に加工により配線の接続状態と非接続状態とを切替可能な切替加工部と、上記切替加工部における上記配線の接続状態あるいは非接続状態によって電圧検出装置自体の識別情報設定を行う識別情報設定部とを備えるという構成を採用する。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記識別情報設定部が実装される配線基板と、当該配線基板と上記電池とを電気的に接続するバスバーモジュールとを備え、上記切替加工部が、上記バスバーモジュールに設けられているという構成を採用する。
第3の発明は、上記第2の発明において、上記バスバーモジュールがモールド部から露出する露出配線を有し、当該露出配線が、切断加工が可能とされた上記切替加工部とされているという構成を採用する。
第4の発明は、上記第1の発明において、上記識別情報設定部が実装される配線基板を備え、上記切替加工部が、上記配線基板に設けられると共に充填材により接続可能な接続部であるという構成を採用する。
第5の発明は、上記第4の発明において、上記接続部が、上記導電材を充填可能なビアであるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電圧検出装置が、加工により配線の接続状態と非接続状態とを切替可能な切替加工部を有している。そして、切替加工部における配線の接続状態あるいは非接続状態(以下、配線状態と称する)によって電圧検出装置の識別情報が設定可能とされている。このため、本発明において電圧検出装置は、切替加工部の配線状態によって電源投入時に容易に自らの識別情報を取得することができる。
したがって、本発明によれば、複数の電圧検出装置に対して供給する電圧値を変化させなくとも、切替加工部の配線状態によって電圧検出装置が自らを識別することができる。
つまり、本発明によれば、電圧検出装置ごとに電位設定を行う必要がなく、さらには各電圧検出装置の各々に対して異なるコネクタ配線を設ける必要がない。よって、電池に接続される電圧検出装置の識別を容易に行うことが可能となる。
【0009】
さらに、本発明においては、上記切替加工部が外部に対して露出されている。このため、例えば電池と接続された後であっても、切替加工部における配線状態の調節が可能となっている。
このため、電池装置に組み込む前に、電圧検出装置を区別して管理する必要がなくなる。したがって、本発明によれば、電圧検出装置の管理を容易とし、電池装置の製造コストを低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態における電圧検出装置の概略構成図であり、(a)が分解斜視図であり、(b)が回路図である。
【図2】本発明の電圧検出装置の回路図であり、(a)が露出配線Aが切断加工された図であり、(b)が露出配線B,Dが切断加工された図である。
【図3】本発明の電圧検出装置の変形例を説明するためのバスバーモジュールの模式図である。
【図4】(a)が本発明の第2実施形態における電圧検出装置が備える配線基板の平面図であり、(b)が配線基板上に設けられるビアの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る電圧検出装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の電圧検出装置1の概略構成図であり、(a)が分解斜視図であり、(b)が回路図である。
本実施形態の電圧検出装置1は、電池装置に搭載される複数の電池Sのうち、単一あるいは複数の電池Sごとに複数設けられている。
この電圧検出装置1は、接続される電池Sの電圧を検出するものであり、図1に示すように、マイクロコンピュータ2(識別情報設定部)と、バスバーモジュール3と、配線基板4を備えている。
【0013】
マイクロコンピュータ2は、配線基板4上に実装されており、電池Sの電圧検出結果を取り込み、電圧検出結果をもとに電池の充放電を制御するものである。
そして、本実施形態においてマイクロコンピュータ2は、バスバーモジュール3が備える切替加工部3bにおける配線状態(配線の接続状態と非接続状態)によって、自装置が搭載される電圧検出装置1の識別情報設定を行う。
【0014】
より詳細には、本実施形態におけるマイクロコンピュータ2は、図1(b)に示すように、識別情報設定に用いる4つの入力ポート2a,2b,2c,2dを備えている。これらの入力ポート2a,2b,2c,2dには、バスバーモジュール3が備える切替加工部3bにおける配線状態に応じて電源電圧かグランド電圧のいずれかの電圧が供給されるように構成されている。そして、マイクロコンピュータ2は、入力ポート2a,2b,2c,2dに供給される電圧の種類に応じて自装置が搭載される電圧検出装置1の識別情報設定を行う。
【0015】
具体的には、入力ポート2a,2b,2c,2dに供給される電圧の種類が電源電圧とグランド電圧の2種類存在するため、入力ポート2a,2b,2c,2dへ供給される電圧の入力パターンは、表1に示すように、16種類存在することとなる。そして、マイクロコンピュータ2は、この入力パターンの種類に応じて、自装置が搭載される電圧検出装置1の電池装置におけるアドレス(設置位置)を識別情報として設定する。
【0016】
【表1】

【0017】
なお、電池装置に搭載される複数のマイクロコンピュータ2は、各々が当該マイクロコンピュータ2の制御を行う上位制御装置(例えば、ECU(Engine Control Unit))と電気的に接続されている。
【0018】
バスバーモジュール3は、配線基板4と電池Sとの間に介挿されて配線基板4と電池Sとを電気的に接続するものである。そして、図1に示すように、バスバーモジュール3は、直接的に配線基板4と電池Sとを電気的に接続する不図示のバスバー配線と、当該バスバー配線をモールドする樹脂製のモールド部3aと、切断加工によって配線状態を切替可能な切替加工部3bとを備えている。
【0019】
本実施形態においてバスバーモジュール3は、モールド部3aから側方に突出して外部に露出された4つの露出配線A〜D(配線)を備えている。
図1(b)に示すように、露出配線Aは、一端がプルアップ抵抗4aを介してマイクロコンピュータ2の入力ポート2aと接続され、他端がグランドに接続されている。露出配線Bは、一端がプルアップ抵抗4bを介してマイクロコンピュータ2の入力ポート2bと接続され、他端がグランドに接続されている。露出配線Cは、一端がプルアップ抵抗4cを介してマイクロコンピュータ2の入力ポート2cと接続され、他端がグランドに接続されている。露出配線Dは、一端がプルアップ抵抗4dを介してマイクロコンピュータ2の入力ポート2dと接続され、他端がグランドに接続されている。
【0020】
これらの露出配線A〜Dは、外部に露出されてニッパ等によって容易に切断加工が可能に構成されている。
そして、本実施形態において切替加工部3bは、切断加工によって接続状態と非接続状態とを切替可能な上記4つの露出配線A〜Dから構成されている。つまり、本実施形態において切替加工部3bは、外部に露出されていると共に配線の接続状態と非接続状態とを切替可能に構成されている。
【0021】
配線基板4は、上述のマイクロコンピュータ2を含めた複数の実装部品が実装されるものであり、各実装部品同士を電気的に接続する配線を備えている。
そして、本実施形態において配線基板4は、図1(b)に示すように、露出配線Aの一端をマイクロコンピュータ2の入力ポート2aに接続し、露出配線Aの他端をグランドに接続している。また、配線基板4は、露出配線Bの一端をマイクロコンピュータ2の入力ポート2bに接続し、露出配線Bの他端をグランドに接続している。また、配線基板4は、露出配線Cの一端をマイクロコンピュータ2の入力ポート2cに接続し、露出配線Cの他端をグランドに接続している。また、配線基板4は、露出配線Dの一端をマイクロコンピュータ2の入力ポート2bに接続し、露出配線Dの他端をグランドに接続している。
さらに配線基板4には、露出配線A〜Dの一端側に接続されるプルアップ抵抗4a〜4dが実装されている。
【0022】
このような構成を有する本実施形態の電圧検出装置1では、切替加工部3bを構成する露出配線A〜Dの接続状態あるいは非接続状態(配線状態)に応じてマイクロコンピュータ2の入力ポート2a〜2dに供給される電圧の入力パターンが変化する。そして、この電圧の入力パターンによって電圧検出装置1の識別情報が設定される。
例えば、図2(a)に示すように、露出配線Aが切断加工されることによって非接続状態とされ、露出配線B〜Dが接続状態とされている場合には、入力ポート2aにグランド電圧が供給され、入力ポート2b〜2dに電源電圧が供給されるため、上記表1に示す入力パターン9となる。
また、図2(b)に示すように、露出配線Bと露出配線Dとが切断加工されることによって非接続状態とされ、露出配線A、Cが接続状態とされている場合には、入力ポート2b、2dにグランド電圧が供給され、入力ポート2a,2cに電源電圧が供給されるため、表1に示す入力パターン6となる。
【0023】
なお、切替加工部3bにおける露出配線A〜Dの切断加工は、例えば、電圧検出装置1が電池Sと接続され、電池装置に収容されてから作業者や作業ロボットによって行われる。
【0024】
以上のような本実施形態の電圧検出装置1は、加工により配線(露出配線A〜D)の接続状態と非接続状態とを切替可能な切替加工部3bを有している。そして、切替加工部3bにおける配線(露出配線A〜D)の接続状態あるいは非接続状態によって電圧検出装置1の識別情報が設定可能とされている。このため、電圧検出装置1は、切替加工部3bの配線状態によって電源投入時に容易に自らの識別情報を取得することができる。
したがって、電圧検出装置1によれば、複数の電圧検出装置に対して供給する電圧値を変化させなくとも、切替加工部3bの配線状態によって電圧検出装置1が自らを識別することができる。
つまり、電圧検出装置1によれば、電圧検出装置ごとに電位設定を行う必要がなく、さらには各電圧検出装置の各々に対して異なるコネクタ配線を設ける必要がない。よって、電池Sに接続される電圧検出装置1の識別を容易に行うことが可能となる。
【0025】
さらに、電圧検出装置1においては、上記切替加工部3bが外部に対して露出されている。このため、例えば電池Sと接続された後であっても、切替加工部3bにおける配線状態の調節が可能となっている。
このため、電池装置に組み込む前に、電圧検出装置1を区別して管理する必要がなくなる。したがって、電圧検出装置1によれば、管理を容易とし、電池装置の製造コストを低減させることが可能となる。
【0026】
また、本実施形態の電圧検出装置1は、バスバーモジュール3に対して切替加工部3bが設けられている。
このため、配線ピッチが狭い配線基板4に切替加工部を設けるよりも、切替加工部3bの設置スペースを容易に確保することが可能となる。
なお、本実施形態においては、図3(a)に示すように、切替加工部3bを構成する露出配線A〜Dが、モールド部3aの側方に突出して露出されている。しかしながら、切替加工部3bの露出方法はこれに限られるものではなく、図3(b)に示すように、モールド部3aに露出配線A〜Dを露出させる開口3a1を設けるようにしても良い。
【0027】
また、本実施形態の電圧検出装置1では、露出配線A〜Dを切断加工するのみによって切替加工部3bにおける配線状態の切替を行うことができる。したがって、より容易に電圧検出装置1の識別を行うことが可能となる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0029】
図4(a)は、本実施形態の電圧検出装置が備える配線基板4Aの平面図である。この図に示すように、配線基板4Aは、電気的接続において上記第1実施形態の露出配線Aに相当する配線A1と、上記第1実施形態の露出配線Bに相当する配線B1と、上記第1実施形態の露出配線Cに相当する配線C1と、上記第1実施形態の露出配線Dに相当する配線D1とを備えている。
【0030】
また、本実施形態の電圧検出装置において配線基板4Aは、各配線A1,B1,C1,D1の接続状態あるいは非接続状態を切替可能とするための複数のビア5(5A〜5D)を備えている。
このビア5(接続部)は、半田付け加工が可能に構成されている。そして、図4(b)に示すように、ビア5に対して半田付け加工を行い、ビア5に半田Yを充填することによって、各配線A1,B1,C1,D1が接続状態となる。
なお、半田Yを用いるのは一例であり、導電材であればビア5の充填材として用いることができる。例えば、導電性接着剤等を充填材として用いることもできる。このような場合には、ビア5に充填材を充填する加工を行うことによって各配線A1,B1,C1,D1が接続状態となる。
【0031】
つまり、本実施形態の電圧検出装置は、ビア5からなる切替加工部6を備えている。そして、切替加工部6において半田付け加工を行うことによって、各配線A1,B1,C1,D1の接続状態あるいは非接続状態を切替可能に構成されている。
【0032】
このような構成を有する本実施形態の電圧検出装置においても、切替加工部6において加工を行うことによって、上記第1実施形態と同様に、マイクロコンピュータ2の入力ポート2a〜2dに対する電圧の入力パターンの変更を行い、これによって電圧検出装置の識別情報が設定される。
したがって、本実施形態の電圧検出装置によれば、電圧検出装置ごとに電位設定を行う必要がなく、さらには各電圧検出装置の各々に対して異なるコネクタ配線を設ける必要がない。よって、電池Sに接続される電圧検出装置の識別を容易に行うことが可能となる。
【0033】
また、本実施形態の電圧検出装置では、ビア5(切替加工部6)が配線基板4に対して設けられているため、バスバーモジュール3を省略した構成を採用することも可能となる。
【0034】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0035】
例えば、上記実施形態においては、切替加工部3,6において4つの配線の接続状態と非接続状態とを切替可能とする構成を採用した。
しかしながら、電池装置に搭載される電圧検出装置が16個以上となる場合には、必要に応じて切替加工部における配線数が変更される。
【0036】
また、上記実施形態においては、本発明の接続部としてビア5を用いる構成を採用した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ビアに換えて、パターンやパッドを接続部として用いる構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0037】
1……電圧検出装置、2……マイクロコンピュータ(識別情報設定部)、3……バスバーモジュール、3a……モールド部、3b,6……切替加工部、4,4A……配線基板、5……ビア(接続部)、A〜D……露出配線(配線)、A1,B1,C1,D1……配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の電圧を検出する電圧検出装置であって、
外部に露出されていると共に加工により配線の接続状態と非接続状態とを切替可能な切替加工部と、
前記切替加工部における前記配線の接続状態あるいは非接続状態によって電圧検出装置自体の識別情報設定を行う識別情報設定部と
を備えることを特徴とする電圧検出装置。
【請求項2】
前記識別情報設定部が実装される配線基板と、当該配線基板と前記電池とを電気的に接続するバスバーモジュールとを備え、
前記切替加工部は、前記バスバーモジュールに設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の電圧検出装置。
【請求項3】
前記バスバーモジュールがモールド部から露出する露出配線を有し、
当該露出配線が、切断加工が可能とされた前記切替加工部とされている
ことを特徴とする請求項2記載の電圧検出装置。
【請求項4】
前記識別情報設定部が実装される配線基板を備え、
前記切替加工部は、前記配線基板に設けられると共に導電材により接続可能な接続部である
ことを特徴とする請求項1記載の電圧検出装置。
【請求項5】
前記接続部は、前記導電材を充填可能なビアであることを特徴とする請求項4記載の電圧検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−202820(P2012−202820A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67627(P2011−67627)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】