説明

電子内視鏡装置

【課題】ケーブルに対する絶縁チューブや絶縁テープの取付け作業をなくし、ケーブルを含む患者回路−筐体間の所定の絶縁耐圧を確実に維持できるようにする。
【解決手段】2次回路に対し電気的に分離された患者回路25を備えたプロセッサ装置で、その筐体11がグランド電位に接続されており、この筐体11に、平面板20aと側面板20bからなる合成樹脂製の絶縁プレート20を取り付け、この絶縁プレート20に、患者回路25を実装した患者回路基板24-1を取り付ける。この患者回路基板24-1には、ケーブル27a,27f等が接続されており、このケーブル27a,27fを含む患者回路25全体と筐体11との間に、絶縁プレート20が介在するように構成する。上記絶縁プレート20の側面板20bには、ケーブル27f等を通すための切り欠き部21を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子内視鏡装置、特に2次回路から電気的に分離された患者側の患者回路と筐体との間の絶縁のための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡装置は、例えばスコープ(電子内視鏡)に搭載された固体撮像素子であるCCD(Charge Coupled Device)をCCD駆動回路により駆動することにより被観察体を撮像し、このスコープが接続されたプロセッサ装置に上記CCDの出力信号を供給し、このプロセッサ装置内の画像信号処理回路にて所定の信号処理を施すことにより、被観察体画像をモニタに表示することができる。このようなプロセッサ装置の画像信号処理回路として、患者回路と主電源部が配置された2次回路とが設けられ、この患者回路と2次回路をアイソレーションによって電気的に分離することにより、スコープ側の電気的安全性が維持されている。
【0003】
そして、上記患者回路は、グランドに接地された筐体との間で所定の絶縁状態が維持されており、このための従来の1つの構成例が図4に示される。
図4において、プロセッサ装置の金属製筐体1には、スコープ側のケーブルコネクタを接続するコネクタ受け部2が設けられ、このコネクタ受け部2に、ケーブル(電気コード)3を介して患者回路基板4が接続され、この患者回路基板4に、患者回路5として画像信号処理回路を構成する各種の回路が実装される。上記筐体1は、グランド電位に接続されており、2次回路のグランド線等が接続される。
【0004】
このような患者回路基板4は、筐体1に設けられた支持部7に、絶縁体8を介して接続されるように構成され、これによって、所定耐圧の絶縁状態が維持される。
また、コネクタ受け部2から患者回路基板4に配置されるケーブル3、或いは図示していないが、複数の患者回路基板4間に配置されるケーブルについては、図示の絶縁チューブ9を取り付けたり、絶縁テープを巻いたりして、筐体1との間での所定の絶縁耐圧が維持される。
【特許文献1】特開2005−95662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電子内視鏡装置における患者回路5と筐体1との間の絶縁構造では、上述のように、ケーブル3を含む複数のケーブルに対し絶縁チューブ9を装着したり、絶縁テープを巻いたりしなければならず、このための作業が煩雑であるという問題があった。また、患者回路基板4に接続されるケーブル3等の途中には、高周波ノイズを除去するために、肉厚のある円筒状のフェライトコア(ノイズ対策部材)が取り付けられており、このフェライトコアの取付けを考慮する必要があるため、上記絶縁チューブ9や絶縁テープの取付けが更に煩雑となっている。
【0006】
更に、取り付けた絶縁チューブ9が破れたり、絶縁テープが外れたりすることもあり、この場合には、所定の絶縁耐圧が維持できない。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケーブルに対する絶縁チューブや絶縁テープの取付け作業をなくし、ケーブルを含む患者回路−筐体間の所定の絶縁耐圧を確実に維持することができる電子内視鏡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、電子内視鏡内の撮像素子に関する画像信号処理を実行するために設けられ、後段の2次回路とは電気的に分離された患者回路を有し、この患者回路を、グランドに接続された筐体内に配置する電子内視鏡装置において、上記患者回路及びこれに接続されるケーブルと上記筐体との間に、この患者回路及びケーブル−筐体間を電気的に分離するための大きさの絶縁プレートを設けたことを特徴とする。
請求項2の発明は、上記絶縁プレート(合成樹脂製)を、プレート本体である平面板の周辺から垂直方向へ側面板を延出させた形状とし、この側面板には、ケーブルを通すための切り欠き部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子内視鏡装置によれば、絶縁プレートによって、患者回路とこれに接続されるケーブルが筐体に対し簡単かつ確実に絶縁されるので、ケーブルに対する絶縁チューブや絶縁テープの取付け作業が不要となり、フェライトコア等の取付けに左右されることもない。
また、絶縁チューブの破壊、絶縁テープの外れを考慮する必要がなく、ケーブルを含む患者回路−筐体間の所定の絶縁耐圧を確実に維持することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1乃至図3には、実施例に係る電子内視鏡装置の構成が示されており、図1はプロセッサ装置内の患者回路部分を上下反転して見たもの、図2は光源部を有するプロセッサ装置の内部構成を示したもの、図3は患者回路部分の全体の斜視図である。図2に示されるように、プロセッサ装置の金属製筐体11は、グランド(GND)電位に接続されており、このプロセッサ装置筐体11の上部には、光源13が配置され、この光源13の出力光をスコープ(電子内視鏡)側の光源コネクタ14に配置されたライトガイド端部へ照明光として供給するようになっている。
【0011】
図1にも示されるように、筐体11の下部側面には、スコープ側の電気コネクタを接続するコネクタ受け部17が設けられる。そして、この筐体11の中間板11cに設けられた支持部(取付け部)18に、合成樹脂製の絶縁プレート20がネジ等で取り付けられる。この絶縁プレート20は、図3に示されるように、平面板(プレート本体であり、底面板でもある)20aと側面板20bから盆状(箱状)に形成され、この側面板20bには、ケーブルを通す切り欠き21が設けられる。
【0012】
そして、この絶縁プレート20に、スペーサ23を介して患者回路基板24-1,24−2(図3)がネジ等で取り付けられており、この患者回路基板24−1,24−2に、画像信号処理回路としての患者回路25が実装される。一方の患者回路基板24−1の患者回路25としては、スコープ側のROM(読出し専用メモリ)との間で情報通信を行う回路(マイコン等)やDSP(デジタル信号プロセッサ)等が配置され、他方の患者回路基板24−2の患者回路25として、TG(タイミングジェネレータ)や患者回路用の電源回路等が配置される。なお、この患者回路25として、撮像素子であるCCDを駆動するCCD駆動回路等を含んでもよい。
【0013】
また、上記患者回路基板24−1には、上記コネクタ受け部17からのケーブル(電気コード群)27aが切り欠き部21を通して接続され、その他にも、ケーブル(電気コード群)27b〜27fが切り欠き部21を利用しながら配置されており、この中のケーブル27fが2次回路基板29へ接続される(図1及び図2の患者回路部の右側は、患者回路基板24−2を示している)。この2次回路基板29に搭載された2次回路30としては、患者回路25から出力された画像信号に対し、所定の画像処理を施す画像信号処理回路や主電源部が配置され、この2次回路30と上記患者回路25とは、図示していないが、アイソレーションデバイス(パルストランス又はフォトカプラ等)によって電気的に分離され、これによって、2次回路30側からの電流やノイズが患者回路25及びスコープ側へ流入することが防止される。
【0014】
そして、上記絶縁プレート20は、患者回路基板24−1,24−2を含む領域だけでなく、ケーブル27a〜27fの全てを含む領域に配置される。即ち、絶縁プレート20が患者回路基板24−1,24−2及びケーブル27a〜27fと筐体11との間を遮蔽するように両者間に介在する。また、ケーブル27a,27b等の途中の外周に、フェライトコア32が取り付けられる。
【0015】
このような絶縁プレート20によれば、患者回路25及びケーブル27a〜27fについて筐体11に対する絶縁が簡単かつ確実に行われ、従来のような絶縁チューブ、絶縁テープの取付けを考慮することなく、フェライトコア32の取付けも容易に行うことができる。なお、図2に示されるように、上記患者回路基板24−1,24−2の下側は、筐体11との間に、所定高さの空間が存在することにより、必要な絶縁耐圧が維持される。
【0016】
上記実施例では、2枚の患者回路基板24−1,24−2を用いた例を示したが、患者回路基板は1枚でもよいし、2枚を縦方向に重ねて配置してもよい。また、側面板20bを外周の全てに配置したが、ケーブル等が配置されない部分については、側面板20bを取り除いてもよい。
【0017】
更に、患者回路がプロセッサ装置内に配置されている例を示したが、本来的に患者回路として位置付けられるスコープ側に、上記患者回路(CCD駆動回路や画像信号処理回路)を配置したシステムにおいても、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例に係る電子内視鏡装置の患者回路部の構成を上下反転した状態で示す側面図である。
【図2】実施例の電子内視鏡装置におけるプロセッサ装置(光源部を備えたもの)の構成を示す側面図である。
【図3】実施例の患者回路部の全体の構成を示す斜視図である。
【図4】従来の電子内視鏡装置の患者回路部の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0019】
1,11…筐体(プロセッサ装置)、
3,27a〜17f…ケーブル、 5,25…患者回路、
20…絶縁プレート、 20a…平面板、
20b…側面板、 21…切り欠き部、
24−1,24−2…患者回路基板、
29…2次回路基板、 30…2次回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号処理を実行するために設けられ、後段の2次回路とは電気的に分離された患者回路を有し、この患者回路を、グランドに接続された筐体内に配置する電子内視鏡装置において、
上記患者回路及びこれに接続されるケーブルと上記筐体との間に、この患者回路及びケーブル−筐体間を電気的に分離するための大きさの絶縁プレートを設けたことを特徴とする電子内視鏡装置。
【請求項2】
上記絶縁プレートは、プレート本体である平面板の周辺から垂直方向へ側面板を延出させた形状とし、この側面板には、ケーブルを通すための切り欠き部を設けたことを特徴とする請求項1記載の電子内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−61205(P2009−61205A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233722(P2007−233722)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】