説明

電子写真感光体、並びにそれを用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】耐摩耗性が高く、かつトナーの離型性に優れ、特にトナーに含有される疎水性シリカの付着による異常画像等の発生を長期間に亘って抑制することが可能な表面保護層を有することにより、優れた耐久性と共に、安定で高品質の画像形成を長期間に亘り実現できる電子写真感光体の提供。
【解決手段】支持体と、支持体上に、感光層及び表面保護層を有してなり、表面保護層が、下記一般式(I)他で表されるエポキシアクリレート化合物と、3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との硬化物を含有する電子写真感光体である。


前記一般式(I)中、R及びRは、いずれも水素原子及びメチル基のいずれかを表す。nは、1〜3の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性が高く、かつトナーの離型性に優れ、特にトナーに含有される疎水性シリカの付着による異常画像等の発生を長期間に亘って抑制することが可能な表面保護層を有することにより、優れた耐久性と共に、安定で高品質の画像形成を長期間に亘り実現できる電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機感光体(OPC)は、さまざまな利点から、無機感光体に代わり複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ及びこれらの複合機に多く用いられている。その理由としては、例えば(1)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性、などが挙げられる。
【0003】
最近、画像形成装置の小型化から感光体の小径化が進み、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わり感光体の高耐久化が切望されるようになってきた。この観点からみると、有機感光体は、表面の層が低分子電荷輸送材料と不活性高分子を主成分としているため一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な負荷により摩耗が発生しやすいという欠点を有している。加えて、高画質化の要求からトナーの小粒径化に伴いクリーニング性を上げる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇が余儀なくされ、このことも感光体の摩耗を促進する要因となっている。このような感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また、摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。
【0004】
有機感光体の高耐久化を図るには摩耗量を低減することが不可欠であるが、更にクリーニング性を高くする手段としてトナーの離型性を高くすることも同時に要求される。特に、摩耗量が減少することによってトナーの表面に含有されている疎水性シリカが感光体に付着した場合は付着シリカの除去が非常に困難であったため、繰り返しの使用において付着シリカを起点としてシリカやトナー成分が感光体上に序所に付着していき、付着物が画像に現れる異常画像の発生につながるという問題を有しており、耐摩耗性と高離型性を兼ね備えた良好な表面性を有する有機感光体が必要とされている。
【0005】
このような感光体表面の耐摩耗性と高離型性を両立する技術としては、例えば(1)像保持部材の表面にビスオキシエチレン化ビスフェノールAジアクリレートを主要単位とするエポキシアクリレート樹脂にシリコーン系レベリング剤を含有する(特許文献1参照)、(2)表面保護層に硬化連鎖重合性官能基及び珪素原子を有する酸化防止剤、劣化防止剤、遮光剤又は潤滑材を重合した化合物を含有したもの(特許文献2参照)、(3)表面層にポリオルガノシロキサンを構成成分として含有する共重合体が分散され、かつ該表面層が少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物と電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を硬化した架橋樹脂層を用いたもの(特許文献3参照)、(4)感光体の最外層表面の純水との接触角が100°以上になるようにフッ素樹脂微粒子を10質量%以上含有したもの(特許文献4参照)、(5)電子写真感光体の周面がディンプル形状の凹部を複数有することで、高いクリーニング性を得る方法(特許文献5参照)、(6)感光層が、特定の構造単位を有するポリエステル樹脂、及びカルボン酸とアルコールとがエステル結合してなる炭素数20〜150のワックスを含有するもの(特許文献6参照)、などが挙げられる。
【0006】
しかしながら、これらの先行技術文献のいずれにおいても、有機感光体に求められる機械的耐久性と高離型性を長期間に亘って維持するための耐久性を十二分に満足するには至っていない。
【0007】
したがって、耐摩耗性が高く、かつトナーの離型性に優れ、特にトナーに含有される疎水性シリカの付着による異常画像等の発生を長期間に亘って抑制することが可能な表面保護層を有することにより、優れた耐久性と共に、安定で高品質の画像形成を長期間に亘り実現できる電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジは、未だ提供されていないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、耐摩耗性が高く、かつトナーの離型性に優れ、特にトナーに含有される疎水性シリカの付着による異常画像等の発生を長期間に亘って抑制することが可能な表面保護層を有することにより、優れた耐久性と共に、安定で高品質の画像形成を長期間に亘り実現できる電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、該支持体上に、少なくとも感光層及び表面保護層を有してなり、
前記表面保護層が、下記一般式(I)及び(II)の少なくともいずれかで表されるエポキシアクリレート化合物と、3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との硬化物を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【化1】

ただし、前記一般式(I)中、R及びRは、いずれも水素原子及びメチル基のいずれかを表す。nは、1〜3の整数を表す。
【化2】

ただし、前記一般式(II)中、Rは、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
<2> 一般式(I)で表されるエポキシアクリレート化合物が、下記構造式で表されるエポキシアクリレート化合物である前記<1>に記載の電子写真感光体である。
【化3】

<3> 一般式(II)で表されるエポキシアクリレート化合物が、下記構造式で表されるエポキシアクリレート化合物である前記<1>に記載の電子写真感光体である。
【化4】

<4> エポキシアクリレート化合物の含有量が、3官能以上のラジカル重合性化合物100質量部に対し5質量部〜100質量部である前記<1>から<3>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<5> 表面保護層が、フィラーを含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、及び除電手段から選択される少なくとも一つの手段とを有し、画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
<7> 電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体が、前記<1>から<5>のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置である。
<8> トナーが、少なくとも、一次平均粒径100nm〜200nmの疎水性シリカを表面に含む前記<7>に記載の画像形成装置である。
【0010】
本発明の電子写真感光体は、表面保護層が特定のエポキシアクリレート化合物と、3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との硬化物を含有することにより、高い耐摩耗性と高離型性を実現できるものである。
このような特定のエポキシアクリレート化合物としては、化合物内に環式構造を有さない脂肪族化合物からなり、化合物内に少なくとも2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物を用いる。これによって特に長期間に亘って高い離型性が得られることがわかった。特にトナー表面に添加される一次平均粒径100nm〜200nmの疎水性シリカが表面保護層に付着することで引き起こされる異常画像の抑制に優れた効果を得ることができる。
その理由としては定かではないが、以下のような効果が得られているものと推定される。即ち、トナーに含有される一次平均粒径100nm〜200nmの疎水性シリカは、トナーの流動性や帯電特性に対して有効な役割を担うが、疎水性シリカ表面の水酸基量が少なく炭素成分が増加しているため、シリカの極性は小さくなっているものと考えられる。また通常用いられている感光体表面の極性も小さく、疎水性シリカと類似の性質を有することから、感光体表面に疎水性シリカが付着しやすいものと考えられる。それに対して、本発明に用いる特定のエポキシアクリレート化合物は、化合物内に環式構造を有さない脂肪族化合物であることに由来して、化合物内に含まれる水素基が最表面に密に分布しやすくなり、極性が高くなっているものと考えられる。そのため、低極性の疎水性シリカとの付着力は低減し、本発明の感光体においては、感光体表面に疎水性シリカが付着しにくくなっているものと考えられる。
また、3官能以上のラジカル重合性化合物を用いることで、硬化反応によって3次元の網目構造が活発に発達し、架橋密度が高い表面保護層が得られることで高い耐摩耗性が達成される。更に、エポキシアクリレート化合物との架橋反応が活発に行われることにより、網目構造中にエポキシアクリレート化合物中の水酸基を均一に分布させることが可能となるため、高い離型性と耐摩耗性を両立することが可能となった。
また、本発明の電子写真感光体における表面保護層の形成は、特定エポキシアクリレート化合物と、3官能以上のラジカル重合性化合物に加え、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含有する組成物を用いており、これらが同時に短時間で硬化され高硬度の架橋結合を構成し耐久性の向上が達成される。更に、表面保護層中に電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が組み込まれているために安定な電気特性を長期間に亘って得られる。これに対し、官能基を有しない低分子電荷輸送物質を表面保護層中に含有させた場合、その相溶性の低さから低分子電荷輸送物質の析出や白濁現象が起こり、表面保護層の機械的強度も低下し、また、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が見られる。また、従来2官能以上の電荷輸送性化合物を用いたときは電荷輸送性構造が非常に嵩高いため、表面保護層の内部応力が高くなり、硬化樹脂中に歪みが発生し、クラックや傷の発生が頻発する問題を有していたが、表面保護層中に存在する直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基が内部応力を緩和し、クラックや傷の発生を抑制することも可能となった。
したがって、本発明によれば、特定のエポキシアクリレート化合物と、3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを重合させて表面保護層を形成することで、耐摩耗性の向上と共に、長期間に亘って高い離型性が得られ、優れた画質を維持できる電子写真感光体を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、耐摩耗性が高く、かつトナーの離型性に優れ、特にトナーに含有される疎水性シリカの付着による異常画像などの発生を長期間に亘って抑制することが可能な表面保護層を用いることにより、優れた耐久性と共に、安定で高品質の画像形成を長期間に亘り実現できる電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の電子写真感光体の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の電子写真感光体の一例を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、支持体と、該支持体上に、少なくとも感光層及び表面保護層を有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0014】
<表面保護層>
前記表面保護層は、特定のエポキシアクリレート化合物と、3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、好ましくは重合開始剤との硬化物を含有し、フィラー、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0015】
−エポキシアクリレート化合物−
前記エポキシアクリレート化合物としては、下記一般式(I)及び(II)の少なくともいずれかで表されるエポキシアクリレート化合物が用いられる。
【化5】

ただし、前記一般式(I)中、R及びRは、いずれも水素原子及びメチル基のいずれかを表す。nは、1〜3の整数を表す。
【化6】

ただし、前記一般式(II)中、Rは、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
【0016】
本発明においては、前記エポキシアクリレート化合物のうち、下記構造式で表されるエポキシアクリレート化合物が、疎水性シリカの付着に起因した異常画像の抑制に効果を示す点で特に好ましい。
【化7】

【化8】

【0017】
前記エポキシアクリレート化合物は、原料化合物として、アクリル酸、又はメタアクリル酸等のアクリル酸誘導体とエポキシ樹脂との反応生成物からなり、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記市販品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばエポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA(いずれも、共栄社化学株式会社製)、などが挙げられる。これらの中でも、疎水性シリカの付着に起因した異常画像の抑制効果の点で、エポキシエステル70PA、エポキシエステル80MFAが特に好ましい。
【0018】
前記エポキシアクリレート化合物の含有量は、耐摩耗性及び高離型性のバランスの点から、3官能以上のラジカル重合性化合物100質量部に対し、5質量部〜100質量部が好ましく、10質量部〜40質量部がより好ましい。前記含有量が、5質量部未満であると、離型性が低下してしまうことがあり、100質量部を超えると、摩耗性の低下が見られ、電子写真感光体の寿命が低下してしまうことがある。
【0019】
−3官能以上のラジカル重合性化合物
前記3官能以上のラジカル重合性化合物とは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、かつラジカル重合性官能基を3個以上有する化合物を意味する。
【0020】
前記ラジカル重合性官能基としては、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であればいずれでもよい。これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
【0021】
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表される官能基が挙げられる。
【化9】

ただし、前記式中、X1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R10)−基(R10は、水素原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。)、又はS−基を表す。
これらの置換基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基、などが挙げられる。
【0022】
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表される官能基が挙げられる。
CH=CY−X
ただし、前記式中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR79基(ただし、R79は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、又は−CONR8081(ただし、R80及びR81は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表し、互いに同一又は異なっていてもよい。)、また、Xは上記式のXと同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y、Xの少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。
【0023】
これらの置換基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
【0024】
なお、これらX、X、及びYについての置換基に更に置換される置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらのラジカル重合性官能基の中では、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が特に有用であり、3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば水酸基がその分子中に3個以上である化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なってもよい。
【0025】
前記3官能以上のラジカル重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレ
ート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記3官能以上のラジカル重合性化合物の含有量は、耐摩耗性と電気特性との点から、表面保護層全量に対し30質量部〜70質量部が好ましい。前記含有量が、30質量部未満であると、耐摩耗性が低下してしまうことがあり、70質量部を超えると、電荷輸送性が低下してしまうことがある。
また、前記表面保護層は、少なくとも特定のエポキシアクリレート化合物と、3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との硬化物を含有するものであるが、更なる機能付与の目的で、更にラジカル重合性化合物、機能性モノマー、ラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。
【0026】
前記ラジカル重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマー、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、などが挙げられる。
【0027】
前記機能性モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したものやラジカル重合性官能基を有する反応性添加剤、例えばPO変性−2−ネオペンチルグリコールジアクリレートのような反応性シリコーン系添加剤も有効に使用できる。これらの機能性モノマーとしては1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
前記ラジカル重合性化合物や機能性モノマーの含有量は、表面保護層を形成する塗工液固形分に対して0.01質量部〜30質量部が好ましく、0.05質量部〜20質量部がより好ましい。
前記ラジカル重合性オリゴマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエステルアクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
ただし、1官能及び2官能のラジカル重合性化合物や機能性モノマー、ラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると表面保護層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招くおそれがある。このため、本発明に用いる3官能以上のラジカル重合性化合物100質量部に対し100質量部以下が好ましい。
【0028】
−電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物−
前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とは、正孔輸送性構造又は電子輸送
性構造を有しており、かつラジカル重合性官能基を有する化合物を意味する。
前記正孔輸送性構造としては、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾール、などが挙げられる。
前記電子輸送性構造としては、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基、ニトロ基、などが挙げられる。
前記ラジカル重合性官能基としては、炭素−炭素二重結合を有し、ラジカル重合可能な基であればいずれでもよく、ラジカル官能基が1官能又は2官能のものが好ましい。
前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある)するが、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であってもいずれでもよい。また、トリアリールアミン構造を有する電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は鎖部分から懸下する窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部
分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また、電子写真感光体の保護層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造をとりうるものと推測される。
【0029】
以下に電荷輸送性構造としてトリアリールアミン構造を有するラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物の具体例を示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【0030】
前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、表面保護層に電荷輸送性能を付与するために重要であり、該電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の含有量は、表面保護層全量に対し20質量部〜80質量部が好ましく、30質量部〜70質量部がより好ましい。前記含有量が、20質量部未満であると、表面保護層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れることがあり、80質量部を超えると、表面保護層の架橋密度の低下や離型性の低減を招き、高い耐摩耗性と離型性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30質量部〜70質量部の範囲が最も好ましい。
【0031】
−重合開始剤−
前記表面保護層は、少なくとも特定のエポキシアクリレート化合物と、3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との硬化物を含有するものであるが、硬化反応を効率よく進行させるために重合開始剤を使用してもよい。
前記重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられるが、重合効率
の観点から光重合開始剤が好ましい。
【0032】
前記熱重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;などが挙げられる。
【0034】
その他の光重合開始剤としては、例えばエチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、光重合促進効果を有するものを単独又は前記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
前記重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100質量部に対し、0.5質量部〜40質量部が好ましく、1質量部〜20質量部がより好ましい。
【0035】
−フィラー−
前記表面保護層は、少なくとも特定のエポキシアクリレート化合物と、3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との硬化物を含有するものであるが、これら成分以外に、耐摩耗性の向上を目的としてフィラーを含有させることが好ましい。
前記フィラーとしては、有機フィラー及び無機フィラーのいずれかが用いられる。
前記有機性フィラーとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂粉末;シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末などが挙げられる。前記無機フィラーとしては、例えば銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属粉末;シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物;フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物;チタン酸カリウム、窒化硼素などが挙げられる。これらの中でも、フィラーの硬度の点から無機フィラーを用いることが耐摩耗性の向上に対し有利である。
【0036】
前記フィラーの平均一次粒径は、表面保護層の光透過率や耐摩耗性の点から0.01μm〜0.5μmであることが好ましい。前記フィラーの平均一次粒径が、0.01μm未満であると、分散性の低下等を引き起こし、耐摩耗性の向上効果が十分に発揮されないことがあり、0.5μmを超えると、表面保護層分散液中においてフィラーの沈降性が促進されたり、トナーのフィルミングが発生することがある。
前記フィラーの表面保護層における含有量は、高いほど耐摩耗性が高いので良好であるが、高すぎる場合には残留電位の上昇、表面保護層の書き込み光透過率が低下し、副作用を生じる場合がある。したがって、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
前記フィラーは、少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、更には耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。
前記表面処理剤としては、特に制限はなく、従来用いられている表面処理剤をすべて使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤であることが好ましい。
前記表面処理剤の使用量については、用いるフィラーの平均一次粒径などによって異なり一概には規定できないが、前記フィラー100質量部に対して3質量部〜30質量部が好ましく、5質量部〜20質量部がより好ましい。前記表面処理剤の使用量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こすことがある。
【0037】
前記表面保護層塗工液には、必要に応じて、各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤などの添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能である。
前記可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能である。前記可塑剤の使用量は、表面保護層塗工液の全固形分に対し20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
前記レベリング剤としては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用可能である。前記レベリング剤の使用量は、表面保護層塗工液の全固形分に対し3質量部以下が好ましい。
前記表面保護層は、少なくとも特定のエポキシアクリレート化合物と、3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、好ましくは重合開始剤を含有する表面保護層塗工液を塗布し、硬化させることにより形成できる。
前記表面保護層塗工液は、必要に応じて溶媒により希釈して塗布する。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチ
ルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記溶媒による希釈率は、組成物の溶解性、塗工法、目的とする表面保護層の厚みなどにより変わり、適宜選択することができる。
前記塗布は、例えば浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、リングコート法などにより行うことができる。
【0038】
前記表面保護層塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与え、硬化させて、表面保護層を形成するが、前記外部エネルギーとしては熱、光、放射線がある。
前記熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行われる。
前記加熱温度は、100℃以上170℃以下であることが好ましい。前記加熱温度が、100℃未満であると、反応速度が遅く、完全に反応が終了しないことがあり、170℃を超えると、反応が不均一に進行し表面保護層中に大きな歪みが発生する。硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、更に100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。前記光のエネルギーとしては、主に紫外光(UV)に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。
照射光量は、50mW/cm以上1,000mW/cm以下が好ましい。前記照射光量が、50mW/cm未満であると、硬化反応に時間を要することがあり、1,000mW/cmを超えると、反応の進行が不均一となり、表面保護層の荒れが激しくなることがある。放射線のエネルギーとしては電子線(EB)を用いるものが挙げられる。これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱及び光のエネルギーを用いたものが有用である。
前記表面保護層の厚みは、表面保護層が用いられる感光体の感光層の層構造によって異なることがあるため、以下の電子写真感光体の層構造の説明において記載する。
【0039】
<電子写真感光体の層構造>
本発明の電子写真感光体の層構造について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の電子写真感光体の一例を表す断面図であり、支持体201上に、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する感光層202が設けられた単層構造の感光層の表面に、表面保護層203を設けた構成を示したものである。
図2は、支持体201上に、電荷発生機能を有する電荷発生層204と、電荷輸送機能を有する電荷輸送層205とが積層された積層構造の感光層の表面に、表面保護層203を設けた構成を示したものである。
【0040】
<支持体>
前記支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属;酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を蒸着法、又はスパッタリング法により、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板及びそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも支持体として用いることができる。
また、前記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、支持体として用いることができる。
前記導電性粉体としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック;アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀等の金属粉;導電性酸化スズ、ITO等の金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂としては、例えばポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を溶剤に分散させた塗布液を塗布する
ことにより設けることができる。
前記溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどが挙げられる。
更に、適当な円筒基体上に、例えばポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、支持体として良好に用いることができる。
【0041】
<感光層>
前記感光層は、積層構造でも単層構造でもよい。
前記感光層が積層構造の場合には、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、前記感光層が単層構造の場合には、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。
以下、積層構造の感光層及び単層構造の感光層のそれぞれについて説明する。
【0042】
<積層構造の感光層>
(1)電荷発生層
前記電荷発生層は、少なくとも電荷発生物質を含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
前記無機系材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶セレン、アモルファス−セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物、アモルファス−シリコンなどが挙げられる。前記アモルファス−シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
【0043】
前記有機系材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニ
ルホルマール樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバ
ゾール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記電荷発生層のバインダー樹脂としては、上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、(1)アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料、(2)ポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
前記(1)の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−2
36051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特
開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
また、前記(2)の具体例としては、例えば、特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
また、前記電荷発生層には、低分子電荷輸送物質を含有させることができる。
【0045】
前記低分子電荷輸送物質には、電子輸送物質と正孔輸送物質とがある。
前記電子輸送物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記正孔輸送物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記電荷発生層を形成する方法としては、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とに大別される。
前記真空薄膜作製法としては、例えば、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられる。
前記キャスティング法としては、前記無機系もしくは有機系電荷発生物質、必要に応じてバインダー樹脂を、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。更に必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。前記塗布としては、例えば浸漬塗工法、スプレーコート、ビードコート、リングコート法などが挙げられる。
前記電荷発生層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜5μmであることが好ましく、0.05μm〜2μmであることがより好ましい。
【0048】
(2)電荷輸送層
前記電荷輸送層は、電荷輸送機能を有する層であり、少なくとも電荷輸送物質及び結着樹脂が含有されるものが一般的である。
前記電荷輸送物質としては、前記電荷発生層について記載する箇所に記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。特に高分子電荷輸送物質を用いることは、表面保護層塗工時の下層の溶解性の低減効果を示し、とりわけ有用である。
【0049】
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電荷輸送物質の含有量は、前記結着樹脂100質量部に対し、20質量部〜300質量部が好ましく、40質量部〜150質量部がより好ましい。ただし、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
前記電荷輸送層の下層部分の塗工に用いられる溶媒としては、前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。また、電荷輸送層の下層部分の形成には電荷発生層と同様な塗工法が可能である。
【0050】
前記電荷輸送層には、更に必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
前記可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して30質量部以下が好ましい。
前記レベリング剤としては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部以下が好ましい。
【0051】
前記電荷輸送層の下層部分の厚みは、5μm〜40μmが好ましく、10μm〜30μmがより好ましい。
前記表面保護層が電荷輸送層の表面(表面部分)である場合、前述の表面保護層作製方法に記載したように、前記電荷輸送層の下層部分上に前記ラジカル重合性組成物を含有する塗工液を塗布し、必要に応じて乾燥した後、熱や光の外部エネルギーにより硬化反応を開始させて、表面保護層が形成される。
前記積層構造の感光層において、前記表面保護層の厚みは、1μm〜20μmが好ましく、2μm〜10μmがより好ましい。前記厚みが、1μm未満であると、厚みムラによって耐久性がバラツクことがあり、20μmを超えると、電荷輸送層全体の厚みが厚くなり電荷の拡散から画像の再現性が低下することがある。
【0052】
<単層構造の感光層>
前記単層構造の感光層は、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層であり、本発明の表面保護層を感光層上に設けることによって有用に用いられる。
前記単層構造の感光層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質と電荷輸送機能を有する電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶媒に溶解乃至分散し、これを塗布し、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。
前記電荷発生物質の分散方法、それぞれ電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤、レベリング剤は前記電荷発生層、電荷輸送層において、既に述べたものと同様なものが使用できる。前記結着樹脂としては、先に電荷輸送層で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。また、先に挙げた高分子電荷輸送物質も使用可能であり、表面保護層への感光層組成物の混入を低減できる点で有用である。
前記単層構造の感光層中に含有される電荷発生物質は、感光層全量に対し1質量部〜30質量部が好ましく、感光層の下層部分に含有される結着樹脂は全量の20質量部〜80質量部が好ましく、電荷輸送物質は10質量部〜70質量部が良好に用いられる。
前記感光層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5μm〜30μmが好ましく、10μm〜25μmがより好ましい。
単層構造の感光層において、前記表面保護層の厚みは、1μm〜20μmが好ましく、2μm〜10μmがより好ましい。
【0053】
−中間層−
本発明の電子写真感光体においては、表面保護層と電荷輸送層、又は表面保護層と単層構造の感光層との間に中間層を設けることが可能である。
前記中間層は、ラジカル重合性組成物を含有する表面保護層中に感光層組成物の混入により生ずる硬化反応の阻害や表面保護層の凹凸を防止する。また、感光層と表面保護層の接着性を向上させることも可能である。
前記中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として含有する。前記バインダー樹脂としては、例えばポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、などが挙げられる。
前記中間層の形成方法としては、特に制限はなく、一般に用いられる塗工法を採用することができる。
前記中間層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.05μm〜2μmが好ましい。
【0054】
−下引き層−
本発明の電子写真感光体においては、支持体上に下引き層を設けることができる。
前記下引き層は、一般には樹脂を主成分として含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。前記樹脂としては、前記下引き層上に表面保護層、感光層、電荷発生層、又は中間層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが好ましい。
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
前記下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
前記下引き層は、前記感光層と同様に溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。
前記下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。その他、前記下引き層には、Alを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。
前記下引き層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5μm以下が好ましい。
【0055】
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、単層構造の感光層、表面保護層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
【0056】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3
−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコールエステル、トコフェロール類、などが挙げられる。
前記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン、などが挙げられる。
前記ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン、などが挙げられる。
前記有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート、などが挙げられる。
前記有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン、などが挙げられる。
なお、これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
前記酸化防止剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、添加する層の総質量に対し0.01質量部〜10質量部が好ましい。
【0057】
(画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、クリーニング手段、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。なお、帯電手段と、露光手段とを合わせて静電潜像形成手段と称することもある。
【0058】
−静電潜像形成手段−
前記静電潜像形成手段は、電子写真感光体上に静電潜像を形成する手段である。
前記電子写真感光体としては、本発明の前記電子写真感光体を用いる。
前記静電潜像の形成は、例えば、前記電子写真感光体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段により行うことができる。
前記静電潜像形成手段は、例えば、前記電子写真感光体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記電子写真感光体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
【0059】
前記帯電は、例えば、前記帯電器を用いて前記電子写真感光体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。
前記帯電部材の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等のどのような形態をとってもよく、電子写真装置の仕様や形態にあわせて選択可能である。前記磁気ブラシを用いる場合、前記磁気ブラシとしては、例えば、Zn−Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電部材として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。又はブラシを用いる場合、例えば、ファーブラシの材質としては、カーボン、硫化銅、金属又は金属酸化物により導電処理されたファーを用い、これを金属や他の導電処理された芯金に巻き付けたり張り付けたりすることで帯電器とする。
前記帯電器は、上記のような接触式の帯電器に限定されるものではないが、帯電器から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電器を用いることが好ましい。
前記帯電器が電子写真感光体に接触乃至非接触状態で配置され、直流及び交流電圧を重畳印加することによって電子写真感光体表面を帯電するものが好ましい。
また、帯電器が、電子写真感光体にギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであり、該帯電ローラに直流並びに交流電圧を重畳印加することによって電子写真感光体表面を帯電するものが好ましい。
【0060】
前記露光は、例えば、前記露光器を用いて前記電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光器としては、前記帯電器により帯電された前記電子写真感光体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記電子写真感光体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0061】
−現像手段−
前記現像手段は、前記静電潜像を、トナー乃至現像剤を用いて現像して可視像を形成する手段である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像をトナー乃至現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記トナー乃至現像剤を収容し、前記静電潜像に該トナー乃至該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記電子写真感光体近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該電子写真感光体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該電子写真感光体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0062】
前記現像器に収容させる現像剤としては一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよく、粉砕法、重合法のいずれの方法で作製したものでもよい。近年、高画質化を達成するため、小粒径で球形に近い形状のトナーが用いられているが、トナークリーニングが困難になることから、一次平均粒径100nm〜200nmである外添剤として疎水性シリカをトナー表面に用いることによって、クリーニング性の向上や感光体とトナー間又は、中間転写ベルトとトナー間の付着力低減効果を図っている。更にトナー間の付着力を低減し、流動性や帯電特性の向上を図ることができる。しかし、該外添剤は電子写真感光体表面への付着しやすく、付着した疎水性シリカにシリカが蓄積したり、あるいはトナー樹脂が付着することで、付着物が画像として現れる異常画像を発生しやすいため、少なくとも本発明のエポキシアクリレート化合物と、3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との硬化物からなる表面保護層を用いた電子写真感光体を用いることで優れた離型性を得ることができるため、異常画像のない良好な画像を得ることが可能となる。
【0063】
本発明に用いるトナーは、樹脂、顔料、帯電制御剤、及び離型剤を溶融混練し、冷却した後に粉砕、分級する混練粉砕法も用いることが可能であるが、粒径、形状を均一にするため、乳化重合法や溶解懸濁法といった重合トナー工法を用いて作製されたものを用いることが好ましい。
前記トナー表面に添加する外添剤は、一次平均粒径100nm〜200nmの疎水性シリカが好ましく用いられる。前記一次平均粒径は120nm〜180nmであることがより好ましい。前記一次平均粒径が、100nm未満であると、トナークリーニング性が低下し、スジ状の異常画像が発生することがあり、200nmを超えると、トナー流動特性や帯電特性が悪化し、地汚れ等が発生することがある。
前記疎水性シリカの一次平均粒径は、例えばSEM、TEM等の電子写真顕微鏡を用いた観察像から50個の粒子の直径を測定し、平均値を導出することで求めることができる。
前記疎水性シリカの疎水化度は、50%〜90%であることが好ましく、55%〜85%であることがより好ましい。前記疎水化度が50%より小さい場合、高温高湿度下でのトナーの電荷のリークが大きくなり、トナー飛散や感光体カブリを引き起こしやすくなる。一方、前記疎水化度が90%より大きい場合は、低温低湿度下でのトナーの帯電が過剰にチャージアップしやすくなり、画像の濃度不良が発生したりすることがある。また余剰の疎水化剤が存在することによりトナーの流動性が悪くなるなどの悪影響を及ぼす。
【0064】
以下に、前記疎水化度の測定方法を示す。
200mlのビーカーに水50mlを入れ、更に0.2gの外添剤微粒子を添加する。そして、マグネットスターラーで緩やかに攪拌しつつ、滴下時に先端が水中に浸漬されたビューレットからメタノールを加え、浮かんでいる外添剤微粒子が沈み始め、完全に沈んだ時の滴下メタノールのml数を読み、次式から求める。
疎水化度(%)=(滴下メタノールのml数/(50+滴下メタノールのml数))×100
前記疎水性シリカをトナー母粒子表面に混合攪拌等によりトナー表面に付着させることにより。トナーを作製することができる。
【0065】
前記疎水性シリカは、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものを意味し、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、等が挙げられる。
更に、前記疎水性シリカに加え、その他の外添剤を併用することも可能であり、無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
【0066】
前記外添剤の前記トナーにおける含有量としては、0.01質量%〜5.0質量%が好ましく、0.01質量%〜2.0質量%がより好ましい。
【0067】
−転写手段−
前記転写手段は、前記可視像を記録媒体に転写する手段であるが、中間記録媒体を用い、該中間記録媒体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、前記トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間記録媒体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを含む態様がより好ましい。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記電子写真感光体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。前記転写手段としては、可視像を中間記録媒体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
なお、前記中間記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の記録媒体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記電子写真感光体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0068】
−定着手段−
前記定着手段は、記録媒体に転写された可視像を定着する手段であり、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
【0069】
前記定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組み合わせ、などが挙げられる。
前記加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0070】
前記除電手段は、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加して除電を行う手段である。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0071】
前記クリーニング手段は、前記電子写真感光体上に残留する前記電子写真トナーを除去する手段である。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0072】
前記リサイクル手段は、前記クリーニング手段により除去した前記電子写真用カラートナーを前記現像手段にリサイクルさせる手段である。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0073】
前記制御手段は、前記各工程を制御する手段である。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0074】
本発明の画像形成装置は、本発明における表面保護層を有する電子写真感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、記録媒体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる画像形成装置である。
場合により、静電潜像を直接転写体に転写し現像する画像形成方法等では、感光体に配した前記プロセスを必ずしも有するものではない。
【0075】
ここで、図3は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。感光体を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ3が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラ帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
次に、均一に帯電された感光体1上に静電潜像を形成するために画像露光部5が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィ
ルターを用いることもできる。
【0076】
次に、感光体1上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット6が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
次に、感光体上で可視化されたトナー像を記録媒体9上に転写するために転写チャージャ10が用いられる。また、転写をより良好に行うために転写前チャージャ7を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、記録媒体9を感光体1より分離する手段として分離チャージャ11、分離爪12が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ11としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ14、クリーニングブレード15が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行うためにクリーニング前チャージャ13を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ2、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
本発明は、このような画像形成手段に本発明の前記電子写真感光体を用いる画像形成装置である。
前記画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱可能としたものであってもよい。
【0077】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の前記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、及び除電手段から選択される少なくとも一つの手段とを有し、画像形成装置本体に着脱可能である。
図4は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
図4のプロセスカートリッジは、本発明の前記電子写真感光体101を内蔵し、帯電手段102、現像手段104、転写手段108、クリーニング手段107を含み、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。図4中、103は露光手段による露光、105は記録媒体をそれぞれ示す。
【0078】
次に、図4に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、電子写真感光体101は、矢印方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段(不図示)による露光103により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。
この静電潜像は、現像手段104で現像され、得られた可視像は転写手段108により、記録媒体105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の電子写真感光体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【0079】
本発明の画像形成装置及びプロセスカートリッジは、耐摩耗性が高く、平滑な表面性を有し、電気特性の変動が殆どない表面保護層を有する電子写真感光体を用いているので、摩耗による画像劣化を抑制し、長期にわたって、高精細、高画質な画像を形成することができる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるもの
ではない。
【0081】
(合成例1)
<電荷輸送性構造を有する化合物の合成例>
前記電荷輸送性構造を有する化合物は、例えば特許第3164426号公報記載の方法に基づいて合成される。
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式B)の合成
メトキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式A)113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)にスルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間で滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌し反応を終了させた。この反応液にトルエン約1.5Lを加え、室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体としてシリカゲル、展開溶媒としてトルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。
得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして下記構造式Bの白色結晶88.1g(収率=80.4%)を得た。融点は64.0℃〜66.0℃である。元素分析値(単位は%)を表Aに示す。
【0082】
【表A】

【化15】

【化16】

【0083】
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(例示化合物No.7)
上記(1)で得られたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(構造式B)82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4g,水:100ml)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌し反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。以上により、下記構造式で表される例示化合物No.7の白色結晶80.73g(収率=84.8%)を得た。融点は117.5〜119.0℃である。表Bに元素分析値(単位は%)を示す。
【化17】

【表B】

【0084】
(実施例1)
<電子写真感光体の作製>
肉厚0.8mm、長さ346mm、外径40mmのアルミニウムシリンダ上に、下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、及び電荷輸送層塗工液を、浸漬塗工によって順次塗布し、乾燥して、厚み3.5μmの下引き層、厚み0.2μmの電荷発生層、及び厚み23μmの電荷輸送層をそれぞれ形成した。
【0085】
−下引き層塗工液−
・アルキッド樹脂(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・4質量部
・酸化チタン・・・40質量部
・メチルエチルケトン・・・50質量部
【0086】
−電荷発生層塗工液−
・下記構造式で表されるビスアゾ顔料・・・2.5質量部
【化18】

・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製)・・・0.5質量部
・シクロヘキサノン・・・200質量部
・メチルエチルケトン・・・80質量部
【0087】
−電荷輸送層塗工液−
・ビスフェノールZ型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、帝人化成株式会社製)・・・10質量部
・下記構造式で表される電荷輸送物質・・・7質量部
【化19】

・テトラヒドロフラン・・・100質量部
・シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液(KF50−100CS、信越化学工業株式会社製)・・・1質量部
【0088】
次に、前記電荷輸送層上に、下記組成の表面保護層塗工液を用いて、スプレー塗工し、メタルハライドランプを用い、照射強度:500mW/cm、照射時間:20秒の条件で光照射を行い、更に130℃で30分間乾燥し、厚み4.0μmの表面保護層を形成した。以上により、実施例1の電子写真感光体を作製した。
【0089】
−表面保護層塗工液−
・下記構造式で表されるエポキシアクリレート化合物(エポキシエステル80MFA、共栄社化学株式会社製)・・・20質量部
【化20】

・3官能以上のラジカル重合性化合物(トリメチロールプロパントリアクリレート、TMPTA、東京化成株式会社製、3官能)・・・75質量部
・合成例1の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(例示化合物No.7)・・・95質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)・・・10質量部
・テトラヒドロフラン・・・1,200質量部
【0090】
(実施例2)
<電子写真感光体の作製>
実施例1において、表面保護層塗工液中のエポキシアクリレート化合物を、下記の構造式で表されるエポキシアクリレート化合物(エポキシエステル70PA、共栄社化学株式会社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化21】

【0091】
(実施例3)
<電子写真感光体の作製>
実施例1において、表面保護層塗工液中のエポキシアクリレート化合物を、下記構造式で表されるエポキシアクリレート化合物(エポキシエステル200PA、共栄社化学株式会社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化22】

【0092】
(実施例4)
<電子写真感光体の作製>
実施例1において、表面保護層塗工液中のエポキシアクリレート化合物を、下記構造式で表されるエポキシアクリレート化合物(エポキシエステル40EM、共栄社化学株式会社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化23】

【0093】
(実施例5)
<電子写真感光体の作製>
実施例1において、表面保護層塗工液中の3官能以上のラジカル重合性化合物を、以下のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
・3官能以上のラジカル重合性化合物(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、KAYARAD DPHA、日本化薬株式会社製、6官能)・・・75質量部
【0094】
(実施例6)
<電子写真感光体の作製>
実施例1において、表面保護層塗工液中の合成例1の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(例示化合物No.7)を、以下のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
・下記構造式で表される電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(例示化合物No.38)・・・95質量部
【化24】

【0095】
(実施例7)
<電子写真感光体の作製>
実施例1において、表面保護層塗工液を、下記の表面保護層塗工液に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
−表面保護層塗工液−
・下記構造式で表されるエポキシアクリレート化合物(エポキシエステル80MFA、共栄社化学株式会社製)・・・20質量部
【化25】

・3官能以上のラジカル重合性化合物(トリメチロールプロパントリアクリレート、TMPTA、東京化成株式会社製、3官能)・・・75質量部
・合成例1の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(例示化合物No.7)・・・95質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)・・・10質量部
・テトラヒドロフラン・・・1,200質量部
・フィラー(アルミナフィラー、AA−03、住友化学株式会社製、平均一次粒径0.3μm)・・・20質量部
【0096】
(実施例8)
<電子写真感光体の作製>
実施例1において、表面保護層塗工液を、下記の表面保護層塗工液に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
−表面保護層塗工液−
・下記構造式で表されるエポキシアクリレート化合物(エポキシエステル80MFA、共栄社化学株式会社製)・・・5質量部
【化26】

・3官能以上のラジカル重合性化合物(トリメチロールプロパントリアクリレート、TMPTA、東京化成株式会社製、3官能)・・・90質量部
・合成例1の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(例示化合物No.7)・・・95質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)・・・10質量部
・テトラヒドロフラン・・・1,200質量部
【0097】
(実施例9)
<電子写真感光体の作製>
実施例1において、表面保護層塗工液を、下記の表面保護層塗工液に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
−表面保護層塗工液−
・下記構造式で表されるエポキシアクリレート化合物(エポキシエステル80MFA、共栄社化学株式会社製)・・・45質量部
【化27】

・3官能以上のラジカル重合性化合物(トリメチロールプロパントリアクリレート、TMPTA、東京化成株式会社製、3官能)・・・45質量部
・合成例1の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(例示化合物No.7)・・・95質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)・・・10質量部
・テトラヒドロフラン・・・1,200質量部
【0098】
(比較例1)
<電子写真感光体の作製>
実施例1において、表面保護層塗工液中のエポキシアクリレート化合物を、以下のラジカル重合性化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化28】

【0099】
(比較例2)
<電子写真感光体の作製>
実施例1において、表面保護層塗工液中のエポキシアクリレート化合物を、以下のラジカル重合性化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化29】

【0100】
(比較例3)
<電子写真感光体の作製>
実施例1において、表面保護層塗工液中のエポキシアクリレート化合物を、以下のラジカル重合性化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化30】

【0101】
(比較例4)
<電子写真感光体の作製>
実施例1において、表面保護層塗工液中の3官能以上のラジカル重合性化合物を、以下の2官能のラジカル重合性化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
・下記構造式で表される2官能のラジカル重合性化合物(2官能アクリレート:KAYARAD NPGDA、日本化薬株式会社製)・・・75質量部
【化31】

【0102】
(比較例5)
<電子写真感光体の作製>
実施例1において、表面保護層塗工液中の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を、以下の電荷輸送物質に変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
・下記構造式で表される電荷輸送物質・・・95質量部
【化32】

【0103】
次に、作製した実施例1〜9及び比較例1〜5の電子写真感光体をプロセスカートリッジに装着し、一次平均粒径が150nmの疎水性シリカ(疎水化度65%)が表面に添加された平均粒径5.5μmの球形トナー(株式会社リコー製、試作重合トナー)を使用して、画像形成装置(株式会社リコー製、imagio MPC4500改造機)を用いて、連続して合計50万枚の実機通紙試験を行い、以下のようにして、摩耗量の測定、機内電位の測定、及び画像評価を行った。結果を表1に示す。
なお、疎水性シリカの一次平均粒径は、FE−SEM(S−4200、日立製作所製)を用いて、30,000倍で観察した像から50個の粒子の直径を測定し、平均値を導出することにより測定した。
【0104】
<摩耗量の測定>
50万枚通紙前後に、渦電流式膜厚計(フィッシャースコープMMS、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を使用して、電子写真感光体の膜厚を測定し、初期と50万枚後の差を摩耗量とした。
【0105】
<機内電位の測定>
50万枚通紙後に、前記実機通紙試験で用いた前記画像形成装置(株式会社リコー製、imagio MPC4500改造機)に表面電位計(表面電位計Model344、トレック社製)をセットし、全面白パターン、及び全面黒パターンのA4サイズ画像を、それぞれ1枚出力した際の表面電位を測定し、暗部電位、及び明部電位を求めた
【0106】
<画像評価>
前記実機通紙試験で用いた前記画像形成装置(株式会社リコー製、imagio MPC4500改造機)を用いて、50万枚通紙後に、全面白パターン、全面黒パターン、及び全面ハーフトーンパターンのA3サイズ画像を、それぞれ2枚ずつ出力し、異常画像の有無を確認した。
【0107】
【表1】

【0108】
(実施例10〜12)
実施例10〜12では、以下に示す各トナーと実施例1の電子写真感光体を用いて、評価を行った。
実施例10として、一次平均粒径が100nm(疎水化度65%)の疎水性シリカを表面に添加した平均粒径5.5μmの球形トナー(株式会社リコー製、試作重合トナー)を用いた。
実施例11として、一次平均粒径が200nm(疎水化度65%)の疎水性シリカを表面に添加した平均粒径5.5μmの球形トナー(株式会社リコー製、試作重合トナー)を用いた。
実施例12として、一次平均粒径が150nmの表面未処理シリカを表面に添加した平均粒径5.5μmの球形トナー(株式会社リコー製、試作重合トナー)を用いた。
ここで、疎水性シリカの一次平均粒径は、FE−SEM(S−4200、日立製作所製)を用いて、30,000倍で観察した像から50個の粒子の直径を測定し、平均値を導出することにより測定した。
これら実施例10〜12のトナーを、実施例1の電子写真感光体をプロセスカートリッジに装着した前記画像形成装置(株式会社リコー製、imagio MPC4500改造機)を用いて、連続して合計50万枚の実機通紙試験を行い、実施例1〜9及び比較例1〜5と同様にして、摩耗量の測定、機内電位の測定、及び画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0109】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の電子写真感光体は、例えばレーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機、直接又は間接の電子写真多色画像現像方式を用いたフルカラー複写機、フルカラーレーザープリンタ、CRTプリンタ、LEDプリンタ、液晶プリンタ、レーザー製版、及びフルカラー普通紙ファックスなどに幅広く用いることができる。
【符号の説明】
【0111】
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
4 イレーサ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 記録媒体
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
101 感光ドラム
102 帯電装置
103 露光
104 現像装置
105 記録媒体
106 転写装置
107 クリーニングブレード
201 支持体
202 感光層
203 表面保護層
204 電荷発生層
205 電荷輸送層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【特許文献1】特公昭58−7988号公報
【特許文献2】特許第4208367号公報
【特許文献3】特許第4160512号公報
【特許文献4】特開平6−95413号公報
【特許文献5】特許第3938209号公報
【特許文献6】特許第4214655号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に、少なくとも感光層及び表面保護層を有してなり、
前記表面保護層が、下記一般式(I)及び(II)の少なくともいずれかで表されるエポキシアクリレート化合物と、3官能以上のラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物との硬化物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化33】

ただし、前記一般式(I)中、R及びRは、いずれも水素原子及びメチル基のいずれかを表す。nは、1〜3の整数を表す。
【化34】

ただし、前記一般式(II)中、Rは、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
【請求項2】
一般式(I)で表されるエポキシアクリレート化合物が、下記構造式で表されるエポキシアクリレート化合物である請求項1に記載の電子写真感光体。
【化35】

【請求項3】
一般式(II)で表されるエポキシアクリレート化合物が、下記構造式で表されるエポキシアクリレート化合物である請求項1に記載の電子写真感光体。
【化36】

【請求項4】
エポキシアクリレート化合物の含有量が、3官能以上のラジカル重合性化合物100質量部に対し5質量部〜100質量部である請求項1から3のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項5】
表面保護層が、フィラーを含有する請求項1から4のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、及び除電手段から選択される少なくとも一つの手段とを有し、画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体が、請求項1から5のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
トナーが、一次平均粒径100nm〜200nmの疎水性シリカを表面に含む請求項7に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−3069(P2012−3069A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138510(P2010−138510)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】