説明

電子回路、半導体装置および電子時計

【課題】温度が高温になってもリーク電流を低減する。
【解決手段】電子回路Aは、チャネル長の異なるトランジスターN1及びトランジスターN2と、トランジスターN1及びトランジスターN2の一つを選択して所定のノードNに電気的に接続する選択部100とを備える。選択部100は、温度センサー200で検出された温度が高くなると、チャネル長の長いトランジスターN2を選択する。これにより、温度が高温になってもリーク電流が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温度変化に対応できる電子回路、半導体装置および電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
時計用の集積回路は、低消費電力且つ低電圧で動作することを前提に設計を行う。そのため、閾値電圧の低いトランジスターを使用することが多い(例えば、特許文献1参照)。このようなトランジスターを用いることにより、動作領域が確保でき、低電圧動作に有利となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−6064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、閾値電圧の低いトランジスターはリーク電流が大きいという欠点がある。特に、常温時にはリーク電流が小さくても、高温時ではリーク電流が大きくなる場合がある。この場合には、低消費電力を実現できないという問題があった。
【0005】
この発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、温度が変化してもリーク電流を抑制することが可能な電子回路、半導体装置および電子時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、チャネル長の異なる複数のトランジスターと、前記複数のトランジスターの一つを選択して所定のノードに電気的に接続する選択部とを備え、前記選択部は、温度が高くなる程、チャネル長の長いトランジスターを選択することを特徴とする。
一般に、温度が高くなると、トランジスターのリーク電流は増加する。この発明によれば、温度が高くなる程、チャネル長の長いトランジスターを選択するのでリーク電流を低減することができる。この結果、電子回路の消費電力を削減することが可能となる。
【0007】
この電子回路の好ましい態様は、温度を検出する温度センサーを備え、前記選択部は、前記温度センサーで検出された温度に基づいて、前記複数のトランジスターから一つを選択して前記所定のノードに電気的に接続することを特徴とする。この発明によれば、検出された温度に応じて、トランジスターを選択できるのでリーク電流を低減することが可能となる。
【0008】
発明の他の態様に係る電子回路は、所定のノードと接地の間に直列に接続された複数のトランジスターと、前記トランジスター間の接続点及び前記所定のノードの間に設けられた一又は複数のスイッチング素子と、前記一又は複数のスイッチング素子の各々をオン状態にするかオフ状態にするかを制御する制御部とを備え、前記制御部は、温度が高くなる程、直列に接続される前記トランジスターの個数が多くなるように前記一又は複数のスイッチング素子の各々についてオン状態にするかオフ状態にするかを制御することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、直列に接続されたトランジスターをスイッチング素子を用いて短絡することができるので、トランジスターのチャネル長を実質的に制御することができる。しかも、温度が高くなる程、直列に接続されるトランジスターの個数が多くなるように制御するから、温度が高くなるとチャネル長が長くなり高温で問題となるリーク電流を効果的に低減することができる。くわえて、トランジスターを直列に接続したので、回路の占有面積を低減することができる。
【0010】
この電子回路の好ましい態様は、温度を検出する温度センサーを備え、前記制御部は、前記温度センサーで検出された温度に基づいて、前記一又は複数のスイッチング素子の各々についてオン状態にするかオフ状態にするかを制御することを特徴とする。この発明によれば、検出された温度に応じて、トランジスターを選択できるのでリーク電流を低減することが可能となる。
【0011】
本発明に係る半導体装置は、上述した電子回路を備えたものである。また、本発明に係る電子時計は上述した電子回路を備えたものである。これらの半導体装置及び電子時計は、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施形態である電子回路の適用例である電子時計の外観を示す平面図である。
【図2】同電子時計の機能構成を示すブロック図である。
【図3】同電子時計における充電電流検出回路および積分手段の動作を示すタイムチャートである。
【図4】電子回路Aの構成を示す回路図である。
【図5】トランジスターN1及びN2のチャネル長を説明するための説明図である。
【図6】電子回路Bの構成を示す回路図である。
【図7】電子回路Cの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
図1はこの発明の一実施形態である電子回路の適用例である電子時計1の外観を示す平面図である。図1に示すように、電子時計1は、時針21、分針22、秒針23からなる時刻表示用指針20を備えている。また、電子時計1の文字板24の9時位置には、時刻表示用指針20とは別に表示針(副表示針)31および発電表示用目盛板32が設けられている。この表示針31および発電表示用目盛板32は、二次電池(図1では図示略)に蓄積されている電気エネルギーにより電子時計1が動作を継続することが可能な残り時間(継続時間)を表示する手段である。なお、文字板24の3時位置には窓241が形成され、文字板24の裏面に配置された日車によって日付が表示可能とされている。
【0014】
図2は電子時計1の機能構成を示すブロック図である。図2において、発電手段4は、電子時計1のケース内部に配置された回転錘2の運動またはりゅうず3の回転に応じて発電する交流発電機である。整流手段5は、発電手段4から出力される交流電流を整流するものであり、全波整流回路、半波整流回路などの公知の整流回路を利用することができる。
【0015】
充電電流検出回路6は、整流手段5によって整流された電流の大きさを複数種類の閾値の各々と比較し、各比較結果を示す検出結果信号を出力する回路である。整流手段5によって整流された電流は、この充電電流検出回路6を通過し、蓄電手段である二次電池7に充電される。なお、蓄電手段としては、二次電池7に限らず、キャパシタを利用してもよい。積分手段8は、充電電流検出回路6から出力される検出結果信号に基づいて二次電池7に対する充電電流の平均電流値を算出し、その平均電流値を積算することにより継続時間を算出する回路である。
【0016】
ここで、図3を参照し、充電電流検出回路6および積分手段8の動作を説明する。例えばりゅうず3の回転が繰り返されると、1回転毎に図3の最上段に例示するような複数の半波を繋げたバースト波形を持った電流が整流手段5から出力される。充電電流検出回路6には、所定のサンプリングレートのサンプリングパルスφが積分手段8から供給される。充電電流検出回路6は、整流手段5の出力電流と、大きさの異なった閾値I1〜I4(I1<I2<I3<I4)の各々とを比較し、サンプリングパルスφの発生タイミングにおいて各比較結果をサンプリングし、検出結果信号SCP1〜SCP4として出力する。
【0017】
積分手段8は、検出結果信号SCP1〜SCP4が充電電流検出回路6から得られる都度、検出結果信号SCP1〜SCP4が示す電流値を積算し、充電量積算値を算出する。具体的には検出結果信号SCP1〜SCP4が全てLレベルである場合、充電電流の大きさは閾値I1以下である。従って、積分手段8は、現状の充電量積算値を維持する。また、検出結果信号SCP1がHレベル、検出結果信号SCP2〜SCP4がLレベルである場合、充電電流の大きさは閾値I1〜I2の範囲内にある。従って、積分手段8は、閾値I1〜I2の範囲内の所定値を現状の充電量積算値に加える。また、検出結果信号SCP1およびSCP2がHレベル、検出結果信号SCP3およびSCP4がLレベルである場合、充電電流の大きさは閾値I2〜I3の範囲内にある。従って、積分手段8は、閾値I2〜I3の範囲内の所定値を現状の充電量積算値に加える。また、検出結果信号SCP1〜SCP3がHレベル、検出結果信号SCP4がLレベルである場合、充電電流の大きさは閾値I3〜I4の範囲内にある。従って、積分手段8は、閾値I3〜I4の範囲内の所定値を現状の充電量積算値に加える。また、検出結果信号SCP1〜SCP4が全てHレベルである場合、充電電流の大きさは閾値I4以上である。従って、積分手段8は、閾値I4以上の所定値を現状の充電量積算値に加える。一方、積分手段8は、単位時間の経過を示すタイミングパルスが発生する毎に、充電量積算値から電子時計1の単位時間当たりの電荷消費量を示す数値を減算する。
【0018】
以上、りゅうず3の回転が繰り返されて発電手段4が発電する場合を例に充電電流検出回路6および積分手段8の動作の概略を説明したが、回転錘2の回転により発電手段4が発電する場合の充電電流検出回路6および積分手段8の動作も同様である。
【0019】
持続時間表示制御手段9は、積分手段8が算出する充電量積算値に基づいて持続時間を算出し、この持続時間を表示針31で指示するように持続時間表示用モータ駆動手段10を制御する。持続時間表示用モータ駆動手段10は、持続時間表示制御手段9から出力される駆動制御信号に基づいて、持続時間表示用モータ11のモータコイル111に駆動パルスを与えて表示針31を駆動し、この表示針(副表示針)31により、発電量を積算した持続時間を表示する。
【0020】
以上説明した電子時計1において、消費電力を低減することは電子時計1の稼働時間を長時間化する上で重要である。上述した各種の回路の一部には、以下に述べる電子回路が採用される。
図4に示す電子回路Aは、チャネル長Lが異なるNチャネルのトランジスターN1及びN2を備える。トランジスターN1のチャネル長Lは、トランジスターN2のチャネル長Lと比較して短い。図5にチャネル長L(横軸)とリーク電流Icutoff(縦軸)の関係を示す。この図に示すように、チャネル長Lが長くなるほど、リーク電流Icutoffが小さくなるという特性を示している。ここで、チャネル幅Wが一定であるとすれば、トランジスターN1のチャネル長Lが「a」であり、トランジスターN2のチャネル長Lが「a+Δ2」であるとする。この場合、チャネル長Lが長いトランジスターN2のリーク電流IcutoffはトランジスターN1のリーク電流Icutoffより小さくなる。
【0021】
このリーク電流Icutoffは、高温になると増加する傾向にある。これは、トランジスターがオフ状態にある場合、基板の濃度差によって生じる拡散電流が支配的だからである。即ち、高温の方が低温よりキャリア数が多くなり拡散電流は増加するので、ゲート電圧が低くトランジスターがオフ状態である場合には、高温の方がリーク電流Icutoffが大きくなる。リーク電流Icutoffが増加すると、消費電力が増加するため、これを低減することが望まれる。
【0022】
そこで、電子回路Aでは、温度センサー200を用いて温度を検知し、検知した温度に応じて選択部100はトランジスターN1とトランジスターN2を切り替える。具体的には、温度が所定温度以上となった場合にチャネル長Lが長いトランジスターN2を選択してノードXと電気的に接続する一方、温度が所定温度未満となった場合にチャネル長Lが短いトランジスターN1を選択してノードXと電気的に接続する。これによって、温度が高温になってリーク電流Icutoffが問題となる状態では、リーク電流Icutoffが小さいトランジスターN2を用いるので、消費電力を低減することが可能となる。
【0023】
なお、電子回路Aでは、チャネル長の異なる2つのトランジスターN1、N2を選択部100で切り替えたが、3個以上のチャネル長の異なるトランジスターを選択部100に接続し、これらを選択部100で選択してノードXに電気的に接続してもよい。この場合、選択部100は温度が高くなる程、チャネル長の長いトランジスターを選択すればよい。
【0024】
次に、上述した各種の回路に適用可能な他の電子回路について説明する。図6は電子回路Bの回路図である。電子回路Bは、ノードXと接地との間に、3つのNチャネルのトランジスターN3、N4、及びN5を直列に接続し、温度に応じて切り換えるものである。トランジスターN3、N4、及びN5のチャネル長Lは、全て共通でもよいし、異ならせてもよい。
【0025】
電子回路Bは、トランジスターN3〜N5の他に、スイッチングトランジスターS1及びS2を備える。スイッチングトランジスターS1はトランジスターN5のドレインとトランジスターN3のドレインとの間に設けられており、選択信号SEL1によってオン・オフが制御される。一方、スイッチングトランジスターS2はトランジスターN5のソースとトランジスターN3のドレインとの間に設けられており、選択信号SEL2によってオン・オフが制御される。
【0026】
制御部300は、温度センサー200で検出された温度に応じて選択信号SEL1及びSEL2を生成する。具体的には、第1温度T1と、第1温度より高い第2温度T2とを想定する。
検出温度が第1温度T1未満の場合、制御部300は、選択信号SEL1をハイレベルにする。この場合、トランジスターN5のドレインとトランジスターN3のドレインとが短絡されるので、実質的にトランジスターN3のみが選択される。
検出温度が第1温度T1以上第2温度T2未満の場合、制御部300は、選択信号SEL1をローレベルとし、且つ選択信号SEL2をハイレベルにする。この場合、トランジスターN4のドレインとソースとが短絡されるので、実質的にトランジスターN3及びN5が直列に接続される。
検出温度が第2温度T2以上の場合、制御部300は、選択信号SEL1をローレベルとし、且つ選択信号SEL2をローレベルにする。この場合、トランジスターN3〜N5が直列に接続される。
【0027】
即ち、温度が高くなるにつれ、直列に接続されるトランジスターの数が増加するので、実質的にチャネル長Lが長くなる。これによって、高温時のリーク電流Icutoffを低減することができる。また、電子回路Bは、電子回路Aよりも多段階にチャネル長Lを調整することができ、チップ面積を小さくすることもできる。
なお、電子回路Bにおいて4個以上のトランジスターをノードXと接地との間に直列に接続し、スイッチングトランジスターを増加してもよい。この場合、制御部300は、温度が高くなる程、直列に接続されるトランジスターの個数が多くなるようにスイッチングトランジスターの各々についてオン状態にするかオフ状態にするかを制御すればよい。また、トランジスターN5とスイッチングトランジスターS1を削除して、トランジスターN4のドレインをノードXと接続してもよい。この場合には、1個のスイッチングトランジスターS2を用いて、トランジスターN3を単独で用いるか、トランジスターN3及びN4を用いるかを選択すればよい。
【0028】
上述した電子回路A及びBは、温度に応じてチャネル長Lを切り替えるものであったが、これらの電子回路A及びBと以下に述べる電子回路Cを併用してもよい。
図7(A)は一般的なカレントミラー回路400であり、同図(B)は電子回路Cの回路図である。電子回路Cは、カレントミラー回路400に、トランジスターN8とトランジスターN9を付加したものである。
【0029】
トランジスターN8のドレインとゲートとは短絡され、そのドレインは電流源ろ接続され、そのゲートはトランジスターN9のゲートと接続され、そのソースはトランジスターN6のドレインと接続される。
【0030】
また、トランジスターN9のドレインはPチャネルのトランジスターP1のドレインと接続され、トランジスターN9のソースはトランジスターN7のドレインと接続される。このため、トランジスターN7にかかるバイアス電圧は、トランジスターN9によって分圧される。一般に、トランジスターにかかるバイアス電圧は大きくなるほど、空乏層を広げ、チャネル長Lの実効長が短くなるチャネル変調効果が知られている。
【0031】
電子回路Cでは、トランジスターN7にかかるバイアス電圧を小さくすることできるので、チャネル長Lの実効長を長くすることができる。これにより、リーク電流Icutoffを低減して、ひいては消費電力を減らすことが可能となる。
【0032】
なお、電子回路A〜Cは、電子時計1の回路だけでなく、一般的な回路に適用できることは言うまでもない。また、電子回路A〜Cは半導体集積回路などの半導体装置であってもよい。くわえて、電子回路A及びBのトランジスターはNチャネル型で構成したがPチャネル型で構成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1……電子時計、N1〜N9……トランジスター、A〜C……電子回路、S1,S2……スイッチングトランジスター(スイッチング素子)、200……温度センサー、300……制御部、SEL1,SEL2……選択信号、X……ノード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル長の異なる複数のトランジスターと、
前記複数のトランジスターの一つを選択して所定のノードに電気的に接続する選択部とを備え、
前記選択部は、温度が高くなる程、チャネル長の長いトランジスターを選択する、
ことを特徴とする電子回路。
【請求項2】
温度を検出する温度センサーを備え、
前記選択部は、前記温度センサーで検出された温度に基づいて、前記複数のトランジスターから一つを選択して前記所定のノードに電気的に接続することを特徴とする請求項1に記載の電子回路。
【請求項3】
所定のノードと接地の間に直列に接続された複数のトランジスターと、
前記トランジスター間の接続点及び前記所定のノードの間に設けられた一又は複数のスイッチング素子と、
前記一又は複数のスイッチング素子の各々をオン状態にするかオフ状態にするかを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、温度が高くなる程、直列に接続される前記トランジスターの個数が多くなるように前記一又は複数のスイッチング素子の各々についてオン状態にするかオフ状態にするかを制御する、
ことを特徴とする電子回路。
【請求項4】
温度を検出する温度センサーを備え、
前記制御部は、前記温度センサーで検出された温度に基づいて、前記一又は複数のスイッチング素子の各々についてオン状態にするかオフ状態にするかを制御することを特徴とする請求項3に記載の電子回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の電子回路を備えた半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の電子回路を備えた電子時計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−163520(P2012−163520A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25892(P2011−25892)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】