説明

電子レンジ調理に対応した、自動開封機能付き深絞り包装材料

【課題】深絞り包材に高温軟化樹脂層を適用可能とし、調理の手間を省くとともに、製造工程における包材の生産性を向上できる、電子レンジ調理に対応した自動開封機能付き深絞り包装材料を提供する。
【解決手段】ボトム材3およびトップ材2のそれぞれは、内面から順に少なくともシーラント層17,29、印刷基材層13,23および表面基材層11,21を積層させた積層構造を有し、トップ材2には、シーラント層17と、表面基材層11との間に、パターンコートした高温軟化樹脂18からなる蒸気口部7を形成するとともに、蒸気口部7周縁のヒートシールには、この蒸気口部7の容器中央側部分を内容物5側に突出させた突出部aを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形成した収容部内に内容物を収容させるボトム材と、内容物をボトム材に密封するトップ材との周縁部をヒートシールしてなる、深絞り製造可能な電子レンジ用包装容器に関し、より詳細には、ボトム材およびトップ材のそれぞれは、容器内面から順に少なくともシーラント層、印刷基材層および表面基材層を積層させた積層構造を有し、トップ材には、シーラント層と、表面基材層との間に、パターンコートした高温軟化樹脂からなる蒸気口部を形成するとともに、蒸気口部周縁のヒートシールには、この蒸気口部の容器中央側部分を内容物側に突出させた突出部を設けた電子レンジ調理用包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍食品やチルド食品の加工食品は、プラスチック製の包装材料で構成された包装袋や、その包装材料を蓋材に用いた容器に密封収容された状態で冷凍され、電子レンジで加熱調理されている。この包装材料は、耐熱性基材層とシーラント層などからなる積層構造からなり、これら層間に、室温以下の温度環境では所定の強度を有するが、高温の温度環境では所定の強度が低下する高温軟化樹脂層を少なくとも一領域に設けることで、通常の輸送時や保管時に加わる圧力や衝撃によっても剥離することがなく、内容物を包材ごと直接電子レンジで加熱する際、高温軟化樹脂層とシーラント層の一部を部分的に破壊することにより、内容物に影響を与えないように包装袋又は容器の内圧を低下させることができる電子レンジ対応包装材料、それを用いた包装袋及び容器とした(例えば、特許文献1)ものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−190912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のような電子レンジ対応包装材料では、単に積層構造からなる包装材料間に、加工食品などの内容物を収容した製袋品や、これら内容物を収容した容器に、上記包装材料を蓋材として用いたものである。一方、加工食品の包材には、深絞り包材として、ボトム材(フィルムシート)を加熱成形して、変形金型などにより1個または複数個の収容部を形成し、その収容部の中に内容物を収容するとともに、開口部をトップ材(フィルムシート)で覆い、この包材内を真空またはガス充填しながら、ボトム材およびトップ材の周縁部をヒートシールする周知の技術もある。
【0005】
しかしながら、このような深絞り包材を用いたものでは、ボトム材に収容部を形成する成形工程において、金型によりボトム材を加熱成形するため、上記のように電子レンジの加熱により発生する包材の内圧を逃がすために用いる、電子レンジ対応としての高温軟化樹脂層を、ボトム材を構成する材質の積層構造間に設けると、成形時点で高温軟化樹脂層が溶融してしまうために、その機能を果たせず、高温軟化樹脂層を用いることができない。
このように、従来の深絞り包材では、内容物を収容した包材を直接電子レンジで調理する電子レンジに対応することができず、中身となる内容物を別途準備した皿に取り出した後、電子レンジで調理するか、包材を開けずに時間をかけて湯煎を行っており、調理に時間と手間を要するという問題があった。
このような状況の下、本発明では、深絞り包材に高温軟化樹脂層を適用可能とし、調理の手間を省くとともに、製造工程における包材の生産性を向上できる、電子レンジ対応した自動開封機能付き深絞り包装材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、請求項1に記載の発明は、形成した収容部内に内容物を収容させるボトム材と、前記内容物を前記ボトム材に密封するトップ材との各周縁部をヒートシールしてなる、深絞り製造可能な電子レンジ調理用包装容器において、前記ボトム材およびトップ材のそれぞれは、容器内面から順に少なくともシーラント層、印刷基材層および表面基材層を積層させた積層構造を有し、前記トップ材には、前記シーラント層と、前記表面基材層との間に、パターンコートした高温軟化樹脂からなる蒸気口部を形成するとともに、前記蒸気口部周縁のヒートシールには、該蒸気口部の容器中央側部分を前記内容物側に突出させた突出部を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子レンジ調理用包装容器において、前記蒸気口部は、容器の周縁部を構成する一辺の中央近傍に形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1〜2に記載の電子レンジ調理用包装容器において、前記ボトム材およびトップ材周縁部のヒートシールは、前記蒸気口部を設けない側辺のシール幅を、前記蒸気口部を設けた側辺のシール幅に対して広く形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3に記載の電子レンジ調理用包装容器において、前記ボトム材およびトップ材周縁部のヒートシールは、該ヒートシールの内側角部を屈曲させたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4に記載の電子レンジ調理用包装容器において、前記高温軟化樹脂は、エチレンー酢酸ビニル共重合体樹脂、またはポリアミド、硝化綿およびポリエチレンワックスを含有する樹脂からなることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5に記載の電子レンジ調理用包装容器において、前記ボトム材の積層構造には、中間層を介在させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、形成した収容部内に内容物を収容させるボトム材と、内容物をボトム材に密封するトップ材との各周縁部をヒートシールしてなる、深絞り製造可能な電子レンジ調理用包装容器において、ボトム材およびトップ材のそれぞれは、容器内面から順に少なくともシーラント層、印刷基材層および表面基材層を積層させた積層構造を有し、トップ材には、シーラント層と、表面基材層との間に、パターンコートした高温軟化樹脂からなる蒸気口部を形成するとともに、蒸気口部周縁のヒートシールには、この蒸気口部の容器中央側部分を内容物側に突出させた突出部を設けたので、内容物を収容するための収容部を成形しないトップ材側に高温軟化樹脂からなる蒸気口部を形成したことで、電子レンジ用包装容器においても深絞り製造が可能となった。また、蒸気口部のヒートシール幅を突出部により広げることで、蒸気口部の保形性を維持でき、電子レンジ調理の際、蒸気口部から確実に包装容器内の内圧を逃すことができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、蒸気口部は、容器の周縁部を構成する一辺の中央近傍に形成したので、蒸気口部の保形性を維持でき、その蒸気口部から包装容器内の内圧を確実に逃すことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、ボトム材およびトップ材周縁部のヒートシールは、蒸気口部を設けない側辺のシール幅を、蒸気口部を設けた側辺のシール幅に対して広く形成したので、蒸気口部を有さない側辺のヒートシール幅を広くすることから、この広いヒートシール幅が、トップ材における延伸フィルムのカールを抑え、包装容器の側部をフラットな形状にでき、包装容器の陳列性や印刷内容の視認性など利便性を向上させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、ボトム材およびトップ材周縁部のヒートシールは、このヒートシールの内側角部を屈曲させたので、この屈曲部分に内容物の固形物の一部が入り込み滞留することがない。つまり、電子レンジによる加熱調理の際に、こげるなどしてさらに硬くなった内容物5の固形物の一部が、ヒートシールの内側角部に入り込んで包装容器1に穴を開けることがなく、内容物5の流出を防ぐことができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、高温軟化樹脂は、エチレンー酢酸ビニル共重合体樹脂、またはポリアミド、硝化綿およびポリエチレンワックスを含有する樹脂からなるので、電子レンジで加熱した際に、融点が60〜90度の高温軟化樹脂と、シーラント層の一部の部分的な剥離を起こさせ易くでき、蒸気口部から包装容器内の内圧を確実に逃すことができる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、ボトム材の積層構造には、中間層を介在させたので、輸送時の振動や衝突により発生するピンホールの発生を防ぎ、内容物の密封性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一例を示す、深絞り製造可能な電子レンジ用包装容器の側面模式図である。
【図2】同電子レンジ用包装容器を模式的に示した斜視図である。
【図3】トップ材の拡大断面図である。
【図4】ボトム材の拡大断面図である。
【図5】内容物を収容部内に収容したボトム材にトップ材を密封させる説明図である。
【図6】深絞り包装製造機の一例を示した全体斜視図である。
【図7】電子レンジによる加熱調理時に、包装容器の内圧が蒸気口部から放出される説明図である。
【図8】蒸気口部から放出される内圧を示すトップ材の拡大断面図である。
【図9】蒸気口部の容器内側方部分を包装容器内側に突出させた突出部を示す蒸気口部付近の拡大平面図である。
【図10】蒸気口部を短辺側の外側部に設けた電子レンジ用包装容器の平面模式図である。
【図11】ヒートシール幅を包装容器長辺側で広げた例を示す電子レンジ用包装容器の平面模式図である。
【図12】ボトム材およびトップ材周縁部におけるヒートシールの内側角部を屈曲させた電子レンジ用包装容器の平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1
は本発明の一例を示す、深絞り製造可能な電子レンジ用包装容器の側面模式図、図2は同電子レンジ用包装容器を模式的に示した斜視図である。
【0020】
本願発明の深絞り製造可能な電子レンジ用包装容器1は、図1に示すように、後述する周知の深絞り成形機6で形成した収容部4内に内容物5を収容させるボトム材3と、内容物5をこのボトム材3に密封するトップ材2との各周縁部(四辺)をヒートシールしてなるものである。
【0021】
内容物5は、冷凍食品やチルド食品の加工食品として、例えば、しゅうまいなどの固形物だけや、あるいは、ハンバーグやミートボールなどの固形物およびそれらにかけられているソースなど液体の両方からなるものが例示される。
【0022】
次に、トップ材2やボトム材3の構成および本願包装容器の特徴を説明する。図3はトップ材の拡大断面図、図4はボトム材の拡大断面図、図5は内容物を収容部内に収容したボトム材にトップ材を密封させる説明図、図6は深絞り包装製造機の一例を示した全体斜視図、図7は電子レンジによる加熱調理時に、包装容器の内圧が蒸気口部から放出される説明図、図8は蒸気口部から放出される内圧を示すトップ材の拡大断面図、図9は蒸気口部の容器内側方部分を包装容器内側に突出させた突出部を示す蒸気口部付近の拡大平面図である。
【0023】
まず、トップ材2は、図3に示すように、外側(図3では上面)から順に、内容物5を密封し接触する内側へ向けて、表面基材層11、接着層12、印刷基材層13、色インキ14、白インキ15、接着層16およびシーラント層17からなる積層体である。
【0024】
表面基材層11は、耐熱性を有し、トップ材2の必須の層であり、このトップ材2を用いて包装容器1が作製された際には、外側に配置されるように設けられる。表面基材層11としては、一般に電子レンジで加熱又は加熱調理される冷凍食品やチルド食品用の包装材料として使用されているものであれば特に限定されない。例えば、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)のほか、シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ナイロンフィルム、シリカ蒸着延伸ナイロンフィルム、アルミナ蒸着延伸ナイロンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリビニルアルコールコート延伸ポリプロピレンフィルム、ナイロン6/メタキシレンジアミンナイロン6共押共延伸フィルム、ポリプロピレン/エチレン−ビニルアルコール共重合体共押共延伸フィルムなどのうち、何れかのフィルムを使用することができる。
【0025】
これら表面基材層11は、融点が通常150℃以上であり、厚さは10〜50μmである。なお、この表面基材層11は、輸送時の耐性を向上させるために、さらに保護層としてこの表面基材層11をラミネートしてもよい。
【0026】
接着層12,16は、公知のもので衛生的に支障のない、例えば二液硬化型ポリウレタン接着剤などを用いることができる。
【0027】
印刷基材層13は、延伸ナイロンフィルム(ONy)などを用いることができ、周知の印刷方法によって、内容表示または美感付与等の目的で設けられるものであり、適宜必要に応じて用いられる。通常、この印刷基材層13は、表面基材層11の下面側、すなわち包装容器1が作製された際に、表面基材層11の内側(内容物5側)になるように形成される。
【0028】
シーラント層17は、印刷基材層13下面に接着剤を介して設けられ、包装容器1が作製された際には、内容物5に接触する最内層となる。このシーラント層17としては、低密度ポリエチレンフィルム、超低密度ポリエチレンフィルム、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム、中密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム(これらポリエチレンフィルムの略称をPEF)、無延伸ポリプロピレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−メタクリル酸共重合体フィルム、エチレン−メチルアクリレート共重合体フィルム、エチレン−エチルアクリレート共重合体フィルム、エチレン−メチルメタクリレート共重合体フィルム、アイオノマーフィルムのうち、何れか一種以上のフィルムが使用され、単層シーラント層または多層シーラント層とすることができる。
【0029】
これらのシーラント層17の厚さは、通常20〜60μmである。本発明においては、包装容器1が作製される際に、シーラント層17どうしが包装容器1の被シール部でシール面を形成するので、従来の包装容器のように、シール強度の弱い剥離剤層によって一部のシール面が形成されることがなく、冷凍時、輸送時、保管時等において、貼り合わされたシール面が破れて内容物の露出が起こることがない。
【0030】
また、色インキ14の外側に位置する包装容器1の例えば長辺側(正方形など容器周縁各辺の長さが等しい容器でもよく、容器1の周縁部を構成する一辺であればよい)中央近傍の外側端部であって、収容部4との間には、高温軟化樹脂層18が印刷基材層13下面に周知の方法でパターンコートされており、この高温軟化樹脂層18が、トップ材2およびボトム材3をヒートシールして形成した包装容器1の蒸気口7となる。このような蒸気口7の形成位置にすることで、蒸気口部7の保形性を維持でき、その蒸気口部7から包装容器1内の内圧を確実に逃すことができる。
【0031】
高温軟化樹脂層18は、60〜90℃の融点を有する材料、例えば、エチレン−酢酸ビニル系共重合体樹脂、またはポリアミド、硝化綿およびポリエチレンワックスを含有する樹脂が例次される。融点が60〜90℃の樹脂層を用いることによって、電子レンジで加熱した際に、高温軟化樹脂層18とシーラント層17の一部の部分的な破壊を起こりやすくさせることができる。
【0032】
高温軟化樹脂層18の厚さは、1〜5μmであることが好ましい。高温軟化樹脂層18の厚さが1μm未満では、電子レンジで加熱した際に、高温軟化樹脂層18とシーラント層17の破壊が起きにくいという不都合があり、また、高温軟化樹脂層18の厚さが5μmを越えると、高温軟化樹脂層18のパターンによっては、得られたフィルム状のトップ材2をロール状に巻いたときに、一部に盛り上がりが生じ、その部分の包装材料が伸びてしまうという不都合がある。
【0033】
この高温軟化樹脂は、包装容器1が電子レンジ調理専用であれば、印刷基材層13に周知のパーターベタ(網かけのない印刷)により印刷されるが、この包装容器1を電子レンジ調理および湯煎調理兼用とすれば、図例のような格子目に印刷することで、湯煎時のデラミ発生(層間剥離)を防止することができる。
【0034】
従って、トップ材2の層構成としては、外側(図3では上面)から順に、内容物5を密封し接触する内側へ向けて次のような構成が例示される。例えば構成例1として、PET/接着層/ONy/インキ・高温軟化樹脂/接着層/PEFとすることができる。また、構成例2として、ONy/接着層/ONy/インキ・高温軟化樹脂/接着層/PEF、構成例3として、ONy/インキ・高温軟化樹脂/接着層/PEF、構成例4として、PET/インキ・高温軟化樹脂/接着層/PEFなどを用いてもよい。
【0035】
次に、ボトム材3は、図4に示すように、外側(図4では下面)から順に、収容部4(図4では不図示)内に収容する内容物5へ向けて、表面基材層21、接着層22、印刷基材層23、色インキ24、白インキ25、接着層26、中間層27、接着層28およびシーラント層29からなる積層体である。
【0036】
なお、最内層のシーラント層29は、トップ材2が蒸気口7を開けるためPEFを使用しているため、ボトム材3側も耐熱性と耐寒性の両者を満たした耐熱タイプのPEFを使用する。印刷を行う場合は、印刷適性と成形性の両者を満たすため成形PETを使用する。最外層には、成形性と耐熱性の両者を満たすため未延伸ポリプロピレン(レトルトCPP)を使用する。このボトム材3では、内容物5が接触するシーラント層29から下方に向けて後述する深絞り成形機6により収容部4が形成される。
【0037】
なお、ボトム材3には、図例で示すように、シーラント層27に近い接着層26,26間に適宜中間層27を介在させてもよい。この中間層27は、未延伸ナイロン(CNY)などを用いることができ、この中間層27により、包装容器1の輸送時の衝撃などでシーラント層29に生じる恐れがあるピンホールを防ぎ、内容物5の密封性を維持することができる。
【0038】
従って、ボトム材3の層構成としては、外側(図3では下面)から順に、内容物5を密封し接触する内側へ向けて次のような構成が例示される。例えば構成例1として、CPP/接着層/成形PET/インキ/接着層/CNY/接着層/PEFとすることができる。また、構成例2は、CPP/接着層/CNY/接着層/PEF、構成例3としては、CPP/接着層/PEFなどを用いてもよい。
【0039】
このようなトップ材2およびボトム材3の製造は、トップ材2では、印刷工程で絵柄印刷を印刷するとともに、高温軟化樹脂層18を印刷する。その後、ラミネート工程にてPETおよびPEFなどとドライラミネート法にてラミネート加工を行う。ボトム材3では、印刷が有る場合には、印刷工程で絵柄印刷を印刷し、その後ラミネート工程にてCPP、CNY、PEFとドライラミネート法にてラミネート加工を行うが、印刷が無い場合は、ラミネート工程にてCPP、CNY、PEFとドライラミネート法にてラミネート加工を行い、両者は周知のスリッター工程にて巻き取り状態にする。
【0040】
そして、深絞り成形機6により、図5に示すように、上述したボトム材3のシーラント層29側中央近傍に形成した収容部4内に内容物5を収容した後、トップ材2のシーラント層17側をボトム材3のシーラント層29側と対向させて両者の周縁部をヒートシールすることで内容物5を密閉封入する。
【0041】
深絞り成形機6は、例えば図6に例示するように、トップ材2およびボトム材3を成形機に巻き取り供給機31,32により別個に供給し、ライン33上において、ボトム材3を、成形金型34によりシーラント層29側から下方へ向けて収容部4を形成した後、この収容部4内に内容物5を供給し、トップ材2のシーラント層17側をボトム材3のシーラント層29側と対向させて、両者間をヒートシール機35で減圧しながら周縁部をヒートシールして、内容物5を密閉封入する。その後1個口にカットし急速冷凍の後、箱詰め出荷となる。なお、この深絞り成形機6の製造工程は周知技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0042】
また、上述したように、トップ材2およびボトム材3の周縁部のヒートシールのほか、蒸気口部7もヒートシールされるが、本願蒸気口部7では、図9に示すように、この蒸気口部7の内側辺(容器中央側部分)を、容器1内側(内容物5を収容する収容部4方向)方向にヒートシール部分を突出させた突出部aが設けられる。
【0043】
ここで、内容物5が密封された包装容器1を電子レンジで加熱調理した場合、図7に示すように、密封された内容物5により、収容部5内の内圧が、残存空気の膨張や食品内からの水蒸気の発生によって上昇し、この内圧が蒸気口部7から外方に放出される。
【0044】
このとき、蒸気口7では、図8に示すように、電子レンジによる加熱で、圧力が上昇した収容部4内の内圧は、包装容器1周縁に向かってヒートシール部分を押圧し、ヒートシールのエッジ部分に亀裂が生じ、この亀裂を起点にシーラント層17が裂ける。一方、加熱により高温となった高温軟化樹脂層18は、融点が60〜90度であるために印刷基材層13から剥がれ、これら高温軟化樹脂層18および高温軟化樹脂層18近傍のシーラント層17の一部が破壊され、この破壊された蒸気口部7から内圧が外方に放出される。
【0045】
このような構成により、電子レンジによる加熱調理時に、収容部4内の内圧蒸気のみが蒸気口部7から外方に放出され、内容物5は外方に飛散することなく収容部4内で確実に調理することができる。
【0046】
特に、本願発明では、内容物5を収容するための収容部4を成形しないトップ材2側に高温軟化樹脂18からなる蒸気口部7を形成したため、このような収容部4を形成し、かつ高温軟化樹脂層18による蒸気口部7を備える包装容器1を、深絞り成形機6などで深絞り製造可能となったことで、従来のように、深絞り製造し、加工食品を充填した包装容器を用いて調理する際に、包装容器ごと湯煎に長時間を要したり、開封して取り出した内容物を電子レンジにかける必要がなく、直接包装容器1を電子レンジにかけて調理できるようになったことから、生産性の向上および調理の手間を簡略化することができる。
【0047】
なお、本願発明の包装容器1では、蒸気口部7の保形性を維持し、収容部4内などで発生する内圧を確実に放出させることができる。図9は蒸気口部の容器内側方部分を包装容器内側に突出させた突出部を示す蒸気口部付近の拡大平面図である。
【0048】
また、蒸気口7のヒートシールにおいて、突出部aが設けられているため、蒸気口部7のヒートシール幅wを、この突出部aにより広げることにより、蒸気口部7の反りや歪みを防げることで蒸気口部7の保形性を維持でき、電子レンジ調理の際、蒸気口部7から確実に包装容器1内の内圧を逃すことができる。
【0049】
なお、本願包装容器1の蒸気口部7は、上述した形成位置に限定されない。図10は蒸気口部を短辺側の外側部に設けた電子レンジ用包装容器の平面模式図である。この場合、図10に示すように、包装容器1における周縁部短辺側中央近傍のトップ材2に、上述同様にして蒸気口部7´を形成してもよい。
【0050】
従って、蒸気口部7´が、この位置に形成されていても、電子レンジによる加熱で、圧力が高まった収容部4内の内圧は、包装容器1周縁に向かってヒートシール部分を押圧する一方、加熱により高温となった高温軟化樹脂層18は、融点が60〜90度であるために軟化することから、内圧の行先方向が、この軟化した高温軟化樹脂層18に向けて集中するため、これら高温軟化樹脂層18および高温軟化樹脂層18近傍のシーラント層17の一部が破壊され、この破壊部分である蒸気口部7から内圧が外方に放出される。このような蒸気口7の形成位置にすることで、蒸気口部7の保形性を維持でき、その蒸気口部7から包装容器1内の内圧を確実に逃すことができる。
【0051】
次に、本願包装容器1では、ヒートシール幅を調整することにより、蒸気口部7のカールを防ぐことができる。図11はヒートシール幅を包装容器長辺側で広げた例を示す電子レンジ用包装容器の平面模式図である。
【0052】
上述したように、本願包装容器1のトップ材2には、PETやONyなどの延伸フィルムから構成されているが、ボトム材3には、CNYやCPPなど未延伸フィルムから構成されているため、トップ材2およびボトム材3を周縁部でヒートシールすると、トップ材2の延伸フィルムが延伸し、トップ材2がボトム材3側へカールしてしまい、フラットな面にならないという不都合を生じることがある。
【0053】
そこで、本願包装容器1では、ボトム材3およびトップ材2周縁部のヒートシールは、蒸気口部7を設けない側辺のシール幅hを、蒸気口部7を設けた側辺のシール幅h´に対して広く形成する。この場合、図例のように、蒸気口部7を設けていない容器1周縁の側辺である長辺側(短辺側でもよい)のヒートシール幅hを、蒸気口部7を有する容器1周縁の側辺である短辺側(長辺側でもよい)のヒートシール幅h´よりも1.5倍程度広く形成される。なお、図中包装容器1における収容部4の左側方は、商品名などを印刷した大きな面積を有するヒートシール部分である。
【0054】
このような構成により、蒸気口部7を有さない方の側辺部のヒートシール幅を広くすることから、この広いヒートシール幅が、トップ材2における延伸フィルムのカールを抑え、包装容器1の側部をフラットな形状にでき、包装容器1の陳列性や印刷内容の視認性など利便性を向上させることができる。
【0055】
次に、本願包装容器1では、ヒートシールの周縁角部を調整することにより、包装容器1の穴開きを防ぐことができる。図12はトップ材およびボトム材周縁部におけるヒートシールの内側角部を屈曲させた電子レンジ用包装容器の平面模式図である。
【0056】
この場合、図12に示すようにトップ材2およびボトム材3周縁部四辺をヒートシールする際、四隅各角部内側に屈曲部分Rを形成させたヒートシールとする。この屈曲部分Rを形成させるためには、例えば、ヒートシール機35の四隅各角部に屈曲部分Rを形成するなど、適宜周知の方法を用いることができる。
【0057】
このような構成にすることで、この屈曲部分Rに内容物5の固形物の一部が入り込み滞留することがない。つまり、電子レンジによる加熱調理の際に、こげるなどしてさらに硬くなった内容物5の固形物の一部が、ヒートシールの内側角部に入り込んで包装容器1に穴を開けることがなく、内容物5の流出を防ぐことができる。
【実施例】
【0058】
次に、具体的な実施例を示して本発明を詳細に説明する。
トップ材には、PET16/接着層/ONy15/インキ・高温軟化樹脂/接着層/PEF40を用い、グラビア印刷をもちいて、延伸ナイロンフィルムへ2液硬化型ウレタン系インキ(CLIOS/ALFA硬化剤=主剤/硬化剤:DICグラフィックス社製)印刷。その際見当を合わせてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(融点:66.8℃、WT−PC剤:DICグラフィックス社製)またはポリアミド、硝化綿およびポリエチレンワックスを含有する樹脂(融点:83.8℃、EOPワニス:ザ・インクテック株式会社製)をパターンで、厚さ3μmとなるようパターンコートした。さらに印刷面側に、シーラント層として厚さ40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを、2液硬化型ポリウレタン接着剤(RU077/H7=主剤/硬化剤:ロックペイント製)を用いてドライラミネートする。更に非印刷面側には、耐摩耗性・耐ピンホール性・耐熱性を向上させるため、ポリエチレンテレフタレートフィルムを、2液硬化型ポリウレタン接着剤(RU077/H7=主剤/硬化剤:ロックペイント製)を用いてドライラミネートした。
【0059】
また、ボトム材には、CPP80/接着層/PET16/インキ/接着層/CNY20/接着層/PEF40を用い、グラビア印刷をもちいて、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムへ2液硬化型ウレタン系インキ(CLIOS/ALFA硬化剤=主剤/硬化剤:DICグラフィックス社製)印刷。さらに印刷面側に、耐ピンホール性を考慮した未延伸ナイロンフィルム及びシーラント層として厚さ40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを、2液硬化型ポリウレタン接着剤(RU077/H7=主剤/硬化剤:ロックペイント製)を用いてドライラミネートする。更に非印刷面側には、耐摩耗性・耐ピンホール性・耐熱性を向上させるため、未延伸ポリプロピレンフィルムを、2液硬化型ポリウレタン接着剤(RU077/H7=主剤/硬化剤:ロックペイント製)を用いてドライラミネートした。なお、本願のボトム材には、上述したように、シーラント層に近い接着層間に適宜中間層を適宜介在させてもよく、この中間層は、CNYなどを用いることができる。
【0060】
そして、深絞りライン(ムルチ)にて、内容物を充填し両サイドを18mm巾、天(蒸気口部側)を7mm(蒸気口部は14mm)巾、地を20mm巾でヒートシールし、直後に冷凍した。これにより作成した包装容器を、電子レンジで加熱調理を行った結果、電子レンジで100℃以上に加熱され、蒸気で内圧が上昇した深絞り包材は、包装袋のヒートシール部エッジに亀裂が生じ、この亀裂を起点にシーラント層が裂け、100℃以上の加熱により軟化している高温軟化樹脂層を剥がし、包装袋内の空気が抜けて、内圧を低下させる事が出来た。この時の蒸通時間は安定していた。また、天(蒸気口側)シールが7mm巾のみの時には、蒸気口部が折れ曲がる事が有り、安定した時間での蒸通時間を得ることが出来なかった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の包装容器は、電子レンジ調理に対応した深絞り製造可能とする、あらゆる容器に有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 包装容器
2 トップ材
3 ボトム材
4 収容部
5 内容物
6 深絞り成形機
7 蒸気口部
18 高温軟化樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形成した収容部内に内容物を収容させるボトム材と、
前記内容物を前記ボトム材に密封するトップ材と、
の各周縁部をヒートシールしてなる、深絞り製造可能な電子レンジ調理用包装容器において、
前記ボトム材およびトップ材のそれぞれは、容器内面から順に少なくともシーラント層、印刷基材層および表面基材層を積層させた積層構造を有し、
前記トップ材には、前記シーラント層と、前記表面基材層との間に、パターンコートした高温軟化樹脂からなる蒸気口部を形成するとともに、
前記蒸気口部周縁のヒートシールには、該蒸気口部の容器中央側部分を前記内容物側に突出させた突出部を設けたことを特徴とする電子レンジ調理用包装容器。
【請求項2】
前記蒸気口部は、容器の周縁部を構成する一辺の中央近傍に形成したことを特徴とする、請求項1に記載の電子レンジ調理用包装容器。
【請求項3】
前記ボトム材およびトップ材周縁部のヒートシールは、前記蒸気口部を設けない側辺のシール幅を、前記蒸気口部を設けた側辺のシール幅に対して広く形成したことを特徴とする、請求項1〜2に記載の電子レンジ調理用包装容器。
【請求項4】
前記ボトム材およびトップ材周縁部のヒートシールは、該ヒートシールの内側角部を屈曲させたことを特徴とする、請求項1〜3に記載の電子レンジ調理用包装容器。
【請求項5】
前記高温軟化樹脂は、エチレンー酢酸ビニル共重合体樹脂、またはポリアミド、硝化綿およびポリエチレンワックスを含有する樹脂からなることを特徴とする、請求項1〜4に記載の電子レンジ調理用包装容器。
【請求項6】
前記ボトム材の積層構造には、中間層を介在させたことを特徴とする、請求項1〜5に記載の電子レンジ調理用包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−43668(P2013−43668A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181819(P2011−181819)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】