説明

電子レンジ加熱調理用ゼリーミックス

【課題】電子レンジで短時間に調理でき、かつ舌触りがよく、ゼリー形成性に優れたゼリーを得ることのできる、ゼリーミックスを提供する。
【解決手段】本発明による電子レンジ加熱調理用ゼリーミックスは、β−1,3−グルカンの微粉砕品を含んでなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ加熱調理用ゼリーミックスに関する。本発明はまた、舌触りの良好なゼリーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼリーは、古くから知られた食品形態であり、料理や菓子として親しまれており、さらに、高齢や傷害により嚥下傷害を持つ場合の食事や水分補給のため補助形態として用いられている。
【0003】
一方、電子レンジ加熱調理という形態は、電子レンジを使用するという簡単な操作により、調理が可能なことから、利便性が高く、消費者からの要望は依然として高いといえる。
【0004】
このため、これまでにも、電子レンジ調理を利用したゼリーについて種々の報告がなされている。
例えば、特開平2−411号公報(特許文献1)には、手軽にゼリーを調製する方法として、カードランと澱粉等の糊料類とをゼリー用の食品素材に添加し、さらに水等を添加して、電子レンジで加熱調理する方法が開示されている。この方法により得られるゼリーは、風味、テクスチャーおよび外観において好ましい品質を有していたとされており、また、ホットゼリーとして好適なものとされている。
【0005】
しかしながら、ゼリーは、その製品特性上、用途によって舌触りが非常に重視される場合があり、従来の製造方法では十分に対応できないことがあった。
【0006】
このため、電子レンジで加熱調理するという簡単な操作によって調製可能でありながら、ゼリー本来の品質に優れ、さらに、舌触りが優れたゼリーを得ることができるゼリーミックスの提供が望まれていたといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−411号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明者等は今般、電子レンジ加熱調理用のゼリーミックスにおいて、β−1,3−グルカンの一種であるカードランを予め微粉砕して使用することで、このゼリーミックスにより調製されるゼリーが、優れた舌触りを有し、さらに、微粉砕品を使用しない場合と比べて、ゼリー形性性についても大幅に向上されることを見出した。さらに、得られたゼリーは均一性にも優れ、また風味も良好であった。このように、使用するカードランとして、予め微粉砕したものを使用することのみで、得られるゼリーの舌触りと、ゼリー形成性との両方を同時に向上させることができたことは、予想外のことであった。
【0009】
よって、本発明は、電子レンジで短時間に調理でき、かつ舌触りがよく、ゼリー形成性に優れたゼリーを得ることのできる、ゼリーミックスを提供することをその目的とする。
【0010】
本発明による電子レンジ加熱調理用ゼリーミックスは、β−1,3−グルカンの微粉砕品を含んでなることを特徴とする。
【0011】
本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明のゼリーミックスにおいて、β−1,3−グルカンはカードランである。
【0012】
本発明の別の一つの好ましい態様によれば、本発明のゼリーミックスにおいて、β−1,3−グルカンの微粉砕品は、粒子径20〜30μmのカードランである。
【0013】
本発明による舌触りの良好なゼリーの製造方法は、本発明によるミックスに、水を添加混合して得られた混合物を電子レンジで加熱することを含んでなる。
【0014】
本発明による電子レンジ加熱調理用ゼリーミックスによれば、舌触りのよく、ゼリー形成性に優れたゼリーを、電子レンジによる短時間に調理によって容易に得ることができる。得られたゼリーは、均一性にも優れ、また風味も良好なものである。
【発明の具体的説明】
【0015】
本発明による電子レンジ加熱調理用ゼリーミックスは、前記したように、β−1,3−グルカンの微粉砕品を含んでなることを特徴とする。
【0016】
ここで、電子レンジ加熱調理用ゼリーミックスとは、ゼリーを調製するために予め調合してある調製粉(プレミックス)を意味する。本発明によるゼリーミックスは特に、電子レンジ加熱調理、すなわちマイクロ波照射による加熱調理に用いられるものである。ゼリーとしては、冷蔵して喫食されるゼリーの他、ホットゼリーのような形態のものも包含される。またゼリーは、料理用のものであっても、菓子用のものであっても、嚥下傷害を持つ者などへの栄養補給用の補助食品のような用途のものであってもよい。
【0017】
本発明において用いられるβ−1,3−グルカンとしては、加熱凝固性のあるものが好ましい。従って、本発明において、β−1,3−グルカンとしては、このような加熱凝固性を有するものであれば、いずれも用いることができ、例えば、重合度が約5〜6000、好ましくは約100〜1000のものが挙げられる。このようなものの具体例としては、カードラン、パキマン、ラミナラン、酵母グルカン等が挙げられる。本発明においては、この内、カードランが好ましく用いられる。
【0018】
カードランとしては、特に限定はされないが、例えば、アルカリゲネス属またはアグロバクテリウム属の微生物によって生産されるものが挙げられる。具体的には、アルカリゲネス・フェカリス・バール・ミクソゲネス菌株10C3Kにより生産されるもの〔アグリカルチュラル・バイオロジカル・ケミストリー(Agricultural Biological Chemistry),30巻,196頁(1966年)〕、アルカリゲネス・フェカリス・バール・ミクソゲネス菌株10C3Kの変異株NTK−u(IFO 13140)により生産されるもの(特公昭48−32673号)、アグロバクテリウム・ラジオバクター(IFO 13127)およびその変異株U−19(IFO 13126)により生産されるもの(特公昭48−32674号)などがここで使用し得る。
【0019】
本発明において、β−1,3−グルカンは市販品を用いてもよいが、通常の市販品は粒子径が100μm程度またはそれ以上であるため、微粉砕処理した微粉砕品を用いることが食感の観点から好ましい。微粉砕品としては、例えば、β−1,3−グルカンをブレンダー、ホモジナイザー、ボールミル、気流粉砕機等により粉砕して得られる粉砕品が挙げられる。微粉砕品の粒子径は、10〜40μmが好ましく、より好ましくは20〜30μmである。
【0020】
なお、平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒子径分布測定器(日本レーザー社製)等の粒子分布測定機器を用いて求めることができる。
【0021】
本発明のゼリーミックス中のβ−1,3−グルカンの含有量は、ゼリーミックス全量に対して、通常0.1重量%〜50重量%、好ましくは0.2重量%〜50重量%である。
【0022】
本発明のゼリーミックスには、β−1,3−グルカンに加えて、必要に応じて糊料類を添加することができる。
【0023】
糊料類としては、馬鈴薯澱粉、小麦粉澱粉、デキストリン等の澱粉類、寒天、カラギーナン等の海藻糊料、ローカストビーンガム、グアーガム等の種実糊料、かんきつ類ペクチン、リンゴペクチン等のペクチン類等が挙げられる。
【0024】
糊料類は、カードラン1重量部に対し、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部となるように添加され、ゼリーの種類によって適宜調製することができる。
【0025】
また、本発明のゼリーミックスには、ゼリーの成型や舌触りを阻害しない限りにおいて、調味料、核酸、酒類、甘味料、酸味料、着色料、油脂、果汁、ココア、コーヒー、紅茶、抹茶、牛乳、発酵乳、香料、酵素、アミノ酸、ビタミン、、安定剤、防腐剤等の追加成分をさらに添加してもよい。
【0026】
ここで、調味料としては、例えば、グルタミン酸ナトリウム等のアミノ酸、蛋白質加水分解物等が挙げられる。
また核酸としては、例えば、5’−イノシン酸ナトリウム、5’−グアニル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0027】
また甘味料としては、例えば、砂糖、ソルビトール、マルチトール、アセスルファムカリウム、アスパルテーム等が挙げられる。
酸味料としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0028】
本発明のゼリーミックスは、β−1,3−グルカンに加えて、必要に応じて糊料類や追加成分をさらに添加して組成物上とすることができれば、いずれの方法によって製造してもよい。例えば、上記原料を混合することにより、本発明のゼリーミックスを製造することができる。またこのとき、必要により水を加えて混合してもよい。
【0029】
したがって、本発明のゼリーミックスは、粉状、粒状、粉粒状等の固体組成物であっても、水を添加してペースト状にしたもののいずれの形態であってもよい。
【0030】
本発明による舌触りの良好なゼリーの製造方法は、前記したように、本発明によるミックスに、水を添加混合して得られた混合物を電子レンジで加熱することを含んでなる。具体例を示すと、本発明のミックスを、容器に充填し、ここに水を加えて撹拌し、ペースト状にした後に、電子レンジによって、例えば80℃以上となるように、加熱し、必要により冷却することによって、目的とする舌触りのよいゼリーを得ることができる。
【0031】
このとき、ミックスに加える水の量(加水量)は、本発明のミックス1重量部に対して、通常、5〜10重量部であるが、所望するゼリーの物性や種類、使用する容器、電子レンジの出力、実際のペースト状にしたミックスの状態などを考慮して、適宜調整してもよい。
【0032】
なお本明細書において、「約」および「程度」を用いた値の表現は、その値を設定することによる目的を達成する上で、当業者であれば許容することができる値の変動を含む意味である。例えば、所定の値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内の変動を許容し得ることを意味する。
【実施例】
【0033】
本発明を以下の例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
実施例1
第1表に示した配合比となるよう各原料を秤量して混合し、コーヒーゼリーミックス(組成物1および2)およびパインゼリーミックス(組成物3および4)を調製した。
ここでβ−1,3−グルカンとしては、カードランを用い、具体的にはカードラン(「カードラン」(商品名)、キリン協和フーズ株式会社製)を用いた。この微粉砕していないカードランの平均粒子径は、約130μmであった。
【0035】
またカードラン微粉砕品は、市販のカードラン微粉砕品(「カードランNS」(商品名)、キリン協和フーズ株式会社製)を用いた。このカードラン微粉砕品の平均粒子径は、20〜30μmであった。
コーヒー粉末およびパイン粉末は市販品を使用した。
【0036】
【表1】

【0037】
組成物1〜4を、それぞれ10gずつ紙カップ(容量205ml)に入れ、水70gを加えてよくかき混ぜた。紙カップ上部をラップで覆い、これを、電子レンジ(700W)で1分間加熱した。次いで、60℃程度まで冷却し、ゼリーを得た。
【0038】
各組成物に対応する得られた各ゼリーについて、ゼリーの形成性、および舌触りを下記の基準に従って、専門のパネラー5人により評価した。
[評価基準]
ゼリーの形成性:
○: 崩れは見られず、良好である
△: 一部に崩れが見られる
×: ゼリー形性がされず、全体的に崩れた状態である
【0039】
舌触り:
○: なめらかであり、良好である
△: ややざらつく
×: ざらつく
【0040】
結果は下記の第2表に示される通りであった。
結果にあるように、カードランの微粉砕品を用いて得られたコーヒーゼリーおよびパインゼリーは、いずれも、舌触りが良好であり、また同時に、ゼリーの形成についても良好なものであった。さらに、均一性、および風味についも測定し評価したところ、良好な結果が得られた。
【0041】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−1,3−グルカンの微粉砕品を含んでなることを特徴とする、電子レンジ加熱調理用ゼリーミックス。
【請求項2】
β−1,3−グルカンがカードランである、請求項1に記載のゼリーミックス。
【請求項3】
β−1,3−グルカンの微粉砕品が、粒子径20〜30μmのカードランである、請求項1または2に記載のゼリーミックス。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のミックスに、水を添加混合して得られた混合物を電子レンジで加熱することを含んでなる、舌触りの良好なゼリーの製造方法。