説明

電子写真感光体

【課題】電子写真感光体の電荷輸送材料として従来から望まれる特性を十分に満足する、すなわち結着剤ポリマーへの溶解性がよく、安定な高濃度の有機薄膜を形成でき、キャリア移動度が高い電荷輸送材料、およびこの材料を用いて、高感度で、カブリの発生がなく、さらに機械的特性も向上した電子写真感光体を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表されるアミン誘導体を含有する電荷輸送剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザープリンター、LEDプリンターなどの画像形成装置において好適に使用される電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機光導電性化合物を使用した電子写真感光体は、無機系の光導電性化合物を用いた場合に比べて、軽量性、表面平滑性、低毒性、製造容易性、低価格などの点で優れており、近年盛んに研究されている。この有機光導電性化合物を使用した電子写真感光体として、電荷発生と電荷輸送とを層構成により機能分離した感光体、いわゆる機能分離型感光体が特に注目され、電荷発生材料および電荷輸送材料として種々の材料が提案されている。この方式においては、キャリア(キャリアとは電荷を示す、以下同様)の発生効率の大きい物質を電荷発生材料として用い、かつ電荷輸送能力の高い物質を電荷輸送材料として組み合わせることによって高感度の電子写真感光体が得られる可能性がある。また、電荷輸送材料は、結着剤ポリマーとともに有機溶剤に溶解され、導電性支持体上に塗布して薄膜状に形成されて用いられるため、有機溶剤に良好に溶解でき、さらに均質な有機薄膜を形成できることが重要となる。これまでに、様々な電荷輸送材料が開発され、提案されている。例えば、オキサジアゾール誘導体(米国特許第3189447号など)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3717462号など)、アリールアミン誘導体(米国特許第4232103号など)、スチルベン誘導体(特開昭58−190953号など)、インドリン系誘導体(特開平3−75660号、特開平5−113676号など)が提案されている。しかしながら、これら従来提案されてきた様々な電荷輸送材料は、結着剤ポリマーと有機溶剤に十分に溶解性があるとは言いがたく、さらにたとえ溶解性があって製膜できたとしても膜の状態が安定な電子写真感光体が得られていたとはいいがたいものであった。また、インドリン系誘導体(特開平3−75660号など)が提案されているが、これらの材料は合成に要する工程が長く、さらに電子写真特性も十分とはいいがたいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3189447号
【特許文献2】米国特許第3717462号
【特許文献3】米国特許第4232103号
【特許文献4】特開昭58−190953号公報
【特許文献5】特開平3−75660号公報
【特許文献6】特開平5−113676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、電子写真感光体の電荷輸送材料として従来から望まれる特性を十分に満足する、すなわち結着剤ポリマーへの溶解性がよく、安定な高濃度の有機薄膜を形成でき、キャリア移動度が高い電荷輸送材料、およびこの材料を用いて、高感度で、カブリの発生がなく、さらに機械的特性も向上した電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、高濃度に使用する場合にも安定な有機薄膜を与えることができ、電子写真感光体に用いた場合に高性能の感光体を形成することのできる電荷輸送材料を得るべく、種々の化合物を合成して鋭意研究した。その結果、次の一般式(1)
【化1】

で表されるアミン誘導体が、結着剤ポリマーへの溶解性が良く、安定な高濃度の有機薄膜を形成でき、キャリア移動度が高い電荷輸送材料であることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、次の一般式(1)で表されるアミン誘導体を含有することを特徴とする電荷輸送剤を提供する。
【化2】

(式中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、またはメトキシ基を表す。R2は、水素原子、メチル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。R3は、置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいビニル基を表す。Zは、−CH2−、−CH2−CH2−、または−CH2−CH2−CH2−を表す。Aは、
【化3】

を表す。)
また、本発明は、上記電荷輸送剤を含有することを特徴とする電子写真感光体を提供する。
【0006】
また、本発明は、次の一般式(1)で表されるアミン誘導体を提供する。
【化4】

(式中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、またはメトキシ基を表す。R2は、水素原子、メチル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。R3は、置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいビニル基を表す。Zは、−CH2−、−CH2−CH2−、または−CH2−CH2−CH2−を表す。Aは、
【化5】

を表す。ただし、R1が水素原子、R2がフェニル基、R3がフェニル基、Zが−CH2−、かつAが
【化6】

である場合、および、R1が水素原子、R2が水素原子、R3がフェニル基、Zが−CH2−、かつAが
【化7】

である場合を除く。)
【0007】
また、本発明は、次の一般式(2)で表されるアリール置換インドール誘導体。
【化8】

(式中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、またはメトキシ基を表す。R2は、水素原子、メチル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。R3は、置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいビニル基を表す。Zは、−CH2−、−CH2−CH2−、または−CH2−CH2−CH2−を表す。Aは、
【化9】

を表す。ただし、R1が水素原子、R2がフェニル基、R3がフェニル基、Zが−CH2−、かつAが
【化10】

である場合を除く。)
【発明の効果】
【0008】
本発明の一般式(1)で表されるアミン誘導体は、有機溶剤や結着剤ポリマーへの溶解性がよく、高いキャリア移動度を有するため電荷輸送材料として優れている。また、感光層とした時に膜が安定で、良好な電子写真特性を有する電子写真感光体を提供することができ、工業的に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の電子写真感光体においては、一般式(1)のアミン誘導体が電荷輸送剤として用いられる。
【化11】

一般式(1)中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、またはメトキシ基を表す。R2は、水素原子、メチル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。R3は、置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいビニル基を表す。Zは、−CH2−、−CH2−CH2−、または−CH2−CH2−CH2−を表す。Aは、
【化12】

を表す。
【0010】
1は、これらの中でも、水素原子、メチル基が好ましい。
2またはR3における置換基を有してもよいアリール基について説明する。
アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基が挙げられ、好ましくはフェニル基である。アリール基が有することができる置換基としては、例えばメチル基、エチル基などの炭素数1〜3のアルキル基、メトキシ基などの炭素数1〜3のアルコキシ基が挙げられ、好ましくはメチル基である。これらの中でも、置換基としてメチル基を有するフェニル基が好ましい。
3における置換基を有してもよいビニル基について説明する。
ビニル基が有することできる置換基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などのアリール基、トリル基などの炭素数1〜3のアルキル基で置換されたアリール基、メトキシフェニル基などの炭素数1〜3のアルコキシ基で置換されたアリール基が挙げられる。これらの中でも、フェニル基、トリル基が好ましい。
Zは、−CH2−が好ましい。
Aは、
【化13】

が好ましい。
一般式(1)のアミン誘導体の中でも、次の一般式(3)の化合物が好ましい。
【化14】

一般式(3)中、R1〜R3、A、およびZの意味は、一般式(1)と同じである。
【0011】
一般式(1)の好ましい例として以下の化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の化合物中、Meはメチル基を表す(以下、同様の意味を表す)。
【化15】

【0012】
なお、一般式(1)で示されるアミン誘導体において、R1が水素原子、R2がフェニル基、R3がフェニル基、Zが−CH2−、かつAが
【化16】

である化合物、および、R1が水素原子、R2が水素原子、R3がフェニル基、Zが−CH2−、かつAが
【化17】

である化合物以外は新規化合物である。
また、一般式(3)で示されるアミン誘導体において、R1が水素原子、R2がフェニル基、R3がフェニル基、Zが−CH2−、かつAが
【化18】

である化合物、および、R1が水素原子、R2が水素原子、R3がフェニル基、Zが−CH2−、かつAが
【化19】

である化合物以外は新規化合物である。
【0013】
一般式(1)で示されるアミン誘導体は、例えば次のスキーム1やスキーム2の方法により合成することができる。なお、下記式中、R1、R2、R3、A及びZは前述と同様の意味を表す。Xは、Cl、Br、I、−OSO2CF3などを表す。
スキーム1
【化20】

【0014】
スキーム2
【化21】

【0015】
(スキーム1)
まず、ヒドラジン誘導体(5)にシクロアルカノン(6)をFischer−Indole環化法にてインドール誘導体(7)を得る。引き続き、Hartwigらの方法(J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 827)に準じてインドール誘導体(7)をPdのような金属とリン原子を含む配位子の存在下において、アリールハライド(8)と反応させることによりアリール置換インドール誘導体(2)が合成できる。
使用できるパラジウム錯体としては、PdCl2、Pd(OAc)2、[PdCl(アリル)]2、Pd2(dba)3などを挙げることができる。「Ac」はアセチル基を、「dba」はジベンジリデンアセトンを表す。
リン原子を含む配位子としては、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィンなどのトリアリールホスフィン系、トリ−t−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン系、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’,4’,6’−トリ−イソプロピル−1,1’−ビフェニル、2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニルなどの2−ホスフィノビフェニル系、1,1−ジフェニル−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロペン、1,1−ジフェニル−2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロペンなどのオレフィン置換ホスフィン系、(ジ−t−ブチル)(1−メチル−2,2−ジフェニルシクロプロピル)ホスフィン、(ジシクロヘキシル)(1−メチル−2,2−ジフェニルシクロプロピル)ホスフィンなどのシクロプロパン環置換ホスフィン系のリガンドを挙げることができる。
最後に水素化ホウ素ナトリウムなどによる還元剤を用いて、一般式(1)で表されるアミン誘導体を得ることができる。
【0016】
(スキーム2)
インドリン誘導体(9)とアリールハライド(8)をスキーム1の方法と同様にして反応させることにより、一般式(1)で表されるアミン誘導体を合成することもできる。
【0017】
次に、上記スキーム1で表される一般式(2)で表される化合物について説明する。
【化22】

一般式(2)で表される化合物は、本発明の一般式(1)のアミン誘導体を製造するための中間体として有用である。
一般式(2)中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、またはメトキシ基を表す。R2は、水素原子、メチル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。R3は、置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいビニル基を表す。Zは、−CH2−、−CH2−CH2−、または−CH2−CH2−CH2−を表す。Aは、
【化23】

を表す。
2およびR3における置換基を有してもよいアリール基は、一般式(1)のR2およびR3において説明した置換基を有してもよいアリール基と同じである。
3における置換基を有してもよいビニル基は、一般式(1)のR3において説明した置換基を有してもよいビニル基と同じである。
一般式(2)で表される化合物において、R1が水素原子、R2がフェニル基、R3がフェニル基、Zが−CH2−、かつAが
【化24】

である化合物以外は新規化合物である。
【0018】
一般式(2)の化合物の中でも、次の一般式(4)の化合物が好ましい。
【化25】

一般式(4)中、R1〜R3、A、およびZの意味は、一般式(2)と同じである。
一般式(4)の化合物において、R1が水素原子、R2がフェニル基、R3がフェニル基、Zが−CH2−、かつAが
【化26】

である化合物以外は新規化合物である。
【0019】
一般式(2)で表される化合物の好ましい例として以下の化合物を例示するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【化27】

【0020】
本発明の電子写真感光体としては、具体的には導電性支持体上に、感光層が電荷発生層と電荷輸送層に機能分離された、いわゆる積層型電子写真感光体と、導電性支持体上に電荷発生剤及び電荷輸送剤を含有する単一の感光層を設けた、いわゆる単層型電子写真感光体とが挙げられる。
積層型電子写真感光体において、一般式(1)で表されるアミン誘導体を電荷輸送剤として用いた電荷輸送層は、一般式(1)で表されるアミン誘導体をそのまま導電性支持体または電荷発生層に蒸着させるか、一般式(1)で表されるアミン誘導体と結着剤ポリマーとを適当な溶剤に溶解させた溶液を導電性支持体または電荷発生層に塗布して乾燥することにより形成される。
一方、単層型電子写真感光体においては、電荷発生剤および一般式(1)で表されるアミン誘導体等を結着剤ポリマーとともに適当な溶剤に溶解または分散させた溶液を導電性支持体に塗布して乾燥させることにより形成される。尚、単層型電子写真感光体中には、必要に応じて電子輸送材料を含有させても良い。
【0021】
結着剤ポリマーとしては、例えばポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレンあるいはこれらの共重合体等の絶縁性ポリマーを挙げることができる。また、これらの絶縁性ポリマーの他に、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセンやポリビニレン等の有機光導電性ポリマーも使用できる。これらの結着剤ポリマーの中で、特にポリカーボネートが好適である。好適に使用できるポリカーボネートとしては、下記構造式で示されるビスフェノールA型のポリカーボネート(例えば、三菱ガス化学株式会社製のユーピロンEシリーズ)、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(例えば、三菱ガス化学株式会社製のユーピロンZシリーズ)、特開平4−179961号公報に開示されているビスフェノールA、ビスフェノールZ、ビフェニルカーボネートを構造単位として含有する共重合ポリカーボネートなどがある。
【0022】
【化28】

【0023】
ビスフェノール共重合カーボネートの具体例として、例えば下記構造式(I)で示されるビスフェノールA/ビフェニル型ポリカーボネート樹脂(ここでn/n+m=0.1〜0.9が好ましい)が挙げられ、具体的には式(J)で示される0.85のものなどである。
【化29】

(式中、R11及びR12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、R11およびR12は環状に結合しても良い。R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を示し、nおよびmは上記の繰り返し単位のモル数を表している。)
【0024】
また、上述したポリカーボネートの他にも特開平6−214412号公報に開示されている、繰り返し単位が下記構造式で表されるポリカーボネート(K)を使用することが出来る。
【化30】

さらに、特開平6−222581号公報に開示されている繰り返し単位が下記構造式(L)で表されるポリカーボネートも使用することが出来る。
【化31】

(式中、R29、R30およびR31は同一でも異なってもいても良く、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基を示す。)
【0025】
さらに特開平5−88398号公報および特開平11−65136号公報に示されている下記一般式(M)および(N)で表されるシロキサンユニットを導入した高分子結着剤も好適に使用することができる。
【化32】

(式中、m、n、oおよびpは繰り返し単位を表す整数である。)
【化33】

(式中、a、b、c、d、nは繰り返し単位を表す整数である。)
これらの結着剤ポリマーと一般式(1)で表されるアミン誘導体との配合割合は、結着剤ポリマー100重量部当たり一般式(1)で表されるアミン誘導体を1〜1000重量部、好ましくは30〜500重量部、さらに好ましくは40〜200重量部添加することができる。
【0026】
用いる溶剤としては、特に限定されないが、有機溶剤が使用でき、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロエチレン、四塩化炭素、トリクロロエチレン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素、あるいはベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族化合物等を単独で、またはこれらの混合物の形で用いることが出来る。
【0027】
本発明の感光体に用いられる導電性支持体としては、銅、アルミニウム、銀、鉄、亜鉛、ニッケル等の金属や合金の箔ないし板をシート状またはドラム状にしたものが使用される。あるいは、これらの金属をプラスティックのフィルムや円筒等に真空蒸着、電解メッキしたもの、あるいは導電性ポリマー、酸化インジウム、酸化スズ等の導電性化合物の層をガラス、紙、あるいはプラスティックフィルム等の支持体に塗布もしくは蒸着によって設けられたものが用いられる。
塗布は、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法等のコーティングを用いて行うことが出来る。乾燥は、室温における乾燥の後、加熱乾燥するのが好ましい。加熱乾燥は30〜200℃の温度で5分〜4時間の範囲で無風または送風下で行うことが好ましい。
【0028】
さらに、本発明の電子写真感光体においては、電荷輸送材料として一般式(1)で表されるアミン誘導体の他に必要に応じて他の電荷輸送材料及び種々の添加剤を含有させて用いることができる。他の電荷輸送材料としては、例えば特公昭55−42380号、特公昭60−34099号、特開昭61−23154号等に記載されている下記一般式(O)で示されるヒドラゾン化合物、特公昭58−32372号等に記載されている下記一般式(P)で示されるトリフェニルアミンダイマー、米国特許第3873312号等記載の下記一般式(Q)で示されるジスチリル化合物、テトラフェニルブタジエン系化合物、トリ−(p−トリル)アミン、N,N−ジ−(p−トリル)アニリンなどのトリフェニルアミン誘導体等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【化34】

(式中、R41およびR42は同一または異なっても良い低級アルキル基、置換基を有しても良いアリール基、置換基を有しても良いアラルキル基を示し、R43およびR44は同一または異なっても良く、置換基を有しても良い低級アルキル基、置換基を有しても良いアリール基、置換基を有しても良いアラルキル基、置換基を有しても良いヘテロ環基を示し、R43とR44がそれぞれ結合して環を形成しても良い。R45は水素原子、低級アルキル基、置換基を有しても良いアリール基、置換基を有しても良いアラルキル基、低級アルコキシ基、またはハロゲン原子を示す。R45とR41またはR42がそれぞれ結合して環を形成しても良い。)
【化35】

(式中、R51〜R62は同一または異なっても良く水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子で置換された低級アルコキシ基、置換基を有しても良いアリール基、またはハロゲン原子を示す。)
【化36】

(式中、R71〜R74は同一または異なっても良く、低級アルキル基、または置換基を有しても良いアリール基を示し、Ar1、Ar2およびAr3は同一または異なっても良く、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子の中から一つ以上選ばれる基を有しても良いフェニレン基を示す。)
【0029】
種々の添加剤としては、例えばビフェニレン系化合物(例えば特開平6‐332206号公報に開示されたもの)、m−ターフェニル、ジブチルフタレート等の可塑剤、シリコーンオイル、グラフト型シリコーンポリマー、各種フルオロカーボン類等の表面潤滑剤、ジシアノビニル化合物、カルバゾール誘導体等の電位安定剤、2,6−ジ−tert‐ブチル−4−メチルフェノール等のモノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、特開昭56−117244号公報および特開2009−20204号公報記載のジアミン系酸化防止剤、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等のアミン系酸化防止剤、サリチル酸系酸化防止剤、トコフェロール等を挙げることが出来る。
本発明の電子写真感光体が積層型電子写真感光体である場合、電荷輸送層の膜厚は、好ましくは5〜40μmであり、より好ましくは10〜30μmである。上述のようにして得られる電荷輸送層は、電荷発生層と電気的に接続されることにより、電界の存在下で電荷発生層から注入されたキャリアを受け取ると共に、これらのキャリアを、電荷輸送層を横切って電荷発生層と接している面とは反対の面まで輸送する機能を有する。この際、この電荷輸送層は電荷発生層の上層に積層されていても良く、また電荷発生層の下層に積層されていても良いが、電荷発生層の上層に積層されていることが望ましい。このように作製した感光層上には、必要に応じて保護層を設けることが出来る。また、導電性支持体と感光層との間にバリアー機能と接着機能を有する下引き層を設けることも出来る。下引き層を形成する材料としては、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、ガゼイン、エチレン−アクリル酸共重合体、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、ゼラチン、酸化アルミニウムなどが挙げられる。下引き層の膜厚は、好ましくは0.1〜5μmであり、より好ましくは0.5〜3μmである。
【0030】
電荷発生層としては、セレン、セレン−テルル、アモルファスシリコン等の無機の電荷発生剤、ピリリウム塩系染料、チアピリリウム系染料、アズレニウム塩系染料、チアシアニン系染料、キノシアニン系染料等のカチオン染料、スクアリウム塩系顔料、フタロシアニン系顔料、アントアントロン系顔料、ジベンズピレンキノン系顔料、ピラントロン系顔料等の多環系キノン顔料、インジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、アゾ顔料、ピロロピロール系顔料等の有機電荷発生剤から選ばれた材料を単独ないしは組み合わせて用い、蒸着層あるいは塗布層として作製することが出来る。上述のような有機電荷発生剤の中で、特に好ましくはChem.Rev.,1993,93,p.449−486に記載された有機電荷発生剤が挙げられる。具体的には、フタロシアニン系顔料が好ましい。
フタロシアニン系顔料としては、アルコキシチタニウムフタロシアニン(Ti(OR)2Pc)、オキソチタニウムフタロシアニン(TiOPc)、銅フタロシアニン(CuPc)、無金属フタロシアニン(H2Pc)、クロロガリウムフタロシアニン(ClGaPc)、ヒドロキシガリウムフタロシアニン(HOGaPc)、バナジルフタロシアニン(VOPc)、クロロインジウムフタロシアニン(ClInPc)が挙げられる。さらに詳しくは、TiOPcとしてはα型−TiOPc、β型−TiOPc、γ型−TiOPc、m型−TiOPc、Y型−TiOPc、A型−TiOPc、B型−TiOPc、TiOPcアモルファスが挙げられる。その中でも特に、CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±2°)27.2°に最大ピークを有するもの、あるいはブラッグ角(2θ±2°)7.6°及び28.6°に主体なピークを有するものが好ましい。H2Pcとしてはα型−H2Pc、β型−H2Pc、τ型−H2Pc、x型−H2Pcが挙げられる。
【0031】
アゾ顔料もまた電荷発生剤として好ましい。アゾ顔料としては、モノアゾ化合物、ビスアゾ化合物およびトリスアゾ化合物が挙げられる。具体的には、次の構造式で示されるアゾ化合物が好ましい。
ビスアゾ化合物
【化37】





トリスアゾ化合物
【化38】

【0032】
さらに、次の構造式(V)で示されるペリレン系化合物、または構造式(W)で示される多環キノン系化合物も電荷発生剤として好ましい。
【化39】

(式中、Rは水素原子、低級アルキル基または置換基を有しても良いアリール基を表す。)
【化40】

これら以外の電荷発生剤でも、光を吸収し高い効率で電荷を発生する材料であれば、いずれの材料でも使用することができる。
以上のようにして本発明の一般式(1)で表されるアミン誘導体を含有した電子写真感光体を得ることが出来る。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、合成例中において用いる測定機器及び測定条件を以下に示す。
(1)1H−NMR機器;ブルッカー社製、DRX−500型装置(500MHz)
内部標準物質;テトラメチルシラン
重クロロホルム中で測定
(2)MASS機器;島津LCMS−IT−TOF(株式会社島津製作所製)
【0034】
(合成例1)
化合物(1−1)(4−[4−(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)フェニル]−1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール)の合成
エタノール250mlにフェニルヒドラジン塩酸塩43.4g(0.300mol)、シクロペンタノン27.8g(0.330mol)、酢酸ナトリウム24.6g(0.300mol)を加え、5時間加熱還流を行なった。反応液を30℃まで冷却した後、エタノール20mlに濃硫酸18.2gを加えた混合液を滴下した。2時間加熱還流を行なった後、トルエン200mlを加え、水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和した。得られた有機層を水洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて不純物を除いたところ、インドール誘導体24.3gを得た。収率は52%であった。
窒素雰囲気下、キシレン80mlに得られたインドール誘導体15.7g(0.100mol)、ナトリウム−tert−ブトキシド12.0g(0.125mol)、2,2−ジフェニル−(4−クロロスチレン)32.0g(0.110mol)、[PdCl(アリル)]2146mg(0.40mmol)、(ジ−t−ブチル)(1−メチル−2,2−ジフェニルシクロプロピル)ホスフィン564mg(1.60 mmol)を加え、80℃に加熱した。7時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。抽出した有機層を水洗した後、濃縮を行ない、再結晶操作を行なったところ、アリール置換インドール誘導体37.8gを得た。収率は92%であった。
トルエン10mlに得られたアリール置換インドール誘導体9.0g(0.022mol)を加え、さらに酢酸50mlを加えた。これに水素化ホウ素ナトリウム3.3g(0.087mol)を加えた。40℃にて16時間攪拌を行った後、トルエン100mlを加え、水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和した。得られた有機層を水洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて不純物を除き、濃縮したところ、9.0gの黄色油状液体(化合物(1−1))を得た。収率は99%であった。
1H NMR(CDCl3 ): δ;1.42 - 1.51(m , 1 H ) 、1.59 - 1.65(m , 1H ) 、1.79 - 1.91(m , 3H ) 、1.98 - 2.05(m , 1H ) 、3.79 - 3.83(m , 1H ) 、4.64 - 4.67(m , 1H ) 、6.71 - 6.74(m , 1H ) 、6.93(s, 1H ) 、 6.96 - 7.40(m , 17H )
MS (m / Z) 413 、 384 、 362 、 301.
【0035】
(合成例2)
化合物(2−2)(4−[4−(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)フェニル]−7−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペント[b]インドール)の合成
エタノール160mlにp−トリルヒドラジン塩酸塩25.4g(0.160mol)、シクロペンタノン16.2g(0.192mol)、酢酸ナトリウム13.8g(0.168mol)を加え、5時間加熱還流を行なった。反応液を30℃まで冷却した後、エタノール20mlに濃硫酸9.7gを加えた混合液を滴下した。2時間加熱還流を行なった後、トルエン200mlを加え、炭酸カリウム水溶液を用いて中和した。得られた有機層を水洗浄した後、再結晶操作を行なったところ、インドール誘導体15.1gを得た。収率は51%であった。
窒素雰囲気下、キシレン80mlに得られたインドール誘導体11.1g(0.065mol)、ナトリウム−tert−ブトキシド7.8g(0.081mol)、2,2−ジフェニル−(4−クロロスチレン)19.8g(0.068mol)、[PdCl(アリル)]260mg(0.163mmol)、(ジ−t−ブチル)(1−メチル−2,2−ジフェニルシクロプロピル)ホスフィン229mg(0.650mmol)を加え、80℃に加熱した。10時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。抽出した有機層を水洗した後、濃縮を行ない、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて不純物を除き、さらに再結晶操作を行なったところ、化合物(2−2)21.6gを得た。収率は78%であった。
1H NMR(CDCl3 ): δ;2.43(s , 3H )、2.47 - 2.53(m , 2 H ) 、2.83 - 2.86(m , 4H ) 、6.90 - 6.92(m , 1H ) 、6.99(s, 1H )、7.10 - 7.13(m , 2H ) 、7.17 - 7.21(m , 2H ) 、7.24 - 7.40(m , 12H )
MS (m / Z) 425.
mp. 159℃
【0036】
(合成例3)
化合物(1−2)(4−[4−(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)フェニル]−7−メチル−1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール)の合成
トルエン30mlに合成例2で得られた化合物(2−2)17.0g(0.040mol)を加え、さらに酢酸80mlを加えた。これに水素化ホウ素ナトリウム3.0g(0.080mol)を加えた。30℃にて5時間攪拌を行った後、トルエン100mlを加え、炭酸カリウム水溶液を用いて中和した。得られた有機層を水洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて不純物を除き、濃縮したところ、17.0gの黄色油状液体(化合物(1−2))を得た。収率は100%であった。
1H NMR(CDCl3 ): δ;1.41 - 1.50(m , 1 H ) 、1.56 - 1.64(m , 1H ) 、1.80 - 1.90(m , 3H ) 、1.96 - 2.04(m , 1H ) 、2.26(s, 3H ) 、3.76 - 3.79(m , 1H ) 、4.59 - 4.63(m , 1H ) 、6.83 - 6.85(m , 1H ) 、 6.92 - 6.97(m , 5H ) 、7.00 - 7.02(m , 2H ) 、7.22 - 7.38(m , 10H )
MS (m / Z) 427 、 413 、 352 、 311.
【0037】
(合成例4)
化合物(2−4)(4−[4−{2,2−ビス(4−メチルフェニル)−エテン−1−イル}フェニル]−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペント[b]インドール)の合成
窒素雰囲気下、キシレン80mlに合成例1と同様の操作にて得られたインドール誘導体7.9g(0.050mol)、ナトリウム−tert−ブトキシド6.0g(0.063mol)、2,2−(ジ−p−トリル)−(4−クロロスチレン)17.5g(0.055mol)、[PdCl(アリル)]291mg(0.250mmol)、(ジ−t−ブチル)(1−メチル−2,2−ジフェニルシクロプロピル)ホスフィン353mg(1.00mmol)を加え、80℃に加熱した。7時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。抽出した有機層を水洗した後、濃縮を行ない、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて不純物を除き、さらに再結晶操作を行なったところ、化合物(2−4)20.8gを得た。収率は95%であった。
1H NMR(CDCl3 ): δ;2.36(s, 3H ) 、2.40(s, 3H ) 、2.49 - 2.55(m , 2 H ) 、2.85 - 2.89(m , 4H ) 、6.93(s, 1H ) 、7.08 - 7.25(m , 14H ) 、7.40 - 7.46(m , 2H )
MS (m / Z) 439 、 331 、 273 、 215.
mp. 159℃
【0038】
(合成例5)
化合物(1−4)(4−[4−{2,2−ビス(4−メチルフェニル)−エテン−1−イル}フェニル]−1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール)の合成
トルエン30mlに合成例4で得られた化合物(2−4)19.7g(0.045mol)を加え、さらに酢酸100mlを加えた。これに水素化ホウ素ナトリウム5.1g(0.135 mol)を加えた。40℃にて6時間攪拌を行った後、トルエン200mlを加え、水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和した。得られた有機層を水洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて不純物を除き、再結晶操作を行なったところ、9.8gの淡黄緑色固体(化合物(1−4))を得た。収率は50%であった。
1H NMR(CDCl3 ): δ;1.41 - 1.50(m , 1 H ) 、1.60 - 1.65(m , 1H ) 、1.79 - 1.91(m , 3H ) 、1.98- 2.05(m , 1H ) 、2.34(s, 3H ) 、2.40(s, 3H ) 、3.79 - 3.83(m , 1H ) 、4.64 - 4.67(m , 1H ) 、6.71 - 6.74(m , 1H ) 、6.86(s, 1H ) 、 6.98 - 7.05(m , 6H ) 、7.08 - 7.11(m , 3H ) 、7.13 - 7.15(m , 2H ) 、7.16 - 7.18(m , 2H ) 、7.20 - 7.22(m , 2H )
MS (m / Z) 441 、 362 、 294 、 273 、 226.
mp. 138℃
【0039】
(合成例6)
化合物(2−5)(4−[4−{2,2−ビス(4−メチルフェニル)−エテン−1−イル}フェニル]−7−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペント[b]インドール)の合成
窒素雰囲気下、キシレン80mlに合成例2と同様の操作にて得られたインドール誘導体8.6g(0.050mol)、ナトリウム−tert−ブトキシド6.0g(0.063mol)、2,2−(ジ−p−トリル)−(4−クロロスチレン)17.5g(0.055mol)、[PdCl(アリル)]273mg(0.200mmol)、(ジ−t−ブチル)(1−メチル−2,2−ジフェニルシクロプロピル)ホスフィン282mg(0.800mmol)を加え、80℃に加熱した。7時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。抽出した有機層を水洗した後、濃縮を行ない、再結晶操作を行なったところ、化合物(2−5)20.0gを得た。収率は88%であった。
1H NMR(CDCl3 ): δ;2.36(s, 3H ) 、2.40(s, 3H ) 、2.43(s, 3H ) 、2.47 - 2.53(m , 2 H ) 、2.83 - 2.86(m , 4H ) 、6.90 - 6.92(m , 1H ) 、6.92(s, 1H ) 、7.12 - 7.31(m , 14H )
MS (m / Z) 453 、 273.
mp. 155℃
【0040】
(合成例7)
化合物(1−5)(4−[4−{2,2−ビス(4−メチルフェニル)−エテン−1−イル}フェニル]−7−メチル−1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール)の合成
トルエン25mlに合成例6で得られた化合物(2−5)16.8g(0.037mol)を加え、さらに酢酸100mlを加えた。これに水素化ホウ素ナトリウム2.8g(0.074mol)を加えた。40℃にて5時間攪拌を行った後、トルエン200mlを加え、水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和した。得られた有機層を水洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて不純物を除き、再結晶操作を行なったところ、15.8gの淡黄緑色固体(化合物(1−5))を得た。収率は93%であった。
1H NMR(CDCl3 ): δ;1.41 - 1.50(m , 1 H ) 、1.58 - 1.64(m , 1H ) 、1.80 - 1.90(m , 3H ) 、1.96 - 2.04(m , 1H ) 、2.26(s, 3H ) 、2.34(s, 3H ) 、2.40(s, 3H ) 、3.78(br, 1H ) 、4.62(br, 1H ) 、6.83 - 6.85(m , 2H ) 、6.91 - 7.02(m , 6H ) 、7.09 - 7.11(m , 2H ) 、7.13 - 7.22(m , 6H )
MS (m / Z) 455 、 413 、 365 、 311、 274.
mp. 138℃
【0041】
(合成例8)
化合物(2−8)(4−[4−(4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエニル)フェニル]−7−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペント[b]インドール)の合成
窒素雰囲気下、キシレン80mlに合成例2と同様の操作にて得られたインドール誘導体6.5g(0.038mol)、ナトリウム−tert−ブトキシド4.6g(0.048mol)、4,4−ジフェニル−(4−クロロフェニルブタジエン)13.8g(0.044mol)、[PdCl(アリル)]235mg(0.095mmol)、(ジ−t−ブチル)(1−メチル−2,2−ジフェニルシクロプロピル)ホスフィン134mg(0.38mmol)を加え、80℃に加熱した。7時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。抽出した有機層を水洗した後、濃縮を行ない、再結晶操作を行なったところ、化合物(2−8)14.8gを得た。収率は86%であった。
1H NMR(CDCl3 ): δ;2.44(s, 3H ) 、2.49 - 2.55(m , 2H ) 、2.85 - 2.87(m , 4H ) 、6.75 - 6.80(m , 1H ) 、6.88 - 6.94(m , 3H ) 、7.26 - 7.46(m , 16H )
MS (m / Z) 451 、331 、 273 、 213.
mp. 196℃
【0042】
(合成例9)
化合物(1−8)(4−[4−(4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエニル)フェニル]−7−メチル−1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール)の合成
トルエン40mlに合成例8で得られた化合物(2−8)12.1g(0.027mol)を加え、さらに酢酸100mlを加えた。これに水素化ホウ素ナトリウム8.1g(0.214mol)を加えた。40℃にて24時間攪拌を行った後、トルエン200mlを加え、水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和した。得られた有機層を水洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて不純物を除き、再結晶操作を行なったところ、11.1gの淡黄緑色固体(化合物(1−8))を得た。収率は91%であった。
1H NMR(CDCl3 ): δ;1.44 - 1.51(m , 1 H ) 、1.59 - 1.66(m , 1H ) 、1.82 - 1.93(m , 3H ) 、1.98 - 2.05(m , 1H ) 、2.27(s , 3H ) 、3.78 - 3.81(m , 1H ) 、4.67 - 4.69(m , 1H ) 、6.70(d , J = 15.3Hz ,1H ) 、6.76 - 6.81(m , 1H ) 、6.85 - 6.89(m , 2H ) 、6.93 - 6.96(m , 2H ) 、7.16(d , J = 8.6Hz , 2H ) 、7.22 -7.44(m , 12H )
MS (m / Z) 453 、 413 、 365 、 311 、 262 、 213.
mp. 134℃
【0043】
(合成例10)
化合物(1−9)(9−[4−(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)フェニル]−2,3,4,4a,9,9a−ヘキサヒドロ−1H−カルバゾール)の合成
窒素雰囲気下、キシレン100mlにヘキサヒドロカルバゾール8.7g(0.050mol)、ナトリウム−tert−ブトキシド6.0g(0.063mol)、2,2−ジフェニル−(4−クロロスチレン)16.0g(0.055mol)、[PdCl(allyl)]246mg(0.125mmol)、(ジ−t−ブチル)(1−メチル−2,2−ジフェニルシクロプロピル)ホスフィン169mg(0.500mmol)を加え、80℃に加熱した。3時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。抽出した有機層を水洗した後、濃縮を行ない、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて不純物を除いたところ、19.0gの黄色油状液体(化合物(1−9))を得た。収率は86%であった。
1H NMR(CDCl3 ): δ;1.25 - 1.32(m , 1 H ) 、1.37 - 1.44(m , 2H ) 、1.48 - 1.54(m , 1H ) 、1.55 - 1.60(m , 1H ) 、1.77 - 1.84(m , 2H ) 、1.87 - 1.93(m , 1H ) 、3.28 - 3.32(m , 1H ) 、4.04 - 4.08(m , 1H ) 、6.76 - 6.79(m , 1H ) 、6.92(d , J = 7.9Hz , 1H ) 、6.94(s, 1H ) 、6.97 - 7.37(m , 16H )
MS (m / Z) 427 、 384 、 362 、 294.
【0044】
(合成例11)
化合物(2−12)(4−[4−(4−フェニル−1,3−ブタジエニル)ナフチル]−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペント[b]インドール)の合成
窒素雰囲気下、キシレン80mlに合成例1と同様の操作にて得られたインドール誘導体4.7g(0.030mol)、ナトリウム−tert−ブトキシド3.6g(0.038mol)、1−ブロモ−4−(4−フェニル−1,3−ブタジエニル)ナフタレン10.1g(0.030mol)、[PdCl(アリル)]254.8mg(0.152mmol)、(ジ−t−ブチル)(1−メチル−2,2−ジフェニルシクロプロピル)ホスフィン203.2mg(0.60mmol)を加え、80℃に加熱した。7時間攪拌後、水を加え、さらにトルエンを加えて有機層を抽出した。抽出した有機層を水洗した後、濃縮を行ない、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて不純物を除き、再結晶操作を行なったところ、化合物(2−12)8.0gを得た。収率は65%であった。
1H NMR(CDCl3 ): δ;2.52 - 2.76(m , 4H ) 、2.94 - 3.04(m , 2H ) 、6.78(d , J = 14.8Hz ,1H ) 、6.92 - 6.94(m , 1H ) 、7.01 - 7.04(m , 1H ) 、7.08 - 7.59(m , 15H ) 、7.81(d , J = 7.6Hz , 1H )
MS (m / Z) 411 、 365 、 311 、 273.
mp. 140℃
【0045】
(合成例12)
化合物(1−12)(4−[4−(4−フェニル−1,3−ブタジエニル)ナフチル]−1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール)の合成
トルエン40mlに合成例11で得られた化合物(2−12)4.1g(0.010mol)を加え、さらに酢酸50mlを加えた。これに水素化ホウ素ナトリウム1.8g(0.048mol)を加えた。40℃にて6時間攪拌を行った後、トルエン100mlを加え、水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和した。得られた有機層を水洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて不純物を除き、再結晶操作を行なったところ、1.8gの黄色固体(化合物(1−12))を得た。収率は45%であった。
1H NMR(CDCl3 ): δ;1.40 - 2.12(m , 6H ) 、3.91 - 4.04(m , 1H ) 、4.87 - 5.10(m , 1H ) 、5.80 - 6.26(m , 1H ) 、6.63 - 7.57(m , 15H ) 、7.72 - 7.78(m , 1H ) 、7.95 - 8.00(m , 1H ) 、8.24(d , J =8.7Hz , 1H )
MS (m / Z) 413.
mp. 131℃
【0046】
(実施例1〜4)
結着剤ポリマーとして「パンライトTS−2020」(帝人化成株式会社製)15重量部と例示化合物(1−1)、(1−4)、(1−5)または(1−8)15重量部をテトラヒドロフラン85重量部中で混合溶解させた。これらの溶液をドクターブレードでポリエチレンフタレート(PET)フィルム上にアルミを蒸着したシート上に塗布し、80℃で3時間乾燥させ、電荷輸送層を作製した(厚み:18μm)。この電荷輸送層上に半透明金電極を蒸着して電荷キャリア移動度を測定した。キャリア移動度の測定は、光源としてパルス半値幅0.9sec、波長337nmの窒素ガスレーザーを用い、タイム−オブ−フライト法(田中聡明、山口康浩、横山正明:電子写真、29、366(1990))にて行なった。25℃、25V/μmでの測定結果を第1表に示す。
【0047】
(比較例1〜2)
実施例1と同様に、比較化合物1または比較化合物2を用いて電荷輸送層を作製し、電荷キャリア移動度を測定した。この結果を第1表に示す。比較化合物1及び比較化合物2は、特公平7−21646号公報記載の方法により合成した。
【化41】

【0048】
第1表
【表1】

第1表から、例示化合物(1−1)、(1−4)、(1−5)および(1−8)は、一般に広く電子写真感光体として使用されている化合物(比較化合物1および比較化合物2)よりも大きな正孔移動度を有していることがわかる。
【0049】
(実施例5〜8)
Y型−TiOPc(パーマケム・アジア株式会社製)40重量部およびバインダーとしてブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学工業株式会社製)35重量部をテトラヒドロフラン1425重量部へ溶解し、塗工液を得た。これを下引き層上に塗布し、100℃で2時間乾燥させて電荷発生層を形成した。
結着剤ポリマーとして「パンライトTS−2020」(帝人化成株式会社製)15重量部と例示化合物(1−1)、(1−2)、(1−4)または(1−5)15重量部をテトラヒドロフラン85重量部中で混合溶解させた。これらの溶液をドクターブレードで電荷発生層上に塗布し、80℃で3時間乾燥させて感光体を作製した(電荷輸送層の厚み:18μm)。
このようにして得られた電子写真感光体の感光体特性を静電記録試験装置「EPA−8200A」(株式会社川口電機製作所製)を用いてスタティック方式により測定した。すなわち、感光体を−4.6kvのコロナ放電を行なって帯電せしめ、表面電位V0(単位はv)を測定し、これを暗所で5秒間保持した(表面電位Vi(単位はv))後、0.5Luxのレーザー光を照射し、表面電位Viを半減させるのに必要な露光量すなわち半減露光量E1/2(Lux・sec)、続いて1秒間照射後の表面残留電位Vr1.0(単位はv)を求めた。この結果を第2表に示す。
【0050】
(比較例3〜4)
実施例5と同様に、比較化合物3または比較化合物4を用いて電子写真感光体を作製し、測定を行なった。この結果を第2表に示す。比較化合物3は特開平3−75660号公報記載の方法により、比較化合物4は特開昭61−23154号記載の方法により合成した。
【化42】

【0051】
第2表
【表2】

第2表から、例示化合物(1−1)、(1−2)、(1−4)および(1−5)を用いた電子写真感光体は、比較化合物3および4を用いた電子写真感光体より同等か高感度であり(E1/2が小さい)、残留電位も小さく、優れたものであることがわかる。
【0052】
(実施例9〜14)
結着剤ポリマーとして「パンライトTS−2020」15重量部と例示化合物(1−1)、(1−2)、(1−4)、(1−5)、(1−9)または(1−12)15重量部をテトラヒドロフラン85重量部中で混合溶解させた。この液をドクターブレードでPET板上に塗布し、80℃で3時間乾燥させ、薄膜を作製した(厚み:18μm)。
得られた薄膜を「スガ摩耗試験機NUS−ISO3」(スガ試験機株式会社製)にて摩耗試験を行なった。すなわち、薄膜を「精密仕上げ用研磨フィルム4000番」(住友スリーエム株式会社製)にて400回、800回、1200回削り、薄膜の重量変化を測定した。この結果を第3表に示す。
【0053】
(比較例5〜10)
実施例9と同様に、比較化合物3、比較化合物4、比較化合物5、比較化合物6、比較化合物7または比較化合物8を用いて薄膜を作製し、磨耗試験を行なった。この結果を第3表に示す。なお、比較化合物5は、p−トルイジンとp−ヨードトルエンとのUllmann反応により合成した。比較化合物6は、4−(ジ−p−トリルアミノ)ベンズアルデヒドと3,3−ジフェニルアリルホスホン酸ジエチルとのHorner−Wadsworth−Emmons反応により合成した。比較化合物7は、特開昭60−174749号公報記載のスチリル化合物製造法に準じて合成した。比較化合物8は、特開平7−173112号公報記載の方法により合成した。
【化43】

【0054】
第3表
【表3】

第3表から、例示化合物(1−1)、(1−2)、(1−4)、(1−5)、(1−9)および(1−12)を用いた薄膜の方が重量変化は少なく、耐磨耗性がある。これらの結果から、本発明の化合物は膜安定性が良いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の一般式(1)で表されるアミン誘導体は、電荷輸送材料として有用であり、良好な機械的特性を有する電子写真感光体を提供することができ、工業的に優れたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1)で表されるアミン誘導体を含有することを特徴とする電荷輸送剤。
【化1】

(式中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、またはメトキシ基を表す。R2は、水素原子、メチル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。R3は、置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいビニル基を表す。Zは、−CH2−、−CH2−CH2−、または−CH2−CH2−CH2−を表す。Aは、
【化2】

を表す。)
【請求項2】
請求項1記載の電荷輸送剤を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項3】
積層型電子写真感光体である請求項2記載の電子写真感光体。
【請求項4】
単層型電子写真感光体である請求項2記載の電子写真感光体。
【請求項5】
次の一般式(1)で表されるアミン誘導体。
【化3】

(式中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、またはメトキシ基を表す。R2は、水素原子、メチル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。R3は、置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいビニル基を表す。Zは、−CH2−、−CH2−CH2−、または−CH2−CH2−CH2−を表す。Aは、
【化4】

を表す。ただし、R1が水素原子、R2がフェニル基、R3がフェニル基、Zが−CH2−、かつAが
【化5】

である場合、および、R1が水素原子、R2が水素原子、R3がフェニル基、Zが−CH2−、かつAが
【化6】

である場合を除く。)
【請求項6】
次の一般式(2)で表されるアリール置換インドール誘導体。
【化7】

(式中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、またはメトキシ基を表す。R2は、水素原子、メチル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。R3は、置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいビニル基を表す。Zは、−CH2−、−CH2−CH2−、または−CH2−CH2−CH2−を表す。Aは、
【化8】

を表す。ただし、R1が水素原子、R2がフェニル基、R3がフェニル基、Zが−CH2−、かつAが
【化9】

である場合を除く。)

【公開番号】特開2013−20183(P2013−20183A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154978(P2011−154978)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】