説明

電子時計および通信システム

【課題】 無線通信手段を備えた指針式の電子時計、ならびに、この電子時計と携帯電話などの電子機器とからなる通信システムにおいて、電子時計の運針を妨げることなく安定的なデータ通信を行えるようにする。
【解決手段】 電子時計に通信タイミング制御手段を設け、無線通信手段による通信間隔と運針周期とを同一周期に設定し、無線通信手段による通信タイミング(e2〜t2)と、指針の駆動タイミング(e1〜l1,s1〜u1)とが重ならないように制御する。また、早送り運針(m1〜q1)など負荷のかかる処理が行われる場合には、携帯電話に通信間隔変更情報を送信して通信間隔を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線通信手段を備えた指針式の電子時計、および、指針式の電子時計と無線通信を行う電子機器からなる通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、近距離無線通信(例えばブルートゥース(Bluetooth;登録商標))を用いて、携帯電話などの電子機器と腕時計との間でデータ通信を行う通信システムが提案されている(例えば、特許文献1,2)。このようなデータ通信により、例えば特許文献1の技術では、携帯電話の受信情報を腕時計に送って腕時計の表示部に出力したり、腕時計から指令を送って携帯電話の簡単な操作を行ったりすることを可能としたり、特許文献2の技術では、腕時計にマイクやイヤホン部を設けて腕時計を介して携帯電話の着信相手と通話を行うことを可能とするなど、様々な機能が実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−152327号公報
【特許文献2】特開2002−223475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、指針式の電子時計に、上記のようなデータ通信の機能を付加する場合、指針を電気的に駆動する運針タイミングと、無線通信の通信タイミングとが重なった場合に、一次的に負荷が過大な状態となって、小型電池を電力源とする場合などに動作電圧が不安定になるといった課題がある。
【0005】
また、運針タイミングと通信タイミングとが重なった場合に、指針を回転駆動するモータから電磁ノイズや電源線を介した電気ノイズが発生して、これらのノイズが無線通信の妨害になるという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、無線通信手段を備えた指針式の電子時計、並びに、このような電子時計と通信相手の電子機器とからなる通信システムにおいて、電子時計の運針を妨げることなく安定的なデータ通信を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
情報を指し示して表示する指針と、前記指針を電気的に駆動する駆動手段とを備えた電子時計において、
間欠的に無線によるデータ通信を行う無線通信手段と、
前記無線通信手段の通信タイミングを制御する通信タイミング制御手段と、
を備え、
前記通信タイミング制御手段は、
前記指針の駆動タイミングと前記無線通信手段の通信タイミングとが重ならないように当該通信タイミングを制御することを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電子時計において、
前記データ通信の通信タイミングの時間間隔を表わした通信間隔情報を通信相手に送信する通信間隔送信手段を有し、
前記通信タイミング制御手段は、
前記指針の駆動タイミングと重ならないタイミングに前記通信間隔情報を通信相手に送信することで、その後の通信タイミングが前記指針の駆動タイミングと重ならないように制御することを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の電子時計において、
前記指針の駆動タイミングは第1周期で発生され、
前記通信間隔情報により表わされる通信タイミングの時間間隔は前記第1周期と同値にされていることを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の電子時計において、
前記無線通信手段は、電波の受信と送信の動作を行う無線処理部の電源をオン・オフすることが可能に構成され、
前記通信タイミングの期間に前記無線処理部の電源をオンし、前記通信タイミングの期間を外れた期間に前記無線処理部の電源をオフする電源制御手段を備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項2記載の電子時計において、
電気的な負荷のかかる駆動処理を行う駆動処理手段を備え、
前記通信タイミング制御手段は、
前記駆動処理手段による連続的な駆動処理が実行される前に、この連続的な駆動処理の実行期間と前記通信タイミングとが重ならないように通信タイミングの時間間隔を変更した通信間隔情報を前記通信間隔送信手段により送信させ、
前記連続的な駆動処理が終了したら、前記通信間隔送信手段により、前記通信タイミングの時間間隔を元に戻した通信間隔情報を前記通信間隔送信手段により送信させる
ことを特徴としている。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の電子時計において、
前記駆動処理手段による連続的な駆動処理とは、前記無線通信手段のデータ受信に関わる情報を前記指針により表示させるため前記指針の早送り駆動であることを特徴としている。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の電子時計は、
腕装着型の装置であることを特徴としている。
【0014】
請求項8記載の発明は、
間欠的に無線によるデータ通信を行う無線通信手段を備えた電子機器と、
請求項1〜6の何れか一項に記載の電子時計とを備え、
前記電子時計の前記通信タイミング制御手段の制御に基づく通信タイミングで、前記電子時計の無線通信手段と前記電子機器の無線通信手段とを介してデータ通信が行われることを特徴とする通信システムである。
【0015】
請求項9は、請求項8記載の通信システムであって、
前記電子機器は携帯電話機であり、
前記電子時計は腕装着型の電子時計であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に従うと、電子時計の運針タイミングとデータ通信の通信タイミングとが重ならないように制御される。従って、電子時計の運針を妨げることなく、安定的なデータ通信を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の電子時計の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の通信システムを構成する携帯電話の構成を示すブロック図である。
【図3】電子時計の運針と通信のタイミングおよび電子時計と携帯電話との通信動作を表わしたシーケンス図である。
【図4】電子時計のCPUにより実行される制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】図4のステップX4で実行されるデータ送受信処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態の電子時計の構成を示すブロック図、図2は、本発明の実施形態の通信システムを構成する携帯電話の構成を示すブロック図である。
【0020】
この実施形態の通信システムは、図1の電子時計40と、図2の携帯電話10とから構成される。
【0021】
電子時計40は、指針62を電気的に回転させて時刻や種々の情報を表示するもので、特に制限されないが腕装着型のものである。この電子時計40は、図1に示すように、機器の全体的な制御を行うCPU(中央演算処理装置)41(電源制御手段および駆動処理手段)と、CPU41が実行する制御プログラムや制御データを格納したROM(Read Only Memory)42と、CPU41に作業用のメモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)43と、複数の操作ボタンを有し外部から指令を入力する操作用のスイッチ44と、現在時刻を計時する計時回路45と、アンテナAN41を介して短距離無線通信を行うブルートゥースモジュール48(無線通信手段および通信間隔送信手段)と、ブルートゥースモジュール48を介して送受信されるデータに対してシリアル/パラレル変換等のデータ処理を行うUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)49と、文字板上で回転する上記の指針62と、輪列機構を介して指針62を回転駆動するステッピングモータ61と、ステッピングモータ61に駆動電流を出力する駆動手段としての駆動回路60と、振動によりユーザに報知を行う振動モータ50およびそのドライバ51と、発光して文字板上を照らす発光ダイオード52およびそのドライバ53と、ブザー音によりアラーム鳴動を行うピエゾ素子54およびそのドライバ55と、CPU41と各部との間で信号をやり取りするバス56等を備えている。
【0022】
上記のブルートゥースモジュール48は、電波信号の受信と送信ならびに送受信信号の復調および変調の処理を行うRF回路48a(無線処理部)と、ベースバンド信号の信号処理を行うベースバンド部48bとを備えている。また、このブルートゥースモジュール48には、例えば、RF回路48aの電源をオン・オフ制御することが可能なステータスレジスタが設けられ、CPU41からRF電源制御信号を出力してステータスレジスタの値を書き換えることで、RF回路48aの電源をオン・オフ制御することが可能になっている。
【0023】
携帯電話10は、図2に示すように、機器の全体的な制御を行うCPU11と、CPU11が実行する制御プログラムや制御データを格納した不揮発性半導体メモリなどのROM12と、CPU41に作業用のメモリ空間を提供するRAM13と、複数の操作キーを有する操作部14と、種々の機能表示を行う液晶表示部15およびその表示ドライバ16と、通話時の音声入出力を行うスピーカ17およびマイク18と、入出力される音声信号とデジタルデータとの相互変換を行うコーデック19と、アンテナAN11を介して基地局との間で無線信号の送受信を行うRF送受信回路20と、コーデック19から入出力される通話音声のデジタルデータや種々の送受信データの変調および復調処理を行う通信回路21と、アンテナAN12を介して短距離無線通信を行うブルートゥースモジュール22と、ブルートゥースモジュール22を介して送受信されるデータに対してシリアル/パラレル変換等のデータ処理を行うUART23と、振動により着信を知らせる振動モータ24およびそのドライバ25と、CPU11と各部との間で信号をやりとりするバス28等を備えている。
【0024】
電子時計40と携帯電話10は、例えばRAM43,13またはROM42,12などにペアリングのための鍵データが登録され、この鍵データを用いて互いにペアリングが行われて通信リンクが確立することで、ブルートゥースモジュール48,22を介した相互のデータ通信が可能とされる。
【0025】
また、ブルートゥースモジュール48,22を介したデータ通信では、一方から通信間隔情報を送信して他方がこれを受け入れることで、データ通信に必要な無線信号の送受信間隔を制御することが可能になっている。
【0026】
携帯電話10のROM12には、携帯電話10の音声着信やメール着信があった場合に、これらの情報や、未確認の音声着信数、未確認のメール着信数などの情報をブルートゥースモジュール48,22を介したデータ通信により電子時計40に送信するデータ送信処理プログラムが格納され、この処理プログラムがCPU11により実行されるようになっている。
【0027】
また、電子時計40のROM42には、携帯電話10から着信情報や未確認の着信数の情報を受信した場合に、指針62を駆動してこれらの情報を表示する通知運針処理(例えば、秒針を着信マークの位置まで早送りし、未確認の着信数を示す位置まで早送りし、その後、時刻表示に戻るなど)や、振動モータ50、発光ダイオード52、ピエゾ素子54を駆動して着信を報知したりする報知処理の処理プログラムが格納され、この処理プログラムがCPU41により実行されるようになっている。
【0028】
次に、電子時計40と携帯電話10とのブルートゥースモジュール48,22を介したデータ通信の処理について説明する。
【0029】
図3には、電子時計の運針と通信のタイミングおよび電子時計と携帯電話との通信動作を表わしたシーケンス図を示す。同図(a)はステッピングモータ61が駆動されて指針62が回転する期間を“ON”、ステッピングモータ61が停止している期間を“OFF”で表わしたもの、(b)はブルートゥースモジュール48のRF回路48aの電源がオンされて無線信号の送受信を行う期間を“ON”、この電源がオフされて無線信号の送受信が行われない期間を“OFF”で表わしたものである。(c)は電子時計40と携帯電話10との通信シーケンスを表わしたものである。
【0030】
図3(a)のタイミングe1〜l1,s1〜u1に示されるように、電子時計40における通常の運針動作は時刻の表示を行うために所定の周期(例えば1秒周期、第1周期)で実行される。また、図3(a)のタイミングm1〜q1に示すように、電子時計40においては、例えば携帯電話40から着信情報等が送信された場合に、それを通知するために指針62の早送り処理が行われたりする。
【0031】
図3(b)の期間e2〜t2に示されるように、電子時計40と携帯電話10との間で行われるデータ通信のタイミングは、上記の運針タイミングe1〜u1と重ならないように制御される。
【0032】
具体的には、図3(c)に示すように、電子時計40と携帯電話10との間で通信リンクを確立する際、電子時計40のCPU41は、運針タイミングe1,f1と重ならないタイミングに所定の通信間隔情報を携帯電話10へ送信する。通信間隔情報は、通常の運針タイミングe1〜l1と通信タイミングとが重ならないように、例えば、通常の運針タイミングe1〜l1と同一周期、或いは、2以上の整数倍の周期を通信間隔として設定する情報である。図3の例では、通信間隔情報として、通常の運針タイミングe1〜l1の周期(1秒)と同一周期の情報が送信されている。
【0033】
携帯電話10は、電子時計40からの通信間隔情報を受信すると、CPU11がブルートゥースモジュール22の通信間隔を当該通信間隔情報が示す間隔に設定するとともに、正常に受信および設定を行ったこと示す返信を行う。そして、電子時計40はこの応答を受信して携帯電話10側の通信間隔の設定がなされたことを確認する。また、自らブルートゥースモジュール48に当該通信間隔情報が示す間隔の設定を行う。
【0034】
通信間隔が設定された後は、改めてこの設定が変更されるか、或いは、通信リンクが切断されるまで、同じ通信間隔で無線信号の送受信が行われる。従って、この通信間隔の設定により、電子時計40の運針タイミングe1〜l1と、通信期間e2〜l2とが重ならない状態となる。
【0035】
なお、通信間隔の長さは1秒に設定することに限られず、2秒、5秒、10秒など、1秒の整数倍に設定しても、運針タイミングと通信タイミングとを重ならないようにすることができるが、通信間隔が長くなると携帯電話10から電子時計40への情報の通知が遅延したり、送信できるデータ量が減少したりするので、適宜な長さに設定する必要がある。
【0036】
続く通信期間f2〜l2においては、携帯電話10から電子時計40へデータやコマンドが送信される。送信データが何もない場合には、通信リンクが維持されていることを確認するためのコマンドが送信されて(通信期間f2〜g2)、電子時計40は、同一の通信期間に携帯電話10へ応答データを送信する。それにより、通信リンクが維持されていることが携帯電話10により確認される。
【0037】
例えば着信等があって、携帯電話10から電子時計40へ通知する情報が生じた場合には、先ず、携帯電話10から電子時計40に次回の通信タイミング以降にデータを送信することを予告する情報が送られる(通信期間h2)。電子時計40は、このデータ送信の予告情報を受信すると、データ受信の準備を行うとともに、受信準備が完了したことを携帯電話10へ通知する。
【0038】
そして、続く通信期間i2〜k2において、携帯電話10から電子時計40へデータ送信が行われる。データサイズが大きい場合には、複数回に分けられて電子時計40へデータ送信が行われる。
【0039】
データ送信が完了して電子時計40により正常に受信されると、電子時計40は、次の通信期間l2において受信完了の通知を携帯電話10に送信する。また、電子時計40は、受信データの内容に基づき通知運針処理を実行する場合に、この通知運針処理の実行に要する時間を算出し、この通知運針処理の期間に通信タイミングが重ならないように、続く通信間隔を変更するためのコマンドを携帯電話10へ送信する。例えば、通知運針処理に2秒を要する場合には、3秒の通信間隔情報を送信して通信間隔を変更する。通信間隔の変更設定は、最初の通信期間e2のときの通信間隔設定と同様に電子時計40と携帯電話10の双方で実行される。
【0040】
通信間隔設定の変更を行って当該通信期間l2が経過したら、次いで、電子時計40は、通知運針処理を開始して決定された運針パターンで指針62を駆動させる(タイミングm1〜q1)。この運針パターンは、予め計算された運針タイミング通りに行われ、通信間隔を変更したことで、この通知運針処理の実行中に携帯電話10との通信は行われない。
【0041】
通知運針処理が終了すると通常の運針処理に戻るので、次の通信期間r2になると、再び、電子時計40から携帯電話10へ通信間隔を元の設定に戻すためのコマンドが送信される。そして、これにより電子時計40と携帯電話10の双方で同様の通信間隔設定が行われて、元の通信間隔に戻される。通信間隔が戻されると、続いて、同様に運針タイミングs1〜u1と重ならない通信期間s2,t2…に、携帯電話10と電子時計40との間で通信が行われることになる。
【0042】
なお、上記の例では、通信期間とそれ以外の期間とで電子時計40のブルートゥースモジュール48のRF回路48aの電源をオン・オフする制御を行うように説明したが、RF回路48aの電源はオンのままとして、通信期間にのみ無線電波の送受信処理を実行するように制御しても良い。
【0043】
次に、上記の通信処理を実現する電子時計40のCPU41により実行される制御処理の手順についてフローチャートに従って説明する。
【0044】
図4は、電子時計40のCPU41により実行される制御処理の手順を示すフローチャート、図5は、図4のステップX4で実行されるデータ送受信処理の詳細を示すフローチャートである。
【0045】
電子時計40のブルートゥース通信機能がオンされると、先ず、CPU41は、RF回路48aの電源をオンして携帯電話10に接続のリクエストを行い、携帯電話10との通信リンクを確立させる(ステップX1)。そして、通信リンクの確立とほぼ同時に通信間隔情報を送信して通信間隔を設定する(ステップX2)。この通信リンクを確立する処理と、通信間隔設定の処理は、運針タイミングとずれたタイミングで実行する。これらの設定により、続く通信タイミングと運針タイミングとは重ならない設定となる。通信間隔設定の処理が完了すると、CPU41は、RF回路48aの電源をオフして、設定された通信間隔の期間のみRF回路48aの電源がオンとなるように制御する。
【0046】
次いで、ステップX3へ移行すると、CPU41は、計時回路45の計時データに基づいて通信タイミングであるか否かを判別する。そして、通信タイミングと判別されれば、ステップX4へ移行して、後述するようにデータの送受信処理を行い、その後、ステップX3に戻る。一方、通信タイミングでなければ、ステップX5に移行して、運針タイミングかどうかを判別する。その結果、運針タイミングであれば、CPU41は駆動回路60に信号を送って指針62を駆動させる(ステップX6)。一方、ステップX5で運針タイミングではないと判別されたら、そのままステップX3へと戻る。そして、ステップX3〜X6のループ処理を繰り返す。
【0047】
なお、ステップX5において運針タイミングと判別されるのは、通常の時刻表示の処理中は計時回路45の1秒桁の値が更新されるタイミングであるが、指針62を早送りして別の情報表示を行う際などは、早送り用に動作設定されたタイミングで運針タイミングと判別される。
【0048】
ステップX4のデータ送受信処理に移行すると、図5に示すように、先ず、受信データがあってデータ受信を行う状況なのか(ステップX11)、送信データがあってデータ送信を行う状況なのか(ステップX15)の判別を行う。その結果、通知情報のデータ受信完了の情報を送信する通信期間(l2)や、通信間隔変更の情報を送信する通信期間(l2,r2)には、送信データが有りと判別されてステップX15に移行する。一方、その他の通信期間、すなわち、通信リンクの確認やデータ送信予告が行われる通信期間(f2〜h2,s2,t2)や、携帯電話10から通知情報のデータ送信が行われる通信期間(i2〜k2)では、受信データありと判別されてステップX12に移行する。
【0049】
その結果、ステップX12に移行したら、CPU41は、先ず、ブルートゥースモジュール48により携帯電話10からのデータ受信を行わせて、必要があれば応答送信を行う。また、着信情報等の通知情報が分割されて送信されてきた場合にはこの分割データを受信して、すべての分割データが受信されるまで受信データを保持しておく。
【0050】
次いで、ステップX13において、着信情報等の通知情報が受信されたか判別し、“NO”と判別されたら、そのままステップX17に移行するが、“YES”と判別されたら通知運針処理を行うためにステップX14に移行する。ステップX14に移行すると、CPU41は、その後に行う通知運針処理の運針パターンや運針タイミングを設定するとともに、この通知運針処理の実行時間を算出して、続く通信タイミングが通知運針処理中に重ならないように、通信間隔変更情報を携帯電話10への送信データとして設定する。さらに、通知運針処理後に通信間隔を元に戻すために、通信間隔を元に戻す通信間隔変更情報を次の次の通信タイミングに処理される携帯電話10への送信データとして設定する。
【0051】
このステップX14の通知運針処理用の運針タイミングの設定により、図4のステップX5,X6による運針タイミングの判別と運針処理とが、適宜なタイミングで行われて、早送りによる通知運針処理が実行されることになる。また、このステップX14の通信間隔変更情報の設定により、次の通信タイミングや次の次の通信タイミングにおけるデータ送受信処理において、通信間隔変更情報の送信処理が行われて、電子時計40と携帯電話10の双方で通信間隔が変更設定されることになる。上記のステップX2,X14の処理などによって、通信タイミング制御手段が構成される。
【0052】
一方、ステップX15の判別処理で送信データがあると判別されると、ステップX16でこの送信データを携帯電話10へ送信し、必要があれば携帯電話10からの応答を受信する。そして、ステップX17に移行する。
【0053】
ステップX17,X18の処理は、データ受信またはデータ送信の処理が長引いて、次の運針タイミングを経過してしまった場合に、運針の処理を補填するためのものである。すなわち、ステップX17で次に設定されている運針タイミングが過ぎていないか判別し、過ぎていればステップX18で運針処理を行う。そして、このデータ送受信処理のサブルーチンを終了して図3のステップX3へ戻る。
【0054】
以上のように、この実施形態の電子時計および通信システムによれば、ブルートゥース通信機能を備え、また、このブルートゥース通信機能を用いた携帯電話10との通信期間は、指針62の駆動タイミングと重ならないように制御されているので、運針を妨げずに電子時計40と携帯電話10との間でデータ通信を行うことができる。
【0055】
また、指針62の駆動タイミングと重ならないタイミングで携帯電話10との通信の接続リンクを確立した後、携帯電話10へ通信間隔情報を送信して、その後も指針62の駆動タイミングと通信タイミングとが重ならない通信間隔を設定しておくことにより、運針の際のステッピングモータ61によるノイズの影響を受けずに携帯電話10との安定的なデータ通信を行うことができる。
【0056】
また、通常の時刻表示のための指針62の駆動と、電子時計40および携帯電話10のブルートゥース通信とを何れも1秒周期の異なるタイミングで行うことにより、情報の通知の遅延を抑えることができる。また、送受信するデータ量も確保することができる。
【0057】
また、携帯電話10とのデータ通信が行われている間にのみRF回路48aの電源をオンし、運針が行われていてデータ通信が行われない期間にはRF回路48aの電源を一時的にオフさせるので、電子時計40の消費電力を削減することができる。
【0058】
また、指針62の駆動の際にRF回路48aの電源をオフすることにより小型電池などに過大な負荷がかかることを防ぐので、安定的に運針とデータ通信の双方を行うことができる。
【0059】
また、電子時計40は、通知運針処理に要する時間を予め算出し、通信タイミングを移動させるための通信間隔変更情報を携帯電話10に送信して、携帯電話10と電子時計40の双方で通信間隔変更の設定を行うことによって、データ通信のタイミングを時刻表示のための通常の運針だけではなく通知運針処理における早送り運針のタイミングとも重ならないようにすることができる。
【0060】
また、上記の通信間隔設定の変更によって、接続リンクを切断せずにデータ通信を中断する期間が必要最小限に抑えられて、効率的にデータ通信を行うことができる。
【0061】
また、電子時計40が腕装着型のものであることにより、携帯電話10に常に注意を払うことなく携帯電話10への音声着信やメール着信およびその着信数などの情報を指針62の動作から容易に確認することができる。
【0062】
さらに、電池への負荷を抑えながら運針を妨げることなくデータ通信を行えるので、小型電池を電力源とする腕装着型の指針式電子時計40に特に有益な構成となっている。
【0063】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記の実施形態では無線通信手段としてブルートゥースのモジュールを例示したが、例えば、Wibree(登録商標)やZigBee(登録商標)などの各種の省電力短距離無線通信を適用することもできるし、また、独自規格の短距離無線通信や、短距離無線通信以外の他の無線通信を適用することも出来る。
【0064】
また、上記実施形態では、電子時計40を腕装着型のタイプとして説明したが、懐中時計型の電子時計など、種々の形態の電子時計に同様に適用することができる。また、通信相手の電子機器として携帯電話10を例示したが、例えば、PDAやGPS受信器などその他の電子機器を適用することもできる。
【0065】
また、上記の実施形態では、指針62を早送り運針する際に通信間隔変更情報を送信して早送り運針の処理中に通信タイミングが重ならないようにした例を示したが、例えば、振動モータ50、発光ダイオード52、ピエゾ素子54を駆動する処理を実行する際に、通信間隔変更情報を送信して、これらの駆動処理中に通信タイミングが重ならないように制御することもできる。その他、実施形態で示した細部等は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 携帯電話
22 ブルートゥースモジュール
40 電子時計
41 CPU
44 スイッチ
45 計時回路
48 ブルートゥースモジュール
48a RF回路
50 振動モータ
52 発光ダイオード
54 ピエゾ素子
60 駆動回路
61 ステッピングモータ
62 指針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を指し示して表示する指針と、前記指針を電気的に駆動する駆動手段とを備えた電子時計において、
間欠的に無線によるデータ通信を行う無線通信手段と、
前記無線通信手段の通信タイミングを制御する通信タイミング制御手段と、
を備え、
前記通信タイミング制御手段は、
前記指針の駆動タイミングと前記無線通信手段の通信タイミングとが重ならないように当該通信タイミングを制御することを特徴とする電子時計。
【請求項2】
前記データ通信の通信タイミングの時間間隔を表わした通信間隔情報を通信相手に送信する通信間隔送信手段を有し、
前記通信タイミング制御手段は、
前記指針の駆動タイミングと重ならないタイミングに前記通信間隔情報を通信相手に送信することで、その後の通信タイミングが前記指針の駆動タイミングと重ならないように制御することを特徴とする請求項1記載の電子時計。
【請求項3】
前記指針の駆動タイミングは第1周期で発生され、
前記通信間隔情報により表わされる通信タイミングの時間間隔は前記第1周期と同値にされていることを特徴とする請求項2記載の電子時計。
【請求項4】
前記無線通信手段は、電波の受信と送信の動作を行う無線処理部の電源をオン・オフすることが可能に構成され、
前記通信タイミングの期間に前記無線処理部の電源をオンし、前記通信タイミングの期間を外れた期間に前記無線処理部の電源をオフする電源制御手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の電子時計。
【請求項5】
電気的な負荷のかかる駆動処理を行う駆動処理手段を備え、
前記通信タイミング制御手段は、
前記駆動処理手段による連続的な駆動処理が実行される前に、この連続的な駆動処理の実行期間と前記通信タイミングとが重ならないように通信タイミングの時間間隔を変更した通信間隔情報を前記通信間隔送信手段により送信させ、
前記連続的な駆動処理が終了したら、前記通信間隔送信手段により、前記通信タイミングの時間間隔を元に戻した通信間隔情報を前記通信間隔送信手段により送信させる
ことを特徴とする請求項2記載の電子時計。
【請求項6】
前記駆動処理手段による連続的な駆動処理とは、前記無線通信手段のデータ受信に関わる情報を前記指針により表示させるため前記指針の早送り駆動であることを特徴とする請求項5記載の電子時計。
【請求項7】
腕装着型の装置であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の電子時計。
【請求項8】
間欠的に無線によるデータ通信を行う無線通信手段を備えた電子機器と、
請求項1〜6の何れか一項に記載の電子時計とを備え、
前記電子時計の前記通信タイミング制御手段の制御に基づく通信タイミングで、前記電子時計の無線通信手段と前記電子機器の無線通信手段とを介してデータ通信が行われることを特徴とする通信システム。
【請求項9】
前記電子機器は携帯電話機であり、
前記電子時計は腕装着型の電子時計であることを特徴とする請求項8記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−33430(P2011−33430A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178681(P2009−178681)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】