説明

電子体温計及び制御方法

【課題】 発熱時の体温管理を容易にするとともに、体温変化の推移が把握しやすい電子体温計を提供する。
【解決手段】 電子体温計の制御方法であって、測定された体温データを測定時刻と対応付けて保存する工程と、前記保存された体温データに基づいてトレンドグラフを生成する工程(ステップS607)と、前記生成されたトレンドグラフに基づいて、前記被検者の体温変化を判断し、前記被検者の体温が上昇中であるのか下降中であるのかを判定する工程(ステップS603)と、上昇中であると判定された場合には、前記被検者の体温最大値と、その到達時刻を推定し、下降中であると判定された場合には、前記被検者の体温が平熱に到達する到達時刻を推定する工程(ステップS604、S605)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子体温計及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、体温管理に適した電子体温計として、測定した体温の記録と、トレンドグラフの作成が可能な女性用電子体温計が知られている。当該電子体温計によれば、日ごとの基礎体温の変化を容易に管理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−50364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、風邪やインフルエンザ等、各種疾病により発熱した場合にも、電子体温計を用いて体温の変化を管理することができれば有益である。日単位ではなく時間単位で行われた体温の測定結果を、体温の時間変化としてトレンドグラフにより可視化できれば、投薬タイミングを決定したり、投薬の効果を確認したりすることが可能となるからである。
【0005】
しかしながら、発熱時の体温測定は一定間隔で行われるとは限られず、通常、測定間隔は不規則となる。このため、トレンドグラフとして測定点をプロットしたものを表示しただけでは、体温変化の推移が読み取りにくく、また、このようなトレンドグラフを見ても、被検者の今後の体温変化を推定することは困難である。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、発熱時の体温管理を容易にするとともに、体温変化の推移が把握しやすい電子体温計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明に係る電子体温計は以下のような構成を備える。即ち、
被検者の体温を測定する電子体温計であって、
測定された体温データを、測定時刻と対応付けて保存する保存手段と、
前記保存手段に保存された体温データを、対応する前記測定時刻に応じてプロットすることでトレンドグラフを生成する生成手段と、
前記生成手段により生成されたトレンドグラフに基づいて、前記被検者の体温が上昇中であるのか下降中であるのかを判定する判定手段と、
前記判定手段において上昇中であると判定された場合には、前記被検者の体温が到達する最大値と、該最大値に到達する時刻とを推定値として推定し、前記判定手段において下降中であると判定された場合には、前記被検者の体温が平熱に到達する時刻を推定値として推定する推定手段と、
前記生成手段により生成されたトレンドグラフと、前記推定手段により推定された推定値とを表示する表示手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発熱時の体温管理を容易にするとともに、体温変化の推移が把握しやすい電子体温計を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電子体温計100の外観構成を示す図である。
【図2】電子体温計100の機能構成を示す図である。
【図3】電子体温計100の動作モードを説明するための図である。
【図4】電子体温計100の体温測定モードにおける体温測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】体温測定モードにおける表示部の表示内容を説明するための図である。
【図6】電子体温計100のトレンド表示モードにおけるトレンド表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】トレンド表示モードにおける表示部の表示内容を説明するための図である。
【図8】電子体温計100のトレンド表示モードにおける推定処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】上昇時推定処理の概要を説明するための図である。
【図10】下降時推定処理の概要を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、必要に応じて添付図面を参照しながら本発明の各実施形態の詳細を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能であるものとする。
【0011】
[第1の実施形態]
<1.電子体温計の外観構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子体温計100の外観構成を示す図である。図1において、101は電子体温計100のハウジングであり、102はエンドキャップである。エンドキャップ102は、内蔵された温度計測部に対して被検者の体温が伝導しやすいように、ステンレスなどの金属により被覆されている。
【0012】
103は体温測定結果として体温データ等を表示する表示部である。104及び105は電子体温計100が有する動作モードである、“体温測定モード”と“トレンド表示モード”とを切り替えるための切り替えボタンである。体温測定モードボタン104が押下されると、体温測定モードに遷移し、体温測定及び体温測定結果の保存が可能となる。一方、トレンド表示モードボタン105が押下されると、トレンド表示モードに遷移し、保存された体温測定結果をトレンドグラフとして表示したり、表示されたトレンドグラフに基づいて、体温変化の推移を推定したりすることが可能となる。なお、図1の例は、“体温測定モード”に遷移した様子を示している。
【0013】
106は移動ボタンであり、表示部103に表示された各項目に対する選択位置を表すカーソル(図1において不図示)を移動させる。107は決定ボタンであり、決定ボタン107が押下されることにより、移動ボタン106により移動されたカーソルの位置に対応する項目が選択される。
【0014】
108はリセットボタンであり、体温測定モードにおいて体温測定した際に保存した体温測定結果を、保存先から消去する。
【0015】
<2.電子体温計の構成>
図2は本実施形態にかかる電子体温計100の機能構成を示すブロック図である。
【0016】
電子体温計100は、検出した温度を発振信号として出力する温度計測部210と、温度計測部210より出力された信号に基づいて各種処理を行い、被検者の体温データを算出すると共に電子体温計100全体の動作を制御する演算制御部220と、算出された被検者の体温データを表示する表示部230(図1の表示部103に対応する)と、音声出力部240と、各種ボタン(図1の各種ボタン(104〜108)に対応する)を含む操作部260と、電源部250とを備える。
【0017】
温度計測部210は、サーミスタ、コンデンサ、測温用CR発振回路等から構成されており、サーミスタにより検出された温度を発振信号として出力する。出力された発振信号はカウンタ222においてカウントされることで、デジタル量として出力される。なお、温度計測部210の構成は一例であって、これに限定されるものではない。
【0018】
演算制御部220は、温度計測部210より出力される発振信号をカウントするカウンタ222を備える。
【0019】
また、体温測定に必要なパラメータを格納したEEPROM225と、カウンタ222によるカウント値に基づいて体温データを算出するとともに、算出された体温データの時間変化に基づいて、被検者の体温データ(予測値)を算出するプログラムを格納したROM224と、算出された体温データを時系列で記憶するためのRAM226と、ROM224に格納されたプログラムに従った演算や音声出力部240への音声の出力を指示する演算処理部223とを備える。
【0020】
なお、本実施形態に係る電子体温計100では、ROM224に、更に、トレンド表示モードにおけるトレンド表示処理(詳細は後述)にて用いられる複数の参照グラフ(詳細は後述)と、当該トレンド表示処理を実行するためのプログラムとが格納されているものとする。
【0021】
また、演算制御部220は、演算処理部223において算出された体温データを測定結果として表示する表示部230を制御するための表示制御部227を備える。
【0022】
更に、演算制御部220は、上記カウンタ222、表示制御部227、演算処理部223、温度計測部210を制御する制御回路221を備える。
【0023】
<3.電子体温計100におけるモード>
次に図3を用いて電子体温計100におけるモード遷移について説明する。図3は電子体温計100のモード遷移を示す図である。上述したように、電子体温計100は、体温測定モードボタン104とトレンド表示モードボタン105とを備えており、いずれかのモード切り替えボタンが押下されることにより、モードが切り替わるよう構成されている。
【0024】
電子体温計100の電源ON直後は、デフォルトとして体温測定モードが起動されるものとする。この状態で、トレンド表示モードボタン105が押下されるとトレンド表示モードに遷移する。
【0025】
トレンド表示モードに遷移した直後は、カーソル(図7の701)は“トレンド”位置にあり、トレンドグラフモードになっているものとする(図7(A)参照)。この状態で、移動ボタン106を押下し、カーソルを“推定”位置に移動した後、決定ボタン107を押下すると推定処理モードに遷移する(図7(B)参照)。推定処理モードに遷移すると、推定処理が開始され、推定処理の結果が表示部103に表示される。
【0026】
なお、推定処理モードに遷移した状態で、移動ボタン106を押下し、カーソルを“トレンド”位置に移動した後に、決定ボタン107を押下すると、再びトレンドグラフモードに戻る。なお、トレンドグラフモードであるか推定処理モードであるかに関わらず、トレンド表示モードに遷移した状態で、体温測定モードボタン104が押下されると、体温測定モードに遷移する。
【0027】
<4.体温測定処理の流れ>
次に図4及び図5を用いて電子体温計100における体温測定処理の流れを説明する。図4は電子体温計100の体温測定処理の流れを示すフローチャートであり、図5は体温測定処理時の電子体温計100の表示部103の表示内容を示す図である。電子体温計100の電源が投入されると、図4に示す体温測定処理が演算処理部223によって開始される。
【0028】
ステップS401では、トレンド表示モードが選択されたか否かを判定する。上述したように、電源が投入された直後は、電子体温計100は体温測定モードにより起動されている。このため、トレンド表示モードボタン105が押下された場合には、トレンド表示モードに遷移するが、モードの切り替えボタンが押下されなかった場合には、体温測定モードのまま処理が進行する。
【0029】
ステップS401において、トレンド表示モードが選択されたと判断された場合には、ステップS412に進み、トレンド表示処理を開始する。一方、トレンド表示モードが選択されなかったと判断された場合には、ステップS402に進む。なお、トレンド表示処理(ステップS412)の詳細は後述する。
【0030】
ステップS402では、電子体温計100の初期化を行い、サーミスタによる温度計測を開始する。具体的には、演算処理部223では、所定間隔、例えば、0.5秒おきに温度データの演算を行う。
【0031】
ステップS403では、体温計測開始条件が成立したか否かを判断する。具体的には、前回の温度計測により演算された温度データの値(つまり、0.5秒前の温度データの値)からの上昇度が、所定の値(例えば、1℃)以上となったか否かを判断する。
【0032】
上昇度が所定の値以上となったと判断した場合には、体温測定開始条件が成立したと判断し、当該温度データを計測したタイミングを、予測体温演算の基準点(t=0)として設定する。つまり、電子体温計100では、急激な温度上昇が計測されると、被検者が、腋下に電子体温計100を装着したものとみなす。
【0033】
ステップS403において、体温測定開始条件が成立したと判断した場合には、ステップS404に進み、温度データの取り込みを開始する。具体的には、出力された温度データと、当該温度データを計測したタイミングとを、時系列データとしてRAM226に記憶していく。
【0034】
ステップS405では、ステップS404において記憶された温度データを用いて、所定の予測式により、予測体温を演算する。
【0035】
ステップS406では、基準点(t=0)から所定時間(例えば25秒)、経過した後に、ステップS405において算出された一定区間(例えば、t=25〜30秒)における予測値が、予め設定された予測成立条件を満たすか否かを判断する。具体的には、所定の範囲(例えば、0.1℃)以内に収まっているか否かを判断する。
【0036】
ステップS406において、予測成立条件を満たすと判断された場合には、ステップS407に進み、温度計測を終了するとともに、ステップS408に進み、予測体温の演算が終了した旨の音声を音声出力部240を介して出力し、表示部103に、演算された予測体温を表示する。
【0037】
一方、ステップS406において、予測成立条件を満たさないと判断された場合には、ステップS413に進む。ステップS413では、基準点(t=0)から所定時間(例えば45秒)経過したか否かを判断し、経過したと判断された場合には、温度計測を強制終了する。なお、強制終了した場合には、その際に演算されていた予測体温を、表示部103に表示する(ステップS408)。図5(A)は、予測体温が表示部103に表示された様子を示している。
【0038】
ステップS409では、表示部230に表示された予測体温(以下、「体温測定結果」)を保存するか否かをユーザに問い合わせる。図5(B)は、体温測定結果を保存するか否かをユーザに問い合わせた様子を示している。ユーザは、移動ボタン106を操作し、カーソル501を所望の位置に移動させる。つまり、体温測定結果の保存を希望する場合には、“Yes”の側にカーソル501を移動させ、体温測定結果の保存を希望しない場合には、“No”の側にカーソル501を移動させる。
【0039】
“Yes”の側にカーソル501が移動された状態で、決定ボタン107が押下されると、ステップS409において、保存指示があったと判断され、ステップS410に進む。一方、“No”の側にカーソル501が移動された状態で、決定ボタン107が押下されると、ステップS409において、保存指示がなかったと判断され、ステップS411に進む。
【0040】
ステップS410では、体温測定結果を、測定日時(または測定時刻)と対応付けてEEPROM225に保存する。図5(C)は、体温測定結果の保存指示があったと判断され、当該体温測定結果を測定日時と対応付けてEEPROM225に保存した後の表示部230の表示内容を示す図である。
【0041】
ステップS411では、体温測定終了指示を受け付けたか否かを判断する。ステップS411において、体温測定終了指示を受け付けていないと判断された場合には、ステップS401に戻る。
【0042】
一方、ステップS411において、体温測定終了指示を受け付けたと判断された場合には、電源部250をOFFにする。
【0043】
<5.トレンド表示処理の流れ>
次に図6及び図7を用いて電子体温計100におけるトレンド表示処理(ステップS412)の詳細な流れについて説明する。図6は電子体温計100のトレンド表示処理の流れを示すフローチャートであり、図7はトレンド表示処理時の電子体温計100の表示部103の表示内容を示す図である。トレンド表示モードボタン105が押下されることで、演算処理部223によって、図6に示すトレンド表示処理が開始される。
【0044】
ステップS601では、推定処理モードが選択されたか否かを判定する。上述したように、トレンド表示モードには、トレンドグラフモードと推定処理モードとがあり、トレンド表示モードボタン105が押下されトレンド表示モードに遷移した直後は、トレンドグラフモードが選択されている。このため、推定処理モードが選択された場合には、推定処理モードに遷移するが、推定処理モードが選択されなかった場合には、トレンドグラフモードのまま処理が進行する。
【0045】
ステップS601において、推定処理モードが選択されたと判断された場合には、ステップS602に進む。一方、推定処理モードが選択されなかったと判断された場合には、ステップS607に進む。
【0046】
ステップS607では、EEPROM225に保存されているすべての体温測定結果を読み出し、該各体温測定結果を、対応づけて保存された測定日時に従ってプロットすることで、トレンドグラフを作成し、表示部103に表示する。図7(A)は、トレンドグラフモードにおいて、トレンドグラフが表示された様子を示している。ステップS607において、トレンドグラフの表示が完了した場合には、ステップS601に戻る。
【0047】
一方、ステップS602では、トレンドグラフとしてプロットされた各体温測定結果のうち、最新の体温測定結果を所定数取得する。
【0048】
ステップS603では、ステップS602において取得された所定数の体温測定結果に基づいて、現時点(最新の体温測定結果が保存された時点)における被検者の体温変化が上昇中であるのか、下降中であるのかを判定する。具体的には、所定数の体温測定結果を用いて、時間経過に対する体温変化の傾きがプラスであるのかマイナスであるのかを判断する。時間経過に対する体温変化の傾きがプラスであった場合には、被検者の体温変化が上昇中であると判定し、ステップS604に進む。一方、時間経過に対する体温変化の傾きがマイナスであった場合には、被検者の体温変化が下降中であると判定し、ステップS605に進む。
【0049】
ステップS604では、上昇時推定処理を実行し、今後、被検者の体温が何度まで上昇するか(体温最大値)を推定するとともに、体温最大値に到達する時刻を推定する。一方、ステップS605では、下降時推定処理を実行し、被検者の体温が平熱に到達する時刻を推定する。なお、上昇時推定処理及び下降時推定処理についての詳細は後述する。
【0050】
上昇時推定処理または下降時推定処理が実行された後は、ステップS601に戻る。図7(B)は、上昇時推定処理が実行され、上昇時推定グラフ(後述)がトレンドグラフに重畳して表示されるとともに、推定値(体温最大値および体温最大値に到達する時刻)及びトレンドグラフの近似曲線が表示された様子を示している。
【0051】
<6.推定処理の詳細>
次に、上昇時推定処理(ステップS604)及び下降時推定処理(ステップS605)の詳細について、図8〜図10を用いて説明する。図8(A)は、上昇時推定処理(ステップS604)の詳細な流れを示すフローチャートであり、図8(B)は下降時推定処理(ステップS605)の詳細な流れを示すフローチャートである。また、図9は、上昇時推定処理(ステップS604)の概要を示す図であり、図10は、下降時推定処理(ステップS605)の概要を示す図である。
【0052】
(1)上昇時推定処理について
はじめに上昇時推定処理(ステップS604)の詳細について説明する。ステップS801では、読み出されプロットされた体温測定結果(図9(a)参照)の中から、極小点となる体温測定結果を判別し、基準点として定義する。具体的には、読み出されプロットされた体温測定結果を所定次数の曲線により近似し(図9(b)の901)、微分値がゼロとなる時刻における体温測定結果(または微分値がゼロとなる時刻に最も近い体温測定結果)を極小点として判別し基準点とする。なお、極小点が複数存在していた場合には、最も新しいものを基準点とする。更に、極小点がない場合には、読み出された体温測定結果のうち、最小値の点(最小点)を基準点とする(図9(b)の902)。
【0053】
ステップS802では、ROM224に格納された複数パターンの参照グラフ911を順次読み出し、トレンドグラフと対比し、類似度を算出する。ここで、「参照グラフ」とは、発熱時の体温の時間変化を示すグラフであって、所定数の被検者の発熱時の体温の時間変化を複数のパターンに分類することにより得られた、複数の典型的な体温変化パターンをいうものとする。
【0054】
類似度の算出に際しては、まず、ステップS801において定義された基準点902に対応する参照グラフ911上の基準点(極小点または最小点)912に基づいて、トレンドグラフの時間幅T分の参照グラフ(領域913)を抽出する。そして、抽出した参照グラフと、ステップS801において定義された基準点902から最新の体温測定結果までの時間幅T分のトレンドグラフ(領域903)とを、基準点902及び基準点912に基づいて位置合わせした後、対比し、両者の類似度を算出する。なお、当該類似度の算出は、ROM224に格納された複数パターンの参照グラフ911すべてに対して実行されるものとする。
【0055】
ステップS803では、ステップS802において各参照グラフ911について算出された類似度に基づいて、類似度が最大となる参照グラフ914を判別する。更に、判別した参照グラフ914に基づいて、体温最大値及び体温最大値に到達する時刻を推定値として算出する。
【0056】
具体的には、参照グラフ914における領域913より後の領域であって、体温変化が極大となる点915を求め、そのときの体温値を体温最大値とする。また、領域913より後において体温変化が極大となる点915に到達するまでの時間tを算出する。そして、トレンドグラフにおける最新の体温測定結果に対応付けられた測定日時に、当該時間tを加算した場合の時刻を算出し、体温最大値に到達する推定時刻とする。
【0057】
ステップS804では、上昇時推定グラフを生成する。具体的には、参照グラフ914における領域913より後の領域であって、体温変化が極大となる点915に到達するまでの領域916を参照グラフ914より抽出し上昇時推定グラフとする。このようにして生成された上昇時推定グラフは、トレンドグラフの領域903の後に接続される(図9(d)の904参照)。
【0058】
ステップS805では、ステップS803において算出された体温最大値及び推定時刻及びステップS804で生成された上昇時推定グラフを表示部103に表示する。なお、このとき、ステップS801において算出された近似曲線901も合わせて表示する。
【0059】
(2)下降時推定処理について
次に下降時推定処理について説明する。ステップS811では、読み出されプロットされた体温測定結果(図10(a)参照)の中から、極大点となる体温測定結果を判別し、基準点として定義する。具体的には、読み出されプロットされた体温測定結果を所定次数の曲線により近似し(図10(b)の1001)、微分値がゼロとなる時刻における体温測定結果(または微分値がゼロとなる時刻に最も近い体温測定結果)を極大点として判別し基準点とする。なお、極大点が複数存在していた場合には、最も新しいものを基準点とする。更に、極大点がない場合には、読み出された体温測定結果のうち、最大値の点(最大点)を基準点とする(図10(b)の1002)。
【0060】
ステップS812では、ROM224に格納された複数パターンの参照グラフ911を順次読み出し、トレンドグラフと対比し、類似度を算出する。
【0061】
具体的には、まず、ステップS811において定義された基準点1002に対応する参照グラフ911上の基準点(極大点または最大点)1011に基づいて、トレンドグラフの時間幅T’分の参照グラフ(領域1012)を抽出する。そして、抽出した参照グラフと、ステップS811において定義された基準点1002から最新の体温測定結果までの時間幅T’分のトレンドグラフ(領域1003)とを、基準点1002及び基準点1011に基づいて位置合わせした後、対比し、両者の類似度を算出する。なお、当該類似度の算出は、ROM224に格納された複数パターンの参照グラフ911すべてに対して実行されるものとする。
【0062】
ステップS813では、ステップS812において各参照グラフ911について算出された類似度に基づいて、類似度が最大となる参照グラフ1013を判別する。更に、判別した参照グラフ1013に基づいて、平熱に到達する時刻を推定値として算出する。
【0063】
具体的には、参照グラフ1013における領域1012より後において体温変化が一定となる点1014に到達するまでの時間t’を算出する。そして、トレンドグラフにおける最新の体温測定結果に対応付けられた測定日時に、当該時間t’を加算した場合の時刻を算出し、平熱に到達する推定時刻とする。
【0064】
ステップS814では、下降時推定グラフを生成する。具体的には、参照グラフ1013における領域1012より後の領域であって、体温変化が一定となる点1014に到達するまでの領域1015を参照グラフ1013より抽出し下降時推定グラフとする。このようにして生成された下降時推定グラフは、トレンドグラフの領域1003の後に接続される(図10(d)の1004参照)。
【0065】
ステップS815では、ステップS813において算出された推定時刻及びステップS814で生成された下降時推定グラフを表示部103に表示する。なお、このとき、ステップS811において算出された近似曲線1001も合わせて表示する。
【0066】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る電子体温計では、体温測定結果を測定日時と対応付けて保存するとともに、保存した当該体温測定結果を用いて、時間単位のトレンドグラフを生成する構成とした。
【0067】
更に、生成したトレンドグラフを、参照グラフと対比することで、体温上昇中であれば、体温最大値及び体温最大値に到達する時刻を推定し、体温下降中であれば、平熱に到達する時刻を推定する構成とした。
【0068】
更に、生成したトレンドグラフに所定次数の近似曲線を重畳させるとともに、体温最大値に到達するまでの上昇時推定グラフまたは平熱に到達するまでの下降時推定グラフを生成し、トレンドグラフに結合する構成とした。
【0069】
これにより、発熱時の体温管理が容易になるとともに、体温変化の推移が把握しやすい電子体温計を提供することが可能となった。
【0070】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、体温測定結果を保存する際に、被検者を特定することなく保存する構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、体温測定結果を保存する際に被検者を特定し、当該特定した被検者を示す識別子を体温測定結果と対応付けて保存するように構成してもよい。このような構成とすることで、被検者が複数いた場合であっても、それぞれの被検者ごとにトレンドグラフの作成や、体温最大値の推定、体温最大値に到達する時刻の推定等を行うことが可能となる。
【0071】
[第3の実施形態]
上記第1の実施形態では、メモ機能について特に言及しなかったが、上記電子体温計100はメモ機能(薬飲の有無、体調等のデータを入力する機能)を備えていてもよい。また、当該メモ機能を用いて入力された各種データは、トレンドグラフ表示時に合わせて表示されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0072】
100・・・電子体温計、101・・・ハウジング、102・・・エンドキャップ、103・・・表示部、104・・・体温測定モードボタン、105・・・トレンド表示モードボタン、106・・・移動ボタン、107・・・決定ボタン、108・・・リセットボタン、701・・・カーソル、901・・・近似曲線、902・・・基準点、903・・・領域、904・・・上昇時推定グラフ、911・・・参照グラフ、912・・・基準点、913・・・領域、914・・・類似度が最大となる参照グラフ、915・・・体温変化が極大となる点、1001・・・近似曲線、1002・・・基準点、1003・・・領域、1004・・・下降時推定グラフ、1011・・・基準点、1012・・・領域、1013・・・類似度が最大となる参照グラフ、1014・・・体温変化が一定となる点、1015・・・領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の体温を測定する電子体温計であって、
測定された体温データを、測定時刻と対応付けて保存する保存手段と、
前記保存手段に保存された体温データを、対応する前記測定時刻に応じてプロットすることでトレンドグラフを生成する生成手段と、
前記生成手段により生成されたトレンドグラフに基づいて、前記被検者の体温が上昇中であるのか下降中であるのかを判定する判定手段と、
前記判定手段において上昇中であると判定された場合には、前記被検者の体温が到達する最大値と、該最大値に到達する時刻とを推定値として推定し、前記判定手段において下降中であると判定された場合には、前記被検者の体温が平熱に到達する時刻を推定値として推定する推定手段と、
前記生成手段により生成されたトレンドグラフと、前記推定手段により推定された推定値とを表示する表示手段と
を備えることを特徴とする電子体温計。
【請求項2】
前記判定手段は、前記保存手段に保存された体温データの中から、対応付けられた前記測定時刻が新しい所定数の体温データを抽出し、時間の経過に従って変化する該所定数の体温データの傾きを求めることにより、前記被検者の体温が上昇中であるのか下降中であるのかを判定することを特徴とする請求項1に記載の電子体温計。
【請求項3】
前記生成手段は、更に、前記トレンドグラフを所定次数の曲線により近似することで、近似曲線を生成し、
前記表示手段は、更に、該生成した近似曲線を表示することを特徴とする請求項2に記載の電子体温計。
【請求項4】
発熱時の体温の時間変化を示すグラフを参照グラフとして複数パターン格納する格納手段を更に備え、
前記推定手段は、前記格納手段に格納された複数パターンの参照グラフと、前記生成されたトレンドグラフとの類似度を算出し、該算出された類似度が最大となる参照グラフに基づいて、前記推定値を推定することを特徴とする請求項3に記載の電子体温計。
【請求項5】
前記推定手段は、前記判定手段において上昇中であると判定された場合には、前記近似曲線に含まれる極小点または最小点を基準として、前記トレンドグラフと前記参照グラフとの位置合わせを行ったうえで前記類似度の算出を行い、前記判定手段において下降中であると判定された場合には、前記近似曲線に含まれる極大点または最大点を基準として、前記トレンドグラフと前記参照グラフとの位置合わせを行ったうえで前記類似度の算出を行うことを特徴とする請求項4に記載の電子体温計。
【請求項6】
前記表示手段は、前記判定手段において上昇中であると判定された場合には、前記推定された前記最大値に到達するまでの前記被検者の体温の時間変化を、前記類似度が最大となる参照グラフより抽出した後、前記トレンドグラフに重畳して表示し、前記判定手段において下降中であると判定された場合には、前記平熱に到達するまでの前記被検者の体温の時間変化を、前記類似度が最大となる参照グラフより抽出した後、前記トレンドグラフに重畳して表示することを特徴とする請求項5に記載の電子体温計。
【請求項7】
被検者の体温を測定する電子体温計の制御方法であって、
測定された体温データを、測定時刻と対応付けて保存する保存工程と、
前記保存工程において保存された体温データを、対応する前記測定時刻に応じてプロットすることでトレンドグラフを生成する生成工程と、
前記生成工程において生成されたトレンドグラフに基づいて、前記被検者の体温が上昇中であるのか下降中であるのかを判定する判定工程と、
前記判定工程において上昇中であると判定された場合には、前記被検者の体温が到達する最大値と、該最大値に到達する時刻とを推定値として推定し、前記判定工程において下降中であると判定された場合には、前記被検者の体温が平熱に到達する時刻を推定値として推定する推定工程と、
前記生成工程において生成されたトレンドグラフと、前記推定工程において推定された推定値とを表示する表示工程と
を備えることを特徴とする電子体温計の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−145227(P2011−145227A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7433(P2010−7433)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】