説明

電子天びん

【課題】電子天びんの使用または輸送中の荷重検出部への粉塵・異物混入を防止する。
【解決手段】被測定試料の荷重を検出する荷重センサに例えばロードセル6を用い、このロードセル6に荷重受け皿2を支承する支承部材10をねじ9で固着した荷重受け持ち出し部7をねじ8で固定する。前記荷重受け持ち出し部7にカバー4の貫通穴12と同径以上の内径の環状突起部11を設けて貫通穴をケース内側より覆う。これにより、貫通穴12から侵入する粉塵や異物は環状溝に蓄積され、本体5内部への侵入が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子天びんあるいは電子はかり等(以下単に[電子天びん]という)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子天びんにおいて、一般に被測定試料の荷重を検出する荷重検出部には、ロバーバル機構を有する長方体のロードセルフレームの歪み発生部に歪みゲージなどの歪みセンサを貼付し、この歪みセンサでブリッジ回路を構成したロードセルや被測定試料の荷重と電磁力をバランスさせてその電磁力発生に要した電流を検出して荷重を検出する荷重検出機構が多く用いられている。
【0003】
図6はロードセルを用いた電子天びん20の荷重検出部とその周辺部を一部断面で示す構成図である。ロードセル21の一端側下辺を筐体22の底部に固定し、他端側上辺に荷重受け皿23を取り外し自由に支承するための円錐形の支承部材24を固着した荷重受け持ち出し部25を固設している。この支承部材24は、筐体22に冠着させるカバー26に設けられた貫通穴27のほぼ中央に位置して荷重受け皿23を支承するようにしている(特許文献1参照)。
【0004】
図7は電磁力発生装置37で発生する電磁力と被測定試料の荷重をバランスさせる電磁力平衡機構を用いた電子天びん30の荷重検出部とその周辺部を一部断面で示す構成図である。母材をくり抜きロバーバル機構とレバー機構を形成した機構ブロック31の一端側下辺を筐体33の底部に固定し、他端側上辺に円錐形の支承部材32を固着している。この支承部材32は、筐体33に冠着させるカバー34に設けられた貫通穴35のほぼ中央に位置して荷重受け皿36を支承するようにしている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−35601号公報
【特許文献2】特開2002−148105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電子天びんは上記のように構成されているが、使用場所に存在する粉塵や異物が図6の矢印Aで示すように貫通穴27を通過してカバー26の内部に浸入したり、図7の矢印Bで示すように貫通穴35を通過してカバー34内部に浸入して蓄積したりする。これらの塵埃や異物がロードセル21や機構ブロック31などの荷重検出部の上辺に蓄積し移動したりすると、これらの荷重負荷が被測定試料の荷重に加算され、測定精度誤差を増大変動させるという問題がある。このため貫通穴27や同35とその内部周辺部品との隙間をなるべく小さくしたり、貫通穴の周囲に下方向きに環状突起を設けたりするなどしてできるだけ塵埃や異物の侵入を抑制するようにしている。
【0006】
しかしながら、使用期間中に蓄積した塵埃や異物を清掃する時、あるいは工場からの出荷や使用場所の変更などで遠方輸送する場合においては荷重受け皿を外して輸送されるので、カバーの貫通穴全体が開放状態となり、周辺の塵埃や異物が混入する危険が増大する。また、蓄積された塵埃や異物は使用環境の振動や試料載置毎に発生する振動などによってより内部に移動し、測定誤差の増大や変動を発生させるとともに、侵入した異物や塵埃を清掃するにはカバーを外さねばならず非常に手間がかかる上、本体に損傷を与える危険があるという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、荷重検出部への粉塵等の不要物が本体内部に侵入し難い電子天びんを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明による電子天びんは、被測定試料を載置する荷重受け皿と、被測定試料の荷重を検出する荷重センサと、前記荷重センサに固設され荷重受け皿を支承する荷重受け持ち出し部と、貫通穴を有するカバーとを備え、前記荷重受け皿は前記貫通穴を通して前記荷重受け持ち出し部に支承されており、前記荷重受け持ち出し部における前記荷重受け皿が支承される箇所の周囲を囲む突起物が設けられ、当該突起物の内壁が前記貫通穴と同位置または外側に位置しているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明による電子天びんは、カバーの貫通穴と同径以上の径の環状突起部を荷重受け持ち出し部に設けているので、貫通穴から侵入した塵埃や異物は環状突起部内に留められ、荷重検出部への不当アクセスが防止できるとともに塵埃の清掃や異物除去が容易に行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を電子天びんに適用した場合の実施例を図面を参照しながら説明する。図1は実施例による電子天びん1の外観斜視図、図2は電子天びん1の荷重検出部とその周辺部の一部断面を示す構成図、図3は実施例に係る荷重受け持ち出し部の斜視図である。
【0010】
本電子天びん1は、図1に示すような荷重受け皿2と、この荷重受け皿2を下方から支承し、被測定試料の荷重を検出して質量値に変換し、その質量値を表示する構成要素を筐体3とそのカバー4内に配設した本体5から構成されている。この本体5の被測定試料の荷重を検出する構成要素には図2に示すようなロバーバル機構を形成し、各薄肉部に歪みセンサ(図示省略)が貼り付けられこの歪みセンサでホイートストーンブリッジ回路を構成した公知のロードセル6が用いられている。このロードセル6の一端(図2では左端)側上辺に図3に示すような荷重受け持ち出し部7が一体成形あるいはねじ8で固着され、他端側下辺は筐体3の底部に固定されている。
【0011】
図3、4を参照して、荷重受け持ち出し部7の構成を説明する。図3は荷重受け持ち出し部7の斜視図である。また、図4は、貫通穴12周辺の拡大断面図である。荷重受け持ち出し部7には図3に示すようにねじ9により荷重受け皿2を支承するための支承部材10が螺合され、その外周上に環状突起部11が形成されている。前記支承部材10の先端部は、カバー4の貫通穴12から上部に突出している。前記環状突起部11の内径は前記貫通穴12の直径と同一またはそれ以上の径とし、高さは5mm程度以上、カバー4の貫通穴12の周辺部内面と環状突起部11の上面間の間隙幅は1mm程度に形成されている。
【0012】
上記電子天びん1の荷重受け皿2に被測定試料を載置すると、被測定試料の荷重が左端側に加わり、ロバーバル機構を介して各薄肉部に歪みが発生する。荷重作用点側の薄肉部には圧縮力、固定側の薄肉部には引張力が加わり、ロードセル6のホイートストーンブリッジ回路より被測定試料の荷重に比例したアナログ電気信号が検出される。この検出信号はマイクロコンピュータを主体とする演算処理部において公知の質量値換算処理が行なわれ、その質量値が表示される。
【0013】
この電子天びん1が使用環境中に置かれた場合、その環境中に存在する塵埃や異物が矢印Aで示す方向からカバー4の貫通穴12と荷重受け皿2との間隙を通って侵入するが、荷重受け持ち出し部7上に環状突起部11が存在し、その内径が貫通穴12の直径以上であり、かつカバー4の内面と環状突起部11の上面間の間隙が小さいために、塵埃や異物などの大部分は環状突起部11と支承部材10で形成される環状溝13内に蓄積される。この蓄積された塵埃や異物は、電子天びん1から荷重受け皿2を取り外し、スポイド等の吸入器で吸引することにより容易に吸い取り除去することができる。環境状態に応じた定期期間ごとの清掃を行なうことにより、精度誤差への影響を除去することができる。
【0014】
また、電子天びんは出荷時、あるいは使用場所を遠方に変更するような場合、通常、一旦荷重受け皿2を本体5から外しておのおの梱包し輸送し、使用場所で開梱して荷重受け皿2を再度本体5に取り付け直す一連の作業を必要とする。この場合にも環状突起部11が存在することにより作業中に塵埃や異物が貫通穴12に混入しても、環状突起部11で本体5内への進入路が防止されているため、塵埃や異物などの大部分は環状突起部11と支承部材10で形成される環状溝13内に蓄積される。
【0015】
図5は電子天びん14の構成図で、電子天びん30と同一機能部品には同一記号が付されている。本電子天びん14は、機構ブロック31の一端側上辺に支承部材15とカバー34の貫通穴35より広い内周を有する環状突起部16を設けた荷重受け持ち出し部17を固設している。これにより、貫通穴35から侵入する塵埃や異物を環状突起部16内に閉じ込め、ケース34内部への侵入が防止される。
【0016】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば前記環状突起部11、16の断面形状、貫通穴12は多角形などの円形以外の形状を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、電子天びんのみならず、同様の目的で使用されている電子はかり(電子秤)にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明実施例の電子天びんの外観斜視図である。
【図2】実施例の電子天びんの一部断面を示す構成図である。
【図3】実施例に係る荷重受け持ち出し部の斜視図である。
【図4】貫通穴12の周辺部の拡大断面図である。
【図5】実施例の電子天びんの一部断面を示す構成図である。
【図6】ロードセルを用いた電子天びん20の荷重検出部とその周辺部の一部断面を示す構成図である。
【図7】電磁力平衡機構を用いた電子天びん30の荷重検出部とその周辺部の一部断面を示す構成図である。
【符号の説明】
【0019】
1 電子天びん
2 荷重受け皿
3 筐体
4 カバー
5 本体
6 ロードセル
7 荷重受け持ち出し部
8 ねじ
9 ねじ
10 支承部材
11 環状突起部
12 貫通穴
13 環状溝
14 電子天びん
15 支承部材
16 環状突起部
17 荷重受け持ち出し部
20 電子天びん
21 ロードセル
22 筐体
23 荷重受け皿
24 支承部材
25 荷重受け持ち出し部
26 カバー
27 貫通穴
30 電子天びん
31 機構ブロック
32 支承部材
33 筐体
34 カバー
35 貫通穴
36 荷重受け皿
37 電磁力発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定試料を載置する荷重受け皿と、被測定試料の荷重を検出する荷重センサと、前記荷重センサに固設され荷重受け皿を支承する荷重受け持ち出し部と、貫通穴を有するカバーとを備え、前記荷重受け皿は前記貫通穴を通して前記荷重受け持ち出し部に支承されており、前記荷重受け持ち出し部における前記荷重受け皿が支承される箇所の周囲を囲む突起物が設けられ、当該突起物の内壁が前記貫通穴と同位置または外側に位置していることを特徴とする電子天びん。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−36588(P2009−36588A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199888(P2007−199888)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)