説明

電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品

【課題】 野菜具材入りのスープに麺が浸され卵凝固物がトッピングされた卵とじ様麺料理を電子レンジ加熱で得るための電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品に関し、更に詳しくは、野菜具材の食感がシャキシャキとしてムラ無く味付けされ、しかも、卵凝固物がふんわりとした食感の卵とじ様麺料理が電子レンジ加熱で得られる電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を提供する。
【解決手段】 施蓋した容器3内の底部側より生野菜4、その上部に麺5、さらに最上部に卵凝固物7を包埋している0.2〜3cmの大きさのクラッシュされたゼラチンスープ固化物6が載置され収容されている電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜具材入りのスープに麺が浸され卵凝固物がトッピングされた卵とじ様麺料理を電子レンジ加熱で得るための電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品に関し、更に詳しくは、野菜具材の食感がシャキシャキとしてムラ無く味付けされ、しかも、卵凝固物がふんわりとした食感の卵とじ様麺料理が電子レンジ加熱で得られる電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品に関する。
【背景技術】
【0002】
葉物や根菜類等の生野菜と、うどんや中華麺等をスープと共に電子レンジ加熱が可能な容器に入れた電子レンジ加熱用の容器詰め即席麺食品がある。これらは、容器に入れたまま短時間電子レンジ加熱するだけで麺料理が得られるので、調理の手間がかからず便利であり、また、生野菜を短時間電子レンジ加熱するので野菜がシャキシャキとした美味しい食感に調理されるのが特徴である。この電子レンジ加熱用の容器詰め即席麺食品に用いるスープとしては、輸送時にはスープがこぼれないように凝固し、電子レンジ加熱時には溶けてスープになるように、通常、ゼラチンで固めたスープが使用されている。
【0003】
しかしながら、このゼラチンで固めたスープは、大きさが大きいと溶けるまでに時間がかかってしまうため、長時間の電子レンジ加熱では、具材の野菜等をスープで煮込む時間は確保できるものの、シャキシャキとした美味しい食感とならないという問題があった。また、生野菜が麺の上に載せられていると、生野菜がスープに浸らない箇所が出てくるため味付けにムラができるという問題があった。
【0004】
ところで、麺料理には、野菜等の具材入りスープに麺を浸したものに溶き卵を流しいれて加熱凝固させた卵とじ麺料理がある。この卵とじ麺料理は、卵凝固物のふんわりとした食感が特徴であるが、卵凝固物は熱により食感に影響を受けやすく、わずかでも熱がかかりすぎるとふんわりとした食感が損なわれて硬い食感となってしまう。したがって、このような溶き卵の凝固物と、野菜具材入りの麺料理を得るための電子レンジ加熱用の容器詰め即席食品は、生野菜についてはある程度加熱してスープの味で味付けする必要がある一方、シャキシャキとした美味しい食感に調理する必要があり、更に卵凝固物は短時間の電子レンジ加熱であっても卵凝固物が硬い食感となってしまうため、両者をそれぞれ適切な食感に調理することは困難である。
【0005】
【特許文献1】特開平2007−20455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、野菜具材入りのスープに麺が浸され卵凝固物がトッピングされた卵とじ様麺料理を電子レンジ加熱で得るための電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品であって、野菜具材の食感がシャキシャキとしてムラ無く味付けされ、しかも、卵凝固物がふんわりとした食感の卵とじ様麺料理が電子レンジ加熱で得られる電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、生野菜、卵凝固物及びゼラチンスープ固化物を特定方法で容器に詰めるならば、意外にも電子レンジ加熱で野菜の食感がシャキシャキとして味付けにムラが無く、しかも、卵凝固物がふんわりとした食感の卵とじ様麺料理が得られることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)施蓋した容器内の底部側より生野菜、その上部に麺、さらに最上部に卵凝固物を包埋している0.2〜3cmの大きさのクラッシュされたゼラチンスープ固化物が載置され収容されている電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品、(2)前記ゼラチンスープ固化物のゼラチン含有量が1〜5%である(1)記載の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品、である。
【0009】
なお、ゼラチンで固めたスープとしては、例えば、特開2007−20455号公報(特許文献1)において、ソーセージ及び/又はソーセージ様食肉加工品が、ゼラチンでゲル状に固化したスープに包埋されるように容器内に収容された電子レンジ加熱用スープが提案されている。ここで用いる具材入りゼラチンスープ固化物は、ソーセージ等を含むスープ全体を袋ごとゼラチンで固めることにより具材であるソーセージ等が電子レンジ加熱により破裂することを防止する技術である。そのため、特許文献1は、本発明の効果を有する電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様面食品については一切検討されていない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品によれば、電子レンジ加熱するだけで、野菜具材の食感がシャキシャキとしてムラ無く味付けされ、しかも、卵凝固物がふんわりとした食感の卵とじ様麺料理が得られる。よって、電子レンジ加熱用の容器詰め即席麺食品の更なる需要拡大が期待出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
【0012】
本発明の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品は、流通や保管ができるように容器入りとしてあり、食する時に容器入りのまま電子レンジ加熱することにより、卵とじ様麺料理を得るようにしたものである。
【0013】
本発明において、電子レンジ加熱とは、一般に市販されている家庭用又は業務用の電子レンジを使用して、所謂マイクロ波加熱を行うことであり、加熱時間としては、内容量によるが、一食分の場合500〜600Wの電子レンジで約3〜7分である。
【0014】
また、前記本発明の卵とじ様麺食品とは、野菜具材入りのスープに麺が浸され卵凝固物がトッピングされた麺料理であり、例えば、溶き卵の凝固物とタマネギ等の野菜を含むつゆにうどんやそばを浸した和風の麺料理の他、これらスープや麺として中華料理食材を用いたラーメン等の中華風の麺料理、同様に洋風の食材を用いたスープパスタ等の洋風の麺料理等が挙げられる。
【0015】
本発明の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品は、施蓋した容器内の底部より生野菜、その上部に麺、さらに最上部に卵凝固物を包埋している0.2〜3cmの大きさのクラッシュされたゼラチンスープ固化物が載置され収容されていることを特徴とする。このような本発明の一実施例としては、図2に示す電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品1が挙げられる。図中、符号2は蓋、3は容器、3bは容器の底部、4は生野菜、5は麺、6はゼラチンで固化したスープ、7は卵凝固物を示している。
【0016】
用いる容器3及び蓋2としては、電子レンジ加熱耐性を備える材質であって、カップ状又は深皿状等に成形した施蓋可能な容器及び蓋を用いることができ、例えば、図1に示す容器3及び蓋2が挙げられる。このような加熱耐性を備える材質としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、耐水加工紙等が挙げられる。なお、加熱による容器内圧力の増加を防ぐために、容器又は蓋には容器内に通ずる通気孔を穿ってある形状のものを使用することが好ましく、このような通気孔としては、例えば、図2に示す通気孔8が挙げられる。
【0017】
一方、使用する生野菜4は、卵とじ様麺食品のメニューに応じて任意に選択したものであればよく、例えば、白菜、人参、水菜、筍、玉葱、長葱、大根等が挙げられる。これらの生野菜は、食べやすいように必要に応じてカットしたものを使用しても良い。
【0018】
また、前記麺5としては、特に制限は無く、例えば、うどん、そば、そうめん、冷麦、きしめん、ロングパスタ、ショートパスタ、ビーフン、フォー等が挙げられる。これらは、短時間の電子レンジにより喫食可能となるように、茹で麺を用いることが好ましい。
【0019】
更に、前記ゼラチンスープ固化物6とは、卵凝固物の具材を除くスープ部分がゼラチンで固化されているものであり、本発明においては、当該ゼラチンスープ固化物が0.2〜3cmの大きさにクラッシュ、つまり、粉砕されている。ここで、前記スープとしては、麺料理の種類により必要な味付けに調味したものであればよく、例えば、和風の麺類である場合には、かつお、昆布等から抽出しただし汁に、醤油、味噌、その他の調味料を加えたもの等であり、中華風の麺類である場合には、チキン、とんこつ等から抽出しただし汁に、塩、砂糖、その他の調味料等を加えたものである。スープを固化するゼラチンとしては、アルカリ処理ゼラチンや酸処理ゼラチン等、製造方法や原料の由来によって各種のものがあるが、通常のゲル化機能を有する食用のゼラチンであればいずれのゼラチンであってもよい。
【0020】
また、前記ゼラチンスープ固化物6は、卵凝固物7を包埋している。ここで、卵凝固物とは、溶き卵を加熱により凝固させたものであって、当該凝固物としては、具体的には、全卵、卵黄、卵白やこれらの混合物等の卵原料に、必要に応じて、乳製品や澱粉等を加えた液卵混合液を加熱凝固したものである。
【0021】
上述の本発明の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品は、電子レンジ加熱することにより、卵とじ様麺料理が得られる。図2に示すように加熱前の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品1は、最上部に特定の大きさ、つまり、0.2〜3cmの大きさにクラッシュしたゼラチンスープ固化物6が載置されている。このゼラチンスープ固化物6は、3cm以下の大きさにクラッシュされているため、短時間の電子レンジ加熱で融解して液体スープとなる。この融解した液体スープは、容器の底部3bに移行し、麺5及び野菜4がスープに浸漬した状態となり、ゼラチンスープ固化物に包埋していた卵凝固物7はそのまま麺上に残るため外観状卵とじ様となる。また、卵凝固物7は、0.2cm以上の大きさのゼラチンスープ固化物に包埋した状態で電子レンジ加熱が開始されることから、電子レンジにより過度の熱がかかって硬い食感となることが防止される。このような電子レンジ加熱後の開蓋した状態を図3に示す。図中、符号4は加熱された生野菜、5は麺、7は卵凝固物、9は加熱により融解して流動性を呈するスープを示している。
【0022】
一方、加熱前の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品の容器底部3bに敷いた生野菜4は、その上部に載置された麺5により覆われた状態となっているため、電子レンジ加熱がされると発生した水蒸気が満たされた雰囲気下で短時間の電子レンジ加熱によりシャキシャキとした食感を保ちつつ調理される。そして、容器底部に敷いた野菜は、加熱にともなってゼラチンスープ固化物が融解したスープに浸漬状態となり、しかも、ゼラチンスープ固化物は特定の大きさにクラッシュされていて短時間で融解するので、短時間の電子レンジ加熱であっても調味付けのムラが生じ難い。また、麺5は、電子レンジ加熱により適度に加熱されて喫食状態となる。
【0023】
このように、本発明の即席卵とじ様麺食品によれば、適切な加熱条件が異なる卵凝固物や生野菜等の具材を、麺やスープ等と同時に電子レンジで短時間加熱するにも拘らず、野菜具材の食感がシャキシャキとしてムラ無く味付けされ、しかも、卵凝固物がふんわりとした食感の卵とじ様麺料理が得られる。
【0024】
前記ゼラチンスープ固化物の大きさに関し、ゼラチンスープ固化物の大きさが0.2cm未満であると、電子レンジで加熱した時に加熱されすぎてしまい卵凝固物が硬くなるため好ましくない。一方、ゼラチンスープの大きさが3cmより大きいとゼラチンスープが融解するまでに時間がかかってしまい、野菜の味付けが均等にならずムラができてしまうため好ましくない。また、前記ゼラチンスープの大きさが2cm以下であると、野菜の味付けによりムラがなく、好ましい。
【0025】
ゼラチンスープ固化物におけるゼラチン含有量は、スープに対して1〜5%が好ましく、1〜3%がより好ましい。ゼラチン含有量が1%以下であると、ゲル化した時の硬さが足りず、麺の上に載置した際にだれて麺の下に流れ落ち易い傾向がある。一方、ゼラチン含有量が5%以上であると、硬すぎてしまうため加熱時に時間がかかったり、加熱融解したスープの粘度が高すぎたりする場合があり好ましくない。
【0026】
本発明において、使用する生野菜の量としては、麺100部に対して生野菜が好ましくは5〜200部、より好ましくは20〜150部であることが好ましい。前記範囲よりも生野菜の量が少なすぎると野菜の味を充分に楽しむことができず料理として好ましくない。一方、前記範囲よりも生野菜の量が多いと、麺とのバランスが崩れて麺料理として好ましくない。
【0027】
また、本発明で使用するスープの量については、麺100部に対して20〜500部であることが好ましく、50〜300部がより好ましい。前記範囲よりもスープの量が少ないと、麺全体がスープに浸り難く、麺をスープで味付けし難い。一方、前記範囲よりもスープの量が多いと、麺とのバランスが崩れて麺料理として好ましくない。
【0028】
卵凝固物の量としては、麺100部に対して1〜100部が好ましく、5〜50部がより好ましい。前記範囲よりも卵凝固物の量が少ないと、卵凝固物が少なすぎてしまい、卵とじ様の外観が得られ難い。一方、前記範囲よりも卵凝固物の量が多いと、卵凝固物が多すぎてしまい、麺とのバランスが崩れて麺料理として好ましくない。
【0029】
電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品に充填する麺の量は、例えば、一食分の量であれば、例えば、50〜200g程度とすればよい。
【0030】
なお、本発明の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品においては、上述した卵凝固物、生野菜、麺、スープ以外の食品素材も麺料理のメニューに応じて任意に使用できる。例えば、乾燥野菜やボイル済みの野菜、食肉類、魚介類、ハム、ベーコン等の食肉加工品、竹輪、カマボコ、はんぺん等の魚肉加工品、きのこ類、のり、胡麻等を使用することができる。
【0031】
次に、本発明の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品の代表的な製造方法を説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
本発明で用いる卵凝固物を包埋しているクラッシュされたゼラチンスープ固化物は、例えば以下のように製造できる。まず、卵凝固物入りのスープをゼラチンで固化する。具体的には、例えば、調味料やだし等のスープ原料を加熱してスープを調製した後、この品温70〜100℃程度のスープに、液全卵等の卵原料に澱粉等の添加材を加えた液卵混合液を流しいれて、スープ中で液卵混合液を凝固させる。続いて、この卵凝固物を含むスープにゼラチンを加えて品温15℃以下に冷却することにより、固化させることができる。また、別の方法としては、70〜100℃沸騰水中に、液卵混合液を流しいれて撹拌しながら沸騰水中で液卵混合液を凝固させた後、濾し器等で液切りをして卵凝固物を得、この卵凝固物をスープに入れてゼラチンで固化する方法等が挙げられる。なお、卵凝固物の原料である前記液卵混合液においては、全卵、卵黄、卵白やこれらの混合物等の卵原料を液卵混合液に対して生換算で50〜100%使用すると適度な硬さに凝固させることができる。また、液卵混合液を加熱凝固する際には、加熱液の撹拌条件を調節する等して、卵凝固物の大きさを0.1〜3cm程度とすると、卵とじ様麺料理としての外観が良く好ましい。
【0033】
次に、ゼラチンで固化したスープを0.2〜3cm、好ましくは0.2〜2cmの大きさにクラッシュする。
クラッシュする方法は、特に制限は無く、前記特定の大きさとなるようにしゃもじやヘラ等で砕くか、ミキサー等で砕くことにより、クラッシュしたゼラチンスープ固化物を製造することができる。
【0034】
本発明の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品は、以上のようにして調製した卵凝固物を包埋しているクラッシュされたゼラチンスープ固化物、麺及び生野菜を特定の順序で容器詰めして製造する。すなわち、図2に示すように容器3の底3bに、必要により截断処理を行った生野菜4を敷き、その上部に麺5、更に最上部に卵凝固物7を包埋しているクラッシュされたゼラチンスープ固化物6を載置し、容器に蓋2をすればよい。なお、本発明においては、これら生野菜、麺及びクラッシュしたゼラチンスープ固化物を特定の順序で容器内に載置するが、本発明の効果を損なわない限り、例えば、ネギ等の生野菜の一部をゼラチンスープ固化物の上に更にトッピングしたり、卵凝固物、生野菜、麺、スープ以外の上述した食肉加工品や魚肉加工品等の食品素材を麺料理の種類にあわせて、適切な位置に載置したりしてもよい。
【0035】
以下、本発明の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を、実施例、比較例および試験例に基づき詳述する。なお、本発明の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
[実施例1]
下記の方法にて、本発明にかかる電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を製造した。
【0037】
(1)ゼラチンスープ固化物の製造
下記配合によりゼラチンスープ固化物を製造した。すなわち、まず、蒸気加熱式の二重釜に濃縮液体かつおだし、うすくち醤油、食塩及び清水を投入し、撹拌しながら品温90℃まで加熱してスープを得た。続いて、この90℃まで加熱したスープ中に液全卵を投入して撹拌し、スープ中で液全卵を凝固させた後、更に、ゼラチンを加えて卵凝固物を含むスープを得た。得られたスープの質量は100kgであった。また、卵凝固物の大きさは、0.1〜1cmであった。
【0038】
次に、得られた卵凝固物を含むスープをバットに入れて冷蔵庫(雰囲気温度5℃)に収容して品温が約5℃になるまで冷却して固化させた。続いて、このゼラチンで固化したスープをしゃもじで0.2〜2cmの大きさに粉砕し、卵凝固物を包埋しているクラッシュしたゼラチンスープ固化物を得た。
【0039】
<配合> (単位:kg)
液全卵(殺菌処理品) 30
濃縮液体かつおだし 2
うすくち醤油 5
食塩 2
ゼラチン 2
清水 59
合計 100
【0040】
(2)食材の準備
卵凝固物を含んだスープ以外の食材として、茹でうどん、約1cm幅で短冊状にカットした生白菜、約5mm幅にスライスカットした生玉葱、約1cm幅で短冊状にカットした生人参、約5mm幅にスライスカットした生長葱を用意した。
【0041】
(3)蓋付き容器への収納
図1に示す電子レンジ加熱が可能な蓋付き容器3(材質:ポリプロピレン)に、上記(1)で得られたクラッシュしたゼラチンスープ固化物及び(2)で用意した食材を収容した。すなわち、図2に示す通り、まず、生白菜、生玉葱、生人参、生長葱各20gを容器3に充填した後、その上面に載置するように茹でうどん100gを充填し、更に、うどんの上面にクラッシュしたゼラチンスープ固化物200gを充填し、最後に蓋2で容器3を密閉し、本実施例の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品1を得た。
【0042】
(4)卵とじ様麺食品の調理
上記(3)で得られた電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品1を、10℃の冷蔵庫内で24時間保管した後、出力500Wの電子レンジを用いて5分間加熱することにより、卵とじ様麺料理を得た。得られた卵とじ様麺料理は、図3に示すように、ゼラチンスープ固化物6は完全に流動化してスープ状となっており、うどんの上には加熱凝固卵がふんわりと残っていて、卵とじ様のうどんとなっていた。また、試食したところ、卵凝固物はふんわりとして好ましい食感であり、野菜はシャキシャキとした食感で味付けにムラがなく好ましかった。また、麺も適度な硬さであり好ましく、全体として大変美味しい卵とじ様のうどんであった。
【0043】
[実施例2]
(1)ゼラチンスープ固化物の製造
製造工程を変えた他は実施例1(1)と同じ配合でゼラチンスープ固化物を製造した。すなわち、まず、90℃に加熱した湯中に、液全卵を流しいれて撹拌しながら湯中で液全卵を凝固させた後、濾し器等で液切りをして卵凝固物を製造した。次に、蒸気加熱式の二重釜に濃縮液体かつおだし、うすくち醤油、食塩及び清水を投入し、撹拌しながら品温90℃まで加熱してスープを得た。続いて、この90℃まで加熱したスープ中に予め湯中で加熱凝固した前記卵凝固物を投入して撹拌し、更に、ゼラチンを加えて卵凝固物を含むスープを得た。得られたスープの質量は100kgであった。また、卵凝固物の大きさは、0.1〜1cmであった。この卵凝固物を含むスープを実施例1と同様にして、冷却して固化させた後、しゃもじで0.2〜2cmの大きさに粉砕し、卵凝固物を包埋しているクラッシュしたゼラチンスープ固化物を得た。
【0044】
(2)食材の準備
実施例1と同様にして、茹でうどんと、生白菜、生玉葱、生人参及び生長葱のカット品とを用意した。
【0045】
(3)蓋付き容器への収納
実施例1に準じて、生白菜、生玉葱、生人参、生長葱各20gを充填した後、その上面に載置するように茹でうどん100gを充填し、更に、うどんの上面に上記(1)で得られたクラッシュしたゼラチンスープ固化物200gを充填し、最後に蓋で容器を密閉し、本実施例の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を得た。
【0046】
(4)卵とじ様麺食品の調理
上記(3)で得られた電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を、10℃の冷蔵庫内で24時間保管した後、出力500Wの電子レンジを用いて5分間加熱することにより、卵とじ様麺料理を得た。
【0047】
[実施例3]
まず、実施例1の(1)と同様にして、卵凝固物を含むスープをバットに入れて冷蔵庫に収容して冷却して固化させた。続いて、この卵凝固物を包埋したゼラチンスープ固化物を包丁で2.5×2.5×2.5cm角にカットした。
【0048】
次に、ゼラチンスープ固化物として、この2.5×2.5×2.5cm角にカットしたものを用いた他は実施例1と同様にして電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を得た。すなわち、実施例1と同様に、まず、生白菜、生玉葱、生人参、生長葱各20gを容器に充填した後、その上面に載置するように茹でうどん100gを充填し、更に、うどんの上面に2.5×2.5×2.5cm角にカットしたゼラチンスープ固化物200gを充填し、最後に蓋で容器を密閉し、電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を得た。
【0049】
続いて、得られた電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を、10℃の冷蔵庫内で24時間保管した後、出力500Wの電子レンジを用いて5分間加熱することにより、卵とじ様麺料理を得た。
【0050】
[比較例1]
(1)卵凝固物の製造
90℃に加熱した湯中に、液全卵を流しいれて撹拌しながら湯中で液全卵を凝固させた後、濾し器等で液切りをして卵凝固物を製造した。
【0051】
(2)ゼラチンスープ固化物の製造
実施例1の(1)のゼラチンスープ配合原料において、液全卵以外の原料、すなわち、濃縮液体かつおだし2kg、うすくち醤油5kg、食塩2kg、ゼラチン2kg、清水64kgを用意した。次に、用意した濃縮液体かつおだし、うすくち醤油、食塩、ゼラチン及び清水を蒸気加熱式の二重釜に投入し、撹拌しながら品温90℃まで加熱した後、更に、ゼラチンを加えてスープ70kgを得た。次に、得られたスープを蓋付き容器(実施例1で用いたものと同じ)に140gを充填した後、冷蔵庫(雰囲気温度5℃)に収容して品温が約5℃になるまで冷却してゼラチンスープを容器内で固化させた。
【0052】
(3)食材の準備
実施例1と同様にして、茹でうどんと、生白菜、生玉葱、生人参及び生長葱をカット品とを用意した。
【0053】
(4)蓋付き容器への収納
上記(2)で得られたゼラチンスープ固化物を充填した容器に、ゼラチンスープ固化物の上面に載置するように茹でうどん100gを充填し、更に、うどんの上面に生白菜、生玉葱、生人参、生長葱各20gを充填し、更に上記(1)で得られた卵凝固物60gを乗せ、最後に蓋で容器を密閉して電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を得た。
【0054】
(5)卵とじ様麺食品の調理
上記(4)で得られた電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を、10℃の冷蔵庫内で24時間保管した後、出力500Wの電子レンジを用いて5分間加熱することにより、卵とじ様麺料理を得た。
【0055】
[比較例2]
まず、実施例1の(1)と同様にして、卵凝固物を含むスープをバットに入れて冷蔵庫に収容して冷却して固化させた。続いて、この卵凝固物を包埋したゼラチンスープ固化物を包丁で4×4×5cm角にカットした。
【0056】
次に、ゼラチンスープ固化物として、この4×4×5cm角にカットしたものを用いた他は実施例1と同様にして電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を得た。すなわち、実施例1と同様に、まず、生白菜、生玉葱、生人参、生長葱各20gを容器に充填した後、その上面に載置するように茹でうどん100gを充填し、更に、うどんの上面に4×4×5cm角にカットしたゼラチンスープ固化物200gを充填し、最後に蓋で容器を密閉し、電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を得た。
【0057】
続いて、得られた電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を、10℃の冷蔵庫内で24時間保管した後、出力500Wの電子レンジを用いて5分間加熱することにより、卵とじ様麺料理を得た。
【0058】
[比較例3]
まず、実施例1の(1)と同様にして、卵凝固物を含むスープをバットに入れて冷蔵庫に収容して冷却して固化させた。続いて、このゼラチンで固化したスープを、粉砕処理機(アーシャル社製コミトロール)で、0.2cm未満に粉砕させた。得られた粉砕物の状態は、ペースト状だった。
【0059】
次に、ゼラチンスープ固化物として、このペースト状のゼラチンスープ固化物を用いた他は、実施例1と同様にして電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を得た。すなわち、実施例1と同様に、まず、生白菜、生玉葱、生人参、生長葱各20gを容器に充填した後、その上面に載置するように茹でうどん100gを充填し、更に、うどんの上面に0.2cm未満のペースト状のゼラチンスープ固化物200gを充填し、最後に蓋で容器を密閉し、電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を得た。

【0060】
[試験例1]
実施例1乃至3、並びに比較例1乃至3において得られた6種類の卵とじ様麺料理について、それぞれ、卵凝固物及び野菜の食味を評価した。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1より、容器内の底部より生野菜、その上部に麺、さらに最上部に卵凝固物を包埋している0.2〜3cmの大きさのクラッシュされたゼラチンスープ固化物を載置した電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を用いて短時間電子レンジ加熱して得た実施例1乃至3の卵とじ様麺料理は、いずれも卵凝固物はふんわりとして好ましい食感であり、野菜はシャキシャキとした食感で味付けのムラも問題がなく好ましかった。また、麺も適度な硬さであり好ましかった。特に、ゼラチンスープ固化物の大きさを2cm以下とした実施例1及び2で得た卵とじ様麺料理は、野菜の味付けによりムラがなく好ましかった。
【0063】
一方、卵凝固物を包埋しているゼラチンスープ固化物を最上部に載置していても、当該ゼラチンスープ固化物が3cmよりも大きい即席卵とじ様麺食品を用いて短時間電子レンジ加熱した場合(比較例2)は、野菜の味付けにムラがあり好ましくなかった。また、前記ゼラチンスープ固化物の大きさが0.2cm未満である即席卵とじ様麺食品を用いて短時間電子レンジ加熱した場合(比較例3)は、卵凝固物は硬い食感であり、好ましくなかった。更に、即席卵とじ様麺食品として、容器内の底部にゼラチンスープ固化物を載置し、最上部に生野菜と卵凝固物を載置した即席卵とじ様麺食品を用いた場合(比較例1)は、卵凝固物が硬い食感であり、野菜の味付けにムラがあり好ましくなかった。
【0064】
[試験例2]
本発明の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品において、スープに含有させるゼラチン量が電子レンジ加熱前後のスープの状態に与える影響について以下の方法で試験した。
【0065】
1.サンプルの調製
実施例1(1)のゼラチンスープ固化物において、ゼラチンの含有量(質量%)を下記表2の「ゼラチン含有量」欄の通りに変更し、その増加分又は減少分は清水の配合量で補正した以外は実施例1(1)と同様にしてゼラチン含有量の異なる7種類のゼラチンスープ固化物を製造した。次に、各ゼラチンスープ固化物を使用した他は、実施例1と同様にして、ゼラチンスープ固化物の異なるa〜fの7種類の容器詰めの即席卵とじ様麺食品のサンプルを製造した。なお、サンプルdは実施例1と同配合品である。
【0066】
2.試験方法
各サンプルを10℃の冷蔵庫内で24時間保管した後、それぞれゼラチンスープ固化物の状態を評価した。次に、各サンプルを出力500Wの電子レンジを用いて5分間加熱し、加熱後のスープの状態を評価した。評価結果は表2に示す通りである。
【0067】
【表2】

【0068】
表2より、電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品において、ゼラチンスープ固化物のゼラチン含有量が1%以上であると、保存後においてもゼラチンスープ固化物が麺の上に充分に保持されていて好ましかった。また、ゼラチンスープ固化物のゼラチン含有量が5%以下であると、加熱融解後のスープの粘度が麺のスープとして違和感のない範囲であり好ましく、前記ゼラチン含有量が3%以下であると麺のスープとして適度な粘性でより好ましかった。したがって、ゼラチンスープ固化物のゼラチン含有量としては、1〜5%である場合(サンプルb〜f)が好ましく、1〜3%である場合(サンプルb〜e)がより好ましいことが理解できる。
【0069】
[実施例4]
下記の方法にて、本発明にかかる電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を製造した。
【0070】
(1)ゼラチンスープ固化物の製造
下記配合によりゼラチンスープ固化物を製造した。すなわち、まず、蒸気加熱式の二重釜に鶏がらスープ、うすくち醤油、酢、鶏がらスープ、酒及び胡椒を投入し、撹拌しながら品温90℃まで加熱してスープを得た。続いて、この90℃まで加熱したスープ中に液全卵を投入して撹拌し、スープ中で液全卵を凝固させた後、更に、ゼラチンを加えて卵凝固物を含むスープを得た。得られたスープの質量は100kgであった。また、卵凝固物の大きさは、0.1〜1cmであった。
【0071】
次に、得られた卵凝固物を含むスープをバットに入れて冷蔵庫(雰囲気温度5℃)に収容して品温が約5℃になるまで冷却して固化させた。続いて、このゼラチンで固化したスープをしゃもじで0.2〜3cmの大きさに粉砕し、卵凝固物を包埋しているクラッシュしたゼラチンスープ固化物を得た。
【0072】
次に、得られた卵凝固物を含むスープをバットに入れて冷蔵庫(雰囲気温度5℃)に収容して品温が約5℃になるまで冷却して固化させた。続いて、このゼラチンで固化したスープをしゃもじで0.2〜2cmの大きさに粉砕し、卵凝固物を包埋しているクラッシュしたゼラチンスープ固化物を得た。
【0073】
<配合> (単位:kg)
殺菌凍結全卵 35
鶏がらスープ 56
うすくち醤油 5
酢 5
ゼラチン 3
酒 1
胡椒 0.05
合計 105.05
【0074】
(2)食材の準備
スープ以外の食材として、中華麺、約1cm幅で短冊状にカットした生白菜、約5mm幅にスライスカットした生玉葱、約1cm幅で短冊状にカットした生人参、約5mm幅にスライスカットした生長葱を用意した。
【0075】
(3)蓋付き容器への収納
蓋付き容器(実施例1で用いたものと同じ)に、上記(1)で得られたクラッシュしたゼラチンスープ固化物及び(2)で用意した食材を収容した。すなわち、まず、生白菜、生玉葱、生人参、生長葱各20gを容器に充填した後、その上面に載置するように中華麺100gを充填し、更に、中華麺の上面にクラッシュしたゼラチンスープ固化物200gを充填し、最後に蓋で容器を密閉し、本実施例の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を得た。
【0076】
(4)卵とじ様麺食品の調理
上記(3)で得られた電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品を、10℃の冷蔵庫内で24時間保管した後、出力500Wの電子レンジを用いて5分間加熱することにより、卵とじ様麺料理を得た。得られた卵とじ様麺料理は、ゼラチンスープ固化物が完全に流動化してスープ状となっており、中華麺の上には加熱凝固卵がふんわりと残っていた。また、試食したところ、卵凝固物はふんわりとして好ましい食感であり、野菜はシャキシャキとした食感で味付けにムラがなく好ましかった。また、中華麺も適度な硬さであり好ましく、全体として大変美味しい卵とじ様麺料理であった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品の一実施例を示す外観斜視図。
【図2】図1の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺の、電子レンジ加熱前の状態を示す断面図。
【図3】図1の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺の、電子レンジ加熱後に開蓋した状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0078】
1.電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品
2.蓋
3.容器
3a.容器の開口部
3b.容器の底部
4.野菜
5.麺
6.ゼラチンで固化したスープ
7.卵凝固物
8.通気孔
9.流動性を呈するスープ
10.水蒸気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施蓋した容器内の底部側より生野菜、その上部に麺、さらに最上部に卵凝固物を包埋している0.2〜3cmの大きさのクラッシュされたゼラチンスープ固化物が載置され収容されていることを特徴とする電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品。
【請求項2】
前記ゼラチンスープ固化物のゼラチン含有量が1〜5%である請求項1記載の電子レンジ加熱用の容器詰め即席卵とじ様麺食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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