説明

電子ペーパー情報端末

【課題】電子ペーパーと内蔵する電池の寿命を延ばすとともに、高いセキュリティ性を確保する。
【解決手段】タイマー12にて計測された時間が予め設定された時間を経過した後に、電子ペーパー2全面の二色切り替え動作を行い、二次電池11の最低電圧が規定の電圧値を下回った場合に、電子ペーパー2全面の二色切り替え動作を中間色にて停止し、次いで二次電池11からの電力供給を遮断し、また、メモリ5を揮発性として二次電池11からの電力供給が遮断されると、保持された情報が消去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペーパーを用いた情報端末に関し、特に、その電力供給技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペーパーは、バックライトを必要とせず、紙と同様な反射型の表示デバイスで、ほぼ180度に近い視野角を持ち、新聞紙よりも高いコントラストを有し、外部環境の明るさに依存しない視認性を持ち、さらに、電力消費が通常の反射型LCDと比較して約1/10という特徴を有していることから、近年、電子書籍向けの端末表示パネルとして、マイクロカプセル型電子流動方式や電子粉流体方式の電子ペーパーが実用化されてきている。
【0003】
これらの電子ペーパーの一般的な駆動方法は、パネルの一方を共通のグランドとし、他方に画面解像度に合わせた電極を配置し、その電極にプラスあるいはマイナスの電圧を加えることで、電子ペーパー内にある着色された粒子を移動させることで表示を実現している。この電極には、パネル背面に配した配線あるいはLCDパネル等を駆動するためのTFTマトリックス等が用いられる。また、電源として、充放電可能な二次電池が用いられているものもある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
電子ペーパーは、表示画面を保持することが特徴である一方、その画面を保持し続けると、電子ペーパー内部で局所化された粒子の凝集等や壁面への吸着力が増加し、所謂焼き付きが生じる場合がある。従って、画面の切り替え時には、全面の明暗切り替え動作が行なわれる場合が多い。
【0005】
一方、リチウムイオン電池に代表される二次電池においては、電気化学的な反応を利用するため、その寿命は電池内で使用されている材料の劣化によって決定されることが多い。特に電界質においては、高い電界が印加される満充電状態において高温に晒されると分解が促進されるため、電池内でのイオンの移動に係る成分が減少し、電池容量が減少してしまうといった傾向にある。また、電池容量に対して供給可能な電流値を大きくしてしまうと、電池の劣化を早めてしまうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−244061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子ペーパー情報端末において表示されるコンテンツは、書籍、新聞、雑誌、広告等であって、基本的に使用者が購入したものが多く、特に機密情報を有していることはなく、セキュリティ上の問題は、表示内容に関してはほとんど生じないと考えられる。一方、企業内等の会議で使用されるようなビジネス対応の場合には、基本的に秘密情報が含まれることが多く、情報の外部流出を防ぐためのセキュリティ対策が重要となる。また、企業等で使用される場合は、紙資料削減という目的もあり、頻繁に使用される可能性が高く、電子ペーパー及びその駆動に必要な二次電池にも長い寿命が必要となる。
【0008】
本発明は、上述したような技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、電子ペーパーと内蔵する電池の寿命を延ばすとともに、高いセキュリティ性を確保することができる電子ペーパー情報端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、
電力供給が断たれても二色による表示パターンを保持することが可能な電子ペーパーと、前記電子ペーパーを駆動するドライバと、前記ドライバを駆動するための電力を供給する電源と、前記電子ペーパーに表示される表示パターンに応じた情報を保持するメモリと、前記メモリに保持された情報に応じた表示パターンが前記電子ペーパーに表示されるように前記電源から供給される電力を用いて前記ドライバを制御するコントローラーとを有する電子ペーパー情報端末において、
前記電源は、
タイマーと、
充放電可能な二次電池と、
前記二次電池の電圧を監視する電圧監視モニターとを有し、
前記コントローラーは、前記タイマーにて計測された時間が予め設定された時間を経過した後に、前記二次電池の電力を用いた前記電子ペーパーへのパルス状の電力供給によって前記電子ペーパー全面の二色切り替え動作を行い、前記電圧監視モニターにて監視される前記二次電池の最低電圧が規定の電圧値を下回った場合に、前記電子ペーパー全面の二色切り替え動作を前記二色の中間色にて停止し、次いで前記二次電池からの電力供給を遮断し、
前記メモリは、揮発性であって、前記二次電池からの電力供給が遮断されると、保持された情報が消去されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明においては、コントローラーにおいて、タイマーにて計測された時間が予め設定された時間を経過した後に、電子ペーパーへのパルス状の電力供給によって電子ペーパー全面の二色切り替え動作を行い、二次電池の最低電圧が規定の電圧値を下回った場合に、電子ペーパー全面の二色切り替え動作を二色の中間色にて停止し、次いで二次電池からの電力供給を遮断する構成とすることにより、電子ペーパーによる表示画面の焼きつき等を防止し、その品質を長期に渡って維持することができるとともに、二次電池に関しては、過放電にならないレベルで毎回決まった蓄電量まで放電させることによって、保管時のセル間電圧を下げることができ、電解液の分解が抑制されて電池寿命を延ばすことができる。また、メモリが、揮発性であって、二次電池からの電力供給が遮断されると、保持された情報が消去されることにより、高いセキュリティ性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の電子ペーパー情報端末の実施の一形態を示すブロック図である。
【図2】図1に示した電子ペーパーのリフレッシュ動作を説明するための図である。
【図3】図1に示した電子ペーパーに対してパルス状の電力供給を行った場合の二次電池の電圧を示す図であり、(a)は駆動パルスを示す図、(b)は二次電池の電圧を示す図である。
【図4】図1に示した電子ペーパーに対するパルス状の電力供給の一例を示す図であり、(a)は駆動パルスを示す図、(b)は二次電池の電圧を示す図である。
【図5】図1に示した電子ペーパーに対するパルス状の電力供給の他の例を示す図であり、(a)は駆動パルスを示す図、(b)は二次電池の電圧を示す図である。
【図6】本発明の電子ペーパー情報端末の他の実施の形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の電子ペーパー情報端末の実施の一形態を示すブロック図である。
【0014】
本形態は図1に示すように、電子ペーパー2と、ドライバ3と、コントローラー4と、メモリ5と、スクロールキー6と、タイマー設定キー7と、電源10とを有している。
【0015】
電子ペーパー2は、電力供給が断たれても黒/白の二色による表示パターンを保持することが可能なものである。
【0016】
ドライバ3は、電子ペーパー2、コントローラー4及び電源10に接続され、電子ペーパー2を駆動するためのものである。
【0017】
コントローラー4は、ドライバ3、メモリ5、スクロールキー6、タイマー設定キー7及び電源10に接続され、メモリ5に保持された情報を読み出し、この情報に応じた表示パターンが電子ペーパー2に表示されるように電源10から供給される電力を用いてドライバ3を制御するものである。
【0018】
メモリ5は、電子ペーパーに表示される表示パターンに応じた情報となる画像データが外部からロードされ、この画像データを保持する。
【0019】
電源10は、充放電可能な二次電池11と、タイマー12と、二次電池11の電圧を監視する電圧監視モニター13と、電圧コンバータ14とを有し、ドライバ3等全ての構成要素を駆動するための電力を供給するものである。なお、二次電池11の負極は、コントローラー4の負極と同一電位であって、同一基板上に設けられている。
【0020】
以下に、上記のように構成された電子ペーパー情報端末1の動作について説明する。
【0021】
まず、電子ペーパー2に情報を表示する際の動作について説明する。
【0022】
電子ペーパー2に表示パターンを表示するための画像データは外部からメモリ5にロードされ、同時に、電源10内の二次電池11も充電される。この際、二次電池11への充電を、認証機能を有する充電器によって行うことにより、セキュリティ性を向上させることができる。また、使用時間を限定するため、電源供給時間がタイマー設定キー7を介してタイマー12に設定される。
【0023】
その後、画像データを実際に電子ペーパー2に表示する場合は、メモリ5にロードされた画像データがコントローラー4にロードされ、コントローラー4において、画像データが電子ペーパー2の表示パターンに変換される。そして、コントローラー4の制御によってドライバ3が駆動し、ドライバ3によって電子ペーパー2の電極に対して電圧が印加することによって表示パターンが電子ペーパー2に表示される。
【0024】
電子ペーパー2に表示された表示パターンのページのめくりについては、スクロールキー6が操作されることにより、コントローラー4の制御で行なわれる。
【0025】
次に、タイマー12に設定された使用時間が満了した後の動作について説明する。
【0026】
タイマー12においては、使用開始からの時間が計測されており、この計測された時間が、タイマー12に設定された使用時間を経過すると、コントローラー4の制御によって、電子ペーパー2における表示パターンの表示が自動的に終了し、電子ペーパー2の明暗表示(電圧のプラス/マイナス印加)がパルス状の電力供給によって開始され、電子ペーパー2内の着色粒子を振動させることで、リフレッシュ動作が行われ、最終的には電子ペーパー2の両面が等電位とされて、着色粒子がどちらかの壁面に偏らない状態にて停止する。
【0027】
図2は、図1に示した電子ペーパー2のリフレッシュ動作を説明するための図である。
【0028】
電子ペーパー2のリフレッシュ動作においては、コントローラー4の制御によって、まず、電子ペーパー2内の着色粒子を、画面側または駆動電極側のいずれか一方の電極に引き寄せることで、図2(a)に示すように、電子ペーパー2にて表示される黒/白のうち黒が全面に表示され、次に、電子ペーパー2内の着色粒子を、画面側または駆動電極側の他方の電極に引き寄せることで、図2(b)に示すように、電子ペーパー2にて表示される黒/白のうち白が全面に表示され、その後、電子ペーパー2の両面を等電位とすることで着色粒子がどちらかの壁面に偏らない状態として、図2(c)に示すように、電子ペーパー2にて表示される黒/白の中間色の灰色が全面に表示されることになる。
【0029】
電源10内の二次電池11は、このパルス状の電力供給によって徐々に放電され、二次電池11の電圧が電圧監視モニター13によって規定の電圧値である最低電圧を下回った場合に、電源10内のスイッチにて、図2(c)に示した状態として電子ペーパー2の表示系への電源供給が遮断される。この際、画像データを保持しているメモリ5が揮発性であれば、その画像データも消去される。
【0030】
上述したような起動、運用、停止を行なうことによって、電子ペーパー2はリフレッシュ動作を行なうとともに、二次電池11の放電を行なうことができる。その結果、電子ペーパー2の表示品質を維持するとともに、二次電池11を低容量/低電圧状態で保管することができるため、二次電池11の劣化を抑制することができる。さらに、秘密情報等を含む画像データは消去されているため、そのまま外部へ持ち出されても情報漏えいが生じる可能性はなくなる。
【0031】
以下に、上述したパルス状の電力供給時の電源制御方法について詳細に説明する。
【0032】
図3は、図1に示した電子ペーパー2に対してパルス状の電力供給を行った場合の二次電池11の電圧を示す図であり、(a)は駆動パルスを示す図、(b)は二次電池11の電圧を示す図である。
【0033】
二次電池11においては、少なくともミリ秒オーダーのON/OFFに対して厳密に追従することは困難であるため、図3(a)に示すような駆動パルスにて比較的大きな電流を流した場合は、瞬間的な電圧降下が大きく、電圧下限を下回って放電を停止しても、図3(b)に示すように、電圧としてはかなり回復する傾向にある。
【0034】
図4は、図1に示した電子ペーパー2に対するパルス状の電力供給の一例を示す図であり、(a)は駆動パルスを示す図、(b)は二次電池11の電圧を示す図である。
【0035】
図4(a)に示すように、コントローラー4において、タイマー12にて計測された時間が予め設定された時間を経過した後に、電子ペーパー2における表示の停止動作の初期においては、パルス駆動のパルス幅を広くし、その後、二次電池11の電圧が低下するに従って、パルス幅が徐々に狭くなるように電子ペーパー2へのパルス状の電力供給を行えば、図4(b)に示すように、二次電池11の停止電圧をより正確な電圧に到達させることができる。この場合、一定のパルス間隔で駆動する場合に比べて、下限電圧をパルス駆動にて下回る回数を抑えることが可能となるため、二次電池11の劣化をより抑制することが可能となる。
【0036】
図5は、図1に示した電子ペーパー2に対するパルス状の電力供給の他の例を示す図であり、(a)は駆動パルスを示す図、(b)は二次電池11の電圧を示す図である。
【0037】
図5(a)に示すように、コントローラー4において、タイマー12にて計測された時間が予め設定された時間を経過した後に、所定のタイミングにおいて電子ペーパー2へのパルス状の電力供給を所定時間だけ停止し、電圧回復時間を考慮した制御を実施すると、下限電圧をパルス駆動にて下回る回数をさらに抑えることが可能となるため、安全に停止動作を完了させることができる。また、このようなパルス駆動を行なう場合には、電池容量に対する大電流放電が可能であって、電池電圧の回復時間が短く、相対的に電池容量を小さく設計可能な有機ラジカル電池を用いれば、比較的短時間に停止動作を完了させることができる。
【0038】
(他の実施の形態)
図6は、本発明の電子ペーパー情報端末の他の実施の形態を示すブロック図である。
【0039】
本形態は図6に示すように、図1に示したものに対して、電子ペーパー2の表面に入力情報記録デバイス8が重畳されているとともに、揮発性のメモリ5に加えて不揮発性のメモリ9を有する点が異なるものである。
【0040】
入力情報記録デバイス8は、電子ペーパー2上に表示されている画像情報に対して、何らかのコメントや図表等の情報を追記する場合に用いられ、代表的なものとして、抵抗膜式タッチパネルや静電容量式タッチパネル等が挙げられる。
【0041】
コントローラー4は、この入力情報記録デバイス8に追記により入力された情報については、最終的に消去しても良い場合は揮発性のメモリ5内に格納すればよく、その情報を残す必要がある場合は、EEPROM等の不揮発性のメモリ9に記録しておき、その後、外部へデータ転送可能となるようにすることで、その目的を達成することができる。
【0042】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態の構成にのみ制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得ることができる各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
1,101 電子ペーパー端末
2 電子ペーパー
3 ドライバ
4 コントローラー
5,9 メモリ
6 スクロールキー
7 タイマー設定キー
8 入力情報記録デバイス
10 電源
11 二次電池
12 タイマー
13 電圧コンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給が断たれても二色による表示パターンを保持することが可能な電子ペーパーと、前記電子ペーパーを駆動するドライバと、前記ドライバを駆動するための電力を供給する電源と、前記電子ペーパーに表示される表示パターンに応じた情報を保持するメモリと、前記メモリに保持された情報に応じた表示パターンが前記電子ペーパーに表示されるように前記電源から供給される電力を用いて前記ドライバを制御するコントローラーとを有する電子ペーパー情報端末において、
前記電源は、
タイマーと、
充放電可能な二次電池と、
前記二次電池の電圧を監視する電圧監視モニターとを有し、
前記コントローラーは、前記タイマーにて計測された時間が予め設定された時間を経過した後に、前記二次電池の電力を用いた前記電子ペーパーへのパルス状の電力供給によって前記電子ペーパー全面の二色切り替え動作を行い、前記電圧監視モニターにて監視される前記二次電池の最低電圧が規定の電圧値を下回った場合に、前記電子ペーパー全面の二色切り替え動作を前記二色の中間色にて停止し、次いで前記二次電池からの電力供給を遮断し、
前記メモリは、揮発性であって、前記二次電池からの電力供給が遮断されると、保持された情報が消去されることを特徴とする電子ペーパー情報端末。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ペーパー情報端末において、
前記コントローラーは、前記タイマーにて計測された時間が予め設定された時間を経過した後に、パルス幅が徐々に狭くなるように前記電子ペーパーへのパルス状の電力供給を行う電子ペーパー情報端末。
【請求項3】
請求項1に記載の電子ペーパー情報端末において、
前記コントローラーは、前記タイマーにて計測された時間が予め設定された時間を経過した後に、所定のタイミングにおいて前記電子ペーパーへのパルス状の電力供給を所定時間だけ停止する電子ペーパー情報端末。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子ペーパー情報端末において、
前記電子ペーパーによる表示画面に対して情報入力可能な入力情報記録デバイスと、
不揮発性メモリとを有し、
前記コントローラーは、前記入力情報記録デバイスに対して入力された情報を前記不揮発性メモリに記録し、
前記不揮発性メモリに記録された情報が、外部へデータ転送可能となるように構成されている電子ペーパー情報端末。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子ペーパー情報端末において、
前記二次電池の負極は、前記コントローラーの負極と同一電位であって、同一基板上に設けられている電子ペーパー情報端末。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子ペーパー情報端末において、
前記二次電池は、有機ラジカル電池である電子ペーパー情報端末。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電子ペーパー情報端末において、
前記二次電池は、認証機能を有した充電器によって充電される電子ペーパー情報端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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