説明

電子文書比較装置、電子文書比較方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】ファンドの設定および維持に必要な文書を好適に作成するための技術を提供すること。
【解決手段】項目分けされた第1の電子文書60と、項目分けされた第2の電子文書70とを比較して、その結果を出力する電子文書比較装置であって、第1の電子文書60における任意の項目と、第2の電子文書70における上記任意の項目に対応する項目とを比較して同一か否かを判定する判定手段(比較処理部23)と、上記判定手段が同一でないと判定したとき、上記任意の項目と上記対応する項目とを関連づけて出力する出力手段(比較処理部23)と、を備えている電子文書比較装置100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子文書を処理する技術に関するものであり、特に、有価証券届出書、有価証券報告書、半期報告書などの電子文書を比較する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の市場には、常時、約2700〜3000のファンドが存在している。毎年、約300〜400のファンドが新規設定ファンドとして新しく設定され、同時に、約300〜400のファンドが償還されている。なお、新規設定ファンドは、次年度以降には、継続開示ファンドとなる。
【0003】
新規設定ファンドを設定する際には、投資信託会社(投信会社)は、例えば、有価証券届出書、交付/請求目論見書など、様々な書類を作成する必要がある。また、継続開示ファンドについては、投信会社は、有価証券報告書、半期報告書などを随時作成する必要がある。また、状況の変化等に応じて、適宜、訂正届出書、訂正報告書などを提出することも求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−222385号明細書(平成14年8月9日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらファンドの設定および維持に必要な文書は、一般に、熟練した担当者の属人的な能力(知識、経験など)に依って作成されている。そのため、多数のファンドを担当する担当者には多大な負担がかかり、この負担を軽減するための技術が求められている。
【0006】
特許文献1には、コンピュータシステムを利用して各決算開示文書を作成するための作成システムが開示されている。特許文献1に記載の作成システムでは、各決算開示書類を作成するための数値データ群を共通データと固有データとに区分して利用可能にしている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の作成システムは、各決算開示文書を作成するためのシステムである。それゆえ、ファンドの設定および維持に必要な文書を作成するための労力をより好適に軽減することができる技術があれば、より好ましい。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ファンドの設定および維持に必要な文書を好適に作成するための技術を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電子文書比較装置は、上記の課題を解決するために、項目分けされた第1の電子文書と、項目分けされた第2の電子文書とを比較して、その結果を出力する電子文書比較装置であって、上記第1の電子文書における任意の項目と、上記第2の電子文書における上記任意の項目に対応する項目とを比較して同一か否かを判定する判定手段と、上記判定手段が同一でないと判定したとき、上記任意の項目と上記対応する項目とを関連づけて出力する出力手段と、を備えていることを特徴としている。
【0010】
ファンドの維持に必要な文書として、有価証券届出書、有価証券報告書、半期報告書などの訂正届出書または訂正報告書が存在する。これらの訂正書では、訂正前の文書と、訂正後の文書との差分を提示することが求められている。
【0011】
上記の構成によれば、第1の電子文書と、第2の電子文書とを、対応する項目同士で比較する。一般的な文書比較技術では、文書の先頭からシーケンシャルに比較を行うため、途中に大きく異なる箇所が存在すると、比較処理が乱され、それ以後に共通部分が存在したとしても認識できなくなる場合がある。一方、上記の構成によれば、対応する項目同士で比較を行うため、途中に内容が大きく異なる項目が存在したとしても、それ以後の項目について、それ以前の項目と同様に共通部分を認識することができる。これにより、上記の構成によれば、第1の電子文書と第2の電子文書との間の差分を精度高く判定することができる。
【0012】
その上、上記の構成によれば、差分が存在した項目について、比較に供した両項目を関連付けて出力する。例えば、電子文書間において、文書の所謂「てにをは」が異なっている場合、一文字の違いでも大きく意味が変わる場合があるが、差分のみを出力したのでは、その意味を把握することは困難である。一方、上記の構成によれば、差分が存在する項目全体を出力するため、出力されたものを確認するだけで、差分の文脈上の意味を容易に把握することができる。
【0013】
以上のように、上記の構成によれば、第1の電子文書と第2の電子文書との間の差異を精度高く検出し、その差異の文脈上の意味を容易に把握できるように比較結果を出力することができる。これにより、有価証券届出書、有価証券報告書、半期報告書などの訂正届出書または訂正報告書といった、ファンドの維持に必要な文書を好適に作成することができる。
【0014】
本発明に係る電子文書比較装置は、上記判定手段が同一でないと判定したとき、上記任意の項目と上記対応する項目とを、段落毎に比較して、互いに異なる段落を抽出する抽出手段をさらに備え、上記出力手段は、上記抽出手段が抽出した段落については、出力態様を、上記抽出手段が抽出していない段落と異ならせることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、差分がある段落について出力態様を異ならせるため、例え、項目全体が出力されていたとしても、差分がどこに存在するのかを容易に把握することができる文書を作成することができる。
【0016】
また、上記の構成によれば、段落毎に比較を行うので、途中に大きく内容が異なる段落があったとしても、それ以後の共通する段落を適切に認識することができる。
【0017】
本発明に係る電子文書比較装置において、上記第1の電子文書および上記第2の電子文書では、各項目を識別するための見出しが各項目に付されており、上記任意の項目に付された上記見出しと、上記対応する項目に付された上記見出しとが同一であり、上記任意の項目の階層と、上記対応する項目の階層とが同一であることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、上記電子文書比較装置は、電子文書において同じ見出しが付されている項目同士を比較する。有価証券届出書、有価証券報告書、半期報告書などの書類において、同種の書類間においては、対応する項目には同じ見出しが付されているため、項目の階層および見出しに基づけば、首尾よく対応する項目同士を比較して、差分を精度よく検出することができる。
【0019】
上記出力手段は、上記任意の項目に付された上記見出しを、上記任意の項目および上記対応する項目に関連づけて出力することが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、差分の存在する項目を、その項目の番号を関連付けて出力するため、差分が文書内のどこに存在するのかを容易に把握することができる文書を作成することができる。
【0021】
本発明に係る電子文書比較装置は、上記第1の電子文書および上記第2の電子文書が、有価証券届出書、有価証券報告書、および半期報告書からなる群より選ばれる何れかの文書であり、上記出力手段は、該文書の訂正届出書または訂正報告書の、少なくとも一部を出力するものであるが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、訂正有価証券届出書、訂正有価証券報告書、および訂正半期報告書といった、ファンドの維持に必要な文書を首尾よく作成することができる。
【0023】
本発明に係る電子文書比較方法は、項目分けされた第1の電子文書と、項目分けされた第2の電子文書とを比較して、その結果を出力する電子文書比較方法であって、上記第1の電子文書における任意の項目と、上記第2の電子文書における上記任意の項目に対応する項目とを比較して同一か否かを判定する判定工程と、上記判定工程において同一でないと判定したとき、上記任意の項目と上記対応する項目とを並べて出力する出力工程と、を包含することを特徴としている。
【0024】
上記の方法によれば、本発明に係る電子文書比較装置と同等の効果を奏する。
【0025】
また、本発明に係る装置を動作させるためのプログラムであって、コンピュータに上記の各装置の機能を実現させるプログラムおよび該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も本発明の範疇に含まれる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る電子文書比較装置によれば、第1の電子文書と第2の電子文書との間の差異を精度高く検出し、その差異の文脈上の意味を容易に把握できるように比較結果を出力することができる。これにより、有価証券届出書、有価証券報告書、半期報告書などの訂正届出書または訂正報告書といった、ファンドの維持に必要な文書を好適に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子文書比較装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す電子文書比較装置が比較処理する電子文書の項目の一例を示す図である。
【図3】図1に示す電子文書比較装置が比較処理する電子文書のデータ構造の一例を示す図である。
【図4】図1に示す電子文書比較装置における比較処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図1に示す電子文書比較装置が比較する電子文書の一例を示す図である。
【図6】図1に示す電子文書比較装置が、図5に示す電子文書の一例を比較した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1の実施形態〕
本発明に係る第1の実施形態について、図1〜図6を参照して以下に説明する。
【0029】
<電子文書比較装置100の構成>
まず、本実施形態に係る電子文書比較装置100について、図1を参照にして以下に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子文書比較装置100の要部構成を示すブロック図である。この図に示すように、電子文書比較装置100は、端末装置1およびサーバ2から構成される。両者は、通信ネットワーク3を介して互い接続され、指示およびデータをやり取りする。
【0030】
端末装置1は、ユーザインタフェース(UI)部11、制御部12、表示部13、および通信部14を備えている。各部材の詳細については後述する。
【0031】
サーバ2は、制御部21、文書記憶部22、比較処理部(判定手段、抽出手段、出力手段)23、および通信部24を備えている。各部材の詳細については後述する。
【0032】
<電子文書比較装置100の概要>
サーバ2は、端末装置1からの指示に従い、文書記憶部22に記憶されている第1の電子文書60と第2の電子文書70とを比較して、その比較結果を表す第3の電子文書80を生成する。
【0033】
本実施形態において、第1の電子文書60および第2の電子文書70はともに有価証券届出書を表す電子文書である。そのため、本実施形態に係る電子文書比較装置100によれば、有価証券届出書を訂正したときに、訂正前の有価証券届出書(第1の電子文書60)と、訂正後の有価証券届出書(第2の電子文書70)とを比較して、その比較結果を表す訂正有価証券届出書(有価証券届出書の訂正届出書。第3の電子文書80)を首尾よく作成することができる。
【0034】
なお、後述するように、本発明は有価証券届出書を比較するものに限定されず、例えば、有価証券報告書、半期報告書などを比較するものであってもよい。
【0035】
<第1の電子文書60および第2の電子文書70の一例>
本発明に係る電子文書比較装置の比較処理対象とする電子文書は、項目分けされている電子文書である。本明細書において、電子文書が「項目分けされている」とは、当該電子文書が有する項目、および、当該電子文書における各項目の内容が、容易に(自然言語解析技術を必要とせずに)取得可能な状態を指し、特に、当該電子文書が有する項目、および、各項目と各項目の内容との関連付けを表すデータを、当該電子文書が含んでいるか、または、上記データが当該電子文書に関連付けられている状態を指す。
【0036】
本実施形態では、第1の電子文書60および第2の電子文書70は、有価証券届出書であり、図2に示すような項目(例えば、「(4)発行(売出)価格」、「(5)申込手数料」など)によって項目分けされている。本実施形態において、第1の電子文書60における各項目はツリー構造を構成している。
【0037】
図3は、第1の電子文書60のデータ構造の一例を示す図である。図3に示す第1の電子文書60は、項目分けデータ61と、内容データ62とを含んでいる。
【0038】
項目分けデータ61は、第1の電子文書60が有する項目、および各項目間の論理構造を表すデータである。項目分けデータ61は、例えば、XMLのような入れ子構造またはツリー構造のデータ形式を有しており(階層付けされており)、第1の電子文書60の有するツリー構造を表現している。
【0039】
図3に示す例では、大項目「1」600の下位ノードとして、中項目「(1)」602、中項目「(2)」608、および中項目「(3)」610が存在する。また、中項目「(1)」602の下位ノードとしては、小項目「丸1」604、および小項目「丸2」606が存在する。また、中項目「(2)」608の下位ノードとしては、小項目「丸1」604、および小項目「丸2」606が存在する。これらの内、下位ノードを有さない項目(小項目「丸1」604、小項目「丸2」606、中項目「(2)」608、小項目「丸1」612、および小項目「丸2」614)には、内容データ62において対応部分が存在する。なお、本明細書において、各項目の番号を、その上位ノードの番号を含めて表現する場合がある。例えば、小項目「丸1」604は、項目「1(1)丸1」604と表現する場合がある。このような上位ノードの番号を含められた番号を用いることにより、各項目を電子文書内において一意に識別することができる。
【0040】
また、各項目には、各項目の見出しを表すデータ(見出し601、603、605、607、609、611、613、および615。例えば、見出し601は、項目「1」600に対応する)が含まれている。なお、見出しには、図2に示すように、各項目の内容の主題または概略を表す文字列が含まれ得る。
【0041】
内容データ62は、各項目の内容を表すデータである。内容データ62は、例えば、項目毎の内容を表すHTMLファイルによって構成されている。項目分けデータ61において、下位ノードを有さない項目には、各項目を一意に識別するIDが付されており、内容データ62における各項目に対応する内容にも同一のIDが関連付けられている(例えば、各項目に対応する内容を表すHTMLファイルのファイル名が、該当IDを含んでいる)。これにより、各項目と、その対応する内容とが関連付けられている。
【0042】
なお、図3に示した構造はあくまでも説明のための一例であり、ツリー構造の階層数、項目(ノード)の数等は、特に限定されない。なお、ツリー構造が1階層である場合は、リスト構造と称してもよい。
【0043】
以上のように第1の電子文書60が構成されることにより、電子文書比較装置100の各装置(端末装置1およびサーバ2)は、第1の電子文書60が有する項目、項目間の論理構造、各項目の内容、および各項目の見出しを容易に取得することができる。
【0044】
なお、第2の電子文書70も、項目データ71および内容データ72を含んでおり、第1の電子文書60と同様に構成されている。
【0045】
<電子文書比較処理の一例>
電子文書比較装置100における電子文書比較処理の一例について、図4を参照して以下に説明する。図4は、サーバ2が、端末装置1からの指示に基づいて、第1の電子文書60と第2の電子文書70とを比較して、比較結果を第3の電子文書80として生成する際の処理の流れを示すフローチャートである。
【0046】
図4に示すように、サーバ2の通信部24が、端末装置1からの比較開始指示を受ける(ステップS1)と、サーバ2の制御部21は、比較処理部23に、電子文書の比較処理を開始させる。なお、端末装置1の制御部12は、例えば、UI部11を介したユーザからの入力に基づき、通信部14を介して、サーバ2への上記比較開始指示の送信を行う。
【0047】
比較処理部23は、比較処理を開始すると、まず、文書記憶部22から、比較すべき電子文書(第1の電子文書60および第2の電子文書70)を取得する(ステップS2)。なお、比較処理部23は、比較すべき電子文書として、例えば、上記比較開始指示によって指定されている電子文書を取得してもよいし、上記比較開始指示によって指定されたファンドの最新の有価証券届出書(第2の電子文書70)と、その直前の有価証券届出書(第1の電子文書60)とを取得してもよい。
【0048】
続いて、比較処理部23は、第1の電子文書60および第2の電子文書70について、対応する項目(下位ノードを有さない項目)毎に、内容を比較する(ステップS3)。例えば、図3に示す第1の電子文書60の項目「1(1)丸1」の内容620と、第2の電子文書70の項目「1(1)丸1」の内容とを比較する。以下、比較の対象となった項目を比較項目と称する。
【0049】
なお、第1の電子文書60および第2の電子文書70における対応する項目とは、項目の階層および見出しが一致する項目を指す。「項目の階層が一致する」とは、上位ノードが対応する項目同士であることを指す。例えば、項目「1(1)」の下位ノードであり、見出し605が付されている第1の電子文書60の項目「1(1)丸1」に対しては、第2の電子文書70における、項目「1(1)」の下位ノードの項目であって、見出し605と同一の見出しを有する項目が対応する。比較処理部23は、第1の電子文書60および第2の電子文書70において、最上位のノードから見出しを比較していくことによって、下位のノードにおける対応関係を取得することができる。
【0050】
第1の電子文書60および第2の電子文書70において、比較項目の内容に差分が存在していたとき(両者の内容が一致していなかったとき。ステップS4におけるYES)、比較処理部23は、さらに両者の内容を段落毎に比較して、差分が存在している(一致していない)段落について下線を付すなどの強調処理を行う(ステップS5)。なお、段落の位置は、慣用されている技術、例えば、電子文書に含まれる改行を規定するデータなどに基づいて比較処理部23が判断すればよい。
【0051】
そして、比較処理部23は、強調処理がなされた比較項目の内容を表題を付して出力する(ステップS6)。第1の電子文書60の比較項目と第2の電子文書の比較項目(第1の電子文書60の比較項目に対応する項目)とは、続いて出力される。すなわち、両比較項目は、関連付けられて出力される。出力形式としては、文書記憶部22に記憶させてもよいし、制御部21および通信部24を介して端末装置1に送信してもよい。また、全ての項目の比較処理が終了したのち、各比較結果をまとめて、第3の電子文書80として、文書記憶部22に記憶、または、端末装置1に送信してもよい。
【0052】
上記表題としては、第1に、比較項目の見出しを用いることができる。例えば、図3に示す第1の電子文書60の項目「1(1)丸1」の見出し605を、比較項目の内容を出力する前に出力すればよい。また、見出し605の前に、項目「1(1)丸1」の上位ノードである項目「1(1)」の見出し603を、見出し603の前に、項目「1」の見出し601を出力してもよい。これにより、上位ノードの番号を含む比較項目の番号が、当該比較項目に関連付けて出力される。これによって、第3の電子文書80に含まれる各比較結果が、どの項目についての比較結果であるかがより把握し易くなる。
【0053】
また、表題として、さらに、第1の電子文書60の比較項目の内容の前に、例えば、「<訂正前>」または「<変更前>」のような文字列を、第2の電子文書70の比較項目の内容の前に、例えば、「<訂正後>」または「<変更後>」のような文字列を出力してもよい。このような文字列を表題とすることにより、各項目の内容がどちらの文書のものであるかが把握し易くなる。特に、上述したような訂正前および訂正後であることを示す文字列を用いることにより、電子文書比較装置100は、訂正届出書を首尾よく作成することができる。
【0054】
その後、比較を行っていない項目が存在する場合、ステップS3に戻って処理を続行する、全ての項目について比較を完了した場合には、比較処理を終了する(ステップS7)。上述したように、ここで、各比較結果をまとめた第3の電子文書80を、文書記憶部22に記憶、または、端末装置1に送信してもよい。
【0055】
ここで、図2に示す有価証券届出書における、第1の電子文書60および第2の電子文書70の比較項目の一例と、当該比較項目を比較した結果を表す第3の電子文書の一例とを示す。図5(a)は、第1の電子文書60のうち、項目「第一部(4)」の内容630および項目「第一部(5)」の内容631を示す。図5(b)は、第2の電子文書70のうち、項目「第一部(4)」の内容730および項目「第一部(5)」の内容731を示す。図6は、第3の電子文書80のうち、項目「第一部(4)」の比較結果および項目「第一部(5)」の比較結果を示す。
【0056】
図5に示すように、項目「第一部(4)」および項目「第一部(5)」の両項目において、第1の電子文書60および第2の電子文書70の間に差分が存在する。また、項目「第一部(4)」および項目「第一部(5)」の両項目における互いに異なる(一致しない)段落は、ともに2番目の段落である。
【0057】
比較処理部23は、まず、ステップS3において、内容630と内容730とを比較し、差分有りと判定して、ステップS5において、内容630および内容730の2番目の段落について夫々下線を付し、項目「第一部(4)」の見出し、ならびに「<訂正前>」および「<訂正後>」の表題を付して出力する。そして、同様に、ステップS3において、内容631と内容731とを比較し、差分有りと判定して、ステップS5において、内容630および内容730の2番目の段落について夫々下線を付し、項目「第一部(4)」の見出し、ならびに「<訂正前>」および「<訂正後>」の表題を付して出力する。
【0058】
このように、本実施形態によれば、第1の電子文書60(訂正前の有価証券届出書)および第2の電子文書70(訂正後の有価証券届出書)の差異を容易に把握可能に示す第3の電子文書80(訂正有価証券届出書)を作成することができる。
【0059】
<本実施形態の利点>
一般的な文書比較技術では、文書の先頭からシーケンシャルに比較を行うため、途中に大きく異なる箇所が存在すると、比較処理が乱され、それ以後に共通部分が存在したとしても認識できなくなる場合がある。一方、本実施形態に係る電子文書比較装置100では、電子文書を項目ごとに内容を比較するため、途中に内容が大きく異なる項目が存在したとしても、それ以後の項目について、それ以前の項目と同様に共通部分を認識することができる。これにより、本実施形態に係る電子文書比較装置100によれば、訂正前の文書と訂正後の文書とを比較し、訂正された箇所と訂正されていない箇所を精度高く検出して、差分を示す文書を好適に作成することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る電子文書比較装置100は、差分が存在した項目の全体の内容を出力するため、出力されたものを確認するだけで、訂正された部分の文脈上の意味を容易に把握することができる。例えば、文書の所謂「てにをは」を訂正したとき、一文字の違いでも大きく意味が変わる場合があるが、訂正された箇所のみを出力したのでは、その訂正の意味を把握することは困難である。本実施形態に係る電子文書比較装置100によれば、訂正が行われた項目の内容全体を出力するため、訂正の意味を容易に把握することができる文書を作成することができる。
【0061】
さらに、本実施形態に係る電子文書比較装置100は、差分がある項目において、段落毎に比較を行い、差分がある段落について出力態様を異ならせるため、項目全体が出力されていながらも、どこに訂正箇所があるのかをさらに容易に把握することができる文書を作成することができる。また、本実施形態に係る電子文書比較装置100は、項目内において段落毎に比較を行うので、途中に大きく内容が異なる段落があったとしても、それ以後の共通する段落を適切に認識することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る電子文書比較装置100は、比較結果を出力する際に、比較項目の見出し、および、何れが訂正前であり何れが訂正後であるかを示す表題を併せて出力するため、訂正内容をさらに容易に把握することができる文書を作成することができる。
【0063】
<比較結果の出力に関する変形例>
なお、電子文書比較装置100が出力する第3の電子文書80は、訂正届出書、訂正報告書等そのものであってもよい。この場合、電子文書比較装置100は、第1の電子文書60および第2の電子文書70に加えて、予め用意された定型文、予め入力された各電子文書に関する情報等を用いて、訂正届出書、訂正報告書等を、直接、第3の電子文書80として作成する。また、電子文書比較装置100が出力する第3の電子文書80は、訂正届出書、訂正報告書等そのものでなくともよく、更に手作業または他の文書編集システムによって編集されて訂正届出書、報告書等となる文書であってもよい。
【0064】
また、差異が存在する段落は、必ずしも下線を付すことによって強調処理されている必要はなく、出力態様が異なるようになっていればよい。
【0065】
<比較する電子文書に関する変形例>
また、第1の電子文書60および第2の電子文書70における項目分けデータおよび内容データのデータ形式は、特に限定されない。例えば、内容データは、項目ごとにファイル分けされたHTMLである必要はなく、一つのHTMLファイルであってもよく、XMLファイル、テキストファイル、ワードプロセッサ用データファイル、所定のデータベースに登録されたデータで有り得る。項目データについても、XMLファイルに限定されず、第1の電子文書60および第2の電子文書70における項目間の論理構造を表現し得るデータ形式であればよい。また、第1の電子文書60および第2の電子文書70における項目間の論理構造は、ツリー構造に限定されず、例えば、リスト構造であってもよい。
【0066】
また、項目分けデータおよび内容データは、一つのファイルに含まれていてもよいし、互いに関連付けられた別ファイルとして存在していてもよい。
【0067】
また、下位ノードを有する項目(例えば、図3における項目「1」600)について、対応する内容が内容データに含まれていてもよい。
【0068】
<電子文書の承認に関する変形例>
第1の電子文書60および第2の電子文書70は、例えば、端末装置1からサーバ2に送信され、サーバ2の文書記憶部22に記憶されたものであり得る。
【0069】
このとき、比較処理部23は、比較処理の対象とする第1の電子文書60および第2の電子文書70を、端末装置1における承認操作を受けているものに限定してもよい。すなわち、端末装置1は、電子文書をサーバ2に送信した後、適当なタイミングにて当該電子文書を承認する旨の通知をサーバ2に送信する。そして、比較処理部23は、この承認の通知を受けている電子文書を、比較処理の対象とする。なお、制御部21は、比較処理開始指示の代わりに、電子文書の承認通知を比較処理の開始のきっかけとしてもよい。
【0070】
<システム構成の変形例>
サーバ2に接続される端末装置1の数は特に限定されず、端末装置1とサーバ2との接続は多対一となっていてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、電子文書比較装置100を、端末装置1とサーバ2とから構成しているが、一つの装置によって構成してもよい。比較処理部23は、本発明に係る電子文書比較装置が備える判定手段、抽出手段、および出力手段として機能するため、比較処理部23を備えるサーバ2単体で、本発明に係る電子文書比較装置を構成し得る。また、端末装置1が、比較処理部23と同等のブロックを備えるように構成することにより、端末装置1単体で、本発明に係る電子文書比較装置を構成し得る。
【0072】
<プログラムおよび記録媒体>
最後に、電子文書比較装置100の各ブロックは、集積回路(ICチップ)上に形成された論理回路によってハードウェア的に実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェア的に実現してもよい。
【0073】
後者の場合、電子文書比較装置100は、各機能を実現するプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるサーバ2の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、電子文書比較装置100に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0074】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ類、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク類、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード類、マスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ類、あるいはPLD(Programmable logic device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理回路類などを用いることができる。
【0075】
また、電子文書比較装置100を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークは、プログラムコードを伝送可能であればよく、特に限定されない。例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(Virtual Private Network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、この通信ネットワークを構成する伝送媒体も、プログラムコードを伝送可能な媒体であればよく、特定の構成または種類のものに限定されない。例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11無線、HDR(High Data Rate)、NFC(Near Field Communication)、DLNA(Digital Living Network Alliance)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。
【0076】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、ファンドの設定および維持に必要な文書を作成するためのシステムを構築するために利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 端末装置
2 サーバ
23 比較処理部(判定手段、抽出手段、出力手段)
22 文書記憶部
60 第1の電子文書
70 第2の電子文書
80 第3の電子文書
100 電子文書比較装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
項目分けされた第1の電子文書と、項目分けされた第2の電子文書とを比較して、その結果を出力する電子文書比較装置であって、
上記第1の電子文書における任意の項目と、上記第2の電子文書における上記任意の項目に対応する項目とを比較して同一か否かを判定する判定手段と、
上記判定手段が同一でないと判定したとき、上記任意の項目と上記対応する項目とを関連づけて出力する出力手段と、を備えていることを特徴とする電子文書比較装置。
【請求項2】
上記判定手段が同一でないと判定したとき、上記任意の項目と上記対応する項目とを、段落毎に比較して、互いに異なる段落を抽出する抽出手段をさらに備え、
上記出力手段は、上記抽出手段が抽出した段落については、出力態様を、上記抽出手段が抽出していない段落と異ならせることを特徴とする請求項1に記載の電子文書比較装置。
【請求項3】
上記第1の電子文書および上記第2の電子文書では、各項目を識別するための見出しが各項目に付されているとともに、各項目が階層付けされており、
上記任意の項目に付された上記見出しと、上記対応する項目に付された上記見出しとが同一であり、上記任意の項目の階層と、上記対応する項目の階層とが同一であることを特徴とする請求項1に記載の電子文書比較装置。
【請求項4】
上記出力手段は、上記任意の項目に付された上記見出しを、上記任意の項目および上記対応する項目に関連づけて出力することを特徴とする請求項3に記載の電子文書比較装置。
【請求項5】
上記第1の電子文書および上記第2の電子文書が、有価証券届出書、有価証券報告書、および半期報告書からなる群より選ばれる何れかの文書であり、
上記出力手段は、該文書の訂正届出書または訂正報告書の、少なくとも一部を出力するものであることを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載の電子文書比較装置。
【請求項6】
項目分けされた第1の電子文書と、項目分けされた第2の電子文書とを比較して、その結果を出力する電子文書比較方法であって、
上記第1の電子文書における任意の項目と、上記第2の電子文書における上記任意の項目に対応する項目とを比較して同一か否かを判定する判定工程と、
上記判定工程において同一でないと判定したとき、上記任意の項目と上記対応する項目とを並べて出力する出力工程と、を包含することを特徴とする電子文書比較方法。
【請求項7】
コンピュータを請求項1から5までの何れか1項に記載の電子文書比較装置として動作させるためのプログラムであって、上記コンピュータを上記電子文書比較装置の各手段として機能させるプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムが記録されているコンピュータ読み取り可能な記録媒体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−118616(P2012−118616A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265518(P2010−265518)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(597095599)株式会社プロネクサス (8)
【Fターム(参考)】