説明

電子レンジ加熱調理対応容器入り白粥

【課題】電子レンジ加熱調理対応容器に白粥を充填して電子レンジで調理しても自動開口後の開口箇所あるいは容器の一部開封部から白粥が吹きこぼれることがない電子レンジ加熱調理対応容器入り白粥を提供する。
【解決手段】 吹きこぼれ防止剤を添加した白粥30gを100ml容トールビーカー(内径×高さ:50×88mm)に入れ、その上に直径70mm、重量3〜3.5gの範囲内の発泡スチロール球を載せ、出力600Wで2分間マイクロ波加熱を行った場合、該球が白粥の発泡によりトールビーカーから外に落下しない白粥を電子レンジ加熱調理対応容器に入れたことを特徴とする特徴とする容器入り白粥。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ加熱調理対応の容器(袋、カップ、トレイ等)入り白粥に関し、特に電子レンジ自動開口機能を有する容器に好適な容器入りの白粥に関する。なお、本明細書において、「白粥」とは、白米と水の混合物のみを炊飯することによって得られる粥であって、具材を一切含まず、また塩、しょうゆその他いかなる調味料によっても味付けされていない粥をいう。
【背景技術】
【0002】
レトルト食品市場において、包装袋入りのお粥は高齢者や女性の支持もあり次第に拡大する傾向にある。一方レトルト食品、冷凍食品などを密封充填した包装袋を電子レンジで加熱すると、加熱に伴って内容物から発生する水蒸気等により袋内部の圧力が上昇し、包装袋が破裂するおそれがあるので、加熱前に予め包装袋の一部を切り取っておいたり、また近年では電子レンジ加熱時における包装袋の内圧上昇を自動的に逃がすための自動開口機能を備えた包装袋が種々提案されている。本出願人も先に特許文献1において、プラスチックフイルムをヒートシールすることにより密封する包装袋に、少なくとも1個の弱化部を有する蒸気抜きシール部を設けた電子レンジ用包装袋を提案しており、この包装袋は現在E−RP(および図形)の商標で市販されている。
【0003】
しかしながら、雑炊のように具や塩などが含まれた食品は電子レンジ調理中あるいは調理後に吹きこぼれることはないが、白粥には電子レンジ調理中に吹きこぼれたり突沸する特性があり、電子レンジ調理対応の自動開口機能を有する包装袋を使用してもこのような吹きこぼれを防止することはできない。調理中に白粥が自動開口後の開口箇所から吹きこぼれると電子レンジを汚し後の清掃が大変であったり火傷の心配があるので、このような電子レンジ対応の自動開口機能を有する包装袋を使用して電子レンジによる調理を行うことはできず、包装袋入りお粥は包装袋のまま湯煎するかあるいは鍋などの別の容器に中身を移し替えて調理せざるを得ず、手間がかかり面倒であった。
【0004】
容器包装詰加圧加熱殺菌食品である粥は、一度加熱後、冷却されているため、澱粉は老化している。うるち米の澱粉が糊化する温度範囲は61〜77.5℃であるため、約80℃まで加温しなければおいしく食べることはできない。したがって、電子レンジ加熱では、わずか1〜2分で約80℃まで温められる。この短時間に温度が急激に上昇するため白粥では突沸という問題が生じてくる。
【0005】
胚乳の澱粉細胞の中ではたんぱく質は、細胞壁やプロテインボディと呼ばれる顆粒状で細胞膜に沿って分布している。プロテインボディは炊飯に対しても耐性があり炊飯後も残ることが実証されている。うるち米の重量の約6%がタンパク質で、そのタンパク質のうち約80%がグルテリンでその他アルブミン、グロブリン、プロラミンが含まれている。
【0006】
また、うるち米の飯粒表層には分子量数百万の結晶度の低い低分子の水溶性アミロペクチン的な粘性物質があり、これは電子レンジ加熱での噴出に関係が深いと考えられる。
【0007】
マイクロ波加熱における周波数は、水分子程度の大きさの配向分極による発熱が大きくなるように選ばれているので、水の動態変化がまず起こり、タンパク質や澱粉周辺の水和状態の変化も大きくなり、水の動態変化が誘引となりタンパク質や澱粉等の物性が変化する。タンパク質には起泡性がある。容器詰の中に気液界面を持った状態で、電子レンジ加熱を受ける容器包装詰加圧加熱殺菌食品において、特に水分含有率が高い場合は、タンパク質溶液と気体共存化でエネルギーが加えられることにより起泡しやすくなる。
【0008】
電子レンジ加熱時での粥の噴出メカニズムは、マイクロ波加熱により水が動態変化し、タンパク質溶液由来の粘着性のある気泡が生成し、その気泡に粘性のある澱粉分子が付着し、泡の界面の粘着性がさらに増し、泡の上に泡が積もるような状態となり、無数の気泡が内容物を巻き込みつつ、蒸気抜き部から内容物や水蒸気が噴出すると考えられる。
【0009】
全粥のように、粘性の高いものでは、開口後、水蒸気蒸発速度が遅いため、泡形成の元となる水蒸気の動きが鈍く、容器外へ内容物が噴出しにくい。
【0010】
塩濃度が高い食品では、水の蒸気圧が下がり、かつ、マイクロ波の半減深度が浅くなるため、水を含む食品部分より先に気層部が加熱され、飲食にふさわしい適温に到達する前に、開口部に応力がかかり開口する。そのため、適温に到達するまでの昇温時間内に、内容物が容器外に噴出することは抑制される。
【0011】
しかしながら、米と水しか原材料としない白粥のような食品では、具材や調味液や塩を添加し、起泡性を低下させ噴出を抑制することはできない。白粥らしさを保持したまま、つまり、色、食感、味を保持したまま、噴出を抑制しなければならない。
【0012】
特許文献2には健康食品としてのお粥を缶詰またはレトルトパウチに充填密封し加熱殺菌してなる食品が開示されており、玄米30〜40gに対してきびまたはあわ1〜3gを添加する例が記載されているが(請求項5)、このレトルトパウチ入りお粥を電子レンジで加熱調理する場合に生じる上記問題点およびそれを解決する手段についてはなんら示唆するところがない。また、特許文献3には、米飯の炊飯に際して吹きこぼれを防止するために米に消泡剤を添加する方法が開示されているが、消泡剤の添加はお粥に自然の味と異なる味を付与することは避け難いし、また製造コストの上昇をもたらし好ましくない。
【特許文献1】特開2002−249176号公報
【特許文献2】特開平11−313624号公報
【特許文献3】特開昭60−75243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、電子レンジ加熱調理対応の容器(袋、カップ、トレイ等)入り白粥、特に電子レンジ自動開口機能を有する容器入り白粥を実現する場合に生じる上記問題を解決するためになされたものであって、特別な消泡剤を使用することなく、電子レンジ自動開口機能を有する容器に白粥を充填密封し、あるいは蓋付きコップ型プラスチック容器等その他の電子レンジ加熱調理対応容器に白粥を充填し蓋材の一部をはがす等容器の一部を開封した状態で電子レンジで加熱調理しても、自動開口後の開口箇所あるいは一部開封した容器部分から白粥が吹きこぼれることがない電子レンジ加熱調理対応容器入り白粥を提供しようとするものである。ここで「電子レンジ自動開口機能」とは、電子レンジ調理中に容器内に発生する蒸気等を自動的に逃がし、容器の破裂、内容物の飛散を防止することができる機能をいう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記本発明の目的を達成するために鋭意研究と実験を重ねた結果、白米の白粥の中に吹きこぼれ防止剤を添加し、電子レンジ加熱調理対応容器に充填密封し、加熱殺菌した白粥は、電子レンジで加熱調理しても電子レンジ自動開口機能つき容器の自動開口部あるいはその他の電子レンジ加熱調理対応容器の一部開封部から吹きこぼれることがないことを発見し、本発明に到達した。
【0015】
また、本発明者らは、電子レンジで加熱調理した場合に、電子レンジ加熱調理対応自動開口機能つき容器の自動開口部あるいはその他の電子レンジ加熱調理対応容器の一部開封部から生じる吹きこぼれを防止するために有効な吹きこぼれ防止剤を探し出すために、吹きこぼれ防止剤を添加した白粥を電子レンジ加熱調理対応容器に充填して電子レンジで加熱調理する実験を実際に行わなくても、この実験にかわるきわめて簡単な方法で有効な吹きこぼれ防止剤の種類と濃度を決定することができることを発見し、本発明に到達した。
【0016】
すなわち、本発明の第1の構成において、本発明の白粥は、吹きこぼれ防止剤を添加した白粥30gを100ml容トールビーカー(内径×高さ:50×88mm)に入れ、その上に直径70mm、重量3〜3.5gの範囲内の発泡スチロール球を載せ、出力600Wで2分間マイクロ波加熱を行った場合、該球が白粥の発泡によりトールビーカーから外に落下しない白粥を電子レンジ加熱調理対応容器に入れたことを特徴とする容器入り白粥である。
【0017】
本発明の第2の構成において、白粥は、吹きこぼれ防止剤を添加した白粥100gを100ml容トールビーカー(内径×高さ:50×88mm)に入れ、それを40℃の湯に10分間湯浴後、その状態で、B型粘度計を用い、粘度を測定した場合、粘度が8〜12.5Pa・sの範囲内である白粥を電子レンジ加熱調理対応容器に入れたことを特徴とする容器入り白粥である。
【0018】
実験の結果、吹きこぼれ防止剤を添加した白粥の上記測定方法による粘度が8Pa・s未満であっても、12.5Pa・sを超えても吹きこぼれが生じることが判明した。
【0019】
本発明の第3の構成において、白粥は、白米と水の混合物に対し、にがり、海水、塩化マグネシウム、白玉粉、バレイショ澱粉、バレイショ澱粉と食塩の混合物、ビタミンE,レシチン、炊飯用はいが油カプセル、植物油からなる群から選択される少なくとも1種の吹きこぼれ防止剤を添加したことを特徴とする電子レンジ加熱調理対応容器入り白粥である。
【0020】
本発明の他の側面においては、該吹きこぼれ防止剤として、にがりを容器の内容総量に対し0.01重量%〜1重量%添加したことを特徴とする。
【0021】
本発明の他の側面においては、該吹きこぼれ防止剤として、海水を容器の内容総量に対し0.5重量%〜40重量%添加したことを特徴とする。
【0022】
本発明の他の側面においては、該吹きこぼれ防止剤として、塩化マグネシウムを容器の内容総量に対し0.001重量%〜0.3重量%添加したことを特徴とする。
【0023】
本発明の他の側面においては、該吹きこぼれ防止剤として、白玉粉を容器の内容総量に対し0.5重量%〜4重量%添加したことを特徴とする。
【0024】
本発明の他の側面においては、該吹きこぼれ防止剤として、バレイショ澱粉を容器の内容総量に対し0.5重量%〜4重量%添加したことを特徴とする。
【0025】
本発明の他の側面においては、該吹きこぼれ防止剤として、バレイショ澱粉を容器の内容総量に対し0.1重量%〜2重量%添加するとともに、食塩を容器の内容総量に対し0.1重量%〜1重量%添加したことを特徴とする。
【0026】
本発明の他の側面においては、該吹きこぼれ防止剤として、ビタミンEを容器の内容総量に対し0.005重量%〜0.3重量%添加したことを特徴とする。
【0027】
本発明の他の側面においては、該吹きこぼれ防止剤として、レシチンを容器の内容総量に対し0.05重量%〜1重量%添加したことを特徴とする。
【0028】
本発明の他の側面においては、該吹きこぼれ防止剤として、炊飯用はいが油カプセルを容器の内容総量に対し0.05重量%〜5重量%添加したことを特徴とする。
【0029】
本発明の他の側面においては、該吹きこぼれ防止剤として、植物油を容器の内容総量に対し0.05重量%〜5重量%添加したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、特別な消泡剤を使用することなく、電子レンジ加熱調理対応容器(包装袋、カップまたはトレイ)に白粥を充填密封し、あるいは容器の一部を開封した状態で電子レンジで加熱調理した場合に自動開口後に開口箇所から生じる、あるいは容器の一部開封部から生じる吹きこぼれを有効に防止することができるので、電子レンジ加熱調理対応の容器入りお粥の調理を安全に行うことができ、また、調理の手間を大幅に省くことができる。
【0031】
また、本発明の上記第1の構成によれば、トールビーカーに吹きこぼれ防止剤を添加した白粥を入れ、その上に発泡スチロール球を載せてマイクロ波加熱を行い、球がトールビーカーから外に落ちるか否かという簡単な判別法により、電子レンジで加熱調理した場合に、自動開口後に開口箇所から生じる、あるいは容器の一部開封部から生じる吹きこぼれを有効に防止することができる電子レンジ加熱調理対応容器入り白粥を提供することができ、これによって、本発明の目的を達成するために好適な吹きこぼれ防止剤の種類および濃度を多くの実験を要せずに選択することができる。
【0032】
また、本発明の上記第2の構成によれば、吹きこぼれ防止剤を添加した白粥をトールビーカーに入れ、それを40℃の湯に10分間湯浴後、粘度を測定するという簡単な判別法により、電子レンジで加熱調理した場合に、自動開口後に開口箇所から生じる、あるいは容器の一部開封部から生じる吹きこぼれを有効に防止することができる電子レンジ加熱調理対応容器入り白粥を提供することができ、これによって、本発明の目的を達成するために好適な吹きこぼれ防止剤の種類および濃度を多くの実験を要せずに選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明は電子レンジ加熱調理対応容器(包装袋、カップまたはトレイ)に広く適用することができるが、特に電子レンジ自動開口機能を有する包装袋すなわち白粥を充填し密封した包装袋を電子レンジで加熱した際に、包装袋の一部が自動的に開口して包装袋内部に発生した蒸気等を自動的に逃がす自動開口機能を備えた包装袋に適用することが好適である。
【0034】
この種の包装袋としては種々の提案がなされており、また実際に使用されているが、もっとも好ましいものは、上記特許文献1に記載され,現在商標E―RPの下に市販されている包装袋である。この包装袋は、プラスチックフイルムをヒートシールすることにより密封する包装袋に、少なくとも1個の弱化部を有する蒸気抜きシール部を設けるとともに、この蒸気抜きシール部の初期破断点を、包装袋の2つの短辺の周縁シール部内端中央に内接する円の円周上またはその内側に設けたものである。蒸気抜きシール部の弱化部は貫通孔、半貫通孔またはスリットにより形成されるか、あるいは、包装袋に袋の内方に向けて切り欠きを設け、この切り欠きの周縁部をヒートシールすることにより形成される。商標E−RPの下に市販されている包装袋はこの弱化部が1個の貫通孔により構成されているものである。
【0035】
本発明は、上記特許文献1記載の包装袋のほか、電子レンジ加熱時における包装袋の内圧上昇を自動的に逃がすために(1)ヒートシール部の一部に薄膜を介して弱シール部を形成し、この弱シール部の一部にヒートシール巾の狭い巾狭シール部を設けた包装袋(特開平10−59433号公報)、(2)ヒートシール部の一部に弱接着部を設け、該弱接着部の外縁から内部に向かって弱接着部の巾を狭くする非シール部を形成した包装袋(特開平10−95471号公報)、(3)シール部の一部にシール巾を局所的に狭くした非シール部とこれに対応する内方膨出シール部を設けた包装袋(特開平10−101154号公報)、(4)開封部の一部に加熱時に開口を形成する熱収縮性フイルムを挟着した包装袋(特開平10−95470号公報)等の種々の包装袋に適用することができる。
【0036】
本発明が適用される電子レンジ用包装袋を構成するプラスチックフイルムとしては、通常包装袋の製造に用いられるヒートシール性を有するプラスチック材料が使用される。たとえば、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂からなる単層のフイルム、シート類や、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂を他の熱可塑性樹脂と積層した多層フイルム等を挙げることができる。
【0037】
包装袋入り白粥を製造するには、電子レンジ自動開口機能を有する包装袋等の容器に1種または2種以上の吹きこぼれ防止剤を所定量添加した白米と水を充填し、ヒートシールにより密封した後、常法により調理と殺菌を兼ねた加熱処理を行い、冷却して製品とする。
【0038】
吹きこぼれ防止剤としては、吹きこぼれ防止剤を添加した白粥30gを100ml容トールビーカーに入れ、その上に直径70mm、重量3〜3.5gの範囲内の発泡スチロール球を乗せ、出力600Wで2分間マイクロ波加熱を行った場合、該球が白粥の発泡によりトールビーカーから外に落下しないという条件、または吹きこぼれ防止剤を添加した白粥100gを100ml容トールビーカーに入れ、それを40℃の湯に10分間湯浴後、その状態で、B型粘度計を用い、粘度を測定した場合、粘度が8〜12.5Pa・sの範囲内であるという条件を満たすことができ、かつ食品添加物として適当な吹きこぼれ防止剤であれば、特に限定はないが、にがり、海水、塩化マグネシウム、白玉粉、バレイショ澱粉、バレイショ澱粉と食塩の混合物、ビタミンE,レシチン、炊飯用はいが油カプセル、植物油は特に好適な吹きこぼれ防止剤である。なお、食塩はそれ単独でも吹きこぼれ防止効果を有するが、食塩を吹きこぼれ防止効果を有するために必要な量だけ単独で添加すると、白粥に塩味がつき、白粥としては好ましくないので、食塩を単独で吹きこぼれ防止剤として使用することはない。
【0039】
本発明において、白米と水の混合物に対して添加する吹きこぼれ防止剤の好ましい添加量の範囲は、上記特定の吹きこぼれ防止剤の場合、容器の内容総量に対し、にがり0.1重量%〜0.4重量%、海水3重量%〜20重量%、塩化マグネシウム0.005重量%〜0.1重量%、白玉粉1重量%〜2重量%、バレイショ澱粉2重量%〜3重量%、バレイショ澱粉と食塩の混合物においてはバレイショ澱粉が0.5重量%〜1重量%の範囲内でかつ食塩濃度が0.3重量%〜0.5重量%、ビタミンE0.025重量%〜0.5重量%,レシチン0.1重量%〜0.5重量%、炊飯用はいが油カプセル0.2重量%〜1重量%、植物油0.1重量%〜1重量%である。電子レンジの高周波出力が600Wで開口後内容物噴出までに30秒を要した場合に吹きこぼれ防止効果があったと見なすと、吹きこぼれ防止剤の添加量が上記の下限量未満では吹きこぼれ防止効果を充分に収めることができず、一方吹きこぼれ防止剤の添加量が上記の上限量を超えると、白粥に添加物の味や臭いが感じられ、食感を害するおそれが生じる。
【0040】
これらの吹きこぼれ防止剤は単独で添加してもよいし、複数種類併用して添加してもよい。複数種類を併用する場合は、その合計添加量は白粥の味や風味を害しない範囲内にとどめるように留意する必要がある。
【0041】
上記吹きこぼれ防止剤の中で、炊飯用はいが油カプセルはとうもろこしはいが油、小麦はいが油等のはいが油を主成分とするカプセル状食品添加物であって、米飯の炊飯に際し炊飯器中の米に1カプセル(4.6g)投入添加することにより炊き上がった米飯のつやとねばりを増強するとともに栄養を補強する食品添加物であり、1例として昭和産業株式会社製の商品名「お釜にポン」が販売されている。
【実施例】
【0042】
実施例1
うるち米1300gを1時間30分間水漬けすることにより1683gの吸水米を得た。七分粥を得るために米と水の容積比が1:7となるよう重量比で吸水米29.1gに対し水168.4gを加え、またこれに和光純薬株式会社製の食品添加物である塩化マグネシウム0.1gを吹きこぼれ防止剤として添加し、東洋製罐株式会社製の電子レンジ対応自動開口機能付き包装袋E−RPに充填した。ヘッドスペース部をガス置換後、密封し、レトルト装置を用いて115℃で17分間の殺菌を行いF値を4とした。この白粥を東芝電子レンジER−A9で高周波出力600Wで加熱し、自動開口部が開口するまでの時間と、開口後内容物が噴出するまでの時間を測定した。自動開口部は1分43秒で開口し、その1分1秒後に内容物が少し噴出した。開口後1分間以上も電子レンジ加熱を継続しても吹きこぼれがなかったので、本実施例は優れた吹きこぼれ防止効果を有することが判った。
【0043】
比較例1
吹きこぼれ防止剤を添加しなかった以外は実施例1と同一条件で容器入り七分粥の製造および電子レンジによる加熱を行った。自動開口部は2分19秒で開口し、その5秒後に内容物が噴出した。
【0044】
実施例2
吹きこぼれ防止剤として、沖縄物産企業連合製のにがりを0.25%添加した以外は、実施例1と同様に製造した七分粥を用いてIWAKI製100ml容トールビーカー(内径×高さ:50×88mm)に100g入れ、その上に、ワイズコーポレーション製の発泡スチロール球(直径70mm、重量3.1g)を載せ、出力600Wに設定した東芝(株)製電子レンジER−A9で2分間マイクロ波加熱した。白粥は泡を発生するものの、球を押しのけるまでにはいたらず、球はトールビーカーの上端縁から外側に落下しなかった。
【0045】
比較例2
吹きこぼれ防止剤を添加しなかった以外は実施例1と同様に製造した七分粥を100ml容トールビーカーに100g入れ、その上に、ワイズコーポレーション製の発泡スチロール球(直径70mm、重量3.1g)を載せ、出力600Wに設定した東芝(株)製電子レンジER−A9で2分間マイクロ波加熱した。白粥は加熱とともの泡立ち、発生した泡で球が押しのけられ、トールビーカーの上端縁から外側に落下した。
【0046】
実施例3
吹きこぼれ防止剤として、炊飯用はいがカプセルを容器の内容総量に対して0.25%添加した以外は、実施例1と同様に製造した七分粥を用いて100ml容トールビーカーに100g入れ、その上に、ワイズコーポレーション製の発泡スチロール球(直径70mm、重量3.1g)を載せ、出力600Wに設定した東芝(株)製電子レンジER−A9で2分間マイクロ波加熱した。白粥は泡を発生するものの、球を押しのけるまでにはいたらず、球はトールビーカーの上端縁から外側に落下しなかった。
【0047】
実施例4
吹きこぼれ防止剤として沖縄物産企業連合製のにがりを0.5ml添加した以外は実施例1と同様に製造した七分粥を用い、この粥100gを100ml容トールビーカーに入れ、40℃の湯に10分間湯浴後、その状態で、B型粘度計を用い、ローターを30rpmで回転させて粘度を測定した。粘度は8.5Pa・sであった。出力600Wに設定した東芝(株)製電子レンジER−A9で2分30秒間マイクロ波加熱したところ、泡の噴出は見られなかった。
【0048】
比較例3
吹きこぼれ防止剤を添加しない以外は実施例1と同様に製造した七分粥を用い、この粥100gを100ml容トールビーカーに入れ、40℃の湯に10分間湯浴後、その状態で、B型粘度計を用い、ローターを30rpmで回転させて粘度を測定した。粘度は13.1Pa・sであった。出力600Wに設定した東芝(株)製電子レンジER−A9で2分30秒間マイクロ波加熱したところ、泡の噴出が見られた。
【0049】
実施例5
吹きこぼれ防止剤として塩化マグネシウム0.01gを添加した以外は実施例1と同一条件で七分粥の製造および電子レンジによる加熱を行った。自動開口部は1分52秒で開口し、その31秒後に内容物が少し噴出した。開口後、30秒間電子レンジによる加熱を継続しても吹きこぼれがなかったので、本実施例は実用上充分な吹きこぼれ防止効果を有することが判った。
【0050】
実施例6
吹きこぼれ防止剤として炊飯改良剤である昭和産業株式会社製「お釜にポン」を内容総量に対し0.25重量%(1袋当り約0.5g:1カプセルの約10分の1)添加した以外は実施例1と同一条件で七分粥の製造および電子レンジによる加熱を行った。自動開口部は2分17秒で開口したが、その後43秒間加熱を継続したが内容物の噴出はまったくなかった。したがって、本実施例は優れた吹きこぼれ防止効果を有することが判った。
【0051】
実施例7
吸水米29.1g、水158.4gおよび吹きこぼれ防止剤として沖縄県平安座島沖で採取した海水10gを添加した以外は実施例1と同一条件で七分粥の製造および電子レンジによる加熱を行った。自動開口部は1分16秒で開口し、加熱を継続すると1分14秒後に噴出した。したがって、本実施例は優れた吹きこぼれ防止効果を有することが判った。
【0052】
実施例8
吹きこぼれ防止剤として沖縄物産企業連合製のにがりを内容総量に対し0.1重量%添加した以外は実施例1と同一条件で七分粥の製造および電子レンジによる加熱を行った。自動開口部は1分41秒で開口したが、その後1分16秒間加熱を継続したが内容物の噴出はまったくなかった。したがって、本実施例は優れた吹きこぼれ防止効果を有することが判った。
【0053】
実施例9
吹きこぼれ防止剤として2.35重量%白玉粉溶液を製品完成後の白玉粉濃度が2重量%となるよう水の代わりに168.4g注入した以外は実施例1と同一条件で七分粥の製造および電子レンジによる加熱を行った。自動開口部は1分59秒で開口し、その59秒後に内容物が少し噴出した。開口後、30秒間電子レンジによる加熱を継続しても吹きこぼれがなかったので、本実施例は実用上充分な吹きこぼれ防止効果を有することが判った。
【0054】
実施例10
吹きこぼれ防止剤として2.35重量%バレイショ澱粉溶液を水の代わりに、製品完成後のバレイショ澱粉濃度が2重量%となるよう168.4g注入した以外は実施例1と同一条件で七分粥の製造および電子レンジによる加熱を行った。自動開口部は2分16秒で開口し、その35秒後に内容物が少し噴出した。開口後、30秒間電子レンジによる加熱を継続しても吹きこぼれがなかったので、本実施例は実用上充分な吹きこぼれ防止効果を有することが判った。
【0055】
実施例11
吹きこぼれ防止剤として0.57重量%バレイショ澱粉溶液を製品完成後のバレイショ澱粉濃度が2重量%となるように水の代わりに168.4g注入し、さらに食塩を内容総量に対して0.3重量%添加した以外は実施例1と同一条件で七分粥の製造および電子レンジによる加熱を行った。自動開口部は1分18秒で開口し、その44秒後に内容物が少し噴出した。開口後、30秒間電子レンジによる加熱を継続しても吹きこぼれがなかったので、本実施例は実用上充分な吹きこぼれ防止効果を有することが判った。
【0056】
実施例12
吹きこぼれ防止剤としてビタミンEを内容総量に対し0.05重量%添加した以外は実施例1と同一条件で七分粥の製造および電子レンジによる加熱を行った。自動開口部は2分17秒で開口したが、その後43秒間加熱を継続したが内容物の噴出はまったくなかった。したがって、本実施例は優れた吹きこぼれ防止効果を有することが判った。
【0057】
実施例13
吹きこぼれ防止剤としてキューピー株式会社製のレシチンを内容総量に対し0.5重量%添加した以外は実施例1と同一条件で七分粥の製造および電子レンジによる加熱を行った。自動開口部は1分57秒で開口したが、その後1分3秒間加熱を継続したが内容物の噴出はまったくなかった。したがって、本実施例は優れた吹きこぼれ防止効果を有することが判った。
【0058】
実施例14
吹きこぼれ防止剤として植物油を内容総量に対し0.25重量%添加した以外は実施例1と同一条件で七分粥の製造および電子レンジによる加熱を行った。自動開口部は2分11秒で開口したが、その後49秒間加熱を継続したが内容物の噴出はまったくなかった。したがって、本実施例は優れた吹きこぼれ防止効果を有することが判った。
【0059】
実施例15
耐熱性カップを使用した以外は、実施例1と同一条件でカップ容器入り七分粥を製造した。容器は耐熱性カップにPET樹脂、ナイロン、ポリプロピレンからなる蓋材を用いた。充填量は130gとした。φ2mmのドリルで蓋材に穴を開け、東芝製電子レンジER−A9で高周波出力600Wで加熱したところ、3分間加熱しても内容物は噴出しなかった。本実施例よりカップ型容器でも、白粥は噴出しないことが確認できた。
【0060】
比較例4
塩化マグネシウムを添加せず、その他は実施例15と同一条件でカップ容器入り七分粥を製造した。φ2mmのドリルで蓋材に穴を開け、東芝製電子レンジER−A9で高周波出力600Wで加熱したところ、1分45秒後に穴より内容物が噴出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹きこぼれ防止剤を添加した白粥30gを100ml容トールビーカー(内径×高さ:50×88mm)に入れ、その上に直径70mm、重量3〜3.5gの範囲内の発泡スチロール球を載せ、出力600Wで2分間マイクロ波加熱を行った場合、該球が白粥の発泡によりトールビーカーから外に落下しない白粥を電子レンジ加熱調理対応容器に入れたことを特徴とする電子レンジ加熱調理対応容器入り白粥。
【請求項2】
吹きこぼれ防止剤を添加した白粥100gを100ml容トールビーカー(内径×高さ:50×88mm)に入れ、それを40℃の湯に10分間湯浴後、その状態で、B型粘度計を用い、粘度を測定した場合、粘度が8〜12.5Pa・sの範囲内である白粥を電子レンジ加熱調理対応容器に入れたことを特徴とする電子レンジ加熱調理対応容器入り白粥。
【請求項3】
白米と水の混合物に対し、にがり、海水、塩化マグネシウム、白玉粉、バレイショ澱粉、バレイショ澱粉と食塩の混合物、ビタミンE,レシチン、炊飯用はいが油カプセル、植物油からなる群から選択される少なくとも1種の吹きこぼれ防止剤を添加したことを特徴とする請求項1または2に記載の容器入り白粥。
【請求項4】
該吹きこぼれ防止剤として、にがりを容器の内容総量に対し0.01重量%〜1重量%添加したことを特徴とする請求項3記載の容器入り白粥。
【請求項5】
該吹きこぼれ防止剤として、海水を容器の内容総量に対し0.5重量%〜40重量%添加したことを特徴とする請求項3記載の容器入り白粥。
【請求項6】
該吹きこぼれ防止剤として、塩化マグネシウムを容器の内容総量に対し0.001重量%〜0.3重量%添加したことを特徴とする請求項3記載の容器入り白粥。
【請求項7】
該吹きこぼれ防止剤として、白玉粉を容器の内容総量に対し0.5重量%〜4重量%添加したことを特徴とする請求項3記載の容器入り白粥。
【請求項8】
該吹きこぼれ防止剤として、バレイショ澱粉を容器の内容総量に対し0.5重量%〜4重量%添加したことを特徴とする請求項3記載の容器入り白粥。
【請求項9】
該吹きこぼれ防止剤として、バレイショ澱粉を容器の内容総量に対し0.1重量%〜2重量%添加するとともに、食塩を容器の内容総量に対し0.1重量%〜1重量%添加したことを特徴とする請求項3記載の容器入り白粥。
【請求項10】
該吹きこぼれ防止剤として、ビタミンEを容器の内容総量に対し0.005重量%〜0.3重量%添加したことを特徴とする請求項3記載の容器入り白粥。
【請求項11】
該吹きこぼれ防止剤として、レシチンを容器の内容総量に対し0.05重量%〜1重量%添加したことを特徴とする請求項3記載の容器入り白粥。
【請求項12】
該吹きこぼれ防止剤として、炊飯用はいが油カプセルを容器の内容総量に対し0.05重量%〜5重量%添加したことを特徴とする請求項3記載の容器入り白粥。
【請求項13】
該吹きこぼれ防止剤として、植物油を容器の内容総量に対し0.05重量%〜5重量%添加したことを特徴とする請求項3記載の容器入り白粥。


【公開番号】特開2007−6884(P2007−6884A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153296(P2006−153296)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】