説明

電子手帳用テンプレート、電子手帳、電子手帳用テンプレートのデータ記録媒体

【課題】カスタマイズを可能としつつ、電子手帳と同様に自在に記入、消去、編集が可能な新規な手帳をより安価に提供する。
【解決手段】特定形式の文書データからなる電子手帳用テンプレートであって、複数頁分の複数の背景画像(1〜4)を含み、特定の形式に対応する閲覧ソフトウエアを実行しているコンピューターにより表示可能とするとともに、背景画像中の頁めくりの設定領域(13,14)が指示されると、コンピューターに、次の頁、あるいは前の頁の背景画像を表示させる頁めくり機能と、背景画像中の文字入力欄19が指示されると、指示された文字入力欄の領域にのみ文字入力を可能にさせる文字入力機能と、所定の利用者入力に応動して、コンピューターに、当初の背景画像を文字入力機能によって文字が入力された状態の背景画像に変更して上書き保存させる更新機能の実行情報を付帯している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンピューターにより編集可能な電子手帳用のテンプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
手帳は、スケジュールやメモなどを筆記具で紙面に記入して管理するための機能を備えている。手帳を構成する各頁の紙面は、雑記帳のように白紙のものもあれば、大学ノートのように罫線がある紙面もある。また、スケジュール表のように、専用にデザインされた紙面もある。例えば、1ヶ月、1週間、あるいは一年分の日付欄を備えて、その各日付欄に予定を書き込む余白を設けたデザインとなっている。
【0003】
そして、電子手帳は、上述した手帳の機能を代用するための機能に、カレンダーや時計、電卓などの機能を付加した専用に設計された電子機器である。また、汎用的な電子手帳としては、パーソナルコンピューターにインストールされて、スケジュールやメモのテキストの入力を可能としたり、そのテキストを日付に関連づけして管理したりするためのソフトウエア(スケジュール管理プログラム)などがある。
【0004】
もちろん、JAVA(登録商法)アプリケーションなど、個別にインストール可能なソフトウエアの実行環境を備えた携帯電話機、あるいは携帯端末用に特化したOSを搭載したいわゆる「スマートフォン」、スマートフォンから通話機能を省略して主に音楽プレーヤーとしての機能に主眼を置いた多機能音楽プレーヤーなどもスケジュール管理プログラムの実行が可能なコンピューターの一形態として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子手帳の利点は、書き込んだテキストを簡単に削除したり編集したりすることが可能なことにある。しかし、専用のハードウエアや専用のソフトウエアが必要となり、利用者の経済的負担が大きい。一方、従来の手帳は、安価であり、例えば、バインダータイプの手帳であれば、気に入ったテンプレートを自由に補充したり、紙面の一部を破って人に手渡したりすることが簡単にできる。しかし、その反面、一度記入したテキストの消去や編集が面倒であり、鉛筆などの消しゴムで消去可能な筆記具で記入しなければ、消去ができない、という欠点がある。何度も書き直せば、紙面が汚れて見にくくなるし、見映えも悪くなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ところで、近年、紙面に人気のキャラクターや装飾図案、ロゴなどが印刷された手帳が、とくに、10〜30代の女性を中心によく使われている。この種の手帳は、事務用途の手帳とは異なる特徴的な使われ方をされている。例えば、記念日や予定の種類(誕生日、課外活動、デートなど)に応じて、利用者が好みのシールを使い分け、スケジュール表において該当する日付欄にそのシールを貼付する。記入する文字の色も内容に応じて変えたりする。それによって、スケジュールの概要をその手帳の利用者だけが一瞥しただけで識別できるようにしている。
【0007】
また、紙面や表紙などに予定やメモの内容とは無関係のシールを貼ったり、装飾を施したりして、紙面を含む手帳全体のデザインを自由にカスタマイズしていく。このように、利用者は、購入当初の画一的な手帳を、個性的で独創性に富んだ全く別の手帳に変化させていくこと自体を趣味として楽しんでいる。
【0008】
そこで、本発明者らは、キャラクターなどが印刷された手帳を自由にカスタマイズしていくような使い方が可能で、かつ、記入、消去、編集が自在な電子手帳の利点も併せ持つ、全く新規な電子的な筆記道具を提供したい、と考えた。しかし、従来の電子手帳の延長では、専用のハードウエアやソフトウエアが必要となり、この種の手帳のユーザーの、とくに低い方の年齢層のことを考えると、「安価」とは言い難いものとなる。
【0009】
その一方で、パーソナルコンピューター(PC)は、一般家庭に広く普及し、上記の10代の利用者であっても、自宅のコンピューターを自由に使える環境にある。また、ソフトウエアの実行環境を備えた携帯電話機や多機能音楽プレーヤーを所持する利用者も多い。最近では、多機能音楽プレーヤーよりもディスプレイのサイズを一回り大きくした形態のタブレット型のコンピューターも普及してきている。そして、本発明者らは、電子手帳の紙面に相当するテンプレートを、PCや種々の携帯型端末で閲覧可能な汎用的なファイルとして提供するとともに、PCや携帯型端末などを用いてそのテンプレートを自在に編集できるようにすれば、自身の手帳を自由にカスタマイズできるという利点と、従来の電子手帳のように消去や編集を自在に行えるという利点を両立できると考えた。また、そのテンプレートの編集に高価なソフトウエアを用いることなく、無料配布されていて、事実上の業界基準となっている文書閲覧用のソフトウエアによってそのテンプレートの閲覧や編集ができれば、ユーザーの経済的負担を極めて軽くすることができる、ということも考えた。もちろん、カスタマイズしたテンプレートを印刷出力すれば、その印刷物を人に渡したり、自身の現実のバインダ型の手帳に綴じたりすることも可能となり、筆記具を用いる手帳と同様の使い方も可能となる。本発明はこのような考察に基づき創作されたものである。
【0010】
そして本発明は、特定の形式で記述された文書データからなるテンプレートであって、
1冊の手帳に含まれる複数頁分の紙面のそれぞれに対応する複数の背景画像を含み、
前記特定の形式に対応する閲覧ソフトウエアを実行しているコンピューターにより表示可能とするとともに、当該コンピューターにより、頁めくり機能と、文字入力機能と、上書き保存を許可する更新機能の実行情報を付帯し、
ぞれぞれの前記背景画像には、頁送りと、頁戻しの各指示操作を受け付ける領域が個別に設定されて、前記頁めくり機能は、前記背景画像を表示しているコンピューターに対する利用者入力により、当該領域が指示されると、当該コンピューターに、次の頁に対応する背景画像、あるいは前の頁に対応する背景画像を表示させ、
前記複数の背景画像のうち、区分けされた文字入力欄が描出される画像が存在し、当該文字入力欄に対応する各領域は、テキストの直接入力が可能な領域として設定されており、前記文字入力機能は、当該画像を表示しているコンピューターに対する利用者入力により、前記文字入力欄が指示されると、当該コンピューターに、文字入力の始点となるカーソルを指示された文字入力欄に表示させるとともに、当該指示された文字入力欄の領域にのみ文字入力を可能にさせ、
前記更新機能は、前記背景画像を表示しているコンピューターに対する所定の利用者入力に応動して、当該コンピューターに、当初の前記背景画像を前記文字入力機能によって文字が入力された状態の背景画像に変更して上書き保存させる、
ことを特徴とする電子手帳用テンプレートとしている。
【0011】
また、前記背景画像を表示している前記コンピューターにて、前記閲覧ソフトウエアの作業領域が利用者入力により選択されているとともに、当該コンピューターにて実行中の複数のプログラムからのアクセスが可能な共有のメモリー領域にシール画像のデータが格納されている場合、所定の利用者入力に応動して、前記コンピューターに、当該シール画像を表示中の前記背景画像の任意の位置に複写させる画像貼付機能の実行情報が付帯し、
前記更新機能は、前記背景画像を表示しているコンピューターに対する所定の利用者入力に応動して、当該コンピューターに、当初の前記背景画像を前記画像貼付機能によって画像が複写された状態の背景画像に更新して上書き保存させる、
ことを特徴とする電子手帳用テンプレートとすることもできる。
【0012】
上記いずれかの電子手帳用テンプレートは、マルチメディア再生機能の実行情報を付帯し、前記複数の背景画像のうち、マルチメディアデータが埋め込まれたマルチメディア付帯背景画像が存在し、前記マルチメディア再生機能は、前記頁めくり機能により、マルチメディア付帯背景画像を前記コンピューターに表示させた際、当該マルチメディア付帯背景画像に埋め込まれた前記マルチメディアデータを当該コンピューターに再生させることを特徴としてもよい。
【0013】
そして、前記マルチメディア付帯背景画像には、マルチメディアデータとして当該背景画像上を移動するオブジェクトを表現するアニメーション画像が埋め込まれているとともに、前記オブジェクトの移動領域が設定されていることを特徴とする電子手帳用テンプレートとすることもできる。
【0014】
本発明は、上記いずれかに記載の電子手帳用テンプレートの表示や当該テンプレートに対する利用者入力を受け付ける専用のハードウエアからなる電子手帳と、上記いずれかに記載の電子手帳用テンプレートが記憶されているデータ記憶媒体にも及んでいる。そして、電子手帳に係る発明は、前記電子手帳用テンプレートの前記閲覧ソフトウエアがあらかじめ実装されたコンピューターであって、入力装置と表示装置を一体的に備えた可搬型の専用の筐体構造を有し、前記電子手帳用テンプレートを記憶する手段と、表示中の前記背景画像に対する利用者入力に従って当該背景画像の表示状態を変更する手段と、当初の前記背景画像を当該表示状態が変更された状態の背景画像に更新して前記記憶していた電子手帳用テンプレートを上書き保存することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子手帳用テンプレートによれば、キャラクターなどが印刷された手帳を自由にカスタマイズしていくような使い方が可能で、かつ、記入、消去、編集が自在な電子手帳の利点も併せ持つ、全く新規な手帳をより安価に提供することができる。なお、他の効果については以下の記載で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例におけるテンプレートに含まれている表紙に相当する背景画像を示す図である。
【図2】本発明の実施例におけるテンプレートに含まれているカレンダーに相当する背景画像を示す図である。
【図3】本発明の実施例におけるテンプレートに含まれているスケジュール表に相当する背景画像を示す図である。
【図4】本発明の実施例におけるテンプレートに含まれている雑記帳に相当する背景画像を示す図である。
【図5】上記テンプレートに埋め込まれた頁めくり機能を説明するための図である。
【図6】上記テンプレートに埋め込まれた文字入力機能を説明するための図である。
【図7】上記文字入力機能の詳細を説明するための図である。
【図8】上記テンプレートに埋め込まれたシール画像の貼付機能を説明するための図である。
【図9】上記テンプレートに埋め込まれたマルチメディア再生機能を説明するための図である。
【図10】上記テンプレートに埋め込まれた電子メール送信機能を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
===本発明の実施形態===
本発明の実施例に係る電子手帳用テンプレート(以下、テンプレート)は、汎用的、かつ無料で配布されている文書閲覧ソフトウエア(以下、閲覧ソフト)用に作成された文書ファイルであることを前提としている。すなわち、例えば、利用者は、購入当初のPCにプリインストールされていたり、Webサイトから自由にダウンロードしたりすることで、閲覧ソフトを簡単に入手することができ、テンプレートを自由に閲覧することができる状態にあるものとする。
【0018】
本実施例では、事実上の業界基準で、かつ、その仕様が公開されているPDF形式の文書ファイル(以下、PDF)をテンプレートとして採用している。なお、このPDF用の文書閲覧ソフトウエアとしては、Adobe Reader(登録商標:Adobe Systems Incorporated)がよく知られている。また、PC上で作成したりスキャナーによって読み取ったりした文書、図面などをPDFファイルに変換するソフトウエア(以下、テンプレート作成ソフト)としては、Adobe Acrobat(登録商標:Adobe Systems Incorporated)などがある。
【0019】
以下では、利用者が、PDFからなるテンプレートをAdobe Readerなどの閲覧ソフトがインストールされたPCを使って電子手帳のように自在に文字を入力した入り編集したりする事例を挙げて本発明の詳細を説明する。
【0020】
===テンプレートの紙面===
テンプレートは、例えば、PC上で作成したりスキャナーによって読み取ったりした文書、図面などをその文書や図面の印刷データをテンプレート作成ソフトに受け渡すことで、このテンプレート作成ソフトがPDF形式のテンプレートを生成する。そして、本実施例のテンプレートは、一つのPDFからなり、そのPDFに1冊分の手帳に含まれる複数枚分の紙面に対応する複数頁分の画像が含まれている。
【0021】
図1〜図4に、本実施例のテンプレートに含まれる複数の画像のうちのいくつかを例示した。これらの図に示した画像は、1冊の手帳に含まれている複数の紙面のうち、代表的な紙面に相当する画像であり、紙面自体のデザインを表現する背景画像である。具体的には、図1に示したように、表紙に相当する背景画像1、図2に示したカレンダーの背景画像2、図3に示した1ヶ月分のスケジュール記入欄11がある紙面に相当する背景画像3、あるいは、図4に示した、1面を自由に使える白紙の領域12がある雑記帳の紙面に相当する背景画像4などがある。なお、図1に示した背景画像1は、表紙を表現しているので、手帳を閉じたときの紙面1枚分の背景画像となっている。それに対して、図2〜図4に示した背景画像(2〜4)は、手帳を開いたときの左右の頁の見開き状態を再現している。
【0022】
そして、PCにおいて、閲覧ソフトを起動し、このテンプレートを読み込めば、図1〜図4に示した背景画像(1〜4)を含め、1冊分の手帳に含まれている各紙面に対応する背景画像が、一般的なPDFファイルと同様に、閲覧ソフトの作業ウインドウ内に表示されることになる。また、PCにて表示中のテンプレートは、PDF形式の他の文書と同様に、閲覧ソフトの作業ウインドウ内での背景画像の拡大や縮小、スクロールによる頁めくりなどを可能としている。
【0023】
===テンプレート===
上述したように、本実施例のテンプレートは、PCにインストールされている閲覧ソフトを使うことで、テンプレートの内容である各紙面に相当する背景画像を利用者の閲覧に供することができる。しかし、PDFが、本来、カタログなど、それ自体が完結した文書を表現することを主な用途としていることから、基本的には、閲覧ソフトのみでは、テンプレートを自由に文字が記入できる手帳としての用途に供することができない。確かに、記入する事項や内容があらかじめ決まっているアンケートなどの用途では、閲覧ソフトだけで文字入力が可能なPDFが存在するが、手帳のように利用者が自由に文字を入力する、という用途は想定外であり、事実、手帳のようにユーザーが紙面の種類に応じて自由に文字を書き込めるようにしたPDFファイルは存在しない。もちろん、一つのPDFに含まれる複数の紙面に相当する背景画像が異なる用途(スケジュール表、雑記帳、カレンダーなど)に使われることもない。
【0024】
しかし、本発明者らは、PC以外のハードウエアやソフトウエアの追加購入を実質的に無用にするために、PDFの仕様を詳しく検討し、PDFの編集機能がない無料配布のPDF用の閲覧ソフトのみで電子手帳の用途に供することができるようにした。概略的には、本実施例のテンプレートは、テンプレート作成ソフトを用いて作成される段階で、文字入力をはじめとした種々の機能が事前に埋め込まれ、その機能が埋め込まれた状態で利用者に提供される。そして、その事前に埋め込まれた機能により、利用者は、高価なテンプレート作成ソフトを使用することなく、基本的に無料で汎用的な閲覧ソフトのみでテンプレートの閲覧に加え、電子手帳として自由に文字を編集自在に追記できるようになっている。
【0025】
さらに、本発明が想定しているテンプレートは、上述した、主に10代の女性を対象とした紙面にキャラクターや装飾図案などが事前に印刷された手帳(以下、ファンシー手帳)を代替するものであることから、この当初からの印刷紙面に相当する背景画像については削除や編集を不可能とし、その上で、その背景画像の上に文字を編集自在に上書きできるとともに、シールに相当する画像を貼付可能にするなど、ファンシー手帳の用途を想定した様々な特殊機能が埋め込まれている。
【0026】
なお、テンプレートに埋め込まれる機能は、各紙面に対応する各背景画像に対し、一部あるいは全部の表示領域をフィールドとして指定し、その指定されたフィールド内にフォームと呼ばれる様々な機能を実現させるためのコードを埋め込んでおくことで実現される。また、テンプレートの作成者は、テンプレート作成ソフトを使用することで、セキュリティプロパティなどと呼ばれる各種機能の実行権限や制限に関する情報をテンプレートに付帯させ、フィールドに埋め込まれたフォームに加え、テンプレート全体に対して実行可能な機能や受付可能な操作を細かく規定することができるようになっている。そして、閲覧ソフトの本質は、そのコードを解釈して実行したり、セキュリティプロパティに従って実行可能な機能やPDFに対する各種操作を制限したりするソフトウエアである。
【0027】
===ユーザー・インターフェイス===
テンプレートに埋め込まれた機能を閲覧ソフトのみで自在に利用可能とする仕組みについては上述した。しかし、閲覧ソフトで実行可能な機能を規定しただけでは、現実の手帳に代替することができない。例えば、文字入力に際してのユーザー・インターフェイス環境を工夫しないと、手帳としての使い勝手が極めて悪くなる。また、ファンシー手帳として、好みのシールを貼るような特殊な使われ方や、「おしゃれ」「かわいい」といった感性に訴えるような機能を実現させるための工夫も必要となる。そこで、本実施例のテンプレートは、事務用の一般的な手帳としての用途はもちろん、ファンシー手帳の用途にも対応可能な優れたユーザー・インターフェイス環境を実現するために、各種機能の埋め込み方に工夫がなされている。以下では、本実施例のテンプレートによって実現されるユーザー・インターフェイス環境について説明する。
【0028】
<頁めくり>
閲覧ソフトでは、閲覧しようとする背景画像を表示させたい場合、ディスプレイの上下方向にスクロールさせて目的とする背景画像を表示させる操作を基本としている。しかし、一般の手帳では、紙面の左右のいずれかの端を指で「めくる」という動作を行う。この動作を再現するために、図5(A)に示したように、背景画像2の左右両端に上下方向に延長する帯状のフィールド(13,14)を設定し、そのフィールド(13,14)内に頁めくりのフォームを埋め込んでいる。この領域をマウスカーソル15で指示すると、図5(B)に示したように、矢印状だったマウスカーソル15が機能を操作することが可能であることを示す「指さし」形状のマウスカーソル16に変わる。そして、本実施例では、背景画像2の右の帯状領域14に頁を進ませるためのフォームが埋め込まれている。また、背景画像の左の帯状領域13には、頁を戻すためのフォームが埋め込まれている。
【0029】
なお、図5では、スケジュール表の紙面に相当する背景画像2が示されていたが、当然、他の紙面についても同様に頁めくりの機能が埋め込まれているものとする。また、最後の紙面(裏表紙など)に相当する背景画像における右の帯状領域14については、最初の頁(表紙など)を次の頁として、その最初の頁の背景画像を表示させるためのフォームが埋め込まれているものとし、最初の紙面に相当する背景画像における左の帯状領域13には、最後の頁の背景画像を前の頁として表示させるためのフォームが埋め込まれているものとする。このように、各頁の左右の両端に頁めくりの機能を埋め込んでおくことで、手帳と同様の動作で直感的に各紙面の頁を自在に進めたり戻したりすることができる。
【0030】
<文字入力>
テンプレートは、セキュリティプロパティの設定により、どの紙面の背景画像であっても、文字を入力することができる。しかし、文字入力を可能にしただけでは、電子手帳としての利便性に乏しい。そこで、本実施例のテンプレートでは、手帳における各紙面の用途を考慮し、各紙面の背景画像ごとに、文字入力時のユーザー・インターフェイス環境を変えている。ここで、先に、図3に示したスケジュール表の背景画像3を例に挙げて本実施例における文字入力機能について説明する。図6に、当該スケジュール表の背景画像3の一部を拡大して示した。当該図6に基づいて、本実施例のテンプレートにおける文字入力機能の概略を説明すると、スケジュール表などでは、ある日にちの欄11にスケジュールを記入する必要があるのにもかかわらず、単純に文字入力の許可設定をしただけでは、図6(A)に示したように、文字列18が折り返されずに隣の欄17にまで文字が続いてしまう。そのため、特定の日にちの欄11に予定を書き込む、というスケジュール表としての用途をなさない。
【0031】
そこで、当該図6(B)に示したように、スケジュール表など、利用者が指定した領域にのみに入力した文字を表示させたい場合には、スケジュール表の各日にちの欄11のそれぞれに個別のフィールド19を割り当てている。そして、特定の日にちの欄11に設定されているフィールド19領域内がマウスで指示されると、カーソルの形状が矢印15から文字入力が可能である旨の「I」形状のマウスカーソル20となり、文字入力の起点を示す縦棒状のマーク21が点滅表示される。当該文字入力の起点マーク21から文字を入力していくと、図6(C)に示したように、フィールド19の幅で文字列18が折り返され、利用者は、指示した日にち欄11に設定されたフィールド19の領域内にのみ文字列18を入力することができる。
【0032】
さらに、入力した文字数が多過ぎて、一つのフィールド19の領域内に文字列18の全てを表示仕切れない場合には、図7(A)に示したように、そのフィールド19の右下にさらに文字があることを示す「+」マーク20が表示され、当該フィールド19をマウスカーソル15で指示すると、図7(B)に示したように、その日にち欄11に設定されているフィールド19が、スクロールバー21備えたテキストボックス22に表示状態が変化し、フィールド19内に入力した文字列18をスクロール表示させて、文字列18に含まれている全ての文字を確認することができるようになっている。
【0033】
なお、本実施利のテンプレートでは、利用者が、フィールドに記入する文字についての属性、すなわち、フォント、色、大小、文字飾り、字体(太字、斜体、下線、上付、下付)などを自在に変更することができるようになっている。
【0034】
<シール画像の貼付>
上述したように、ファンシー手帳の利用者は、シールを貼り付けてスケジュールの内容を管理したり、手帳を自由に装飾したりする。そこで、各背景画像には、PCにおいて、画像や文字を一次的に記憶する領域である、いわゆる「クリップボード」内のデータの貼り付けを許可する設定がなされている。それによって、例えば、図8(A)に示したように、複数のシールのそれぞれに相当する複数の画像(シール画像)31のデータを付帯したPDF(シール集)5を別途用意するとともに、図8(B)に示したように、二つの閲覧ソフトの個別の作業ウインドウ(41,42)に、シール集5と適宜な背景画像(ここでは、スケジュール表の背景画像3)を個別に表示させ、周知のコピー・アンド・ペーストの操作を行えば、シール集5における任意のシール画像31をテンプレートの任意の背景画像3に貼り付けることができる。また、テンプレートにおけるある紙面の背景画像3に貼り付けられたシール画像32は、その紙面や他の紙面の背景画像にドラッグ・アンド・ドロップの要領で自在に移動可能であり、微妙な位置の調整も可能となっている。もちろん、コピー・アンド・ペーストの操作によって、貼り付け先の紙面や他の紙面の背景画像に複写することもできる。なお、閲覧ソフトの種別によっては、シール集5とテンプレートとが、個別のウインドウではなく、一つのウインドウ内における別の作業領域として表示されることもある。
【0035】
また、シール画像31は、PDFにおける「スタンプ」として作成されており、スタンプの貼付が許可されているPDF以外の文書にはコピー・アンド・ペーストによって貼り付けることができないようになっている。さらに、シール集5は、各シール画像31に対するサイズの変更や回転などの操作ができないように設定されており、精密にデザインされたオリジナルのシール画像31が改変されないようにしている。一方、テンプレートに貼り付けた後のシール画像32については、サイズ変更や回転が許可されている。それによって、テンプレートに貼り付けられたシール画像32のサイズや傾きを自在に変更することができ、特に回転可能とすることで、実際のシールを実際の手帳の紙面に貼り付けられた状態を忠実に再現することができ、利用者は、シール画像31を単純に貼り付けるだけではなく、貼り付けた後のシール画像32のサイズや傾き、あるいは微妙な位置を変えることで、テンプレートを個性的なファンシー手帳としてカスタマイズさせていくことができる。
【0036】
<更新機能>
PDFは、当初の文書(オリジナル文書)が改変されないように、オリジナル文書自体への編集を禁止するとともに、PCへの保存は、オリジナル文書のコピーのみが許可されているのが一般的である。しかし、テンプレートは、PC上で再現される手帳であり、各背景画像に対して文字を記入したり、シール画像を貼付したりして当初の背景画像のみの紙面が、文字やシールを含んだ紙面に変更されたら、その変更後の紙面の表示状態が維持されるように更新することが必要となる。そこで、テンプレートは、その作成段階で、上書き禁止の制限が解除されて、編集後のテンプレートを当初のテンプレートに上書きして保存することができるようになっている。
【0037】
<アニメーション再生>
PDFは、音声や映像の生成起源となるマルチメディアデータの埋め込みが可能となっている。従来、PDFに埋め込まれたマルチメディアデータは、例えば、PDFによる製品マニュアルをPCで閲覧する際に、その製品の操作手順を示す動画であったり、PDFによる議事録における会議中の映像であったりする。しかし、本発明のテンプレートは、ファンシー手帳を模した電子手帳をPC上で実現させるものであり、実用的な用途としてより、より個人的な趣味の道具としての用途とて使われることを想定している。そこで、本実施例では、このマルチメディアデータを背景画像の各所に「さりげなく」潜ませることで、上述した感性に訴える機能を実現させている。
【0038】
図9に、本実施例のテンプレートにおいて、マルチメディアデータが埋め込まれた背景画像(ここでは、雑記帳の背景画像4)を例示した。図示したように、特定の紙面の背景画像4における所定の領域51が、例えば、周知のFLASH形式の動画データの埋め込みフィールドとして設定されている。また、その動画の再生条件もテンプレートの作成段階で事前に設定されている。そして、頁めくりにより、その動画データが埋め込まれた背景画像4が表示されると、当該図9(A)(B)に示したように、蝶52が羽ばたきながら紙面を横切るアニメーションが再生される。
【0039】
このように、このアニメーション自体には何ら実用性はないが、このアニメーション、利用者の感性に訴えかけることができ、テンプレートの趣味性をより高めることが可能となる。なお、マルチメディアデータとしては、動画に限らず、音声であってもよい。特定の紙面の背景画像が表示されたときにメロディを音声出力させたり、例えば、スケジュール表を開いたときに、今日の日付を読み上げさせたりするなど、所定の紙面の背景画像が表示されたときに、所定の音声を出力させることもできる。
【0040】
<電子メール連携機能>
ファンシー手帳の利用者の年代や性別を考慮すると、電子メールは、極めて重要なコミュニケーションツールである。例えば、あるイベントを企画し、そのスケジュールを友人に電子メールで連絡する、というような場面を想定すると、従来は、自身の手帳のスケジュール表を見ながら携帯電話を使って電子メールを友人に送付する、という個別の道具や機器(手帳、携帯電話)を個別に操作する、という動作が必要となる。しかし、実質的な電子手帳である本実施例のテンプレートは、PC上で操作されるものであり、現在のPCのほとんど全てはインターネットに接続されている、と言える。そこで、本実施例のテンプレートには電子メールの送受信ソフトウエア(メールソフト)の起動操作をすることなく、PC上でテンプレートを表示させている状態から、電子メールを速やかに送信できる状態に移行できる機能も埋め込まれている。
【0041】
本実施例では、図10(A)に示したように、表紙以外の背景画像(ここでは、スケジュール表の背景画像3)の右上の領域61に新規メールを作成する機能が埋め込まれており、この領域をマウスカーソル16で指示すると、図10(B)に示したように、新規メールの作成画面62が表示され、手帳(テンプレート)に記入された連絡事項と、その事項の連絡手段であるメールソフトの起動と、実際の連絡動作である電子メールの送信動作が連続的に同じPCのディスプレイを見ながら行える。それによって、より快適なコミュニケーション環境をも利用者に提供することができる。
【0042】
===テンプレートの提供形態===
本実施例のテンプレートは、電子的なデータである。したがって、適当なデータ記録媒体に記録し、その記録媒体の形態で利用者に提供することが考えられる。そのテンプレートが記録された媒体自体を販売してもよいし、例えば、雑誌などの付録として貼付したCD−ROMなどにテンプレートを収録しておいてもよい。
【0043】
もちろん、データ記録媒体によってテンプレートを提供する形態では、利用者がその媒体を販売している店頭を訪れる必要があり、販売店舗が近くにない利用者にとっては不便である。通信販売であっても、データ記録媒体が到着するまでに日数が掛かり、火急の需要に対応することができない。そこで、テンプレートをダウンロード可能にWebサイト上に公開する、という提供形態が考えられる。この場合は、音楽データや動画データ、あるいは電子書籍を販売する電子商店と同様にテンプレートのダウンロード販売を行うWebサイトをインターネット上に公開しておけばよい。テンプレートのダウンロード販売は、換言すれば、そのWebサイトを公開しているWebサーバーによってアクセス可能な記憶装置を本実施例のテンプレートの格納媒体としていることになる。
【0044】
===その他の実施例===
上記実施例では、テンプレートの紙面の所定領域に所定の機能が埋め込まれていたが、その領域の位置やサイズ、あるいは各領域に埋め込まれている機能は変更可能である。例えば、日めくりカレンダーのように上下方向に頁めくりをするテンプレートでは、紙面の左右に延長する帯状の領域をその紙面の下端に設定しておけばよい。
【0045】
上記実施例ではテンプレートをPCで操作していたが、テンプレートの使用形態としては、この例に限らず、携帯可能な筐体に閲覧ソフトの機能のみを実装したコンピューターからなる単体の「電子手帳」を用いてテンプレートを操作する、という形態も考えられる。すなわち、従来の電子手帳のように携帯可能で、どこででもスケジュール管理ができるようにしてもよい。もちろん、本実施例のテンプレートは、その閲覧ソフト自体が無料で、その閲覧ソフトの機能に特化したハードウエアは、極めて安価に提供することが期待でき、PCよりも利便性の高い使用形態を、僅かな経済的負担で実現させることができる。
【0046】
なお、本発明で言う「手帳」や「電子手帳」は、紙面や上記背景画像のサイズや内容を限定するものではない。すなわち、テンプレートの各背景画像や、その起源となった紙面の大小やデザイン(キャラクターや装飾図案、罫線の有無、罫線の種類、罫線の引かれ方など)、およびその紙面の用途を限定するものではない。例えば、手帳の紙面やテンプレートの背景画像の内容や使われ方が大学ノートやメモ帳であったり、アドレス帳であったりする。1冊分の紙面が全て同じ内容であってもよい。言い換えれば、テンプレートに含まれている複数の背景画像が全て同じであってもよい。本発明は、特定の形式の文書データに埋め込まれた機能とその埋め込み方に特徴を有し、その特徴により、たとえば、ファンシー手帳のような特殊な使い方と、文字の入力、編集、消去が容易な電子手帳の利便性とを両立させることができるものである。
【符号の説明】
【0047】
1 表紙の背景画像、2 カレンダーの背景画像、3 スケジュール表の背景画像、
4 雑記帳の背景画像、5 シール集、11,17 日にち欄、12 白紙領域、
13,14 頁めくり設定領域、15,16,20 マウスカーソル、18 文字列、
19 文字入力設定領域、21 スクロールバー、22 テキストボックス、
31、32 シール画像、41,42 閲覧ソフトの作業ウインドウ、
51 マルチメディアデータの埋め込み領域、52 アニメーション画像、
61 新規メール作成機能の埋め込み領域、62 新規メール作成画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の形式で記述された文書データからなるテンプレートであって、
1冊の手帳に含まれる複数頁分の紙面のそれぞれに対応する複数の背景画像を含み、
前記特定の形式に対応する閲覧ソフトウエアを実行しているコンピューターにより表示可能とするとともに、当該コンピューターにより、頁めくり機能と、文字入力機能と、上書き保存を許可する更新機能の実行情報を付帯し、
ぞれぞれの前記背景画像には、頁送りと、頁戻しの各指示操作を受け付ける領域が個別に設定されて、前記頁めくり機能は、前記背景画像を表示しているコンピューターに対する利用者入力により、当該領域が指示されると、当該コンピューターに、次の頁に対応する背景画像、あるいは前の頁に対応する背景画像を表示させ、
前記複数の背景画像のうち、区分けされた文字入力欄が描出される画像が存在し、当該文字入力欄に対応する各領域は、テキストの直接入力が可能な領域として設定されており、前記文字入力機能は、当該画像を表示しているコンピューターに対する利用者入力により、前記文字入力欄が指示されると、当該コンピューターに、文字入力の始点となるカーソルを指示された文字入力欄に表示させるとともに、当該指示された文字入力欄の領域にのみ文字入力を可能にさせ、
前記更新機能は、前記背景画像を表示しているコンピューターに対する所定の利用者入力に応動して、当該コンピューターに、当初の前記背景画像を前記文字入力機能によって文字が入力された状態の背景画像に変更して上書き保存させる、
ことを特徴とする電子手帳用テンプレート。
【請求項2】
請求項1において、前記背景画像を表示している前記コンピューターにて、前記閲覧ソフトウエアの作業領域が利用者入力により選択されているとともに、当該コンピューターにて実行中の複数のプログラムからのアクセスが可能な共有のメモリー領域にシール画像のデータが格納されている場合、所定の利用者入力に応動して、前記コンピューターに、当該シール画像を表示中の前記背景画像の任意の位置に複写させる画像貼付機能の実行情報が付帯し、
前記更新機能は、前記背景画像を表示しているコンピューターに対する所定の利用者入力に応動して、当該コンピューターに、当初の前記背景画像を前記画像貼付機能によって画像が複写された状態の背景画像に更新して上書き保存させる、
ことを特徴とする電子手帳用テンプレート。
【請求項3】
請求項1または2において、マルチメディア再生機能の実行情報を付帯し、前記複数の背景画像のうち、マルチメディアデータが埋め込まれたマルチメディア付帯背景画像が存在し、前記マルチメディア再生機能は、前記頁めくり機能により、マルチメディア付帯背景画像を前記コンピューターに表示させた際、当該マルチメディア付帯背景画像に埋め込まれた前記マルチメディアデータを当該コンピューターに再生させることを特徴とする電子手帳用テンプレート。
【請求項4】
請求項3において、前記マルチメディア付帯背景画像には、マルチメディアデータとして当該背景画像上を移動するオブジェクトを表現するアニメーション画像が埋め込まれているとともに、前記オブジェクトの移動領域が設定されていることを特徴とする電子手帳用テンプレート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の前記電子手帳用テンプレートの前記閲覧ソフトウエアがあらかじめ実装されたコンピューターであって、入力装置と表示装置を一体的に備えた可搬型の専用の筐体構造を有し、前記電子手帳用テンプレートを記憶する手段と、表示中の前記背景画像に対する利用者入力に従って当該背景画像の表示状態を変更する手段と、当初の前記背景画像を当該表示状態が変更された状態の背景画像に更新して前記記憶していた電子手帳用テンプレートを上書き保存することを特徴とする電子手帳。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の前記電子手帳用テンプレートが記憶されているデータ記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−38093(P2012−38093A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177899(P2010−177899)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(500301979)有限会社デルフィーノ (1)
【Fターム(参考)】