説明

電子写真用トナーおよび画像形成装置

【課題】 記録媒体への転写性とクリーニング性とを高い水準で兼ね備え、また消費量が従来のトナーに比べて少ないにもかかわらず、高精細かつ高濃度の高画質画像を形成することができる電子写真用トナーを提供する。
【解決手段】 結着樹脂と着色剤とを含むトナー粒子のうち、粒径が2μm以上5μm以下であるトナー粒子の平均円形度が0.945以上0.975以下であり、かつ粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子における円形度が0.950以下のトナー粒子の含有率が、40個数%以下である電子写真用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用トナーおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は従来から複写機として普及し、最近ではコンピュータによって作成されるコンピュータ画像の出力装置としても優れた適性を有することから、コンピュータの普及に伴って、プリンタ、ファクシミリ装置などにも広く利用されている。電子写真方式の画像形成装置とは、一般に、感光体ドラム表面の感光層を均一に帯電させる帯電工程、帯電状態にある感光体ドラム表面に原稿像の信号光を投射して静電潜像を形成する露光工程、感光体ドラム表面の静電潜像に電子写真用トナー(以下単に「トナー」という)を供給して可視像化する現像工程、感光体ドラム表面の可視像を紙、OHPシートなどの記録媒体に転写する転写工程、可視像を加熱、加圧などにより記録媒体上に定着させる定着工程および可視像転写後の感光体ドラム表面に残留するトナーなどをクリーニングブレードにより除去して清浄化するクリーニング工程を実行して記録媒体上に所望の画像を形成する装置である。記録媒体への可視像の転写は、中間転写媒体を介して行われることもある。
【0003】
ところで、コンピュータに関する各種技術のさらなる向上によって、たとえば、コンピュータ画像の高精細化が進むに伴い、電子写真方式の画像形成装置にも、コンピュータ画像における微細な形状、微妙な色相の変化などを正確にかつ鮮明に再現し、コンピュータ画像に匹敵する高精細画像を形成することが要求される。この要求に応えるために、たとえば、トナーの小粒径化が図られ、画像の高精細化に有効な粒径5μm程度のトナーを製造するために種々の検討がなされている。
【0004】
このような小粒径トナーは、高精細画像の形成には有用であるけれども、微粉を多く含むので、転写効率が低いという欠点を有する。小粒径トナーは、たとえば粒径が5μmより大きいトナーに比べて、帯電性が高く、かつ比表面積が大きいので、感光体ドラムおよび中間転写媒体への付着力が強い。これによって小粒径トナーが記録媒体に転写し難くなり、記録媒体への可視像の転写後に感光体ドラムおよび中間転写媒体に残留するトナーの量が増大する。
【0005】
このような問題に鑑み、トナーを球形化することによって、感光体ドラムおよび中間転写媒体と、トナーとの接触面積を減少させ、トナーの転写効率を向上させる提案がなされている(たとえば、特許文献1〜3参照)。トナーは、不定形であるとクリーニングブレードに引っ掛かり易くクリーニング性は良好であるけれども、記録媒体への転写性が悪いので、高精細画像を安定的に形成できない。一方トナーが真球形に近くなると、転写性は向上するけれども、クリーニングブレードに引っ掛かり難くなり、クリーニング性が低下する。したがってトナーを球形化する技術では、転写性とクリーニング性とを高い水準で併せ持ち、かつ画像の高精細化に対応し得るトナー設計が必要である。
【0006】
特許文献1では、粒子径が3μm以上の粒子において円形度が0.90以上の粒子を90個数%以上有し、かつ円形度が0.98以上の粒子を30個数%有するトナーが提案されている。特許文献1のトナーは、転写性に優れ、しかも一旦記録媒体に転写されたトナーが感光体ドラムまたは中間転写媒体に再転写され難いという特性を有する。
【0007】
特許文献2では、転写性および耐久性に優れるトナーとして、円相当径3.00μm以上のトナー粒子における平均円形度が0.920以上0.950未満であり、円相当径3.00μm以上のトナー粒子における円形度0.960以上の個数頻度累積値が40%以下であり、円相当径3.00μm以上のトナー粒子における円形度0.920以下の個数頻度累積値が30%以下であるトナーが提案されている。
【0008】
特許文献3では、転写性および流動性に優れ、現像槽内に長期間貯留されても帯電性能などの低下が少なく、高画質画像を形成できるトナーの製造方法が提案されている。特許文献3に開示されるトナーの製造方法によって得られるトナーは、粉砕法によって得られ、体積平均粒子径が5.0〜8.5μmであり、円形度が0.955〜0.980である。
【0009】
特許文献1および2に開示されるトナーは、いずれも粒子径または円相当径(以下円相当径も粒子径に含めることとする)が3μm以上の粒子において円形度を規定したものである。また特許文献3に開示されるトナーは、体積平均粒子径が5.0〜8.5μmであるトナー全体の円形度を規定したものである。しかしながら、このような範囲のトナー粒子について円形度を規定しても、転写性を充分に向上させることができない場合がある。また特許文献1〜3においては、トナーの転写性のみに考慮が払われ、転写性とクリーニング性との両立については何ら考慮されない。
【0010】
感光体および中間転写媒体への付着力が強く、トナー全体の転写効率に影響を及ぼすのは、トナー粒子の中でも粒径が2〜5μmの小粒径の粒子である。したがって特許文献1および2に開示されるトナーのように、粒子径が3μm以上のトナーについて円形度を規定しても、また特許文献3に開示されるトナーのように、体積平均粒子径が5.0〜8.5μmであるトナー全体の円形度を規定しても、トナー全体の転写効率に影響を及ぼす小粒径のトナー粒子に対する形状の設計がなされなければ、転写効率の点で充分に満足できるトナーを得ることはできず、高画質化の点でも充分に満足できるトナーを得ることができない。
【0011】
【特許文献1】特開平10−97095号公報
【特許文献2】特開2005−107517号公報
【特許文献3】特開2005−215148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、記録媒体への転写性とクリーニング性とを高い水準で兼ね備え、また消費量が従来のトナーに比べて少ないにもかかわらず、高精細かつ高濃度の高画質画像を形成することができる電子写真用トナーおよび画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、結着樹脂および着色剤を含むトナー粒子である電子写真用トナーにおいて、
粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子における平均円形度が、0.945以上0.975以下であり、かつ粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子における円形度が0.950以下のトナー粒子の含有率が、40個数%以下であることを特徴とする電子写真用トナーである。
【0014】
また本発明は、トナー粒子全体の平均円形度が、0.955以上0.975以下であることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子は、トナー粒子全体の10個数%以上50個数%以下の割合で含まれることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、結着樹脂および着色剤を含む樹脂組成物の粉砕物を、球形化処理することによって得られることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記球形化処理では、
熱風によって、樹脂組成物の粉砕物が球形化されることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記熱風は、温度が、結着樹脂のガラス転移点よりも100〜170℃高い温度であることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記球形化処理では、
樹脂組成物の粉砕物が、機械的衝撃力によって球形化されることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記本発明の電子写真用トナーを用いて画像を形成することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、結着樹脂と着色剤とを含有し、特定の粒度と円形度とを有するトナー粒子を含む電子写真用トナー(以下単に「トナー」という場合がある)が提供される。本発明のトナーは、(a)粒径2μm以上5μm以下かつ平均円形度0.945以上0.975以下のトナー粒子を含むこと、および(b)粒径2μm以上5μm以下のトナー粒子における円形度0.950以下のトナー粒子の含有率が40個数%以下であることを特徴とする。粒径2μm以上5μm以下のトナー粒子は、たとえば粒径が5μmを超えるトナー粒子よりも比表面積が大きく、帯電性能が高いので、感光体および中間転写媒体への付着力が強く、トナー全体としての転写効率に影響を及ぼす。本発明のトナーにおいて、このような粒径2μm以上5μm以下のトナー粒子が前記(a)および(b)に示す特定の形状分布を持つことによって、記録媒体への転写性の向上と、クリーニング性の向上とが同時に達成される。また、本発明のトナーは、従来のトナーに比べて転写効率が高いので、トナー消費量の低減化が可能である。さらに、本発明のトナーは、少ないトナー消費量であっても、高精細かつ高濃度の高画質画像を形成できる。
【0022】
また本発明によれば、トナー粒子全体の平均円形度が0.955以上0.975以下であるので、トナー全体の転写効率に影響を及ぼす粒径が2μm以上5μm以下であるトナー粒子だけでなく、前記範囲外の粒径を有するトナー粒子も、好適な形状である。これによって記録媒体への転写性およびクリーニング性を一層向上させることができる。
【0023】
また本発明によれば、粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子が、トナー粒子全体の10個数%以上50個数%以下の割合で含まれる。これによって、画像の再現性および解像性を保持するとともに、トナー粒子の帯電量を一定の範囲に保持することができるので、形成される画像の画像品位を向上することができる。
【0024】
また本発明によれば、電子写真用トナーは、結着樹脂および着色剤を含む樹脂組成物の粉砕物を、球形化処理することによって得られる。すなわち、たとえば製造コストなどの点から有利な溶融混練粉砕法によって得られる樹脂組成物の粉砕物を、球形化処理することによって前記効果を達成するトナーを容易にかつ収率よく得ることができる。したがって前記効果を達成するトナーは、このように簡単な方法によって得ることができる。
【0025】
また本発明によれば、球形化処理では、熱風によって、樹脂組成物の粉砕物が球形化される。したがって前記効果を達成するトナーは、樹脂組成物の粉砕物を、熱風によって球形化することによって得ることができる。
【0026】
また本発明によれば、球形化処理では、樹脂組成物中の粉砕物に含まれる結着樹脂のガラス転移点よりも100〜170℃高い温度の熱風によって、樹脂組成物の粉砕物が球形化される。樹脂組成物の粉砕物を上記範囲の温度の熱風に接触させることによって、効率よく樹脂組成物の粉砕物の形状を好適な形状とすることができる。また特に粒径が5μm以下に粉砕された樹脂組成物の粉砕物を、効率よく好適な形状にすることができる。これによって、球形化された樹脂組成物の粉砕物であるトナー粒子のうち、粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子における平均円形度を、0.945以上0.975以下とするとともに、かつ粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子における円形度が0.950以下のトナー粒子の含有率を、40個数%以下とすることができる。
【0027】
また本発明によれば、球形化処理では、樹脂組成物の粉砕物が、機械的衝撃力によって球形化される。したがって前記効果を達成するトナーは、樹脂組成物の粉砕物を、機械的衝撃力によって球形化することによっても得ることができる。
【0028】
また本発明によれば、前記効果を達成する電子写真用トナーを用いて画像を形成する画像形成装置によって、良好な転写性およびクリーニング性を発揮するとともに、高精細かつ高濃度の高画質画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の電子写真用トナーは、結着樹脂および着色剤を含むトナー粒子であって、粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子における平均円形度が、0.945以上0.975以下であり、かつ粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子における円形度が0.950以下のトナー粒子の含有率が、40個数%以下であることを特徴とする。
【0030】
粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子における平均円形度が、0.945以上0.975以下であることによって、トナー全体の転写効率に影響を及ぼす粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子が好適な形状であり、記録媒体への転写性を損なうことがなく、また良好なクリーニング性が発揮される。さらにこのようなトナーは、粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子の平均円形度が規定されないトナーに比べて転写効率が高いので、トナーの消費量を低減しても、高精細かつ高濃度の高画質画像を形成することができる。
【0031】
粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子における平均円形度が0.945未満であると、トナー粒子の形状が不定形となり、トナー粒子と感光体ドラムおよび中間転写媒体との接触面積が大きくなり、トナー粒子と感光体ドラムおよび中間転写媒体との付着力が増大する。これによって感光体ドラムまたは中間転写媒体に形成されるトナー像の記録媒体への転写効率が低下し、形成画像に白抜けなどが発生するおそれがある。
【0032】
粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子における平均円形度が0.975を超えると、トナー粒子の形状が真球に近い形状となり、トナー粒子がクリーニングブレードに引っ掛かり難くなる。これによって、クリーニング性が低下し、記録媒体へのトナー像の転写後に感光体ドラム表面に残留するトナー粒子の除去が困難になる。
【0033】
また本発明のトナーは、粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子における円形度が0.950以下のトナー粒子の含有率が、40個数%以下、好ましくは20個数%以上40個数%以下である粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子において、円形度が0.950以下のトナー粒子の含有率が40個数%以下であると、円形度が低く、転写効率が低いトナー粒子の含有率が規定範囲以下に抑制され、円形度の分布を狭くすることができるので、転写効率の向上を図ることができる。
【0034】
粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子において、円形度が0.950以下のトナー粒子の含有率が40個数%を超えると、記録媒体への転写性が低下し、形成された画像に白抜けが発生しやすくなる。また転写後、感光体にトナーが残留しやすく、残留トナーの量が多くなり過ぎると、クリーニングブレードによるクリーニング工程において完全に残留トナーを除去することが困難となる。これによって、次の画像形成に用いられる記録媒体に、クリーニング工程においても除去されなかった残留トナーが現像されるおそれがある。さらに不定形のトナーは、同じ体積の真球形状のトナーに比べて比表面積が大きく、帯電し易いので、トナーが画像形成装置内で飛散しやすい。
【0035】
本発明のトナーは、トナー粒子全体の平均円形度が、0.955以上0.975以下であることが好ましい。トナー粒子全体の平均円形度が上記の範囲内であると、トナー全体の転写効率に影響を及ぼす粒径が2μm以上5μm以下であるトナー粒子だけでなく、前記範囲外の粒径を有するトナー粒子も、好適な形状である。これによって記録媒体への転写性およびクリーニング性を一層向上させることができる。トナー粒子全体の平均円形度が0.955未満であると、転写性が低下し、トナー粒子全体の平均円形度が、0.975を超えると、クリーニング性が低下する。
【0036】
また本発明のトナーには、粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子が、トナー粒子全体の10個数%以上50個数%以下の割合で含まれることが好ましい。粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子が10個数%以上50個数%以下の割合で含まれると、画像の再現性および解像性を保持するとともに、トナー粒子の帯電量を一定の範囲とすることができるので、形成される画像の画像品位を向上することができる。
【0037】
2μm以上5μm以下のトナー粒子の含有率が10個数%未満であると、2μm以上5μm以下の小粒径のトナー粒子の含有率が低く、画像の再現性および解像性が得られないおそれがある。また2μm以上5μm以下のトナー粒子の含有率が50個数%を超えると、2μm以上5μm以下の小粒径のトナー粒子の含有率が高く、トナーの帯電量分布が広くなる。これによって、画像かぶり、感光体のクリーニング不良などの問題が発生し、形成される画像に悪影響を及ぼすおそれがある。またトナー粒子の凝集体が形成されやすくなり、画像に白抜けなどの画像欠陥が発生するおそれがある。
【0038】
また本発明のトナーの体積平均粒径は、3μm以上8μm以下である。トナーの体積平均粒径が3μm未満であると、トナーの粒径が小さくなり過ぎ、高帯電化および低流動化が起こるおそれがある。この高帯電化および低流動化が発生すると、感光体にトナーを安定して供給することができなくなり、地肌かぶりおよび画像濃度の低下などが発生するおそれがある。トナーの体積平均粒径が8μmを超えると、トナーの粒径が大きいので、高精細な画像を得ることができない。またトナーの粒径が大きくなることによって比表面積が減少し、トナーの帯電量が小さくなる。トナーの帯電量が小さくなると、トナーが感光体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生するおそれがある。
【0039】
本明細書において、トナー粒子の円形度(ai)は、下記式(1)によって定義される。式(1)に定義されるような円形度(ai)は、たとえばシスメックス株式会社製フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」を用いることによって測定される。またm個のトナー粒子について測定した各円形度(ai)の総和を求め、総和をトナー粒子数mで除算する式(2)によって得られる算術平均値を平均円形度(a)と定義する。
円形度(ai)=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)
/(粒子の投影像の周囲の長さ) …(1)
【0040】
【数1】

【0041】
前記測定装置「FPIA−3000」では、各トナー粒子の円形度(ai)を算出後、得られた各トナー粒子の円形度(ai)を、円形度を0.40〜1.00まで0.01毎に61分割した各分割範囲に分けて頻度を求め、各分割範囲の中心値と頻度とを用いて平均円形度の算出を行うという簡易算出法を用いている。この簡易算出法で算出される平均円形度の値と、前記式(2)で与えられる平均円形度(a)の値との誤差は、非常に小さく実質的に無視出来る程度のものなので、本実施の形態では、簡易算出法による平均円形度を、前記式(2)で定義される平均円形度(a)として取扱う。
【0042】
平均円形度(ai)の具体的な測定方法は、以下のとおりである。界面活性剤を約0.1mg溶解している水10mLに、トナー5mgを分散させて分散液を調製し、周波数20kHz、出力50Wの超音波を分散液に5分間照射し、分散液中のトナー粒子濃度を5000〜20000個/μLとして、前記装置「FPIA−3000」により円形度(ai)の測定を行い、平均円形度(a)を求めた。
【0043】
また粒径とは、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター株式会社製)によって測定した体積粒径である。この装置によれば、トナー粒子を真球であるとみなし、トナー粒子の体積からトナー粒子の粒径を算出する。粒径の測定条件を以下に示す。
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン1.19(ベックマン・コールター株式会社製)
電解液:アイソトンII(ベックマン・コールター株式会社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテルHLB13.6)5%
電解液分散条件:分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mlと分散液を加え、3万個の粒子を20秒間で測定し終える濃度条件で、粒子の粒径を20秒間測定する。
【0044】
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤およびその他のトナー添加成分を含む。その他のトナー添加成分としては、たとえば、離型剤、帯電制御剤などが挙げられる。
【0045】
結着樹脂としては、特に限定されるものではなく、ブラックトナーまたはカラートナー用の結着樹脂を使用することができる。結着樹脂としては、たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレンおよびスチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。また原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応させて得られる樹脂を用いてもよい。結着樹脂は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。
【0046】
着色剤としては、たとえば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、シアントナー用着色剤、およびブラックトナー用着色剤などが挙げられる。
【0047】
イエロートナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15、およびC.I.ピグメントイエロー17などのアゾ系顔料、黄色酸化鉄および黄土などの無機系顔料、C.I.アシッドイエロー1などのニトロ系染料、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19、およびC.I.ソルベントイエロー21などの油溶性染料などが挙げられる。
【0048】
マゼンタトナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10、およびC.I.ディスパーズレッド15などが挙げられる。
【0049】
シアントナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー25、およびC.I.ダイレクトブルー86などが挙げられる。
【0050】
ブラックトナー用着色剤としては、たとえば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、およびアセチレンブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。これら各種カーボンブラックの中から、得ようとするトナーの設計特性に応じて、適切なカーボンブラックを適宜選択すればよい。
【0051】
これらの顔料以外にも、紅色顔料、緑色顔料などを使用できる。着色剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。また、同色系のものを2種以上用いることができ、異色系のものをそれぞれ1種または2種以上用いることもできる。
【0052】
着色剤は、マスターバッチとして使用されることが好ましい。着色剤のマスターバッチは、たとえば、合成樹脂の溶融物と着色剤とを混練することによって製造することができる。合成樹脂としては、トナーの結着樹脂と同種の樹脂またはトナーの結着樹脂に対して良好な相溶性を有する樹脂が使用される。合成樹脂と着色剤との使用割合は特に制限されないけれども、好ましくは合成樹脂100重量部に対して30重量部以上100重量部以下である。マスターバッチは、たとえば粒径2〜3mm程度に造粒されて用いられる。
【0053】
本発明のトナーにおける着色剤の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して4重量部以上20重量部以下である。マスターバッチを用いる場合、本発明のトナーにおける着色剤の含有量が前記範囲になるように、マスターバッチの使用量を調整することが好ましい。着色剤を前記範囲で用いることによって、充分な画像濃度を有し、発色性が高く画像品位に優れる良好な画像を形成することができる。
【0054】
本発明のトナーには、結着樹脂および着色剤の他に、離型剤などのその他のトナー添加成分が含有されてもよい。離型剤を含有させることによって、オフセット防止効果を高めることができる。離型剤としては、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、ならびにマイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、低分子ポリプロピレンワックスおよびその誘導体、ならびにポリオレフィン系重合体ワックスおよびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸などが挙げられる。誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、およびビニル系モノマーとワックスとの共重合物などが含まれる。離型剤の使用量は特に限定されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.2重量部以上20重量部以下である。
【0055】
本発明のトナーには、結着樹脂および着色剤の他に、帯電制御剤などのその他のトナー添加成分が含有されてもよい。帯電制御剤の添加によって、トナーの摩擦帯電量を好適にすることができる。帯電制御剤としては、正電荷制御用または負電荷制御用の帯電制御剤を使用できる。正電荷制御用の帯電制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、およびアミジン塩などが挙げられる。負電荷制御用の帯電制御剤としては、たとえば、オイルブラックおよびスピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、ならびに樹脂酸石鹸などが挙げられる。帯電制御剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。帯電制御剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上3重量部以下である。
【0056】
本発明のトナーは、たとえば、結着樹脂および着色剤を含む樹脂組成物の粉砕物を、球形化処理することによって得ることができる。結着樹脂および着色剤を含む樹脂組成物は、たとえば、結着樹脂および着色剤を含む原料を溶融混練することによって得られる。
【0057】
溶融混練では、たとえば、前述の結着樹脂および着色剤ならびに必要に応じて添加される離型剤、帯電制御剤などのトナー添加成分を含む原料を、混合機で乾式混合した後、結着樹脂の軟化点以上、熱分解温度未満の温度に加熱して溶融混練し、結着樹脂を溶融または軟化させて結着樹脂に結着樹脂以外のトナー原料を分散させる。結着樹脂および着色剤を含む原料は、乾式混合されることなくそのまま溶融混練されてもよい。ただし乾式混合した後に溶融混練する方が、着色剤などの結着樹脂以外の原料の結着樹脂中での分散性を向上させ、得られるトナーの帯電性能などの特性を均一にすることができるので好ましい。
【0058】
乾式混合に用いられる混合機としては、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサー(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
【0059】
溶融混練には、ニーダ、二軸押出機、二本ロールミル、三本ロールミル、およびラボブラストミルなどの混練機を用いることができ、このような混練機としては、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機などが挙げられる。トナー原料は、複数の混練機を用いて溶融混練されても構わない。溶融混練にて得られる溶融混練物を冷却し、固化させて結着樹脂および着色剤を含む樹脂組成物を得る。
【0060】
溶融混練によって得られた樹脂組成物は、ハンマーミルまたはカッターミルなどによって、たとえば100μm〜5mm程度の粒径を有する粗粉砕物に粉砕される。その後、このような粗粉砕物を、たとえば15μm以下の粒径の微粉体にまでさらに粉砕する。粗粉砕物の粉砕には、たとえば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に粗粉砕物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機などを用いることができる。
【0061】
このようにして得られた結着樹脂および着色剤を含む樹脂組成物の粉砕物を球形化処理することによって、本発明のトナーを得ることができる。球形化処理としては、たとえば、熱風によって樹脂組成物の粉砕物を球形化する方法、樹脂組成物の粉砕物を機械的衝撃力によって球形化する方法などが挙げられる。以下熱風によって樹脂組成物の粉砕物を球形化する方法について説明する。
【0062】
図1は、熱風式球形化装置1の構成を簡略化して示す断面図である。図1における熱風式球形化装置1の断面図は、分散ノズル3まわりを分散ノズル3の延びる方向に平行な一平面で切断し、処理槽2の部分を処理槽2の軸線方向に平行な一平面で切断したときの断面図である。熱風式球形化装置1は、樹脂組成物の粉砕物を熱風によって球形化する。熱風式球形化装置1は、処理槽2と、分散ノズル3と、熱風噴射ノズル4と、冷却エア取入口5とを含んで構成される。
【0063】
処理槽2は、軸線方向の底面が下部に至るに従って小径となるテーパ状をなす略円筒形状の処理容器である。処理槽2は、軸線方向が鉛直方向に略一致するように設けられる。処理槽2には、その上部に分散ノズル3および熱風噴射ノズル4が設けられ、処理槽2の外周部に冷却エア取入口5が形成される。また処理槽2の底面には、球形化された樹脂組成物の粉砕物を排出する排出口6が形成される。
【0064】
分散ノズル3は、樹脂組成物の粉砕物を定量供給する粉砕物供給手段7に接続され、樹脂組成物の粉砕物を空気とともに処理槽2に噴射する。本実施の形態の分散ノズル3は、図1においては1個しか図示しないけれども、処理槽2の円周方向に等間隔に4個が設けられ、分散ノズル3の噴射口が処理槽2の軸線から遠ざかるように、処理槽2の軸線方向に対して45°傾斜した方向に粉砕物を噴射する。
【0065】
分散ノズル3の周囲には、二次エア噴射ノズル8が設けられる。二次エア噴射ノズル8は、ポンプなどから構成される二次エア供給手段9によって供給される空気を処理槽2の内部に設けられる衝突部材10に向けて噴射する。二次エア噴射ノズル8から噴射される空気は、加熱、冷却などがなされない空気であってよい。分散ノズル3から噴射された粉砕物は、二次エア噴射ノズル8から噴射される空気によって、処理槽2の内部に設けられる衝突部材10に向かう。
【0066】
処理槽2の内部に設けられる衝突部材10は、分散ノズル3から噴射される粉砕物を衝突によって分散させる分散板である。衝突部材10としては、たとえば円形の板状部材を用いることができるけれども、衝突部材10の形状はこれに限定されることなく、たとえば、上端が尖頭形状を有する円錐形、円錐台形、上下が尖頭形状を有する円錐形などであってもよい。
【0067】
熱風噴射ノズル4は、分散ノズル3および二次エア噴射ノズル8の周囲に設けられる。熱風噴射ノズル4は、ヒータなどの加熱手段によって加熱された空気を供給する熱風供給手段11に接続され、処理槽2に熱風を噴射する。樹脂組成物の粉砕物と、熱風との混合物は、処理槽2の内部において矢符20a,20bの方向に流過する。
【0068】
熱風噴射ノズル4によって噴射される熱風の温度は、得ようとするトナー粒子の円形度に応じて決定される。本発明のトナーを製造する場合、熱風の温度は、結着樹脂のガラス転移点よりも100〜170℃高い温度、すなわち結着樹脂のガラス転移点+100℃以上、結着樹脂のガラス転移点+170℃以下の温度であることが好ましい。このような温度の熱風を噴射することによって、効率よく樹脂組成物の粉砕物の形状を好適な形状とすることができる。また特に粒径が5μm以下に粉砕された樹脂組成物の粉砕物を、効率よく好適な形状にすることができる。これによって、球形化された樹脂組成物の粉砕物であるトナー粒子のうち、粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子における平均円形度を、0.945以上0.975以下とするとともに、かつ粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子における円形度が0.950以下のトナー粒子の含有率を、40個数%以下とすることができる。
【0069】
熱風噴射ノズル4によって噴射される熱風の温度が結着樹脂のガラス転移点+100℃未満であると、粉砕物のうち、たとえば粒径が5μm以下の小さい粉砕物を球形化することはできるけれども、粒径が5μmを超える大きい粉砕物を球形化することができないおそれがある。これによって、トナー粒子全体の平均円形度を、0.955以上とすることができないおそれがある。また熱風噴射ノズル4によって噴射される熱風の温度が結着樹脂のガラス転移点+170℃を超えると、熱風によって粉砕物に含まれる結着樹脂などが軟化し、粉砕物同士が凝集するおそれがある。
【0070】
ただし樹脂組成物の粉砕物に後述の外添剤を付着させることによって、熱風の温度を、結着樹脂のガラス転移点+170℃より高い温度とすることができる。球形化処理の前に外添剤を予め付着させておくと、粉砕物の凝集を防止することができ、熱風の温度を高めることができる。熱風の温度を高くすることができると、粒径が5μm以上の粉砕物を確実に球状化することができ、トナー粒子全体の平均円形度を大きくすることができる。ただし形化処理の前に外添剤を予め付着させる場合は、熱風の上限温度をガラス転移点+160℃とすることが好ましい。この上限温度を超えると、粉砕物に外添剤を付着させたとしても、粉砕物の形状がほぼ真球となり、トナー粒子として用いたときにクリーニング性が低下する。
【0071】
二次エア噴射ノズル8の外周には、熱風噴射ノズル4内を流動する熱風との接触によって分散ノズル3が樹脂組成物の粉砕物に含まれる結着樹脂の軟化点以上に昇温するのを防止するための冷却ジャケット12が設けられる。冷却ジャケット12には、冷媒入口13と冷媒出口14とが設けられ、冷媒入口13は冷媒供給手段15に接続される。冷媒入口13を介して冷媒供給手段15から冷却ジャケット12内に冷媒を供給することによって二次エア噴射ノズル8および分散ノズル3を冷却し、冷却後の冷媒を冷媒出口14から流出させる。冷媒としては、冷却装置によって10℃以下に冷却された水、空気、空気以外の気体などを用いることができる。
【0072】
冷却エア取入口5は、冷却空気供給手段16によって供給された冷却空気を処理槽2の内部に流入させる。冷却エア取入口5は、冷却空気供給手段16に接続され、この装置から発生される冷却空気を処理槽2内部に取入れる。冷却エア取入口5にはフィルタ17が設けられる。冷却エア取入口5と、衝突部材10が分散ノズル3を臨む側の面との距離L(以下単に「冷却エア取入口5と衝突部材10との距離L」という)は、処理槽2の大きさ、単位時間当りの粉砕物の処理量などによってその好ましい距離が決定される。たとえば処理槽2の内径が3cmであり、粉砕物の処理量が毎時36kgである場合、冷却エア取入口5と、衝突部材10との距離Lは、1cm以上2.5cm以下であることが好ましい。冷却エア取入口5と、衝突部材10との距離Lが1cm未満であると、距離が短くなり過ぎ、粉砕物を球形化できない。冷却エア取入口5と、衝突部材10との距離Lが2.5cmを超えると、距離が長くなり過ぎ、粉砕物が球形化されてなるトナー粒子の円形度が大きくなり過ぎる。
【0073】
以上のような構成を有する熱風式球形化装置1は、次のようにして樹脂組成物の粉砕物を球形化する。まず、熱風噴射ノズル4から処理槽2内に熱風を噴射するとともに、冷却ジャケット12内に冷媒を流動させる。次いで、分散ノズル3から樹脂組成物の粉砕物と空気との固気混合流体を噴射する。
【0074】
分散ノズル3から樹脂組成物の粉砕物を噴射すると、その粉砕物は衝突部材10に衝突する。樹脂組成物の粉砕物は、衝突部材10への衝突と、二次エア噴射ノズル8から噴射される空気とによって分散されるので、樹脂組成物の粉砕物同士が接触しない状態で、樹脂組成物の粉砕物が熱風中に供給される。ここで、熱風は結着樹脂のガラス転移点よりも100〜170℃高い温度と高温であり、この高温の領域において樹脂組成物の粉砕物の表面が溶融し、球形化される。
【0075】
樹脂組成物の粉砕物の表面が溶融し、球形化されると、冷却エア取入口5から冷却された空気が処理槽2内に流入する。この冷却された空気によって、球形化処理された樹脂組成物の粉砕物が冷却され、固化する。また冷却エア取入口5から流入する冷却された空気によって、処理槽2の内壁が冷却されるので、球形化処理された粉砕物が処理槽2の内壁に付着することなく、処理槽2の下部に形成される排出口6から排出される。
【0076】
以上のようにして、樹脂組成物の粉砕物が球形化される。熱風式球形化装置1によれば、溶融した粉砕物同士の接触が防止されるので、球形化処理前の粉砕物の平均粒子径と、球形化処理後の粉砕物の平均粒子径とには差がなく、粉砕物同士が融着することなく球形化処理が行われる。またこのような熱風式球形化装置1では、粉砕物のうち、表面積の小さいものが球形化されやすく、これによって特に粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子の形状が好ましい形状となるように適宜条件を設定し、球形化することが可能である。粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子の形状が好ましい形状となるような条件は、たとえば、熱風の温度および供給量、冷却空気の供給量、冷却エア取入口5の形成される位置などの条件である。
【0077】
また熱風式球形化装置1は、非常に簡単な構成でコンパクトであるとともに、処理槽2内壁の温度上昇が抑制されるので、製品収率が高い。また以上のような構成の熱風式球形化装置1は、開放型であるので、粉塵爆発のおそれがほとんどなく、瞬時に熱風によって処理されるので、粉砕物同士の凝集もなく、粉砕物全体が均一に処理される。
【0078】
以上のような熱風式球形化装置1としては、市販されているものを使用することもでき、たとえば、表面改質機メテオレインボー(商品名、日本ニューマチック工業株式会社製)などを用いることができる。
【0079】
熱風式球形化装置1による球形化は、前述のように球形化処理前の粉砕物の平均粒子径と、球形化処理後の粉砕物の平均粒子径とには差がないので、たとえば2μm未満の微粉が含まれた状態である。したがってトナー粒子から微粉を除去するために、分級を行うことが好ましい。分級は、熱風式球形化装置1による球形化処理の前に行われてもよく、球形化処理の後に行われてもよい。
【0080】
分級は、トナー粒子全体の体積平均粒径が3μm以上8μm以下となるように行われる。さらに分級の条件を適宜調整し、粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子が、トナー粒子全体の10個数%以上50個数%以下の割合で含まれるように分級することが好ましい。適宜調整すべき分級の条件とは、たとえば、旋回式風力分級機(ロータ式分級機)におけるロータの回転速度などである。
【0081】
また前述のように、樹脂組成物の粉砕物の球形化には、樹脂組成物の粉砕物を機械的衝撃力によって球形化する方法を用いることもできる。以下機械的衝撃力によって樹脂組成物の粉砕物を球形化する方法について説明する。
【0082】
図2は、衝撃式球形化装置21の構成を簡略化して示す断面図である。図3は、衝撃式球形化装置21に設けられる分級ロータ25の構成を示す斜視図である。衝撃式球形化装置21は、樹脂組成物の粉砕物を機械的衝撃力によって球形化する。衝撃式球形化装置21は、処理槽22と、粉砕物投入部23と、トナー粒子排出部24と、分級ロータ25と、微粉排出部26と、分散ロータ27と、ライナ28と、仕切り部材29とを含む。
【0083】
処理槽22は、略円筒形状の処理容器である。処理槽22の内部には、上部に分級ロータ25が設けられ、側壁に粉砕物投入部23の粉砕物投入口30、およびトナー粒子排出部24のトナー粒子排出口31が形成される。また微粉排出部26の微粉排出口32が処理槽22の分級ロータ25よりも上部の側壁に形成される。処理槽22内の底部には、分散ロータ27およびライナ28が設けられる。さらに本実施の形態では、処理槽22の底部には、冷却空気を流入させる冷却エア流入口33が形成される。本実施の形態の処理槽22の内径は、20cmである。
【0084】
粉砕物投入部23は、粉砕物供給手段34と、輸送管路35と、粉砕物投入口30とを含む。粉砕物供給手段34は、図示しない貯留容器と、図示しない振動フィーダと、図示しない圧縮空気導入ノズルとを含む。貯留容器は内部空間を有する容器状部材であり、その内部空間に樹脂組成物の粉砕物を一時的に貯留する。また、貯留容器の一側面または底面には輸送管路35の一端が接続され、これによって、貯留容器の内部空間と輸送管路35の内部空間が連通する。振動フィーダはその振動によって貯留容器を振動させるように設けられ、貯留容器内の樹脂組成物の粉砕物を輸送管路35内に供給する。圧縮空気導入ノズルは、輸送管路35の貯留容器との接続部近傍において輸送管路35に接続するように設けられ、圧縮空気を輸送管路35内に供給し、輸送管路35内における樹脂組成物の粉砕物の粉砕物投入口30に向けての流過を促進する。輸送管路35は、一端が貯留容器に接続され、他端が粉砕物投入口30に接続されるように設けられるパイプ状部材である。輸送管路35は、貯留容器から供給される樹脂組成物の粉砕物と圧縮空気導入ノズルから供給される圧縮空気との混合物を、粉砕物投入口30から処理槽22の内部に向けて噴出させる。
【0085】
このような粉砕物供給手段34によれば、まず、圧縮空気導入ノズルから輸送管路35に圧縮空気を導入するとともに、供給部の容器内に貯留される粉砕物を、振動フィーダにより振動させることによって、貯留容器から輸送管路に供給する。輸送管路に供給される粉砕物は、圧縮空気導入ノズルから導入される圧縮空気によって圧送され、輸送管路35の空気導入方向下流側に接続される粉砕物投入口30から処理槽22内に導入される。
【0086】
トナー粒子排出部24は、トナー粒子排出弁36と、トナー粒子排出口31とを含む。トナー粒子排出部24は、処理槽22内で球形化された粉砕物であるトナー粒子を処理槽22の外部に排出する。トナー粒子排出弁36は、予め定める処理時間経過後に開放され、トナー粒子排出弁36が開放されることによって、トナー粒子排出口31から処理槽22内で球形化された粉砕物であるトナー粒子が排出される。
【0087】
分級ロータ25は、粉砕物投入部23から投入された粉砕物のうち、たとえば粒径が2μm未満の微粉を排出するためのロータである。分級ロータ25は、粉砕物に与えられる遠心力が粉砕物の重量によって異なることを利用して、粉砕物を粒径に応じて分級する。
【0088】
本実施の形態では、分級ロータ25は第1分級ロータ25aと、第2分級ロータ25bとを含んで構成される。第2分級ロータ25bは、第1分級ロータ25aの下部に設けられ、第1分級ロータ25aと同方向に回転する。このように、第1分級ロータ25aの下部に第2分級ロータ25bが設けられることによって、粉砕物の凝集が生じた場合であっても、この凝集した粉砕物を効果的に分散させることができ、確実に微粉を除去することができる。
【0089】
処理槽22内における分級ロータ25の上方には、微粉排出口32が形成され、分級ロータ25によって分級された微粉が排出される。微粉排出部26は、この微粉排出口32と、微粉排出弁37とを含んで構成され、粉砕物の球形化処理中、この微粉排出弁37は開放される。
【0090】
処理槽22内の下部には、分散ロータ27およびライナ28が設けられる。分散ロータ27は円形板状部材と支持軸とからなる。円形板状部材はその円形の表面が処理槽22の底面に対して平行になるように支持軸によって軸支される。円形板状部材の鉛直方向上面の外周部には、ブレード38が設けられる。支持軸は、一端が円形板状部材の鉛直方向下面に接続され、他端が図示しない駆動手段に接続され、円形板状部材を軸支するとともに、駆動手段の分級ロータ25と同方向の回転駆動を円形板状部材に伝達する。これによって、分散ロータ27は分級ロータ25と同方向に回転する。ライナ28は、処理槽22の内壁面であって、分散ロータ27における円形板状部材およびブレード38の鉛直方向側面を臨む位置に、該内壁面に接して固定されるように設けられる板状部材である。ブレード38の分散ロータ27における円形板状部材およびブレード38の鉛直方向側面を臨む表面には、1または複数の鉛直方向に略平行に延びる溝が設けられる。
【0091】
分散ロータ27とライナ28との間隔d1は、1.0mm以上3.0mm以下である。分散ロータ27とライナ28との間隔d1がこのような範囲であると、装置の負担を増大させることなく、前述のような形状のトナーを容易に製造することができる。分散ロータ27とライナ28との間隔d1が1.0mm未満であると、球形化処理中に粉砕物がさらに粉砕され、熱によって粉砕物が軟化するおそれがある。軟化した粉砕物は、トナー粒子の変性を招来し、また分散ロータ27、ライナ28などに付着することによって、装置の負荷が増大する。これによって、トナーの生産性が低下する。分散ロータ27とライナ28との間隔d1が3.0mmを超えると、円形度の高いトナー粒子を得るために、分散ロータ27の回転速度を大きくする必要があり、これによっても粉砕物がさらに粉砕される。粉砕物の過粉砕が生じると、粉砕物が軟化し、前述と同様の問題を生じる。
【0092】
処理槽22内の分散ロータ27よりも上方には、仕切り部材29が設けられる。仕切り部材29は、処理槽22内を第1の空間39と第2の空間40とに仕切るための略円筒形状の部材であり、その半径方向の寸法は、分散ロータ27の寸法よりも小さく、分級ロータ25の寸法よりも大きい。第1の空間39は、処理槽22内の処理槽22半径方向における内壁面側の空間である。第2の空間40は、処理槽22内の処理槽22半径方向における内壁面とは反対側の空間である。第1の空間39は、投入された粉砕物、および球形化された粉砕物を分級ロータ25に導くための空間である。第2の空間40は、粉砕物を分散ロータ27およびライナ28によって球形化するための空間である。
【0093】
仕切り部材29の処理槽22半径方向における内壁面側の端部(以下「仕切り部材29の端部」という)と、処理槽22の内壁面との間隔d2は、20.0mm以上60.0mm以下であることが好ましい。処理槽22の内壁面との間隔d2がこのような範囲であると、装置の負担を増大させることなく、球形化処理が効率良く短時間で実施できる。仕切り部材29の端部と処理槽22の内壁面との間隔d2が20.0mm未満であると、第2の空間40の領域が大きくなり過ぎ、第2の空間40で旋回している粉砕物の滞留時間が短くなり、粉砕物の球形化が充分に行われないおそれがある。これによって、トナー粒子の生産性が低下するおそれがある。仕切り部材29の端部と処理槽22の内壁面との間隔d2が60.0mmを超えると、分散ロータ27付近での粉砕物の滞留時間が長くなり、球形化処理中に粉砕物がさらに粉砕されて粉砕物表面が溶融するおそれがある。これによって、粉砕物表面の変質、装置内での粉砕物の融着が生じるおそれがある。
【0094】
本実施の形態では、分散ロータ27よりも鉛直方向下方の処理槽22の底部に、冷却空気を流入させる冷却エア流入口33が形成される。冷却エア流入口33は、冷却処理によって冷却された空気を処理槽22の内部に流入させる。冷却エア流入口33は、冷却空気供給手段16に接続され、この装置から発生される冷却空気を処理槽22内部に取入れる。
【0095】
処理槽22内部は、ブレード38、ライナ28、処理槽22の内壁面、仕切り部材29などに対する粉砕物の衝突によって温度が上昇する。冷却エア流入口33は、処理槽22内に冷却空気を流入させることによって処理槽22内の温度を低下させる。冷却空気の温度および供給流量は特に限定されないけれども、分散ロータ27の回転速度、処理槽22の大きさなどに応じて定められ、処理槽22内の温度が樹脂組成物に含まれる結着樹脂のガラス転移点以下の温度、たとえば20〜40℃となるように決定される。処理槽22内の温度は、処理槽22内部に温度計を設けることによって測定してもよく、また微粉排出口32から微粉とともに排出される空気の温度が処理槽22内の温度に略一致するので、この温度を測定することによって得てもよい。本実施の形態では、0〜2℃の冷却空気を流入させる。このとき、微粉排出口32から微粉とともに排出される空気の温度は50℃程度となる。
【0096】
以上のような構成を有する衝撃式球形化装置21は、次のようにして樹脂組成物の粉砕物を球形化する。まず、分級ロータ25および分散ロータ27が回転され、微粉排出弁37が開放された状態で、粉砕物投入部23によって所定量の粉砕物を処理槽22内に投入する。粉砕物は、処理槽22内の第1の空間39に投入される。粉砕物投入部23から投入される粉砕物の量は、処理槽22の大きさ、分散ロータ27の回転速度などによって決定される装置の処理能力に応じて決定される。粉砕物投入部23から投入された粉砕物は、分級ロータ25および分散ロータ27の回転によって第1の空間39において旋回しながら矢符41で示すように処理槽22上部に向かい、分級ロータ25まで達する。
【0097】
分級ロータ25まで上昇した粉砕物は、分級ロータ25の回転によって旋回し、粉砕物に遠心力が付与される。ここで、重量の小さい粉砕物は、作用する遠心力が、重量の大きい粉砕物に作用する遠心力よりも小さいことによって、分級ロータ25内を通って微粉排出口32から排出される。微粉排出口32から排出されなかった粉砕物は、第2の空間40において旋回しながら矢符42方向に下降する。粉砕物は、分散ロータ27まで下降すると、分散ロータ27のブレード38との衝突、ライナ28との衝突などによって球形化され、再び第1の空間39に移動する。
【0098】
第1の空間39に移動した粉砕物は、再び分級ロータ25まで上昇し、粉砕物のうち重量の小さいものが微粉排出口32から排出される。粉砕物のうち微粉排出口32から排出されないものは、再び第2の空間40で旋回し、分散ロータ27に向けて下降して球形化される。
【0099】
以上を繰返し、予め定める時間経過後、トナー粒子排出部24のトナー粒子排出弁36を開放する。トナー粒子排出弁36が開放されると、第1の空間39に存在する粉砕物がトナー粒子排出口31から排出される。このトナー粒子排出口31から排出された粉砕物は、球形化処理が行われた粒子であり、これがトナー粒子となる。以上のようにして、粉砕物の球形化を実施することができる。
【0100】
球形化処理を実施する時間は、特に限定されないけれども、5秒以上240秒以下であることが好ましく、30秒以上240秒以下であることがさらに好ましい。球形化処理を実施する時間が5秒以上240秒以下であると、前述のような本発明のトナーを得ることが容易となる。球形化処理を実施する時間が30秒以上240秒以下であると、粉砕物全体を均一に球形化することができるとともに、微粉が確実に除去されるのでさらに好ましい。
【0101】
球形化処理を実施する時間が5秒未満であると、粉砕物の円形度を大きくすることができず、前述のような形状を有する本発明のトナーを得ることができないおそれがある。球形化処理を実施する時間が240秒を超えると、球形化処理の時間が長くなり過ぎ、球形化処理によって発生する熱でトナー粒子の表面が変質されやすく、装置内に粉砕物の融着が発生するおそれがある。これによって、トナー粒子の生産性が低下する。
【0102】
このような衝撃式球形化装置21によれば、分級ロータ25によって微粉が除去されるので、分級工程を別途設ける必要がなく、好ましい。
【0103】
以上のような衝撃式球形化装置21としては、市販されているものを使用することもでき、たとえば、ファカルティ(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)などを用いることができる。
【0104】
以上のようにして製造されたトナー粒子には、たとえば、粉体流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性、長期保存性改善、クリーニング特性改善および感光体表面磨耗特性制御などの機能を担う外添剤を混合してもよい。外添剤としては、たとえば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末およびアルミナ微粉末などが挙げられる。外添剤は、1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。外添剤の添加量としては、トナーに必要な帯電量、外添剤を添加することによる感光体の摩耗に対する影響、トナーの環境特性などを考慮して、トナー粒子100重量部に対し2重量部以下が好適である。
【0105】
このような外添剤は、前述のように、熱風式球形化装置を用い、熱風の温度がガラス転移点+170℃よりも高い場合、球形化処理を行う前の粉砕物に外添されることが好ましい。球形化処理を行う前の粉砕物に外添剤を付着させておくと、高温の熱風で粉砕物表面が急速に軟化することによって、粉砕物が凝集しトナー粒子が粗大化することを防止できる。球形化処理を行う前の粉砕物への外添剤の付着は、熱風の温度がガラス転移点+170℃以下の場合に行われてもよい。ただしこのような場合、粉砕物の球形化に長時間を要するおそれがあるので、外添剤の添加は、熱風の温度、結着樹脂などのトナー原料として用いる材料に応じて行われることが好ましい。
【0106】
このようにトナー粒子に必要に応じて外添剤が外添されるトナーは、そのまま1成分現像剤として使用することができ、またキャリアと混合して2成分現像剤として使用することができる。
【0107】
キャリアとしては、磁性を有する粒子を使用することができる。磁性を有する粒子の具体例としては、たとえば、鉄、フェライトおよびマグネタイトなどの金属、これらの金属とアルミニウムまたは鉛などの金属との合金などが挙げられる。これらの中でも、フェライトが好ましい。
【0108】
また磁性を有する粒子に樹脂を被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどをキャリアとして用いてもよい。磁性を有する粒子を被覆する樹脂としては特に制限はないけれども、たとえば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂、およびフッ素含有重合体系樹脂などが挙げられる。また樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としても特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられる。
【0109】
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。またキャリアの粒径は特に制限されないけれども、高画質化を考慮すると、好ましくは30〜50μmである。さらにキャリアの抵抗率は、好ましくは10Ω・cm以上、さらに好ましくは1012Ω・cm以上である。キャリアの抵抗率は、キャリアを0.50cmの断面積を有する容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cmの荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読取ることから得られる値である。抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアに電荷が注入され、感光体にキャリア粒子が付着し易くなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。
【0110】
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10〜60emu/g、さらに好ましくは15〜40emu/gである。磁化強さは現像ローラの磁束密度にもよるけれども、現像ローラの一般的な磁束密度の条件下においては、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また磁化強さが60emu/gを超えると、キャリアの穂立ちが高くなり過ぎる非接触現像では、像担持体と非接触状態を保つことが困難になる。また接触現像ではトナー像に掃き目が現れ易くなるおそれがある。
【0111】
2成分現像剤におけるトナーとキャリアとの使用割合は特に制限されず、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できるけれども、樹脂被覆キャリア(密度5〜8g/cm)に例をとれば、現像剤中に、トナーが現像剤全量の2〜30重量%、好ましくは2〜20重量%含まれるように、トナーを用いればよい。また2成分現像剤において、トナーによるキャリアの被覆率は、40〜80%であることが好ましい。
【0112】
図4は、本発明の実施の一形態である画像形成装置51の構成を模式的に示す図である。画像形成装置51は、本発明のトナーを用いて画像を形成する。本発明のトナーは、着色剤などの材料が適宜変更され、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナーおよびブラックトナーとして使用される。
【0113】
画像形成装置51は、記録媒体52に画像を形成する画像形成部53と、記録媒体52を画像形成部53に供給する給紙部54と、原稿台55に載置される原稿の画像を読取る画像読取部56とを含んで構成される。
【0114】
画像形成部53は、画像形成ユニット57y,57m,57c,57kと、転写ユニット58と、定着ユニット59と、排紙ユニット60とを含んで構成される。
【0115】
画像形成ユニット57y,57m,57c,57kは、記録媒体担持体である搬送ベルト61の移動(回転)方向である副操作方向、すなわち矢符61aの方向の上流側からこの順番で一列に配列され、像担持体である感光体62y,62m,62c,62k表面部に各色相の画像情報に対応する静電潜像を形成し、該静電潜像を現像して各色のトナー像を形成する。したがって、画像形成ユニット57yはイエローの画像情報に対応するトナー像を形成する。画像形成ユニット57mはマゼンタ色の画像情報に対応するトナー像を形成する。画像形成ユニット57cはシアン色の画像情報に対応するトナー像を形成する。画像形成ユニット57kはブラック色の画像情報に対応するトナー像を形成する。
【0116】
画像形成ユニット57yは、感光体62yと、帯電手段63yと、露光ユニット64yと、現像手段65yと、クリーニング手段66yとを含む。
【0117】
感光体62yは、図示しない回転駆動手段により軸心回りに回転駆動可能に設けられ、その表面部に静電潜像が形成されるローラ状部材である。感光体62yの回転駆動手段は、CPU(中央演算処理装置)によって実現される制御手段で制御される。感光体62yは、たとえば、図示しない円筒状または円柱状の導電性基体と、導電性基体の表面部に形成される図示しない感光層とを含んで構成される。導電性基体には、たとえば、アルミニウム素管を使用できる。感光層は、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層して形成されてもよく、電荷発生物質と電荷輸送物質とを1つの層に含むものであってもよい。感光層と導電性基体との間に下地層を設けてもよい。さらに、感光層の表面部に保護層を設けてもよい。
【0118】
帯電手段63yは、感光体62yの表面部を所定の極性の電位に帯電させる。本実施の形態では、帯電手段63yには非接触のコロナ帯電器が使用される。なお、帯電手段63yは、コロナ帯電器に限定されることなく、帯電ローラ、帯電ブラシなどの接触方式の帯電器であってもよい。本実施の形態では、帯電手段63yは感光体62y表面部を−600Vに帯電する。
【0119】
露光ユニット64yは、帯電状態にある感光体62y表面部にイエローの画像情報に応じた信号光(レーザ光)を照射し、イエローの画像情報に対応する静電潜像を形成する装置であり、図示しない半導体レーザ素子と、ポリゴンミラー67yと、fθレンズ68yと、ミラー69y,70yとを含んで構成される。半導体レーザ素子は、後述する画像読取部56から原稿台55に載置される原稿の画像情報のイエローに対応する画素信号が入力され、該画素信号に応じて変調されるドット光であるレーザ光を発する。ポリゴンミラー67yは、半導体レーザ素子からのレーザ光を主走査方向に偏向させる。fθレンズ68yおよび複数のミラー69y,70yは、ポリゴンミラー67yによって偏向されるレーザ光を感光体62y表面部に結像させる。本実施の形態では、露光ユニット64yは、感光体62y表面部に、イエローの画像情報に対応する露光電位−70Vの静電潜像を形成する。
【0120】
現像手段65yは、感光体62yの表面部を臨み、かつ感光体62yとの間に空隙を有して離隔するように設けられ、感光体62y表面部に形成されるイエローの画像情報に対応する静電潜像にイエロートナーを供給してイエロートナー像とする。現像手段65yは、図示しないけれども、現像ローラと、撹拌ローラと、現像槽と、トナー補給容器とを含む。現像ローラは、現像槽の開口部を介して感光体62y表面部に僅かな間隙を有して離隔し、かつ図4の紙面に向かって反時計周りに回転駆動可能に現像槽によって支持され、固定磁極を内包するローラ状部材であり、イエロートナーを感光体62y表面部の静電潜像に供給する。現像ローラには、図示しない現像バイアス印加手段によって、トナーと同極性、すなわち負極性の現像バイアスが印加される。本実施の形態では、現像ローラには現像バイアスとして−240Vの直流電圧が印加される。撹拌ローラは、現像槽の内部に軸心回りに回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ表面部にイエロートナーを供給する。現像槽は、現像ローラおよび撹拌ローラならびに所定の粒度分布を有するイエロートナーと磁性キャリアとを含む本発明の2成分現像剤を収容する。トナー補給容器は現像槽の鉛直方向上部に接するように設けられ、現像槽とは図示しない貫通孔であるトナー補給孔によって連通している。
【0121】
本実施の形態において現像槽に収容されるイエロートナーは、撹拌ローラの撹拌によって磁性キャリアと摩擦されて帯電されて負帯電状態となり、現像ローラに供給される。現像槽内に収容されるイエロートナーは、撹拌ローラの撹拌によって帯電されて現像ローラ表面部に供給され、つぎに感光体62yと現像ローラとの電位差などを利用して感光体62y表面部の静電潜像に供給され、イエローの画像情報に対応するトナー像を形成する。
【0122】
クリーニング手段66yは、感光体62y表面部のイエロートナー像が、後述する搬送ベルト61に担持搬送される記録媒体52に転写された後に、感光体62y表面部に残存するイエロートナーを除去、回収する。本実施の形態のカラートナーは、各色のトナーの帯電量が予め定める設定範囲に収まるので、感光体と各色のトナーとの付着力が同等となる。したがって、各色でクリーニング手段として同じ構成のものを用いることができる。クリーニング手段66yは、たとえば、感光体表面部に当接するように設けられるクリーニングブレードと、該クリーニングブレードによって感光体表面部から除去される廃トナー容器とを含む簡単な構成とすることができる。これによって画像形成装置51の内部構造の簡略化、製造コストの低下などを図り得る。
【0123】
画像形成ユニット57yによれば、感光体62yを軸心回りに回転駆動させながら、帯電手段63yによって感光体62y表面部を帯電させ、帯電状態にある感光体62y表面部に、露光ユニット64yからイエローの画像情報に対応する信号光を照射してイエローの画像情報に対応する静電潜像を形成し、この静電潜像に現像手段65yによってイエロートナーを供給してイエロートナー像を形成する。このイエロートナー像は、後述のように、感光体62yの表面部に圧接し、矢符61aの方向に駆動する搬送ベルト61に担持搬送される記録媒体52に転写される。トナー像転写後の感光体62y表面部に残留するイエロートナーは、クリーニング手段66yにより除去回収される。
【0124】
画像形成ユニット57m,57c,57kは、それぞれマゼンタトナー、シアントナーまたはブラックトナーを含む現像剤を使用する以外は、画像形成ユニット57yに類似の構造を有するので、同一の参照符号を付し、さらに各参照符号の末尾に、マゼンタを示す「m」、シアンを示す「c」またはブラックを示す「k」を付し、説明を省略する。
【0125】
転写ユニット58は、搬送ベルト61と、転写ローラ71y,71m,71c,71kと、駆動ローラ72と、従動ローラ73と、除電手段74とを含んで構成される。
【0126】
搬送ベルト61は、副操作方向すなわち矢符61aの方向に回転駆動可能にかつ像担持体である感光体62y,62m,62c,62kにこの順番で圧接するように設けられ、駆動ローラ72および従動ローラ73に張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、記録媒体52を担持して搬送する記録媒体担持体である。搬送ベルト61の感光体62y,62m,62c,62kに圧接する位置が、各色トナー像の転写位置である。搬送ベルト61は、後述する給紙部54によって供給される記録媒体52を担持して搬送し、記録媒体52には、感光体62y,62m,62c,62kとの転写位置において各色トナー像が重ね合わされて転写され、多色トナー像が形成される。
【0127】
転写ローラ71y,71m,71c,71kは、それぞれ、搬送ベルト61を介して感光体62y,62m,62c,62kに圧接し、図示しない駆動手段によりその軸心回りに回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。転写ローラ71y,71m,71c,71kと、感光体62y,62m,62c,62kとの圧接位置が、搬送ベルト61によって担持搬送される記録媒体52への各色トナー像の転写位置である。転写ローラ71y,71m,71c,71kには、感光体62y,62m,62c,62k表面部のトナー像を搬送ベルト61に担持搬送される記録媒体52上に転写するために、トナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加される。
【0128】
駆動ローラ72は、図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、搬送ベルト61を回転駆動させる。駆動ローラ72は、CPUに備えられる制御手段によって制御される。
【0129】
従動ローラ73は、搬送ベルト61の回転に従動可能に設けられ、搬送ベルト61に一定の張力を付与するテンションローラとしての機能を有するローラ状部材である。
【0130】
除電手段74は、搬送ベルト61の回転駆動方向すなわち矢符61aの方向において、感光体62kと転写ローラ71kとの圧接部よりも下流側に、かつ搬送ベルト61と定着ユニット22との最近接部よりも上流側に設けられる。除電手段74には、図示しない交流電圧印加手段によって交流電圧の印加を受けて、搬送ベルト61を除電して搬送ベルト61に静電吸着される記録媒体52を搬送ベルト61から分離し易くし、記録媒体52を搬送ベルト61から定着ユニット59へ円滑に送給する。
【0131】
転写ユニット58によれば、感光体62y,62m,62c,62k上に形成される各色トナー像を、搬送ベルト61に担持搬送される記録媒体52の所定位置に重ね合わせて転写し、多色トナー像を形成する。多色トナー像を担持する記録媒体52は、定着ユニット59に供給される。
【0132】
定着ユニット59は、加熱ローラ75と、加圧ローラ76とを含む。加熱ローラ75は、図示しない駆動手段により、軸心回りに回転駆動可能に設けられる。加熱ローラ75の内部には、ハロゲンランプなどの加熱手段が設けられる。加圧ローラ76は、図示しない駆動手段により回転駆動可能にまたは加熱ローラ75の回転駆動に従動可能にかつ加熱ローラ75に圧接するように設けられる。搬送ベルト61から加熱ローラ75と加圧ローラ76との圧接部に多色トナー像を担持する記録媒体52が搬送され、多色トナー像が加熱加圧を受けることによって、多色トナー像が記録媒体52に定着される。
【0133】
定着ユニット59によれば、多色トナー像を担持する記録媒体52が加熱ローラ75と加圧ローラ76との圧接部において加熱および加圧され、多色トナー像が記録媒体52に定着する。定着ユニット59によって多色トナー像が定着された記録媒体52は、画像形成装置51の排紙ユニット60に搬送される。
【0134】
排紙ユニット60は、排紙トレイ77と、排紙ローラ78a,78bとを含んで構成される。排紙トレイ77は画像形成装置51の筐体外側に設けられ、画像形成装置51の内部から排出されるトナー像定着済み記録媒体52を貯留する。排紙ローラ78a,78bは、画像形成装置51の内部において、画像形成装置51の筺体に形成される図示しない排紙口近傍に設けられ、定着ユニット59から搬送されるトナー像定着済みの記録媒体52を画像形成装置51の外部に排出して排紙トレイ77に載置する。排紙ユニット60によれば、トナー像定着済みの記録媒体52を画像形成装置51外部の排紙トレイ77に排出する。
【0135】
画像形成部53によれば、感光体62y,62m,62c,62k表面部に画像情報に対応する各色トナー像が形成され、これが搬送ベルト61上の記録媒体52上に重ね合わされて転写されて多色トナー像が形成され、この多色トナー像は定着ユニット59において記録媒体52に定着され、多色トナー像が定着された記録媒体52は排紙トレイ77に排出される。
【0136】
給紙部54は、記録媒体カセット79と、ピックアップローラ80と、レジストローラ81、記録媒体搬送ローラ82とを含んで構成される。記録媒体カセット79は、B5、B4、A4、A3などの各サイズの普通紙、カラーコピー用紙などの記録紙、およびオーバーヘッドプロジェクター用シート(OHPシート)などの記録媒体52を収容する。ピックアップローラ80は、記録媒体カセット79内に収容される記録媒体52を、搬送路Pに1枚ずつ送給する。レジストローラ81は、感光体62y上のトナー像が感光体62yと転写ローラ71yとの圧接部である転写位置に搬送されるのに同期して、搬送ベルト61上に記録媒体52を送給し、該転写位置に記録媒体52を送給する。記録媒体搬送ローラ82は、搬送路Pにおいて、記録媒体52のレジストローラ81への搬送を補助する。記録媒体52の両面に画像を形成する場合は、定着ユニット59によって一方の面にトナー像が定着された後、搬送路A、搬送路B、搬送路Cおよび搬送路Dを経由して画像形成部53に送給され、他方の面にもトナー像が転写され、定着される。搬送路Aに送給された記録媒体52は、搬送路Bの記録媒体搬送ローラ45によって搬送方向を反転され、搬送路Cに向けて送給される。給紙部54によれば、感光体62y上のトナー像が感光体62yと転写ローラ71yとの圧接部である転写位置に搬送されるのに同期して、搬送ベルト61上に1枚ずつ記録媒体52を送給する。
【0137】
画像読取部56は、原稿台55と、第1の原稿走査ユニット83と、第2の原稿走査ユニット84と、光学レンズ85と、CCD(Charge Coupled Device)ラインセンサ86とを含んで構成される。
【0138】
原稿台55は、その上面が原稿台55に対して開閉可能な状態で支持され、原稿が載置される原稿載置面が設けられる。原稿は、ユーザーによって手動で原稿台55に載置されてもよく、図示しない自動原稿送り装置によって原稿台55に載置されてもよい。
【0139】
第1原稿走査ユニット83は原稿台55の下面に対して一定の距離を保ちつつ、一定の走査速度で平行に往復移動するように設けられ、原稿画像表面部を露光する露光ランプと、原稿からの反射光像を第2原稿走査ユニット84の方向に偏向する第1ミラーとを含む。
【0140】
第2原稿走査ユニット84は、第1原稿走査ユニット83と一定の速度関係を保って第1原稿走査ユニット83と平行に往復移動するように設けられ、第1原稿走査ユニット83の第1ミラーにより偏向された原稿からの反射光像をさらに光学レンズ85の方向に偏向する第2ミラーおよび第3ミラーを含む。
【0141】
光学レンズ85は、第2原稿走査ユニット84の第3ミラーにより偏向された原稿からの反射光像を縮小し、縮小された光像をCCDラインセンサ86上の所定位置に結像させる。CCDラインセンサ86は、結像された光像を順次光電変換して電気信号として出力する。CCDラインセンサ86は、白黒画像あるいはカラー画像を読取り、読取った画像の画像情報を各色の電気信号に変換して露光ユニット64y,64m,64c,64kにそれぞれ出力する。
【0142】
画像読取部56によれば、原稿台55に載置される原稿から画像情報を読取り、読取った画像情報を各色の電気信号に変換して露光ユニット64y,64m,64c,64kに出力する。
【0143】
画像形成装置51によれば、画像読取部56によって読取られる画像情報に基づいて、各色トナー像を形成し、これを記録媒体52上に転写および定着させて、原稿に基づく画像を形成する。
【0144】
本実施の形態では、画像形成装置51は、感光体62y,62m,62c,62kのトナー像を直接記録媒体52に転写する直接転写方式を用いるけれども、直接転写方式に限定されることなく、感光体上のトナー像を中間転写ベルトなどの中間転写媒体に転写した後、中間転写媒体に転写されるトナー像を記録媒体に転写する中間転写方式を用いる画像形成装置であってもよい。
【0145】
画像形成装置は、トナーとして本発明のトナーが用いられるので、良好な転写性およびクリーニング性を発揮するとともに、高精細かつ高濃度の高画質画像を形成することができる。
【実施例】
【0146】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
実施例および比較例における円形度および体積平均粒径、ならびに結着樹脂のガラス転移点は、次のようにして測定した。
【0147】
〔円形度〕
界面活性剤を約0.1mg溶解している水10mLに、トナー5mgを分散させて分散液を調製し、周波数20kHz、出力50Wの超音波を分散液に5分間照射し、分散液中のトナー粒子濃度を5000〜20000個/μLとして、前述のフロー式粒子像分析装置FPIA−3000(シスメックス株式会社製)によって円形度を測定した。またこの円形度の測定結果から、前記式(2)によって平均円形度を算出した。
【0148】
〔体積平均粒径〕
前述の測定条件で、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター株式会社製)によって測定した粒径の粒度分布を求め、算出して得た。またこの粒度分布から、粒径が2μm以上5μm以下の粒子の含有率を求めた。
【0149】
〔結着樹脂のガラス転移点(Tg)〕
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は以下のようにして測定した。示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移点(Tg)として求めた。
【0150】
(実施例1)
ポリエステル(結着樹脂、商品名:タフトン、花王株式会社製、ガラス転移点70℃、軟化点131℃)100重量部、C.I.ピグメントブルー15:3(着色剤)6.1重量部および有機ホウ素化合物(帯電制御剤、商品名:LR−147、日本カーリット株式会社製)1.2重量部をこの配合割合(重量部)で含むトナー原料45kgを、ヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)によって7分間混合した。この原料混合物を、二軸押出混練機(商品名:PCM65、株式会社池貝製)で溶融混練し、室温まで冷却した後、溶融混練物の固化物をカッターミル(商品名:VM−16、オリエント株式会社製)で粗粉砕した。続いて、粗粉砕によって得られた粗粉砕物を、流動層型ジェット粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製)によってロータの回転速度を3900rpm(毎分3900回転)として微粉砕し、樹脂組成物の粉砕物を得た。得られた樹脂組成物の粉砕物は、体積平均粒径が6.0μmであり、平均円形度が0.938であった。
【0151】
次いで、図2に示すような衝撃式球形化装置によって、樹脂組成物の粉砕物を球形化処理した。衝撃式球形化装置では、1回の粉砕物の投入量を1.5kgとし、分級ロータの回転速度を5000rpmとして微粉を除去しつつ、分散ロータの回転速度を5800rpmとして、120秒間球形化処理を行った。球形化処理の時間は、粉砕物の投入終了時からトナー粒子排出弁を開放するまでの時間である。衝撃式球形化装置において、分散ロータとライナとの間隔d1を、2.0mmとした。また仕切り部材の端部と処理槽の内壁面との間隔d2を40mmとした。以上のようにして樹脂組成物の粉砕物を球形化し、体積平均粒径が6.7μmのトナー粒子を得た。このトナー粒子を実施例1のトナーとした。
【0152】
(実施例2)
球形化処理の時間を240秒に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のトナーを得た。
【0153】
(実施例3)
球形化処理の時間を180秒に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のトナーを得た。
【0154】
(実施例4)
球形化処理の時間を150秒に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4のトナーを得た。
【0155】
(実施例5)
球形化処理の時間を160秒に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例5のトナーを得た。
【0156】
(比較例1)
球形化処理の時間を20秒に変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のトナーを得た。
【0157】
(比較例2)
球形化処理の時間を10秒に変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2のトナーを得た。
【0158】
実施例1〜5および比較例1,2における球形化処理時間、および実施例1〜5および比較例1,2のトナー粒子の粒径および円形度に関する物性値を表1に示す。トナー粒子の粒径および円形度に関する物性値としては、2μm以上5μm以下のトナー粒子における平均円形度、粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子における円形度が0.950以下のトナー粒子の含有率(表1および後述の表2において「不定形粒子含有率」と記載する)、トナー粒子の平均円形度、および粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子の含有率(表1および後述の表2において「小粒径粒子含有率」と記載する)を示す。
【0159】
【表1】

【0160】
(実施例6)
実施例1と同様にして得られた樹脂組成物の粉砕物を、旋回式風力分級機(ホソカワミクロン株式会社製)によって分級した。旋回式風力分級機において、ロータの回転速度を3930rpmとし、粉砕物の投入量を毎時36kgとし、エア流量を16.8Nm/mとした。分級後の樹脂組成物の粉砕物は、体積平均粒径が6.7μmであった。
【0161】
次いで、熱風式球形化装置(商品名:メテオレインボー、日本ニューマチック工業株式会社製)によって、分級後の樹脂組成物の粉砕物を球形化処理した。熱風式球形化装置では、粉砕物の投入量を毎時3.0kgとし、熱風の供給量を毎分900L、熱風の温度を190℃とし、冷却空気の供給圧力を0.15MPaとし、二次エア噴射ノズルからの空気の供給量を毎分230Lとした。また冷却エア取入口と、衝突部材10との距離Lは2.0cmであった。以上のようにして分級後の樹脂組成物の粉砕物を球形化し、トナー粒子を得た。このトナー粒子を実施例6のトナーとした。
【0162】
(実施例7)
熱風の温度を185℃に変更したこと以外は実施例6と同様にして、実施例7のトナーを得た。
【0163】
(実施例8)
分級後の樹脂組成物の粉砕物100重量部に対して0.5重量部の疎水性シリカを外添し、その後球形化処理を行うとともに、熱風の温度を230℃に変更したこと以外は実施例6と同様にして、実施例8のトナーを得た。
【0164】
(実施例9)
熱風の温度を205℃に変更したこと以外は実施例6と同様にして、実施例9のトナーを得た。
【0165】
(比較例3)
分級後の樹脂組成物の粉砕物100重量部に対して0.5重量部の疎水性シリカを外添し、その後球形化処理を行うとともに、熱風の温度を240℃に変更したこと以外は実施例6と同様にして、比較例3のトナーを得た。
【0166】
(比較例4)
熱風の温度を120℃に変更したこと以外は実施例6と同様にして、比較例4のトナーを得た。
【0167】
(比較例5)
熱風の温度を220℃に変更したこと以外は実施例6と同様にして、比較例5のトナーを得た。
【0168】
(比較例6)
熱風の温度を150℃に変更したこと以外は実施例6と同様にして、比較例6のトナーを得た。
【0169】
(比較例7)
実施例1と同様にして得られた樹脂組成物の粉砕物を、旋回式風力分級機(ホソカワミクロン株式会社製)によって分級した。旋回式風力分級機において、ロータの回転速度を3930rpmとし、粉砕物の投入量を毎時36kgとし、エア流量を16.8Nm/mとした。分級後の樹脂組成物の粉砕物を、トナー粒子とし、このトナー粒子を比較例7のトナーとした。
【0170】
(比較例8)
旋回式風力分級機におけるロータの回転速度を4000rpmとしたこと以外は比較例7と同様にして、比較例8のトナーを得た。
【0171】
実施例6〜9および比較例3〜6における熱風の温度、実施例6〜9および比較例3〜8における旋回式風力分級機のロータ回転速度およびシリカ外添の有無、ならびに実施例6〜9および比較例3〜8のトナー粒子の粒径および円形度に関する物性値を、表2に示す。
【0172】
【表2】

【0173】
実施例および比較例のトナー5重量部に、キャリアとして、体積平均粒径45μmのフェライトコアキャリア95重量部をV型混合器混合機(商品名:V−5、株式会社特寿工作所製)にて20分間混合し、トナー濃度5重量%の2成分現像剤を作製した。
【0174】
実施例および比較例で得られた2成分現像剤を用いて形成した画像の白抜けおよび解像性、ならびに画像形成時の転写効率、クリーニング性および帯電量を、下記の方法によって評価した。
【0175】
〈白抜け〉
実施例および比較例で得られたトナーを含む2成分現像剤を市販複写機(商品名:AR−C150、シャープ株式会社製)に充填し、付着量が0.4mg/cmとなるように調整し、3×5孤立ドットの画像を形成した。3×5孤立ドットの画像とは、600dpi(dot per inch)において、縦3ドット、横3ドットの大きさである複数のドット部が、隣合うドット部同士の間隔が5ドットとなるように、形成される画像である。形成した画像を顕微鏡(株式会社キーエンス製)で100倍に拡大してモニタに表示し、70個の3×5孤立ドットのうち、白抜けの発生した数を確認した。評価基準は次のとおりである。
◎:白抜けの発生した数が0〜3個
○:白抜けの発生した数が4〜6個
△:白抜けの発生した数が7〜10個
×:白抜けの発生した数が11個以上
【0176】
〈解像性〉
前記複写機によって画像濃度が0.3であり、直径5mmのハーフトーン画像を、画像濃度0.3以上0.5以下で複写できる条件において、線幅が正確に100μmである細線のオリジナル画像が形成される原稿を複写し、得られたコピー画像を測定用サンプルとした。この測定サンプルを、粒子アナライザ(商品名ルーゼックス450、株式会社ニレコ製)を用いて100倍に拡大したモニタ画像から、インジケータによって測定サンプルに形成される細線の線幅を測定した。画像濃度は、反射濃度計(商品名:RD−918、マクベス社製)によって測定された光学反射濃度である。細線には凹凸があり、線幅は測定位置によって異なるので、複数の測定位置において線幅を測定して平均値をとり、この線幅を測定用サンプルの線幅とした。測定用サンプルの線幅を、原稿の線幅である100μmで除し、得られた値を100倍したものを細線再現性の値として得た。この細線再現性の値が100に近いほど、細線の再現性がよく、解像性に優れることを示す。評価基準は次のとおりである。
◎:細線再現性の値が100以上105未満
○:細線再現性の値が105以上115未満
△:細線再現性の値が115以上125未満
×:細線再現性の値が125以上
【0177】
〈転写効率〉
転写効率は、1次転写において感光体ドラム表面から中間転写ベルトに転写されたトナーの割合であり、転写前の感光体ドラムに存在するトナー量を100%として算出した。転写前の感光体ドラムに存在するトナーを、帯電量測定装置(商品名:210HS−2A、トレック・ジャパン株式会社製)を用いて吸引し、この吸引したトナーの量を測定することによって得た。また中間転写ベルトに転写されたトナー量も、同様にして得た。評価基準は次のとおりである。
◎:転写効率が95%以上
○:転写効率が90%以上95%未満
△:転写効率が85%以上90%未満
×:転写効率が85%未満
【0178】
〈クリーニング性〉
市販複写機(商品名:AR−C450、シャープ株式会社製)に備わるクリーニング手段のクリーニングブレードが感光体ドラムに当接する圧力であるクリーニングブレード圧を、初期線圧で25gf/cm(2.45×10−1N/cm)となるように調整した。この複写機に実施例および比較例で得られたトナーを含む2成分現像剤を充填し、温度25℃、相対湿度50%の常温常湿環境中でシャープ株式会社製文字テストチャートを記録紙10万枚に形成し、クリーニング性の確認を行った。
【0179】
クリーニング性は、画像形成前(初期)、5,000枚(5K枚)印字後、10,000枚(10K枚)印字後の各段階において、形成された画像を目視で確認することによって、画像部と非画像部との境界部の鮮明度、感光体ドラムの回転方向へのトナー漏れによって形成される黒すじの有無を試験し、さらに後述の測定器によってかぶり量Wkを求めて、クリーニング性を評価した。形成画像のかぶり量Wkは、日本電色工業株式会社製Z−Σ90 COLORMEASURINGSYSTEMを用いて反射濃度を測定し、次のようにして求めた。まず画像形成前の記録紙の反射平均濃度Wrを測定した。次にその記録手段によって画像を形成し、画像形成語、記録紙の白地部分各所の反射濃度を測定した。最もかぶりの多いと判断された部分、すなわち白地部でありながら濃度の最も濃い部分の反射濃度Wsと、前記Wrとから、下記式(3)で求められる値をかぶり量Wk(%)と定義した。評価基準は次のとおりである。
Wk=100×(Ws−Wr)/Wr …(3)
◎:非常に良好。鮮明度良く黒すじなし。かぶり量Wkが3%未満
○:良好。鮮明度良く黒すじなし。かぶり量Wkが3%以上5%未満
△:実使用上問題なし。鮮明度実使用上問題のないレベルであり、黒すじの長さが2.0mm以下かつ5個以下。かぶり量Wkが5%以上10%未満
×:実使用不可。鮮明度実使用上問題あり。黒すじの長さが2.0mmを超えるか、または黒すじが6個以上の少なくともいずれかである。かぶり量Wkが10%以上
【0180】
〈帯電量測定〉
実施例および比較例のトナー5重量部を体積平均粒径45μmのフェライトコアキャリア95重量部とそれぞれ混合し、温度25℃、相対湿度50%の常温常湿環境中において、卓上ボールミル(東京硝子器械株式会社製)で30分間攪拌を行った後、初期のトナーの帯電量測定を行った。また実施例および比較例のトナーを含む2成分現像剤によって市販複写機(商品名:AR−C150、シャープ株式会社製)で印字率6%のテキストチャートを10,000枚印字後のトナーの帯電量測定を行った。
【0181】
トナーの帯電量測定は、帯電量測定装置(210HS−2A:トレック・ジャパン株式会社製)を用いて次のようにして行った。ボールミル内から採集したフェライト粒子とトナーとの混合物を、底部に500メッシュの導電性スクリーンを具備した金属製の容器に入れ、吸引機によってトナーのみを吸引圧250mmHgで吸引し、吸引前の混合物の重量と吸引後の混合物の重量との重量差と、容器に接続されたコンデンサー極板間の電位差とからトナーの帯電量を求めた。
【0182】
〈総合評価〉
総合評価の評価基準は次のとおりである。
◎:非常に良好。白抜け、解像性、転写効率およびクリーニング性の評価結果に△および×がない。
○:良好。白抜け、解像性、転写効率およびクリーニング性の評価結果に×がなく、△が1個以上3個以下である。
△:実使用上問題なし。白抜け、解像性、転写効率およびクリーニング性の評価結果に×がなく、△が4個以上である。
×:不良。白抜け、解像性、転写効率およびクリーニング性の評価結果に×がある。
【0183】
白抜け、解像性、転写効率およびクリーニング性の評価結果および総合評価結果、ならびに帯電量の測定結果を表3に示す。
【0184】
【表3】

【0185】
表3から、本発明の電子写真用トナーは、転写性およびクリーニング性を高い水準で併せ持ち、さらに高精細な画像を形成することができることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】熱風式球形化装置1の構成を簡略化して示す断面図である。
【図2】衝撃式球形化装置21の構成を簡略化して示す断面図である。
【図3】衝撃式球形化装置21に設けられる分級ロータ25の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の一形態である画像形成装置51の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0187】
1 熱風式球形化装置
2,22 処理槽
3 分散ノズル
4 熱風噴射ノズル
5 冷却エア取入口
6 排出口
7,34 粉砕物供給手段
8 二次エア噴射ノズル
9 二次エア供給手段
10 衝突部材
11 熱風供給手段
12 冷却ジャケット
13 冷媒入口
14 冷媒出口
15 冷媒供給手段
16 冷却空気供給手段
17 フィルタ
21 衝撃式球形化装置
23 粉砕物投入部
24 トナー粒子排出部
25 分級ロータ
26 微粉排出部
27 分散ロータ
28 ライナ
29 仕切り部材
30 粉砕物投入口
31 トナー粒子排出口
32 微粉排出口
33 冷却エア流入口
35 輸送管路
36 トナー粒子排出弁
37 微粉排出弁
38 ブレード
39 第1の空間
40 第2の空間
51 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂および着色剤を含むトナー粒子である電子写真用トナーにおいて、
粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子における平均円形度が、0.945以上0.975以下であり、かつ粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子における円形度が0.950以下のトナー粒子の含有率が、40個数%以下であることを特徴とする電子写真用トナー。
【請求項2】
トナー粒子全体の平均円形度が、0.955以上0.975以下であることを特徴とする請求項1記載の電子写真用トナー。
【請求項3】
粒径が2μm以上5μm以下のトナー粒子は、トナー粒子全体の10個数%以上50個数%以下の割合で含まれることを特徴とする請求項1または2記載の電子写真用トナー。
【請求項4】
結着樹脂および着色剤を含む樹脂組成物の粉砕物を、球形化処理することによって得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子写真用トナー。
【請求項5】
前記球形化処理では、
熱風によって、樹脂組成物の粉砕物が球形化されることを特徴とする請求項4記載の電子写真用トナー。
【請求項6】
前記熱風は、温度が、結着樹脂のガラス転移点よりも100〜170℃高い温度であることを特徴とする請求項5記載の電子写真用トナー。
【請求項7】
前記球形化処理では、
樹脂組成物の粉砕物が、機械的衝撃力によって球形化されることを特徴とする請求項4記載の電子写真用トナー。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の電子写真用トナーを用いて画像を形成することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−76574(P2008−76574A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253530(P2006−253530)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】