説明

電子平衡式はかり及び重量選別装置

【課題】設置環境の振動によって被計量物の質量計測に発生する誤差を低減できる電子平衡式はかりを提供する。
【解決手段】電子平衡式はかり1は、支点2で支持されるレバー3の載置部5に被計量物を載置し、他端部6には電磁コイルで電磁力を加えるようにし、載置部に被計量物を載置した状態でレバーの平衡状態が崩れないように電磁コイルに電流を与え、この電流値から被計量物の質量を測定する。載置部側の質量に対応するように、支点よりも他端部側に錘7を載置すれば、レバー3の平衡状態が保たれ、設置面からの振動が測定や校正に影響を与えにくくなり、測定精度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計量物の重量が加えられたレバーの平衡状態を電磁コイルの電磁力によって維持し、該電磁コイルに与えた電流値に基づいて被計量物の重量を測定する電子平衡式はかりと、このような電子平衡式はかりを秤量手段として利用した重量選別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には電子平衡式はかりに関する発明が開示されている。この電子平衡式はかりは、揺動可能なレバーの一端部に被計量物の載置部を設け、また他端部には電磁コイルによって電磁力を加えられるようにし、載置部に被計量物を載置した状態でレバーの平衡状態が崩れないように電磁コイルに電流を与え、この電流値から被計量物の質量を測定するように構成されている。
【0003】
このような電子平衡式はかりでは、被計量物の重量と平衡させる力が重力(重量)ではなく、電磁コイルによる電磁力であるため、被計量物の重量が加わる負荷側質量であるレバーの載置部に設置面から振動が伝わると、測定に誤差が発生して正確・精密な測定が阻害されてしまう。そこで、特許文献1に記載の電子平衡式はかりでは、載置部に相当する質量の錘をレバーの他端部側に設け、電磁コイルへの通電を切ってもレバーの平衡が保たれるように構成し、レバーの両側に作用する慣性力が互いにキャンセルされるように構成していた。
【特許文献1】特開2002−296101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の電子平衡式はかりによれば、上述したように被計量物の質量に平衡させるための力が質量に働く重力ではなく、電磁コイルによる電磁力であるため、秤量機構に被検査物が載置されたとき、載置部を含むレバー自体に作用する慣性力は相殺できるが、載置部に載置された被計量物の質量に作用する慣性力については相殺することができず、測定に誤差が発生して被計量物の重量を正確・精密に測定することができないという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、上記課題を解消するため、設置環境の振動によって被計量物の質量計測に発生する誤差を低減できる電子平衡式はかりを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された電子平衡式はかり1は、
被計量物wが載置される移動可能な載置部5,28と、一端部4が前記載置部5,28に連結されるとともに他端部6が自由端とされて前記一端部4と前記他端部6の間に設けられた支点2で揺動可能に支持されるレバー3と、前記支点2よりも前記載置部5,28の側にある質量によって変位した前記レバー3の前記他端部6に電磁力を与えて前記レバー3の平衡状態を維持する電磁コイルと、前記レバー3の前記他端部6の変位を検出するセンサと、前記センサの検出結果を受けて前記レバー3の平衡状態が保持されるように前記電磁コイルに与える電流値を制御するとともに前記電磁コイルに与えた電流値に基づいて被計量物Wの重量を算出する制御手段とを備えた電子平衡式はかり1において、
前記載置部5,28に載置される被計量物Wの予想される想定質量に対応して前記レバー3の平衡状態を保つ錘7が、前記支点2に関して前記レバー3の前記他端部6側に設定されることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載された電子平衡式はかり1は、請求項1記載の電子平衡式はかり1において、
前記載置部5,28に載置される異なる前記想定質量のそれぞれに対応して前記レバー3の平衡状態を保つ錘7を切替えて設定することを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載された電子平衡式はかり1aは、請求項1又は2に記載の電子平衡式はかり1において、
前記錘7の質量が一定であり、前記載置部5,28側の質量に対応するように選択された前記レバー3上の位置に前記錘7が設定されることを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載された電子平衡式はかり1cは、請求項3に記載の電子平衡式はかり1において、
前記錘7は、前記レバー3の長手方向に沿って移動可能とされ、前記載置部5,28側の質量に対応する所望の位置に設定可能であることを特徴としている。
【0010】
請求項5に記載された電子平衡式はかり1bは、請求項1又は2に記載の電子平衡式はかり1において、
質量が異なる複数種類の中から前記載置部5,28側の質量に対応して前記錘7が選択され、前記レバー3の上の所定位置に前記錘7が設定されることを特徴としている。
【0011】
請求項6に記載された電子平衡式はかり1dは、請求項1又は2に記載の電子平衡式はかり1において、
前記錘7を複数有しており、前記レバー3上の複数の異なる設定位置に各々1個の前記錘7が設定及び解除自在に設けられており、前記レバー3上に設定された前記錘7の組合せを選択できるように構成したことを特徴としている。
【0012】
請求項7に記載された重量選別装置25は、被計量物Wを搬送する搬送手段28と、前記搬送手段28によって搬送されている被計量物Wの重量を計量する秤量手段とを備えた重量選別装置25において、前記秤量手段として、測定しようとする被計量物Wの基準値に応じてレバー3上の錘7を移動させる錘移動手段34を備えた請求項1乃至6のいずれかに記載の前記電子平衡式はかり1が用いられたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された電子平衡式はかりによれば、載置部に被計量物を載置して重量の測定を行なう場合に、被計量物の予想される質量に対応してレバーの他端部側に錘が設定されることによりレバーの支点の両側の質量がバランスし、レバーの平衡状態が保たれるので、設置環境の振動によって被計量物の質量計測に発生する誤差を低減することができる。
【0014】
請求項2に記載された電子平衡式はかりによれば、請求項1記載の電子平衡式はかりにおいて、前記載置部に載置される異なる前記想定質量のそれぞれに対応して前記レバーの平衡状態を保つ錘を切替えて設定することができるので、一方の想定質量を被計量物の予想される想定質量とし、他方を0gとすることにより、載置部に被計量物が載置されないときに行なわれる装置の零点調整等の調整作業時においても設置環境の振動による誤差を低減することができ、より正確・精密な校正作業を行なうことができる。
【0015】
請求項3に記載された電子平衡式はかりによれば、質量一定の錘が設定されるレバー上の位置を、載置部側の質量に対応するように選択することにより、請求項1又は2に記載の電子平衡式はかりによる効果を得ることができる。
【0016】
請求項4に記載された電子平衡式はかりによれば、請求項3に記載の電子平衡式はかりによる効果を、レバーの長手方向に沿って移動可能な錘を載置部側の質量に対応する所望の位置に選択して設定する構成によって得ることができる。
【0017】
請求項5に記載された電子平衡式はかりによれば、質量が異なる複数種類の錘から載置部側の質量に対応する錘を選択してレバーの上の所定位置に設定することにより、請求項1又は2に記載の電子平衡式はかりによる効果を得ることができる。
【0018】
請求項6に記載された電子平衡式はかりによれば、レバー上の複数の異なる設定位置に各々1個の錘を設定及び解除自在となるように設けておき、レバーに荷重される各錘の組合せを選択できるように構成することにより、請求項1又は2に記載の電子平衡式はかりによる効果を得ることができる。
【0019】
請求項7に記載された重量選別装置によれば、搬送手段によって搬送されている被計量物の重量を測定しようとする被計量物の基準値に応じてレバー上の錘を移動させる錘移動手段を備えた請求項1乃至6のいずれかに記載の電子平衡式はかりで秤量するので、被計量物の重量選別作業において、被計量物について定められている基準値に対応してレバーの他端部側に設定する錘を自動的に移動し、予想される質量に対応してレバーの他端部側に必要な荷重を設定することができる。これによりレバーの支点の両側の質量がバランスしてレバーの平衡状態が保たれるので、設置環境の振動によって被計量物の質量計測に発生する誤差を低減することができ、高精度な重量選別作業を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。図1は第1実施形態に係る電子平衡式はかりの概要構成乃至原理を示す模式図、図2は第2実施形態に係る電子平衡式はかりの概要構成乃至原理を示す模式図、図3は第3実施形態に係る電子平衡式はかりの概要構成乃至原理を示す斜視図、図4は第4実施形態に係る電子平衡式はかりの概要構成乃至原理を示す正面図、図5は第4実施形態に係る電子平衡式はかりの概要構成乃至原理を示す斜視図、図6は実施形態の電子平衡式はかりを備える重量選別装置の外観を示す正面図、図7は同重量選別装置の構成を示すブロック図である。
【0021】
(1)第1実施形態(図1の電子平衡式はかり1a)
図1に示す電子平衡式はかり1aは、支点2で揺動可能に支持されたレバー3を備えている。レバー3の一端部4は自由端であり、ここには被計量物が載置される載置部5が設けられている。レバー3の他端部6も自由端であり、ここには図示しない電磁コイルが設けられて該他端部6に下向きの電磁力を作用させることができるようになっている。また、レバー3の他端部6には図示しないセンサが設けられており、レバー3の他端部6の変位を検出することができるようになっている。そして、電子平衡式はかり1aは図示しない制御手段を備えており、該制御手段はセンサから検出されるレバー3の変位が0となるように電磁コイルに電流を供給するように構成されており、さらにレバー3の変位を0とするために電磁コイルに供給した電流の値から載置部5に載置された被計量物の重量を算出するように構成されている。すなわち、制御手段は、この電磁コイルに適切な値の電流を通電してレバー3の他端部6に下向きの電磁力を作用させ、載置部5側の質量による重量と該電磁力とをバランスさせてレバー3の変位を0とし、その際の電流値から載置部5側の質量を計測することができる。
【0022】
また、図1に示すように、前記レバー3は、被計量物が載置される一端部4側の長さよりも、電磁コイルによる電磁力が作用する他端部6側の長さを大きく設定しており、一端部4側の載置部5に載置された被計量物の重量よりも小さい電磁力を他端部6側に加えることによってレバー3を平衡状態とし、被計量物の重量の測定が行なえるようになっている。
【0023】
また、図1に示すように、前記レバー3の一端部4側の長さよりも他端部6側の長さを大きく設定することにより、以下に説明するように、設置面から被計量物に伝わる振動をキャンセルするために、載置部5側の質量に対応して他端部6側に設定する錘7(おもり)の重量が、一端部4側の載置部5に載置された被計量物の重量よりも小さくて済むようになっている。
【0024】
図1に示すように、本実施形態では、レバー3の他端部6側には長手方向に沿って0kgから1kgまで適当な質量間隔で目盛り8が設定されており、この目盛り8に合せて一定質量の錘7をレバー3上に設定するように構成されている。この錘7は、支点2よりも載置部5の側にある質量(載置部5の質量、載置部5側のレバー3の質量及び載置部5に載置されている被計量物の質量)に対応して質量及び設置位置を設定することによりレバー3の平衡状態を保つ錘7であって、レバー3の平衡状態を保持した効果として設置面からの振動による測定誤差の発生を防止するものである。
【0025】
本実施形態では、錘7の質量は既知で一定とされており、この錘7をレバー3上の目盛り8のいずれの点に設定するかによって、支点2よりも載置部5の側にある質量に対応することができる。
例えば、載置部5に被計量物が載置されていない場合には、支点2よりも載置部5の側にある質量とは載置部5の質量及び支点2よりも載置部5側にあるレバー3の質量であるから、これに対応して所定質量の前記錘7を0kgの目盛り8(被計量物の質量が0kg、すなわち載置されていないことを意味する)に設定すれば、レバー3の支点2の両側の質量が均衡するので、レバー3の平衡状態が保持され、設置面からの振動は測定に影響しにくくなる。従って、載置部5に被計量物を載置しない場合に行なわれる装置の零点調整等の調整作業では、設置環境の振動による誤差を低減することができ、より正確・精密な校正作業を行なうことができる。
【0026】
また載置部5に被計量物が載置されている場合には、支点2よりも載置部5の側にある質量とは載置部5の質量と、支点2よりも載置部5側にあるレバー3の質量と、被計量物の質量の合計であるから、これに対応して所定質量の前記錘7を予測される被計量物の質量に近い目盛り8に設定しておけば、レバー3の支点2の両側の質量が均衡するので、レバー3の平衡状態が保持され、設置面からの振動は測定に影響しにくくなる。測定すべき被計量物の重量が全く未知ということはなく、被計量物が所定の仕様で一定の目的をもって製作された製品等であることが分かっている以上、被計量物については一定の重量(少なくとも期待される重量の範囲)が予想される。従って、例えば被計量物の質量が0.5kgと予想された場合に、錘7をこれに最も近い目盛り8である0.5kgのポイントに設定する等、予想される載置部5側の全質量に対応して錘7を設定する目盛り8を決定すれば、レバー3の支点2の両側の質量が概ね均衡するので、レバー3の平衡状態が保持され、設置面からの振動は測定に影響しにくくなる効果が得られる。従って、設置環境の振動によって被計量物の質量計測に発生する誤差を低減することができる。
【0027】
従来技術において、被計量物の質量が500g、設置面からの振動の振幅が0.02mm、該振動の周波数が5Hzの場合、下記式により、レバー3がバランスしないとレバー3の他端部6(電磁コイル側)はF=mrω2 により算出される約9.9×10-3Nの力F(重力加速度で除算すると約1gに相当)を受けるが、本実施形態によればこの力を概ね0にすることができる。
【0028】
(2)第2実施形態(図2の電子平衡式はかり1b)
図2に示す電子平衡式はかり1bは、レバー3、載置部5、図示しない電磁コイル、図示しないセンサ、図示しない制御手段の構成は図1に示した電子平衡式はかり1aと同一であり、重量測定の原理等も同一であるので、図1と対応する部分には図1と同一の符号を付して第1実施形態の説明を援用し、その説明を省略する。
【0029】
図2に示すように、本実施形態では、レバー3の他端部6側には錘7を設定するための一つの位置が設置目盛り8として定められている。そして、本実施形態では、0.1kgから1kgまでの4種類の錘7が用意されており、これらの中から、支点2よりも載置部5の側にある質量(非測定時には載置部5の質量及び載置部5側のレバー3の質量、測定時にあってはさらに加えて載置部5に載置されている被計量物の質量)に対応した質量の錘7を選択し、これを前記設置目盛り8に設定することにより、レバー3の平衡状態を保つようになっている。そして、レバー3の平衡状態を保持した効果として、図1に示す実施例と同様に、設置面からの振動による測定誤差の発生等を防止することができる。
【0030】
(3)第3実施形態(図3の電子平衡式はかり1c)
図3に構成の一部を示す電子平衡式はかり1cは、レバー3、載置部5、図示しない電磁コイル、図示しないセンサ、図示しない制御手段の構成は図1に示した電子平衡式はかり1aと同一であり、重量測定の原理等も同一であるので、図1と対応する部分には図1と同一の符号を付して第1実施形態の説明を援用し、その説明を省略する。
【0031】
本実施形態の電子平衡式はかり1cは、一定の質量の錘7をレバー3の他端部6側の異なる位置に設定することにより、レバー3の一端部4側の質量に対応するようになっている点において、前述した第1実施形態の電子平衡式はかり1aと錘7の設定手法に類似点がある。但し、第1実施形態では操作者がレバー3上の目盛り8を選択し、ここに錘7を設定するようになっていたが、本実施形態では、錘7は自動でレバー3上を移動する。その他の構成及び測定原理等は第1実施形態と同一である。
【0032】
図3に示すように、レバー3の他端部6側にはモータ9が設置されており、さらにモータ9によって回動するねじ軸10がレバー3の他端部6側に長手方向に沿って配置されている。このねじ軸10にはナット部材11が係合しており、ナット部材11には所定質量の錘7が搭載されている。モータ9を駆動してねじ軸10を回動すれば、ナット部材11に搭載された錘7を、レバー3の錘載置面3aを摺動させながらねじ軸10に沿って所望の方向に所望の距離だけ移動させることができるので、レバー3の他端部6側の所望位置に錘7を設定することができる。後述する第5実施形態でも説明するが、測定しようとする被計量物の予想される重量についてのデータを制御手段に与え、該制御手段が該データに基づいてモータ9を駆動し、レバー3の平衡を保つために必要な位置に錘7を自動的に設定するように構成することができる。
【0033】
本実施形態によれば、錘7の位置を連続的に調整・設定することができるので、有限の箇所数で設けられた目盛り8の中から選択した目盛りに錘7を置いていた第1実施形態に比べ、質量が異なるより多くの種類の被計量物に対応することができる。
【0034】
(4)第4実施形態(図4及び図5の電子平衡式はかり1d)
図4及び図5に構成の一部を示す電子平衡式はかり1dは、レバー3、載置部5、図示しない電磁コイル、図示しないセンサ、図示しない制御手段の構成は図1に示した電子平衡式はかり1aと同一であり、重量測定の原理等も同一であるので、図1と対応する部分には図1と同一の符号を付して第1実施形態の説明を援用し、その説明を省略する。
【0035】
本実施形態の電子平衡式はかり1dは、レバー3の載置部5側の質量とバランスをとるために、レバー3の他端部6側に設置するための錘7を複数有している。図4及び図5に示すように、これらの錘7は円柱形であり、レバー3上の長手方向に沿う複数の異なる設定位置に各々1個ずつ設定及び解除自在に設けられている。すなわち、レバー3の他端部6側には、長手方向に沿う複数の異なる設定位置にそれぞれ貫通孔12が形成されており、各貫通孔12にはそれぞれ錘7が設置され、各錘7は貫通孔12に嵌まり込んだ場合にレバー3に重量を負荷するようになっている。各貫通孔12は上側の開口13がテーパー状乃至拡径皿状の斜面になっており、下側に連通する小径の円形の孔14に連続している。また、各錘7の下端部15はこれに対応した逆円錐台状とされており、錘7の下端部15を貫通孔12に載置すると、錘7は下端部15が貫通孔12の開口13に嵌合することにより安定的にレバー3上に設定され、レバー3に自重が負荷されるようになっている。なお、錘7の下部及び下端部15には、後述するソレノイドによる操作を受けるために、所定の深さで係止孔16が形成されている。
【0036】
また、レバー3の他端部6を囲むように、コ字形のフレーム17が不動部分に設置されている。このフレーム17のうち、レバー3の他端部6の下方にあるフレーム17の下板部18には、各貫通孔12に対応した位置に、錘7の加除機構としてのソレノイド19が上向きに設置されている。各ソレノイド19は上下方向に直動する動作軸20を有しており、各動作軸20は、対応するレバー3の貫通孔12を挿通して対応する錘7の下端部の係止孔16に挿入されるようになっている。従って、ソレノイド19を駆動して動作軸20を下端位置に設定した時は、動作軸20は錘7の係止孔16の上底面から離れるので錘7はレバー3の貫通孔12に嵌まり込んでレバー3に自重を荷重する。またソレノイド19を駆動して動作軸20を上端位置に設定した時は、動作軸20は錘7の係止孔16の上底面に接触して錘7を押し上げるので、錘7はレバー3から離れて持ち上げられ、錘7の重量はレバー3に加わらない状態となる。すなわち錘7によるレバー3への荷重は解除される。
【0037】
また、レバー3の他端部6の上方にあるフレーム17の上板部21は、レバー3上に設置された各錘7と所定の間隔をおいて対面している。この間隔は、上述したようなソレノイド19による錘7の昇降には干渉しないが、錘7が上昇した場合には錘7の上面が近接して錘7がソレノイド19の動作軸20から外れないように設定されている。すなわち、ソレノイド19が上昇方向に駆動されて錘7が持ち上げられた状態において、錘7の下端部18は貫通孔12から完全には抜き去られておらず、かつ上板部21と錘7が接した状態にあるか、又は上板部21と錘7との間隔が、錘7の下端部が貫通孔12に挿入されている寸法よりも短くなっている。
【0038】
本実施形態によれば、ソレノイド19を所望の組合せで駆動することにより、レバー3上に荷重する錘7の組合せを様々に選択することができ、レバー3の載置部5側の質量とバランスをとることができる。なお、本実施形態では、錘7を複数備えているが、その質量は同一でもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
また、本例によれば、錘7の設定は上下動による短時間の移動で簡単に行なえるので、予想される質量に平衡する錘7を設定する場合と、載置部に被計量物Wがない状態で平衡させる場合とを容易に切り替えることができる。従って、被計量物Wを載置しない状態で行なわれる装置の零点調整等の調整作業時には設置環境の振動をキャンセルして誤差を低減し、より正確・精密な校正作業を速やかに行なうことができる。
【0039】
(5)第5実施形態(図6及び図7の重量選別装置)
図6にその外観を示し、図7にそのブロック構成を示す重量選別装置25は、被計量物Wを搬送する搬送手段と、搬送手段によって搬送されている被計量物Wの重量を計量する秤量手段とを備えており、重量の測定結果に基づいて被計量物Wを良品と不良品とに分別するものである。そして、本実施形態の重量選別装置25は、前記秤量手段として以上説明した第3実施形態の電子平衡式はかり1cを備えている。
【0040】
従って、レバー3、支点2、図示しない電磁コイル、図示しないセンサ等の基本構成は図1又は図3に示した電子平衡式はかり1a,1cと同一であり、重量測定の原理等も同一であるので、これらの図と対応する部分には原則として同一の符号を付して各実施形態の説明を適宜援用し、その説明を必要に応じて省略するものとする。
【0041】
図6に示すように、この重量選別装置25は、設置床面上に設置された基台26の上に、搬入コンベア27と、この搬入コンベア27から被計量物Wが乗り移る計測用の搬送手段である計量コンベア28とを備えている。本例では、計量コンベア28が第3実施形態の電子平衡式はかりの載置部5に相当しており、従って被計量物Wは計量コンベア28によって搬送されながら電子平衡式はかりにより重量を測定される。そして、前記基台26には、電子平衡式はかりを含めた重量選別装置25の制御手段である制御部30と、操作部31と、表示部32が設けられている。
【0042】
図7に示すように、電子平衡式はかり1eは、支点2で揺動可能に支えられたレバー3と、レバー3の他端部6に移動自在に設定される所定質量の錘7と、レバー3の他端部6の変位を検出する図示しないセンサと、レバー3の他端部6に電磁力を加えるべく該他端部6に近接して設けられた図示しない電磁コイルとを備えた荷重検出手段33を有している。さらに電子平衡式はかり1eのレバー3の一端部4には、被計量物Wの載置部5となる計量コンベア28が取り付けられており、被計量物Wを搬送しながら計量できるようになっている。そして、電子平衡式はかりの荷重検出手段33が出力した計量値は、後述する制御部30に送られる。
【0043】
この電子平衡式はかり1eは、前述したように図3に示した第3実施形態の装置と同様の基本構造を備えたはかりであって、レバー3の他端部6側に設定される前記錘7は図3に示したのと同様の機構によってレバー3の長手方向に移動可能とされており、計量コンベア28側の質量に応じた位置に設定することができる。
【0044】
図7に示すように、電子平衡式はかり1eは、錘7を移動させる錘移動手段34と、被計量物Wの質量に対応する錘7のレバー3上の位置データを記憶している錘位置記憶手段35とを有している。錘移動手段34は、制御部30から被計量物Wの基準値(当該被計量物Wの質量について期待される最も標準的な値)を与えられ、この基準値に対応する錘7のレバー3上の位置データを錘位置記憶手段35から取り出し、この位置データに基づいてモータを駆動して錘7をレバー3上の適切な位置に設定する。これによって、被計量物Wの質量計測時には設置環境の振動をキャンセルして被計量物Wの質量計測に発生する誤差を低減することができる。
【0045】
図7に示すように、操作部31は入力手段36を有しており、使用者は入力手段36を操作することにより、質量を計量しようとする被計量物Wの品種や、その被計量物Wについての質量の基準値・上限値・下限値を指定して入力することができる。操作部31は、入力手段36によって被計量物Wの品種が指定された場合に、当該指定に基づいて品種を設定する品種設定手段37を有している。また操作部31は基準値設定手段38を有している。この基準値設定手段38は、入力手段36からの基準値について直接の指定があった場合には、当該指定に基づいて被計量物Wの基準値等を設定する。また、この基準値設定手段38は、入力手段36によって被計量物Wの品種が指定された場合には、指定された品種に対応して品種設定手段37から出力されてくる品種情報を受け、品種情報に対応する基準値を基準値記憶手段39から読み出して設定することもできる。基準値設定手段38によって設定された基準値等は後述する制御部30に出力される。
【0046】
図7に示すように、制御部30は、操作部31の基準値設定手段38から送られた基準値を前記電子平衡式はかり1eの錘移動手段34に与え、測定しようとしている被計量物Wの基準値に応じてレバー3上の錘7の位置を自動的に設定させるように構成されている。また、制御部30は、重量選別装置25として被計量物Wの測定結果についての合否を行なう判定手段40を備えている。判定手段40には、操作部31の基準値設定手段38から基準値・上限値・下限値が入力されるとともに、電子平衡式はかり1eの荷重検出手段33から計量値が入力され、両者が比較されて計量値の判定が行なわれる。判定は、合格(OK)、上限値を上回った不合格(+NG)、下限値を下回った不合格(−NG)の3つのいずれかである。
【0047】
図7に示すように、表示部32は、操作部31で入力手段36によって入力されたデータや、操作部31の入力手段36における入力を受けて品種設定手段37が設定したデータ等を表示データとして表示する。また、表示部32は、操作部31の基準値設定手段38が設定した基準値・上限値・下限値を制御部30を介して受け取り、表示する。さらに、表示部32は、電子平衡式はかり1eの荷重検出手段33が出力した計量値を制御部30を介して受け取り、表示するとともに、制御部30の判定手段40の判定結果を受けてOK表示・+NG表示・−NG表示を表示する。
【0048】
以上の構成において、被計量物Wの重量選別作業を行なう場合には、使用者は、まず操作部31の入力手段36から被計量物Wの品種又は基準値等を入力する。使用者によって指定された被計量物Wの品種に基づき、品種設定手段37は指定された品種を設定し、これに対応する基準値等を基準値記憶手段39から読み出して基準値設定手段38に設定させる。又は使用者が指定した基準値等の情報に基づき、基準値設定手段38が基準値等を設定する。設定された基準値は電子平衡式はかり1eに送られて錘移動手段34に与えられ、錘移動手段34は与えられた基準値に対応する錘7の位置情報を錘位置記憶手段35から読み出し、この錘7の位置情報によってモータ等を駆動することにより錘7を必要な位置に設定する。
【0049】
ここで、駆動されている搬入コンベア27に被計量物Wを投入し、被計量物Wが一個ずつ計量コンベア28に乗り移って搬送されるようにする。被計量物Wは、一個が計量コンベア28に載せられている状態で電子平衡式はかり1eの荷重検出手段33によって計量され、その計量値は制御部30の判定手段40に送られ、基準値・上限値・下限値と比較される。比較の結果は判定結果として出力され、表示部32においてOK表示(基準内で合格)、+NG表示(上限値を越えて不合格)、−NG表示(下限値を越えて不合格)のいずれかが表示される。なお、表示部32には、各種表示データの他、計測での判定に用いられた基準値・上限値・下限値や、計量値自体も表示される。
【0050】
図示はしないが、この重量選別装置25に隣接して物品選別装置を設け、この物品選別装置を重量選別装置25の判定結果に連動するように構成し、重量選別装置25で合格とされた被計量物Wはそのまま物品選別装置を素通りして次工程に搬送されるようにし、NG品は重量選別装置25からのNG信号を受けた物品選別装置によって搬送経路外に排除され、製造工程から自動的に除外されるようにすることもできる。
【0051】
なお、重量選別装置25において測定に供される被計量物Wの重量が全く未知ということはありえず、その重量が所定の重量範囲に入るように所定の仕様で製造された製品である以上、被計量物Wの種類ごとに、基準値と、上限値と、上限値が存在する。従って、本実施形態のように、被計量物Wについて定められている基準値に対応してレバー3の他端部6側に設定する錘7の位置を自動的に決定すれば、レバー3の支点2の両側の質量が概ね均衡するので、指定した被計量物Wの種類の如何に係わらずレバー3の平衡状態は常に自動的に保持され、仮に設置面から振動が伝わってもその振動は測定に影響しにくくなる効果が得られる。例えば、基準値=500g、上限値=510g、下限値=495gとした場合、上限値の510gの被計量物Wに作用する振動の影響は、(510−500)/510=2%程度にまで低減できる。従って、設置環境の振動による影響を効果的に排除できるので、まず被計量物Wを載置しないで行なう校正作業の精度が向上し、さらに計測時に設置環境に振動が生じていても被計量物Wの質量計測に発生する誤差を低減することができるので、結果として重量選別装置25における判定結果の信頼性が非常に高くなる。
【0052】
また、第5実施形態の重量選別装置25では、秤量手段として図3に示した第3実施形態の電子平衡式はかり1cが採用されるものとして説明したが、図4及び図5に示した第4実施形態の電子平衡式はかりを採用した場合にも錘の自動設定を実現することができる。また、第1及び第2実施形態の電子平衡式はかりは、錘の設定は手動となるが、重量選別装置25の秤量手段として採用することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は第1実施形態に係る電子平衡式はかりの概要構成乃至原理を示す模式図である。
【図2】図2は第2実施形態に係る電子平衡式はかりの概要構成乃至原理を示す模式図である。
【図3】図3は第3実施形態に係る電子平衡式はかりの概要構成乃至原理を示す斜視図である。
【図4】図4は第4実施形態に係る電子平衡式はかりの概要構成乃至原理を示す正面図である。
【図5】図5は第4実施形態に係る電子平衡式はかりの概要構成乃至原理を示す斜視図である。
【図6】図6は実施形態の電子平衡式はかりを備える重量選別装置の外観を示す正面図である。
【図7】図7は同重量選別装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
1a〜1e…電子平衡式はかり
2…支点
3…レバー
4…一端部
5…載置部
6…他端部
7…錘
8…目盛り
25…重量選別装置
28…電子平衡式はかりの載置部に相当する搬送手段としての計量コンベア
30…制御部
33…電子平衡式はかりの荷重検出手段
34…電子平衡式はかりの錘移動手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計量物(W)が載置される移動可能な載置部(5,28)と、一端部(4)が前記載置部に連結されるとともに他端部(6)が自由端とされて前記一端部と前記他端部の間に設けられた支点(2)で揺動可能に支持されるレバー(3)と、前記支点よりも前記載置部の側にある質量によって変位した前記レバーの前記他端部に電磁力を与えて前記レバーの平衡状態を維持する電磁コイルと、前記レバーの前記他端部の変位を検出するセンサと、前記センサの検出結果を受けて前記レバーの平衡状態が保持されるように前記電磁コイルに与える電流値を制御するとともに前記電磁コイルに与えた電流値に基づいて被計量物の重量を算出する制御手段とを備えた電子平衡式はかり(1)において、
前記載置部に載置される被計量物の予想される想定質量に対応して前記レバーの平衡状態を保つ錘(7)が、前記支点に関して前記レバーの前記他端部側に設定されることを特徴とする電子平衡式はかり(1)。
【請求項2】
前記載置部に載置される異なる前記想定質量のそれぞれに対応して前記レバー(3)の平衡状態を保つ錘(7)を切替えて設定することを特徴とする請求項1記載の電子平衡式はかり(1)。
【請求項3】
前記錘(7)の質量が一定であり、前記載置部(5,28)側の質量に対応するように選択された前記レバー(3)上の位置に前記錘が設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子平衡式はかり(1a)。
【請求項4】
前記錘(7)は、前記レバー(3)の長手方向に沿って移動可能とされ、前記載置部(5,28)側の質量に対応する所望の位置に設定可能であることを特徴とする請求項3に記載の電子平衡式はかり(1c)。
【請求項5】
質量が異なる複数種類の中から前記載置部(5,28)側の質量に対応して前記錘(7)が選択され、前記レバー(3)の上の所定位置に前記錘が設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子平衡式はかり(1b)。
【請求項6】
前記錘(7)を複数有しており、前記レバー(3)上の複数の異なる設定位置に各々1個の前記錘が設定及び解除自在に設けられており、前記レバー上に設定された前記錘の組合せを選択できるように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子平衡式はかり(1d)。
【請求項7】
被計量物(W)を搬送する搬送手段(28)と、前記搬送手段によって搬送されている被計量物の重量を計量する秤量手段とを備えた重量選別装置(25)において、前記秤量手段として、測定しようとする被計量物の基準値に応じてレバー(3)上の錘(7)を移動させる錘移動手段(34)を備えた請求項1乃至6のいずれかに記載の前記電子平衡式はかり(1)が用いられたことを特徴とする重量選別装置(25)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−139315(P2010−139315A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314592(P2008−314592)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)