説明

電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア及び該樹脂被覆キャリアを用いた電子写真現像剤

【課題】高耐久性で長期に使用しても帯電量劣化が少なく、且つ、帯電量の環境安定性に優れ、また、フルカラー化に伴う、印字率変動及びトナー濃度変動に対しても幅広く対応し、安定した画質が得られる電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア及びこれを用いた電子写真現像剤を提供する。
【解決手段】キャリア芯材粒子表面にシリコーン樹脂又は変性シリコーン樹脂からなる被覆樹脂層を有し、かつ該被覆樹脂層中にチタンキレートとしてチタン−アセト酢酸エチルキレート又はチタン−オクチレングリコールキレートを含み、その含有量が被覆樹脂固形分に対して含有量が5.0〜50.0重量%である電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター等に用いられる二成分系電子写真現像剤に使用される電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア及び該樹脂被覆キャリアを用いた電子写真現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の現像方式において、キャリア粒子は長時間の使用中、常にトナー粒子を所望する極性で、かつ、充分な帯電量に摩擦帯電させなければならない。しかしながら、キャリア粒子間の衝突、現像槽内での機械的攪拌、又はこれらによる発熱で、キャリア粒子表面にトナーが融着し、いわゆるスペントが生じ、さらに、これらのストレスにより樹脂被膜が剥離し、キャリア粒子の帯電特性が使用時間と共に低下してしまう。それに伴い、カブリやトナー飛散等の画質劣化が生じるため、現像剤全体を取り替える必要が生じる。
【0003】
このスペント化に対して比較的有用とされている被覆樹脂としてフッ素樹脂があるが、樹脂の被膜強度が弱く、キャリア芯材粒子との密着性が悪いため、被膜剥離が多く、それにより抵抗が低くなり過ぎ、初期の画像特性を維持することが困難である。
【0004】
これに対して、表面エネルギーの低いシリコーン樹脂を被覆樹脂とするキャリアが種々提案されており、例えば下記の提案がなされている。
【0005】
特許文献1(特開平6−118725号公報)には、強磁性体微粒子と樹脂からなる複合体粒子を核体粒子の表面に導電性物質を含有するシリコーン樹脂をコーティングした電子写真用磁性キャリアが提案され、高耐久性でかつ高画質であり、また、高速機への対応性及び環境安定性を備え、色汚れがなく、更に種々のトナーに対して帯電調整が可能であるとされている。
【0006】
特許文献2(特開平5−341581号公報)には、磁性粒子の樹脂被覆層がシリコーン樹脂からなり、該樹脂被覆層にカップリング剤を含有する樹脂被覆磁性粒子とトナー粒子の混合物からなる現像剤が開示されている。この特許文献2によれば、高い現像能力を有し、長期撹拌によるキャリア粒子表面へのトナー粒子の付着を防止し、且つ耐久性に優れたものであり、その結果、特許文献2の現像剤を潜像担持体と現像剤担持体との間に交互電界を印加しつつ静電潜像を現像する方法に適用すると、細線再現性に優れ、地肌カブリがなく、エッジ効果の弱い高品質画像が得られるとされている。
【0007】
特許文献3(特開2000−162827号公報)には、磁性芯材粒子の粒子表面が金属系硬化剤とシラン系カップリング剤オリゴマーとシリコーン樹脂とからなる樹脂組成物によって被覆されている磁性粉末粒子からなる電子写真現像剤用磁性キャリアが開示されている。特許文献3によれば、このような磁性キャリアを用いることによって、耐久性に優れ、安定した帯電性を有するとされている。
【0008】
特許文献4(特開2000−181146号公報)には、帯電量の環境安定性を向上させ、帯電性変化に基因する画像維持性を改善することを目的として、特定の構造単位を含有するメチルフェニルシリコーン重合体からなる樹脂中に、Ti化合物又はAl化合物を含有した被覆樹脂で核体粒子を被覆した静電荷像現像用キャリアが提案されている。
【0009】
特許文献5(特開2001−92189号公報)には、抵抗、帯電量、流動性の変化が小さく、初期の画像特性を長時間の耐刷においても、維持し得ることを目的として、有機チタン系触媒を有するシリコーン系樹脂をキャリア芯材の周囲に被覆してなる電子写真現像剤用キャリアが開示されている。有機チタン系触媒としてチタンモノマー触媒やチタンキレート触媒等が挙げられ、その含有量はシリコーン樹脂の0.5〜3.0重量%とするのが好ましいとされている。
【0010】
しかしながら、上記のような従来技術では、近年の高画質化の要求に伴う、トナーや複写機等の画像形成装置等の変化に対して、キャリアの長寿命化を達成することは不十分である。カップリング剤や硬化剤が、シリコーン樹脂に対して効果的に作用し、結果として耐久性に優れた、あるいは安定した特性を有するキャリアが提案できるものの、添加剤の効果を期待してより多く添加すると、被膜されている樹脂の強度が脆くなり、樹脂剥離が起こり、結果的に逆効果になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−118725号公報
【特許文献2】特開平5−341581号公報
【特許文献3】特開2000−162827号公報
【特許文献4】特開2000−181146号公報
【特許文献5】特開2001−92189号公報
【0012】
このように、シリコーン樹脂又は変性シリコーン樹脂を被覆した樹脂被覆キャリアにおいても、長寿命化、すなわち高耐久性で長期に使用しても帯電量劣化が少なく、且つ、帯電量の環境安定性に優れるものは得られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、上記の従来の課題を解決し、高耐久性で長期に使用しても帯電量劣化が少なく、且つ、帯電量の環境安定性に優れ、また、フルカラー化に伴う、印字率変動及びトナー濃度変動に対しても幅広く対応し、安定した画質が得られる電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア及びこれを用いた電子写真現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、検討の結果、被覆樹脂としてシリコーン樹脂又は変性シリコーン樹脂を用い、さらに該被覆樹脂中に特定のチタンキレートを一定量含有させることによって、上記課題が解決し得ることを知見し、本発明に至った。
【0015】
すなわち、本発明は、キャリア芯材粒子表面にシリコーン樹脂又は変性シリコーン樹脂からなる被覆樹脂層を有し、かつ該被覆樹脂層中にチタンキレートとしてチタン−アセト酢酸エチルキレート又はチタン−オクチレングリコールキレートを含有し、その含有量が被覆樹脂固形分に対して5.0〜50.0重量%であることを特徴とする電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを提供するものである。
【0016】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアは、上記被覆樹脂層に帯電制御剤、密着向上剤及び架橋剤が含有されていることが望ましい。
【0017】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアにおいて、上記帯電制御剤はアミノシランカップリング剤であり、その含有量が被覆樹脂固形分に対して1.0〜30.0重量%であり、上記密着向上剤はエポキシ基含有シランカップリング剤であり、その含有量が被覆樹脂固形分に対して0.05〜10.0重量%であり、上記架橋剤がメチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン(MTO)及び/又はビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン(VTO)であり、その含有量が被覆樹脂固形分に対して0.05〜10.0重量%であることが望ましい。
【0018】
また、本発明は、上記樹脂被覆キャリアとトナーとからなる電子写真現像剤を提供するものである。
【0019】
また、本発明に係る電子写真現像剤は、補給用現像剤としても用いられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア及びこれを用いた電子写真現像剤によって、高耐久性で長期に使用しても帯電量劣化が少なく、且つ、帯電量の環境安定性に優れ、また、フルカラー化に伴う、印字率変動及びトナー濃度変動に対しても幅広く対応し、安定した画質が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
<本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア>
【0022】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアは、キャリア芯材粒子表面にシリコーン樹脂又は変性シリコーン樹脂からなる被覆樹脂層を有する。
【0023】
ここに用いられるキャリア芯材粒子は、従来から電子写真現像剤用キャリア芯材(粒子)として使用されている鉄粉芯材、マグネタイト芯材、樹脂キャリア芯材、あるいはフェライト芯材等が挙げられる。この中でも特に、Mn、Mg、Li、Ca、Sr、Tiから選ばれる少なくとも1種を含むフェライト粒子からなるフェライト芯材であることが望ましい。近年の廃棄物規制を始めとする環境負荷低減の流れを考慮すると、Cu、Zn、Ni等の重金属を不可避不純物(随伴不純物)の範囲を超えて含まないことが好ましい。
【0024】
また、キャリア芯材粒子がフェライト粒子からなるフェライト芯材である場合、空隙率の高いフェライト粒子も用いることができる。その場合、フェライト粒子の空隙部分に樹脂を充填した樹脂充填型フェライトキャリアとして用いることができる。
【0025】
また、キャリア芯材粒子の体積平均粒径(D50)は15〜80μmが望ましく、この範囲でキャリア付着が防止され、また良好な画質が得られる。平均粒径が15μm未満では、キャリア付着が発生しやすくなるため好ましくない。また、平均粒径が80μmを超えると、画質が劣化しやすくなり好ましくない。
【0026】
〔平均粒径〕
この平均粒径の測定は、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(Model9320−X100)を用いて測定される。分散媒には水を用いた。試料10gと水80mlを100mlのビーカーにいれ、分散剤(ヘキサメタリン酸ナトリウム)を2〜3滴添加する。次いで超音波ホモジナイザー(SMT.CO.LTD.製UH−150型)を用い、出力レベル4に設定し、20秒間分散を行った。その後、ビーカー表面にできた泡を取り除き、試料を装置へ投入した。
【0027】
被覆樹脂としては、上記のように、シリコーン樹脂又は変性シリコーン樹脂が用いられる。すなわち、未変性のストレートシリコーン樹脂や、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂及びフッ素樹脂等の各樹脂で変性した変性シリコーン樹脂が挙げられる。
【0028】
キャリア芯材粒子に対するシリコーン樹脂又は変性シリコーン樹脂の被覆量は、樹脂被覆キャリアとして用いられる場合には、キャリア芯材粒子に対して0.1〜3.5重量%が望ましい。樹脂の被覆量が0.1重量%未満であるとトナーのスペントが悪化し、経時の帯電量が低下する。樹脂の被覆量が3.5重量%を超えると粒子間凝集が発生し、トナーのスペントが悪化する。また、上記した樹脂充填型フェライトキャリアとして用いる場合には、樹脂の量は、フェライトキャリア芯材粒子に対して5.0〜20.0重量%が望ましい。この場合の樹脂の量は、粒子の空隙部分に対する充填量と粒子の表面を被覆する被覆量の和である。なお、充填樹脂はシリコーン樹脂又は変性シリコーン樹脂と異なる樹脂を用いてもよい。
【0029】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアは、被覆樹脂層中にチタンキレートとしてチタン−アセト酢酸エチルキレート又はチタン−オクチレングリコールキレートを含有する。具体的にはチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)が挙げられる。上記以外のチタンキレート、例えばチタン−アセチルアセトンキレートを使用した場合には、帯電量の環境安定性が悪化し、また、印字率変動及びトナー濃度変動に対する帯電量変化が大きくなり、安定した画質が得られない。
【0030】
これらチタンキレートの含有量は、被覆樹脂固形分に対して5.0〜50.0重量%である。チタンキレートの含有量が5.0重量%未満の場合には、帯電量の環境安定性が悪化し、安定した画質が得られない。また、チタンキレートの含有量が50.0重量%を超える場合には、キャリア表面に被覆されているシリコーン樹脂、あるいは変性シリコーン樹脂が脆くなり、耐久性が低下し、帯電量低下が起こる。
【0031】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアは、被覆樹脂層中に帯電制御剤、密着向上剤及び架橋剤が含有されていることが望ましい。
【0032】
帯電制御剤としては、トナー用に一般的に用いられる各種の帯電制御剤や各種シランカップリング剤が挙げられる。使用できる帯電制御剤の種類は特に限定されないが、特にアミノシランカップリング剤が好ましい。アミノシランカップリング剤の含有量は、被覆樹脂固形分に対して、1.0〜30.0重量%であることが望ましい。アミノシランカップリング剤の含有量が1.0重量%未満の場合には、アミノシランカップリング剤の含有効果が発現しにくく、適正な帯電量が得られない。アミノシランカップリング剤の含有量が30.0重量%を超える場合には、キャリア表面に被覆されているシリコーン樹脂又は変性シリコーン樹脂が脆くなり、耐久性が低下し、帯電量低下が起こる。
【0033】
密着向上剤としては、特に限定されないが、エポキシ基含有シランカップリング剤が望ましい。エポキシ基含有シランカップリング剤の含有量は、被覆樹脂固形分に対して、0.05〜10.0重量%であることが望ましい。エポキシ基含有シランカップリング剤の含有量が0.05重量%未満の場合には、キャリア芯材粒子とシリコーン樹脂又は変性シリコーン樹脂との密着性が弱く帯電量が低下する。また、エポキシ基含有シランカップリング剤の含有量が10.0重量%を超える場合には、キャリア芯材粒子とシリコーン樹脂又は変性シリコーン樹脂との密着性は保持できるものの、帯電量の環境安定性が悪化し、また、印字率変動及びトナー濃度変動に対する帯電量変化が大きくなり、安定した画質が得られない。
【0034】
架橋剤としては、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン(MTO)、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン(VTO)等のケトオキシムシラン化合物を使用することができる。これらMTO、VTOは単独又は組み合わせて用いられる。架橋剤が、上記に例示したものと異なる場合には、キャリア芯材粒子表面に被覆されているシリコーン樹脂又は変性シリコーン樹脂が脆くなり、耐久性が低下し、帯電量低下が起こる懸念を生じる。
【0035】
架橋剤の含有量は、被覆樹脂固形分に対して、0.05〜10.0重量%であることが望ましい。架橋剤の含有量が0.05重量%未満の場合には、キャリア芯材粒子表面に被覆されているシリコーン樹脂又は変性シリコーン樹脂が脆くなり、耐久性が低下し、帯電量低下が起こる懸念を生じる。また、架橋剤の含有量が10.0重量%を超える場合には、印字率変動及びトナー濃度変動に対する帯電量変化が大きくなり、安定した画質が得られない。
【0036】
本発明では、キャリアの電気抵抗や帯電量、帯電速度をコントロールすることを目的として、被覆樹脂層中に、導電剤を含有することができる。導電剤はそれ自身の持つ電気抵抗が低いことから、含有量が多すぎると急激な電荷リークを引き起こしやすい。従って、導電性剤の含有量は、被覆樹脂の固形分に対し0.25〜20.0重量%であり、好ましくは0.5〜15.0重量%である。導電性剤としては、導電性カーボンや酸化チタン、酸化錫等の酸化物、各種の有機系導電剤が挙げられる。
【0037】
<本発明に係る電子写真現像剤>
次に、本発明に係る電子写真用現像剤について説明する。
本発明に係る電子写真現像剤は、上記した電子写真現像剤用キャリアとトナーとからなるものである。
【0038】
本発明の電子写真現像剤を構成するトナー粒子には、粉砕法によって製造される粉砕トナー粒子と、重合法により製造される重合トナー粒子とがある。本発明ではいずれの方法により得られたトナー粒子を使用することができる。
【0039】
粉砕トナー粒子は、例えば、結着樹脂、荷電制御剤、着色剤をヘンシェルミキサー等の混合機で充分に混合し、次いで、二軸押出機等で溶融混練し、冷却後、粉砕、分級し、外添剤を添加後、ミキサー等で混合することにより得ることができる。
【0040】
粉砕トナー粒子を構成する結着樹脂としては特に限定されるものではないが、ポリスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、さらにはロジン変性マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂等を挙げることができる。これらは単独又は混合して用いられる。
【0041】
荷電制御剤としては、任意のものを用いることができる。例えば正荷電性トナー用としては、ニグロシン系染料及び4級アンモニウム塩等を挙げることができ、また、負荷電性トナー用としては、含金属モノアゾ染料等を挙げることができる。
【0042】
着色剤(色材)としては、従来より知られている染料、顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントレッド、クロムイエロー、フタロシアニングリーン等を使用することができる。その他、トナーの流動性、耐凝集性向上のためのシリカ粉体、チタニア等のような外添剤をトナー粒子に応じて加えることができる。
【0043】
重合トナー粒子は、懸濁重合法、乳化重合法、乳化凝集法、エステル伸長重合法、相転乳化法といった公知の方法で製造されるトナー粒子である。このような重合法トナー粒子は、例えば、界面活性剤を用いて着色剤を水中に分散させた着色分散液と、重合性単量体、界面活性剤及び重合開始剤を水性媒体中で混合攪拌し、重合性単量体を水性媒体中に乳化分散させて、攪拌、混合しながら重合させた後、塩析剤を加えて重合体粒子を塩析させる。塩析によって得られた粒子を、濾過、洗浄、乾燥させることにより、重合トナー粒子を得ることができる。その後、必要により乾燥されたトナー粒子に外添剤を添加する。
【0044】
さらに、この重合トナー粒子を製造するに際しては、重合性単量体、界面活性剤、重合開始剤、着色剤以外に、定着性改良剤、帯電制御剤を配合することができ、これらにより得られた重合トナー粒子の諸特性を制御、改善することができる。また、水性媒体への重合性単量体の分散性を改善するとともに、得られる重合体の分子量を調整するために連鎖移動剤を用いることができる。
【0045】
上記重合トナー粒子の製造に使用される重合性単量体に特に限定はないが、例えば、スチレン及びその誘導体、エチレン、プロピレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエステル及びメタクリル酸ジエチルアミノエステル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類等を挙げることができる。
【0046】
上記重合トナー粒子の調製の際に使用される着色剤(色材)としては、従来から知られている染料、顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントレッド、クロムイエロー及びフタロシアニングリーン等を使用することができる。また、これらの着色剤はシランカップリング剤やチタンカップリング剤等を用いてその表面が改質されていてもよい。
【0047】
上記重合トナー粒子の製造に使用される界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン性界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を使用することができる。
【0048】
ここで、アニオン系界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。また、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン、脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等を挙げることができる。さらに、カチオン系界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。また、両イオン性界面活性剤としては、アミノカルボン酸塩、アルキルアミノ酸等を挙げることができる。
【0049】
上記のような界面活性剤は、重合性単量体に対して、通常は0.01〜10重量%の範囲内の量で使用することができる。このような界面活性剤の使用量は、単量体の分散安定性に影響を与えるとともに、得られた重合トナー粒子の環境依存性にも影響を及ぼすことから、単量体の分散安定性が確保され、かつ重合トナー粒子の環境依存性に過度の影響を及ぼしにくい上記範囲内の量で使用することが好ましい。
【0050】
重合トナー粒子の製造には、通常は重合開始剤を使用する。重合開始剤には、水溶性重合開始剤と油溶性重合開始剤とがあり、本発明ではいずれも使用することができる。本発明で使用することができる水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、水溶性パーオキサイド化合物を挙げることができ、また、油溶性重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物、油溶性パーオキサイド化合物を挙げることができる。
【0051】
また、本発明において連鎖移動剤を使用する場合には、この連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、四臭化炭素等を挙げることができる。
【0052】
さらに、本発明で使用する重合トナー粒子が、定着性改善剤を含む場合、この定着性改良剤としては、カルナバワックス等の天然ワックス、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ワックス等を使用することができる。
【0053】
また、本発明で使用する重合トナー粒子が、帯電制御剤を含有する場合、使用する帯電制御剤に特に制限はなく、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、含金属モノアゾ染料等を使用することができる。
【0054】
また、重合トナー粒子の流動性向上等のために使用される外添剤としては、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウム、フッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子等を挙げることができ、これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0055】
さらに、水性媒体から重合粒子を分離するために使用される塩析剤としては、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム等の金属塩を挙げることができる。
【0056】
上記のようにして製造されたトナー粒子の平均粒径は、2〜15μm、好ましくは3〜10μmの範囲内にあり、重合トナー粒子の方が粉砕トナー粒子よりも、粒子の均一性が高い。トナー粒子が2μmよりも小さくなると、帯電能力が低下しカブリやトナー飛散を引き起こしやすく、15μmを超えると、画質が劣化する原因となる。
【0057】
上記のように製造されたキャリアとトナーとを混合し、電子写真現像剤を得ることができる。キャリアとトナーの混合比、即ちトナー濃度は3〜15重量%に設定することが好ましい。3重量%未満であると所望の画像濃度が得にくく、15重量%を超えると、トナー飛散やかぶりが発生しやすくなる。
【0058】
本発明に係る電子写真現像剤は、補給用現像剤としても用いることもできる。この際のキャリアとトナーの混合比、即ちトナー濃度は100〜3000重量%に設定することが好ましい。
【0059】
上記のように調製された本発明に係る電子写真現像剤は、有機光導電体層を有する潜像保持体に形成されている静電潜像を、バイアス電界を付与しながら、トナー及びキャリアを有する二成分現像剤の磁気ブラシによって反転現像する現像方式を用いたデジタル方式のコピー機、プリンター、FAX、印刷機等に使用することができる。また、磁気ブラシから静電潜像側に現像バイアスを印加する際に、DCバイアスにACバイアスを重畳する方法である交番電界を用いるフルカラー機等にも適用可能である。
【0060】
以下、本発明を実施例等に基づき具体的に説明する。
【実施例1】
【0061】
MnO換算で39.7mol%、MgO換算で9.9mol%、Fe換算で49.6mol%及びSrO換算で0.8mol%になるように、各原材料を適量乾式混合し、乾式振動ミルにて2時間粉砕し、乾式造粒機にて約2cmの大きさを持つ造粒物を得て、ロータリーキルン炉を用い、950℃にて仮焼成を行い、仮焼成物を得た。再度、湿式ボールミルにて2時間粉砕したスラリーをスプレードライヤーにて造粒乾燥し、トンネルキルン炉窒素雰囲気中にて1300℃に3時間保持した後、解砕、粒度分布調整を経て、平均粒径40μmのMn−Mg−Srフェライトコアを得た。
【0062】
次に、メチルシリコーン樹脂を固形分換算で150g秤量し、300mlのトルエンに溶解させ、更に、帯電制御剤として3−アミノプロピルトリエトキシシランをメチルシリコーン樹脂の固形分に対して15.0重量%、密着向上剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランをメチルシリコーン樹脂の固形分に対して1.0重量%、チタンキレートとしてチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)をメチルシリコーン樹脂の固形分に対して25.0重量%、架橋剤としてメチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン(MTO)をメチルシリコーン樹脂の固形分に対して1.0重量%それぞれ添加し、コーティング溶液を得た。
【0063】
上記Mn−Mg−Srフェライトコア10kgに、ディップ式コーティング装置を用いて上記コーティング溶液をコーティングした(キャリア芯材粒子に対する被覆量1.5重量%)。その後、棚式箱型乾燥機にて、280℃にて2時間焼き付けを行い、解砕、粒度調整を経て、電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを得た。
【0064】
この樹脂被覆キャリアと市販のRicoh社製imagioNeoC455のブラックトナーを、トナー濃度7.5重量%の1kgの現像剤量になるように秤量を行った後、30分間撹拌を行い、電子写真現像剤を得た。この電子写真現像剤の帯電量を測定したところ、表3に示すように、35.7μC/gであった。
【0065】
更に、上記電子写真現像剤をターブラーミキサーにより48時間の攪拌試験を行った。48時間後の帯電量は表3に示すように、26.1μC/gであり、ほとんど帯電量低下が見られなかった。
【実施例2】
【0066】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、チタンキレートとしてチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)を被覆樹脂の固形分に対して5.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例3】
【0067】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、チタンキレートとしてチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)を被覆樹脂の固形分に対して50.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例4】
【0068】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、チタンキレートとしてチタンオクチロキシビス(オクチレングリコレート)を被覆樹脂の固形分に対して25.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例5】
【0069】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、帯電制御剤としてN−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを被覆樹脂の固形分に対して15.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例6】
【0070】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、帯電制御剤として四級アンモニウム塩錯体を被覆樹脂の固形分に対して15.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例7】
【0071】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、チタンキレートとしてチタンオクチロキシビス(オクチレングリコレート)を被覆樹脂の固形分に対して25.0重量%用い、かつ帯電制御剤を用いない以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例8】
【0072】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、帯電制御剤として3−アミノプロピルトリメトキシシランを被覆樹脂の固形分に対して1.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例9】
【0073】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、帯電制御剤として3−アミノプロピルトリメトキシシランを被覆樹脂の固形分に対して30.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例10】
【0074】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、チタンキレートとしてチタンオクチロキシビス(オクチレングリコレート)を被覆樹脂の固形分に対して25.0重量%用い、かつ帯電制御剤として3−アミノプロピルトリメトキシシランを被覆樹脂の固形分に対して40.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例11】
【0075】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、密着向上剤として3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランを被覆樹脂の固形分に対して1.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例12】
【0076】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、密着向上剤として2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを被覆樹脂の固形分に対して1.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例13】
【0077】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、チタンキレートとしてチタンオクチロキシビス(オクチレングリコレート)を被覆樹脂の固形分に対して25.0重量%用い、かつ密着向上剤を用いない以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例14】
【0078】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、密着向上剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを被覆樹脂の固形分に対して0.05重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例15】
【0079】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、密着向上剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを被覆樹脂の固形分に対して10.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例16】
【0080】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、チタンキレートとしてチタンオクチロキシビス(オクチレングリコレート)を被覆樹脂の固形分に対して25.0重量%用い、かつ密着向上剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを被覆樹脂の固形分に対して12.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例17】
【0081】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、架橋剤としてビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン(VTO)を被覆樹脂の固形分に対して1.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例18】
【0082】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、架橋剤を用いない以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例19】
【0083】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、架橋剤としてメチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン(MTO)を被覆樹脂の固形分に対して0.05重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例20】
【0084】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、架橋剤としてメチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン(MTO)を被覆樹脂の固形分に対して10.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例21】
【0085】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、架橋剤としてメチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン(MTO)を被覆樹脂の固形分に対して12.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例22】
【0086】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、被覆樹脂としてアクリル変性シリコーン樹脂を用い、キャリア芯材粒子に対するアクリル変性シリコーン樹脂の被覆量を1.5重量%とした以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【実施例23】
【0087】
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、被覆樹脂としてフッ素変性シリコーン樹脂を用い、キャリア芯材粒子に対するフッ素変性シリコーン樹脂の被覆量を1.5重量%とした以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【比較例】
【0088】
〔比較例1〕
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、チタンキレートとしてチタンテトラアセチルアセトネートを被覆樹脂の固形分に対して25.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【0089】
〔比較例2〕
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、チタンキレートとしてチタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)を被覆樹脂の固形分に対して25.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【0090】
〔比較例3〕
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、チタンキレートとしてチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)を被覆樹脂の固形分に対して2.5重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【0091】
〔比較例4〕
表1及び表2に示されるように、実施例1で用いたのと同様のキャリア芯材粒子を用い、チタンキレートとしてチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)を被覆樹脂の固形分に対して60.0重量%用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを製造した。
【0092】
実施例2〜23及び比較例1〜4の電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアについて、実施例1と同様にして電子写真現像剤を調製し、初期の帯電量を測定した。
【0093】
実施例1〜23及び比較例1〜4の樹脂被覆キャリアに用いた被覆樹脂(種類、被覆量)、架橋剤(種類、含有量)及びチタンキレート(種類、含有量)を表1に示すと共に、帯電制御剤(種類、含有量)及び密着向上剤(種類、含有量)を表2に示す。また、実施例1〜23及び比較例1〜4の帯電量(初期、48時間後、環境変化率、トナー濃度変動率)及び総合評価を表3に示す。これらの測定方法及び評価方法は下記の通りである。
【0094】
〔帯電量〕
帯電量は、Epping q/m−meter、PES−Laboratoriumu社製吸引式帯電量測定装置(メッシュ:795mesh、吸引圧:105±10mbar、吸引時間:90秒)により、初期及び48時間後の値を測定し求めた。また、環境変化率及びトナー濃度変動率は下記式に基づいて求めた。ここにおいて、HHは高温高湿(温度30〜35℃、相対湿度80〜85%)、LLは低温低湿(温度10〜15℃、相対湿度10〜15%)、T/Dは現像剤に対するトナーの濃度を示す。
【0095】
【数1】

【0096】
【数2】

【0097】
〔総合評価〕
総合評価は、良(○)、可(△)、不可(×)の3段階で評価した。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
【表3】

【0101】
表3の結果から明らかなように、実施例1〜23は、48時間後の帯電量の低下も少なく、環境変化率及びトナー濃度変動率も概ね良好であった。
【0102】
これに対し、比較例1〜3は、環境変化率及びトナー濃度変動率に劣り、比較例4は48時間後の帯電量の低下が大きく、いずれも使用に難があった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア及びこれを用いた電子写真現像剤によって、高耐久性で長期に使用しても帯電量劣化が少なく、且つ、帯電量の環境安定性に優れ、また、フルカラー化に伴う、印字率変動及びトナー濃度変動に対しても幅広く対応し、安定した画質が得られる。
【0104】
従って、本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア及びこれを用いた電子写真現像剤は、高画質の要求されるフルカラー機並びに画像維持の信頼性及び耐久性の要求される高速機等の分野に広く使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア芯材粒子表面にシリコーン樹脂又は変性シリコーン樹脂からなる被覆樹脂層を有し、かつ該被覆樹脂層中にチタンキレートとしてチタン−アセト酢酸エチルキレート又はチタン−オクチレングリコールキレートを含み、その含有量が被覆樹脂固形分に対して含有量が5.0〜50.0重量%であることを特徴とする電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア。
【請求項2】
上記被覆樹脂層に帯電制御剤、密着向上剤及び架橋剤が含有されている請求項1に記載の電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア。
【請求項3】
上記帯電制御剤がアミノシランカップリング剤であり、その含有量が被覆樹脂固形分に対して1.0〜30.0重量%であり、上記密着向上剤がエポキシ基含有シランカップリング剤であり、その含有量が被覆樹脂固形分に対して0.05〜10.0重量%であり、上記架橋剤がメチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン及び/又はビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シランであり、その含有量が被覆樹脂固形分に対して0.05〜10.0重量%である請求項1又は請求項2に記載の電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂被覆キャリアとトナーとからなる電子写真現像剤。
【請求項5】
補給用現像剤として用いられる請求項4に記載の電子写真現像剤。