説明

電子ペーパー用粘着剤組成物

【課題】カラー表示可能な電子ペーパーに適用した場合に、その光学特性を損なうことなく、紫外線から、電子ペーパーを構成している、コレステリック液晶や、電気泳動液や、有色粒子を有効に保護できる優れた紫外線吸収機能を有する、電子ペーパーの性能維持および耐久性向上に資する優れた光学用粘着剤を提供すること。
【解決手段】炭素数が1〜18の(メタ)アクリルエステルモノマー(a)と、水酸基を有する共重合可能なモノマー(b)とからなる、酸価が0.1mgKOH/g以下、重量平均分子量30万〜200万の共重合体であるアクリル樹脂(A)と、特定構造のトリアジン化合物を含む紫外線吸収剤(B)と、架橋剤(C)とを、それぞれ一定の割合で含む粘着剤組成物であり、かつ、粘着剤組成物から形成した粘着剤層が、その全光線透過率が95%以上で、塗工厚50μmの時のヘイズ値が1.0以下であるカラー表示可能な電子ペーパー用粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学特性に優れた電子ペーパー用粘着剤組成物に関し、より詳しくは、電子ペーパーを構成する、コレステリック液晶の保護や、マイクロカプセル内の電気泳動液や粒子の保護に有用な、長波長紫外線をカットさせる紫外線吸収機能を持たせた電子ペーパー用粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護への配慮から、表示装置においても省電力化が求められている。しかし、従来から使用されている、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの表示装置では持続的に表示させるための電力が必要であり、より以上の省電力化を図るのは難しい。そこで、より省電力化が可能な表示装置として、電子ペーパー(Electronic paper display、EPD)が開発され、注目されてきている。その方式としては、コレステリック液晶を用いた電子ペーパーや、マイクロカプセルを用いた電気泳動方式の電子ペーパーや、電子粉流体方式の電子ペーパーがあるが、これらは、一度表示してしまえば、半永久的に表示を保持する表示保持特性(メモリ特性)があり、表示し続けるための持続的な電力が不要或いは極めて少なくて済むため省電力化の面で優れている。
【0003】
電子ペーパーは、開発された当初は白黒表示のみであったが、近年、カラー表示可能な電子ペーパーが開発され、実用化もされつつある。例えば、コレステリック液晶を用いた電子ペーパーでは、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の液晶層を積層することで、無電力でのカラー表示を可能としている。また、電気泳動方式のものとしては、マイクロカプセル内の電気泳動液中の電界で、電気を帯びた白黒粒子を上部電極と下部電極の電位差で上下させることにより、白黒表示する電子ペーパーが広く知られているが、下記に挙げるような方法で、カラー表示可能な電子ペーパーとすることが行われている。例えば、マイクロカプセル内の粒子を染色された有色粒子としたり、カラーフィルターを使用することで、電気泳動方式の電子ペーパーでもカラー表示が可能となっている。
【0004】
これらのカラー表示可能な電子ペーパーは、近年開発されたこれまでにない製品であり、さらに、構造的に薄いことが絶対的な条件であり、しかも可撓性を有することも要求されているため、高品質で耐久性に優れるものとするにはこれまでにない様々な課題がある。その一つとして、カラー表示可能な電子ペーパーでは、いずれの方式でも下記の課題があった。コレステリック液晶を用いた電子ペーパーでは、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の液晶層が必要であり、各色の液晶層は、外光から特定の波長領域の光を選択的に反射させる構造を有しており、青(410〜470nm)、緑(520〜580nm)、赤(600〜660nm)の各波長領域の光を反射することでカラー表示させている。しかし、外光の照射によって、紫外線による表示性能の劣化が生じたり、液晶層自体を紫外線から保護する必要があった。これらの問題を解決するためには、紫外線を吸収させる紫外線吸収フィルターが必要となってくるが、上記した光学特性を損なうことがなく、さらに構造的な薄さが求められる電子ペーパーにあっては、従来のフィルム状やシート状の紫外線吸収フィルターを適用することはできない。この問題は、電気泳動方式のカラー表示可能な電子ペーパーにおいても同様である。すなわち、電気泳動方式では、電気泳動液中の電界で電位差を利用して有色粒子を移動させて表示させているため、電気泳動液および有色粒子が紫外線によって劣化し、表示性能が低下するという課題に対し、電気泳動液および有色粒子を光学的に保護する必要がある。
【0005】
上記した課題に対し、紫外線による健康被害が明らかとなったこともあり、紫外線を吸収させる紫外線吸収フィルターとして使用できる、光学フィルムや光学シートの開発は広く行われており、種々のものが提案されている。例えば、特許文献1に、特定のトリアジン化合物を用いることで、偏光板の偏光能の持続に優れた光学フィルム或いは光学シートとなることについての提案がある。しかし、その適用対象は特定の偏光板に限られており、さらに、形状がフィルム状やシート状であるため、各種光学部材への適用は難しかった。特に、構造的な薄さを必要とし、可撓性もが求められている電子ペーパーに適用するものとしては適当ではなかった。このような実情に鑑み、本発明者らは、カラー表示可能な電子ペーパーに適用した場合に、その光学特性が損なわれることなく、より薄膜で紫外線の吸収機能を発揮し得る粘着剤組成物を提供することができれば、より耐久性に優れたより高品質のカラー表示可能な電子ペーパーの提供が可能となると考えるに至った。このようなものが提供できれば、電子ペーパーに限らず、PDP、有機ELなど、光学部材同士の貼り合わせの紫外線吸収フィルターとしての粘着剤層にも使うこともできるので、その実用価値は極めて高いものになる。
【0006】
また、特許文献2には、光学フィルター用粘着剤に、光吸収剤(可視光線領域から近赤外線領域の光吸収を有するもの)と、紫外線吸収剤を用いたものが提案されている。そして、紫外線吸収剤として、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系などの種々の紫外線吸収剤を用いることができ、その使用量は、0.5〜50重量部であると記載されている。しかしながら、実施例には、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を使用した例が挙げられているのみであり、トリアジン系紫外線吸収剤についての検討はされていない。本発明者らが検討したところ、上記発明は紫外線吸収剤と共に、近赤外線吸収剤を併用しているため、経時でブリードアウトしてしまい易く、また、波長365nmでの透過率が1.0%以下、波長380nmでの透過率が3.0%以下という高い紫外線吸収性能を満たすことはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−98701号公報
【特許文献2】特開2009−227851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、カラー表示可能な電子ペーパーに適用した場合に、その光学特性を損なうことなく、電子ペーパーを構成している、コレステリック液晶や、電気泳動液や有色粒子などを、紫外線から有効に保護できる紫外線吸収機能を有する、電子ペーパーの性能維持および耐久性向上に資する光学用粘着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、(メタ)アクリル酸の炭素数が1〜18の(メタ)アクリルエステルモノマー(a)100質量部と、水酸基を含有する共重合可能なモノマー(b)0.1〜10質量部とからなる、酸価が0.1mgKOH/g以下であり、重量平均分子量が30万〜200万の共重合体であるアクリル樹脂(A)を100質量部と、少なくとも一般式(1)で表わされるトリアジン化合物を含む紫外線吸収剤(B)を0.1〜5質量部と、架橋剤(C)とを含む粘着剤組成物であり、かつ、該粘着剤組成物によって形成した粘着剤層が、その全光線透過率が95%以上で、塗工厚50μmの時のヘイズ値が1.0以下であることを特徴とするカラー表示可能な電子ペーパー用粘着剤組成物を提供する。
【0010】
一般式(1)

【0011】
(式中R1は、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数3〜8のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアルキルアリール基または炭素数7〜18のアリールアルキル基のいずれかをいい、また、これらの基は、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基で置換されていてもよく、また、上記の基および置換基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基またはイミノ基で中断されていてもよい。さらに上記の置換基および中断は組み合わされていてもよい。また、R2は、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数3〜8のアルケニル基を表す。)
【0012】
上記本発明の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。さらに、粘着剤層の波長365nmにおける光線透過率が1.0%以下で、波長380nmにおける光線透過率が3.0%以下である上記カラー表示可能な電子ペーパー用粘着剤組成物。一般式(1)で表わされるトリアジン化合物が、下記に示す化合物(I)〜(V)であるカラー表示可能な上記電子ペーパー用粘着剤組成物。
【0013】
化合物(I)

【0014】
化合物(II)

【0015】
化合物(III)

【0016】
化合物(IV)

【0017】
化合物(V)

【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、カラー表示可能な電子ペーパーに適用した場合に、その光学特性を損なうことなく、紫外線から、電子ペーパーを構成している、コレステリック液晶や、電気泳動液や、有色粒子を有効に保護できる優れた紫外線吸収機能を有する、電子ペーパーの性能維持および耐久性向上に資する優れた光学用粘着剤組成物の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための好ましい形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明の特許請求の範囲および明細書における「(メタ)アクリル」という用語は、「アクリル」および「メタクリル」の双方を意味し、また、「(メタ)アクリレート」という用語は、「アクリレート」および「メタクリレート」の双方を意味する。
【0020】
本発明の粘着剤組成物の特徴の一つは、酸価が0.1mgKOH/g以下であり、重量平均分子量が30万〜200万の特定の組成からなる共重合体であるアクリル樹脂に、少なくとも一般式(1)で表わされるトリアジン化合物を含む紫外線吸収剤(B)を特定の範囲内となる量で用いたことにある。さらに、本発明の粘着剤組成物の特徴は、該粘着剤組成物によって形成した粘着剤層が、その全光線透過率が95%以上で、塗工厚50μmの時のヘイズ値が1.0以下であるように構成したことにある。
【0021】
本発明者らは、カラー表示可能な電子ペーパーに適用した場合に、その光学特性を損なうことなく、紫外線の吸収機能を発揮し得る粘着剤組成物を提供することを目的として鋭意検討の結果、本発明を達成した。より詳しくは、本発明者らは、本発明の目的を達成できる粘着剤組成物を開発するため、種々の紫外線吸収剤について検討を行った。その過程で、先に述べた、特開2009−98701に記載されている特定のトリアジン化合物を粘着剤に適用することについての検討を行い、その結果、本発明に至った。すなわち、従来、粘着剤に紫外線の吸収機能を持たせようとした場合は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などを多量に併用しなければならなかったのに対し、酸価0.1mgKOH/g以下、分子量200万以下の特定のモノマー組成を有するアクリル樹脂に、上記特定のトリアジン化合物を含有させれば、該トリアジン化合物の添加量が少なくても光学特性に優れた粘着剤組成物となることを見出した。特に、カラー表示可能な電子ペーパーに要求される光学特性に優れるものとなることがわかった。
【0022】
まず、本発明の粘着剤組成物は、トリアジン化合物の添加量が少なく、しかも、使用するアクリル樹脂との相溶性に優れるため、該粘着剤組成物によって形成した粘着剤層は、その全光線透過率が95%以上で、塗工厚50μmの時のヘイズ値が1.0以下となる。一般的に、紫外線吸収剤を粘着剤組成物に使用する際に重要なことは、粘着剤組成物を構成する樹脂と、これに添加する紫外線吸収剤との相溶性である。すなわち、相溶性が悪く、添加量が多い場合は、耐久使用した場合に紫外線吸収剤がブリードアウトしてしまい、粘着剤層のヘイズ値も高くなり、光学用途の粘着剤組成物として、優れた性能のものとはならない。これに対し、本発明の粘着剤組成物は、紫外線吸収剤の添加量が少なくてすみ、しかも相溶性に優れるため、ブリードアウトせず、紫外線吸収性能を満たし、光学用粘着剤組成物として有用なものとなる。しかも、要求性能の高い、カラー表示可能な電子ペーパー用粘着剤組成物としても十分な機能を有するものとなる。
【0023】
先に述べたように、コレステリック液晶を用いたカラー表示可能な電子ペーパーは、青(410〜470nm)、緑(520〜580nm)、赤(600〜660nm)の各波長領域の光を反射することでカラー表示させているが、本発明者らの検討によれば、粘着剤層を、紫外線から液晶層などを保護するための保護層として機能させるためには、特に、粘着剤層における365nm〜380nmの波長領域における光線透過率が5%以下であることが望ましい。すなわち、この波長領域における光線透過率が5%よりも大きいと、粘着剤層を設けたとしても、耐久使用した場合において紫外線により偏光子が劣化して、偏光度が低下して表示性能が劣るものとなるので好ましくない。特に、上記した方式のカラー表示可能な電子ペーパーに粘着剤組成物を適用する場合は、粘着剤層が、365nmの波長における光線透過率が1.0%以下、380nmの波長における光線透過率が3.0%以下となるような、特定波長の紫外線を吸収する紫外線吸収層となる粘着剤組成物とすることが好ましい。
【0024】
本発明者らの検討によれば、電気泳動方式のカラー表示可能な電子ペーパーの場合は、特に、365nmの紫外線の照射による劣化があるため、粘着剤層を、紫外線から液晶層などを保護するための保護層として機能させるためには、粘着剤層の365nmにおける光線透過率が1.0%以下となるものであることが望ましい。また、電子ペーパー以外にもPDP、有機ELなど光学部材同士の貼り合わせにも紫外線吸収層が必要になってくるため、その際にもこの粘着剤層を用いた紫外線吸収フィルターとして使うこともできる。
【0025】
次に、本発明のカラー表示可能な電子ペーパー用粘着剤組成物の形成材料について説明する。本発明の粘着剤組成物は、官能基として水酸基を有する特定の組成のアクリル樹脂(A)を100質量部と、少なくとも一般式(1)で表わされるトリアジン化合物を含む紫外線吸収剤(B)(以下、単に紫外線吸収剤(B)ともいう)を0.1〜5質量部と、架橋剤(C)とを含んでなる。
【0026】
本発明で使用するアクリル樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸の炭素数が1〜18の(メタ)アクリルエステルモノマー(a)(以下、単に「モノマーa」という)と、水酸基を含有する共重合可能なモノマー(b)(以下、単に「モノマーb」という)を主モノマーとする、酸価が0.1mgKOH/g以下、重量平均分子量が30万〜120万の共重合体である。
【0027】
前記モノマーaとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独でも或いは組み合わせてもよい。
【0028】
前記モノマーbは、水酸基を含有する共重合可能なモノマーであり、カルボキシル基を含有しない。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどの水酸基含有モノマーなどが挙げられる。好ましくは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートであり、これらは単独でも或いは組み合わせてもよい。
【0029】
モノマーbの使用量は、モノマーaを100質量部としたときに0.1〜10質量部である。前記モノマーbの使用割合が0.1質量部未満であると、アクリル樹脂(A)を架橋剤(C)で架橋させたときに、架橋が不十分となり、粘着剤層の剥がれが発生してしまい、一方、前記モノマーbの使用割合が10質量部を超えると、本発明の特徴であるアクリル樹脂(A)の酸価が0.1mgKOH/gを超えてしまう。
【0030】
上記本発明のアクリル樹脂(A)は、さらに、芳香族モノマー単位を含有し得る。芳香族モノマーとは、構造中に芳香族基を含むモノマーであり、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。これら芳香族モノマーを共重合することによって形成した粘着剤層の屈折率および複屈折を調整でき、電子ペーパーに用いた際に、基材間の屈折率の差が小さくなり、全反射が少なくなることで光透過性が上がり、表示性能も向上する、などの効果が得られる。芳香族モノマーを使用する場合の芳香族モノマーの使用量は、前記モノマーa100質量部あたり5〜20質量部の範囲が好ましい。
【0031】
上記本発明のアクリル樹脂(A)の重量平均分子量(GPC測定、標準ポリスチレン換算)は30万〜200万である。好ましくは、30万〜120万であり、より好ましくは、50万〜100万である。アクリル樹脂(A)の重量平均分子量が30万未満であると、粘着剤組成物とし、かつ、粘着剤層を形成した場合、その粘着剤層の耐久性が不十分となる。一方、アクリル樹脂(A)の重量平均分子量が200万を超えると、上記粘着剤層の透過率制御が難しくなる。
【0032】
また、本発明のアクリル樹脂(A)は、その酸価が0.1mgKOH/g以下であることを特徴とする。好ましくは0.05mgKOH/g以下である。上記酸価が0.1mgKOH/gを超えると、アクリル樹脂(A)と後述する紫外線吸収剤(B)との相溶性が低下し、耐久性試験において紫外線吸収剤がブリードアウトしてしまったり、粘着剤層のヘイズ値が高くなるなど、光学用粘着剤としての性能が得られない場合がある。
【0033】
また、本発明の光学用粘着剤組成物に紫外線吸収性能を持たせるために、少なくとも下記一般式(1)で表わされるトリアジン化合物を含む紫外線吸収剤(B)を用いることを必須の要件とする。下記一般式(1)で表わされるトリアジン化合物として好ましいものは、例えば、以下の化学式(I)〜(V)で示される化合物が挙げられる。その他の市販品としては、アデカスタブLA−46(株式会社ADEKA製)が挙げられる。下記一般式(1)のトリアジン化合物は、上述したアクリル樹脂(A)に対しての相溶性がよく、少量でもその効果を発揮する。これらを用いて形成された粘着剤層は、高波長域の紫外線を効率良く吸収することが可能となり、添加量を増やす必要がないため、ブリードアウトしない優れた光学用粘着剤を得ることができる。
【0034】
一般式(1)

【0035】
(式中R1は、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数3〜8のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアルキルアリール基または炭素数7〜18のアリールアルキル基のいずれかをいい、また、これらの基は、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基で置換されていてもよく、また、上記の基および置換基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基またはイミノ基で中断されていてもよい。さらに上記の置換基および中断は組み合わされていてもよい。また、R2は、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数3〜8のアルケニル基を表す。)
【0036】
化合物(I)

【0037】
化合物(II)

【0038】
化合物(III)


【0039】
化合物(IV)

【0040】
化合物(V)

【0041】
上記、紫外線吸収剤(B)の使用量は、上記アクリル樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜5質量部である。好ましくは、0.5〜2.0質量部である。前記紫外線吸収剤(B)の使用量が0.1質量部未満であると、十分な紫外線吸収能を本発明の粘着剤組成物に付与することができず、一方で、5質量部を超えると、添加量が多くなりすぎるため、耐久性試験後に紫外線吸収剤がブリードアウトしてしまい、ヘイズ値も高くなるため光学用粘着剤組成物としての性能を満たさない。
【0042】
本発明の効果の範囲内であれば、紫外線吸収剤(B)は、上記一般式(1)で表わされるトリアジン化合物とともに、さらに、従来からの紫外線吸収剤を併用することができる。従来からの紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、置換アクリロニトリル系、上記一般式(1)以外のトリアジン系の紫外線吸収剤であり、これらの紫外線吸収剤を上記一般式(1)のトリアジン系紫外線吸収剤に一種以上併用させて使うことができる。
【0043】
上記一般式(1)のトリアジン系紫外線吸収剤を用いないで、従来の紫外線吸収剤のみを一種以上併用した場合、添加する紫外線吸収剤の種類や量を増やさなければ、本発明の効果が得られず、また、添加量が増えることで、粘着剤シート表面からのブリードアウトなどが問題となる。本発明は、上記一般式(1)で示されるトリアジン化合物を紫外線吸収剤(B)として用いることを必須の要件とすることで、従来の紫外線吸収剤を併用した場合であっても、粘着剤中に含まれる紫外線吸収剤(B)の量を少なくすることが可能となり、これにより高波長域の紫外線を効率良く吸収することができ、結果としてブリードアウトしない光学用粘着剤組成物を提供することができる。ゆえに、上記一般式(1)で示されるトリアジン化合物に従来からの紫外線吸収剤を併用する場合であっても、紫外線吸収剤(B)の使用量は、上述の通り、アクリル樹脂(A)100質量部に対して、5質量部以下である必要がある。
【0044】
本発明に用いる一般式(1)のトリアジン系紫外線吸収剤と併用可能なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3−イソブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−イソブチル−5'−プロピルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−アミル−5'−イソブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(1,1,3,3−テトラメチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。市販品としては、ケミソーブ73、74、78、79(ケミプロ化成株式会社製)などが挙げられる。
【0045】
また、本発明に用いる一般式(1)のトリアジン系紫外線吸収剤と併用可能なベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒロドキシ−4−オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0046】
さらに、本発明に用いる一般式(1)のトリアジン系紫外線吸収剤と併用可能な一般式(1)以外のその他トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−プロピルオキシフェニル)−6−(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス[2−ヒドロキシ−4−(3−ブトキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0047】
上記本発明で使用する架橋剤(C)は、アクリル樹脂(A)を構成するモノマーbの水酸基と反応し、架橋構造を形成し得るものであり、例えば、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物、1分子中にグリシジル基を2個以上有するポリグリシジル化合物、1分子中にアジリジニル基を2個以上有するポリアジリジン化合物、1分子中にオキサゾリン基を2個以上有するポリオキサゾリン化合物および金属キレート化合物から選ばれる少なくとも1種である。
【0048】
具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどとトリメチロールプロパンなどとのアダクト体、イソシアヌレート化合物、ビュレット型化合物、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどのポリイソシアネート化合物、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンガルボキサミド)、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートなどのポリグリシジル化合物、2,2’−p−フェニレン−ビス−(1,3−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(1,3−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)などの低分子量ポリ(1,3−オキサゾリン)化合物、2−イソプロペニル−1,3−オキサゾリンなどの1,3−オキサゾリン基含有ビニル系単量体の単独重合体、または該1,3−オキサゾリン基含有ビニル系単量体を共重合可能な各種のビニル系単量体と共重合させた、1,3−オキサゾリン基を含有するビニル系重合体、アルミニウムキレート、ジルコニウムキレート、チタニウムキレートなどの金属キレート化合物などが挙げられ、特に、ポリイソシアネート化合物、ポリグリシジル化合物、金属キレート化合物が好ましい。これらの架橋剤は、1種類もしくは2種類以上の併用で使用することが可能である。
【0049】
架橋剤(C)の使用量は、アクリル樹脂(A)100質量部に対して0.01〜2質量部であるのが好ましい。架橋剤(C)の使用量が0.01質量部未満であると、粘着剤(樹脂)の架橋密度が下がり、耐久性が劣るので好ましくない。また、架橋剤(C)の使用量が2質量部を超えると、粘着剤(樹脂)の架橋密度が上がり過ぎて、形成された粘着剤層が剥がれやすくなるので好ましくない。
【0050】
本発明のアクリル樹脂(A)は、通常の溶液重合、塊状重合、乳化重合または懸濁重合などにより製造することができるが、上記アクリル樹脂(A)が溶液として得られる溶液重合により製造することが好ましい。上記アクリル樹脂(A)が溶液として得られることにより、そのまま本発明の粘着剤組成物の製造に使用することができる。この溶液重合に使用する溶剤としては、例えば、酢酸エチル、トルエン、n−ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトンなどの有機溶剤を挙げることができる。
【0051】
また、重合に使用する重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウリルパーオキシドなどの過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリルなどのアゾビス化合物または高分子アゾ重合開始剤などを挙げることができ、これらは単独でもまたは組み合わせても使用することができる。また、上記重合においては、アクリル樹脂(A)の分子量を調整するために従来公知の連鎖移動剤を使用することができる。
【0052】
本発明の粘着剤組成物は、さらに粘着力を調整する目的など、必要な特性に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、種々の添加剤を配合してもよい。例えば、テルペン系、テルペン−フェノール系、クマロンインデン系、スチレン系、ロジン系、キシレン系、フェノール系または石油系などの粘着付与樹脂、メルカプト基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤などの公知のシランカップリング剤、アルキル置換アクリルアミドモノマー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、顔料などを配合することができる。また、本発明の粘着剤組成物の製造方法自体は公知の方法でよく特に限定されないが、有機溶剤を含んだ溶液形態であることが好ましく、この場合、粘着剤層の形成が容易となる。
【0053】
上述の通り、本発明の粘着剤組成物は、特にカラー表示可能な電子ペーパー用の粘着剤として適しており、本発明の粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層は、紫外線に対して液晶層の保護に優れたカラー表示可能な電子ペーパーを提供できる。すなわち、前述したコレスティック液晶を用いた電子ペーパーにおいては、電子ペーパーと、カラー表示用の赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の液晶層および/または基板を貼り合わせる場合や、最上面のカバーフィルムおよび最下面の光吸収層を、上記各色の液晶層および/または基板に貼り合わせる場合などに、本発明の粘着剤組成物を用いることができる。これにより、コレスティック液晶を用いたカラー表示可能な電子ペーパーの紫外線による表示性能の劣化を防ぐことができる。また、前述した電気泳動方式のカラー表示可能な電子ペーパーでは、例えば、本発明の粘着剤組成物を、上記電子ペーパーを構成する透明電極の固定に用いることにより、電気泳動液および有色粒子を紫外線から保護することが可能となる。
【0054】
本発明の粘着剤組成物は、通常使用されている塗布装置、例えば、ロール塗布装置などを用いて、上記電子ペーパーの片面或いは両面に塗工し、塗工層を乾燥することにより粘着剤層を形成する。また、本発明の粘着剤組成物を、まず、シリコーン樹脂などの剥離剤を表面にコートしたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)などの保護フィルムに粘着剤組成物を塗布して乾燥し粘着剤層を形成した後に、該粘着剤層に上記電子ペーパーを貼り合わせる方法でも使用できる。
【0055】
本発明の粘着剤組成物の塗布量は、乾燥後の粘着剤層の厚さが、10〜50μmとなる程度であることが好ましい。特に、上記粘着剤層の50μm塗工厚でのヘイズ値が1.0以下、好ましくは0.5以下とすることにより、電子ペーパー用として優れた粘着剤層となる。
【実施例】
【0056】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中「部」とあるのは質量基準である。
<アクリル樹脂(A)の調製>
[A−1〜5]
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、この反応装置内の空気を窒素ガスに置換した。その後、この反応装置中に、ブチルアクリレートを100部、2−ヒドロキシエチルアクリレートを1.0部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを0.1部および反応溶剤として酢酸エチルを50部加えた。これを攪拌させながら、窒素ガス気流中において、65℃で7時間反応させた後、酢酸エチルで希釈して重量平均分子量80万のアクリル樹脂A−1の溶液を固形分30%、酸価0.04mgKOH/gで得た。同様にして表1に記載のモノマー組成でアクリル樹脂A−2〜5の溶液を得た。
【0057】

【0058】
BA:ブチルアクリレート
MA:メチルアクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
AA:アクリル酸
【0059】
上記において、重量平均分子量(Mw)の値は、GPC(GEL Permeation Chromatography)法により測定したポリスチレン換算分子量である。詳しくは、重合体を常温で乾燥させて得られた塗膜をテトラヒドロフランに溶解し、高速液体クロマトグラフ(島津製作所製、LC−10ADvp、カラムKF−G+KF−806×2本)で測定し、ポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0060】
上記において、酸価(mgKOH/g)の値はJIS K0070に準拠した中和滴定法により測定した値である。詳しくは試料を溶剤に溶かし、指示薬としてフェノールフタレインを加え、水酸化カリウム−エタノール溶液で滴定して酸価(mgKOH/g)を求めた。
【0061】
<粘着剤組成物、シートの作製および評価>
[実施例1〜9、比較例1〜5]
アクリル樹脂A−1の固形分100部に対して、コロネートLを0.1部、紫外線吸収剤である化合物(I)を2.0部混合して実施例1の粘着剤組成物(酸価:0.04mgKOH/g)とした。該組成物をシリコーン樹脂コートされたPETフィルム上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶媒を除去し、厚さ50μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層を形成した面に、100μm厚のPETフィルムを貼り合わせた後、23℃、50%RHの雰囲気で7日間養生することにより、実施例1のシートを作製した。該実施例1と同様にして表2に記載の成分を混合して実施例2〜9および比較例1〜5の粘着剤組成物およびシートを得た。合わせて、酸価(mgKOH/g)についても表2に記載する。
【0062】

【0063】
アデカスタブLA−46:(株)ADEKA製 トリアジン系紫外線吸収剤
ケミソーブ71:ケミプロ化成(株)製 ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
ケミソーブ73:ケミプロ化成(株)製 ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
ケミソーブ74:ケミプロ化成(株)製 ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
ケミソーブ78:ケミプロ化成(株)製 ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
ケミソーブ79:ケミプロ化成(株)製 ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
ケミソーブ112:ケミプロ化成(株)製 ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
コロネートL:日本ポリウレタン工業(株)製 ポリイソシアネート化合物
タケネートD−110N:三井化学(株)製 キシレンジイソシアネート化合物
タケネートD−120N:三井化学(株)製 水添キシレンジイソシアネート化合物
【0064】
得られたシートを後述する試験方法にてヘイズ値、全光線透過率、光線透過率、UVAブリードアウトの評価を行った。実施例の評価結果は全ての項目で良好であった。評価結果を表3に示す。
【0065】
[ヘイズ値]
実施例および比較例のシートを、ガラス上に貼り合わせ、日本電色工業製 NDH5000Wヘーズメーターによって、ヘイズ値を測定した。
【0066】
[全光線透過率]
実施例および比較例のシートを、ガラス上に貼り合わせ、日本電色工業製 NDH−5000Wヘーズメーターによって、全光線透過率を測定した。
【0067】
[光線透過率]
試料をフィルムセパレーターから剥がし、日立製 分光光度計100−40型によって、365nmおよび380nmの波長の透過率を測定した。
【0068】
[UVAブリードアウト]
試料作成後23℃50%RH×7日間養生した後、シート表面にUVAがブリードアウトして析出していないか目視で確認する。
【0069】
・評価基準
◎:試料表面にUVAのブリードアウトが確認されない。
○:試料表面にUVAのブリードアウトが僅かに確認された。
×:試料表面にUVAのブリードアウトが確認された。
【0070】

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、カラー表示可能な電子ペーパーに適用した場合に、その光学特性を損なうことなく、紫外線から、電子ペーパーを構成している、コレステリック液晶や、電気泳動液や、有色粒子を有効に保護できる優れた紫外線吸収機能を有する、電子ペーパーの性能維持および耐久性向上に資する優れた光学用粘着剤組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸の炭素数が1〜18の(メタ)アクリルエステルモノマー(a)100質量部と、水酸基を含有する共重合可能なモノマー(b)0.1〜10質量部とからなる、酸価が0.1mgKOH/g以下であり、重量平均分子量が30万〜200万の共重合体であるアクリル樹脂(A)を100質量部と、少なくとも一般式(1)で表わされるトリアジン化合物を含む紫外線吸収剤(B)を0.1〜5質量部と、架橋剤(C)とを含む粘着剤組成物であり、かつ、該粘着剤組成物によって形成した粘着剤層が、その全光線透過率が95%以上で、塗工厚50μmの時のヘイズ値が1.0以下であることを特徴とするカラー表示可能な電子ペーパー用粘着剤組成物。
一般式(1)

(式中R1は、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数3〜8のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアルキルアリール基または炭素数7〜18のアリールアルキル基のいずれかをいい、また、これらの基は、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基で置換されていてもよく、また、上記の基および置換基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基またはイミノ基で中断されていてもよい。さらに上記の置換基および中断は組み合わされていてもよい。また、R2は、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数3〜8のアルケニル基を表す。)
【請求項2】
さらに、前記粘着剤層の波長365nmにおける光線透過率が1.0%以下で、波長380nmにおける光線透過率が3.0%以下である請求項1に記載のカラー表示可能な電子ペーパー用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表わされるトリアジン化合物が、下記に示す化合物(I)〜(V)である請求項1または2に記載のカラー表示可能な電子ペーパー用粘着剤組成物。
化合物(I)

化合物(II)

化合物(III)

化合物(IV)

化合物(V)


【公開番号】特開2011−175053(P2011−175053A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38181(P2010−38181)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000105877)サイデン化学株式会社 (39)
【Fターム(参考)】