説明

電子天秤

【課題】 N種類の物品の内から個数Sを算出しようとしている物品の種類nを容易に認識させることができる電子天秤を提供する。
【解決手段】 N種類の物品における各単重値Uを予め記憶する単重値記憶部41と、多数個の第nの物品の重量を計量して計量値Wを得る荷重検出部10と、第nの物品の単重値Uと計量値Wとに基づいて、第nの物品の個数Sを算出する個数演算部32とを備える電子天秤1であって、設定個数Sの第nの物品における計量値Wと、設定個数Sとを、N種類の物品についてそれぞれ予め記憶する設定個数計量値記憶部42と、未知個数の第nの物品が載置される前に、設定個数Sの第nの物品が載置されることにより、荷重検出部10から計量値Wを得て、N種類の物品の各計量値Wと計量値Wとの差に基づいて、N種類の物品の内から物品の種類nを特定する物品種類特定部31とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子天秤に関し、さらに詳細にはネジやボルト等の細かい物品の個数Sを算出することができる電子天秤に関する。
【背景技術】
【0002】
ネジ等の細かい物品の個数Sをヒトが逐一数えることは手間であり、計数誤りが発生することもあるため、載置されたネジ等の個数Sを算出することができる電子秤(電子天秤)がある(例えば、特許文献1参照)。
このような電子天秤では、例えば、ネジの単重値Uを予め記憶するメモリ(単重値記憶部)と、使用者によって多数個のネジが載置されることにより、多数個のネジの重量を計量して計量値Wを得る計量部(荷重検出部)と、ネジの単重値Uで計量値Wを除すことにより、載置されたネジの個数Sを算出する計量計数部(個数演算部)と、計量結果として「ネジの個数S」を表示する表示部とを備える。
このような電子天秤を用いて、使用者は未知個数のネジを次々と載置することで、表示部に表示された「ネジの個数S」を観察しながら、例えば、目標個数(以下、「登録個数」ともいう)である100個(PC)のネジを正確に採取している。
【0003】
ところで、生産工場では多種類のネジ(第1のネジ、第2のネジ、・・・)や多種類のボルト(第3のボルト、第4のボルト、・・・)等を取り扱っているため、例えば、100個の第1のネジを採取し、続けて50個の第2のネジを採取することがある。
そこで、N種類の物品(第1のネジ(物品番号n=1)、第2のネジ(物品番号n=2)、第3のボルト(物品番号n=3)、第4のボルト(物品番号n=4)、・・・)の個数Sを算出することができる電子天秤がある。
このような電子天秤では、N種類の物品における各単重値U(U、U、U、U、・・・、U)を予め記憶するメモリと、使用者がN種類の物品の内からこれから計量皿に載置しようとしている物品の種類nを入力するための操作キー(入力装置)と、使用者によって多数個の第nの物品が計量皿に載置されることにより、多数個の第nの物品の重量を計量して計量値Wを得る荷重検出部と、メモリに記憶されたN種類の物品の単重値Uの内から操作キーで特定された第nの物品の単重値Uで計量値Wを除すことにより、計量皿に載置された第nの物品の個数Sを算出する個数演算部と、計量結果として「第nの物品の個数S」を表示するディスプレイ(表示部)とを備える。
このような電子天秤を用いて、使用者は、例えば、100個の第1のネジを採取する前に、操作キーによってこれから載置しようとしている物品の種類nを「第1のネジ(物品番号n=1)」と入力してから、未知個数の第1のネジを次々と載置することで、ディスプレイに表示された「第1のネジの個数S」を観察しながら、100個の第1のネジを採取して、その後、使用者は、50個の第2のネジを採取する前に、操作キーによってこれから載置しようとしている物品の種類nを「第2のネジ(物品番号n=2)」と入力してから、未知個数の第2のネジを次々と載置することで、ディスプレイに表示された「第2のネジの個数S」を観察しながら、50個の第2のネジを採取している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−12999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来の電子天秤では、使用者は、目標個数の第nの物品を採取する前に、これから載置しようとしている物品の種類nを電子天秤自体に認識させるため、操作キーによって「物品の種類n」を入力する必要があり、非常に手間であった。特にNが大きくなるN種類の物品における各単重値U(U、U、U、U、・・・、U)をメモリに記憶させている場合には、ディスプレイに表示させた「N種類の物品の一覧」等から載置しようとしている物品の種類nを特定するには手間も時間もかかった。
また、生産工場では使用者は、素早く作業を進めたいため、100個の第1のネジを採取したり、50個の第2のネジを採取したりする間に、操作キー等をいちいち操作することは煩わしかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件発明者らは、上記課題を解決するために、これから載置しようとしている物品の種類nを電子天秤自体に認識させる方法について検討を行った。使用者は未知個数の第nの物品を次々と載置することで、表示部に表示された「第nの物品の個数S」を観察しながら、最終的に目標個数の第nの物品を採取しているが、まず1回目の載置時に未知個数の第nの物品を載置するのではなく、設定個数Sの第nの物品を載置することで、操作キー等によって「物品の種類n」を入力する代わりに、物品の種類nを電子天秤自体に認識させる方法を見出した。そして、電子天秤がN種類の物品の内から1種類の物品を特定した後は、使用者は、未知個数の第nの物品を次々と載置することで、表示部に表示された「第nの物品の個数S」を観察しながら、最終的に目標個数の第nの物品を採取すればよいことを見出した。
【0007】
すなわち、本発明の電子天秤は、N種類の物品における各単重値U(n=1、2、・・・、N)を予め記憶する単重値記憶部と、N種類の物品の内から選択された1種類の物品である第nの物品が多数個、載置されることにより、多数個の第nの物品の重量を計量して計量値Wを得る荷重検出部と、前記単重値記憶部に記憶されたN種類の物品の単重値Uの内から選択された第nの物品の単重値Uと、得られた計量値Wとに基づいて、前記荷重検出部に載置されている第nの物品の個数Sを算出する個数演算部とを備える電子天秤であって、設定個数Sの第nの物品における計量値Wと、設定個数Sとを、N種類の物品についてそれぞれ予め記憶する設定個数計量値記憶部と、未知個数の第nの物品が載置される前に、設定個数Sの第nの物品が載置されることにより、前記荷重検出部から計量値Wを得て、前記設定個数計量値記憶部に記憶されたN種類の物品の各計量値Wと計量値Wとの差に基づいて、N種類の物品の内から物品の種類nを特定する物品種類特定部とを備え、前記物品種類特定部で物品の種類nが特定された後、未知個数の第nの物品が載置されることにより、前記個数演算部は、前記荷重検出部から新たな計量値Wを得て、第nの物品の単重値Uに基づいて、第nの物品の個数Sを算出するようにしている。
【0008】
ここで、「設定個数S」とは、未知個数の第nの物品を載置する前に、荷重検出部に載置する第nの物品の個数のことをいい、各物品の種類nについて予め定められている数値のことである。なお、設定個数Sは、S=S=S=・・・のように物品の種類nにかかわらず同数であってもよく、S≠S≠S≠・・・のように物品の種類nによって異なる数であってもよく、S=S≠S≠・・・のように物品の種類nによって同じ数と異なる数とが混ざっていてもよい。
本発明の電子天秤によれば、単重値記憶部は、N種類の物品における各単重値Uを予め記憶するとともに、設定個数計量値記憶部は、設定個数Sの第nの物品における計量値Wと、設定個数Sとを、N種類の物品についてそれぞれ予め記憶する。
そして、使用者は、まず、これから載置しようとしている物品の種類nを電子天秤自体に認識させるため、入力装置等によって「物品の種類n」を入力する代わりに、設定個数Sの第nの物品を載置する。その結果、物品種類特定部は、使用者によって設定個数Sの第nの物品が載置されることにより、荷重検出部から計量値Wを得る。そして、物品種類特定部は、設定個数計量値記憶部に記憶されたN種類の物品の各計量値Wと計量値Wとの差に基づいて、N種類の物品の内から物品の種類nを特定する。例えば、計量値Wと計量値Wとの差の絶対値|W−W|が最も小さくなったときの計量値Wを見つけ出し、さらに見つけ出した計量値Wに対応する第nの物品を物品の種類nと特定する。つまり、使用者は入力装置によってN種類の物品の一覧から1種類の物品を特定する必要がない。
このように電子天秤がN種類の物品の内から1種類の物品を特定した後、使用者は、未知個数の第nの物品を載置していくことになる。その結果、個数演算部は、使用者によって未知個数の物品が載置されることにより、荷重検出部から新たな計量値Wを得る。そして、個数演算部は、物品種類特定部で選択された第nの物品の単重値Uに基づいて、計量結果として「第nの物品の個数S」を算出する。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、使用者は、設定個数Sの第nの物品を載置することにより、N種類の物品の内から個数Sを算出しようとしている物品の種類nを電子天秤に認識させることができるので、目標個数の第nの物品を採取する前に、入力装置等をいちいち操作することを省くことができる。
【0010】
(他の課題を解決するための手段および効果)
また、上記の発明において、前記物品種類特定部は、前記設定個数計量値記憶部に記憶されたN種類の物品の各計量値Wと計量値Wとの差の絶対値|W−W|を算出して、絶対値|W−W|が小さくなった順番に物品の種類nを表示部に表示して、その後、物品の種類nを特定することを示す入力信号を入力装置から得ることにより、物品の種類nを特定するようにしてもよい。
本発明の電子天秤によれば、使用者は設定個数Sの第nの物品を載置する。その結果、物品種類特定部は、使用者によって設定個数Sの第nの物品が載置されることにより、荷重検出部から計量値Wを得る。そして、物品種類特定部は、設定個数計量値記憶部に記憶されたN種類の物品の各計量値Wと計量値Wとの差の絶対値|W−W|を算出して、絶対値|W−W|が小さくなった順番に物品の種類nを表示部に表示する。
次に、使用者は入力装置を用いて、表示された物品の種類nから物品の種類nを特定する。その結果、物品種類特定部は、物品の種類nを特定することを示す入力信号を入力装置から得ることにより、物品の種類nを特定する。つまり、使用者は、該当しそうな物品の種類nから順番に表示されるN種類の物品の一覧から物品の種類nを特定することになり、手間と時間とを軽減することができる。
【0011】
そして、上記の発明において、前記物品種類特定部は、前記設定個数計量値記憶部に記憶されたN種類の物品の各計量値Wと計量値Wとの差の絶対値|W−W|を算出して、絶対値|W−W|が設定閾値Wthより小さくなった計量値Wに対応するN’ (N’<N)種類の物品の一覧を表示部に表示して、その後、物品の種類nを特定することを示す入力信号を入力装置から得ることにより、物品の種類nを特定するようにしてもよい。
本発明の電子天秤によれば、使用者は設定個数Sの第nの物品を載置する。その結果、物品種類特定部は、使用者によって設定個数Sの第nの物品が載置されることにより、荷重検出部から計量値Wを得る。そして、物品種類特定部は、設定個数計量値記憶部に記憶されたN種類の物品の各計量値Wと計量値Wとの差の絶対値|W−W|を算出して、絶対値|W−W|が設定閾値Wthより小さくなった「N’ (N’<N)種類の物品の一覧」を表示部に表示する。
次に、使用者は入力装置を用いて、「N’種類の物品の一覧」から物品の種類nを特定する。その結果、物品種類特定部は、物品の種類nを特定することを示す入力信号を入力装置から得ることにより、物品の種類nを特定する。つまり、使用者は、ある程度しぼられたN’種類の物品の一覧から物品の種類nを特定することになり、手間と時間とを軽減することができる。
【0012】
さらに、上記の発明において、第nの物品の個数Sを算出する前の初期設定として、第nの物品が載置される設定個数Sを示す入力信号を入力装置から得て、さらに設定個数Sの第nの物品が載置されることにより、前記荷重検出部から計量値Wを得た結果、計量値Wを設定個数Sの第nの物品における計量値Wとし、計量値Wと設定個数Sとを設定個数計量値記憶部に記憶させるとともに、計量値Wと設定個数Sとに基づいて、第nの物品の単重値Uを単重値記憶部に記憶させる物品情報登録部を備えるようにしてもよい。
本発明の電子天秤によれば、第nの物品の単重値Uを単重値記憶部に記憶させる際に、計量値Wと設定個数Sとも設定個数計量値記憶部に記憶させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る電子天秤の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】計量結果として第nの物品の個数Sが表示されたディスプレイの一例を示す図である。
【図3】電子天秤による物品情報登録方法の一例を示すフローチャートである。
【図4】電子天秤による採取方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】電子天秤による採取方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれる。
【0015】
図1は、本発明に係る電子天秤の構成の一例を示すブロック図である。
電子天秤1は、計量皿10aを有する荷重検出部10と、信号処理器20と、マイクロコンピュータ50と、計量結果として「第nの物品の個数S」等を表示するためのディスプレイ(表示部)60と、使用者によって入力操作が行われるための操作キー(入力装置)61とを備える。
なお、使用者は本発明に係る電子天秤1を、第1の物品(n=1)である「SAMPLE_1」と、第2の物品(n=2)である「SAMPLE_2」と、第3の物品(n=3)である「SAMPLE_3」と、第4の物品(n=4)である「SAMPLE_4」と、第5の物品(n=5)である「SAMPLE_5」との合計5種類の物品(N=5)を取り扱っている生産工場で使用するものとする。
【0016】
また、図2は、計量結果として「第nの物品の個数S」が表示されたディスプレイ(表示部)の一例を示す図である。
図2は、「SAMPLE_1」を登録個数(100個)、採取するときに表示される画面である。画面の左側部分には、物品の種類nとして「SAMPLE_1」が表示され、単重値Uとして「1.234g(=U)」が表示され、登録個数として「100PC」が表示される。また、画面の右側部分には、荷重検出部10に載置されているSAMPLE_1の個数Sとして「99PC」が表示される。
これにより、使用者は、登録個数「100PC」と個数S「99PC」とを観察しながら、未知個数のSAMPLE_1を次々と計量皿10aに載置していくことで、100PCのSAMPLE_1を採取することになる。なお、図2では、あと1個のSAMPLE_1を計量皿10aに載置することで、100PCのSAMPLE_1を採取することができることになる。
【0017】
荷重検出部10は、計量皿10aに載置された物品の重量をロードセル(図示せず)によって検出し、信号処理器20にアナログ信号を所定の時間間隔Δt(例えば、数ミリ秒間隔)で順次出力する。
信号処理器20は、重量検出器10から検出されたアナログ信号を増幅する増幅器20aと、増幅後のアナログ信号をデジタル信号(計量値)Wに変換するA/D変換器20bとを備える。
【0018】
マイクロコンピュータ50は、CPU(データ処理装置)30と、メモリ(記憶部)40とから構成される。
CPU30が処理する機能をブロック化して説明すると、個数Sを算出しようとしている物品の種類nを特定する物品種類特定部31と、計量皿10aに載置されている第nの物品の個数Sを算出する個数演算部32と、初期設定として物品情報(後述する)をメモリ40に記憶させる物品情報登録部34と、「物品種類特定状態(後述する)」と「個数演算状態(後述する)」と「物品情報登録状態(後述する)」とを切り替える状態切替部33とを有する。
【0019】
ここで、本発明に係る電子天秤1では、「物品種類特定状態」と「個数演算状態」と「物品情報登録状態」との3種類の状態になるが、「物品種類特定状態」と「個数演算状態」と「物品情報登録状態」とについて説明する。
「物品種類特定状態」とは、これから計量皿10aに載置しようとしている物品の種類nを特定するための状態である。この「物品種類特定状態」で、使用者によって設定個数Sの第nの物品が計量皿10aに載置されることにより、電子天秤1は、計量皿10aに載置されている物品の種類nを特定する。つまり、使用者は操作キー61を用いてN種類の物品の一覧から1種類の物品を特定することなく、電子天秤1に物品の種類nを認識させることができる。
「個数演算状態」とは、第nの物品の個数Sを算出するための状態であり、電子天秤1が「物品種類特定状態」で物品の種類nを特定した後、使用者が未知個数の物品の種類nを計量皿10aに載置していくときに、電子天秤1がなっている状態である。
一方、「物品情報登録状態」とは、初期設定として、個数Sを算出するために必要な物品情報(例えば、本発明に係る電子天秤1では、物品の種類n、単重値U、設定個数S、計量値W)をメモリ40に記憶させるための状態であり、「物品種類特定状態」で物品の種類nを特定したり、「個数演算状態」で第nの物品の個数Sを算出したりする前の生産工場への配置時等に予め実行される状態である。よって、本発明に係る電子天秤1では、使用者は「物品情報登録状態」で、まず初めに5種類の物品についての物品情報を電子天秤1に記憶させることになる。
【0020】
メモリ40は、5種類(N=5)の物品における各単重値Uを記憶する単重値記憶領域41と、設定個数Sの第nの物品における計量値Wと設定個数Sとを記憶する設定個数計量値記憶領域42とを有する。そして、合計5種類の物品を取り扱っている生産工場で使用する電子天秤1では、メモリ40に記憶される物品情報の内容として、表1に示すように、「SAMPLE_1」として、単重値Uと設定個数S1 と設定個数SのSAMPLE_1の計量値Wとが記憶され、「SAMPLE_2」として、単重値Uと設定個数Sと設定個数SのSAMPLE_2の計量値Wとが記憶されるように、「SAMPLE_n」として、単重値Uと設定個数Sと設定個数Sの第nの物品の計量値Wとが、5種類の物品についてそれぞれ記憶される。
【0021】
【表1】

【0022】
なお、本発明に係る電子天秤1では、上述したように、使用者は「物品種類特定状態」で設定個数Sの第nの物品を計量皿10aに載置することになる。このため、使用者は、第nの物品と設定個数Sとの対応関係を認識しておかなければならない。よって、使用者は、第nの物品と設定個数Sとの対応関係を暗記しておくか、暗記していない場合には第nの物品と設定個数Sとの対応関係を示す対応表を電子天秤1の傍に置いておくことになる。
【0023】
このような本発明に係る電子天秤1では、状態切替部33が、「物品種類特定状態」と「個数演算状態」と「物品情報登録状態」とを切り替える制御を行う。
例えば、まず初期状態として「物品種類特定状態」とし、詳細は後述するが、物品種類特定部31が物品の種類nを特定したことを終了したときには、「個数演算状態」に切り替える。「個数演算状態」に切り替えた後には、未知個数の第nの物品が計量皿10aに次々と載置されるが、計量皿10aに載置された全ての第nの物品が取り除かれたときには、「物品種類特定状態」に切り替える。つまり、初期状態である「物品種類特定状態」に戻る。そして、「物品種類特定状態」で物品種類特定部31が再び物品の種類nを特定したことが終了したときには、「個数演算状態」に切り替える。このようにして、状態切替部33が「物品種類特定状態」と「個数演算状態」とを自動的に切り替えることになる。つまり、使用者が操作キー61等を用いずに、「物品種類特定状態」と「個数演算状態」とを自動的に切り替える。
一方、自動的に切り替わる「物品種類特定状態」と「個数演算状態」とは別に、物品情報を登録することを示す入力信号を操作キー61から得たときには、「物品情報登録状態」に切り替える。つまり、使用者は操作キー61等を用いて「物品情報登録状態」を呼び出す。
【0024】
物品情報登録部34は、「物品情報登録状態」に物品の種類nと、第nの物品が載置される設定個数Sとを示す入力信号を操作キー61から得て、さらに設定個数Sの第nの物品が載置されることにより、荷重検出部10から計量値Wを得た結果、計量値Wを設定個数Sの第nの物品における計量値Wとし、計量値Wと設定個数Sとを設定個数計量値記憶領域42に記憶させるとともに、計量値Wと設定個数Sとに基づいて、第nの物品の単重値Uを単重値記憶領域41に記憶させる制御を行う。
ここで、物品情報登録部34が物品情報(「SAMPLE_1」、単重値U、設定個数S1 、計量値W)をメモリ40に記憶させる物品情報登録方法の一例について説明する。図3は、電子天秤1による物品情報登録方法の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS101の処理において、使用者は操作キー61を用いて「物品情報登録状態」を呼び出す。
【0025】
次に、ステップS102の処理において、状態切替部33は、「物品情報登録状態」にする。
次に、ステップS103の処理において、使用者は操作キー61を用いて、物品の種類nとして「SAMPLE_1」と、「SAMPLE_1の設定個数Sn」とを入力する。
次に、ステップS104の処理において、使用者は設定個数Sの「SAMPLE_1」を計量皿10a上の風袋(図示せず)に載置する。このとき、風袋引きは予め行われている。
【0026】
次に、ステップS105の処理において、物品情報登録部34は、使用者によって設定個数SのSAMPLE_1が計量皿10a上の風袋に載置されることで、荷重検出部10から計量値Wを得る。
次に、ステップS106の処理において、物品情報登録部34は、操作キー61で入力された「SAMPLE_1の設定個数S」で計量値W1 を除すことにより、「SAMPLE_1の単重値U」を算出してディスプレイ60に表示する。
次に、ステップS107の処理において、物品情報登録部34は、SAMPLE_1の単重値Uで計量値W1を除すことにより、計量皿10aに載置されているSAMPLE_1の個数S」を算出してディスプレイ60に表示する。このとき、ディスプレイ60には「設定個数S」が表示される。
【0027】
次に、ステップS108の処理において、物品情報登録部34は、設定個数SのSAMPLE_1における計量値Wと、設定個数S1 とを設定個数計量値記憶領域42に記憶させるとともに、SAMPLE_1の単重値Uを単重値記憶領域41に記憶させる(表1参照)。
そして、ステップS108の処理が終了したときには、本フローチャートを終了させることになる。なお、ここでは、物品情報登録部34が物品情報(「SAMPLE_1」、単重値U、設定個数S1 、計量値W)をメモリ40に記憶させる物品情報登録方法のみについて説明したが、他の4種類の物品についてもそれぞれ同様に、物品情報登録部34が物品情報をメモリ40に記憶させることになる。
【0028】
物品種類特定部31は、「物品種類特定状態」で設定個数Sの第nの物品が載置されることにより、荷重検出部10から計量値Wを得て、設定個数計量値記憶領域42に記憶されたN種類の物品の各計量値Wと計量値Wとの差に基づいて、N種類の物品の内から物品の種類nを選択して、1種類の物品を選択することができた場合には「物品の種類nを特定したことが終了したこと」を示す画像をディスプレイ60に表示し、一方、1種類の物品を選択することができなかった場合には「N’種類の物品の一覧」をディスプレイ60に表示して、その後、物品の種類nを特定することを示す入力信号を操作キー61から得ることにより、物品の種類nを特定する制御を行う。
個数演算部32は、「個数算出状態」で荷重検出部10から新たな計量値Wを得て、物品種類特定部31で特定された第nの物品の単重値Uと、計量値Wとに基づいて、第nの物品の個数Sを算出して、「第nの物品の個数S」をディスプレイ60に表示する制御を行う。
【0029】
ここで、使用者が電子天秤1により100個(登録個数)の「SAMPLE_1」を採取する採取方法の一例について説明する。図4及び図5は、電子天秤1による採取方法の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS201の処理において、状態切替部33は、初期状態として「物品種類特定状態」とする。
次に、ステップS202の処理において、使用者は、設定個数SのSAMPLE_1を計量皿10a上の風袋に載置する。このとき、風袋引きは予め行われている。また、設定個数Sは、S≠S≠S≠・・・のように物品の種類nによって異なる数であることもあるので、使用者は、SAMPLE_1と設定個数Sとの対応関係を暗記しているか、暗記していない場合には第nの物品と設定個数Sとの対応関係を示す対応表を見ながら、SAMPLE_1における設定個数Sを認識することになる。
【0030】
次に、ステップS203の処理において、物品種類特定部31は、使用者によって設定個数SのSAMPLE_1が計量皿10a上の風袋に載置されることで、荷重検出部10から計量値Wを得る。
次に、ステップS204の処理において、物品種類特定部31は、メモリ40に記憶された5種類の物品の各計量値W(W、W、W、W、W)と計量値Wとの差の絶対値|W−W|を算出して、絶対値|W−W|が設定閾値Wthより小さくなった計量値Wに対応する物品の種類nを選択する。
【0031】
次に、ステップS205の処理において、物品種類特定部31は、絶対値|W−W|が設定閾値Wthよりも小さくなった計量値Wが1個であったか否かを判定する。
絶対値|W−W|が設定閾値Wthよりも小さくなった計量値Wが2個以上であったと判定したときには、ステップS206の処理において、物品種類特定部31は、「N’種類の物品の一覧」をディスプレイ60に表示する。例えば、絶対値|W−W|が設定閾値Wthよりも小さくなった計量値Wが計量値Wと計量値Wとであった場合には、N’種類の物品の一覧である「SAMPLE_1」と「SAMPLE_2」とをディスプレイ60に表示する。なお、このとき、絶対値|W−W|が小さくなった順に、物品の種類nがディスプレイ60に表示されることが好ましい。
【0032】
次に、ステップS207の処理において、使用者は操作キー61を用いて、「N’種類の物品の一覧」から1種類の物品を特定する。例えば、「SAMPLE_1」と「SAMPLE_2」との内から「SAMPLE_1」を選択する。
一方、ステップS205の処理において、絶対値|W−W|が設定閾値Wthよりも小さくなった計量値Wが1個であったと判定したとき、若しくは、ステップS207の処理が終了したときには、ステップS208の処理において、物品種類特定部31は、「物品の種類nを特定したことが終了したこと」を示す画像をディスプレイ60に表示する。
【0033】
次に、ステップS209の処理において、状態切替部33は、「物品種類特定状態」から「個数算出状態」へと切り替える。つまり、使用者が操作キー61等を用いずに、「物品種類特定状態」から「個数演算状態」へと自動的に切り替える。
次に、ステップS210の処理において、個数演算部32は、物品種類特定部31で特定されたSAMPLE_1の単重値Uで計量値Wを除すことにより、計量皿10a上の風袋に載置されている「SAMPLE_1の個数S」を算出してディスプレイ60に表示する。
次に、ステップS211の処理において、使用者は、未知個数のSAMPLE_1を計量皿10a上の風袋に載置する。このとき、設定個数SのSAMPLE_1が既に計量皿10a上の風袋に載置されているが、さらに追加するようにSAMPLE_1を載置していくことになる。
【0034】
次に、ステップS212の処理において、個数演算部32は、使用者によって未知個数のSAMPLE_1が計量皿10a上の風袋に載置されることで、荷重検出部10から計量値Wを得る。
次に、ステップS213の処理において、個数演算部32は、物品種類特定部31で特定されたSAMPLE_1の単重値Uで計量値Wを除すことにより、計量皿10a上の風袋に載置されている「SAMPLE_1の個数S」を算出してディスプレイ60に表示する。
次に、ステップS214の処理において、状態切替部33は、ステップS211の処理から計量皿10aに載置された全てのSAMPLE_1が取り除かれたか否かを判定する。全てのSAMPLE_1が取り除かれていないと判定したときには、ステップS211の処理に戻る。つまり、使用者は、未知個数のSAMPLE_1を計量皿10a上の風袋に次々と載置することになる。
【0035】
一方、全てのSAMPLE_1が取り除かれたと判定したときには、ステップS215の処理において、使用者は、さらに目標個数のSAMPLE_1を採取するか、或いは、SAMPLE_1とは異なる物品を採取するか否かを判断する。まだ採取すると判断したときには、ステップS216の処理において、状態切替部33は、「個数算出状態」から「物品種類特定状態」へと切り替えて、ステップS202の処理に戻る。つまり、使用者は、新たな目標個数のSAMPLE_1を採取したり、SAMPLE_1とは異なる物品を採取したりすることになる。このとき、使用者が操作キー61等を用いずに、「個数演算状態」から「物品種類特定状態」へと自動的に切り替えることになる。
一方、もう採取しないと判断したときには、本フローチャートを終了させることになる。
【0036】
以上のように、使用者は、設定個数Sの第nの物品を載置することにより、N種類の物品の内から個数Sを算出しようとしている物品の種類nを電子天秤1に認識させることができるので、目標個数の第nの物品を採取する前に、操作キー61をいちいち操作することを省くことができる。また、操作キー61を操作することになった場合にも、ある程度しぼられたN’種類の物品の一覧から物品の種類nを特定することになり、手間と時間とを軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、ネジやボルト等の細かい物品の個数Sを算出することができる電子天秤に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 電子天秤
10 荷重検出部
31 物品種類特定部
32 個数演算部
40 メモリ(記憶部)
41 単重値記憶領域
42 設定個数計量値記憶領域
60 ディスプレイ(表示部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N種類の物品における各単重値U(n=1、2、・・・、N)を予め記憶する単重値記憶部と、
N種類の物品の内から選択された1種類の物品である第nの物品が多数個、載置されることにより、多数個の第nの物品の重量を計量して計量値Wを得る荷重検出部と、
前記単重値記憶部に記憶されたN種類の物品の単重値Uの内から選択された第nの物品の単重値Uと、得られた計量値Wとに基づいて、前記荷重検出部に載置されている第nの物品の個数Sを算出する個数演算部とを備える電子天秤であって、
設定個数Sの第nの物品における計量値Wと、設定個数Sとを、N種類の物品についてそれぞれ予め記憶する設定個数計量値記憶部と、
未知個数の第nの物品が載置される前に、設定個数Sの第nの物品が載置されることにより、前記荷重検出部から計量値Wを得て、前記設定個数計量値記憶部に記憶されたN種類の物品の各計量値Wと計量値Wとの差に基づいて、N種類の物品の内から物品の種類nを特定する物品種類特定部とを備え、
前記物品種類特定部で物品の種類nが特定された後、未知個数の第nの物品が載置されることにより、前記個数演算部は、前記荷重検出部から新たな計量値Wを得て、第nの物品の単重値Uに基づいて、第nの物品の個数Sを算出することを特徴とする電子天秤。
【請求項2】
前記物品種類特定部は、前記設定個数計量値記憶部に記憶されたN種類の物品の各計量値Wと計量値Wとの差の絶対値|W−W|を算出して、絶対値|W−W|が小さくなった順番に物品の種類nを表示部に表示して、その後、物品の種類nを特定することを示す入力信号を入力装置から得ることにより、物品の種類nを特定することを特徴とする請求項1に記載の電子天秤。
【請求項3】
前記物品種類特定部は、前記設定個数計量値記憶部に記憶されたN種類の物品の各計量値Wと計量値Wとの差の絶対値|W−W|を算出して、絶対値|W−W|が設定閾値Wthより小さくなった計量値Wに対応するN’ (N’<N)種類の物品の一覧を表示部に表示して、その後、物品の種類nを特定することを示す入力信号を入力装置から得ることにより、物品の種類nを特定することを特徴とする請求項1に記載の電子天秤。
【請求項4】
第nの物品の個数Sを算出する前の初期設定として、第nの物品が載置される設定個数Sを示す入力信号を入力装置から得て、さらに設定個数Sの第nの物品が載置されることにより、前記荷重検出部から計量値Wを得た結果、計量値Wを設定個数Sの第nの物品における計量値Wとし、計量値Wと設定個数Sとを設定個数計量値記憶部に記憶させるとともに、計量値Wと設定個数Sとに基づいて、第nの物品の単重値Uを単重値記憶部に記憶させる物品情報登録部を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電子天秤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−249606(P2010−249606A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98177(P2009−98177)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)