説明

電子写真用2成分現像剤

【課題】経時及び複写機本体内での熱的、機械的ストレスを受ける環境下では、2成分現像剤の流動性が著しく低下し、出力画像の濃度ムラを生じてしまう。また、多数部印字の際には現像剤の流動性が低下し搬送不足による濃度ムラが生じ、得られる出力画像が著しく劣化する。
【解決手段】トナーに対するワックス材含有率をA(重量%)とし、電子写真用2成分現像剤に対するトナー濃度をT(重量%)とし、上記キャリア芯材の体積抵抗をB(Ωcm)とし、上記キャリアの体積抵抗をC(Ωcm)としたとき、下記式(1)
10.4≦log((C/B)/(A×T))≦17.9 …(1)
を満たす2成分現像剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用2成分現像剤に関し、より詳しくは、電子写真方式を用いた複写機やプリンタに代表される画像形成装置にて形成された静電潜像を顕在化するための2成分現像剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタや複写機などの電子写真技術を利用した画像出力機器には、像担持体上に形成された静電潜像を現像し可視像を形成するための現像剤が用いられている。従来から、現像剤として、トナーとキャリアとから成る2成分現像剤と、トナー単体から成る一成分現像剤とが用いられてきた。これら現像剤による現像方式のうち、2成分現像剤を用いた磁気ブラシ現像方式は、他の現像方式と比較して、画質及び高速印刷の面で優れているため、広く利用されている。
【0003】
磁気ブラシ現像方式を用いた画像形成装置は、2成分現像剤を担持させる現像剤担持体と、静電潜像が形成された像担持体とを備えている。また、現像剤担持体は、円筒形状の金属スリーブと、その内部に備えられたマグネットローラとを備えている。また、マグネットローラは、磁界発生手段である永久磁石を複数有し、各永久磁石は、N極とS極とが交互になるように配設されている。
【0004】
このような画像形成装置では、次の方法により、像担持体に可視像が形成される。まず、現像剤担侍体における金属スリーブ表面に2成分現像剤を担持させ、マグネットローラを固定したまま金属スリーブのみを回転させる。これにより、2成分現像剤が、静電潜像が形成された像担侍体と対向する現像領域へ搬送される。そして、現像剤担侍体と像担侍体との間で印加された現像電界により、帯電したトナーのみを像担侍体に静電吸着させて、可視像を形成する。
【0005】
2成分現像剤に含まれるトナーは、現像剤担持体を含む現像ユニット内において、キャリアと混合攪拌される。これにより、トナーは、キャリアと接触して、摩擦帯電される。このようなトナーの性質を利用した電子写真技術として、乾式二成分現像がある。乾式二成分現像では、この摩擦帯電したトナーの静電気力を用いて、電気的にトナーをハンドリングして、画像を形成している。そして、乾式二成分現像においては、トナーの帯電量の制御が重要である。このトナーの帯電量は、画像形成システム上の各種要請から決まるものであり、その値が安定していることがシステムの安定性のために望ましい。
【0006】
また、近年の複写機やプリンタにおいて、印刷の高画質化および高速化が重要視される傾向にある。このとき、特に重要になるのが現像剤の安定性である。すなわち、高画質化を達成するためには、トナーを決められた場所に、決められた量だけ配置する必要がある。電子写真技術では、トナーのハンドリングに、静電気力が用いられている。それゆえ、付着力などの他の外力に打ち勝って、電界により生じた静電力を用いてトナーを移動させるためには、トナーの帯電量を、ある程度以上に高く維持することが要求される。また、マシンの高速化に伴い、印刷枚数が増加するため、メンテナンスに対する要求が強くなっている。それゆえ、長期間に渡って安定的に動作する現像剤が求められている。
【0007】
特に現像剤寿命等を考慮した場合、公知のキャリアの中でも、キャリア芯材に樹脂が被覆された被覆キャリアが優れている。このことから、種々のタイプの被覆キャリアが開発されている。被覆キャリアには、トナーを帯電させ、そのトナーの帯電性能を長期間に渡って維持することが求められている。そのためには、被覆キャリアの耐衝撃性、耐摩耗性、耐環境性とともに、トナーの帯電性や流動性などが安定的に動作することが重要な課題である。
【0008】
このような課題を解決するために、種々の被覆キャリアが提案されている。例えば特許文献1には、メラミン樹脂をキャリア芯材表面に被覆し、硬化させることによって硬い被覆層をもつ被覆キャリアが得られることが記載されている。しかしながら、このキャリアでは、トナー成分のキャリア表面への付着(汚染)を防止できない。
【0009】
このようなキャリア表面のトナー成分の汚染に対する解決策として、例えば特許文献2では、キャリア芯材表面にシリコーン樹脂を被覆することが提案されている。しかしながら、シリコーン樹脂を被覆したキャリアは、その表面が経時的に摩耗するため、結果としてトナー成分の汚染を防止するには不十分である。
【0010】
一方、現像剤の定着離型性をトナーで改善するためには、トナーに含まれる結着樹脂の分子量分布を制御するとともに、トナー中に離型性が高いワックス樹脂を分散させる必要がある。さらには、カラートナーは、一定の定着温度で結着樹脂が溶解することにより、色重ねにおける発色性を保持する。それゆえ、カラートナーでは、結着樹脂の分子量を低くすることにより、樹脂の軟化点を下げる必要がある。
【0011】
その結果、トナー中には非常に低い分子量の成分が存在する。さらに、トナーは、低融点のワックスを含有している。それゆえ、現像剤の定着離型をトナーで改善しようとすると、トナー表面に存在する低融点ワックスの影響によって、トナーの流動性が低下するという新たな問題が生じる。また、最近では、高画質化への取り組みとして、トナー粒子の小径化が進んでいる。このトナー粒子の小径化も、トナーの流動性を低下させる要因となっている。また、トナー粒子が小径化すると、キャリアとの混合剤である2成分現像剤の流動性も低下する。
【0012】
このような課題を解決する方法として、例えば特許文献3に開示された技術が提案されている。特許文献3では、外添剤を有するトナーと、キャリアとを含有する2成分現像剤が開示されている。そして、外添剤は、シリコーンオイルで表面処理されたシリカと、フッ素を含有したシラン系カップリング剤で表面処理された酸化チタンとを合わせて含有する。また、キャリアは、球形磁性粒子になっており、その表面が、アミノシラン系カップリング剤が分散されたシリコーン樹脂でコーティングされている。
【0013】
また、低温定着性に優れるトナーとして、ポリエステル樹脂を結着樹脂としたトナーが挙げられる。ポリエステル樹脂は、ガラス転移点が高いにも関わらず、低軟化点の樹脂を得やすいという利点がある。それゆえ、ポリエステル樹脂を結着樹脂としたトナーは、加熱溶融した場合の紙などの被定着シートに対する濡れ性がよく、より低い温度で定着を行うことが可能である。
【0014】
しかしながら、従来汎用されているポリエステル樹脂のなかには、定着過程で、オフセット現象が生じる温度が低い樹脂もある。オフセット現象とは、トナー画像の一部が加熱ローラー表面に付着して転移し、次の被定着シートに汚れを発生させる現象のことである。それゆえ、ポリエステル樹脂を結着樹脂としたトナーでは、広い定着温度域で得ることが困難であった。この解決法として、キャリアの被覆樹脂量を増加させることも検討されている。しかしながら、キャリアの被覆樹脂量の増加は、キャリアの高抵抗化につながり、画質劣化が生じるおそれがあった。
【0015】
さらには、低融点のワックス材料を含有するトナーを用いることで、低温定着性を向上させることも考えられる。しかしながら、トナーにワックス材料を含有させるだけでは、トナーを粉砕する際に、トナー表面にワックス界面が露出し、トナーの流動性が悪化する。そして、キャリア表面へ汚染(スペント)するトナーが増加することによって、帯電性能を維持することが困難になる。一方、トナー中のワックス分散を微細化すると、トナー定着時において、ワックスが表面に少なくなるため、オフセット領域が狭くなるという課題があった。
【0016】
特許文献4では、トナー表面のワックス露出量Xとトナーに含有されるワックス量Yとを制御することにより、トナーの流動性が良好な現像剤を実現している。
【0017】
また、特許文献5には、トナーに含まれるポリエチレン系ワックスとして、針入度が5dmm乃至12dmm、130℃における溶解粘度が15cps以下のワックスを用い、キャリアとして、印加電圧10V/cmにおける体積抵抗が10Ωcm乃至1012Ωcmであるキャリアを用いた静電荷像現像剤が記載されている。これにより、トナーの粉体流動性、耐凝集性(耐ブロッキング性)に優れた静電荷像現像剤を実現している。
【特許文献1】特開平2−79862号公報(平成2(1990)年 3月20日公開)
【特許文献2】特開昭61−204643号公報(昭和61(1986)年 9月10日公開)
【特許文献3】特開平11−38670号公報(平成11(1999)年 2月12日公開)
【特許文献4】特開平9−319158号公報(平成9(1997)年12月12日公開)
【特許文献5】特開平10−123755号公報(平成10(1998)年 5月15日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
最近では、複写機にもプリンタ機能を付加させた複合機が多く、コピーやプリント枚数が少数であり、コピー、プリント枚数に対して現像における現像剤の攪拌時間が多くなる傾向にある。
【0019】
ワックスを分散したオイルレストナーには、定着離型性を確保するために、ワックスが分散されている。それゆえ、オイルレストナーを含む2成分現像剤に熱ストレスが加わると、トナー表面にワックスが浸み出し、キャリア表面にもワックスが付着することとなる。さらには、駆動部や定着装置からの熱によって、複写機内部は、高温環境下になる。この熱によって、現像剤は大凡10〜20℃の温度上昇が確認された。この温度上昇によって、トナー表面に浸み出したワックスは、放置後もトナー表面やキャリア表面に存在する。このために、再度、複写機本体が稼働した際には、ワックスが容易にキャリア表面を汚染してしまう。その結果、現像剤は、トナーへの帯電性能が低下し、流動性が低下する。これによって、画質劣化が発生し、現像剤寿命を極端に短くしてしまう。
【0020】
特に、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤の流動性が悪化すると、現像剤担持体を含む現像ユニット内で2成分現像剤が凝集してしまう。そして、この凝集により、2成分現像剤の像担侍体への搬送能が低下する。
【0021】
特許文献1〜5に開示された2成分現像剤は、トナーの流動性・耐凝集性を良好にし、安定なトナー定着を実現している。しかしながら、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤の流動性について考慮すると、充分な流動性を得るに至っていなかった。すなわち、従来の2成分現像剤では、現像時における現像剤の流動性の確保と、トナーの定着安定性との両立が困難であった。
【0022】
本発明は、従来技術における上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、トナー定着性を維持し、トナーとキャリアとからなる現像剤の流動性が良好であると同時に、長期間の使用にも耐えうる電子写真用2成分現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者等は、従来の技術における上述のような課題を改善すべく、2成分現像剤について研究、検討した結果、現像剤の流動性の悪化は、トナーに含まれるワックスがキャリアに流出する(付着する)ことに起因することを見出した。そして、このワックスの付着は、キャリア表面の樹脂被覆状態に左右されることを見出した。そして、トナーのワックス内添量及び現像剤に対するトナー濃度と、キャリア粒子の樹脂被覆前後の体積抵抗変化率との比率を特定の比率に設定することにより、現像剤の流動性が良好であると同時に、長期間の使用にも耐えうる現像剤を提供できることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明の以下の構成を採用することにより、上記の課題解決に成功した。
【0024】
すなわち、本発明の電子写真用2成分現像剤は、上記の課題を解決するために、トナーとキャリアとからなり、上記トナーが結着樹脂、着色剤及びワックス材を含有している電子写真用2成分現像剤において、上記キャリアは、キャリア芯材と、該キャリア芯材表面に樹脂が被覆された樹脂被覆層とを有し、トナーに対するワックス材含有率をA(重量%)とし、電子写真用2成分現像剤に対するトナー濃度をT(重量%)とし、上記キャリア芯材の体積抵抗をB(Ωcm)とし、上記キャリアの体積抵抗をC(Ωcm)としたとき、下記式(1)
10.4≦log((C/B)/(A×T))≦17.9 …(1)
を満たすことを特徴としている。
【0025】
上記の構成において、Bは、キャリア芯材に樹脂被覆層を形成する前の体積抵抗に相当する。一方、Cは、キャリア芯材に樹脂被覆層を形成する後の体積抵抗の相当する。したがって、C/Bは、キャリア粒子の樹脂被覆前後の体積抵抗変化率を示す。また、A×Tは、電子写真用2成分現像剤に対するワックスの含有率を示す。
【0026】
上記の構成によれば、キャリア粒子の樹脂被覆前後の体積抵抗変化率(C/B)及び電子写真用2成分現像剤に対するワックスの含有率(A×T)について、下記式(1)
10.4≦log((C/B)/(A×T))≦17.9 …(1)
を満たすように設計されている。このように設定することにより、現像剤の流動性が良好であると同時に、長期間の使用にも耐えうる現像剤を実現することができる。
【0027】
さらに、トナーは、熱的・機械的ストレスを受け、ワックス樹脂が表面に局所的に存在する。上記の構成によれば、このようなトナーに対しても、キャリアとの付着力を低減し、現像剤の流動性を維持することを可能である。そして、現像剤の帯電性能の低下、流動性低下等によって画質劣化を防ぎ、トナー定着性をも維持することが可能である。
【0028】
また、本発明の電子写真用2成分現像剤では、上記キャリア芯材は、磁性粒子からなり、上記樹脂被覆層は、キャリア芯材表面にアミノシラン系カップリング剤を付着させた後、シリコーン樹脂溶剤をコーティングし硬化した樹脂硬化物からなることが好ましい。このように、キャリア芯材表面にアミノシラン系カップリング剤を付着させた後、シリコーン樹脂溶剤をコーティングすることにより、ワックスの付着を低減するのに適したキャリア表面の樹脂被覆状態を実現することができる。
【0029】
また、本発明の電子写真用2成分現像剤では、上記キャリアの平均粒子径が、35μm〜55μmの範囲内であることが好ましい。このような範囲でキャリアの平均粒子径を設定することにより、静電潜像担持体表面に付着を抑制し、更には、かぶりの発生も抑制できる。
【0030】
また、本発明の電子写真用2成分現像剤では、トナーに対するワックス材含有率Aが、3重量%〜7重量%の範囲内であることが好ましい。このような範囲でトナーに対するワックス材含有率Aを設定することにより、トナーが定着ローラーに付着することを防止できるとともに、熱的・機械的ストレスによる現像剤の流動性低下を防止することができる。
【0031】
以上より、本発明者らは、トナー中に含有されるワックス量とキャリア芯材表面にシリコーン樹脂被覆層を設けたキャリアとを組み合わせることにより、流動性が良好でキャリア表面へのトナースペントが減少し、長寿命且つ帯電安定性に優れ、定着時における耐オフセット性にも優れた現像剤を実現することができた。
【発明の効果】
【0032】
本発明の電子写真用2成分現像剤は、以上のように、上記キャリアは、キャリア芯材と、該キャリア芯材表面に樹脂が被覆された樹脂被覆層とを有し、トナーに対するワックス材含有率をA(重量%)とし、電子写真用2成分現像剤に対するトナー濃度をT(重量%)とし、上記キャリア芯材の体積抵抗をB(Ωcm)とし、上記キャリアの体積抵抗をC(Ωcm)としたとき、下記式(1)
10.4≦log((C/B)/(A×T))≦17.9 …(1)
を満たす構成である。
【0033】
それゆえ、現像剤の流動性が良好であると同時に、長期間の使用にも耐えうる現像剤を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の一実施形態について図1および図2に基づいて説明すると以下の通りである。
【0035】
本実施形態にかかる現像剤1は、電子写真用トナー3と磁性キャリア2とを含む2成分現像剤である。電子写真用トナー3、磁性キャリア2、2成分現像剤1の順に説明する。
【0036】
(電子写真用トナー3)
電子写真用トナー3は、例えば紙等の媒体に付着することによって、画像を形成するものであり、その原料として結着樹脂および着色剤を必須成分としている。また、電子写真用トナーは、上記必須成分以外に、電荷制御剤、離型剤、流動性改良剤などが含まれていてもよい。また、電子写真用トナー3には、粒子径の異なる2種類以上の外添剤が添加されている。なお、本実施形態では、後述する流動性改良剤は、外添剤3aとして用いられる。
【0037】
結着樹脂は、所謂ワックスと呼ばれるものであり、トナーを紙表面に固定するときの糊として機能する添加物である。このような結着樹脂としては、特に限定されるものではなく、黒トナー用またはカラートナー用の公知の結着樹脂を使用することができる。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。また、原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応を行って得られる樹脂を用いてもよい。結着樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
ここで、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合、ポリエステル樹脂を得るための芳香系のアルコール成分としては、例えば、ビスフェノールA、ポリオキシエチレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0039】
また、上記ポリエステル樹脂の多塩基酸成分としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の二塩基酸類、トリメリット酸、トリメチン酸、ピロメリット酸等の三塩基以上の酸類及びこれらの無水物、低級アルキルエステル類が挙げられ、耐熱凝集性の点からテレフタル酸、もしくはその低級アルキルエステルが好ましい。
【0040】
ここで、電子写真用トナー3を構成する上記ポリエステル樹脂の酸価は、5〜30mgKOH/gの範囲であることが好ましい。酸価が5mgKOH/g未満になると、樹脂の帯電特性が低下し、また後述するように帯電制御剤がポリエステル樹脂中に分散しにくくなる。これにより、帯電量の立ち上がり、または電子写真用トナー3の連続使用による繰り返し現像の帯電量安定性に悪影響を及ぼすおそれがある。また、酸価が30mgKOH/gを超えると、水分を吸着し易くなり、環境条件において、例えば、高湿下においては帯電立ち上がりが低下し帯電量安定性に悪影響を及ぼし、例えば、低湿下においては、帯電性能が高く、現像量の低下を招くなど、帯電安定性に悪影響を及ぼしてしまう。
【0041】
また、着色剤としては、所望の色に応じて種々の着色剤を用いることができ、例えば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、シアントナー用着色剤、ブラックトナー用着色剤等が挙げられる。
【0042】
具体的には、イエロートナー用着色剤として、例えば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17などのアゾ系顔料、黄色酸化鉄、黄土などの無機系顔料、C.I.アシッドイエロー1などのニトロ系染料、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19、C.I.ソルベントイエロー21などの油溶性染料などが挙げられる。
【0043】
マゼンタトナー用着色剤としては、例えば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10、C.I.ディスパーズレッド15などが挙げられる。
【0044】
シアントナー用着色剤としては、例えば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー 25、C.I.ダイレクトブルー86などが挙げられる。
【0045】
ブラックトナー用着色剤としては、例えば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。また、ブラックトナー用着色剤は、これら例示した各種カーボンブラックの中から、得ようとする電子写真用トナーの設計特性に応じて、適切なカーボンブラックを適宜選択すればよい。
【0046】
着色剤としては、これらの顔料以外にも、紅色顔料、緑色顔料などを使用してもよい。着色剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、着色剤として、同色系のものを2種以上用いてもよいし、異色系のものをそれぞれ1種または2種以上用いてもよい。
【0047】
着色剤の形態としては、着色可能である限り限定されるものではなく、例えばマスターバッチの形態で使用される。着色剤のマスターバッチは、一般的なマスターバッチと同様にして製造できる。例えば、合成樹脂の溶融物と着色剤とを混練して着色剤を合成樹脂中に均一に分散させた後、得られる溶融混練物を造粒することによって製造できる。合成樹脂には、電子写真用トナー3の結着樹脂と同種のものか、もしくは電子写真用トナー3の結着樹脂に対して良好な相溶性を有するものが使用される。このとき、合成樹脂と着色剤との使用割合は、特に制限されないが、好ましくは合成樹脂100重量部に対して、30〜100重量部である。また、マスターバッチは、粒径2〜3mm程度に造粒される。
【0048】
また、着色剤の使用量は、特に制限されないが、好ましくは結着樹脂100重量部に対して5〜20重量部である。これはマスターバッチ量ではなく、マスターバッチに含まれる着色剤そのものの量である。着色剤をこの範囲で用いることによって、電子写真用トナー3の各種物性を損なうことなく、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
【0049】
電荷制御剤は、電子写真用トナー3の摩擦帯電性を制御することを目的として添加される。電荷制御剤としては、この分野で常用される正電荷制御用または負電荷制御用のものを使用することができる。正電荷制御用の電荷制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。負電荷制御用の電荷制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。これら例示の電荷制御剤の中でも、ホウ素化合物は、重金属を含まないものとして特に好ましい。また、正電荷制御用の電荷制御剤と負電荷制御用の電荷制御剤とは、それぞれの用途に応じて使い分ければよい。また、電荷制御剤は、1種を単独で使用してもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい。電荷制御剤の使用量は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できる。好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部である。
【0050】
離型剤とは、トナーが紙に定着する際に、紙と定着ローラーとの剥離性を向上させるものである。そのような離型剤としては、この分野で常用されるものを使用でき、例えば、パラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、低分子量ポリプロピリンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)およびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸などが挙げられる。なお、誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。離型剤の使用量は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できる。好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.2〜20重量部である。
【0051】
流動性改良剤は、外添剤3aとして用いられ、例えば、電子写真用トナー3表面に付着させることによってその効果が発揮される。流動性改良剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムなどが挙げられる。流動性改良剤は、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。流動性改良剤の使用量は、特に制限されないが、好ましくは、電子写真用トナー3が100重量部に対して0.1〜3.0重量部である。
【0052】
以下、電子写真用トナー3の作製方法の一例について説明するが、本実施の形態に係る電子写真用トナー3を得る方法は、この作製方法に限定されるものではない。
【0053】
まず、流動性改良剤を除くトナー原料を、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、メカノミル、Q型ミキサなどの混合機により混合する。そして、得られた原料混合物を、2軸混練機、1軸混練機、連続式2本ロール型混練機などの混練機によって70〜180℃程度の温度にて溶融混練する。そして、このトナー原料の溶融混練物を冷却固化する。そして、冷却固化後、トナー原料の溶融混練物を、カッターミル、フェザーミルなどによって粗粉砕した後、気流式のジェットミル、流動層型ジェット粉砕機などで微粉砕する。なお、これらの微粉用粉砕機は、複数の方向からトナー粒子を含む気流を衝突させることによってトナー粒子同士を衝突させてトナー粒子の粉砕を行うものである。このような粉砕機は、例えば、ホソカワミクロン株式会社などから市販されている。これによって、特定の粒度分布を有する非磁性の電子写真用トナー3を製造することができる。
【0054】
電子写真用トナー3の粒子径は、特に限定されるものではないが、出力画像の高画質化のためには、平均粒径が5〜7μmの範囲であることが好ましい。さらに、必要に応じて、製造された電子写真用トナー3について、分級などの粒度調整を行ってもよい。このように製造された電子写真用トナー3に対して、上記外添剤3aとしての流動性改良剤を公知の方法で添加する。なお、電子写真用トナー3の製造方法は上記に限定されるものではない。
【0055】
(磁性キャリア2)
磁性キャリア2は、トナーに充分な電荷を付与することなどを考慮すると、キャリア芯材(磁性体芯粒子、磁性体芯材)2aの表面に、電荷制御剤および導電性微粒子を含有する樹脂組成物からなる被覆層2bが形成されたキャリアが好ましい。
【0056】
キャリア芯材2aとしては、この分野で常用されるものを使用でき、その材質として、例えば、鉄、銅、ニッケル、コバルトなどの磁性金属、フェライト、マグネタイトなどの磁性金属酸化物などが挙げられる。キャリア芯材2aが、上記のような磁性体であると、磁気ブラシ現像法に用いる2成分現像剤に好適な磁性キャリア2が得られる。キャリア芯材2aの体積平均粒子径は、25〜150μmの範囲であることが好ましく、体積平均粒子径が25〜90μmの範囲であることが特に好ましい。なお、本明細書において、体積平均粒子径とは、粒度測定器(商品名:マイクロトラックMT3000、日機装(株)製)を用いて測定される値である。
【0057】
また、被覆層2bは、キャリア芯材2a表面に被覆されている。被覆層2bを構成する樹脂組成物(被覆用樹脂組成物)は、電子写真用トナー3に含まれる電荷制御剤と同じ成分の荷電制御剤と、導電性微粒子とが、樹脂に含有された組成物である。
【0058】
被覆用樹脂組成物に含まれる樹脂としては、特に限定されず、公知のものを使用できる。しかしながら、電子写真用トナー3との離型性、およびキャリア芯材2aとの密着性を両立できるという点から、シリコーン樹脂を使用することが、より良好な結果を得ることにつながる。
【0059】
シリコーン樹脂としては、特に制限されず、この分野で常用されるシリコーン樹脂を使用できるが、架橋性シリコーン樹脂が好ましい。架橋型シリコーン樹脂は、下記の化学式に示すように、Si原子に結合する水酸基同士または水酸基と基−OXとが加熱脱水反応、常温硬化反応などによって架橋して硬化する公知のシリコーン樹脂である。
【0060】
【化1】

【0061】
架橋型シリコーン樹脂としては、加熱硬化型シリコーン樹脂、常温硬化型シリコーン樹脂のいずれを使用することができる。加熱硬化型シリコーン樹脂を架橋させるためには、該樹脂を200〜250℃程度に加熱する必要がある。常温硬化型シリコーン樹脂を硬化させるために、加熱する必要がない。しかしながら、常温硬化型シリコーン樹脂の硬化時間の短縮のために、150〜280℃で加熱することが好ましい。
【0062】
また、架橋型シリコーン樹脂の中でも、上記化学式のRで示される1価の有機基が、メチル基であるシリコーン樹脂が好ましい。Rがメチル基である架橋型シリコーン樹脂は、架橋構造が緻密である。それゆえ、この架橋型シリコーン樹脂を用いて被覆層2bを形成すると、撥水性、耐湿性などの良好な磁性キャリア2が得られる。ただし、架橋構造が緻密になりすぎると、樹脂被覆層が脆くなる傾向があるので、架橋型シリコーン樹脂の分子量の選択が重要である。
【0063】
また、架橋型シリコーン樹脂中の珪素と炭素の重量比(Si/C)が0.3〜2.2の範囲であることが好ましい。Si/Cが0.3未満である場合、被覆層2bの硬度が低下し、磁性キャリア2の寿命などが低下するおそれがある。一方、Si/Cが2.2を超えると、磁性キャリア2の電子写真用トナー3に対する電荷付与性が、温度変化により影響を受けやすくなり、被覆層2bが脆化するおそれがある。
【0064】
被覆用樹脂組成物の樹脂として、架橋型シリコーン樹脂を用いる場合、市販のものを使用できる。市販の架橋型シリコーン樹脂としては、例えば、SR2400、SR2410、SR2411、SR2510、SR2405、840RESIN、804RESIN(いずれも商品名、東レダウコーニング(株)製)、KR271、KR272、KR274、KR216、KR280、KR282、KR261、KR260、KR255、KR266、KR251、KR155、KR152、KR214、KR220、X−4040−171、KR201、KR5202、KR3093(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)などが挙げられる。また、架橋型シリコーン樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
被覆層2bに含まれる電荷制御剤としては、電子写真用トナー3に含まれる電荷制御剤と同一成分のものを用いるのがよい。
【0066】
従って、磁性キャリア2の電荷制御剤として、正電荷制御用あるいは負電荷制御用の電荷制御剤を、電子写真用トナー3に含まれる電荷制御剤に合わせて使用すればよい。正電荷制御用の電荷制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。また、負電荷制御用の電荷制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。これら電荷制御剤の中でも、ホウ素化合物は、重金属を含まないので特に好ましい。また、電荷制御剤は、1種を単独で使用してもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい。電荷制御剤の使用量は、特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるが、好ましくは、被覆用樹脂組成物に含まれる樹脂100重量部に対して、0.5〜3重量部である。
【0067】
導電性粒子としては、例えば、導電性カーボンブラック、導電性酸化チタンおよび酸化スズなどの酸化物が用いられる。また、少ない添加量で導電性を発現させる点では、カーボンブラック等が好適である。しかしながら、カラートナーに対しては、磁性キャリア2の被覆層2bからカーボンが脱離することが懸念される。この場合、導電性粒子として、アンチモンをドープさせた導電性酸化チタンなどが用いられる。また、導電性粒子の使用量は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるが、好ましくは、被覆用樹脂組成物に含まれる樹脂100重量部に対して10重量部以下である。
【0068】
さらに、磁性キャリア2に、電子写真用トナー3の帯電量の調整の目的で、シランカップリング剤を含有してもよい。さらに詳細に説明すると、電子供与性の官能基を有するシランカップリング剤が好ましく用いられる。シランカップリング剤の具体例としては、アミノ基含有シランカップリング剤が挙げられる。アミノ基含有シランカップリング剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、以下の一般式(a)で表されるものを用いることができる。
【0069】
(Y)nSi(R)m …(a)
(式中、m個のRは同一または異なってアルキル基、アルコキシ基または塩素原子を示す。n個のYは同一または異なってアミノ基を含有する炭化水素基を示す。mおよびnはそれぞれ1〜3の整数を示す。ただし、m+n=4である。)
上記一般式(a)において、Rで示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基などが好ましい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基などの炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状のアルコキシ基が挙げられ、これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基などが好ましい。Yで示されるアミノ基を含有する炭化水素基としては、例えば、下記化学式、
−(CH)a−X
(式中、Xはアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アミノアルキルアミノ基、フェニルアミノ基またはジアルキルアミノ基を示す。aは1〜4の整数を示す。)、または、
−Ph−X
(式中、Xは前記に同じ。−Ph−はフェニレン基を示す。)などが挙げられる。
【0070】
アミノ基含有シランカップリング剤の具体例としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0071】
N(HC)Si(OCH
N(HC)Si(OC
N(HC)Si(CH)(OCH
N(HC)HN(HC)Si(CH)(OCH
NOCHN(HC)Si(OC
N(HC)HN(HC)Si(OCH
N−Ph−Si(OCH(式中−Ph−はp−フェニレン基を示す。)
Ph−HN(HC)Si(OCH(式中Ph−はフェニル基を示す。)
(HN(HC)Si(OCH
アミノ基含有シランカップリング剤は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。アミノ基含有シランカップリング剤の使用量は、電子写真用トナー3に充分な電荷を付与し、かつ被覆層2bの機械的強度などを著しく低下させることがない範囲から適宜選択される。アミノ基含有シランカップリング剤の使用量は、好ましくは被覆用樹脂組成物に含まれる樹脂100重量部に対して、10重量部以下、さらに好ましくは0.01〜10重量部である。
【0072】
被覆用樹脂組成物は、シリコーン樹脂(特に架橋型シリコーン樹脂)により形成される被覆層2bの好ましい特性を損なわない範囲で、シリコーン樹脂とともに他の樹脂を含むことができる。他の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、アセタール樹脂、ポリカーボネート、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン、これらの共重合体樹脂、配合樹脂などが挙げられる。
【0073】
被覆用樹脂組成物は、二官能性シリコーンオイルを含んでもよい。これにより、シリコーン樹脂(特に架橋型シリコーン樹脂)により形成される被覆層2bの耐湿性、離型性などをさらに向上させることができる。
【0074】
被覆用樹脂組成物は、所定量のシリコーン樹脂、およびアミノ基含有シランカップリング剤を混合することにより製造することが可能である。また、必要に応じて、シリコーン樹脂以外の樹脂(例えば二官能シリコーンオイル)などの添加剤を、適量、混合することによって製造してもよい。
【0075】
被覆用樹脂組成物の一形態としては、上述した被覆用樹脂組成物の構成成分を有機溶媒に溶解させた溶液の形態が挙げられる。有機溶媒としては、シリコーン樹脂を溶解できる溶媒であれば特に限定されない。例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、高級アルコール類、これらの2種以上の混合溶媒などが挙げられる。この溶液形態の被覆用樹脂組成物(以後「コート樹脂液」と称す)を用いれば、キャリア芯材2a表面に被覆層2bを容易に形成することができる。このような被覆層2bの形成方法として、例えば、次の方法が挙げられる。すなわち、まず、キャリア芯材2a表面にコート樹脂液を塗布して塗布層を形成する。そして、加熱乾燥により塗布層から有機溶媒を揮発除去する。さらに、加熱乾燥時または加熱乾燥後に、塗布層を加熱硬化または単に硬化させる。これらの手順によって、キャリア芯材2a表面に被覆層2bが形成され、磁性キャリア2が製造される。
【0076】
コート樹脂液のキャリア芯材2a表面への塗布方法としては、例えば、キャリア芯材2aをコート樹脂液に含浸させる浸漬法、キャリア芯材2aにコート樹脂液を噴霧するスプレー法、流動気流により浮遊状態にあるキャリア芯材2aにコート樹脂液を噴霧する流動層法などが挙げられる。これらの中でも、膜形成を容易にできることから、浸漬法が好ましい。
【0077】
また、上記塗布層の加熱乾燥のために、乾燥促進剤を用いてもよい。乾燥促進剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、ナフチル酸、オクチル酸などの鉛塩、鉄塩、コバルト塩、マンガン塩、亜鉛塩といった金属石鹸、エタノールアミンなどの有機アミン類などが挙げられる。乾燥促進剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
塗布層の硬化は、シリコーン樹脂の種類に応じて、加熱温度を選択しながら行う。例えば、150〜280℃の範囲に加熱して、塗布層の硬化を行うことが好ましい。もちろん、シリコーン樹脂として常温硬化型シリコーン樹脂を用いる場合には、加熱は必要ない。しかしながら、この場合であっても、150〜280℃の範囲に加熱して、塗布層の硬化を行ってもよい。これにより、形成される被覆層2bの機械的強度を向上させることができるとともに、硬化時間を短縮することができる。
【0079】
なお、コート樹脂液の全固形分濃度は、特に制限されず、キャリア芯材2aへの塗布作業性などを考慮しつつ、硬化後の被覆層2bの膜厚が通常5μm以下、好ましくは0.1〜3μm程度になるように調整すればよい。
【0080】
このようにして得られる磁性キャリア2は、高電気抵抗でかつ球形であることが好ましいが、導電性または非球形であっても本発明の効果が失われるものではない。
【0081】
(2成分現像剤1)
2成分現像剤1は、電子写真用トナー3と磁性キャリア2とを混合することにより製造される。電子写真用トナー3と磁性キャリア2との混合割合は、特に制限はない。ただし、2成分現像剤1を高速画像形成装置(A4サイズの画像で40枚/分以上)に用いることを考慮すると、電子写真用トナー3と磁性キャリア2との混合割合は、以下のように調整されていればよい。すなわち、磁性キャリア2の体積平均粒子径/電子写真用トナー3の体積平均粒子径が5以上である2成分現像剤1において、磁性キャリア2の総表面積(全キャリア粒子の表面積の総和)に対する電子写真用トナー3の総投影面積(全トナー粒子の投影面積の総和)の割合(トナーの総投影面積/キャリアの総表面積×100)が30〜70%になるように調整されていればよい。
【0082】
これによって、電子写真用トナー3は、帯電性が充分良好な状態で安定的に維持される。それゆえ、このような電子写真用トナー3を含む2成分現像剤1は、高速画像形成装置においても、高画質画像を安定的に、かつ長期的に形成できる。例えば、電子写真用トナー3の体積平均粒子径が6.5μmであり、かつ磁性キャリア2の体積平均粒子径が90μmである2成分現像剤1、磁性キャリア2の総表面積に対する電子写真用トナー3の総投影面積の割合を30〜70%にする。このとき、2成分現像剤1における電子写真用トナー3と磁性キャリア2との混合割合は、100重量部の磁性キャリア2に対して電子写真用トナー3が2.2〜5.3重量部程度含む割合になる。このような2成分現像剤1を用いて高速現像すると、電子写真用トナー3の搬送量と、電子写真用トナー3の消費量に応じて現像装置の現像槽に供給される電子写真用トナー3の供給量とがそれぞれ最大になる。しかしながら、電子写真用トナー3の需給バランスが損なわれることがない。そして、2成分現像剤1における磁性キャリア2の量が2.2〜5.3重量部よりも多くなると、トナー搬送量が少なくなり、所望の現像特性が得られなくなる傾向にある。その一方で、磁性キャリア2の量が上記範囲より少ない場合には、電子写真用トナー3の帯電量が低くなる傾向があり、かぶりや現像濃度の不安定化がおき、結果として画質の劣化を招く。
【0083】
なお、電子写真用トナー3の総投影面積は、本実施形態では、以下のように算出する。電子写真用トナー3の比重を1.0とし、コールターカウンタ(商品名:コールターカウンタ・マルチサイザーII、ベックマン・コールター社製)で得られた体積平均粒子径を基に算出する。すなわち、混合する電子写真用トナー3の重量に対するトナー個数を算出し、トナー個数×トナー面積(円と仮定して算出)を電子写真用トナー3の総投影面積とする。同様に、磁性キャリア2の表面積は、マイクロトラック(商品名:マイクロトラックMT3000、日機装(株)製)より得られた粒子径を基に混合するキャリア重量から総表面積を算出する。このときの磁性キャリア2の比重は4.7とする。上記で得られた、トナー総投影総面積/キャリア総表面積×100で混合比(混合割合)を算出する。
【0084】
本発明において、2成分現像剤1は、電子写真用トナー3に対するワックス材含有率をA(重量%)とし、2成分現像剤1に対する電子写真用トナー3濃度をT(重量%)とし、キャリア芯材2aの体積抵抗をB(Ωcm)とし、磁性キャリア2の体積抵抗をC(Ωcm)としたとき、下記式(1)
10.4≦log((C/B)/(A×T))≦17.9 …(1)
を満たすことを特徴としている。
【0085】
一般的に、キャリア芯材2aに対する樹脂被覆量の増加に応じて、磁性キャリア2の抵抗値は高くなる。その一方で、電子写真用トナー3に含有されているワックス量が低下すると、現像剤搬送率(現像剤の流動性)が高くなる。つまり、電子写真用トナー3に含有しているワックス量が多いほど、電子写真用トナー3表面に漏出しているワックス樹脂量が多くなる。これにより、粒子間の付着力が大きくなり、現像剤として流動性の低下が発生する。
【0086】
後述の実施例に示されるように、本発明者等は、キャリア芯材2a表面に形成している樹脂被覆量を増加させることにより、現像剤の搬送率が向上することを見出した。その一方で、トナー帯電量は、樹脂被覆量の増加とともに低帯電化していた。
【0087】
また、一般的に、キャリア芯材2a表面に樹脂をコートすることにより、磁性キャリア2の体積抵抗値(C)が上昇する。本発明においては、抵抗値増加率(C/B)は、キャリア芯材2a表面における被覆層2bの被覆状態を示す指標である。抵抗増加率が高い方が、キャリア芯材2aに対する被覆層2bの被覆率が高くなる傾向になる。すなわち、抵抗増加率が高くなるということは、2成分現像剤1の電子写真用トナー3に含まれるワックス成分が付着しにくくなることを示す。その一方で、抵抗増加率が高すぎると、電子写真用トナー3を帯電させる能力が低下するという問題がある。
【0088】
2成分現像剤1では、抵抗値増加率(C/B)、及び2成分現像剤1の電子写真用トナー3に含まれるワックス成分(A×T)とが、上記式(1)を満たすように設定することで、電子写真用トナー3の帯電能力の低下を防止するとともに、電子写真用トナー3に含まれるワックス成分の磁性キャリア3への付着を防止している。そして、これにより、現像剤の流動性を維持し、トナー飛散を生じさせず、高画質の出力画像を得ることができる2成分現像剤を実現している。
【0089】
なお、キャリア芯材2a表面における被覆層2bの被覆状態は、上記式(1)を満たすように、抵抗値増加率(C/B)が設定されていれば、任意の被覆状態であってもよい。被覆層2bの被覆状態としては、例えば、キャリア芯材2a表面が露出するように被覆層2bが被覆された状態、被覆層2bがキャリア芯材2a全体を被覆する状態が挙げられる。
【0090】
特に、キャリア芯材2a表面が露出するように被覆層2bが被覆されている場合、被覆層2bとキャリア芯材2a表面とにより、空隙部が形成されることになる。電子写真用トナー3のワックスは、キャリア芯材2a表面に対し親和性を有する一方、被覆層2bに対しては、親和性が低い。上記式(1)を満たしていれば、キャリア芯材2a表面の露出率(空隙部)が適切に設定され、電子写真用トナー3のワックスをトラップすることが可能になる。
【0091】
(現像装置20および画像形成装置)
本実施形態の現像装置20は、上記した本実施形態の2成分現像剤1を用いて現像を行う。現像装置20は、図2に示すように、2成分現像剤1を格納する現像ユニット10、及び2成分現像剤1を静電潜像担持体15に搬送する現像剤担持体13を備えている。
【0092】
現像ユニット10の内部には、磁性キャリア2と電子写真用トナー3とから成る2成分現像剤1が予め投入されている。そして、2成分現像剤1は、攪拌スクリュー12により攪拌・帯電される。現像剤担持体13の内部には、磁界発生手段が配設されている。2成分現像剤1は、この磁界発生手段から発生する磁界により現像剤担持体13に搬送され、現像剤担持体13表面に保持される。このようにして、現像剤担持体13表面に保持された2成分現像剤1は、現像剤規制部材14により一定層厚に規制され、現像剤担持体13と静電潜像担持体15との近接領域に形成される現像領域に搬送される。現像剤担持体13と静電潜像担持体15間には、現像バイアスによる電界が形成されている。この電界により、現像剤担持体13上の2成分現像剤1の電子写真用トナー3が、静電潜像担持体15上の静電潜像パターンに、電気的に付着する。これにより、静電潜像担持体15上の静電潜像パターンが顕像化される。
【0093】
なお、現像剤担持体13と静電潜像担持体15との間に交流バイアス電圧を印加した場合には、交流電界による現像効率の向上が図られ、高画像濃度からハーフトーンに至る画像濃度範囲が安定して得られる。
【0094】
また、電子写真用トナー3の消費は、トナー濃度センサー16により検知される。現像により電子写真用トナー3が消費されると、消費された分だけ、トナーホッパー17から電子写真用トナー3が補給されることになる。トナー濃度センサー16は、現像ユニット10内のトナー濃度が予め定められた規定トナー濃度に達したことを検知する。トナーホッパー17からの電子写真用トナー3の補給は、トナー濃度センサー16が規定トナー濃度に達したことを検知するまで行われる。このようにして現像ユニット10内の2成分現像剤1に含まれる電子写真用トナー3の濃度は、トナー濃度センサー16が検知するトナー濃度になるように、ほぼ一定に保たれている。
【0095】
本実施形態の画像形成装置は、上記現像装置20を備えていれば、公知の電子写真方式の画像形成装置の構成を適用することができる。本実施形態の画像形成装置は、現像装置20以外の構成として、例えば、表面に静電荷像を形成し得る感光層を有する像担持体と、像担持体表面を所定電位に帯電させる帯電手段と、表面が帯電状態にある像担持体に画像情報に応じた信号光を照射して像担持体の表面に静電荷像(静電潜像)を形成する露光手段と、現像装置20から電子写真用トナー3が供給されて現像された像担持体表面のトナー像を、中間転写体に転写した後記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体表面のトナー像を記録媒体に定着させる定着手段と、トナー像の記録媒体への転写後に像担持体表面に残留するトナー、紙粉などを除去するクリーニング手段と、上記中間転写体に付着した余分なトナーなどを除去するクリーニング手段とを含んでいる。また、本実施形態の画像形成方法は、現像装置20を有する本実施形態の画像形成装置を用いて行われる。
【0096】
静電荷像を現像する際には、静電潜像担持体15上の静電荷像を反転現像法で顕像化する現像工程がトナーの各色毎で実行され、中間転写体上に色の異なる複数のトナー像を重ね合わせて多色トナー像が形成される。本実施形態では、中間転写体を用いた中間転写方式を採用しているが、像担持体から直接記録媒体にトナー像を転写する構成が用いられてもよい。
【実施例】
【0097】
以下に本発明に係る実施例および比較例を説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、本実施例に限定されるものではない。後術する実施例および比較例では、トナー(電子写真用トナー)とキャリア(磁性キャリア)とを含む2成分現像剤を用いた測定を行った。初めに、本実施例および比較例で用いたトナーおよびキャリアの作製方法について説明する。
【0098】
(電子写真用トナー3の作製)
まず、下記(ア)〜(エ)に示す各材料をヘンシェルミキサにて前混合後、二軸押出混練機にて溶融混練した。この混練物をカッテングミルで粗粉砕した後、ジェットミルにて微粉砕し、気流式分級機で分級し、平均粒径6.5μmのトナー母体粒子を作製した。
(ア)結着樹脂 …(T1)ポリエステル樹脂(酸価:21mgKOH/g)
芳香族系アルコール成分:PO−BPAとEP−BPA
酸成分:フマル酸と無水メリット酸
87.5重量%
(イ)顔料 …ナフトール
5重量%
(ウ)ワックス …無極性パラフィンワックス
6重量%
(エ)電荷制御剤…商品名:LR−147(日本カーリット(株)製)
1.5重量%
上記作製したトナー母体粒子97.8重量%に、体積平均径100nmのi―ブチルトリメトキシシランで疎水化処理したシリカ1.2重量%と、体積粒径12nmのHMDSで疎水化処理したシリカ微粒子1.0重量%とを加え、ヘンシルミキサーにて混合し、外添処理を行い、シアン色の評価用トナーを作製した。なお、ここで用いた(エ)電荷制御剤であるLR−147は、物質名「Boro bis (1.1-diphenyl-1-oxo-acetyl) potassium Salt」であり、化学式はC2820BKOで表される。
【0099】
(磁性キャリア2の作製)
下記に示す使用量(部)のシリコーン樹脂、導電性粒子およびトルエンをスリーワンモータにて5分間攪拌し、コート樹脂液を調製した。但し、導電性粒子はあらかじめ分散剤を用いてトルエン溶媒中に分散したものを用いた。また、電荷制御剤については所定の溶液に溶解したものを用いた。このコート樹脂液を、体積平均粒子径45μm、1000重量部の磁性体芯粒子(キャリア芯材2a;フェライト芯材)と混合し、さらに攪拌機に投入して混合した。得られた混合物から減圧および加熱下にてトルエンを除去し、磁性体芯粒子表面に塗布層を形成した。これを、200℃で1時間加熱して塗布層を硬化させて樹脂被覆層(被覆層2b)を形成し、100メッシュのふるいにかけて樹脂被覆キャリア(磁性キャリア2)を製造した。
(A)シリコーン樹脂…商品名:KR−240(東レダウコーニング(株)製)、
商品名:KR−251(東レダウコーニング(株)製)、及び
シリコーン樹脂20%溶液の混合品
100重量部
(B)導電性粒子 …商品名:VULCANXC72(キャボット(株)製)
導電性カーボンブラックトルエン分散液、固形濃度15%液
5重量部
(C)電荷制御剤 …商品名:LR−147(日本カーリット(株)製)
負帯電性電荷制御剤、溶液
20重量部
(D)カップリング剤…商品名:AY43−059(東レダウコーニング(株)製)
100%溶液
1重量部
次に、後述する実施例および比較例での測定および評価方法を説明する。
【0100】
〔評価・試験〕
(I:2成分現像剤1の搬送量測定)
図2に示される現像装置20から現像ユニット10を取り出して、現像ユニット10内での2成分現像剤1の搬送量を測定した。この搬送量は、現像ユニット10内での2成分現像剤1の流動性を示す指標となる。なお、この現像ユニット10として、複写機(シャープ(株)MX−4500N)から取り出された現像ユニットを用いた。
【0101】
まず、(磁性キャリア2の作製)及び(電子写真用トナー3の作製)にて作製された、磁性キャリア2及び電子写真用トナー3を混合し、2成分現像剤1を作製した。そして、作製された2成分現像剤1を現像ユニット10にセットし、その現像ユニット10を温度52.5℃に保たれた恒温層の中に入れた。そして、現像剤担侍体13を430rpmで1時間半回転させるとともに、攪拌スクリュー12により2成分現像剤1を攪拌させた。その後、攪拌スクリュー12により現像剤担侍体13へ搬送される2成分現像剤1の量を測定した。
【0102】
具体的には、恒温槽に入れる前の現像ユニット10内の2成分現像剤1の落下量Aを求めるために、現像剤担持体13を50rpmで駆動し、ギヤを介し駆動される撹拌スクリュー12を回転させながら、現像剤落下用穴から2成分現像剤1を落下させる。そして、落下してくる現像剤量を測定する。測定後、現像ユニット10を、温度環境52.5℃とした恒温槽に入れ、現像剤担持体13を回転速度430rpmで90分間駆動し、現像ユニット10内の2成分現像剤1に機械的ストレスを加える。その後、恒温槽に入れる前と同様に、2成分現像剤1の落下量Bを求める。
【0103】
なお、本実施例では、現像ユニット10内の2成分現像剤1について、恒温槽投入前の落下量Aと、恒温槽投入後の落下量Bとの比率を現像剤搬送率とした。この現像剤搬送率は、加速度的に劣化させた2成分現像剤の流動性を示す指標となる。
【0104】
また、表中の「現像剤搬送率」について、「×」、「△」、「○」、「◎」の評価基準は、以下の通りである。
【0105】
◎:搬送率:75%以上
○:搬送率:50%以上、75%未満
△:搬送率:30%以上、50%未満
×:搬送率:30%未満
搬送率30%以上が、画像濃度及び画質の低下が著しいが、画像の出力は可能なレベルである。一方、搬送率30%未満では、画像出力ができない状態になる。また、搬送率50%以上では、若干の画像濃度低下が生じるが、出力画像が得られる。さらに、搬送率75%以上では、画像濃度及び画質も殆ど恒温槽に投入する前と同等な画質である。これらの搬送率と出力画像との関係に基づき、2成分現像剤1を上記評価基準に分別した。
【0106】
(II:電子写真用トナー3の帯電量測定)
電子写真用トナー3の帯電量は、以下のように測定した。
【0107】
現像ユニット10に配設されている現像スリーブ表面上の2成分現像剤1を採取し、吸引式帯電量測定装置(TREK社:210H−2A Q/M Meter)を用いて帯電量を測定した。そして、この測定値を電子写真用トナー3の帯電量とした。
【0108】
また、(II:電子写真用トナー3の帯電量測定)にて測定したトナー帯電量は、下記評価基準に基づき評価を行った。
【0109】
なお、トナー帯電性の評価基準は、
◎:目標帯電量を満足し、経時において帯電量変化が少ない
○:目標帯電量を満足し、経時において帯電量が低下する
△:目標帯電量を下回り、経時において帯電量変化が少ない
×:目標帯電量を下回り、経時において帯電量が低下する
とした。
【0110】
本実施例においては、トナー帯電性における目標帯電量を、25〜35μC/gとしている。この帯電量は、従来機種のプロセスで画質が最良になる値から求めたものである。それゆえ、トナー現像量及びトナーの転写性を確保するために必要な比電荷量である。
【0111】
なお、帯電量が20μC/gであっても、初期画質には影響せず問題ない。しかしながら、経時において帯電量変化が生じた場合、帯電量不足によるトナーかぶりの影響がある。このために、本実施例では、上記帯電量を目標値としている。
【0112】
(III:磁性キャリア2の粒子における抵抗値測定)
磁性キャリア2の粒子における電気抵抗値(体積抵抗)は、常温・常湿環境下において、ブリッジ抵抗測定治具(対向する電極間の距離1mm、測定電極エリア面積が40×16mm)を用いて測定した。
【0113】
具体的には、まず、(磁性キャリア2の作製)にて作製した磁性キャリア2の粒子(樹脂被覆キャリア粒子;静電潜像現像用キャリア粒子)を、別途測定サンプルとして、電子天秤等で0.2mgに取り分けた。そして、この測定サンプルを、ブリッジ抵抗測定治具の対向する電極間の間に挿入し、該電極の裏側から磁石を用いて、対向電極間に磁性キャリア2のブリッジを形成した。このとき、ブリッジ間の磁性キャリア2を均すために、5〜6回程度タッピングした。ブリッジ間の磁性キャリア2を均一に均した後、1.5×10(V/cm)の電界強度が生じる電圧を印加したときの電流値を、デジタルエレクトロンメータ(アドバンテスト社:R8340)を用いて測定し、電気抵抗値(キャリア抵抗値)を算出した。
【0114】
(IV:磁性体芯粒子単体(キャリア芯材2a)の抵抗値測定)
測定サンプルとしてキャリア芯材2aを用いて、(III:磁性キャリア2の粒子における抵抗値測定)と同様の方法で、ブリッジ抵抗測定治具にセットした。その後、1×10(V/cm)の電界強度が生じる電圧を印加したときの電流値を測定し、デジタルエレクトロンメータ(アドバンテスト社:R8340)を用いて測定し、電気抵抗値(芯材抵抗値)を算出した。
【0115】
(V:体積平均粒径)
トリトンX−100(非イオン性界面活性剤(化学式:C346211))の0.1%純水溶液10mL中に、測定試料約1〜5mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させた。この分散液のうち約2〜5mLを、マイクロトラックMT3000(日機装株式会社)の所定箇所に加えた後、1分間攪拌し、散乱光強度が安定したことを確認し測定を行った。
【0116】
(VI:定着性と出力画質評価)
現像装置20を有するデジタルカラー複写機(シャープ(株)MX−6000N)を用いて、紙面上の定着強度及び画像評価を実施した。まず、上記の方法に基づいて、マゼンタ色の評価用の電子写真用トナー2及び磁性キャリア3を作製した。そして、マゼンタ色の評価用の電子写真用トナー2及び磁性キャリア3を7:93の割合で混合し、2成分現像剤1を作製した。そして、2成分現像剤1を現像装置20に投入し、現像装置20と上記デジタルカラー複写機とを用いてテストチャートを印字した。そして、印字されたテストチャートの画質及び定着性について、下記の判断基準に基づき、目視評価にて判別を実施した。
【0117】
画質評価の判断基準は、上市されている当社製デジタルカラー複写機(シャープ(株)MX−6000N)の標準現像剤を用いた出力画像とを比較し、下記項目の画質評価を実施した。
【0118】
・ドット再現性が高い(ドット周辺のトナー飛散が少ない)
・ライン再現性が高い(ライン幅のバラツキが少ない)
・非画像部でのトナー付着(背景部のトナーかぶり量が少ない)
また、比較結果については、以下の4段階とした。
【0119】
◎:社内基準よりも高画質なレベルの印刷品位
○:社内基準同等レベルの印刷品位
△:社内基準よりも低画質なレベルの印刷品位
×:印字不可能に近いレベル
(VII;キャリア付着)
まず、作成した2成分現像剤を画像形成装置の現像槽に投入し、テストベンチにセットした感光体と現像スリーブとの間に現像バイアスをかけて、キャリア付着を測定した。
【0120】
具体的には、現像後に、非画像部に相当する感光体上における一定面積(37.8cm)へのキャリアの付着個数を計測し、キャリア付着の良否を評価した。なお、評価基準は、キャリア付着数が10個未満であり付着が少なく良好であるものを「◎」、10個以上20個未満であり付着がややあるものを「○」、20個以上であり不良のものを「×」とした。
【0121】
以下に実施例および比較例での測定結果を説明する。
【0122】
(実施例1)
前記(磁性キャリア2の作製)に記載の方法に従い、磁性キャリア2を作製した。ただし、1000重量部の磁性体芯粒子に対するコート樹脂溶液の投入量を、0.5部、0.75部、1部、2部と変化させて、樹脂被覆キャリアを作製した。そして、各樹脂被覆キャリアの抵抗値を、前記(III:磁性キャリア2の粒子における抵抗値測定)に記載の方法に従って測定した。また、実施例1に用いる磁性体芯粒子については、コート樹脂溶液を投入する前に、(IV:磁性体芯粒子(キャリア芯材2a)単体の抵抗値測定)に基づき、抵抗値を測定した。
【0123】
また、前記(電子写真用トナー3の作製)に記載の方法に従い、電子写真用トナーを作製した。ただし、トナーに対するワックスの含有量が下記の条件になるように、トナー1〜3を作製した。
【0124】
トナー1:ワックス;6.5%
トナー2:ワックス;4.5%
トナー3:ワックス;3.0%
上記条件で作製した、マゼンタ色の評価用トナーと、上記作製したコート樹脂液の投入量が異なる(体積抵抗が異なる)各樹脂被覆キャリアとを用いて、2成分現像剤1を作製した。なお、作製した各2成分現像剤1は、2成分現像剤1に対するトナー濃度が7.2重量%となるように調整されている。そして、2成分現像剤1について、前記(I:2成分現像剤1の搬送量測定)に従い、現像ユニット内の現像剤の搬送量を測定した。また、前記(VI:定着性と出力画質評価)に基づき、出力画像の定着時のオフセットによる画質劣化を目視にて確認した。また、定着性については、折り曲げ試験を実施し、出力された画質の総合的な評価を行った。さらに、(VII;キャリア付着)に記載の方法に従い、キャリア付着を評価した。
【0125】
(比較例1)
前記(磁性キャリア2の作製)に記載の方法に従い、磁性キャリア2を作製した。ただし、1000重量部の磁性体芯粒子に対するコート樹脂溶液の投入量を、0.25部、2.5部と変化させて、樹脂被覆キャリアを作製した。そして、各樹脂被覆キャリアの抵抗値を、前記(III:磁性キャリア2の粒子における抵抗値測定)に記載の方法に従って測定した。また、比較例1に用いる磁性体芯粒子については、コート樹脂溶液を投入する前に、(IV:磁性体芯粒子(キャリア芯材2a)単体の抵抗値測定)に基づき、抵抗値を測定した。
【0126】
また、実施例1と同様の条件で作製したトナー1〜3と、上記作製したコート樹脂液の投入量が異なる(体積抵抗が異なる)各樹脂被覆キャリアとを用いて、実施例1と同様のトナー濃度になるように、2成分現像剤1を作製した。そして、実施例1と同様にして、現像ユニット内の現像剤の搬送量、出力画質評価、総合的な評価、キャリア付着の評価を行った。
【0127】
実施例1及び比較例1のキャリア1〜6それぞれにおける、キャリア抵抗値、抵抗増加率、及びトナー帯電量の測定結果を表1に示す。なお、表1においては、樹脂被覆キャリアの抵抗値を「キャリア抵抗」として示している。また、「抵抗増加率」は、磁性体芯粒子の抵抗値に対する樹脂被覆キャリアの抵抗値の増加率(磁性体芯粒子の抵抗値/樹脂被覆キャリアの抵抗値)を示す。「トナー帯電量」は、上記トナー帯電性の評価基準に基づき評価した結果を示す。「樹脂被覆量」は磁性体芯粒子に対するコート樹脂溶液の投入量を示す。また、表1において、「E+x(xは整数)」は、「×10」を意味している。
【0128】
【表1】

【0129】
表1からわかるように、実施例1で用いた樹脂被覆キャリアでは、樹脂被覆量の増加に応じて、樹脂被覆キャリアの抵抗増加率は高くなっている。
【0130】
また、(I:2成分現像剤1の搬送量測定)に従った測定においては、電子写真用トナー3に含有されているワックス量が低下すると、現像剤搬送率が高くなる。つまり、トナーに含有しているワックス量が多いほど、トナー表面に漏出しているワックス樹脂量が多くなっている。これにより、粒子間の付着力が大きくなり、現像剤として流動性の低下が発生している。また、樹脂被覆後のキャリアは、そのキャリア芯材表面に形成している樹脂被覆量を増加させることにより、現像剤の搬送率を向上させていることがわかる。一方、トナー帯電量は、樹脂被覆量の増加とともに低帯電化している。そして、樹脂被覆量が2.5部になると、トナーの静電気保持力が少なく、トナー飛散が発生しており、出力された画質もトナー飛散によるかぶりが生じていた。従って、トナーの帯電量を維持し、かつ、トナー飛散がない画質を得るには、被覆樹脂量は、1000重量部の磁性体芯粒子に対し、2重量部以下であることが好ましい。
【0131】
また、表2は、実施例1及び比較例1のキャリア1〜6それぞれと、実施例1のトナー1〜3それぞれとを混合して作成した2成分現像剤について、キャリア付着の評価、現像剤の搬送量(搬送率)の評価、出力画像の画質評価、及びこれら評価に基づく総合評価を行った結果を示す表である。また、表2には、各2成分現像剤について、条件式(1)「log((C/B)/(A×T))」を算出した値も示している。
【0132】
【表2】

【0133】
表2からわかるように、実施例1の2成分現像剤のうち、下記式(1)を満たしている2成分現像剤は、キャリア付着の評価、現像剤の搬送量(搬送率)の評価、出力画像の画質評価に基づく総合評価が「○」もしくは「◎」である。
【0134】
10.4≦log((C/B)/(A×T))≦17.9 …(1)
式(1)中、Aは、電子写真用トナー2に対するワックスの含有率であり、Bは、磁性体芯粒子単体の抵抗値であり、Cは、樹脂被覆キャリアの抵抗値であり、Tは、2成分現像剤1に対する電子写真用トナー2の濃度である。
【0135】
以下、上記式(1)における「C/B」について、さらに詳述する。なお、「C/B」は、表1における「抵抗増加率」に相当する。
【0136】
まず、実施例1及び比較例1ともに、1.5×10V/cmの電界下での磁性体芯粒子単体の抵抗値(B)は、1.37E+07(1.37×10)Ωcmであった。そして、この磁性体芯粒子表面に樹脂をコートすることにより、抵抗値(C)が上昇する。抵抗値増加率(C/B)は、キャリア芯材(磁性体芯粒子)表面における樹脂のコート状態を示す指標である。抵抗増加率が高い方が、キャリア芯材に対する樹脂の被覆率が高くなる傾向になる。すなわち、抵抗増加率が高くなるということは、2成分現像剤のトナーに含まれるワックス成分が付着しにくくなることを示す。その一方で、抵抗増加率が高すぎると、トナーを帯電させる能力が低下するという問題がある。
【0137】
表2に示されるように、実施例1の2成分現像剤のうち、条件式(1)の範囲内に収まる2成分現像剤であれば、上記問題を回避することが可能である。さらには、現像剤の流動性を維持し、トナー飛散を生じさせず、高画質の出力画像を得ることができる。
【0138】
(実施例2)
本実施例では、キャリア芯材としての磁性体芯粒子の表面に、カップリング剤をコーティングした後、被覆樹脂であるシリコーン樹脂をコートし、樹脂被覆キャリアを作製した。
【0139】
具体的には、カップリング剤としてアミノシラン系カップリング剤(商品名:AY43−059(東レダウコーニング(株)製))を用いた。
【0140】
キャリア芯材表面に、このアミノシラン系カップリング剤を表面にコーティングした後、このコーティングしたキャリア芯材と、導電性微粒子を含有するコート樹脂溶液とを混合し、樹脂被覆キャリア(キャリア7とする)を作製した。
【0141】
本実施例の樹脂被覆キャリアについて、前記(III:磁性キャリア2の粒子における抵抗値測定)に基づき抵抗値を測定した。その結果、被覆樹脂量が0.5部量と少量であるにも拘わらず、磁性キャリアの体積抵抗が該アミノシラン系カップリング剤を用いていない被覆樹脂量0.5部量の磁性キャリア(キャリア1)よりも高抵抗値であった。
【0142】
本実施例のキャリアについて、電子顕微鏡を用いて、その表面の樹脂被覆状態を観察すると、被覆樹脂が薄膜でキャリア芯材全体を被覆し、前記キャリア芯材の露出が殆どないことが判明した。
【0143】
本実施例の樹脂被覆キャリアと実施例1記載のトナー1を用いて、2成分現像剤を作成し、前記(I:2成分現像剤1の搬送量測定)測定に従い、現像ユニット内の現像剤の搬送量を測定したところ、2成分現像剤の搬送量が実施例1に示したキャリア1と比較して大凡1.5倍増加しており、少量の被覆樹脂投入量で現像剤の搬送量を維持し、高画質な画像出力を得ることができる。2成分現像剤の搬送率、出力画像、定着性の評価結果を表3に示す。表3には、各2成分現像剤について、条件式(1)「log((C/B)/(A×T))」を算出した値も示している。
【0144】
【表3】

【0145】
(実施例3)
体積平均粒子径が異なる磁性体芯粒子を用意し、前記(磁性キャリア2の作製)に記載の方法により、各磁性体芯粒子に樹脂を被覆し、樹脂被覆キャリア(キャリア8〜12)を作製した。そして、体積平均粒子径が異なる磁性体芯粒子を用いた各樹脂被覆キャリアについて、実施例1で用いたトナー1と該キャリア粒子をトナー濃度が7.2重量%となるように混合し、2成分現像剤を作成した。そして、各2成分現像剤について、前記(キャリア付着および背景部かぶりの評価)に従って評価を実施した。評価結果を表4に示す。
【0146】
【表4】

【0147】
表4より、樹脂被覆キャリアの体積平均粒子径が20μm以下であると、現像剤担持体に内包されているマグローラによる樹脂被覆キャリアの保持力が低くなり、静電潜像担持体表面に樹脂被覆キャリアが付着しやすくなることがわかる。更には、トナーとの混合が不均一になりやすく、トナー帯電分布が拡大してしまう結果、かぶりが発生してしまうことがわかる。よって、樹脂被覆キャリアの体積平均粒子径を25〜60μmとすることで、静電潜像担持体表面に付着を抑制し、更には、かぶりの発生も抑制できることがわかる。
【0148】
(実施例4)
前記(磁性キャリア2の作製)に記載の方法に従い、樹脂被覆キャリアを作製した。
【0149】
また、前記(電子写真用トナー3の作製)に記載の方法に従い、電子写真用トナーを作製した。ただし、トナーに対するワックスの含有量が下記の条件になるように、トナー1〜4を作製した。
【0150】
トナー1:ワックス樹脂=6.5%
トナー2:ワックス樹脂=4.5%
トナー3:ワックス樹脂=3.0%
トナー4:ワックス樹脂=7.0%
上記条件で作製したマゼンタ色の評価用トナー1〜4と、上記作製したコート樹脂液の投入量が異なる(体積抵抗が異なる)各樹脂被覆キャリアとを用いて、2成分現像剤1を作製した。なお、作製した各2成分現像剤1は、2成分現像剤1に対するトナー濃度が7.2重量%となるように調整されている。そして、2成分現像剤1について、前記(I:2成分現像剤1の搬送量測定)に従い、現像ユニット内の現像剤の搬送量を測定した。また、前記(VI:定着性と出力画質評価)に基づき、出力画像の定着時のオフセットによる画質劣化を目視にて確認した。また、定着性については、折り曲げ試験を実施し、出力された画質の総合的な評価を行った。
【0151】
(比較例2)
前記(電子写真用トナー3の作製)に記載の方法に従い、電子写真用トナーを作製した。ただし、トナーに対するワックスの含有量が下記の条件になるように、トナー5〜7を作製した。
【0152】
トナー5:ワックス樹脂=2.5%
トナー6:ワックス樹脂=8.0%
トナー7:ワックス樹脂=1.0%
前記(I:現像ユニットでの搬送量測定)に従い、現像ユニット内の現像剤の搬送量を測定し、前記(VI:定着性と出力画質評価)において総合的な評価を行った。尚、現像剤を形成するキャリアとしては、表1中のキャリア3を採用した。
【0153】
実施例4及び比較例2について、現像剤中のトナー1〜7におけるワックス量と現像剤の搬送率、出力画像、定着性の評価結果を表5に示す。表5中の条件式(2)の値は、トナーに対するワックス材含有率をA(重量%)、電子写真用2成分現像剤に対するトナー濃度をT(重量%)としたとき、下記式(2)で求まる値である。
【0154】
D=−Log(A×T) …(2)
【0155】
【表5】

【0156】
表5より、本実施例で用いる電子写真用現像剤のトナーは、ワックス樹脂の含有率を4.5重量%から7重量%とすることが適していることがわかった。トナーに対するワックス樹脂の含有率が3重量%以下である場合には、ここでは示していないが、トナーが、定着装置の定着ローラー側に付着してしまい、紙面上のトナー画像が、劣化してしまった。また、トナーに対するワックス樹脂の含有率が7重量%よりも多い場合、即ち、式(2)におけるD値が5.3未満である条件では、他プロセスに影響を及ぼすおそれがある。例えば、現像プロセスにおいては、現像ユニット内の撹拌部で撹拌されることによって、現像剤に熱的、機械的ストレスが加わり、現像剤の流動性低下を引き起こすおそれがある。その結果、出力画像の画像濃度ムラが発生し、著しく画像劣化を生じる。
【0157】
ここで、表1、表2、及び表5の結果に基づいて、上記式(1)の上限値及び下限値について、さらに詳述する。
【0158】
(下限値について)
キャリア芯材(磁性芯粒子)の表面に被覆されている樹脂膜厚は、キャリア芯材の抵抗値Bと樹脂被覆後のキャリア粒子の抵抗値Cとの比率によって決定される。抵抗値比率(C/B)が高いほど、樹脂膜厚が厚くなることになる。実施例1の結果(表1)より、抵抗増加率は21倍以上2.82E+06倍未満であれば、キャリア付着条件とトナー帯電条件を満たすことが可能となる。なお、この時のトナーに含有されているワックス量とトナー濃度(トナー1)は、それぞれ6.5%、7.2%である。
【0159】
ここで、キャリア抵抗増加率の対数を取れば、
21≦(C/B)≦ 2.82E+06 …〔イ〕
3.04≦Ln(C/B)≦14.85
となり、上記条件を満たせば、キャリア付着とトナー帯電とが良好になることがわかる。
【0160】
(上限値について)
実施例4の表5に記載の内容において、現像剤質量(トナー質量とキャリア質量との和)中に存在するワックス量を想定している。この現像剤中のワックス量を次式
0.0018<(A×T)<0.00576 …〔ロ〕
で表すことができる。式(ロ)の対数(−Ln)をとると、
5.2<−Ln(A×T)<6.3
となる。ここで、現像剤中に含有されているワックス量とキャリア抵抗増加率の関係をみると、ワックス樹脂はシリコーン樹脂膜表面との親和性が低いため、表面に存在しにくくなる。
【0161】
従って、樹脂膜が表面に存在しているということは、キャリア抵抗の増加率が高いほど実現されることとなるため、抵抗増加率とワックス量の比率を求めれば、シリコーン樹脂膜上に付着するワックス量の被覆状態がわかる。
【0162】
式(イ)と式(ロ)との比率をとり、さらに対数表示すれば、次式になる。
【0163】
ln((C/B)/(A×T))=ln(C/B)−(−ln(A×T))
=ln(C/B)+ln(A×T)
=〔(3.04〜14.85)+(5.2〜6.3)〕
上記式について、それぞれの条件範囲を考慮すると、
下限値:ln((C/B)/(A×T))=8.24(3.04+5.2)
上限値:ln((C/B)/(A×T))=21.15(14.85+6.3)
となる。したがって、ln((C/B)/(A×T)の数値範囲は、下記式
8.24<ln((C/B)/(A×T))<21.15
に示される範囲になる。さらに、実施例1の結果より、具体的には、下記式(1)
10.4≦ln((C/B)/(A×T))≦17.9 …(1)
を満たせば、更に適していることとなる。
【0164】
以上の結果から、次のことがわかる。
【0165】
電子写真用トナー3に対するワックス材含有率をA(重量%)とし、2成分現像剤1に対する電子写真用トナー3濃度をT(重量%)とし、キャリア芯材2aの体積抵抗をB(Ωcm)とし、磁性キャリア2の体積抵抗をC(Ωcm)としたとき、下記式(1)
10.4≦log((C/B)/(A×T))≦17.9 …(1)
を満たす2成分現像剤を使用することにより、以下の効果を奏する。
【0166】
すなわち、経時及び複写機等本体の熱的、機械的ストレスを受ける環境下においても、現像剤の流動性を著しく低下させず、出力画像の濃度ムラを生じることなく、多数部の印字に際しても安定して高画質の画像を出力することができる。
【0167】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明の樹脂被覆キャリア粒子を用いた2成分現像剤は、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファックスなどの画像形成装置において好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、現像剤に含まれるトナーおよびキャリアを示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る現像装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0170】
1 現像剤
2 キャリア
2a キャリア芯材
2b 被覆層
3 トナー
3a 外添剤
10 現像ユニット
12 攪拌スクリュー
13 現像剤担持体
14 現像剤規制部材
15 静電潜像担持体
16 トナー濃度センサー
17 トナーホッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーとキャリアとからなり、上記トナーが結着樹脂、着色剤及びワックス材を含有している電子写真用2成分現像剤において、
上記キャリアは、キャリア芯材と、該キャリア芯材表面に樹脂が被覆された樹脂被覆層とを有し、
トナーに対するワックス材含有率をA(重量%)とし、電子写真用2成分現像剤に対するトナー濃度をT(重量%)とし、上記キャリア芯材の体積抵抗をB(Ωcm)とし、上記キャリアの体積抵抗をC(Ωcm)としたとき、下記式(1)
10.4≦log((C/B)/(A×T))≦17.9 …(1)
を満たすことを特徴とする電子写真用2成分現像剤。
【請求項2】
上記キャリア芯材は、磁性粒子からなり、
上記樹脂被覆層は、キャリア芯材表面にアミノシラン系カップリング剤を付着させた後、シリコーン樹脂溶剤をコーティングし硬化した樹脂硬化物からなることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用2成分現像剤。
【請求項3】
上記キャリアの平均粒子径が、35μm〜55μmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真用2成分現像剤。
【請求項4】
トナーに対するワックス材含有率Aが、3重量%〜7重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電子写真用2成分現像剤。

【図1】
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【図2】
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