説明

電子写真感光体、並びに画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジ

【課題】少なくともラジカル重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤との硬化物からなる表面層と、非晶質酸化物半導体からなる中間層を有し、露光部電位の上昇を引き起こすことなく支持体からの電荷注入を抑制することができるとともに、長期にわたる使用によっても静電耐久性等の特性低下が極めて少なく、欠陥の少ない高品質画像が継続的に得ることができる電子写真感光体、並びに画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジの提供。
【解決手段】支持体と、該支持体上に少なくとも中間層、感光層、及び表面層をこの順に有してなり、前記表面層が、少なくともラジカル重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤との硬化物からなり、前記中間層が、非晶質酸化物半導体を含有する電子写真感光体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期にわたる使用によっても、露光部電位の上昇を起こすことなく、磨耗耐久性、静電耐久性等の特性低下が極めて少ない電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ、又はそれらの複合機等の電子写真方式の画像形成装置、画像形成方法、及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスの省スペース化、ビジネスオポチュニティの拡大等の観点から、電子写真方式の画像形成装置に対して、高速化、小型化、カラー化、更には、高画質化、易メンテナンス性が望まれている。これらは、電子写真感光体の特性の向上、耐久性の向上等が関係していることから、電子写真感光体の開発により解決すべき問題と位置付けられている。易メンテナンス性の向上の観点から、電子写真感光体の交換頻度の低減が挙げられる。これは、電子写真感光体由来の主力画像欠陥を、長期に亘って可能な限り少なくすることであり、電子写真感光体の長寿命化に他ならない。また、長期に亘る出力画像の高画質化にも関連するため、近年、電子写真感光体の長寿命化に関する開発が多く報告されている。
電子写真感光体の長寿命化を達成するためには、画像形成プロセスから電子写真感光体が受ける種々のハザードに対する耐久性の向上が重要な課題となる。ここで言うところのハザードとしては、大きくは機械的ハザード、電気的ハザードの二種類に大別できる。
【0003】
機械的ハザードの一例としては、画像形成プロセスの転写後に電子写真感光体上に残留するトナーを除去(所謂トナークリーニングプロセス)する手段の一つであるブレードクリーニング由来のものが挙げられる。ブレードクリーニングとは、感光体上に弾性部材(所謂クリーニングブレード)を当接することにより、強制的に電子写真感光体上からトナーを除去する手段であり、少ないスペースで大きなトナー除去能力を有するため、電子写真装置の小型化には非常に有効である。しかし、その一方で電子写真感光体に直接弾性部材を当接し、摺擦させるため、電子写真感光体への機械的なストレスが非常に大きく、感光体の最表面に配置された層が摩耗しやすいと言ったデメリットが指摘されている。このため、このクリーニング方式を適用した電子写真装置においては、電子写真感光体の摩耗が長寿命化に対する課題となることが多く、この課題に対しては、高硬度保護層を積層する技術が提案されている(特許文献1〜5参照)。
【0004】
次に、静電ハザードについて説明する。通常の画像形成プロセスにおいては、電子写真感光体表面に電荷を付与し、所定の電位まで帯電した後に、電子写真感光体への露光によって感光体を経由して表面に付与した電荷を除去する。この際に電子写真感光体の各層(例えば表面層、電荷発生層、電荷輸送層、中間層)を電荷が通過することによって、電子写真感光体に静電ストレスが負荷される。現在、広く普及している電子写真感光体は、有機材料からなるものが大部分を占めており、繰り返し帯電、除電を繰り返すような現在の電子写真プロセスにおいては、電子写真感光体を構成する有機材料が静電ハザードによって徐々に変質し、層中での電荷トラップの発生や、帯電性の変化等に挙げられるような電子写真特性の低下が生じる。特に、帯電性の低下は、出力画像の画質への影響が大きく、画像濃度の低下、地汚れ、連続出力時の画像の均質性等の重大な問題を引き起こすことが知られている。
感光体の帯電性低下に対しては種々の低下要因が挙げられている。例えば、画像形成プロセスにおける帯電プロセスで発生した放電生成物が感光体へ影響を与える(特許文献6〜8参照)ことが指摘されており、これによって電荷輸送層や表面層のバルクの導電性が向上するため、電子写真感光体の帯電性低下を引き起こす。これに対しては電荷輸送層や表面層に酸化防止剤を添加することによって帯電性低下を抑制する技術が公開されている(特許文献8参照)。また、帯電プロセスとして放電生成物の発生が少ない帯電技術が公開されている(特許文献6及び7参照)。この帯電方式を画像形成プロセスにおける帯電プロセスに適用することによって、放電生成物によって引き起こされる電子写真感光体の帯電性低下を抑制することが可能である。
【0005】
また、帯電性低下の別な要因として、中間層の劣化が考えられる。現在広く用いられている中間層は、有機樹脂からなるバインダー中に無機微粒子を分散させた形態を取るものであり、支持体から感光層への電荷注入阻止機能と、感光層で発生した電荷の支持体への輸送機能とを有することが好ましいとされている。例えば、支持体から感光層への電荷注入阻止機能が不十分な場合、電子写真感光体を帯電させる際に、感光体の帯電極性と逆極性の電荷が支持体から感光層に注入し、感光体表面の電荷を消去しやすくなるため、所望の帯電を得にくいと言った現象が発生する。また、感光層で発生した電荷の支持体への輸送機能が不十分な場合、電荷発生効率の低下による露光部電位上昇や、中間層中の電荷トラップによる帯電性不良が発生しやすい。これら二つの機能の両立・維持に関する種々の技術が開発されているが、これらの機能は相反則の関係を取りやすく、両機能の両立及び維持は非常に難しい。例えば、中間層の構成層として高絶縁層を適用することによって電荷注入阻止の機能向上を達成する技術が公開されている(特許文献9及び10参照)。この技術を電子写真感光体に用いた場合、感光体の帯電性低下に由来して発現する地汚れなどの画像欠陥は極めて少なくなり、繰り返し使用によっても極めて良好な出力画像を維持することが報告されている。しかし、中間層の担うべきもう一つの機能である、電荷発生材料から支持体への電荷輸送という機能は不十分となり、露光部電位上昇や帯電不良などを引き起こしやすく、電子写真感光体の繰り返し使用によって露光部電位上昇、帯電不良といった現象が顕在化しやすい。
【0006】
また、例えば、電子写真感光体表面を負帯電させる画像形成プロセスにおいて、その電子写真感光体の中間層に電子輸送材料を配合する技術が提案されている(特許文献11参照)。この提案によれば、感光体表面の逆極性の電荷(この場合は正電荷)が支持体から感光層に注入されにくいとともに、電荷発生層で発生した負電荷を支持体へ輸送することが可能となり、前記中間層の二機能を充足する中間層が得られる。このような中間層を電子写真感光体に適用した場合、初期的には非常に良好な電子写真特性を示す。
しかし、前記提案では、優れた電子移動特性を示す電子輸送材料が少ないこと、繰り返しの静電ハザードによって中間層を構成する有機材料が劣化しやすいこと、更には電子輸送材料が大気中の酸素の影響を受けることによって電荷トラップを形成しやすいことなどの理由から、繰り返しの静電ハザードによって電子写真特性の低下が生じることが問題となっている。
【0007】
したがって露光部電位の上昇を引き起こすことなく支持体からの電荷注入を抑制することができるとともに、長期にわたる使用によっても静電耐久性等の特性低下が極めて少なく、欠陥の少ない高品質画像が継続的に得ることができる電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジは得られておらず、その速やかな提供が望まれているのが現状である。
【0008】
【特許文献1】特開平5−181299号公報
【特許文献2】特開2002−6526号公報
【特許文献3】特開2002−82465号公報
【特許文献4】特開2000−284514号公報
【特許文献5】特開2001−194813号公報
【特許文献6】特開平9−26685号公報
【特許文献7】特開2002−229241号公報
【特許文献8】特開2006−99028号公報
【特許文献9】特開平3−45962号公報
【特許文献10】特開平7−281463号公報
【特許文献11】特開2006−259141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、少なくともラジカル重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤との硬化物からなる表面層と、非晶質酸化物半導体からなる中間層とを有し、露光部電位の上昇を引き起こすことなく支持体からの電荷注入を抑制することができるとともに、長期にわたる使用によっても静電耐久性等の特性低下が極めて少なく、欠陥の少ない高品質画像が継続的に得ることができる電子写真感光体、並びに画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため本研究者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、支持体上に少なくとも中間層、感光層、表面層を順に有し、該表面層が少なくともラジカル重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤との硬化物からなり、かつ該中間層に非晶質酸化物半導体を用いることによって、支持体から感光層への不要な電荷の注入を抑制することが可能であるとともに、使用によっても中間層中への電荷トラップが発生や、支持体からの不要な電荷の注入がほとんど生じることなく、長期に亘って電子写真感光体の帯電性低下が生じず、出力画像の欠陥を極めて少なくすることができる電子写真感光体を作製できることを知見した。更に、非晶質酸化物半導体として少なくともインジウム、亜鉛、ガリウムを含む非晶質酸化物を用いることで前記効果が顕著に発現することを知見した。
そして、本発明の電子写真感光体を用いれば、中間層から電荷発生層、電荷輸送層への不要電荷の注入を抑制することができるとともに、電荷発生材料で発生した電荷を効果的に支持体に輸送することが可能であり、本発明の手法で形成した中間層は電荷ハザードに対して非常に堅牢であるため、長期に亘って前記特性を維持することができる。その結果、電子写真感光体の繰り返し使用によっても、画像濃度低下、地汚れ発生等の出力画像欠陥が生じなく、画像形成プロセス由来の機械的ハザードに対しても耐久性を有し、長期にわたる使用によっても静電耐久性等の特性低下が極めて少ない長寿命な電子写真感光体を提供することができる。
【0011】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、該支持体上に少なくとも中間層、感光層、及び表面層をこの順に有してなり、
前記表面層が、少なくともラジカル重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤との硬化物からなり、
前記中間層が、非晶質酸化物半導体を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
<2> 非晶質酸化物半導体が、少なくともインジウム、亜鉛、及びガリウムを含有する前記<1>に記載の電子写真感光体である。
<3> 非晶質酸化物半導体が、少なくともインジウム、亜鉛、及びガリウムを含有する多結晶焼結体を用い、スパッタリング法により形成される前記<1>から<2>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<4> 中間層の厚みが、0.1μm〜0.9μmである前記<1>から<3>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<5> 支持体の表面粗さ(Rz)が、0.6μm以上である前記<1>から<4>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<6> ラジカル重合性化合物の官能基が、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の少なくともいずれかである前記<1>から<5>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<7> ラジカル重合性化合物が、電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物である前記<1>から<6>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<8> 電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物の官能基数が3つ以上である前記<7>に記載の電子写真感光体である。
<9> ラジカル重合性化合物が、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物である前記<1>から<8>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<10> ラジカル重合性化合物が、電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物と電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の混合物である前記<1>から<9>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<11> 電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の電荷輸送性部位がトリアリールアミン構造である前記<9>から<10>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<12> 電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の官能基数が1つである前記<9>から<11>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<13> 感光層が、電荷発生層及び電荷輸送層からなる積層型である前記<1>から<12>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<14> 電子写真感光体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、を少なくとも含む画像形成方法において、
前記電子写真感光体が、前記<1>から<13>のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法である。
<15> 電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、を少なくとも有する画像形成装置において、
前記電子写真感光体が、前記<1>から<13>のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置である。
<16> 前記<1>から<13>のいずれかに記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体上に形成した静電潜像をトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0012】
本発明においては、電子写真感光体の長寿命化を達成するためには、前述の通り作像における各プロセスから受ける種々のハザードに対して耐久性を付与することが重要となる。特に電子写真感光体表面に残留したトナーを除去するためのクリーニングプロセス等で負荷される機械的ハザード、及び帯電プロセスや転写プロセスから受ける静電ハザードの二つのハザードが感光体に大きなストレスを与え、感光体の特性変化を引き起こし、感光体の長寿命化に対する阻害要因であると考えられている。このうち、本発明においては静電ハザードに対する耐久性向上に関し、より具体的には、地汚れや画像濃度ムラなどの帯電性に関わる耐久性向上技術に関する。
【0013】
電子写真作像プロセスにおける帯電プロセスは、感光体表面を一定電位に帯電させるものであり、その均一性が画像濃度ムラ、地汚れ等に関わり、帯電能力が高速性に関わることから高画質化及び高速化に対しては重要な技術とされている。電子写真感光体において、その表面を均一に帯電させるために必要な特性として、支持体からの不要な電荷注入がないこと、また電子写真感光体中において電荷トラップが少ないことが挙げられる。もしこれらの特性を有しない電子写真感光体であった場合、帯電プロセスにおける電子写真感光体帯電時に支持体から帯電極性とは逆極性の電荷注入が生じ、表面に付与された電荷をキャンセルしたり、蓄積された電子写真感光体内の電荷が表面に付与された電荷をキャンセルすることによって、所望の帯電性が得られないという現象が発生する。
また、最近の電子写真感光体の開発動向として、環境対応、易メンテナンス性などを指向して長寿命化が進められており、ここに示した支持体からの不要電荷注入や、電荷トラップがないことが長期に亘って維持されることが求められている。即ち、ここに示した帯電性に関わる特性は、初期的には非常に優れた特性を有していたとしても、使用によって用いられている有機材料が劣化し、不要電荷の注入サイトが発生したり、層中に新たな電荷トラップを発生させるなどといったことによる、帯電性低下を引き起こしたりするため、用いる材料の電気的耐久性が求められている。
したがって本発明の電子写真感光体は、少なくともラジカル重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤との硬化物からなる表面層を有し、通過電荷に対する耐久性を有し、電気化学的に感光層への不要電荷が注入しにくい非晶質酸化物半導体、特にインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む非晶質酸化物半導体を中間層に適用することにより、長期にわたる使用によっても静電耐久性等の特性低下が極めて少なく、欠陥の少ない高品質画像が継続的に得ることができ、本発明の画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジに適用される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、少なくともラジカル重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤との硬化物からなる表面層と、非晶質酸化物半導体からなる中間層とを有し、露光部電位の上昇を引き起こすことなく支持体からの電荷注入を抑制することができるとともに、長期にわたる使用によっても静電耐久性等の特性低下が極めて少なく、欠陥の少ない高品質画像が継続的に得ることができる電子写真感光体、並びに画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、支持体と、該支持体上に少なくとも中間層、感光層、及び表面層をこの順に有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0016】
<中間層>
前記中間層は、支持体から感光層への不要な電荷(感光体の帯電極性と逆極性の電荷)の注入を抑制する機能と、感光層で形成された電荷のうち、感光体の帯電極性と同極性の電荷を輸送する機能とを兼ね備えていることが好ましい。例えば、画像形成プロセスとして感光体を負帯電させる必要がある場合には、中間層としては支持体から感光層への正孔注入阻止機能(ホールブロッキング性)と、感光層から支持体への電子輸送機能(エレクトロン輸送性)とを兼ね備える必要がある。また、長寿命電子写真感光体を獲得するためにはその特性が繰り返しの静電ハザードによっても変化しないことが重要となる。
前記中間層がホールブロッキング性を有するために該中間層として有するべき特性は、該中間層のイオン化ポテンシャルもしくは電子充満帯における仕事関数が支持体のフェルミ順位よりも大きいこと、及び中間層自身に正孔輸送性が極めて小さいことが挙げられる。これらの特性を有する材料としてはn型を示す半導体材料が好適に挙げられる。また、仕事関数の観点からは比較的バンドギャップが大きいことも挙げることができる。更に感光層で発生した電子を支持体に輸送する(エレクトロン輸送性)ために中間層が持つべき特性は、中間層の電子親和力よりも感光層の電子親和力が小さいこと、中間層が電子輸送性を有することが挙げられる。
これらの特性を満足するような中間層としては、電子輸送性構造を有する有機材料をバインダー中に分散させることによって形成した電子輸送層や、n型を示す無機半導体などが例示されるが、これらの特性が静電ハザードによって変動しにくい材料としては、後者に示したようなn型の無機半導体材料が好ましい。更に電子写真感光体に代表されるような比較的大面積のデバイス内における電気特性の面内ばらつきを考慮した場合には、非晶質材料であることが好ましい。
前記非晶質酸化物とは、原子配列が不規則な固体状態の酸化物を意味する。この酸化物は高温の流動状態にある酸化物を急冷することによって得られるガラス酸化物半導体と、スパッタリングなどの手法によって比較的低温で形成される非晶質酸化物とに大別することができる。支持体の耐熱性等を考慮した場合、後者で挙げたような非晶質酸化物を選択することが好ましい。
【0017】
前記中間層に適用することができる非晶質酸化物半導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インジウム酸化物、インジウム、亜鉛及びスズのうち少なくとも2元素を含む非晶質酸化物;インジウム、亜鉛及びガリウムのうち少なくとも2元素を含む非晶質酸化物;インジウム、スズ及び亜鉛のうち少なくとも2元素を含む非晶質酸化物;インジウム、タングステン及び亜鉛のうち少なくとも2元素を含む非晶質酸化物;イットリウム、マンガン及びチタンのうち少なくとも2元素を含む非晶質酸化物(但し、低温製膜により形成可能)、などが挙げられる。これらの中でも、静電的安定性及び電気的伝導性の観点からインジウム、亜鉛及びガリウムの3元素からなる非晶質酸化物半導体が特に好ましい。
【0018】
−非晶質酸化物半導体の製膜方法−
前記非晶質酸化物半導体の支持体上への成膜方法としては、特に制限はなく、一般に用いられている無機材料の成膜方法の中から適宜選択することができる。
前記一般の成膜方法としては、大別して気相成長法、液相成長法、固相成長法に分けられる。
前記気相成長法としては、更に物理的気相成長法(PVD)と化学的気相成長法(CVD)とに分類される。
前記物理的気相成長法としては、例えば真空蒸着、電子ビーム蒸着、レーザーアブレーション法、レーザーアブレーションMBE、MOMBE、反応性蒸着、イオンプレーティング、クラスタイオンビーム法、グロー放電スパッタリング、イオンビームスパッタリング、反応性スパッタリングなどが挙げられる。
前記液相成長法としては、例えば熱CVD法、MOCVD、RFプラズマCVD、ECRプラズマCVD、光CVD、レーザーCVDなどが挙げられる。液相法としては、例えばLPE法、電気メッキ法、無電界メッキ法やコーティング法などが挙げられる。固相法としては、例えばSPE、再結晶法、グラフォエピタキシ、LB法、ゾルゲル法などが例示される。
これらの製膜方法のうち、電子写真感光体のような比較的大面積領域に均質な膜を製膜するためには物理的気相成長法が広く適用されており、本方式の中でも、非晶質酸化物の細かい組成制御が必要である場合にはレーザーアブレーション法が、量産性が必要である場合には各種スパッタリング法が好適である。
【0019】
次に、非晶質酸化物半導体の製膜条件について、特にスパッタリング法に関する製膜条件について詳述する。
-基板の洗浄−
均質な電気特性を示す非晶質酸化物半導体を得るためには非晶質酸化物半導体を製膜する基板、本発明においては支持体の洗浄は非常に重要となる。清浄な支持体の表面としては、少なくとも支持体(例えばアルミニウム)以外の汚染物質が存在しないことが理想的ではあるが、その状態を達成することは非常に困難である。そこで、必要とされる表面汚染物質量や実験で使用する装置の性能等に応じて、一般に提案されている洗浄手法を適用して、所望の支持体表面をえるとよい。
前記洗浄手法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿式洗浄法、スパッタエッチング法、高温サーマルエッチング法、低温サーマルエッチング法、電子線照射エッチング法、シンクロトロン放射光照射エッチング法、レーザー光照射エッチング法、などが挙げられる。
【0020】
−ターゲット−
前記非晶質酸化物半導体を支持体上にスパッタリング法で形成するに当たっては、一般に形成した非晶質酸化物半導体の構成元素を含有する多結晶焼結体を用いる。多結晶焼結体に用いる元素としては、成膜する非晶質酸化物半導体の構成元素によって適宜選択するとよい。
また、少なくともインジウム、亜鉛、及びガリウムからなる非晶質酸化物半導体を得るためには、少なくともインジウム、亜鉛、及びガリウムを含有する多結晶焼結体を用いる必要がある。このような多結晶焼結体は、一般に知られているターゲット作製方法によって作製することができる。作製方法の一例としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムの各粉体を所望の配合比率で配合し、均質になるまでエタノールを用いて湿式混合した後に焼結をすることで得ることが可能である。
また、非晶質酸化物半導体の導電性制御を目的として、予めターゲットに所望の不純物をドープしてもよい。ドープする金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Li、Na、Mn、Ni、Pd、Cu、Cd、C、N、P、Ti、Zr、V、Ru、Ge、Sn、F、などが挙げられる。
【0021】
−製膜圧力−
前記スパッタリング法においては、製膜時にターゲット上で電界印加によってプラズマを発生させる。このため、スパッタリング法を用いた場合には真空チャンバーなどを用いて減圧雰囲気を形成する必要がある。製膜持の減圧が不十分な場合にはプラズマの形成ができなかったり、プラズマが不安定なため、形成した膜が不均一になるため注意を要する。減圧雰囲気は製膜方法、装置、条件や、所望の膜質などから適宜選択するとよい。
【0022】
−流入ガス種−
スパッタリング法においては、減圧雰囲気中に不活性ガスと酸素ガスの混合ガスを流入させながらプラズマを形成することによって、対向電極に配置された基板(支持体)上に非晶質酸化物を形成することができる。ここで用いられる不活性ガスとしては、一般に用いられるものであれば特に限定されず、例えば第18属元素に代表されるようなヘリウム、アルゴン、その他窒素ガスに代表されるガスが例示される。また、前記不純物を添加するために不活性ガス、酸素に加えて1種類以上のガスを併用してもよい。
【0023】
−酸素分圧−
一般の酸化物半導体は不純物をドープすることなく、酸化物半導体中の酸素量(酸素欠損量)で導電性の制御ができるという特徴を有しており、本発明に記載の非晶質酸化物も同様の性質を有する。本特性は非晶質酸化物の導電性制御が、製膜時の酸素流通量(酸素分圧)のみで制御できることを示しており、中間層における電子輸送性制御の観点からは重要な製膜条件となる。
製膜時に流通する酸素ガスの割合は、装置や後述するその他の条件によっても異なるが、一般に流通する全ガス流量に対して0.05vol%以上20vol%以下が好ましく、0.1vol%以上15vol%以下がより好ましい。前記酸素ガスの割合が20vol%を超えると、形成される非晶質酸化物のキャリア濃度が低くなりすぎることによって、電子伝導度が極めて低くなることがある。
【0024】
−ターゲット/基板間距離−
ターゲット/基板間距離を変更することによって前述の非晶質酸化物中の酸素量(酸素欠損量)が変化することが知られている。一般にターゲット/基板間距離を大きくした場合、酸素欠損量が低下し形成した非晶質酸化物が高抵抗体になる。一方で、ターゲット/基板間距離を小さくした場合には、ターゲット表面のプラズマによって基板温度が上昇することによる膜質への影響、またプラズマ自身の非晶質酸化物への影響などによって均質膜の作製が困難になる場合があるため注意を要する。前記ターゲット/基板間距離に関しては製膜方法、装置、その他の製膜条件によって異なるため、所望の電気特性が得られるターゲット/基板距離を選択するとよい。
【0025】
−基板温度−
スパッタリング法においてはターゲット表面の放電によって基板の温度が上昇しやすい。基板温度の上昇によって、膜の電気特性、緻密性、構造等へ影響があることが知られているため、基板の冷却やターゲット/基板間距離を大きくするなどの方法によって基板温度の制御をすることが好ましい。
【0026】
−非晶質酸化物半導体の膜質−
本発明において、良好な電子写真特性を示すためには、非晶質酸化物半導体の膜質等にも注意が必要である。
本発明においては中間層が均質な非晶質膜であることが重要となる。前記記載の方法で支持体上に形成した膜が非晶質であることを確認する方法としては、一般にはX線回折法による結晶構造解析によって判定される。その他、電子回折法、中性子回折法などの構造解析手法や、形成膜の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)などの微細構造観察手段を用いた手法を用いて判定してもよい。
また、電子写真特性に影響を及ぼす非晶質酸化物半導体の特徴としては、膜の組成及び組成分布が重要となる。非晶質酸化物半導体の組成解析方法としては、一般に元素解析方法として用いられている手法が適用できるが、例えば、蛍光X線分析、X線光電子分光法、オージェ電子分光法、エネルギー分散型X線分光法などの物質の構成元素解析手法が例示される。
【0027】
前記中間層として用いる非晶質酸化物半導体の電気特性は、電子写真感光体の電気特性を大きく左右するため、所望の電子写真感光体の電気特性を得るためには中間層に適用する非晶質酸化物半導体の電気特性を適宜選択する必要がある。非晶質酸化物半導体の電気特性として代表的に挙げられるものを以下に示す。
【0028】
−キャリア濃度−
前記非晶質酸化物半導体は、不純物金属などをドープすることなく、製膜時の酸素流通量によって、その膜中の酸素欠損量(所謂キャリア濃度)をコントロールすることが可能である。また、適宜不純物をドープすることによりキャリア濃度を調整することも可能である。前記キャリア濃度の定量方法としては、一般にHall効果を利用した手法が挙げられる。
【0029】
−表面抵抗−
前記非晶質酸化物半導体の表面抵抗の測定方法としては、特に制限はなく、一般に用いられる表面抵抗率測定手法を用いることができる。具体的には、表面抵抗率が10Ω/cm以下の低抵抗体に関してはJIS K 7194などに記載されている定電流印加方式が例示される。また、表面抵抗率が10Ω/cm以上の高抵抗対に関してはJIS K 6911等に記載されている定電圧印加・漏洩電流測定方式が例示される。また、本手法以外に一般に知られている四探針法や四端子法、二端子法などの手法によっても測定してもよい。
【0030】
−バンドギャップ−
本発明において、非晶質酸化物半導体のバンドギャップも電子写真感光体の特性、特に支持体からのホールブロッキング性に関連があると考えられるため、良好な当該特性を得られるようにバンドギャップ(正確には非晶質酸化物の充満帯における仕事関数)を適宜選択するとよい。
バンドギャップの測定方法としては、電気化学的測定手法や光化学的測定手法などによって測定され、例えば、光化学的測定手法の一つであるTaucプロットを用いたバンドギャップエネルギー測定法が例示できる。本方法は、一般に、半導体の長波長側の光学吸収端の近傍の比較的吸収の大きい領域において、吸収係数α、光エネルギーhν(ただし、hはプランク常数であり、νは波数である。)及びバンドキャップエネルギーE0の間には、下記数式が成り立つと考えられている。
αhν=B(hν−E0)(ただし、Bは定数である。)
したがって、吸収スペクトルを測定し、(αhν)1/2に対してhνをプロット(所謂Taucプロット)し、直線区間を外挿したα=0におけるhνの値がバンドギャップエネルギーとなる。
バンドギャップは、特に制限はなく、前述の方法を用いても測定してもよいし、電気化学的・光化学的に同義の特性値が得られる場合は、種々の測定方法を用いることができる。
【0031】
−中間層の厚み−
前記中間層に用いる非晶質酸化物半導体の厚みも電子写真感光体の電気特性に影響を与えると考えられる。現在、露光プロセスにおいて広く用いられている光源は可干渉性の高いレーザー光であるため、入射レーザー光と支持体等からの反射光との干渉によってモアレが生じやすいこと、また支持体と中間層の物理的接触を補償することを目的として、支持体の表面は任意の凹凸を有する場合が多い。このような場合において、前記中間層の厚みが小さい場合には支持体の表面凹凸のために膜厚偏差が大きくなり、部分的な帯電不良が生じる恐れがある。また、本発明のように非晶質酸化物半導体を中間層に用いる場合に、その膜厚が大きすぎると膜深度方向での組成ばらつきが大きくなることによる電気特性の場所によるばらつきが生じたり、製膜に要する時間が長くなるために、製膜にかかるコストが非常に大きくなり現実的ではない。
前記中間層の厚みとしては、0.1μm〜0.9μmが好ましい。前記中間層の厚みが、0.1μm未満であると、支持体表面を均一に被覆することが困難となり、本発明の効果が十分発揮できなくなることがあり、0.9μmを超えると、製膜コストが高くなりすぎること、支持体近傍と感光層近傍とで中間層の電気特性が異なるおそれがある。
【0032】
―電子写真感光体の層構成−
本発明の電子写真感光体は、支持体と、該支持体上に少なくとも中間層、感光層、及び表面層をこの順に有する。
前記感光層としては、電荷発生機能と電荷輸送機能を有していれば単層構造をとっても多層構造をとってもよい。その実施態様の一例を図1〜図3を用いて説明する。
図1に示した電子写真感光体の概略断面図は、感光層が単層の場合の一例であり、支持体31、中間層32上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層36及び表面層35が設けられている。ここで、表面層35は以下に記載する架橋表面層を示している。
図2及び図3に示した電子写真感光体の概略断面図は、感光層が積層の場合の例であり、支持体31、中間層32上に電荷発生機能を担う電荷発生層33と、電荷輸送機能を担う電荷輸送層34とを分離して積層した態様のものである。本態様をとる場合は、図示するとおり電荷発生層と電荷輸送層の積層順番は特に限定されることはなく、用途に応じて使い分けることが可能であり、感光体の最表面には表面層35が積層される。
【0033】
<表面層>
前記表面層は、少なくともラジカル重合性化合物と光ラジカル重合開始剤を含み、光照射手段を用いて光露光を行うことによって重合させることによって得られる架橋表面層である。
【0034】
−ラジカル重合性化合物−
前記ラジカル重合性化合物としては、電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物を単独で用いてもよいし、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を単独で用いてもよいし、それらを併用してもよい。ラジカル重合性化合物として電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物を単独で使用する場合には、表面層に電荷輸送機能を担持させるためにラジカル重合性官能基を有しない電荷輸送性材料を併用することが好ましい。また、その他の機能を表面層に付与する目的で、本明細書に記載する各種添加剤を添加してもよい。
【0035】
前記ラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基が挙げられる。
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば下記一般式(1)で表される官能基が挙げられる。
【化1】

ただし、前記一般中、Xは、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R10)−基(ただし、R10は、水素原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す)、又はS−基を表す。
これらの置換基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基、などが挙げられる。
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば下記一般式(2)で表される官能基が挙げられる。
【化2】

ただし、前記一般式(2)中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR11基(ただし、R11は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。)、又はCONR1213(ただし、R12及びR13は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表し、互いに同一又は異なっていてもよい。
また、Xは、前記一般式(1)のXと同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y及びXの少なくともいずれか一方が、オキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、又は芳香族環である。
【0036】
これらの置換基としては、例えば、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基、などが挙げられる。
これらX、X、Yについての置換基に更に置換される置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらのラジカル重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。
【0037】
−電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物−
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物とは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、かつラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基とは、前記記載のラジカル重合性官能基であれば特に限定されない。
【0038】
本発明において、ラジカル重合性化合物の官能基数は特に限定されないが、表面層に摩耗耐久性を持たせるためには少なくとも1種以上の3個以上のラジカル重合性官能基を有するラジカル重合性化合物を用いることが好ましい。1官能及び2官能のラジカル重合性化合物のみを用いた場合は、表面層中の架橋結合が希薄となり飛躍的な耐摩耗性向上が達成されにくいことがある。しかし、3官能以上のラジカル重合性化合物のみを用いる場合は、塗工液の粘度上昇による表面平滑性の低下や、硬化反応時に体積収縮によるクラックの発生などの欠陥が発生する場合があるために、塗工液の粘度調整、表面層の表面平滑性維持、架橋収縮によるクラック防止、表面自由エネルギー低減を目的として1〜2官能のラジカル重合性化合物及びラジカル重合性オリゴマーを1種類以上併用してもよい。
【0039】
これらのラジカル重合性化合物としては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマー、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以後EO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性(以後PO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(ECH変性)トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレート、などが挙げられる。
【0040】
−電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物−
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物としては、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基、ニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しており、かつラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基とは、前記記載のラジカル重合性官能基であれば特に限定されない。
【0041】
本発明において、ラジカル重合性化合物の官能基数は特に限定されないが、長期に亘って良好な電気特性を有するためにはラジカル重合性官能基数が1であることが好ましい。2官能以上の電荷輸送性化合物を主成分として用いた場合は、電荷輸送性構造を有する部位が複数の結合で架橋構造中に固定されるため、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が起こりやすい。これらの電気特性の劣化は画像濃度低下、文字の細り等の現象として現れることがある。
【0042】
前記電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造が効果が高い。更に、下記一般式(I)又は(II)の構造で示される化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
【0043】
【化3】

【化4】

ただし、前記一般式(I)及び(II)中、R10は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR11(ただし、R11は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を表す)、ハロゲン化カルボニル基、又はCONR1213(ただし、R12及びR13は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を示す)を表す。Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換又は無置換のアリーレン基を表す。Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換又は無置換のアリール基を表す。X10は、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、又はビニレン基を表す。Zは、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、又はアルキレンオキシカルボニル基を表す。m及びnは、いずれも0〜3の整数を表す。
【0044】
以下に、前記一般式(I)及び(II)における置換基の具体例を示す。
前記一般式(I)及び(II)において、R10の置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていてもよい。R10の置換基のうち、特に好ましいものは水素原子、メチル基である。
Ar、及びArは置換もしくは無置換のアリール基であり、アリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基が挙げられる。
該縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、及びナフタセニル基等が挙げられる。
該非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
【0045】
前記一般式(I)及び(II)において、Ar及びArで表されるアリール基は、例えば、以下に示すような置換基を有していてもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる
(2)炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基は、更にフッ素原子、水酸基、シアノ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
【0046】
(3)アルコキシ基(−OR)であり、Rは上記(2)で定義したアルキル基を表す。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これらは、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基又はアリールメルカプト基であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
【0047】
(6)下記一般式で表される基である。
【化5】

ただし、前記式中、R及びRは、各々独立に水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、又はアリール基を表す。アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらは炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R及びRは共同で環を形成してもよい。
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基、などが挙げられる。
【0048】
(7)メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基、又はアルキレンジチオ基等が挙げられる。
(8)置換基を有していてもよいスチリル基、置換基を有していてもよいβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等が挙げられる。
前記Ar及びArで表されるアリーレン基としては、前記Ar及びArで表されるアリール基から誘導される2価基である。
【0049】
前記ビニレン基としては、下記一般式で表されるものが挙げられる。
【化6】

ただし、前記一般式中、Rは、水素原子、アルキル基(前記(2)で定義されるアルキル基と同じ)、又はアリール基(前記Ar及びArで表されるアリール基と同じ)を表す。aは1又は2を表す。bは1〜3を表す。
【0050】
前記一般式(I)及び(II)において、前記Zは、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換基を有していてもよいアルキレンエーテル2価基、又は置換基を有していてもよいアルキレンオキシカルボニル2価基を表す。
前記置換もしくは未置換のアルキレン基としては、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。
前記置換基を有していてもよいアルキレンエーテル2価基としては、前記Xのアルキレンエーテル基の2価基が挙げられる。
前記置換基を有していてもよいアルキレンオキシカルボニル2価基としては、カプロラクトン変性2価基が挙げられる。
【0051】
前記一般式(I)及び(II)の1官能性の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物との重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある)するが、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また、電子写真感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造を採りうるものと推測される。
【0052】
前記1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
【0053】
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【0054】
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、表面層に電荷輸送性能を付与するために重要で、この成分は表面層全量に対し20質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましい。前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が、20質量%未満であると、表面層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れることがあり、80質量%を超えると、一般式(1)で表される電荷輸送構造を有しないラジカル重合性化合物の含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30質量%〜70質量%の範囲が特に好ましい。また、後述するラジカル重合性官能基を有しない電荷輸送性材料と併用する場合にはラジカル重合性官能基を有しない電荷輸送性材料と併せて、表面層全量に対し20質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましい。
【0055】
<ラジカル重合性官能基を有しない電荷輸送性材料>
前記ラジカル重合性官能基を有しない電荷輸送性材料としては、(1)トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾール等の正孔輸送性構造を有する化合物、(2)縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基、ニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有し、かつラジカル重合性官能基を有しない化合物などが挙げられる。
前記電子輸送構造を有し、かつラジカル重合性官能基を有しない化合物としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらは、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
前記正孔輸送性構造を有する化合物としては、例えばポリ−N−ビニルカルバゾール又はその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート又はその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物又はその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらは1種単独、又は2種以上混合して用いられる。
また、上述した電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と併用してもよい。これらの電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、表面層全質量に対して20質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましい。
【0056】
−光ラジカル重合開始剤−
前記光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、一般に用いられる化合物を使用することができる。なお、ラジカル重合を効率よく行わせるために熱重合開始剤を併用してもよい。
前記光ラジカル重合開始剤としては、例えばジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;ビス(シクロペンタジエニル)−ジ−クロロ−チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ジ−フェニル−チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,3,4,5,6ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム等のチタノセン系光重合開始剤;その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、などが挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独又は上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
【0057】
前記熱重合開始剤としては、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤、などが挙げられる。
これらの重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
前記光ラジカル重合開始剤の含有量は、前記ラジカル重合性化合物100質量部に対し、0.5質量部〜40質量部が好ましく、1質量部〜20質量部がより好ましい。
【0058】
前記表面層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物及び電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を同時に硬化させた表面層であるが、これ以外に耐摩耗性の向上を目的としてフィラー微粒子を含有させることができる。
前記フィラーの平均一次粒径は、0.01μm〜0.5μmであることが表面層の光透過率や耐摩耗性の点から好ましい。フィラーの平均一次粒径が0.01μm未満の場合は、分散性の低下等を引き起こし、耐摩耗性の向上効果が充分に発揮されず、0.5μmを超える場合には、分散液中においてフィラーの沈降性が促進されたり、トナーのフィルミングが発生したりする可能性がある。
表面層中のフィラー材料濃度は、高いほど耐摩耗性が高いので良好であるが、高すぎる場合には残留電位の上昇、表面層の書き込み光透過率が低下し、副作用を生じる場合がある。従って、概ね全固形分に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
また更に、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、更には耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤を使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。
表面処理量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、フィラー質量に対して3質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。表面処理量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こす。これらフィラー材料は単独もしくは2種類以上混合して用いられる。
【0059】
更に、表面層塗工液は必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質などの添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20質量部以下、好ましくは10質量部以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3質量部以下が適当である。
【0060】
前記表面層は、少なくとも前述のラジカル重合性化合物と光ラジカル重合開始剤とを含有する塗工液を、後述する感光層上に塗布、硬化することにより形成される。塗布に用いられる塗工液はラジカル重合性化合物が液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。ここで用いられる溶剤としては、通常用いられるものであれば特に限定されない。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
前記表面層形成の際に用いる塗工方法としては、一般に用いられている塗工方法であれば特に限定されない。塗工液の粘性、所望とする表面層の膜厚などによって適宜塗工方法を選択するとよい。例えば、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などが例示される。
本発明においては、かかる塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与えることにより、表面層を硬化させる。このとき用いられる外部エネルギーとしては、光エネルギーが主に用いられるが、熱エネルギーを併用してもよい。
光エネルギーとしては、主に超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアークメタルハライドランプ等の光源を利用してもよく、好ましくは使用する電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物や電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物、更には併用する光重合開始剤の吸収特性を考慮して選定することがよい。使用光源の発光照度としては、一般に365nmの波長を基準として50mW/cm〜2000mW/cmの照度で露光されるのがよい。また、最大発光波長近傍における照度測定が可能である場合は、上記照度域で露光することが更に好ましい。照度が小さい場合には硬化に要する時間が多くなるため、生産性の観点から好ましくない。一方、照度が大きい場合には硬化収縮が起こりやすく、表面にゆず肌状の欠陥や亀裂が生じたり、隣接層との界面で剥離が生じることがある。
【0061】
UV照射時には光源からの生じる熱線などの影響により、感光体表面層の温度が上昇する。感光体表面温度が上昇しすぎると、表面層の硬化収縮が起こりやすいこと、隣接層中に含まれる低分子成分が表面層に移行するために、硬化阻害などが生じたり、電子写真感光体としての電気特性が低下するなど好ましくない。そのためUV照射時の感光体表面温度は100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。冷却方法としては感光体内部への助冷剤封入、感光体内部の気体や液体による冷却などを使用することができる。
熱エネルギーとしては、空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用いることができ、塗工面側あるいは支持体側から加熱することによって行われる。加熱温度は100℃以上、170℃以下が好ましい。前記加熱温度が100℃未満の場合、反応速度が遅いために生産性が低下するとともに、未反応の材料が膜中に残留する原因となる。一方、170℃より高い温度で処理した場合、架橋による膜の収縮が大きくなり、表面にゆず肌状の欠陥や亀裂が生じたり、隣接層との界面で剥離が生じることがある。また、感光層中の揮発性成分が外部に霧散するなどした場合には、所望の電気特性を得られなくなるなどのことがあるため好ましくない。架橋による収縮が大きい樹脂を使用する際には、100℃未満の低温で予備架橋した後に100℃以上の高温で架橋を完結させる方法も有効である。
硬化後の表面層に対して、必要に応じて後加熱をしてもよい。例えば、膜中に残留溶媒が多く残留している場合などは、電気的特性の低下や経時劣化の原因となりうるため、後加熱により残留溶媒を揮発させることが好ましい。
【0062】
前記表面層の厚みとしては、感光層の保護の観点から1μm〜15μmが好ましく、3μm〜10μmがより好ましい。前記表面層の厚みが薄い場合には、感光体への当接部材による機械的摩耗や帯電器などによる近接放電などから感光層を保護できなくなるだけでなく、膜形成時にレベリングされにくくなるために、膜表面がゆず肌状になることがある。一方、前記表面層の厚みが厚い場合には、感光体全層が厚くなり、電荷の拡散による画像の再現性が低下するため好ましくない。
【0063】
なお、前記表面層と前記感光層との間での接着性不良による層間剥離を防ぐことを目的として、必要に応じて両層間に接着層を設けてもよい。
前記接着層としては、前記ラジカル重合性化合物を用いてもよいし、非架橋系の高分子化合物を用いてもよい。
前記非架橋系の高分子化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、などが挙げられる。また、ラジカル重合性化合物と非架橋系高分子化合物はいずれを用いる場合についても単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。更には、十分な接着性が得られるならばラジカル重合性化合物と非架橋系高分子化合物を併用してもよい。また、本発明で用いられる電荷輸送材料を用いても、併用してもよい。また、接着性を向上することを目的とすれば、適宜添加剤を用いてもよい。
前記接着層は、所定の配合に処方された化合物をテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒に溶解・分散した塗工液を浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどで塗工して形成できる。
前記接着層の厚みは、0.1μm〜5μmが好ましく、0.1μm〜3μmがより好ましい。
【0064】
<積層型感光層>
電荷発生機能及び電荷輸送機能をそれぞれ独立した層が担うため、感光層の層構成としては少なくとも支持体上に電荷発生層、電荷輸送層が積層された構成を取る。積層順については特に限定されないが、多くの電荷発生材料は化学的安定性に乏しく、電子写真作像プロセスにおける帯電器周辺での放電生成物のような酸性ガスにさらされると電荷発生効率の低下などを引き起こす。このため、電荷発生層の上に電荷輸送層を積層することが好ましい。
【0065】
−電荷発生層−
前記電荷発生層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分として含有し、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。
【0066】
前記電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
前記無機系材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
前記有機系材料としては、特に制限はなく、公知の材料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリアリールアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0067】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
前記バインダー樹脂の含有量は、前記電荷発生物質100質量部に対し500質量部以下が好ましく、10質量部〜300質量部がより好ましい。なお、バインダー樹脂の添加は、分散前あるいは分散後どちらでも構わない。
【0068】
前記電荷発生層を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。また、後者のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
前記電荷発生層の厚みは、0.01μm〜5μmが好ましく、0.05μm〜2μmがより好ましい。
【0069】
−電荷輸送層−
前記電荷輸送層は、電荷輸送機能を有する層であり、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を主成分とする層である。
【0070】
前記電荷輸送物質としては、前記表面層の項で記載した様に、正孔輸送物質と電子輸送物質とが挙げられる。前記表面層に用いられる電荷輸送物質としては、前記の電荷輸送性構造を有する化合物であって、重合性官能基を有しないものを主に用いることができる。また、表面層と感光層間の接着性を向上させるなどのために重合性官能基を有する電荷輸送物質を併用してもよい。前記電荷輸送層に用いる電荷輸送物質は上記重合性官能基を有しない化合物を単独で用いてもよいし、重合性官能基を有しない化合物又は/かつ有する化合物を併用してもよい。
【0071】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、などが挙げられる。また、バインダー樹脂として、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料やポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることも可能であり、有用である。
前記電荷輸送物質の含有量は、前記バインダー樹脂100質量部に対し、20質量部〜300質量部が好ましく、40質量部〜150質量部がより好ましい。ただし、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独で使用してもよいし、バインダー樹脂と併用してもよい。
【0072】
前記電荷輸送層は、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解乃至分散し、これを塗布し、乾燥することによって形成できる。
前記溶剤としては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。これらは単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。
更に必要に応じて可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。電荷輸送層に用いられる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、バインダー樹脂100質量部に対して30質量部以下が好ましい。電荷輸送層に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、バインダー樹脂100質量部に対して1質量部以下が好ましい。
前記電荷輸送層の厚みは、解像度及び応答性の点から、30μm以下とすることが好ましく、25μm以下がより好ましい。下限値に関しては、使用するシステム(特に帯電電位等)に異なるが、5μm以上が好ましい。
【0073】
<単層型感光層>
単層構造の感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。感光層は電荷発生物質及び電荷輸送物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
前記バインダー樹脂としては先に電荷輸送層で挙げたバインダー樹脂のほかに、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。なお、高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。バインダー樹脂100質量部に対する電荷発生物質の量は5質量部〜40質量部が好ましく、電荷輸送物質の量は90質量部以下が好ましく、50質量部〜150質量部が好ましい。
前記単層型感光層は、電荷発生物質、バインダー樹脂を電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどで塗工して形成できる。
前記単層型感光層の厚みは、5μm〜25μmが好ましい。
【0074】
本発明の電子写真感光体においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、前記電荷輸送層、前記電荷発生層、前記表面層、前記中間層、前記単層型感光層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
【0075】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類、などが挙げられる。
前記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン、などが挙げられる。
前記ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン、などが挙げられる。
前記有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート、などが挙げられる。
前記有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン、などが挙げられる。
なお、これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
前記酸化防止剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、添加する層の総質量に対し0.01質量%〜10質量%が好ましい。
【0076】
<支持体>
前記支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属;酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも支持体として用いることができる。
【0077】
その他、前記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明において支持体として用いることができる。
前記導電性粉体としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。
前記導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の支持体として良好に用いることができる。
【0078】
後述するように、電子写真プロセスにおける潜像形成には可干渉性の高いレーザーを用いることがある。前記の通り、支持体には金属材料からなることが多く、その多くは表面反射率が高いと考えられる。この支持体上に本発明の無機半導体材料を適用して電子写真感光体を作製した場合、書き込み光と、支持体からの反射光とで干渉が生じ、画像欠陥が発生することが懸念される。このため、支持体の反射率が高い場合には、支持体の表面に凹凸を施して反射率を低下させることが好ましい。また、素管上に潜在的に存在する突起等も感光層を積層する際に、画像欠陥の原因となってしまう場合があった。これを適切な表面粗さに粗面化することによって突起のない平滑な支持体表面を提供することができる。表面凹凸としてはJIS B0601−1982に示される手法で測定した算術十点平均表面粗さ(Rz)を代表特性値として用いた。
【0079】
前記表面粗さ(Rz)の測定方法は、例えばサーフコム1400D(東京精密株式会社製)を用い、表面粗さ(Rz)を評価長さ2.5mm、基準長さ0.5mmに対し測定した。測定箇所は軸方向のドラムの両端から80mmとドラム中央の3点、周方向90度の4通り、合計12点を測定しその平均値をドラムの表面粗さ(Rz)とした。前記表面粗さ(Rz)としては0.6μm以上であることが好ましい。これよりもRzが小さい場合には書き込み光によるモアレが発生しやすいため好ましくない。また、Rzが大きい場合であっても、使用上大きな問題とはならないが、Rzが大きすぎる場合には中間層を均一に形成することが困難となるため注意が必要である。この観点から、支持体の表面粗さ(Rz)は3.0μm以下であることが好ましい。
【0080】
粗面化の方法としては、ホーニング加工等やセンタレス研磨が挙げられる。前記ホーニング加工は安価で表面粗さ調製が容易であることから好ましく使用される。前記ホーニング加工には乾式及び湿式での処理方法があるがいずれを用いてもよい。湿式(液体)ホーニング加工は、水等の液体に粉末状の研磨剤(砥粒)を懸濁させ、高速度で支持体の表面に吹き付けて粗面化する方法であり、表面粗さは吹き付け圧力、速度、研磨剤の量、種類、形状、大きさ、硬度、比重又は懸濁濃度等により制御することができる。同様に、乾式ホーニング加工は、研磨剤をエアにより、高速度で支持体表面に吹き付けて粗面化する方法であり、湿式ホーニング加工と同じように表面粗さを制御することができる。これら湿式又は乾式ホーニング加工に用いる研磨剤としては、炭化ケイ素、アルミナ、ジルコニア、ステンレス、鉄、ガラスビーズ及びプラスチックショット等の粒子が挙げられる。
しかし、乾式サンドブラストや不定形アルミナ砥粒を用いた液体ホーニングでは、砥粒が支持体表面に突き刺さることがあり、電子写真感光体を作製した時に反転現像系における白画像上の黒ポチ、正転現像系における黒画像上の白抜けとして現れてしまう。ガラスビーズを用いた液体ホーニングでは、ガラスがすぐに割れて支持体表面に突き刺さったり、粗さのコントロールが難しい。そのため、研磨剤として球状アルミナ砥粒やステンレス砥粒等を用いた液体ホーニング加工にて、支持体を粗面化した後、中間層及び感光層を形成して、電子写真感光体を作製するのが一般的である。また、支持体の粗面化処理においては、処理時間、砥粒使用量、エネルギー使用量、及び、粗面化後の支持体における残留砥粒除去の簡便性等の観点から、干渉縞防止機能を満たす範囲内において極力処理条件をマイルドにし、表面粗さ(Rz)を小さく抑えることが好ましい。
【0081】
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、定着手段、クリーニング手段、除電手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
前記電子写真感光体が、本発明の前記電子写真感光体である。
本発明で用いられる画像形成方法は、帯電工程と、露光工程と、現像工程と、転写工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、定着工程、クリーニング工程、除電工程、リサイクル工程、制御工程等を含んでなる。
【0082】
本発明で用いられる画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に実施することができ、前記帯電工程は前記帯電手段により行うことができ、前記露光工程は前記露光手段により行うことができ、前記現像工程は前記現像手段により行うことができ、前記転写工程は前記転写手段により行うことができ、前記定着工程は前記定着手段により行うことができ、前記クリーニング工程は前記クリーニング手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0083】
−帯電工程及び帯電手段−
前記帯電工程は、電子写真感光体表面を帯電させる工程であり、前記帯電手段により行われる。
前記帯電手段としては、前記電子写真感光体の表面に電圧を印加して一様に帯電させることができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、電子写真感光体と非接触で帯電させる非接触方式の帯電手段が用いられる。
前記非接触の帯電手段としては、例えば、コロナ放電を利用した非接触帯電器や針電極デバイス、固体放電素子;電子写真感光体に対して微小な間隙をもって配設された導電性又は半導電性の帯電ローラなどが挙げられる。これらの中でも、コロナ放電が特に好ましい。
【0084】
前記コロナ放電は、空気中のコロナ放電によって発生した正又は負のイオンを電子写真感光体の表面に与える非接触な帯電方法であり、電子写真感光体に一定の電荷量を与える特性を持つコロトン帯電器と、一定の電位を与える特性を持つスコロトロン帯電器とがある。
前記コロトン帯電器は、放電ワイヤの周囲に半空間を占めるケーシング電極とそのほぼ中心に置かれた放電ワイヤとから構成される。
前記スコロトロン帯電器は、前記コロトロン帯電器にグリッド電極を追加したものであり、グリッド電極は電子写真感光体表面から1.0mm〜2.0mm離れた位置に設けられている。
【0085】
−露光工程及び露光手段−
前記露光は、例えば、前記露光手段を用いて前記電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光における光学系は、アナログ光学系とデジタル光学系とに大別される。前記アナログ光学系は、原稿を光学系により直接電子写真感光体上に投影する光学系であり、前記デジタル光学系は、画像情報が電気信号として与えられ、これを光信号に変換して電子写真感光体を露光し作像する光学系である。
前記露光手段としては、前記帯電手段により帯電された前記電子写真感光体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系、LED光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記電子写真感光体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0086】
−現像工程及び現像手段−
前記現像工程は、前記静電潜像を、トナー乃至現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記トナー乃至現像剤を収容し、前記静電潜像に該トナー乃至該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
【0087】
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
【0088】
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記電子写真感光体(感光体)近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該電子写真感光体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該電子写真感光体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0089】
前記現像器に収容させる現像剤は、前記トナーを含む現像剤であるが、該現像剤としては一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。
【0090】
−転写工程及び転写手段−
前記転写工程は、前記可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、前記トナーとして2色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記電子写真感光体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。前記転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0091】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記電子写真感光体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。前記転写器としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0092】
−定着工程及び定着手段
前記定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着装置を用いて定着させる工程であり、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
【0093】
前記定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着部材と該定着部材を加熱する熱源とを有するものが用いられる。
前記定着部材としては、例えば、無端状ベルトとローラとの組合せ、ローラとローラとの組合せ、などが挙げられるが、ウォームアップ時間を短縮することができ、省エネルギー化の実現の点で、また、定着可能幅の拡大の点で、熱容量が小さい無端状ベルトとローラとの組合せであるのが好ましい。
【0094】
前記除電工程は、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0095】
前記クリーニング工程は、前記電子写真感光体上に残留する前記トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。なお、クリーニング手段を用いることなく、摺擦部材で残留トナーの電荷を揃え、現像ローラで回収する方法を採用することもできる。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0096】
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0097】
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0098】
次に、図面に基づいて本発明の画像形成装置及びプロセスカートリッジについて詳しく説明する。
本発明の画像形成装置とは、本発明の前記電子写真感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び感光体表面のクリーニングというプロセスよりなるものである。
なお場合により、静電潜像を直接記録媒体に転写し現像する画像形成装置では、感光体に配した上記プロセスを必ずしも有するものではない。
【0099】
図4は、画像形成装置の一例を示す概略図である。感光体を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ3が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラー帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
次に、均一に帯電された感光体1上に静電潜像を形成するために画像露光部5が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
次に、感光体1上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット6が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
次に、感光体上で可視化されたトナー像を記録媒体9上に転写するために転写チャージャ10が用いられる。また、転写をより良好に行うために転写前チャージャ7を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、記録媒体9を感光体1より分離する手段として分離チャージャ11、分離爪12が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ11としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ14、クリーニングブレード15が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行うためにクリーニング前チャージャ13を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
更に必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ2、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
【0100】
本発明は、このような画像形成手段に本発明に係る電子写真感光体を用いる画像形成方法及び画像形成装置である。
この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱可能としたものであってもよい。プロセスカートリッジの一例を図5に示す。
前記プロセスカートリッジとは、感光体101を内蔵し、他に帯電手段102、現像手段104、転写手段106、クリーニング手段107、除電手段(不図示)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
図5のプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、感光体101は、矢印方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段103による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段104でトナー現像され、該トナー現像は転写手段106により、記録媒体105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
【0101】
本発明の画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジは、少なくともラジカル重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤との硬化物からなる表面層と、非晶質酸化物半導体からなる中間層を支持体と感光層との間に設けた本発明の電子写真感光体を用いているので、長期にわたる使用によっても静電耐久性等の特性低下が極めて少なく、欠陥の少ない高品質画像を継続的に得ることができる
【実施例】
【0102】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0103】
(実施例1)
<電子写真感光体の作製>
支持体として表面粗さ(Rz)が0.9μm、直径が30mm、長さ360mmのアルミニウムシリンダーを準備した。支持体の表面粗さ(Rz)は、サーフコム1400D(東京精密株式会社製)を用い、表面粗さ(Rz)を評価長さ2.5mm、基準長さ0.5mmに対し測定した。測定箇所は軸方向のドラムの両端から80mmとドラム中央の3点、周方向90度の4通り、合計12点を測定しその平均値をドラムの表面粗さ(Rz)とした。
この支持体としてのアルミニウムシリンダーを回転させながら成膜できるように改良したRFスパッタ装置を用いて中間層を形成した。スパッタ中の基板温度の過温を防止するためにシリンダー内部に冷却ジャケットを設けた。また、インジウム、亜鉛、及びガリウムを含有する多結晶焼結体〔組成比(In:Ga:Zn)=1:1:1〕からなる150mm×400mmターゲットを用いて、インジウム、亜鉛、及びガリウムからなる非晶質酸化物膜(以下、「In−Ga−ZnO」と称することがある)を中間層として形成した。製膜条件は以下の通りとした。
【0104】
・支持体の冷却温度:30℃
・スパッタ出力:11.2W/cm
・ターゲット−基板距離:50mm
・背圧:5.0×10−6torr以下
・製膜圧力:3.0×10−3torr
・不活性ガス:アルゴン
・酸素分圧:不活性ガスと酸素ガスの総量に対して3vol%
前記条件によって、厚み0.5μmのIn−Ga−ZnOを中間層として形成した。得られた中間層の厚みは、反射分光膜厚計(FE−3000、大塚電子株式会社製)により測定した。
【0105】
<非晶質酸化物半導体の表面抵抗率>
作製した実施例1の厚み0.5μmの非晶質酸化物半導体の電気抵抗評価として、以下に記載する方法で表面抵抗率を測定した。
非晶質酸化物半導体を形成する基板としては、支持体に代えて無アルカリガラス(コーニング#1737)とし、その他の条件は実施例1に記載の条件で非晶質酸化物半導体を形成し、表面抵抗率測定に供した。表面抵抗率測定に際しては、無アルカリガラス上に形成した非晶質酸化物上に25μmギャップ、10mm長のAu電極を蒸着により作製し、電極間にバイアスを印加した際の非晶質酸化物中の通過電流を測定する方法で行った。表面抵抗率の測定を場所を変更して10回実施し、その平均値を算出した結果、厚み0.5μmの非晶質酸化物の表面抵抗率は5.0×10Ω/cmであった。
【0106】
次に、下記組成の電荷発生層用塗工液、及び電荷輸送層用塗工液を順次塗布し、乾燥することにより、厚み0.2μmの電荷発生層、及び厚み20μmの電荷輸送層を形成した。
【0107】
〔電荷発生層用塗工液〕
・下記構造式(1)で表されるビスアゾ顔料・・・2.5質量部
【化19】

・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製)・・・0.5質量部
・シクロヘキサノン・・・200質量部
・メチルエチルケトン・・・80質量部
【0108】
〔電荷輸送層用塗工液〕
・ビスフェノールZポリカーボネート(パンライトTS−2050、帝人化成株式会社製)・・・10質量部
・下記構造式(2)で表される低分子電荷輸送物質・・・7質量部
【化20】

・テトラヒドロフラン・・・100質量部
・1質量%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液(KF50−100CS、信越化学工業株式会社製)・・・1質量部
【0109】
次に、下記組成の表面層塗工液を、支持体と、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層とからなる積層体上にスプレー塗工法を用いて塗布した後にメタルハライドランプを用いて、照度:900mW/cm、照射時間:20秒間の条件で光照射を行うことで表面層を架橋させ、5.0μmの表面硬化膜を得た。この後、130℃で30分間の乾燥を行うことにより、支持体と、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、表面層とからなる電子写真感光体を作製した。
〔表面層塗工液〕
・下記構造式(3)で表される電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマー(トリメチロールプロパントリアクリレート、TMPTA、東京化成株式会社製)・・・95質量部
【化21】

・電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(例示化合物No.54)・・・95質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、イルガキュアI−184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)・・・10質量部
・テトラヒドロフラン・・・1200質量部
【0110】
<非晶質酸化物半導体の構造解析>
実施例1で作製したインジウム、亜鉛、及びガリウムからなる酸化物半導体が、非晶質であることをX線回折法による結晶構造解析によって評価した。
〔X線回折 評価方法〕
・評価装置:X線回折装置 X’ Part Pro (フィリップス社製)
・X線発生源:Cu(封入管)
・フィルター:なし
・スキャン軸:2θ/θ
・測定角範囲:10°〜100°
測定結果を図6に示す。この図6の結果から、作製した中間層は非晶質酸化物半導体からなることが分かった。
【0111】
<非晶質酸化物半導体の組成>
実施例で作製した非晶質酸化物半導体の構成成分及び組成比率を、下記の蛍光X線分析法を用いて、評価した。また、非晶質酸化物半導体の深度方向の組成プロファイルを、下記のオージェ電子分光法を用いて評価した。
〔蛍光X線法 評価方法〕
・測定装置:波長分散型蛍光X線分析装置(RIX3000、理学電機株式会社製)
・X線管球:Rh
・出力:50kV
・電流:50mA
本条件での評価結果から、実施例で得られた非晶質酸化物半導体はインジウム、亜鉛、及びガリウムからなる酸化物であり、その組成比がIn:Zn:Ga=100:112:117である非晶質酸化物半導体であることが分かった。
〔オージェ電子分光法 評価方法〕
・測定装置:FE−SAM680(ファイ社製)
・加速電圧:10kV
・電流量:10nA
・スパッタエッチング条件:Arイオン/加速電圧1kV
測定結果を図7に示す。この図7の結果から、各構成元素(インジウム、亜鉛、ガリウム、酸素)の深度方向のばらつきはほとんどなく、極めて均質な非晶質酸化物半導体であることが分かった。
【0112】
(実施例2)
−電子写真感光体の作製−
実施例1の表面層用塗工液に用いた電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーを下記のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
・下記構造式(4)で表される電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマー・・・95質量部
【化22】

・カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPCA−120、日本化薬株式会社製)
【0113】
(実施例3)
−電子写真感光体の作製−
実施例1の表面層用塗工液に用いた電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーを下記のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
・下記構造式(5)で表される電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマー(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、KAYARAD DPHA、日本化薬株式会社製)・・・95質量部
【化23】

ただし、a=5及びb=1の化合物と、a=6及びb=0の化合物との質量比1:1の混合物である。
【0114】
(実施例4)
−電子写真感光体の作製−
実施例1の表面層用塗工液に用いた電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーを下記のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
・電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマー・・・95質量部
下記(1)及び(2)の化合物を質量比1:1で用いた2種混合モノマー
(1)トリメチロールプロパントリアクリレート(構造式(3);TMPTA、東京化成株式会社製)
(2)カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(構造式(4);KAYARAD DPCA−120、日本化薬株式会社製)
【0115】
(実施例5)
−電子写真感光体の作製−
実施例4の表面層用塗工液に用いた電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーを下記構造式(6)で表される化合物に変更した以外は、実施例4と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化24】

ただし、Meはメチル基を表す。
【0116】
(実施例6)
−電子写真感光体の作製−
実施例4の表面層用塗工液に用いた電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーに代えて、前記構造式(4)で表されるラジカル重合性官能基を有しない電荷輸送性材料を用いた以外は、実施例4と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0117】
(実施例7)
−電子写真感光体の作製−
実施例4の中間層の厚みを0.05μm(実施例1に記載の製膜条件で製膜し、製膜時間のみを実施例1の10分の1にして作製)とした以外は、実施例5と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0118】
(実施例8)
−電子写真感光体の作製−
実施例4の中間層の厚みを0.15μm(実施例1に記載の製膜条件で製膜し、製膜時間のみを実施例1の10分の3にして作製)とした以外は、実施例5と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0119】
(実施例9)
−電子写真感光体の作製−
実施例4の中間層の厚みを0.8μm(実施例1に記載の製膜条件で製膜し、製膜時間のみを実施例1の1.6倍にして作製)とした以外は、実施例5と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0120】
(実施例10)
−電子写真感光体の作製−
実施例4の中間層の厚みを1.0μm(実施例1に記載の製膜条件で製膜し、製膜時間のみを実施例1の2倍にして作製)とした以外は、実施例5と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0121】
(実施例11)
−電子写真感光体の作製−
実施例7の表面層用塗工液に用いた電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーを前記構造式(6)に示したものに変更した以外は、実施例7と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0122】
(実施例12)
−電子写真感光体の作製−
実施例8の表面層用塗工液に用いた電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーを構造式(6)に示したものに変更した以外は、実施例8と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0123】
(実施例13)
−電子写真感光体の作製−
実施例9の表面層用塗工液に用いた電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーを前記構造式(6)に示したものに変更した以外は、実施例9と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0124】
(実施例14)
−電子写真感光体の作製−
実施例10の表面層用塗工液に用いた電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーを前記構造式(6)に示したものに変更した以外は、実施例10と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0125】
(実施例15)
−電子写真感光体の作製−
実施例7の表面層用塗工液に用いた電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーに代えて、前記構造式(2)で表されるラジカル重合性官能基を有しない電荷輸送性材料を用いた以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0126】
(実施例16)
−電子写真感光体の作製−
実施例8の表面層用塗工液に用いた電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーに代えて、前記構造式(2)で表されるラジカル重合性官能基を有しない電荷輸送性材料を用いた以外は、実施例8と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0127】
(実施例17)
−電子写真感光体の作製−
実施例9の表面層用塗工液に用いた電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーに代えて、前記構造式(2)で表されるラジカル重合性官能基を有しない電荷輸送性材料を用いた以外は、実施例9と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0128】
(実施例18)
−電子写真感光体の作製−
実施例10の表面層用塗工液に用いた電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーに代えて、前記構造式(2)で表されるラジカル重合性官能基を有しない電荷輸送性材料を用いた以外は、実施例10と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0129】
(実施例19)
−電子写真感光体の作製−
実施例5の支持体の表面粗さ(Rz)を0.2μmとした以外は、実施例5と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0130】
(実施例20)
−電子写真感光体の作製−
実施例6の支持体の表面粗さ(Rz)を0.2μmとした以外は、実施例6と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0131】
(実施例21)
−電子写真感光体の作製−
実施例4の表面層用塗工液に用いた電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーを下記構造式(7)で表される化合物に変更した以外は、実施例4と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化25】

【0132】
(実施例22)
実施例4の中間層作製方法のうち、インジウムとガリウムの組成比(In:Ga)が1:1である多結晶焼結体を用いた以外は、実施例4と同様にして、実施例22の電子写真感光体を作製した。
得られた実施例22の電子写真感光体について実施例1で記載した評価方法を用いて非晶質酸化物半導体の組成比を測定した結果、組成比(In:Ga)は100:125であった。
実施例1と同様にして測定した非晶質酸化物半導体の表面抵抗率は6.7×10Ω/cmであった。
【0133】
(実施例23)
実施例4の中間層作製方法のうち、インジウムと亜鉛の組成比(In:Zn)が1:1である多結晶焼結体を用いた以外は、実施例4と同様にして、実施例23の電子写真感光体を作製した。
得られた実施例23の電子写真感光体について、実施例1で記載した評価方法を用いて非晶質酸化物半導体の組成比を測定した結果、組成比(In:Zn)は100:111であった。
実施例1と同様にして測定した非晶質酸化物半導体の表面抵抗率は7.5×10Ω/cmであった。
【0134】
(実施例24)
実施例4の中間層作製方法のうち、インジウム、亜鉛、ガリウムの組成比(In:Zn:Ga)が1:1.5:1である多結晶焼結体を用いた以外は、実施例4と同様にして、実施例24の電子写真感光体を作製した。
得られた実施例24の電子写真感光体について、実施例1で記載した評価方法を用いて非晶質酸化物半導体の組成比を測定した結果、組成比(In:Zn:Ga)は100:108:137であった。
実施例1と同様にして測定した非晶質酸化物半導体の表面抵抗率は4.9×10Ω/cmであった。
【0135】
(実施例25)
実施例4の中間層作製方法のうち、インジウム、亜鉛、ガリウムの組成比(In:Zn:Ga)が1:0.75:1である多結晶焼結体を用いた以外は、実施例4と同様にして、実施例25の電子写真感光体を作製した。
得られた実施例25の電子写真感光体について、実施例1で記載した評価方法を用いて非晶質酸化物半導体の組成比を測定した結果、組成比(In:Zn:Ga)は100:110:105であった。
実施例1と同様にして測定した非晶質酸化物半導体の表面抵抗率は6.2×10Ω/cmであった。
【0136】
(比較例1)
−電子写真感光体の作製−
実施例1に記載の方法で支持体上に中間層、電荷発生層、及び電荷輸送層のみを形成することによって電子写真感光体を作製した。
【0137】
(比較例2)
−電子写真感光体の作製−
支持体として表面粗さ(Rz)が0.9μm、直径が30mm、長さ360mmのアルミニウムシリンダーを準備し、該アルミニウムシリンダー上に下記組成の中間層用塗工液、電荷発生層用塗工液、及び電荷輸送層用塗工液を順次、塗布し、乾燥することにより、厚み3.5μmの中間層、厚み0.2μmの電荷発生層、及び厚み20μmの電荷輸送層からなる電子写真感光体を作製した。
【0138】
〔中間層用塗工液〕
・アルキッド樹脂(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・4質量部
・酸化チタン・・・40質量部
・メチルエチルケトン・・・50質量部
【0139】
〔電荷発生層用塗工液〕
・下記構造式(1)で表されるビスアゾ顔料・・・2.5質量部
【化26】

・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製)・・・0.5質量部
・シクロヘキサノン・・・200質量部
・メチルエチルケトン・・・80質量部
【0140】
〔電荷輸送層用塗工液〕
・ビスフェノールZポリカーボネート(パンライトTS−2050、帝人化成株式会社製)・・・10質量部
・下記構造式(2)で表される低分子電荷輸送物質・・・7質量部
【化27】

・テトラヒドロフラン・・・100質量部
・1質量%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液(KF50−100CS、信越化学工業株式会社製)・・・1質量部
【0141】
(比較例3)
−電子写真感光体の作製−
比較例2に記載の方法で形成した支持体と、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層とからなる電子写真感光体上に、実施例1に記載の表面層用塗工液を用いて、実施例1と同様にして表面層を形成することによって、支持体と、電荷発生層と、電荷輸送層と、表面層とからなる電子写真感光体を作製した。
【0142】
(比較例4)
−電子写真感光体の作製−
比較例2に記載の方法で形成した支持体と、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層とからなる電子写真感光体上に、実施例2に記載の表面層用塗工液を用いて、実施例2と同様にして表面層を形成することによって、支持体と、電荷発生層と、電荷輸送層と、表面層とからなる電子写真感光体を作製した。
【0143】
(比較例5)
−電子写真感光体の作製−
比較例2に記載の方法で形成した支持体と、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層とからなる電子写真感光体上に、実施例3に記載の表面層用塗工液を用いて、実施例3と同様にして表面層を形成することによって、支持体と、電荷発生層と、電荷輸送層と、表面層とからなる電子写真感光体を作製した。
【0144】
(比較例6)
−電子写真感光体の作製−
比較例2に記載の方法で形成した支持体と、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層とからなる電子写真感光体上に、実施例4に記載の表面層用塗工液を用いて、実施例4と同様にして表面層を形成することによって、支持体と、電荷発生層と、電荷輸送層と、表面層とからなる電子写真感光体を作製した。
【0145】
(比較例7)
−電子写真感光体の作製−
比較例2に記載の方法で形成した支持体と、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層とからなる電子写真感光体上に、実施例5に記載の表面層用塗工液を用いて、実施例5と同様にして表面層を形成することによって、支持体と、電荷発生層と、電荷輸送層と、表面層とからなる電子写真感光体を作製した。
【0146】
(比較例8)
−電子写真感光体の作製−
比較例2に記載の方法で形成した支持体と、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層とからなる電子写真感光体上に、実施例6に記載の表面層用塗工液を用いて、実施例6と同様にして表面層を形成することによって、支持体と、電荷発生層と、電荷輸送層と、表面層とからなる電子写真感光体を作製した。
【0147】
(比較例9)
−電子写真感光体の作製−
比較例6の中間層用塗工液を以下の組成に変更し、中間層の厚みを2.0μmとした以外は、比較例6と同様にして、電子写真感光体を作製した。
〔中間層用塗工液〕
・アルキッド樹脂(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・4質量部
・メチルエチルケトン・・・50質量部
【0148】
(比較例10)
−電子写真感光体の作製−
比較例7の中間層用塗工液を以下の組成に変更し、中間層の厚みを2.0μmとした以外は、比較例7と同様にして、電子写真感光体を作製した。
〔中間層用塗工液〕
・アルキッド樹脂(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・4質量部
・メチルエチルケトン・・・50質量部
【0149】
(比較例11)
−電子写真感光体の作製−
比較例8の中間層用塗工液を以下の組成に変更し、中間層の厚みを2.0μmとした以外は、比較例8と同様にして、電子写真感光体を作製した。
〔中間層用塗工液〕
・アルキッド樹脂(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・6質量部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・4質量部
・メチルエチルケトン・・・50質量部
【0150】
(比較例12)
−電子写真感光体の作製−
実施例1に記載の電荷発生層形成方法、及び電荷輸送層形成方法、並びに実施例4に記載の表面層形成方法を用いて、支持体と、電荷発生層と、電荷輸送層と、表面層とからなる電子写真感光体を作製した。
【0151】
(比較例13)
−電子写真感光体の作製−
実施例1に記載の電荷発生層形成方法、及び電荷輸送層形成方法、並びに実施例5に記載の表面層形成方法を用いて、支持体と、電荷発生層と、電荷輸送層と、表面層とからなる電子写真感光体を作製した。
【0152】
(比較例14)
−電子写真感光体の作製−
実施例1に記載の電荷発生層形成方法、及び電荷輸送層形成方法、並びに実施例6に記載の表面層形成方法を用いて、支持体と、電荷発生層と、電荷輸送層と、表面層とからなる電子写真感光体を作製した。
【0153】
(比較例15)
−電子写真感光体の作製−
実施例4の中間層を、実施例1に記載の改造RFスパッタ装置を用いて、下記の条件で作製した結晶性酸化物である酸化スズとした以外は、実施例4と同様にして、電子写真感光体を作製した。
〔中間層形成方法〕
・ターゲット:酸化スズからなる多結晶焼結体
・支持体の冷却温度:30℃
・スパッタ出力:11.2W/cm
・ターゲット−基板距離:50mm
・背圧:5.0×10−6torr以下
・製膜圧力:3.0×10−3torr
・不活性ガス:アルゴン
・酸素分圧:不活性ガスと酸素ガスの総量に対して5vol%
【0154】
(比較例16)
−電子写真感光体の作製−
実施例5の中間層を、実施例1に記載の改造RFスパッタ装置を用いて、下記の条件で作製した結晶性酸化物である酸化スズとした以外は、実施例5と同様にして、電子写真感光体を作製した。
〔中間層形成方法〕
・ターゲット:酸化スズからなる多結晶焼結体
・支持体の冷却温度:30℃
・スパッタ出力:11.2W/cm
・ターゲット−基板距離:50mm
・背圧:5.0×10−6torr以下
・製膜圧力:3.0×10−3torr
・不活性ガス:アルゴン
・酸素分圧:不活性ガスと酸素ガスの総量に対して5vol%
【0155】
(比較例17)
−電子写真感光体の作製−
実施例6の中間層を、実施例1に記載の改造RFスパッタ装置を用いて、下記の条件で作製した結晶性酸化物である酸化スズとした以外は、実施例6と同様にして、電子写真感光体を作製した。
〔中間層形成方法〕
・ターゲット:酸化スズからなる多結晶焼結体
・支持体の冷却温度:30℃
・スパッタ出力:11.2W/cm
・ターゲット−基板距離:50mm
・背圧:5.0×10−6torr以下
・製膜圧力:3.0×10−3torr
・不活性ガス:アルゴン
・酸素分圧:不活性ガスと酸素ガスの総量に対して5vol%
【0156】
次に、作製した実施例1〜25及び比較例1〜17の電子写真感光体について、下記試験を実施した。結果を表1に示す。
【0157】
<摩耗耐久性評価>
実施例1〜25及び比較例1〜17で作製した電子写真感光体の摩耗耐久性の評価を以下の方法で実施した。
作製した感光体を電子写真装置用プロセスカートリッジに装着し、画像露光光源として655nmの半導体レーザーを用いた株式会社リコー製imagio Neo 271改造機にて初期暗部電位を−800Vに設定した。その後、A4サイズ用紙の通紙5万枚のランニングを実施した。以下のようにして、初期及び5万枚での感光体の膜厚を測定し膜厚減少量を求めた。また、電気特性として初期及び5万枚での暗部電位と露光部電位を測定した。結果を表1に示す。
−感光体の膜厚の測定−
感光体の膜厚は、渦電流式膜厚測定装置(フィッシャーインスツルメント社製)を用いて測定した。
【0158】
また、実施例1〜25及び比較例1〜17で作製した表面層の硬化度合いを以下に記載の方法で確認した。
<表面層の硬化度合い>
各電子写真感光体の表面をテトラヒドロフラン(THF)を含ませた綿棒で10回摺擦し、塗膜表面の変化を確認することで評価した。その結果、いずれの電子写真感光体においても塗膜に変化は見られず、良好な硬化状態を得ていることが示された。実施例7〜20及び比較例3〜17に関しては実施例1〜6で作製した表面層と同様の表面層を有しているため、実施例及び比較例で作製した電子写真感光体はいずれも良好な硬化状態を示す表面層を有することが示された。なお、実施例6に関してのみ、綿棒がわずかに着色する現象が見られたが、これは実施例6が実施例1〜5と異なり、ラジカル重合性官能基を有しない電荷輸送性材料を表面層に有していることが原因と考えられる。
【0159】
【表1】

※静電疲労ランニング初期から著しい帯電電位低下が確認されたため、評価を中止した。
表1の結果から、実施例1〜5、21及び比較例3〜7は、実施例6及び比較例8と比較して摩耗量が少なく、非常に優れた摩耗耐久性を有する表面層であることが分かった。
また、実施例6及び比較例8は若干摩耗量が増えるが、5万枚のランニングは問題なく実施できた。一方、表面層を有していない比較例1〜2は摩耗量が非常に多く、5万枚のランニング中に帯電不良及び紙詰まりが生じたため、約1.5万枚でランニングを中止し、長期間の使用に耐えない結果となった。
感光体の表面電位の結果から、実施例で得た電子写真感光体はいずれも初期及び5万枚ランニング後いずれの露光部電位ともに低く、安定であった。一方で、比較例3〜8で得た電子写真感光体は初期から若干露光部電位が高い傾向があり、5万枚の通紙ランニング後には実施例1〜6で得た感光体の1.5倍以上の露光部電位を示した。このことから、短期間の通紙ランニングにおいては実施例で得た電子写真感光体は感光体摩耗が少なく、感光体特性の変動の小さいものであることが示された。
【0160】
表1の結果を元にして、実施例1〜6及び21の表面層(厚み5.0μm)が摩耗により消失するのに要するランニング枚数を計算した。結果を表2に示す。
【0161】
【表2】

【0162】
次に、実施例1〜6の電子写真感光体の摩耗耐久寿命が、表2に示した表面層の消失までに要するランニング枚数であるとした場合には、約18万枚〜67万枚の摩耗耐久寿命を有していると換言できる。したがって本発明で注目している静電耐久性に関しては、ここで示した摩耗耐久寿命の以上の耐久性を有することが必要となる。
【0163】
<静電耐久性の評価>
表2に示した摩耗耐久性寿命から、少なくとも70万枚のランニング後に感光体の各種特性の低下が少ないことが示されれば、摩耗耐久性及び静電耐久性に優れた電子写真感光体と言うことができる。しかし、実施例及び比較例で示したすべての電子写真感光体を当該枚数の通紙ランニングを行い、静電耐久性を評価することは現実的ではないため、ここでは以下の方法を用いて電子写真感光体に静電疲労を負荷し、静電耐久性の評価を実施した。
株式会社リコー製Imagio Neo 271の感光体ユニットから帯電ユニットを除く部材(クリーニングブレード等)を取り除いたユニットをランニング試験に用いた。
実施例及び比較例で作製した感光体を取り付けた改造感光体ユニットを株式会社リコー製Imagio Neo 271改造機にセットし、通紙を行わず帯電、現像のみを繰り返し実施できるようにした。
帯電条件としては、帯電ローラを用い、直流電圧に交流電圧を重畳させた交番電圧を印加し、交流電圧のピークツーピーク電圧Vppは約1.9kV、周波数fは約900Hz、直流電圧は−800V、電子写真感光体の回転速度は125mm/secに設定した。現像条件としては、650nmのLDを用い、書き込みパターンを100%書き込みパターン(全ベタ)とした。本条件で前述の70万枚のランニング(5%テストパターン/帯電−露光電位差750V/電子写真感光体の静電容量110pF/cm)と同等の静電疲労を電子写真感光体に負荷するためには、約15.5時間のランニングによって達成できることが通過電荷量計算から示される。
実施例及び比較例のそれぞれについて、前記ランニング試験の実施前後での帯電電位、露光部電位の測定及び0%テストパターン(白ベタ)画像とハーフトーン画像の出力(連続5枚)を行い、地汚れの発生、モアレの発生状況を確認した。結果を表3に示す。
【0164】
【表3】

なお、比較例1〜2は、上述したように、表面層を有していない磨耗耐久性に乏しい感光体であるため、静電耐久性の評価を行わなかった。
また、比較例15〜17は、上述したように、静電疲労ランニング初期から著しい帯電電位低下が確認されたため、静電耐久性の評価を行わなかった。
【0165】
表3の結果から、実施例1〜25の電子写真感光体は、いずれも帯電電位、露光部電位の変動量が小さく、また地汚れ、画像濃度ムラの発生もほとんど生じていなかった。なお、実施例19〜20については、ハーフトーン出力に若干のモアレが発生した。
これに対し、比較例3〜8は、帯電電位、露光部電位の変動量はそれほど大きくないが、実施例と比較すると変動量は大きく、また地汚れの発生が確認できた。更にハーフトーン出力画像2枚目以降に画像濃度ムラが発生していた。
また、比較例9〜11は、静電疲労後の露光部電位の上昇が著しく画像評価に至らなかった。
また、比較例12〜14は、静電疲労後の帯電電位低下が大きく、地汚れの発生も実施例や比較例3〜8と比較して非常に大きかった。
以上のことから、実施例1〜25の電子写真感光体は、静電的な負荷に対してもその特性変動が小さく、長期に亘って画像品質に関わる欠陥が少ないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明の画像形成装置、画像形成方法、及びプロセスカートリッジは、長期にわたる使用によっても、露光部電位の上昇を起こすことなく、磨耗耐久性、静電耐久性等の特性低下が極めて少ない本発明の電子写真感光体を用いているので、例えばレーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機、直接又は間接の電子写真多色画像現像方式を用いたフルカラー複写機、フルカラーレーザープリンター、及びフルカラー普通紙ファックス等に幅広く使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1は、本発明の電子写真感光体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の電子写真感光体の層構成の他の一例を示す概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の電子写真感光体の層構成の更に他の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【図6】図6は、実施例1で作製したインジウム、亜鉛、及びガリウムからなる非晶質酸化物半導体のX線回折法による結晶構造解析結果を示す図である。
【図7】図7は、実施例1で作製したインジウム、亜鉛、及びガリウムからなる非晶質酸化物半導体のオージェ電子分光法による評価結果を示す図である。
【符号の説明】
【0168】
1 感光体
3 帯電チャージャ
5 画像露光部
6 現像ユニット
9 記録媒体
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
31 支持体
32 中間層
33 電荷発生層
34 電荷輸送層
35 表面層
36 単層感光層
101 感光体
102 帯電手段
103 露光手段
104 現像手段
105 記録媒体
106 転写手段
107 クリーニング手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に少なくとも中間層、感光層、及び表面層をこの順に有してなり、
前記表面層が、少なくともラジカル重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤との硬化物からなり、
前記中間層が、非晶質酸化物半導体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
非晶質酸化物半導体が、少なくともインジウム、亜鉛、及びガリウムを含有する請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
非晶質酸化物半導体が、少なくともインジウム、亜鉛、及びガリウムを含有する多結晶焼結体を用い、スパッタリング法により形成される請求項1から2のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項4】
中間層の厚みが、0.1μm〜0.9μmである請求項1から3のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項5】
支持体の表面粗さ(Rz)が、0.6μm以上である請求項1から4のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項6】
ラジカル重合性化合物の官能基が、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の少なくともいずれかである請求項1から5のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項7】
ラジカル重合性化合物が、電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物である請求項1から6のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項8】
電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物の官能基数が3つ以上である請求項7に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
ラジカル重合性化合物が、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物である請求項1から8のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項10】
ラジカル重合性化合物が、電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物と電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の混合物である請求項1から9のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項11】
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の電荷輸送性部位がトリアリールアミン構造である請求項9から10のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項12】
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の官能基数が1つである請求項9から11のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項13】
感光層が、電荷発生層及び電荷輸送層からなる積層型である請求項1から12のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項14】
電子写真感光体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、を少なくとも含む画像形成方法において、
前記電子写真感光体が、請求項1から13のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項15】
電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、を少なくとも有する画像形成装置において、
前記電子写真感光体が、請求項1から13のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項1から13のいずれかに記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体上に形成した静電潜像をトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−210735(P2009−210735A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52506(P2008−52506)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】