説明

電子制御装置を備える熱機関のためのスタータ

【課題】始動動作の間に接点を閉じる間隔を制御して自由度を改良する。
【解決手段】本発明に係るスタータは、マイクロソレノイド型の電気的に制御可能なマイクロアクチュエータを有する二重接触電磁コンタクタ10と、電子制御装置ECCとを結合して構成される。電子制御装置は、コンタクタの引き込み巻線Laの励磁を制御する第1トランジスタ切り替え手段T1、T2、CZ2、RC1、RC3、SLと、マイクロアクチュエータの励磁を制御する第2トランジスタ切り替え手段T3、CZ1、RC2とを備える。第2トランジスタ切り替え手段は、電子制御装置が駆動された後、所定期間、マイクロアクチュエータMSの励磁を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、自動車の熱機関のためのスタータの分野に関する。より詳細には、本発明は、電子制御装置を備えるスタータに関する。
【背景技術】
【0002】
二重接触電磁コンタクタを備えるスタータは、公知である。図1を参照して、コンタクタ10aを備える先行技術に係るスタータ1aを説明する。
【0003】
コンタクタ10aは、前端部101にフィンガ1010を有するプランジャコア100が並進移動するハウジング104を備えている。プランジャコア100の後端部は、接触端子C11、C12間および接触端子C21、C22間の電気的接触を達成するように構成された2つの可動接触板CM1およびCM2を駆動する。コア復帰スプリング103は、ハウジング104とプランジャコア100の前端部101との間に配設され、プランジャコア100の後方への並進運動を妨げる復帰力を付与する。
【0004】
また、コンタクタ10aは、共通端子を有する2つの巻線Lm、Laを備えている。巻線Lmの他の端子は、アースM(通常は、車両のシャーシ)に接続されている。巻線Laの他の端子は、接触端子C12、C22および電気ブラシB1に接続されている。両方の巻線Lm、Laに共通の端子は、車両の始動接点13(または、同様の動作をする要素)を介してバッテリ12の陽極端子(「B+」)に接続されている。接触端子C21は、バッテリ12の陽極端子に直接接続されている。接触端子C11は、電流制限抵抗RDを介して、バッテリ12の陽極端子に接続されている。
【0005】
スタータ1aは、電気モータ11を備えている。この電気モータ11は、従来から、アーマチャまたはロータ110(巻線L3)と、永久磁石を有するインダクタまたはステータ114とで構成されている。アーマチャ110は、通常、電気モータ11の後部に配設されるスリップリング115と、2つの電気ブラシB1、B2とを介して給電される。陽極に指定された電気ブラシB1は、接触端子C12、C22に接続され、陰極に指定された電気ブラシB2は、アースMに接続される。
【0006】
スタータ1aは、電気モータ11の前に配設されている。前記スタータ1aは、スタータギアユニット113と、フリーホイール112と、噛合スプリング115と、フォーク15が連結されるプーリ(符号なし)とを備えている。また、螺旋スロープ111は、電気モータ11の前に設けられている。コンタクタ10aと電気モータ11は、回転軸Δ1の回りに回転するフォーク15によって機械的に連結されている。図1に示すように、フォーク15の上端部は、フィンガ1010に沿って移動する。フォーク15の下端部は、この下端部とフリーホイール112との間に配設される噛合スプリング115の後方におけるスタータプーリの部分に機械的に連結されている。
【0007】
車両のドライバが始動接点13を作動させると、巻線Laは、電気モータ11を介してアースMに接続し、電流がコンタクタ10aの巻線Lm、Laに流れる。このとき、プランジャコア100を後方(矢印f1)に引きつける電磁力が、コンタクタ10aに発生する。コア復帰スプリング103は、圧縮され、反作用の復元力が働く。プランジャコア100は、フォーク15を回転軸Δ1の回りに回転させ、次いで、フォーク15の下端部がスプリングユニット115、フリーホイール112およびスタータギアユニット113を前方(矢印f2)に動かす。
【0008】
コンタクタ10aのプランジャコア100が、その移動の中間点に到達すると、可動接触板CM1は、接触端子C11、C12を短絡する(閉位置)。接触端子C21、C22は、短絡しないままである(開位置)。閉位置の接触端子C11、C12は、電流制限抵抗RDを介して、バッテリ12の陽極端子B+を陽極の電気ブラシB1に接続し、陰極の電気ブラシB2により電気回路が閉じて、電気モータ11に給電する。電気モータ11のアーマチャ110(ロータ)は、電流制限抵抗RDによって制限された電流により、小さい力、すなわち、遅い速度および小さいトルクで、回転軸Δ2の回りに回転を開始する。また、これにより、スタータギアユニット113の回転Rが起こる。並進(矢印f2)および回転Rの2つの運動が生じることにより、スタータギアユニット113は、熱機関のクラウンギア14に接近する。
【0009】
このとき、より正確には、2つの場合が発生する。
【0010】
1)スタータギアユニット113は、その並進運動(矢印f2)によりクラウンギア14と直接噛合し、また、プランジャコア100は、移動端に到達するまで、その並進運動を継続する。
【0011】
2)スタータギアユニット113の歯は、プランジャコア100の移動を妨げるように、クラウンギア14の歯に噛合する。噛合スプリング115が圧縮され、プーリが軸上をスライド可能であるため、噛合スプリング115は、プランジャコア100が前進を続けることを許容する。スタータギアユニット113は、遅い速度の電気モータ11によって駆動されるため、いわゆる「ミリング」効果により、スタータギアユニット113およびクラウンギア14の歯の損傷を防ぐ。回転運動および並進運動の結果、スタータギアユニット113は、結局、クラウンギア14に噛合し、プランジャコア100は、移動端に到達するまで並進運動を続ける。
【0012】
コンタクタ10aのプランジャコア100が移動端に到達すると、可動接触板CM2は、接触端子C21、C22を短絡する(閉位置)。接触端子C11、C12は、閉位置のままである。閉位置の接触端子C21、C22は、陽極の電気ブラシB1をバッテリ12の陽極端子B+に直接接続する。次いで、電気モータ11には、全電力が供給され、始動動作のために熱機関が回転する。
【0013】
上記の場合において、引き込み巻線Laは、両方の巻線Lm、Laに共通の端子と、バッテリ12の陽極端子に両方が接続される接触端子C21、C22との間に電位差がないため、短絡する。可動接触板CM1およびCM2は、プランジャコア100およびコア復帰スプリング103に作用して、保持巻線Lmにより閉位置に保持される。
【0014】
ドライバが始動接点13を開放することにより、始動回路が切断されると、コンタクタ10aに生じている電磁力が無くなり、保持巻線Lmには、これ以上給電されない。プランジャコア100は、コア復帰スプリング103により停止位置に戻され、バッテリ12と電気モータ11との間の電気的接続が切断される。電気モータ11には、これ以上給電されず、スタータギアユニット113の回転が停止する。さらに、プランジャコア100が(前方の)初期位置に戻るため、フォーク15に作用して、クラウンギア14からスタータギアユニット113の連結が解除される。
【0015】
一方、ドライバが始動接点13を必要以上に閉位置に維持している場合、車両の熱機関が動作を開始し、スタータギアユニット113、従って、電気モータ11のアーマチャ110は、その結果として、極めて高速での回転を余儀なくされる(典型的には、熱機関が3000rpmで回転する場合、ギアの回転速度は、25000rpmに達し、クラウンギア−電気モータ間の減速比は、一般的には、8:1と16:1との間の範囲である。)。電気モータ11の遠心分離を防ぐため、スタータ軸をスタータギアユニット113から分離することが必要である。この役割は、フリーホイール112に与えられる。
【0016】
図1に示すコンタクタ10aにおいて、上述したような2つの個別の動作モードで電気モータ11を動作させ、接触端子C21、C22が閉じる前に接触端子C11、C12を閉じることは、コンタクトスプリングP1、P2およびP3の異なる弾性力によって行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
この先行技術の方法は、全般的には満足できるものである。しかしながら、上記のタイプのスタータの構成において、特に、始動動作の間に接点を閉じる間隔を制御する点で、さらなる自由度の改良を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的のため、本出願人は、本出願と同時に出願したフランス国特許出願において、電気的に制御可能なマイクロアクチュエータを組み込んだ新規の二重接触電磁コンタクタを提案する。より詳細には、この二重接触電磁コンタクタは、プランジャコアと、第1引き込み巻線と、第2保持巻線と、可動接触板と、第1、第2および第3接点と、電気的に制御可能なマイクロアクチュエータとを備え、前記二重接触電磁コンタクタは、前記各接点間で電気的接触のない第1状態と、前記第1および前記第2接点間で電気的接触を有する第2状態と、前記第1、前記第2および前記第3接点間で電気的接触を有する第3状態との3つの動作状態を有する。
【0019】
上記の二重接触電磁コンタクタにおいて、前記マイクロアクチュエータは、印加される電流に従い、前記二重接触電磁コンタクタの前記第2状態と前記第3状態との間の切り替えを許可または禁止することを可能とする。
【0020】
本発明は、熱機関のためのスタータに関し、マイクロソレノイド型の電気的に制御可能なマイクロアクチュエータを有する二重接触電磁コンタクタと、電子制御装置とを結合したものを備え、前記電子制御装置は、前記二重接触電磁コンタクタの引き込み巻線の励磁を制御する第1トランジスタ切り替え手段と、前記マイクロアクチュエータの励磁を制御する第2トランジスタ切り替え手段とを備えている。
【0021】
本発明の他の特徴によれば、前記第2トランジスタ切り替え手段は、前記電子制御装置が駆動された後、第1所定期間、前記マイクロアクチュエータの励磁を制御する。
【0022】
電気的に制御可能な前記マイクロアクチュエータは、前記二重接触電磁コンタクタの前記第2状態と、前記第3状態との間の時間間隔を調整できる利点がある。従って、スタータの制御シーケンスを一層良く調整することが可能となり、また、このシーケンスを、スタータの種々の利用に容易に適応させることができる。
【0023】
1つの詳細な実施形態によれば、前記第2トランジスタ切り替え手段は、MOSFET型トランジスタを、少なくとも1つ備えている。
【0024】
本発明の1つの詳細な特徴によれば、前記第2トランジスタ切り替え手段は、前記第1所定期間の時定数を有する第1RC回路を備えている。前記時定数を有する前記第1RC回路は、微分型の回路であることが望ましい。
【0025】
本発明の他の詳細な特徴によれば、前記第2トランジスタ切り替え手段は、第1安定電圧を前記第2トランジスタ切り替え手段に供給する第1電圧安定回路を備えている。
【0026】
本発明のさらに他の詳細な特徴によれば、前記第1トランジスタ切り替え手段は、少なくともMOSFET型トランジスタを1つ備えている。
【0027】
1つの詳細な実施形態によれば、前記第1トランジスタ切り替え手段は、前記積分型の時定数を有する第2および第3RC回路を備え、前記第2RC回路が、前記第1トランジスタ切り替え手段の始動動作を切り替え制御し、前記第3RC回路が、前記第1トランジスタ切り替え手段の終了動作を切り替え制御し、前記第1トランジスタ切り替え手段の動作は、前記引き込み巻線を励磁する。
【0028】
本発明の他の詳細な特徴によれば、前記第1所定期間は、前記第1トランジスタ切り替え手段による始動動作の切り替えと、終了動作の切り替えとの間で完了する。
【0029】
本発明に係る前記スタータは、特に、前記熱機関における「ストップ/スタート」または「ストップ&ゴー」機能を備える自動車への利用に適する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明を、添付の図面を参照して行う以下の詳細な実施形態において、より詳しく説明する。
【0031】
【図1】先行技術に係る二重接触電磁コンタクタを備えるスタータの概略図である。
【図2】本発明に係る二重接触電磁コンタクタを備えるスタータの詳細な実施形態の概略図である。
【図3】図3A、図3Bおよび図3Cは、図2のスタータにおける二重接触電磁コンタクタの種々の開/閉状態と、スタータの電気モータに電力を供給する電源回路の対応する状態との概略図である。
【図4A】本発明に係るスタータに用いられる二重接触電磁コンタクタの詳細な実施形態の断面図である。
【図4B】本発明に係るスタータに用いられる二重接触電磁コンタクタの詳細な実施形態の断面図である。
【図5】図4Aおよび図4Bの二重接触電磁コンタクタに用いられるマイクロソレノイドの詳細な実施形態の分解斜視図である。
【図6】図6A、図6Bおよび図6Cは、図5のマイクロソレノイドの作動/休止状態を示す図である。
【図7】本発明に係るスタータに含まれる電子制御装置の詳細な実施形態のブロック図である。
【図8】図8A、図8Bおよび図8Cは、図7における電子制御装置の動作に関連する電圧および電流曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図2〜図8を参照して、本発明に係る二重接触電磁コンタクタを有するスタータの詳細な実施形態を説明する。
【0033】
本発明に係るスタータの全体構成につき、従来公知の全体構成を有する図1に示す構成の要部を述べる。先行技術と比較すると、本発明は、実質的な変更を必要とすることなく、自動車産業で現在使用されている技術と代替可能である、というさらなる利点を有する。
【0034】
また、以下において、図1と共通の構成要素、または、少なくとも類似した役割を果たす構成要素には、参照符号を付し、必要な場合にのみ説明するものとする。
【0035】
図2に示すように、電磁制御によるスタータ1は、3つの基本的構成要素、すなわち、プランジャコア100を有する二重接触電磁コンタクタ10と、電気モータ11と、フォーク15により構成される機械的結合部とを備えている。なお、本発明において、二重接触電磁コンタクタ10は、以下に説明する特有の二重接触の特徴を有する。また、二重接触電磁コンタクタ10を動作させるため、電子制御装置ECCを備えている。
【0036】
先行技術のスタータ1aにつき、図1を参照して既に説明したように、本発明に係るスタータ1の種々の構成要素には、バッテリ12によって電力が供給される。スタータ1において、バッテリ12は、巻線La、Lm、L3に加えて、電子制御装置ECCにも電力を供給する。
【0037】
図2に示すように、二重接触電磁コンタクタ10は、図1の先行技術に係る二重接触電磁コンタクタと、実質的に非常に異なる二重接触装置10dcを備えている。
【0038】
二重接触装置10dcは、主として、可動接触板CMと、マイクロソレノイドMSを構成する電気的に制御可能なマイクロアクチュエータと、3つの接点PC+、PC1、PC2とを備えている。
【0039】
可動接触板CMは、プランジャコア100の後端部によって並進駆動され、接点PC+とマイクロソレノイドMSの可動電磁コアNMとの間の電気的接触を達成するように構成されている。
【0040】
マイクロソレノイドMSは、二重接触装置10dcの動作の理解を容易にするため、図2に概略的に示されている。この概略図において、可動電磁コアNMは、電磁特性および導電率を有するため、例えば、軟鉄から構成されることが好ましい。実際、実用的な実施形態において、図5および図6A〜図6Cを参照して以下に詳細に説明するように、マイクロソレノイドMSは、スタータ1に対する電力の通路である、例えば、銅からなるあぶみ接点を備えている。
【0041】
再び、図2を参照すると、可動電磁コアNMは、電気的に導電性であるモールTSによって接点PC1に電気的に接続されている。モールTSは、銅で形成されていることが好ましい。マイクロソレノイドMSは、電気コイルBOを備え、電気コイルBOの一端部は、バッテリ12の陽極端子B+に接続されている巻線La、Lmの共通端子に接続されている。電気コイルBOの他端部は、電子制御装置ECCの接続端子(参照符号無し)に接続されている。
【0042】
接点PC+は、バッテリ12の陽極端子B+に接続されている。接点PC1は、電子制御装置ECCの接続端子(符号無し)と、電流制限抵抗RDを介して電気ブラシB1とに接続されている。接点PC2は、その一部が電気ブラシB1に直接接続されている。
【0043】
始動接点13が閉じると、電子制御装置ECCには、バッテリ12の陽極端子B+との接続を許容する結線20を介して、電力が供給される。また、電子制御装置ECCは、結線21を介して巻線Laに接続され、巻線La、Lmの共通端子に接続される端子以外の巻線Laの端子を、アースMに接続することを許容することにより、巻線Laの励磁を制御する。
【0044】
次に、二重接触装置10dcの動作につき、理解を容易にするため意図的に単純化した概略図である図3A〜図3Cを参照して、より詳細に説明する。
【0045】
図3Aにおいて、二重接触装置10dcは、以下に「状態0V」と称する開状態を示す。この状態は、始動接点13が起動されていない状態に対応している。この二重接触装置10dcの開状態では、バッテリ12の陽極端子B+に接続される接点PC+と、接点PC1またはPC2のいずれか一方との間の電気的な接続は達成されず、電気モータ11は駆動されない。可動接触板CMは、コア復帰スプリング103(図2)により休止状態に維持される。マイクロソレノイドMSは励磁されず、可動電磁コアNMも休止状態である。
【0046】
図3Bにおいて、二重接触装置10dcは、第1閉状態、すなわち、以下に「状態1CF」と称する「第1接点閉」状態を示す。この状態は、図1に示す先行技術の接触端子C11、C12の閉状態に対応している。
【0047】
この状態1CFでは、始動接点13は閉じられ、その状態が維持される。可動接触板CMは、プランジャコア100によって並進するように押され、接点PC+と可動電磁コアNMとの間の電気的接続が確保される。可動電磁コアNMは、モールTSを介して接点PC1に接続されており、従って、接点PC+とPC1との間の電気的接続が確保される。このとき、マイクロソレノイドMSの電気コイルBOが励磁され、可動接触板CMがわずかに傾斜している図3Bに示すように、可動電磁コアNMが可動接触板CMのスラスト力を妨げる力f3を出力する。従って、電気コイルBOの励磁は、可動電磁コアNMの並進運動を禁止し、接点PC+とPC2との間の電気回路は、開状態のままである。電気的接続は、接点PC+とPC1との間でのみ確保され、電気モータ11には、電流制限抵抗RDを介して少ない電力が供給される。
【0048】
図3Cにおいて、二重接触装置10dcは、第2閉状態、すなわち、以下に「状態2CF」と表す「第2接点閉」状態を示す。この状態は、図1に示す先行技術の接触端子C21、C22が閉じている状態に対応する。
【0049】
この状態2CFでは、始動接点13は常に閉じられる。電気コイルBOの励磁は、中断され、従って、可動接触板CMにより押された可動電磁コアNMは、接点PC2に接触する。次いで、接点PC+とPC1およびPC2との間で、電気的接続が達成される。接点PC2は、電気モータ11に直接接続されているため、電気モータ11に全電力が供給される。
【0050】
本発明に係る二重接触装置10dcの構成は、電子制御装置ECCにより制御されるマイクロソレノイドMSを励磁させないため、第1状態から第2状態への切り替えを制御して、状態1CFと状態2CFとの間の時間間隔を調整することが可能である。
【0051】
本発明に係る二重接触電磁コンタクタ10の具体的な実施形態は、図3Aを参照して説明される開状態0Vである図4Aと、図3Cを参照して説明される第2接点閉状態2CFである図4Bとに示されている。二重接触電磁コンタクタ10は、後方のマイクロソレノイドMSの位置がわかるように、図4Aおよび図4Bにおいて縦断面で示されている。接点PC1を除き、二重接触装置10dcの種々の機能的構成要素が、図4Aおよび図4Bに示されている。
【0052】
次に、図5、図6A、図6Bおよび図6Cを参照して、マイクロソレノイドMSについて詳細に説明する。
【0053】
図5に示すように、マイクロソレノイドMSは、電気コイルBOおよび可動電磁コアNMに加えて、コイル筐体を形成するとともに、電磁回路に含まれる槽AN、電力の通路のための銅で形成されるあぶみ接点ET、および、復帰スプリングREを備えている。
【0054】
槽ANは、電気コイルBOが収容される内部筐体(図4Aおよび図4Bに示されている。)を備えている。電気コイルBOを収容する槽ANおよび復帰スプリングREには、可動電磁コアNMが挿入され、この一式があぶみ接点ETの上下の顎部の間に配設されている。銅から形成されるモールTSの一端部は、あぶみ接点ETに固定され、モールTSの他端部は、接点PC1に接続されている。あぶみ接点ETの顎部の間に可動電磁コアNMを押し込んだ組立体は、マイクロソレノイドMSの全ての部品を、機械的に相互に保持することができる。
【0055】
図6A、図6Bおよび図6Cに示すように、二重接触装置10dcにおけるマイクロソレノイドMSの組立体および機械的位置は、二重接触装置10dcの壁に一体的に結合される槽ANを介して確保される。
【0056】
図6Aは、二重接触装置10dcが状態0VのときのマイクロソレノイドMSの状態を示す。状態0Vにおいて、復帰スプリングREは、あぶみ接点ETに対してスラスト力PRを与える。従って、あぶみ接点ETおよび可動電磁コアNMは、可動接触板CMおよび接点PC2と電気的に接触しない状態で、下方に押される。
【0057】
図6Bは、二重接触装置10dcが状態1CFのときのマイクロソレノイドMSの状態を示す。状態1CFにおいて、電気コイルBOが励磁され、可動電磁コアNMおよびあぶみ接点ETに付与される力f3は、復帰スプリングREのスラスト力PRを増大させ、動作している可動接触板CMの変位を妨げる。可動電磁コアNMおよびあぶみ接点ETは、低い位置に残り、電気的な接触は、可動接触板CMと、モールTSにより接点PC1に電気的に接続されるコア−クランプユニットNM−ETとの間にのみ確保される。
【0058】
図6Cは、二重接触装置10dcが状態2CFのときのマイクロソレノイドMSの状態を示す。状態2CFにおいて、電気コイルBOは、これ以上励磁されない。復帰スプリングREのスラスト力PRは、可動接触板CMの動作下における可動電磁コアNM、およびあぶみ接点ETの変位を妨げるには十分でない。可動電磁コアNMおよびあぶみ接点ETは、高い位置の状態となり、次いで、可動接触板CMと接点PC1、PC2との間の電気的な接触が、コア−クランプユニットNM−ETとモールTSとによって確保される。
【0059】
次に、電子制御装置ECCにつき、図7、図8A、図8Bおよび図8Cを参照して詳細に説明する。
【0060】
電子制御装置ECCで使用される電子構成要素の適度な数を考慮して、電子制御装置ECCは、二重接触電磁コンタクタ10の蓋の中に配設することができる。また、本発明のある実施形態では、電子制御装置ECCは、ASICの構成として実装可能である。
【0061】
図7に示すように、実施形態における電子制御装置ECCは、アナログ型の回路である。電子制御装置ECCは、主として、3つのトランジスタT1、T2、T3と、2つの電圧安定回路CZ1、CZ2と、3つの時定数回路RC1、RC2、RC3と、整流保持回路SLとを備えている。
【0062】
トランジスタT1、T2、T3は、MOSFET型のものである。トランジスタT1およびT3は、引き込み巻線Laおよび電気コイルBOのそれぞれの励磁を制御する。
【0063】
トランジスタT1のドレイン電極は、巻線La、Lmの共通端子に接続される端子を除く巻線Laの端子に接続されている。トランジスタT1のソース電極は、アースMに接続されている。
【0064】
トランジスタT3のドレイン電極は、巻線La、Lmの共通端子に接続される端子を除く電気コイルBOの端子に接続されている。トランジスタT3のソース電極は、アースMに接続されている。
【0065】
さらなる説明で一層簡潔に示されるように、トランジスタT2は、巻線Laの励磁が終了した後、トランジスタT1のグリッドをアースMに接続することにより、トランジスタT1を開状態にするように構成されている。トランジスタT2は、トランジスタT1のグリッドにソース電極と、アースMに接続されるドレイン電極とをそれぞれ備えている。
【0066】
電圧安定回路CZ1、CZ2は、ツェナーダイオードを有する公知の回路である。
【0067】
電圧安定回路CZ1は、抵抗R6およびツェナーダイオードZ1により構成され、安定した電圧U1を供給する。電圧U1は、始動接点13が閉塞された後の電子制御装置ECCに利用可能な電圧UAPCに基づいて生成される。従って、電圧UAPCは、始動接点13が閉塞された後のバッテリ12の電圧UBに対応する。
【0068】
電圧安定回路CZ2は、抵抗R7およびツェナーダイオードZ2により構成され、安定した電圧U2を供給する。電圧U2は、二重接触装置10dcの状態1CFにおける接点PC1に利用可能な電圧UPC1に基づいて生成される。従って、電圧UPC1は、電圧UPC1が接点PC1に利用可能になったときの電圧UBに対応する。
【0069】
電圧安定回路CZ1は、回路RC1およびRC2に電圧U1を供給する。電圧安定回路CZ2は、回路RC3および整流保持回路SLに電圧U2を供給する。
【0070】
回路RC1は、積分型のRC回路であり、キャパシタC1に直列に接続される2つの抵抗R1、R2を備えている。電圧U1は、第2端子がキャパシタC1の第1端子に接続される抵抗R1の第1端子に印加される。キャパシタC1の第2端子は、第2端子がアースMに接続される抵抗R2の第1端子に接続されている。抵抗R1の端子とキャパシタC1の端子と間の接点は、トランジスタT1の制御グリッドに接続されている。
【0071】
回路RC2は、微分型のRC回路であり、抵抗R5に直列に接続されるキャパシタC3を備えている。電圧U1は、キャパシタC3の第1端子に印加される。キャパシタC3の第2端子は、第2端子がアースMに接続される抵抗R5の第1端子に接続されている。キャパシタC3の端子と抵抗R5の端子との間の接点は、トランジスタT3の制御グリッドに接続されている。
【0072】
回路RC3は、標準の積分型のRC回路であり、キャパシタC2に直列に接続される抵抗R3を備えている。電圧U2は、抵抗R3の第1端子に印加される。抵抗R3の第2端子は、第2端子がアースMに接続されるキャパシタC2の第1端子に接続されている。抵抗R3の端子とキャパシタC2の端子と間の接点は、トランジスタT2の制御グリッドに接続されている。
【0073】
整流保持回路SLは、抵抗R4に直列に接続される整流ダイオードD1を備えている。電圧U2は、抵抗R4の第1端子にカソードが接続される整流ダイオードD1のアノードに印加される。抵抗R4の第2端子は、トランジスタT1の制御グリッドに接続されている。
【0074】
次に、電子制御装置ECCの動作につき、図8A、図8Bおよび図8Cの曲線を参照して説明する。
【0075】
図8A、図8Bおよび図8Cにおける曲線の時刻t0は、始動接点13の閉塞に対応する。
【0076】
時刻t0において、電圧UAPCは、回路RC1、RC2に安定した電圧U1を印加する電圧安定回路CZ1に供給される。
【0077】
時刻t0において、回路RC2のキャパシタC3が放電され、トランジスタT3のグリッド電極に電圧U1が発生し、トランジスタT3が開状態から閉状態に切り替わる。次いで、図8Cに示すように、電流ImsがマイクロソレノイドMSの電気コイルBOに供給され、電気コイルBOが励磁される。次に、力f3が、マイクロソレノイドMSの可動電磁コアNMに付与される。
【0078】
時刻t0において、回路RC1のキャパシタC1が放電され、電圧U1・(R2/(R1+R2))が、トランジスタT1のグリッドに発生する。このとき、トランジスタT2は、開状態であり、そのグリッドには電圧が印加されていない。トランジスタT1は、キャパシタC1の負荷でグリッドの電圧が増加することにより、開状態から閉状態に徐々に切り替わる。このとき、極性が反対の整流ダイオードD1は、キャパシタC1の負荷を妨げる電流が整流保持回路SLを介して、アースMに流れることを阻止する。図8Bに示すように、電流Iaは、回路RC1の時定数(R1+R2)・C1によって実質的に決まる増加率で、引き込み巻線Laに徐々に流れる。
【0079】
電流Iaによる巻線Laの励磁により、二重接触電磁コンタクタ10のプランジャコア100は変位し、時刻t1において、二重接触装置10dcが状態1CFに切り替わる。二重接触装置10dcが状態1CFに切り替わることにより、図8Aに示すように、接点PC1に電圧UPC1が発生する。
【0080】
時刻t1において、電圧UPC1が、整流保持回路SLおよび回路RC3に安定した電圧U2を印加する電圧安定回路CZ2に供給される。
【0081】
電圧U2は、整流保持回路SLを介して、トランジスタT1のグリッドに、整流ダイオードD1により電圧降下した値である約(U2−0.6V)の値まで上昇する電位を生じさせる。トランジスタT1のグリッドにおけるこの電位の上昇は、トランジスタT1を閉状態に固定し、従って、切り替えの反動を阻止可能とする。
【0082】
時刻t1において、トランジスタT2は、回路RC3によって付与される時定数R3・C2により、電圧U2が発生しているにもかかわらず、開状態を維持する。
【0083】
時刻t1まで、電気モータ11は、電圧UPC1により駆動され、減速された速度で回転を開始する。図8Aに示すように、電気モータ11に供給される電力により、電圧UBの降下とそれに引き続く電圧UPC1の降下が生じる。また、図8Bおよび図8Cに示すように、電気モータ11による電圧UBの降下は、電流IaおよびImsを低下させるが、その振幅は、電気コイルBOおよび巻線Laを正常に励磁して維持するのに十分な振幅である。
【0084】
電圧U1に基づいて時刻t0で開始されたキャパシタC3の負荷は、時定数R5・C3で継続される。図8A〜図8Cに示す時刻t2において、キャパシタC3の充電電圧は、トランジスタT3のグリッドの電圧がグリッドを介した電流通路をこれ以上十分に維持できない値に到達する。次いで、トランジスタT3は、開状態に切り替わり、図8Cに示すように、電気コイルBOの電流Imsを阻止する。
【0085】
時刻t2において、電気コイルBOの電流Imsが阻止されることにより、二重接触装置10dcが状態1CFから状態2CFに切り替わる。状態2CFにおいて、二重接触装置10dcの接点PC2には、電圧UPC1およびUBと略等しい電圧UPC2が供給される。次いで、電圧UPC2が電気モータ11に全電力で供給され、この段階において、スタータギアユニット113は熱機関のクラウンギア14と噛合する。
【0086】
時刻t2まで、図8A〜図8Cに示すように、電気モータ11により供給される電力は、電圧UB=UPC1=UPC2の降下と、引き込み巻線Laの電流Iaの低下を生じさせるが、振幅は、巻線Laの正常な励磁を維持するのに十分な状態を維持する。
【0087】
図8Bに示すように、電流Iaは、時刻t3まで引き込み巻線Laに維持される。(t3−t2)に等しい期間における引き込み巻線Laの励磁の維持は、逆転する可能性のあるスタータギアユニット113を保護することを可能とする。時刻t3までの引き込み巻線Laの励磁の維持は、本発明の適用においては、時刻t2の後、数ms〜数十ms継続することができる。
【0088】
時刻t3は、回路RC3の時定数R3・C2によって決定される。時刻t3において、キャパシタC2の充電電圧は、トランジスタT2を介した電流の通路を制御するのに十分な値に到達する。トランジスタT2は、閉状態に切り替わり、トランジスタT1のグリッドをアースMに接続する。次いで、トランジスタT1は、閉状態から開状態に切り替わり、巻線Laにおける電流Iaを阻止する。
【0089】
時刻t3の後、クラウンギア14に対するスタータギアユニット113の連結の維持は、始動接点13が閉塞されている限り継続する保持巻線Lmの励磁により確保される。
【0090】
本発明によれば、回路RC2の時定数R5・C3を調整することにより、電気モータ11の減速された速度と全速度との間の間隔TEMP=t2−t1を容易に管理することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 スタータ
10 二重接触電磁コンタクタ
10dc 二重接触装置
11 電気モータ
12 バッテリ
13 始動接点
14 クラウンギア
15 フォーク
20、21 結線
100 プランジャコア
101 前端部
103 コア復帰スプリング
104 ハウジング
110 アーマチャ
111 螺旋スロープ
112 フリーホイール
113 スタータギアユニット
114 インダクタ
115 噛合スプリング
1010 フィンガ
AN 槽
B+ 陽極端子
B1、B2 電気ブラシ
CM 可動接触板
BO 電気コイル
ECC 電子制御装置
ET あぶみ接点
Lm、La、L3 巻線
M アース
MS マイクロソレノイド
NM 可動電磁コア
PC+、PC1、PC2 接点
RC1、RC2、RC3 時定数回路
RE 復帰スプリング
RD 電流制限抵抗
SL 整流保持回路
T1、T2、T3 トランジスタ
TS モール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロソレノイド型の電気的に制御可能なマイクロアクチュエータ(MS)を有する二重接触電磁コンタクタ(10)と、電子制御装置(ECC)とを結合したものを備え、
前記電子制御装置(ECC)が、前記二重接触電磁コンタクタ(10)の引き込み巻線(La)の励磁を制御する第1トランジスタ切り替え手段(T1、T2、CZ2、RC1、RC3、SL)と、前記マイクロアクチュエータの励磁を制御する第2トランジスタ切り替え手段(T3、CZ1、RC2)とを備えることを特徴とする熱機関のためのスタータ。
【請求項2】
前記第2トランジスタ切り替え手段(T3、CZ1、RC2)は、前記電子制御装置(ECC)が駆動された後、第1所定期間(t2−t0)、前記マイクロアクチュエータ(MS)の励磁を制御することを特徴とする請求項1記載のスタータ。
【請求項3】
前記第2トランジスタ切り替え手段は、少なくともMOSFET型トランジスタを1つ備えることを特徴とする請求項1または2記載のスタータ。
【請求項4】
前記第2トランジスタ切り替え手段は、前記第1所定期間(t2−t0)の時定数を有する第1RC回路(RC2)を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスタータ。
【請求項5】
前記時定数を有する前記第1RC回路(RC2)は、微分型の回路であることを特徴とする請求項4記載のスタータ。
【請求項6】
前記第2トランジスタ切り替え手段は、第1安定電圧(U1)を前記第2トランジスタ切り替え手段に供給する第1電圧安定回路(CZ1)を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスタータ。
【請求項7】
前記第1トランジスタ切り替え手段は、少なくとも前記MOSFET型トランジスタ(T1、T2)を1つ備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のスタータ。
【請求項8】
前記第1トランジスタ切り替え手段は、前記積分型の時定数を有する第2および第3RC回路(RC1、RC3)を備え、前記第2RC回路(RC1)が、前記第1トランジスタ切り替え手段の始動動作(t1)を切り替え制御し、前記第3RC回路(RC3)が、前記第1トランジスタ切り替え手段の終了動作(t3)を切り替え制御し、前記第1トランジスタ切り替え手段の動作が、前記引き込み巻線(La)を励磁することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のスタータ。
【請求項9】
前記第1所定期間(t2−t0)は、前記第1トランジスタ切り替え手段による始動動作(t1)の切り替えと、終了動作(t3)の切り替えとの間で完了(t2)することを特徴とする請求項4記載のスタータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−2221(P2012−2221A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−103394(P2011−103394)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(508075579)ヴァレオ エキプマン エレクトリク モトゥール (49)
【Fターム(参考)】