説明

電子時計

【課題】 使用者が見やすく、飽きないアナログ時計表示で、感覚的に時刻を知らせる電子時計を提供する。
【解決手段】 時刻を計時する計時手段13と、前記時刻を表示する表示手段10と、前記表示手段を制御する制御手段14と、を含み、前記制御手段14は、前記計時手段13から前記時刻を表す時刻信号を受け取り、前記時刻信号に基づいて、前記時刻を表すアナログ時計の一部であって、少なくとも時針を含む所定の大きさの領域である表示領域を、前記表示手段10に表示させる。前記制御手段14は、前記表示領域に、前記時刻を表すアナログ時計の分針の一部を含める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子時計等に関する。
【背景技術】
【0002】
電子時計の中には、例えばEPD(Electro Phoretic Display、電気泳動表示装置)などのディスプレイを備えるディスプレイ型電子時計がある。ディスプレイ型電子時計では、様々な文字、数字を表現でき、様々な背景を表示させることもできる。
【0003】
ここで、時計の種類として、時刻を数字で表示するデジタル時計と、時刻を針で示すアナログ時計がある。デジタル時計は時刻を直ちに知ることができる。一方、アナログ時計は、経過時間がわかりやすいなど、時間量を感覚的にとらえることができる。
【0004】
例えば、特許文献1の発明では、開始時刻、終了時刻およびその間の時間をアナログ時計表示によって簡単に認識できるようにしている。
【0005】
ディスプレイ型電子時計でも、使用者の操作、又は設定によって、アナログ時計を表示する機能を有するものがある。使用者は状況に応じて、デジタル時計とアナログ時計とを使い分けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−193759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、電子時計が腕時計、懐中時計である場合、一般にディスプレイのサイズは小さい。そのため、針表示式のアナログ時計を表示すると、例えば針や文字盤に記された数字が見えにくい場合がある。
【0008】
また、比較的ディスプレイのサイズが大きい置時計、掛け時計であるとしても、デザイン性のためにディスプレイの形状が極端に縦長、又は横長である場合がある。そのような場合にも、アナログ時計の表示は小さくなり、同様の問題が生じる。
【0009】
そして、アナログ時計表示において常に同じ文字盤が表示されているような場合、様々な表示が可能なディスプレイ型電子時計の機能が十分に発揮されておらず、また、使用者も表示画面に飽きる可能性があった。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、使用者が見やすく、飽きないアナログ時計表示で、感覚的に時刻を知らせる電子時計を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、電子時計であって、時刻を計時する計時手段と、前記時刻を表示する表示手段と、前記表示手段を制御する制御手段と、を含み、前記制御手段は、前記計時手段から前記時刻を表す時刻信号を受け取り、前記時刻信号に基づいて、前記時刻を表すアナログ時計の一部であって、少なくとも時針を含む所定の大きさの領域である表示領域を、前記表示手段に表示させる。
【0012】
本発明の電子時計によれば、時刻を表すアナログ時計の一部であって、少なくとも時針を含む所定の大きさの領域である表示領域を、制御手段が表示手段に表示させる。アナログ時計の全体を表示しないことで、数字や針が見えにくい問題を回避できる。
【0013】
このとき、アナログ時計の一部である表示領域が拡大表示されるので、使用者は数字や針を見やすい。そして、時針の動きに伴って、表示領域も変化するので、使用者が表示に飽きることもない。また、表示領域は時針を含む領域であるので、使用者はおおよその時刻を知ることができる。
【0014】
ここで、電子時計は表示手段を含むディスプレイ型電子時計である。表示手段としては例えばEPDが用いられてもよいし、LCD(Liquid Crystal Display、液晶表示装置)であってもよいし、有機ELディスプレイ(Organic Electro-Luminescence Display)やその他の表示手段であってもよい。
【0015】
ここでのアナログ時計とは時刻を針で示す時計であって、表示手段に表示されるものである。具体的には、表示手段に表示されるアナログ時計の画像を指す。よって、物理的にアナログ時計があるわけではなく、制御手段および表示手段の少なくとも一方が生成する。
【0016】
アナログ時計の形状は、円、楕円、多角形に限らず、例えば扇形などであってもよい。アナログ時計の一部である表示領域の形状も、多角形に限るものではなく、表示手段の形状に合わせて例えば楕円といった様々な形をとり得る。
【0017】
なお、時刻とは、現在時刻でもよいし、ワールドタイムなどの場合には使用者が指定した地域の時刻であってもよい。
【0018】
(2)この電子時計において、前記制御手段は、前記時刻を表すアナログ時計の分針の一部を含む前記表示領域を、前記表示手段に表示させてもよい。
【0019】
(3)この電子時計において、前記制御手段は、前記時刻の分桁を表す数字を含む前記表示領域を、前記表示手段に表示させてもよい。
【0020】
これらの発明によれば、分針の情報、または分桁の情報が表示領域に含まれているので、使用者は時針だけに基づくおおよその時刻よりも正確な時刻を知ることが可能になる。
【0021】
表示領域には、アナログ時計の分針の一部が含まれていてもよい。これにより、使用者は分針の指すおおよその時間がわかる。分針の一部とは、例えば分針の根元部分である。
【0022】
表示領域には、分桁を表す数字が含まれていてもよい。これにより、使用者は正確な時刻を知ることが可能になる。
【0023】
(4)この電子時計において、外部からの指示を受け取る入力手段を含み、前記制御手段は、前記入力手段が受け取った前記指示に基づいて、前記表示領域の前記所定の大きさを定めてもよい。
【0024】
本発明によれば、外部からの指示を受け取る入力手段によって、表示領域の所定の大きさが調整される。例えば使用者は、入力手段によって、表示されるアナログ時計の拡大、縮小を行うことができる。そのため、見やすい表示を、使用者が選択することが可能になる。
【0025】
(5)この電子時計において、時間を計るタイマーを含み、前記制御手段は、前記タイマーからの信号に基づいて、所定の時間間隔で、前記時刻を表すアナログ時計の全体を前記表示手段に表示させてもよい。
【0026】
本発明によれば、所定の時間間隔で、アナログ時計の全体が表示される。そのため、使用者は、表示されている画像がアナログ時計の一部であると感覚的に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態における電子時計の表示例を示す図。
【図2】第1実施形態におけるアナログ時計表示を説明するための図。
【図3】第1実施形態における電子時計のブロック図。
【図4】第1実施形態におけるEPDのブロック図。
【図5】第1実施形態における表示部の画素の構成例を示す図。
【図6】図6(A)は電気泳動素子の構成例を示す図。図6(B)〜図6(C)は電気泳動素子の動作の説明図。
【図7】第1実施形態における制御のフローチャート。
【図8】図8(A)〜図8(B)はアナログ時計表示の別の例を示す図。
【図9】図9(A)〜図9(B)は第1実施形態の変形例を説明する図。
【図10】第1実施形態の別の変形例を説明する図。
【図11】図11(A)〜図11(B)は比較例の図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1.第1実施形態
本発明の第1実施形態を図1〜図8(B)を参照して説明する。ここでは、まず図11(A)〜図11(B)を参照して比較例の電子時計の表示における問題を説明してから、本実施形態の電子時計を説明する。
【0029】
1.1.比較例の電子時計の表示の問題
図11(A)は、比較例の電子時計100の正面図である。電子時計100は腕時計であり、小型の表示部103を有している。そして、使用者の設定により、アナログ時計表示を行うことができる(図11(A)右図)。アナログ時計表示では、時間量を感覚的にとらえることができる。
【0030】
しかし、時刻を数字だけで表示するデジタル時計表示(図11(A)左図)とは異なり、針や文字盤等の多くの要素を表示する必要がある。すると、針や文字盤に記された数字が小さく見えにくいという問題が生じる。
【0031】
このことは、図11(B)のような女性用の電子時計100Aで特に問題となる。女性用の腕時計の表示部は、男性用に比べると更に小さい。そのため、針や文字盤に記された数字が見えにくいという問題が顕著であった。また、図11(B)の表示部103Aのように、アナログ時計表示の文字盤の数字が省略されることもあり、時刻を読み取りにくくしていた。
【0032】
以下の本実施形態の電子時計では、使用者が見やすいアナログ時計表示を行い、針や文字盤の数字が見えにくい、又は数字の省略によって時刻を読み取りにくい、といった問題を生じさせない。
【0033】
1.2.本実施形態の電子時計の表示例
図1は、本実施形態の電子時計1の正面図である。電子時計1は、時計ケース2と、時計ケース2に連結された一対のバンド4とを備える。時計ケース2の正面には、EPD(電気泳動表示装置)の表示部3、操作ボタン6、7が設けられている。
【0034】
本実施形態の電子時計1は、表示モードとして、デジタル時計表示(図1左図)とアナログ時計表示(図1右図)を有している。本実施形態では、使用者の設定により、表示モードを切り替え可能であるとする。ここで、操作ボタン6、7が、表示モードの切り替えに使用されてもよい。
【0035】
なお、本実施形態では電子時計1は腕時計であるが、例えば置時計、掛け時計などであってもよい。また、本実施形態では表示モードの切り替えが可能であるが、アナログ時計表示だけが行われてもよい。
【0036】
図1において、左側のデジタル時計表示では現在時刻を数字で表示し、右側のアナログ時計表示では現在時刻を針で示している。ここで、右側のアナログ時計表示では、アナログ時計全体が表示されずに、時針のある一部の領域だけが拡大表示されている。そのため、使用者が見やすく、針や文字盤の数字が小さくて見えにくい、数字の省略によって時刻を読み取りにくい、といった問題を生じない。
【0037】
図2は、本実施形態のアナログ時計表示の詳細を説明するための図である。なお、図1と同じ要素には同じ符号を付しており説明を省略する。
【0038】
図2の上図はアナログ時計5の全体図である。比較例では、アナログ時計の全体を電子時計の小型の表示部に表示するために数字等が見えにくいとの問題を生じていた。本実施形態では、アナログ時計5の一部であって、少なくとも時針8を含む所定の大きさの領域5Aだけを、図2の下図の表示部3に表示させる。そのため、数字等が見えにくいとの問題は解消される。ここで、所定の大きさの領域5Aを以下では表示領域5Aという。
【0039】
本実施形態では、表示領域5Aの大きさは使用者が見やすいように調整される。具体的には、時針8と文字盤の数字とが明確に視認できるように、表示部3の解像度に合わせて調整される。使用者は、表示部3に表示された表示領域5Aからおおよその時刻(2時20分頃)を知ることができる。なお、図2では表示領域5Aに分針9も含まれているが、分針9は必ずしも含まれるわけではない。
【0040】
表示領域5Aの大きさの初期値は、本実施形態では使用者が例えば初期設定画面で設定可能であるとする。設定の際には、操作ボタン6、7が使用されてもよい。
【0041】
本実施形態では、アナログ時計5の一部の領域である表示領域5Aを、表示部3に拡大表示することで使用者に見やすいアナログ時計表示を行う。このとき、時針8の移動に伴って表示領域5Aも変化するので、使用者が表示に飽きることもない。そして、表示領域5Aは、時針8と文字盤の数字とが明確に視認できるように、表示部3の解像度に合わせて調整されるので、使用者はおおよその時刻を知ることができる。このとき、比較例のように文字盤の数字が小さく、時刻を読み取りにくいという問題は生じない。
【0042】
本実施形態の表示部3は、アクティブマトリックス方式のEPDの表示部であり、時刻によって変化する前記のアナログ時計を表示する。以下に、EPDを含めた本実施形態の電子時計の構成ブロック図を示し、EPDの駆動方法等について説明する。
【0043】
1.3.電子時計のブロック図
図3は、本実施形態における電子時計1のブロック図を表す。前記のアナログ時計表示は、例えば図3の構成によって実現可能である。
【0044】
電子時計1は、図3に示すように、発振回路11、分周回路12、計時カウンター13、表示制御回路14、EPD10、スイッチ15、16、時刻修正回路17、タイマー22を含む。なお、図3では電源の記載を省略しているが、電子時計1は1次電池を含んでいてもよいし、発電装置と2次電池を含んでいてもよい。
【0045】
発振回路11は、例えば水晶振動子等の基準発振源を高周波発振させ、基準発振信号を生成する。
【0046】
分周回路12は、発振回路11で生成された基準発振信号を分周して所定の基準信号(例えば、1Hzの信号)を生成する。
【0047】
計時カウンター13は、分周回路12で生成された基準信号をカウントして、例えば現在時刻を計時する。計時カウンター13は電子時計1の計時手段として機能する。計時カウンター13は、例えば現在時刻を表す時刻信号を表示制御回路14に出力する。
【0048】
スイッチ15、16は、外部からの入力手段である操作ボタン6、7(図1参照)を押すことでオン状態となる。スイッチ15、16は、操作ボタン6、7の入力を検出する入力検出手段である。スイッチ15、16は、検出した操作ボタン6、7の入力に応じた信号を、時刻修正回路17および表示制御回路14に出力する。
【0049】
時刻修正回路17は、各スイッチ15、16からの信号に基づいて時刻修正信号を生成し、計時カウンター13に出力する。計時カウンター13は、時刻修正信号に従って時刻信号の修正を行う。
【0050】
タイマー22は、分周回路12から基準信号を受け取る。そして、表示制御回路14からの指示に従って、所定の時間を計る汎用タイマーとして機能する。
【0051】
表示制御回路14は、計時カウンター13からの時刻信号に基づいて、EPD10に時刻表示を行わせる。このとき、使用者の設定により、デジタル時計表示(図1左図参照)又はアナログ時計表示(図1右図参照)を行う。表示制御回路14は、電子時計1の表示を制御する制御手段として機能する。
【0052】
表示制御回路14は、アナログ時計表示を行う場合に、時刻信号に基づいて表示領域5A(図2参照)を計算する。このとき、表示制御回路14が表示する画像データを生成してもよいが、本実施形態では、表示制御回路14は計算結果から制御信号18を生成してEPD10に出力する。そして、EPD10が記憶部から画像信号を読み込み、表示部に表示を行う。
【0053】
本実施形態の電子時計1は表示装置としてEPD10を含む。EPD10は、視野角が広く、コントラストが高い表示を行う。EPD10は、電子時計1の表示手段として機能する。なお、EPD10の表示部が図1の表示部3に対応する。
【0054】
1.4.EPD
1.4.1.EPDの構成
図4は、本実施形態のアクティブマトリックス方式のEPD(電気泳動表示装置)の構成を示す図である。なお、EPDに代えて例えばLCD(液晶表示装置)、有機ELディスプレイ等が使用されてもよい。
【0055】
EPD10は、EPD制御部60、記憶部160、表示部3を含む。EPD制御部60は、表示部3を制御し、走査線駆動回路61、データ線駆動回路62、コントローラー63、共通電源変調回路64を含む。本実施形態では、EPD制御部60が表示制御回路14(図3参照)からの制御信号18に基づいて表示部3を制御するが、EPD制御部60の機能の一部又は全てが表示制御回路14に含まれていてもよい。
【0056】
走査線駆動回路61、データ線駆動回路62、共通電源変調回路64は、それぞれコントローラー63と接続されている。コントローラー63は、記憶部160から読み出される画像信号等や制御信号18に基づいて、これらを総合的に制御する。なお、コントローラー63は、記憶部160を含んでいてもよい。
【0057】
記憶部160は、SRAM、DRAM、その他のメモリーであってもよく、少なくとも表示部3に表示させる画像のデータ(画像信号)を記憶している。また、記憶部160には、コントローラー63によって制御に必要な情報が記憶されてもよい。
【0058】
表示部3には、走査線駆動回路61から延びる複数の走査線66と、データ線駆動回路62から延びる複数のデータ線68とが形成されており、これらの交差位置に対応して複数の画素40が設けられている。
【0059】
走査線駆動回路61は、m本の走査線66(Y、Y、…、Y)により各画素40に接続されている。走査線駆動回路61は、コントローラー63の制御に従って1行目からm行目までの走査線66を順次選択することで、画素40に設けられた駆動用TFT48(図5参照)のオンタイミングを規定する選択信号を供給する。
【0060】
データ線駆動回路62は、n本のデータ線68(X、X、…、X)により各画素40に接続されている。データ線駆動回路62は、コントローラー63の制御に従って、画素40のそれぞれに対応する1ビットの画像データを規定する画像信号を画素40に供給する。なお、本実施形態では、画素データ「0」を規定する場合には、ローレベルの画像信号を画素40に供給し、画像データ「1」を規定する場合には、ハイレベルの画像信号を画素40に供給するものとする。
【0061】
表示部3には、また、共通電源変調回路64から延びる低電位電源線49(Vss)、高電位電源線50(Vdd)、共通電極配線55(Vcom)、第1のパルス信号線91(S)、第2のパルス信号線92(S)が設けられており、それぞれの配線は画素40と接続されている。共通電源変調回路64は、コントローラー63の制御に従って上記配線のそれぞれに供給する各種信号を生成する一方、これら各配線の電気的な接続及び切断(ハイインピーダンス化、Hi−Z)を行う。
【0062】
1.4.2.画素部分の回路構成
図5は、図4の画素40の回路構成図である。なお、図4と同じ配線には同じ番号を付しており、説明は省略する。また、全画素に共通の共通電極配線55については記載を省略している。
【0063】
画素40には、駆動用TFT(Thin Film Transistor)48と、ラッチ回路70と、スイッチ回路80が設けられている。画素40は、ラッチ回路70により画像信号を電位として保持するSRAM(Static Random Access Memory)方式の構成をとる。
【0064】
駆動用TFT48は、N−MOSトランジスタからなる画素スイッチング素子である。駆動用TFT48のゲート端子は走査線66に接続され、ソース端子はデータ線68に接続され、ドレイン端子はラッチ回路70のデータ入力端子に接続されている。ラッチ回路70は転送インバーター70tと帰還インバーター70fとを備えている。インバーター70t、70fには、低電位電源線49(Vss)と高電位電源線50(Vdd)から電源電圧が供給される。
【0065】
スイッチ回路80は、トランスミッションゲートTG1、TG2からなり、ラッチ回路70に記憶された画素データのレベルに応じて、画素電極35(図6(B)、図6(C)参照)に信号を出力する。なお、Vaは、1つの画素40の画素電極へ供給される電位(信号)を意味する。
【0066】
ラッチ回路70に画像データ「1」(ハイレベルの画像信号)が記憶されて、トランスミッションゲートTG1がオン状態となると、スイッチ回路80はVaとして信号Sを供給する。一方、ラッチ回路70に画像データ「0」(ローレベルの画像信号)が記憶されて、トランスミッションゲートTG2がオン状態となると、スイッチ回路80はVaとして信号Sを供給する。このような回路構成により、EPD制御部60はそれぞれの画素40の画素電極に対して供給する電位(信号)を制御することが可能である。
【0067】
1.4.3.表示方式
本実施形態のEPD10は、二粒子系マイクロカプセル型の電気泳動方式であるとする。分散液は無色透明、電気泳動粒子は白色又は黒色のものであるとすると、白色又は黒色の2色を基本色として少なくとも2色を表示できる。ここでは、EPD10は、基本色として黒色と白色とを表示可能であるとして説明する。
【0068】
図6(A)は、本実施形態の電気泳動素子132の構成を示す図である。電気泳動素子132は素子基板130と対向基板131(図6(B)、図6(C)参照)との間に挟まれている。電気泳動素子132は、複数のマイクロカプセル120を配列して構成される。マイクロカプセル120は、例えば無色透明な分散液と、複数の白色粒子(電気泳動粒子)127と、複数の黒色粒子(電気泳動粒子)126とを封入している。本実施形態では、例えば白色粒子127は負に帯電しており、黒色粒子126は正に帯電しているとする。
【0069】
図6(B)は、EPD10の表示部3の部分断面図である。素子基板130と対向基板131は、マイクロカプセル120を配列してなる電気泳動素子132を狭持している。表示部3は、素子基板130の電気泳動素子132側に、複数の画素電極35が形成された駆動電極層350を含む。図6(B)では、画素電極35として画素電極35Aと画素電極35Bが示されている。画素電極35により、画素ごとに電位を供給することが可能である(例えば、Va、Vb)。ここで、画素電極35Aを有する画素を画素40Aとし、画素電極35Bを有する画素を画素40Bとする。画素40A、画素40Bは画素40(図4、図5参照)に対応する2つの画素である。
【0070】
一方、対向基板131は透明基板であり、表示部3において対向基板131側に画像表示がなされる。表示部3は、対向基板131の電気泳動素子132側に、平面形状の共通電極37が形成された共通電極層370を含む。なお、共通電極37は透明電極である。共通電極37は、画素電極35と異なり全画素に共通の電極であり、電位Vcomが供給される。
【0071】
共通電極層370と駆動電極層350との間に設けられた電気泳動表示層360に電気泳動素子132が配置されており、電気泳動表示層360が表示領域となる。共通電極37と画素電極(例えば、35A、35B)との間の電位差に応じて、画素毎に所望の表示色を表示させることができる。
【0072】
図6(B)では、共通電極側電位Vcomが画素40Aの画素電極の電位Vaよりも高電位である。このとき、負に帯電した白色粒子127が共通電極37側に引き寄せられ、正に帯電した黒色粒子126が画素電極35A側に引き寄せられるため、画素40Aは白を表示していると視認される。
【0073】
図6(C)では、共通電極側電位Vcomが画素40Aの画素電極の電位Vaよりも低電位である。このときは逆に、正に帯電した黒色粒子126が共通電極37側に引き寄せられ、負に帯電した白色粒子127が画素電極35A側に引き寄せられるため、画素40Aは黒を表示していると視認される。なお、図6(C)の構成は図6(B)と同様であり説明は省略する。また、図6(B)、図6(C)ではVa、Vb、Vcomを固定された電位として説明したが、実際にはVa、Vb、Vcomは駆動パルス信号に基づく電圧であり、時間とともに電位が変化する。
【0074】
本実施形態の電子時計1では、アクティブマトリックス方式のEPD(電気泳動表示装置)の表示部3を備えることで、画素毎に少なくとも2色の表示ができる。そのため、アナログ時計表示において、時針の移動に伴って変化する表示領域(図2参照)を表示でき、拡大縮小にも対応できる。
【0075】
また、針や文字盤の数字についても装飾を施した表現が可能になり、使用者を飽きさせず、デザイン性も高めることができる。
【0076】
1.5.フローチャート
図7は、本実施形態の電子時計の表示制御回路が行う制御のフローチャートである。
【0077】
表示制御回路は時刻信号に基づいて分桁上げの有無を確認する(S10)。EPDにはメモリー性があるため、表示の更新は分桁上げがある場合にだけ行えばよい。そのため、分桁上げが無い場合には(S10N)分桁上げがあるまで待つ。
【0078】
分桁上げが有る場合には(S10Y)、表示モードがアナログ時計表示であるかを確認する(S20)。表示モードがデジタル時計表示であれば(S20N)、EPDに、時刻を数字で表すデジタル時計を表示させる(S30)。
【0079】
表示モードがアナログ時計表示であれば(S20Y)、アナログ時計の一部の領域である表示領域の更新を行う。具体的には、時刻信号に基づいて時針の位置を計算により特定し(S22)、見やすさのために時針を含む領域(表示領域、図2参照)のサイズ調整を行ってもよい(S24)。なお、S24は省略されることもある。そして、EPDに、時刻を針で示すアナログ時計を表示させる(S26)。
【0080】
デジタル時計表示(S30)、アナログ時計表示(S26)が終了すると、再びS10に戻る。
【0081】
1.6.別の表示例
図8(A)〜図8(B)は、本実施形態の電子時計におけるアナログ時計表示の別の例を示す図である。なお、図1〜図2と同じ要素には同じ符号を付しており説明を省略する。
【0082】
図2のアナログ時計表示の例では表示領域5Aに分針9も含まれているが、分針9は必ずしも含まれるわけではない。分針9が無くても、使用者は時針の位置の拡大表示により、おおよその時間を知ることが可能である。
【0083】
しかし、分針が表示されると使用者は一層時刻を把握しやすくなる。本実施形態では、表示領域(図2参照)に分針9の一部が含まれるようにする。例えば、図8(A)では、分針9の根元の部分が表示されており、使用者は分針の指すおおよその時間がわかる(約5分)。そのため、使用者は一層時刻を把握しやすくなる。
【0084】
また、使用者はアナログ時計表示においても正確な時刻を知りたい場合がある。本実施形態では、補助的に分桁を数字で表示する機能を有する。例えば、図8(B)では、表示部3の左上部に分桁19が数字で表示されている。これにより、使用者は正確な時刻(この例では6時4分)を知ることができる。
【0085】
なお、分桁を数字で表示する機能は、操作ボタン6、7でオン、オフが切り替え可能であってもよい。
【0086】
2.変形例
第1実施形態のいくつかの変形例について図9(A)〜図10を参照して説明する。なお、図1〜図8(B)と同じ要素には同じ符号を付しており、説明は省略する。
【0087】
2.1.第1変形例
図9(A)は、第1変形例の表示領域の変化の例を示す図である。第1変形例の電子時計は、アナログ時計表示をリアルタイムに拡大縮小可能である。使用者が、表示部を見ながら見やすいようにアナログ時計表示を拡大縮小できるので利便性が向上する。
【0088】
例えば、図9(A)の表示領域5Aが表示部に表示されている場合に、使用者がより正確な時刻を知りたいとする。本変形例では、例えば操作ボタンを押すことで、図9(A)の表示領域5Bが表示部に拡大表示される。この操作により、より細かい時針の位置を見ることができる。逆に、本変形例では、別の操作ボタンを押すことで、図9(A)の表示領域5Cを表示部に縮小表示させることもできる。アナログ時計の全体を見たい場合に便利である。
【0089】
2.2.第2変形例
(アナログ時計表示の全体が表示される変形例)
図9(B)は、第2変形例の表示例を示す図である。第2変形例の電子時計は、タイマー(図3参照)が計る所定の時間間隔(例えば10秒〜3分)で、アナログ時計の全体を表示させる。
【0090】
例えば、アナログ時計の一部だけが拡大表示されると、使用者は表示画像が何であるのかを理解しにくい場合がある。本変形例では、時々アナログ時計の全体を表示させることで、使用者に、表示されている画像がアナログ時計の一部であると感覚的に知らせることができる。
【0091】
2.3.第3変形例
図10は、第3変形例の表示例を示す図である。アナログ時計の形状は、第1実施形態のような楕円や、円、多角形に限らない。また、必ずしも分針を備えるものに限らない。第3変形例では、扇型の文字盤であって時針8だけで時刻を表すアナログ時計105を用いる。なお、本変形例での時針8は分針の機能も兼ねている。
【0092】
本変形例では、時針8が指すゲージ部分を表示領域105Aとして、表示部3に拡大表示している。使用者は、ゲージ部分の目盛りを読み取るのに十分な拡大表示がされているため、おおよその時刻を直ちに知ることが可能である。
【0093】
3.その他
前記の各実施形態に用いられるEPDは、黒粒子および白粒子による白黒二粒子系の電気泳動が行われるものでもよいし、一粒子系の電気泳動を行っても良く、また、白黒以外の組み合わせでもよい。
【0094】
そして、表示手段はEPDに限定されず、他のディスプレイであってもよい。例えば、LCD(Liquid Crystal Display、液晶表示装置)、有機ELディスプレイ(Organic Electro-Luminescence Display)等でもよい。
【0095】
さらに、本発明の電子時計は、腕時計に限らず、例えば置時計、掛け時計、懐中時計等であってもよい。
【0096】
これらの例示に限らず、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0097】
1,100,100A…電子時計、2…時計ケース、3,103,103A…表示部、4…バンド、5,105…アナログ時計、5A,5B,5C,105A…領域(表示領域)、6…操作ボタン、7…操作ボタン、8…時針、9…分針、10…EPD(電気泳動表示装置)、11…発振回路、12…分周回路、13…計時カウンター、14…表示制御回路、15…スイッチ、16…スイッチ、17…時刻修正回路、18…制御信号、19…分桁、22…タイマー、35,35A,35B…画素電極、37…共通電極、40,40A,40B…画素、48…駆動用TFT(Thin Film Transistor)、49…低電位電源線(Vss)、50…高電位電源線(Vdd)、55…共通電極配線(Vcom)、60…EPD制御部、61…走査線駆動回路、62…データ線駆動回路、63…コントローラー、64…共通電源変調回路、66…走査線、68…データ線、70…ラッチ回路、80…スイッチ回路、91…第1のパルス信号線(S)、92…第2のパルス信号線(S)、120…マイクロカプセル、126…黒色粒子、127…白色粒子、130…素子基板、131…対向基板、132…電気泳動素子、160…記憶部、350…駆動電極層、360…電気泳動表示層、370…共通電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻を計時する計時手段と、
前記時刻を表示する表示手段と、
前記表示手段を制御する制御手段と、を含み、
前記制御手段は、
前記計時手段から前記時刻を表す時刻信号を受け取り、
前記時刻信号に基づいて、前記時刻を表すアナログ時計の一部であって、少なくとも時針を含む所定の大きさの領域である表示領域を、前記表示手段に表示させる電子時計。
【請求項2】
請求項1に記載の電子時計において、
前記制御手段は、
前記時刻を表すアナログ時計の分針の一部を含む前記表示領域を、前記表示手段に表示させる電子時計。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の電子時計において、
前記制御手段は、
前記時刻の分桁を表す数字を含む前記表示領域を、前記表示手段に表示させる電子時計。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電子時計において、
外部からの指示を受け取る入力手段を含み、
前記制御手段は、
前記入力手段が受け取った前記指示に基づいて、前記表示領域の前記所定の大きさを定める電子時計。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電子時計において、
時間を計るタイマーを含み、
前記制御手段は、
前記タイマーからの信号に基づいて、所定の時間間隔で、前記時刻を表すアナログ時計の全体を前記表示手段に表示させる電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−189531(P2012−189531A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55179(P2011−55179)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】