説明

電子写真用消色トナー

【課題】転写媒体上のトナー画像の消色処理の短縮化を達成すると共に、転写媒体上のトナー画像の消去をより確実にできる加熱消色可能なトナーを提供する。
【解決手段】本実施形態の加熱消色可能なトナーは、加熱消去可能な色材と、バインダー樹脂と、発泡剤とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスに使用する消色可能なトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真プロセスにおいて画像を形成する場合、顔料等の着色剤をバインダー樹脂に分散させ、4〜20μm程度の粒子径に大きさを揃えたトナーを画素の単位として利用している。
【0003】
近年、資源の有効利用、炭酸ガスの排出量低減の目的で、加熱消去可能な色材をトナーに使用し、印刷後の紙を加熱処理することにより、紙を繰り返し使用することを可能とし、紙資源の使用量の低減や、紙からの脱墨処理のためのエネルギーを低減させる方式が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−88046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記提案では、紙上のトナーの消色処理をするのに時間がかかってしまうという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、その目的は、転写媒体上のトナー画像の消色処理の短縮化を達成すると共に、転写媒体上のトナー画像の消色をより確実にできる加熱消色可能なトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の本発明者らは、上記課題に鑑み、トナーの消色処理時間の短縮化を図るため、より低温で消色できる色材を検討した。低温で消色する色材を用いる場合、トナーの転写媒体への定着の際、定着の熱でトナーの発色が消えないように転写媒体への定着温度を低く設定する必要がある。そのため、トナーに配合するバインダー樹脂を低温度で定着できるような低融点のものを用いる必要がある。
【0008】
しかしながら、低融点のバインダー樹脂を用いたトナーでは、得られたトナー画像の消色処理時間の短縮は達成されるものの、トナー画像の定着・消去の加熱時にトナー画像のバインダー樹脂が十分に融けてしまうことで、トナー画像表面のグロス・平滑度が上がってしまう。
【0009】
このように低融点のバインダー樹脂を用いたトナーでは、画像中の色材の色自体は消せるものの光沢が残るため、その消色したトナー画像部分が光の反射により目立ってしまうという新たな問題が見出された。
【0010】
そこで、本発明の本発明者らは、トナー表面のグロス・平滑度に着目し、トナー表面の粗面化を行うことにより、上記問題を解決するに至った。即ち、本発明の発明者らは、低融点のバインダー樹脂の及ぼすトナー表面の光沢を少なくするために、鋭意検討した結果、熱によりガスが発生する物質をトナー中に配合させることによって加熱消色時にトナー中でガスを発生させトナー表面を粗面化することで光沢を少なくできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明では、熱によってガスが発生する発泡剤を消色可能なトナーに配合することで、トナー表面を粗面化し、平滑度を下げることで加熱消色を改善できる。即ち、本発明にかかる電子写真用消色トナーは、少なくとも加熱消去可能な色材、バインダー樹脂及び発泡剤を含むことを特徴とする。
【0012】
ここで、本実施形態に用いられる加熱消去可能な色材は、少なくとも色素の前駆体である呈色性化合物と、この呈色性化合物と相互作用(主に電子またはプロトンの授受)し発色させるための顕色剤と、上記の相互作用を弱めて発色を消去する消去剤から構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、転写媒体上のトナー画像の消色処理の短縮化を達成すると共に、転写媒体上のトナー画像の消去をより確実にできる加熱消色可能なトナーを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態にかかる加熱消色可能なトナーは、加熱消色可能な色材、バインダー樹脂及び発泡剤を含むことを特徴とするものである。トナー中に発砲剤を含有させることで、消色装置で加熱する際に気泡が発生し、印刷されたトナー画像表面を粗面化することで光沢(グロス)の上昇を抑え、トナー画像の消去をより確実にすることができる。
【0015】
以下、本実施形態にかかる加熱消色可能なトナーの構成について詳細に説明する。
【0016】
本実施形態に使用する加熱消去可能な色材は、少なくとも呈色性化合物、顕色剤及び消色剤から構成される。必要に応じて、変色温度調節剤などを適宜組み合わせて、ある一定の温度以上で発色が消えるような構成を選択できる。
【0017】
本実施形態に用いられる呈色性化合物としては、ロイコ染料が一般的によく知られたものとして使われる。ロイコ染料は、後述する顕色剤により発色することが可能な電子共与性の化合物であり、例えばジフェ二ルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等を挙げることができる。
【0018】
具体的には、例えば3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、2−N,N−ジベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1’(3’H)イソベンゾフラン〕−3’−オン,2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1’(3’H)イソベンゾフラン〕−3’−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1’(3’H)イソベンゾフラン〕−3’−オン,2−ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1’(3’H)イソベンゾフラン〕−3’−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1’(3’H)イソベンゾフラン〕−3’−オン、2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−フェニル、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等である。さらに、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。これらは、1種または2種以上を混合して用いることができ、これら呈色性化合物を適宜選択することで多様な色の発色状態を得ることができる。
【0019】
呈色性化合物の配合量は、全トナー中、1wt%〜20wt%の範囲が好ましい。配合量が1wt%未満の場合は、発色が不十分で画像濃度が低くなる。一方、20wt%より多い場合、画像濃度は高くなるが消色が不十分となりやすく、また固形分が増えるため定着が不良となる。より好ましくは、2〜15%である。
【0020】
本実施形態に用いられる顕色剤は、電子受容性の化合物であり、電子供与性の化合物である上記した呈色性化合物にプロトンを与えることで呈色性化合物は発色する。このような顕色剤としては、例えばフェノール類、フェノール金属塩類、カルボン酸金属塩類、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、ベンゾフェノン類、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸類、リン酸金属塩類、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステル金属塩類、亜リン酸類、亜リン酸金属塩類、モノフェノール類、ポリフェノール類、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体等があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、ビス型及びトリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等、さらにこれらの金属塩を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0021】
具体的には、例えばフェノール、o−クレゾール、t−ブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、2,3−ジヒドロキシ安息香酸や3,5−ジヒドロキシ安息香酸メチル等のジヒドロキシ安息香酸またはそのエステル、レゾルシン、没食子酸、没食子酸ドデシル、没食子酸エチル、没食子酸ブチル、没食子酸プロピル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,6−ジヒドロキシアセトフェノン、3,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,3,4−トリヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ビフェノール、4,4’−ビフェノール、4−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4−[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,6−ビス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビス(ベンゼン−1,2,3−トリオール)]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビス(1,2−ベンゼンジオール)]、4,4’,4’’−エチリデントリスフェノール、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレントリス−p−クレゾール等を挙げることができる。
【0022】
本実施形態に用いられる消色剤は、呈色性化合物、顕色剤および消色剤の3成分系において、熱により呈色化合物と顕色剤による発色反応を阻害し、無色にすることができるものであれば公知のものを用いることができる。特に、発色消色機構として瞬間消去性において優れている温度ヒステリシスを利用する消去剤を用いることが好ましい。
【0023】
温度ヒステリシスを利用した発色消色機構によれば、発色した3成分系の混合物、即ち呈色性化合物、顕色剤及び消色剤の混合物を、特定の消色温度(以下、「完全消色温度」又は「Th」とも言う。)以上に加熱すると、消色化させることができる。また、この消色した混合物をTh以下の温度に冷却しても消色状態が維持される。さらに温度を下げると特定の復色温度(以下、「完全発色温度」又は「Tc」とも言う。)以下において呈色性化合物と顕色剤による発色反応が再度復活し、発色状態に戻るという可逆的な発色消色反応を起こすことが可能である。特に、本実施形態で使用する消色剤は、室温(25℃)をTrとすると、Th>Tr>Tcという関係を満たすことが好ましい。
【0024】
このような温度ヒステリシスを引き起こすことが可能な消色剤としては、例えば特開昭60−264285、特開2005−1369、特開2008−280523等で公知である、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類を挙げることができる。これらの中でも、エステル類が特に好ましい。具体的には、例えば置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、脂肪酸と分岐脂肪族アルコールのエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等を挙げることができる。これらは、1種または2種以上混合して用いることができる。
【0025】
これら色材に含まれる呈色性化合物、顕色剤及び消色剤の混合割合は、濃度、発色温度、各成分の種類によって異なるが、顕色剤は、呈色性化合物1質量部に対して、0.5〜20部の範囲が好ましい。顕色剤の配合量が0.5部未満の場合は、発色が不十分となる。一方、20部より多い場合、消色が不十分となる。より好ましくは、1〜10部である。消色剤は、呈色性化合物1質量部に対して、5〜100部の範囲が好ましい。消色剤の配合量が5部未満の場合は、消色が不十分となる。一方、100部より多い場合、最初から発色が不十分となる。より好ましくは、10〜75部である。
【0026】
また、これら色材をシェル成分でカプセル化することにより、迅速な消色が可能となる。このようなカプセル化の方法として、例えば界面重合法、コアセルベーション法、In−Situ重合法、液中乾燥法、液中硬化被膜法等を挙げることができる。これらの中でも、メラミン樹脂をシェル成分として使用するIn−Situ法、ウレタン樹脂をシェル成分として使用する界面重合法等が好ましい。
【0027】
In−Situ重合法は、まず、色材3成分を溶解混合し、水溶性高分子または界面活性剤水溶液中に乳化させる。その後、メラミンホルマリンプレポリマー水溶液を添加し、加熱し重合することによりカプセル化することができる。
【0028】
界面重合法は、色材3成分と多価のイソシアネートプレポリマーを溶解混合し、水溶性高分子または界面活性剤水溶液中に乳化させる。その後、ジアミンまたはジオール等の多価塩基を添加し、加熱重合することによりカプセル化することができる。
【0029】
本実施形態に用いられるバインダー樹脂は、配合される色材の消色温度より低い温度で定着できるような低融点あるいは低Tg(ガラス転移点)の樹脂であれば、特に種類を制限されるものではなく、例えばポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン/アクリレート共重合体樹脂、ポリエステル−スチレン/アクリレートハイブリッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル・ポリオール樹脂等を挙げることができる。これらバインダー樹脂は、配合される色材に合わせて適宜選択できる。
【0030】
バインダー樹脂の配合量としては、全トナー中、70wt%〜97wt%の範囲が好ましい。配合量が70wt%未満の場合は、定着性が不良となる。一方、97wt%より多い場合、着色成分や帯電量制御成分の効果が不十分となる。より好ましくは、80〜95wt%である。
【0031】
本実施形態に使用する発泡剤としては、加熱によりガスを発生させる物質であれば特に限定されず、消去装置の設定温度以下で分解開始するよう、トナーの特性や製造上の使いやすさから適宜選択することができる。このような発泡剤として、無機系発泡剤、有機系発泡剤のいずれも使用可能である。
【0032】
無機系発泡剤としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルシウムアジド等が挙げられる。有機系発泡剤としては、例えばp,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、ヒドラゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。
【0033】
このような発泡剤の配合量としては、全トナー中、0.01wt%〜10wt%の範囲で、発泡・低光沢化の効果と、その他トナー諸特性のバランスから選択することが好ましい。配合量が0.01wt%未満の場合は、十分な発泡が行われず低光沢の効果が低くなる。一方、10wt%より多い場合、発泡過多となって定着トナー像が膨らみ画像不良となる。
【0034】
本実施形態にかかる加熱消去可能なトナーには、トナーの転写媒体への定着性を制御するために、ワックス類を配合することができる。本実施形態にかかる消色可能トナーに用いられるワックスは、上記した呈色性化合物を発色させることがない成分で構成されることが好ましい。このようなワックス類としては、例えばライスワックス、カルナバワックス等の天然ワックス、パラフィンワックス等の石油ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等の合成ワックス等が挙げられる。
【0035】
また、本実施形態にかかる加熱消去可能トナーには、トナーの帯電特性を調整する目的で、帯電制御剤(charge control agent) を配合することができる。本実施形態にかかる加熱消色可能トナーは、消色した際に色が残らないことが要求されるため、帯電制御剤は無色または透明であることが好ましい。
【0036】
このような帯電制御剤として、負帯電用のものでは、例えばオリエント化学のE−89(カリックスアレーン誘導体)、日本カーリットのN−1、N−2、N−3(ともにフェノール系化合物)、LR147(ホウ素系化合物)、藤倉化成のFCA−1001N(スチレンースルホン酸系樹脂)などが挙げられる。これらのうちE−89およびLR147がより好適である。正帯電用のものでは、例えば保土谷化学のTP−302(CAS#116810−46−9)、TP−415(同117342−25−2)、オリエント化学のP−51(4級アミン化合物)、AFP−B(ポリアミンオリゴマー)、藤倉化成のFCA−201PB(スチレン−アクリル四級アンモニウム塩系樹脂)などが挙げられる。
【0037】
また、本実施形態にかかる消去可能トナーの流動性、保存性、耐ブロッキング性、感光体研磨性などを制御するための外添剤を配合してもよい。このような外添剤としては、例えばシリカ微粒子、金属酸化物微粒子、クリーニング助剤などを用いることができる。
【0038】
シリカ微粒子としては、例えば二酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウムなどが挙げられる。金属酸化物微粒子としては、例えば酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなどが挙げられる。クリーニング助剤としては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂微粉末や、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸アルミニウムのような金属脂肪酸化合物類の微粉などが挙げられる。これら外添剤は、疎水化などの表面処理が施されたものであってもよい。
【0039】
トナーの製造方法・機械については、従来公知の製造方法・機械を用いることができ、特に限定されない。一般的なトナーの製造方法として、例えば本実施形態にかかるトナーの構成成分である加熱消去可能な色材、バインダー樹脂、発泡剤等を均一に混合、混練・冷却した後、所定の大きさまで粉砕・分級を行う方法や構成成分の微粒子を水中に乳化・分散させた後、凝集によりトナー粒子を作成し、加熱融着/濾過・乾燥するようなケミカル製法にて本実施形態の消色トナーを製造することが可能である。
【0040】
上記いずれの方法においても、トナー製造中に色材の色が消えないような温度条件でトナーを作る必要がある。このような方法で4〜20μm程度のトナー粒子を作ったあと、必要に応じて上記した外添剤を加え、ヘンシェルミキサー等の混合機にてトナーと混ぜて使用することも可能である。
【0041】
このようにして得られた本実施形態にかかるトナーは、例えばトナーカートリッジに収められ、加熱により定着するシステムを備えたMFP(Multi-Functional Peripheral)等の画像形成装置に装着されて電子写真法による画像形成に使用される。また、紙に乗ったトナーを更に定着温度よりも高い消去温度にて消色するシステムに使用される。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されないことは勿論である。尚、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0043】
<カプセル化された消去可能な着色微粒子(色材)Aの調製>
ロイコ染料として3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1部、顕色剤として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5部、消色剤としてピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル化合物50部からなる成分を加温溶解した。溶解後、カプセル化剤として芳香族多価イソシアネートプレポリマー20部、酢酸エチル40部を混合した。得られた溶液を8%ポリビニルアルコール水溶液250部中に投入し、乳化分散し、90℃で約1時間攪拌を続けた。その後、反応剤として水溶性脂肪族変性アミン2部を添加し、液温を90℃に保って約3時間攪拌を続けて無色のカプセル粒子を得た。得られたカプセル粒子分散体を冷凍庫に入れて発色させ、固液分離を行い乾燥させ、青色の着色粒子Aを得た。
【0044】
得られた着色粒子Aを島津製作所社製SALD7000にて測定したところ、その体積平均粒径は2μmであった。また、完全消色温度(Th)は79℃で、完全発色温度(Tc)は−10℃であった。
【0045】
[実施例1]
トナー処方:
ポリエステル樹脂A(Tg;45℃) 84部
ライスワックス 5部
着色粒子A 10部
炭酸水素ナトリウム 1部
上記処方の材料を計量し、ヘンシェルミキサーを用いて均一に混合した後、80℃に温度設定した2軸混練機にて混練した。混練されたトナー組成物はベルトクーラにて冷却した後ハンマーミルにて2mm以下に粗砕し、気流式粉砕分級機を通して平均粒径8μmの粒子を作成した。作成した粒子に、外添剤として疎水性シリカ2部、酸化チタン0.5部を加え、ヘンシェルミキサーにて混合したあと200メッシュの篩を通してトナーを得た。なお、作成したトナーは混練の熱により消色するため、−20℃の冷凍庫に2日間保管して冷却して再発色させた。
【0046】
得られたトナーをシリコン樹脂でコートしたフェライトキャリアと混合し、東芝テック製MFP(e-Studio4520C)にて画像出しを行い、以下の方法にて評価を行なった。なお、MFPの定着温度を70℃に設定し、紙送り速度を30 mm/secに調整した。
【0047】
(画像濃度)
マクベス社製 画像濃度計 RD-918 にて測定。
【0048】
(グロス度)
堀場製作所製 光沢度計 グロスチェッカIG-320 にて測定。
【0049】
得られた発色画像の画像濃度は、0.5であった。また、得られた発色画像のグロス度は6であった。
【0050】
上記画像出しにより得られた発色画像を、定着器温度を100℃に設定し、紙送り速度100mm/secで搬送することにより、発色画像が無色になることが確認された。消色したトナーが残留している画像跡のグロス度を測定したところ8であり、樹脂が残留していることはほとんど目立たなかった。
【0051】
[比較例1]
トナー処方:
ポリエステル樹脂A(Tg;45℃) 85部
ライスワックス 5部
着色粒子A 10部
以上の処方の材料を実施例1と同様に混合し、最終的にトナー化まで行った。
【0052】
実施例1と同様に、得られたトナーをシリコン樹脂でコートしたフェライトキャリアと混合し、東芝テック製MFP(e-Studio4520C)にて画像出しを行った。得られた発色画像の画像濃度は0.52であった。また、得られた発色画像のグロス度は23だった。
【0053】
上記画像出しで得られた発色画像を実施例1と同様の消色処理を行ったところ、色素の色は認められないものの、グロス度は26になり、消色したトナーが残留している画像跡にてかりがあるため、トナー画像を消せたとみなすことは困難であった。
【0054】
[比較例2]
トナー処方:
ポリエステル樹脂B(Tg;60℃) 85部
ライスワックス 5部
着色粒子A 10部
以上の処方の材料を実施例1と同様に混合し、最終的にトナー化まで行った。
【0055】
実施例1と同様に、得られたトナーをシリコン樹脂でコートしたフェライトキャリアと混合し、東芝テック製MFP(e-Studio4520C)にて画像出しを行ったが、定着しなかった。このため、定着器の設定温度を70℃から120℃に変更し評価を行った。設定した定着温度が色材の消色温度を超えるものだったため、トナー画像は消色してしまい画像濃度は0.08であった。なお、グロス度は8であった。
【0056】
上記画像出しで得られた消色画像を、更に150℃設定にて消色処理を行ったところ、グロス度は9であり、残留トナーの跡はほとんど目立たなかった。消色温度の低い色材を使って、比較実験の目的で実験を行ったが、Tgが高く定着可能温度の高い樹脂を使う場合グロスの問題はなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱消去可能な色材と、
バインダー樹脂と、
発泡剤と
を含むことを特徴とする加熱消色可能なトナー。
【請求項2】
前記色材は、呈色性化合物、顕色剤及び消色剤を含む請求項1に記載の加熱消色可能なトナー。
【請求項3】
前記発泡剤の分解温度は、消去温度よりも低く、且つ定着温度よりも高いことを特徴とする請求項1又は請求項2に項記載の加熱消色可能なトナー。
【請求項4】
前記発泡剤の配合量は、0.01wt%から10wt%の範囲である請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の加熱消色可能なトナー。
【請求項5】
前記色材は、マイクロカプセル化されている請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の加熱消色可能なトナー。
【請求項6】
さらに、ワックスを含む請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の加熱消色可能なトナー。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載のトナーを用いて加熱定着により媒体上にトナー画像を形成する工程と、
前記トナー画像を前記加熱定着の温度よりも高い温度で加熱消色する工程を含む加熱消色方法。

【公開番号】特開2011−232739(P2011−232739A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59268(P2011−59268)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】