説明

電子天秤

【課題】 適切な表示条件を自動的に選択して計量結果を表示することができる電子天秤を提供する。
【解決手段】 第n変動量閾値W’と、第n設定時間T’と、測定重量W(t)を平均するための第n設定サンプリング数S’とがそれぞれ設定されたn種類の平滑化処理の内容を予め記憶する記憶部40と、第n平均重量W(t)を算出する平均重量算出部32とを備える電子天秤1であって、表示制御部34は、第(n+1)変動量ΔWn+1(t)が、第(n+1)設定時間Tn+1’継続して第(n+1)変動量閾値Wn+1’未満になったときには、第(n+1)平均重量Wn+1(t)を表示部60に表示し、第(n+1)変動量ΔWn+1(t)が、第(n+1)変動量閾値Wn+1’以上になったときには、第(n−1)平均重量Wn−1(t)を表示部60に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子天秤に関し、さらに詳細には適切な表示条件を自動的に選択して計量結果を表示することができる電子天秤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子天秤において、被計量物の重量を次々と繰り返し(例えば、数ミリ秒間隔で)検出した測定重量W(t)には、被計量物の計量皿への載置時の振動や、気流や床振動等の周囲環境による外部からの振動等の影響が含まれることが多い。例えば、空調から吹き出される気流の影響を受ける場所で被計量物の重量を計量する場合には、空調の気流による天秤のゆれ(振動)が生じるので、いつまでたっても測定重量W(t)が大きくなったり小さくなったりするように変動する。
そこで、気流の影響を防止するための風防構造を備える電子天秤が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、測定重量W(t)の変動を、平滑化処理を実行することにより抑えるようにした電子天秤も利用されている(例えば、特許文献2参照)。このような電子天秤では、被計量物の重量を次々と繰り返し検出することにより、測定重量W(t)をバッファ(記憶部)に順次記憶させ、バッファに順次記憶されていく測定重量W(t)のうち予め設定した設定サンプリング数S’の測定重量W(t)を平均して平均重量W(t)を算出することで、液晶表示画面(表示部)に計量結果として平均重量W(t)を表示している。
【0004】
ここで、液晶表示画面に表示される計量結果の「安定性」と「応答性」とについて説明する。
「安定性」は、平均重量W(t)を算出するときの設定サンプリング数S’が大きく設定されればされるほど改善される。しかし、設定サンプリング数S’が大きいと、設定サンプリング数S’の測定重量W(t)を収集して平均重量W(t)を算出するため、液晶表示画面に計量結果を表示するまでに要する時間が長くなったり、被計量物を計量皿に追加(あるいは計量皿から除去)した場合に、被計量物を計量皿に追加したことによる重量変化が計量結果に完全に反映されるまでに時間が長くなったりする。すなわち、使用者は、被計量物を計量皿に追加したことによる重量変化が反映された重量を得るのに時間がかかった。
一方、「応答性」は、設定サンプリング数S’が小さく設定されればされるほど改善される。しかし、設定サンプリング数S’が小さいと、様々な振動ノイズの影響を低減できずに、液晶表示画面に表示される計量結果が変動することになる。すなわち、使用者は、平滑化処理を実行しない電子天秤を用いた場合と同様に、変動しないで一定となる重量を得ることができないことがあった。
つまり、「安定性」と「応答性」とは、相反する性質がある。
【0005】
また、平滑化処理が働いていると、ノイズである振動成分のみならず、被計量物を追加したことによる荷重変化についても変動を抑えるように作用することになるので、被計量物を計量皿に追加したり計量皿から除去したりする場合には、加除動作直後の測定重量W(t)は平滑化処理から可能な限り除外する電子天秤も開示されている。
このような電子天秤では、測定重量W(t)の変動量ΔW(t)の閾値(以下、「変動量閾値」という)W’と、測定重量W(t)の変動量ΔW(t)が変動量閾値W’未満になった状態の継続時間の閾値(以下、「設定時間」という)T’とを設定し、次々と検出される測定重量W(t)の変動量ΔW(t)とこれら閾値W’、T’との関係から、被計量物を追加したことによる荷重変化であるか、振動状態による荷重変化であるかを区別するように判定している。
具体的には、まず、計測結果として測定重量W(t)を液晶表示画面に表示しておき、変動量ΔW(t)が変動量閾値W’未満になったと判定するとともに、変動量閾値W’未満になってからの継続時間が設定時間T’より長い期間継続したと判定することにより、被計量物を追加したことによる荷重変化でなく、振動状態による荷重変化であるとしている。そして、振動状態による荷重変化であると判定した後には、設定サンプリング数S’の測定重量W(t)が採取されると、これらから平均重量W(t)を算出して、その算出された平均重量W(t)を測定重量W(t)に変えて計測結果として液晶表示画面に表示するようにしている。一方、被計量物を追加したことによる荷重変化であると判定した後には、測定重量W(t)を計測結果として液晶表示画面に表示するようにしている。
【0006】
ところで、平滑化処理を実行する電子天秤において、被計量物の単純な重量計測を行う場合には、計量皿に被計量物を載置した後、計量皿に新たな重量を追加することがないので、正確な重量を得るため速い「応答性」よりも高い「安定性」が必要となり、すなわち設定サンプリング数S’が大きい値に設定されているものが好ましかった。
一方、被計量物の単純な重量計測を行うのでなく、所望量(例えば、10.00g)の被計量物(例えば、粉や液体等)を量り取る場合では、計量結果を確認しながら計量皿に重量をどんどん追加することになるので、作業効率を向上させるため高い「安定性」よりも速い「応答性」が必要となり、すなわち設定サンプリング数S’が小さい値に設定されているものが好ましかった。
【0007】
そこで、被計量物の軽重や、計量作業の種類(単純な重量計測や、量り取り計測等)や、作業環境の状況に応じて、平滑化処理の内容を状況に適した内容に調整することができるように、電子天秤の使用者のキー操作によって、予め設けられた「測定モード」を選択できる電子天秤が開発されている。
例えば、「安定性」が高くなるように設定サンプリング数S’、変動量閾値W’、設定時間T’が設定された「標準測定モード」を設けるとともに、「応答性」が速くなるように設定サンプリング数S’、変動量閾値W’、設定時間T’が設定された「量り取り測定モード」を設けている。そして、電子天秤の使用者によって複数の測定モードから一つの測定モードが選択されると、選択された測定モードの設定サンプリング数、変動量閾値、設定時間の下で平滑化処理を実行している。
【特許文献1】特開平9−43041号公報
【特許文献2】特開平11−311566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したような電子天秤においては、電子天秤の使用者は、所望量(例えば、10.00g)の被計量物(例えば、粉や液体等)を量り取る場合では、「量り取り測定モード」を選択することにより、計量結果として平均重量W(t)を表示させても計量結果の「応答性」を速くすることができ、その結果、被計量物を載置したり取り除いたりすることを素早く行えるようになった。しかしながら、使用者が最終的に所望量の被計量物を量り取ったと判断するにも、「応答性」が速い、すなわち「安定性」が低い計量結果を見ながら行うことになるので、計量過多や計量不足が生じやすかった。
また、使用者が最終的に所望量の被計量物を量り取ったと判断した後、計量過多や計量不足が生じないように、計量結果の「安定性」を高めるため、改めて「標準測定モード」を選択することにより、計量結果の「安定性」を高くすることもできるが、このときには、「量り取り測定モード」から「標準測定モード」に変更するためのキー操作等を行う必要があり、使い勝手が悪かった。
そこで、本発明は、適切な表示条件を自動的に選択して計量結果を表示することができる電子天秤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の電子天秤は、被計量物の重量を次々と検出することにより、検出した測定重量W(t)を記憶部に順次記憶させる測定重量記憶制御部と、
第N変動量閾値W’と、第N設定時間T’と、測定重量W(t)を平均するための第N設定サンプリング数S’とが設定された第N平滑化処理を、Nを変数として複数種類(N=1、・・、n)予め記憶する記憶部と、第n平滑化処理を実行するように設定されたときには、第n設定サンプリング数S’の測定重量W(t)を平均して第n平均重量W(t)を算出する平均重量算出部と、第n平滑化処理を実行するように設定したときには、表示部に第n平均重量W(t)を表示する表示制御部と、第n平均重量W(t)を表示部に表示している際に、第n平均重量W(t)の時間的な変化を示す第(n+1)変動量ΔWn+1(t)を順次算出する変動量算出部とを備える電子天秤であって、前記記憶部は、第(n+1)設定サンプリング数Sn+1’は、第n設定サンプリング数S’より大きくなり、かつ、第(n+1)変動量閾値Wn+1’は、第n変動量閾値W’より小さくなるように記憶し、前記表示制御部は、第n平滑化処理を実行するように設定した後に、第(n+1)変動量ΔWn+1(t)が、第(n+1)設定時間Tn+1’継続して第(n+1)変動量閾値Wn+1’未満になったときには、第(n+1)平滑化処理を実行するように設定して第(n+1)平均重量Wn+1(t)を表示部に表示し、第(n+1)変動量ΔWn+1(t)が、第(n+1)変動量閾値Wn+1’以上になったときには、第(n−1)平滑化処理を実行するように設定して第(n−1)平均重量Wn−1(t)を表示部に表示するようにしている。
【0010】
ここで、「第n設定サンプリング数S’」とは、平均処理する測定重量W(t)の数をいう。よって、第n設定サンプリング数S’を大きな値に設定すればするほど計量結果の「安定性」は高くなるが、第n設定サンプリング数S’が大きくなると、第n平均重量W(t)を表示するまでに要する時間が長くなったり、被計量物を計量皿に追加したことによる重量変化が完全に反映されるまでに時間が長くなったりする。一方、第n設定サンプリング数S’を小さな値に設定すればするほど計量結果の「応答性」は速くなるが、第n設定サンプリング数S’が小さくなると、様々な振動ノイズの影響を低減できずに計量結果が変動しやすくなる。よって、本発明の電子天秤では、下記式(1)に示すように第(n+1)設定サンプリング数Sn+1’の値は、第n設定サンプリング数S’の値より大きくなるので、nが大きくなればなるほど、計量結果の「安定性」は高くなり、一方、nが小さくなればなるほど、計量結果の「応答性」は速くなることになる。
’<Sn+1’・・・(1)
【0011】
また、「第n変動量閾値W’」は、或る平滑化処理の内容を実行するための第(n―1)平均重量Wn−1(t)の時間的な変化を示す第n変動量ΔW(t)の閾値をいう。よって、第n変動量閾値W’を大きな値に設定すると、被計量物を追加したことによる荷重変化でないと判定されやすくなり、その結果、本発明の電子天秤では現在の平滑化処理の内容より「安定性」が高い計量結果を表示しやすくなる。一方、第n変動量閾値W’を小さな値に設定すると、被計量物を追加したことによる荷重変化であると判定されやすくなり、その結果、本発明の電子天秤では現在の平滑化処理の内容より「安定性」が高い計量結果を表示しにくくなる。よって、本発明の電子天秤では、下記式(2)及び図2に示すように第(n+1)変動量閾値Wn+1’の値は、第n変動量閾値W’の値より小さくなるので、nが小さいときには、現在の平滑化処理の内容より「安定性」が高い計量結果を表示しやすくなり、一方、nが大きいときには、現在の平滑化処理の内容より「安定性」が高い計量結果を表示しにくくなることになる。
’>Wn+1’・・・(2)
【0012】
本発明の電子天秤によれば、記憶部は、第n変動量閾値W’と第n設定時間T’と第n設定サンプリング数S’とがそれぞれ設定されたn種類の平滑化処理の内容を予め記憶する。つまり、本発明の電子天秤では、n種類の平滑化処理を実行することになる。なお、本発明の電子天秤では、n種類の平滑化処理の内容は、上述したようにnが大きくなればなるほど、計量結果の「安定性」は高くなり、現在の平滑化処理の内容より「安定性」が高い計量結果を表示しにくくしている。
これにより、まず初めは、「応答性」が非常に速く、「安定性」が非常に低い測定重量W(t)を表示するとともに、測定重量W(t)より「応答性」がやや遅く、「安定性」がやや高い第1平均重量W(t)を表示しやすくし、第1変動量閾値W’と第1設定時間T’とを満たすと、第1平均重量W(t)を表示するとともに、第1平均重量W(t)より「応答性」がやや遅く、「安定性」がやや高い第2平均重量W(t)をやや表示しにくくし、第2変動量閾値W’と第2設定時間T’とを満たすと、第2平均重量W(t)を表示するように、第(n+1)変動量閾値Wn+1’と第(n+1)設定時間Tn+1’とを満たすと、現在、表示している第n平均重量W(t)より「応答性」がやや遅く、「安定性」がやや高い第(n+1)平均重量Wn+1(t)を表示する。
また、第(n+1)変動量閾値Wn+1’と第(n+1)設定時間Tn+1’とを満たさなかったときには、現在、表示している第n平均重量W(t)より「応答性」がやや速く、「安定性」がやや低い第(n−1)平均重量Wn―1(t)を表示する。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の電子天秤によれば、適切な表示条件を自動的に選択して計量結果を表示することができる。
【0014】
(その他の課題を解決するための手段及び効果)
また、上記発明において、前記平均重量算出部は、第n設定サンプリング数S’の測定重量W(t)の移動平均である第n平均重量W(t)を順次算出するようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれる。
【0016】
図1は、本発明に係る電子天秤の構成を示すブロック図である。図2は、液晶表示画面(表示部)60に表示される計量結果について説明するための図である。なお、「t」は時間を示す。
電子天秤1は、重量検出器10と、信号処理器20と、マイクロコンピュータ50と、液晶表示画面60とを備える。なお、電子天秤1では、詳細は後述するが、第n変動量閾値W’と第n設定時間T’と第n設定サンプリング数S’とがそれぞれ設定された3種類の平滑化処理の内容が、マイクロコンピュータ50によって自動的に選択されて実行されることになる。すなわち、表示する計量結果の「安定性」と「応答性」とのバランスがそれぞれ異なるように設定された3種類の平滑化処理の内容が、マイクロコンピュータ50によって自動的に選択されて実行される。
以下、このような電子天秤1を用いて、使用者が、10.00g(所望量)の粉(被計量物)を量り取る場合について説明することとする。
【0017】
重量検出器10は、その計量皿の上面に載置された粉の重量をロードセル(図示せず)によって検出し、信号処理器20にアナログ信号を所定の時間間隔Δt(例えば、数ミリ秒間隔)で順次出力する。
信号処理器20は、重量検出器10から検出されたアナログ信号を増幅する増幅器20aと、増幅後のアナログ信号をデジタル信号(測定重量W(t))に変換するA/D変換器20bとを備える。
【0018】
マイクロコンピュータ50は、CPU(データ処理装置)30と、メモリ40とから構成される。
CPU30が処理する機能をブロック化して説明すると、測定重量W(t)が入力される測定重量記憶制御部31と、測定重量W(t)を平均して第n平均重量W(t)を算出する平均重量算出部32と、変動量算出部33と、第n平均重量W(t)を表示する表示制御部34とを有する。
なお、表示制御部34は、初期設定として、平滑化処理を実行しない計量結果、すなわち測定重量W(t)を表示するようになっている。そして、測定重量W(t)は、第0設定サンプリング数S’=1である第0平均重量W(t)として扱うものとし、「表示パラメータn=0」のときに表示される。
【0019】
また、メモリ40は、測定重量W(t)を順次記憶する測定重量記憶領域41と、第n平均重量を順次記憶する平均重量記憶領域42と、第n変動量閾値W’と第n設定時間T’と第n設定サンプリング数S’とがそれぞれ設定された3種類の平滑化処理の内容と、第4変動量閾値W’とを予め記憶する平滑化処理記憶領域43とを有する。
平滑化処理記憶領域43に記憶される3種類の平滑化処理の内容においては、第1平滑化処理の内容(n=1)として、第1変動量閾値W1 ’と第1設定時間T1’と第1設定サンプリング数S’とが設定され、第2平滑化処理の内容(n=2)として、第2変動量閾値W’と第2設定時間T’と第2設定サンプリング数S’とが設定され、第3平滑化処理の内容(n=3)として、第3変動量閾値W’と第3設定時間T’と第3設定サンプリング数S’とが設定される。
そして、S’=1<S’<S’<S’となるように設定されている。つまり、nが大きくなればなるほど、「安定性」は高くなり、一方、nが小さくなればなるほど、「応答性」は速くなるようになっている。
また、W1 ’>W’ >W’ >W’となるように設定されている。つまり、nが小さいときには、現在の平滑化処理の内容より「安定性」が高い計量結果を表示しやすくなり、一方、nが大きいときには、現在の平滑化処理の内容より「安定性」が高い計量結果を表示しにくくなっている。
さらに、T1’=T’=T’=T’=10×Δtとなるように設定されている。つまり、nが異なっていても、設定時間は全て同じ時間となっている。
【0020】
測定重量記憶制御部31は、重量検出器10により粉の重量が検出され、信号処理器20によりデジタル信号に変換された測定重量W(t)を測定重量記憶領域41に所定の時間間隔Δtで順次記憶させていく制御を行う。
具体的には、使用者が重量検出器10の計量皿の上面に粉を載置すると、重量検出器10により粉の重量が検出され、信号処理器20により測定重量W(t)が測定重量記憶領域41に所定の時間間隔Δtで順次記憶されていく。
【0021】
平均重量算出部32は、第n平均重量W(t)を液晶表示画面60に表示するように表示制御部34によって表示パラメータnが設定されたときには、第n設定サンプリング数S’の測定重量W(t)の移動平均である第n平均重量W(t)を順次算出する制御を行う。
例えば、第1平均重量W(t)を液晶表示画面60に表示するように表示制御部34によって表示パラメータn=1が設定されたときには、測定重量記憶領域41に測定重量W(t)が順次記憶されていくと、下記式(3)を用いて、第1設定サンプリング数S’の測定重量W(t)の移動平均である第1平均重量W(t)を順次算出するとともに、第1平均重量W1 (t)を平均重量記憶領域42に順次記憶させていく。
(t)={W(t)+W(t−Δt)+W(t−2Δt)+・・・+W(t−(S−1)×Δt)}/S・・・(3)
【0022】
また、第2平均重量W(t)を液晶表示画面60に表示するように表示制御部34によって表示パラメータn=2が設定されたときには、測定重量記憶領域41に測定重量W(t)が順次記憶されていくと、下記式(4)を用いて、第2設定サンプリング数Sの測定重量W(t)の移動平均である第2平均重量W(t)を順次算出するとともに、第2平均重量W(t)を平均重量記憶領域42に順次記憶させていく。
(t)={W(t)+W(t−Δt)+W(t−2Δt)+・・+W(t−(S−1)×Δt)+・・+W(t−(S−1)×Δt)}/S・・・(4)
【0023】
変動量算出部33は、第n平均重量W(t)を液晶表示画面60に表示するように表示制御部34によって表示パラメータnが設定されたときには、第n平均重量W(t)の時間的な変化を示す第(n+1)変動量ΔWn+1(t)を順次算出していく制御を行う。
例えば、時間(t−Δt)に第1平均重量W(t−Δt)が表示され、時間tに第1平均重量W(t)が表示されると、第2変動量ΔW(t)=W(t)−W(t−Δt)が算出される。また、時間(t+Δt)に第1平均重量W(t+Δt)が表示されると、第2変動量ΔW(t+Δt)=W(t+Δt)−W(t)が算出される。このようにして、順次、第2変動量ΔW(t)が算出されていく。
【0024】
表示制御部34は、変動量算出部33で算出された第n変動量ΔW(t)に基づいて、表示パラメータnを設定して、液晶表示画面60に第n平均重量W(t)を表示する制御を行う。
例えば、まず初期設定(n=0)として、液晶表示画面60に測定重量W(t)を表示する。すなわち「応答性」が非常に速い測定重量W(t)を表示する。これにより、使用者は、10.00gの粉を量り取る場合に、計量皿に約9.90g程度の粉を載置することを素早く行える。このとき、液晶表示画面60に測定重量W(t)を表示しているので、変動量算出部33は、測定重量W(t)の時間的な変化を示す第1変動量ΔW(t)を順次算出していく。
そして、第1変動量ΔW(t)が、第1変動量閾値W’以上になったか否かを判定する。つまり、使用者が、計量皿に載せた粉の重量がまだまだ10.00gに足りないと判断しているため、計量皿に大きな重量(例えば、1.00g程度)をまだ追加することになるか否かを判定する。第1変動量ΔW(t)が、第1変動量閾値W’以上になったと判定した後には、測定重量W(t)を液晶表示画面60に表示し続ける。すなわち「応答性」が速い測定重量W(t)をまだ表示し続ける。一方、第1変動量ΔW(t)が、第1変動量閾値W’以上になっていないと判定したときには、第1変動量ΔW(t+Δt)が、第1変動量閾値W’以上になったか否かを判定する。以後、同様に繰り返すことにより、最終的に第1変動量ΔW(t)が第1変動量閾値W’未満に設定時間T’(例えば、tからt+10Δtまでの間)継続して存在したかを判定する。第1変動量ΔW(t)が第1変動量閾値W’未満に設定時間T’継続して存在すると判定した後には、表示パラメータn=0+1=1とし第1平均重量W(t)を液晶表示画面60に表示する。すなわち測定重量W(t)より「安定性」が高い第1平均重量W(t)を表示する。これにより、使用者は、約9.90g程度の粉を載置したと判断したため、或る程度、計量結果を確認しながら、計量皿に小さな重量(例えば、0.10g程度)の粉を載置することを行える。このとき、液晶表示画面60に第1平均重量W(t)を表示しているので、変動量算出部33は、第1平均重量W(t)の時間的な変化を示す第2変動量ΔW(t)を順次算出していく。
【0025】
そして、第2変動量ΔW(t)が、第2変動量閾値W’以上になったか否かを判定する。つまり、使用者が、計量皿に載せた粉の重量がほぼ10.00gになったと判断したため、計量皿に非常に小さな重量(例えば、0.01g程度)の粉を載置しながら、計量結果を確認するか否かを判定する。第2変動量ΔW(t)が、第2変動量閾値W’以上になったと判定した後には、表示パラメータn=1―1=0とし測定重量W(t)を液晶表示画面60に表示する。すなわち「応答性」が非常に速い測定重量W(t)を表示する。これにより、使用者は、再び、計量皿に粉を載置することを素早く行えるようになる。
一方、第2変動量ΔW(t)が、第2変動量閾値W’以上になっていないと判定したときには、第2変動量ΔW(t+Δt)が、第2変動量閾値W’以上になったか否かを判定する。以後、同様に繰り返すことにより、最終的に第2変動量ΔW(t)が第2変動量閾値W’未満に設定時間T’継続して存在したかを判定する。第2変動量ΔW(t)が第2変動量閾値W’未満に設定時間T’継続して存在すると判定した後には、表示パラメータn=1+1=2とし第2平均重量W(t)を液晶表示画面60に表示する。すなわち第1平均重量W(t)より「安定性」が高い第2平均重量W(t)を表示する。これにより、使用者は、計量皿に載せた粉の重量がほとんど10.00gになったと判断したため、計量皿に非常に小さな重量(例えば、0.01g程度)の粉を載置しながら、計量結果を確認することを行える。このとき、液晶表示画面60に第2平均重量W(t)を表示しているので、変動量算出部33は、第2平均重量W(t)の時間的な変化を示す第3変動量ΔW(t)を順次算出していく。
【0026】
そして、変動量算出部33で算出された第3変動量ΔW(t)が、第3変動量閾値W’以上になったか否かを判定する。つまり、使用者が、計量皿に載せた粉の重量が10.00gになったと判断したため、計量皿にもう追加しないか否かを判定する。第3変動量ΔW(t)が、第3変動量閾値W’以上になったと判定した後には、表示パラメータn=2―1=1とし第1平均重量W(t)を液晶表示画面60に表示する。すなわち第2平均重量W(t)より「応答性」がやや速い第1平均重量W(t)を表示する。これにより、使用者は、再び、計量皿に粉を載置したり取り除いたりすることを素早く行えるようになる。
一方、第3変動量ΔW(t)が、第3変動量閾値W’以上になっていないと判定したときには、第3変動量ΔW(t+Δt)が、第3変動量閾値W’以上になったか否かを判定する。以後、同様に実行することにより、最終的に第3変動量ΔW(t)が第3変動量閾値W’未満に設定時間T’継続して存在したかを判定する。第3変動量ΔW(t)が第3変動量閾値W’未満に設定時間T’継続して存在すると判定した後には、表示パラメータn=2+1=3とし第3平均重量W(t)を液晶表示画面60に表示する。すなわち第2平均重量W(t)より「安定性」が高い第3平均重量W(t)を表示する。これにより、使用者は、計量皿に載せた粉の重量が10.00gになったか否かを判断する。
【0027】
なお、液晶表示画面60に第3平均重量W(t)を表示した後には、変動量算出部33は、第3平均重量W(t)の時間的な変化を示す第4変動量ΔW(t)を順次算出していく。そして、変動量算出部33で算出された第4変動量ΔW(t)が、第4変動量閾値W’以上になったか否かを判定する。第4変動量ΔW(t)が、第4変動量閾値W’以上になったと判定した後には、表示パラメータn=3―1=2とし第2平均重量W(t)を液晶表示画面60に表示する。これにより、使用者は、再び、計量皿に粉を載置したり取り除いたりすることを素早く行えるようになる。
一方、第4変動量ΔW(t)が、第4変動量閾値W’以上になっていないと判定したときには、第3平均重量W(t)を液晶表示画面60に表示し続ける。
【0028】
次に、電子天秤1による計量方法について説明する。図3は、電子天秤1による計量方法を示すフローチャートである。
まず、ステップS101の処理において、平滑化処理記憶領域43は、第n変動量閾値W’と第n設定時間T’と第n設定サンプリング数S’とがそれぞれ設定された3種類の平滑化処理の内容と、第4変動量閾値W’とを予め記憶する。
記憶される3種類の平滑化処理の内容においては、第1平滑化処理の内容(n=1)として、第1変動量閾値W1 ’と第1設定時間T1’と第1設定サンプリング数S’とが設定され、第2平滑化処理の内容(n=2)として、第2変動量閾値W’と第2設定時間T’と第2設定サンプリング数S’とが設定され、第3平滑化処理の内容(n=3)として、第3変動量閾値W’と第3設定時間T’と第3設定サンプリング数S’とが設定される。
【0029】
次に、ステップS102の処理において、表示制御部34は、表示パラメータn=0とするとともに、時間パラメータt’=0とする。つまり、初期設定となる。
次に、ステップS103の処理において、表示制御部34は、液晶表示画面60に第n平均重量W(t)を表示する。
次に、ステップS104の処理において、変動量算出部33は、第n平均重量W(t)の時間的な変化を示す第(n+1)変動量ΔWn+1(t)を算出する。
【0030】
次に、ステップS105の処理において、表示制御部34は、第(n+1)変動量ΔWn+1(t)が、第(n+1)変動量閾値Wn+1’以上になったか否かを判定する。第(n+1)変動量閾値Wn+1’以上になったと判定したときには、ステップS106の処理において、表示制御部34は、n=0であるか否かを判定する。つまり、現在、測定重量W(t)を表示しているか否かを判定する。n=0であると判定したときには、ステップS102の処理に戻り、測定重量W(t)を表示し続けることになる。
一方、n=0でないと判定したときには、ステップS107の処理において、n=n−1とし、t’=0とした後、ステップS103の処理に戻る。つまり、現在、表示している第n平均重量W(t)より「応答性」がやや速く、「安定性」がやや低い第(n−1)平均重量Wn―1(t)を表示することになる。
【0031】
一方、ステップS105の処理において、第(n+1)変動量閾値Wn+1’以上になっていないと判定したときには、ステップS108の処理において、t’=t’+Δt’とする。
次に、ステップS109の処理において、表示制御部34は、t’≧t’+10Δt’であるか否かを判定する。t’≧t’+10Δt’でないと判定したときには、ステップS103の処理に戻る。つまり、第(n+1)変動量ΔWn+1(t)が第(n+1)変動量閾値Wn+1’未満に設定時間T’継続してまだ存在していないので、ステップS103の処理に戻り、第n平均重量W(t)を表示し続けることになる。
一方、t’≧t’+10Δt’であると判定したときには、ステップS110の処理において、n=3であるか否かを判定する。つまり、現在、第3平均重量W(t)を表示しているか否かを判定する。n=3であると判定したときには、ステップS103の処理に戻り、第3平均重量W(t)を表示し続けることになる。
【0032】
一方、n=3でないと判定したときには、ステップS111の処理において、n=n+1とし、t’=0とした後、ステップS103の処理に戻る。つまり、現在、表示している第n平均重量W(t)より「応答性」がやや遅く、「安定性」がやや高い第(n+1)平均重量Wn+1(t)を表示することになる。
なお、電子天秤1がOFFにされた場合には、本フローチャートを終了させることになる。
【0033】
以上のように、本発明の電子天秤1によれば、適切な表示条件を自動的に選択して計量結果を表示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、表示条件を選択して計量結果を表示することができる電子天秤に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る電子天秤の構成を示すブロック図である。
【図2】液晶表示画面に表示される計量結果について説明するための図である。
【図3】電子天秤による計量方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1 電子天秤
31 測定重量記憶制御部
32 平均重量算出部
33 変動量算出部
34 表示制御部
40 メモリ(記憶部)
60 液晶表示画面(表示部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計量物の重量を次々と検出することにより、検出した測定重量W(t)を記憶部に順次記憶させる測定重量記憶制御部と、
第N変動量閾値W’と、第N設定時間T’と、測定重量W(t)を平均するための第N設定サンプリング数S’とが設定された第N平滑化処理を、Nを変数として複数種類(N=1、・・、n)予め記憶する記憶部と、
第n平滑化処理を実行するように設定されたときには、第n設定サンプリング数S’の測定重量W(t)を平均して第n平均重量W(t)を算出する平均重量算出部と、
第n平滑化処理を実行するように設定したときには、表示部に第n平均重量W(t)を表示する表示制御部と、
第n平均重量W(t)を表示部に表示している際に、第n平均重量W(t)の時間的な変化を示す第(n+1)変動量ΔWn+1(t)を順次算出する変動量算出部とを備える電子天秤であって、
前記記憶部は、第(n+1)設定サンプリング数Sn+1’は、第n設定サンプリング数S’より大きくなり、かつ、第(n+1)変動量閾値Wn+1’は、第n変動量閾値W’より小さくなるように記憶し、
前記表示制御部は、第n平滑化処理を実行するように設定した後に、第(n+1)変動量ΔWn+1(t)が、第(n+1)設定時間Tn+1’継続して第(n+1)変動量閾値Wn+1’未満になったときには、第(n+1)平滑化処理を実行するように設定して第(n+1)平均重量Wn+1(t)を表示部に表示し、
第(n+1)変動量ΔWn+1(t)が、第(n+1)変動量閾値Wn+1’以上になったときには、第(n−1)平滑化処理を実行するように設定して第(n−1)平均重量Wn−1(t)を表示部に表示することを特徴とする電子天秤。
【請求項2】
前記平均重量算出部は、第n設定サンプリング数S’の測定重量W(t)の移動平均である第n平均重量W(t)を順次算出することを特徴とする請求項1に記載の電子天秤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−257867(P2009−257867A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105557(P2008−105557)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)