説明

電子楽器および楽音生成プログラム

【課題】 微分音を演奏者の意図にしたがって適切に発音でき、非西洋音楽の音律体系にしたがった楽曲の演奏する。
【解決手段】 CPU21は、メロディ鍵域102における何れかの押鍵操作に基づいて、発音すべき楽音データの音高を決定する。CPU21は、上記メロディ鍵域102における押鍵操作について、伴奏鍵域101における押鍵状態にしたがって、音律体系データであるマカームデータから、所定の音律であるジンスを特定する。また、CPU21は、特定されたジンスの構成音に基づいて、メロディ鍵域の押鍵された鍵に対応する構成音を特定し、構成音の音高の楽音データを生成すべく、音源部26に指示を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる微分音を含む音高の楽音の演奏が可能な電子楽器および楽音生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子楽器は、これまで西洋音楽の演奏をより簡単な操作で実現するために発展してきている。西洋音楽は、一般的には、平均率の音律を基礎として、平均率にしたがったメロディ音の進行にともなって、特定の機能を有するコード音が付加されるとともに、必要に応じて打楽器音のパターンも付与される。そこで、たとえば、自動伴奏においては、単純な鍵の押鍵で、指定された自動伴奏パターンにて、押鍵数などにしたがった所望のコード名を構成する楽音を発音させて、バンドやオーケストラを従えたような伴奏効果を得ることが可能である。上記コード名は、押鍵数により決定され、また、コードのルート音は押鍵された鍵の最低音により決定され得る。
【0003】
その一方、西欧以外、たとえば、中近東、インド、アジアなどにおいては、西洋音楽と異なる音律体系にしたがった音楽が、古くから演奏され現在に至っている。このような西洋音楽以外の音楽においても、上記音律体系にしたがってメロディが進行し、かつ、それに合致する打楽器音が付与される。しかしながら、上記西洋音楽と異なる音律体系にしたがった音楽においては、音高が平均率とは異なるため、鍵盤楽器にて演奏することが容易ではないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平3−14357号公報
【特許文献2】特公平3−14358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、特許文献1、2には、演奏者のスイッチ操作により、平均率音階以外の音階を設定し、かつ、平均率音階から、設定された音階に切替えて、切替えられた音階にしたがった音高の楽音を生成することができる電子楽器が提案されている。
【0006】
しかしながら、たとえば、中近東などでは、マカームと称される音律体系が、複数のジンスと称される音律を含んでいる。このジンスでは、平均率と略一致する音高がある一方、約1/4音に相当する微分音も含まれる。また、あるジンスでは、平均率と略一致する音高で発音すべきところ、他のジンスでは、ほぼ同様の音高、つまり、五線譜上の記述では同じ音高を示す楽音でありながら、それを約1/4だけ異ならせる場合もある。したがって、従来の電子楽器では、上述したような微分音を適切に発音することは実質的に不可能であった。
【0007】
本発明は、微分音を演奏者の意図にしたがって適切に発音でき、非西洋音楽の音律体系にしたがった楽曲の演奏が可能な電子楽器、および、楽音生成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、複数の構成音からなる音律の音高を規定する音律データであって、少なくとも音律の基準音および当該音律の構成音の音高を示す情報を含む音律データと、複数の音律の組み合わせである音律体系を規定する音律体系データであって、前記音律体系にしたがった順序で、当該音律体系を構成する複数の音律のそれぞれについて、前記音律データを指定する情報を含む音律体系データと、を記憶する記憶手段と、
演奏操作子の操作に基づいて、所定の音高の楽音データを生成する楽音データ生成手段と、を備えた電子楽器であって、
前記演奏操作子は、2つの領域に分割され、
前記演奏操作子における第1の領域における何れかの演奏操作子の操作に基づいて、前記発音すべき楽音データの音高を決定する制御手段を備え、
前記制御手段が、前記第1の領域における演奏操作子の操作について、前記演奏操作子における第2の鍵域における操作子の操作状態にしたがって、前記音律体系データから、所定の音律を特定する音律判定手段と、
前記特定された音律データに示す前記構成音のうち、前記第1の領域の演奏操作子に対応する構成音を特定し、前記構成音の音高の楽音データを生成すべく、前記楽音データ生成手段に指示を与える音高特定手段と、を備えたことを特徴とする電子楽器により達成される。
【0009】
好ましい実施態様においては、前記音律判定手段が、前記第2の領域において操作された演奏操作子の数に基づいて、前記音律体系データから所定の音律を特定する。
【0010】
より好ましい実施態様においては、前記音律判定手段が、前記音律体系データを参照して、前記音律体系にしたがった順序で、かつ、重複がないように、前記操作された演奏操作子の数と、何れかの音律とを対応付け、前記対応付けにしたがって、前記所定の音律を特定する。
【0011】
また、好ましい実施態様においては、前記音高特定手段が、前記第2の領域において操作された演奏操作子のうち、特定の操作子の音高と、前記基準音とに基づいて、前記構成音の音高を修正し、前記修正された構成音の音高の音高の楽音データを生成する。
【0012】
より好ましい実施態様においては、前記音高特定手段が、前記第2の領域において操作された演奏操作子のうち、最低音に相当する操作子の音高を、前記特定の操作子の音高とする。
【0013】
別の好ましい実施態様においては、前記制御手段が、
前記音律体系を構成する何れかの音律の指定を受け付け、当該音律に対応する前記音律データを表示手段に表示し、かつ、前記音律データにおいて修正された音高を示す情報を受け付けて、前記修正された音高を示す情報を含む新たな音律データを生成する音律データ生成手段と、
前記新たな音律データの生成に伴って、前記音律体系データを更新する音律体系データ更新手段と、を有する。
【0014】
さらに別の好ましい実施態様においては、前記制御手段が、
前記音律体系を構成する何れかの音律の指定を受け付け、当該音律に置換される他の音律の指定を受け付け、前記他の音律に対応付けられた音律データを指定する情報を含むように前記音律体系データを編集する前記音律体系データ編集手段を有する。
【0015】
また、本発明の目的は、複数の構成音からなる音律の音高を規定する音律データであって、少なくとも音律の基準音および当該音律の構成音の音高を示す情報を含む音律データと、複数の音律の組み合わせである音律体系を規定する音律体系データであって、前記音律体系にしたがった順序で、当該音律体系を構成する複数の音律のそれぞれについて、前記音律データを指定する情報を含む音律体系データと、を記憶する記憶手段と、2つの領域に分割された演奏操作子の操作に基づいて、所定の音高の楽音データを生成する楽音データ生成手段と、を備えたコンピュータに、
前記演奏操作子における第1の領域における何れかの演奏操作子の操作に基づいて、前記発音すべき楽音データの音高を決定する制御ステップを実行させ、
前記制御ステップが、前記第1の領域における演奏操作子の操作について、前記演奏操作子における第2の鍵域における操作子の操作状態にしたがって、前記音律体系データから、所定の音律を特定する音律判定ステップと、
前記特定された音律データに示す前記構成音のうち、前記第1の領域の演奏操作子に対応する構成音を特定し、前記構成音の音高の楽音データを生成すべく、前記楽音データ生成手段に指示を与える音高特定ステップと、を有することを特徴とする楽音生成プログラムにより達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、微分音を演奏者の意図にしたがって適切に発音でき、非西洋音楽の音律体系にしたがった楽曲の演奏が可能な電子楽器、および、楽音生成プログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本実施の形態にかかる電子楽器の外観を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態にかかる電子楽器の構成を示すブロックダイヤグラムである。
【図3】図3は、アラビア音楽における旋律体系であるマカーム(Maquam)のうち、「マカーム・バヤティ(Maquam Bayati)」にしたがった音律を示す楽譜である。
【図4】図4は、「マカーム・バヤティ」で演奏される曲の例を示す図である。
【図5】図5は、他のマカームにしたがった音律の例を示す図であり、図5(a)は、「マカーム・スィカ(Maquam Sikah)」、図5(b)は、「マカーム・フザム(Maquam Huzam)」を示す図である。
【図6】図6は、本実施の形態にかかるジンスのデータ構成の例を示す図である。
【図7】図7は、本実施の形態にかかるマカームのデータ構成の例を示す図である。
【図8】図8は、本実施の形態にかかる電子楽器において実行されるメインフローの例を示すフローチャートである。
【図9】図9は、本実施の形態にかかるスイッチ処理の例を示すフローチャートである。
【図10】図10は、本実施の形態にかかるリズムデータのデータ構成例を示す図である。
【図11】図11は、本実施の形態にかかるジンス編集処理の例を示すフローチャートである。
【図12】図12は、本実施の形態にかかるジンス編集処理の例を示すフローチャートである。
【図13】図13は、本実施の形態にかかる電子楽器の表示部および編集に用いるスイッチ類の例を示す図である。
【図14】図14(a)〜(d)は、本実施の形態にかかる表示部におけるマカーム、ジンスの編集画面の例を示す図である。
【図15】図15は、RAMにおいて、新たにレコードが追加されたジンスのデータ構成の例を示す図である。
【図16】図16は、本実施の形態にかかるマカーム編集処理の例を示すフローチャートである。
【図17】図17(a)〜(c)は、本実施の形態にかかる表示部におけるマカームの編集画面の他の例を示す図である。
【図18】図18は、本実施の形態にかかる伴奏鍵盤処理の例を示すフローチャートである。
【図19】図19は、本実施の形態にかかるジンス判定処理の例を示すフローチャートである。
【図20】図20は、本実施の形態にかかるメロディ鍵盤処理の例を示すフローチャートである。
【図21】図21は、本実施の形態にかかるジンス発音処理の例を示すフローチャートである。
【図22】図22は、本実施の形態にかかる自動伴奏処理の例を示すフローチャートである。
【図23】図23は、本実施の形態にかかるメロディ発音・消音処理の例を示すフローチャートである。
【図24】図24は、メロディ鍵域において押鍵された鍵と、伴奏鍵域において押鍵された鍵の押鍵数およびその最低音の音名と、発音された楽音の音高とを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる電子楽器の外観を示す図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる電子楽器10は、鍵盤11を有する。また、鍵盤11の上部には、音色の指定、自動伴奏の開始・終了、リズムパターンの指定などを行なうためのスイッチ(符号12、13参照)や、演奏される楽曲に関する種々の情報、たとえば、音色、リズムパターン、コードネームなどを表示する表示部15を有する。また、本実施の形態においては、スイッチおよび表示部15は、非西洋音楽の音律を規定する音律パターンであるトリコルド(3音音律)、テトラコルド(4音音律)、ペンタコルド(5音音律)を設定、編集するためにも使用される。さらに、上記音律を規定するパターンの組み合わせにより形成される、スケールを含む旋律体系であるマカームを設定、編集するためにも使用される。
【0019】
本実施の形態にかかる電子楽器10は、たとえば、61個の鍵(C2〜C7)を有する。電子楽器10は、自動伴奏をオンする自動伴奏モード、および、自動伴奏をオフにする通常モードの2つの演奏モードのうち、何れかの下での演奏が可能である。自動伴奏モードの下では、C2〜F3の18鍵(符号101参照)が、伴奏用の鍵盤として使用され、F#4〜C7の43鍵(符号102参照)がメロディ用の鍵盤として使用される。符号101で示す鍵域を伴奏鍵域とも称し、符号102で示す鍵域をメロディ鍵域とも称する。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態にかかる電子楽器の構成を示すブロックダイヤグラムである。図2に示すように、本実施の形態にかかる電子楽器10は、CPU21、ROM22、RAM23、サウンドシステム24、スイッチ群25、鍵盤11および表示部15を備える。
【0021】
CPU21は、電子楽器10全体の制御、鍵盤11の鍵の押鍵やスイッチ群25を構成するスイッチ(たとえば、図1の符号12、13参照)の操作の検出、鍵やスイッチの操作にしたがったサウンドシステム24の制御、自動伴奏パターンにしたがった自動伴奏の演奏など、種々の処理を実行する。
【0022】
ROM22は、CPU21に実行させる種々の処理、たとえば、スイッチの操作、鍵盤の何れかの鍵の押鍵、押鍵に応じた楽音の発音、自動伴奏パターンを構成する楽音の発音データなどのプログラムを記憶する。また、ROM22は、ピアノ、ギター、バスドラム、スネアドラム、シンバルなどの楽音を生成するための波形データを格納した波形データエリア、および、種々の自動伴奏パターンを示すデータ(自動伴奏データ)を格納した自動伴奏パターンエリアを有する。また、ROM22は、予め定められた所定の音律パターン(トリコルド、テトラコルド、ペンタコルド)のデータと、前記音律パターンを組み合わせた旋律体系(マカーム)のデータ(旋律体系データ)が格納されている。
【0023】
なお、自動伴奏データには、3つの種類の楽音、すなわち、メロディ音(オブリガート音を含む)、コード音、リズム音のデータが含まれる。メロディ音によってメロディ自動伴奏パターンが構成され、コード音によってコード自動伴奏パターンが構成される。また、リズム音によってリズムパターンが構成される。
【0024】
RAM23は、ROM22から読み出されたプログラムや、処理の過程で生じたデータを記憶する。なお、本実施の形態において、自動伴奏パターンは、メロディ音およびオブリガート音を含むメロディ自動伴奏パターン、コード音を含むコード自動伴奏パターン、並びに、ドラム音を含むリズムパターンを有する。たとえば、メロディ自動伴奏パターンのデータのレコードは、楽音の音色、音高、発音タイミング(発音時刻)、音長などを含む。コード自動伴奏パターンのデータのレコードは、上記情報に加えて、コード名を示すデータを含む。また、リズムパターンのデータは、楽音の音色、発音タイミングを含む。
【0025】
さらに、本実施の形態においては、音律パターンおよび旋律体系のデータを編集することができる。RAM23には、演奏者が編集した音律パターンおよび旋律体系のデータを格納することができる。
【0026】
サウンドシステム24は、音源部26、オーディオ回路27およびスピーカ28を有する。音源部26は、たとえば、押鍵された鍵についての情報或いは自動伴奏パターンについての情報をCPU21から受信すると、ROM22の波形データエリアから所定の波形データを読み出して、所定の音高の楽音データを生成して出力する。また、音源部26は、波形データ、特に、スネアドラム、バスドラム、シンバルなど打楽器の音色の波形データを、そのまま楽音データとして出力することもできる。オーディオ回路27は、楽音データをD/A変換して増幅する。これによりスピーカ28から音響信号が出力される。
【0027】
本実施の形態にかかる電子楽器10は、通常モードの下においては、鍵盤11の鍵の押鍵に基づいて楽音を発生する。その一方、電子楽器10は、自動伴奏スイッチ(図示せず)が操作されることにより、自動伴奏モードとなる。自動伴奏モードの下では、メロディ鍵域の鍵の押鍵により、その鍵の音高の楽音が発生する。また、伴奏鍵域の鍵の押鍵にしたがって自動伴奏パターンが制御され、制御された自動伴奏パターンにしたがった楽音が発生する。なお、自動伴奏パターンは、ピアノやギターなど音高の変化を伴うメロディ自動伴奏パターンおよびコード自動伴奏パターンと、バスドラム、スネアドラム、シンバルなど音高の変化を伴わないリズムパターンとを含む。
【0028】
なお、本実施の形態においては、非西洋音楽の旋律体系を用いた自動伴奏パターンも存在する。以下、非西洋音楽の旋律体系、および、本実施の形態においてROM22に格納される音律パターンのデータおよび旋律体系のデータについて説明する。
【0029】
西洋音楽においては、中世まではグレゴリオ聖歌に代表されるようなモノフォニー音楽であったが、その後、多声部から構成されるポリフォニー音楽を経て、現在では和声に裏打ちされた音楽が主流となっている。しかしながら、欧米以外、たとえば、中東、アジア、アフリカなどの地域では、モノフォニー音楽が現在でもしばしば演奏される。このモノフォニー音楽では、単旋律を細かい音律にしたがって変化させるスタイルが一般的である。
【0030】
図3は、アラビア音楽における旋律体系であるマカーム(Maquam)のうち、「マカーム・バヤティ(Maquam Bayati)」にしたがった音律を示す楽譜である。この「マカーム・バヤティ」は、6つの4音音律(テトラコルド)に分解され得る。「マカーム」は、テトラコルド、トリコルドなどの一定の音律パターンである「ジンス」を組み合わせて構成される。なお、音律パターンは、アラビア音楽においては「ジンス」と称され、他の地域(たとえば、旧ペルシャの地域)では「グーシェ」と称される。
【0031】
図3に示す「マカーム・バヤティ」は6つのジンスから構成される。図3の第1小節のジンス(第1ジンス)は「バヤティ(Bayati)」、第2小節のジンス(第2ジンス)は「ラスト(Rast)」、第3小節のジンス(第3ジンス)は「バヤティ」、第4小節のジンス(第4ジンス)は「バヤティ」、第5小節のジンス(第5ジンス)は「ナハワンド(Nahawand)」、第6小節のジンス(第6ジンス)は「バヤティ」である。また、第1ジンス〜第3ジンスは上行音型であり、第5ジンス〜第6ジンスは下行音型である。これらジンスは、4音音律であるテトラコルドである。
【0032】
図3において、「♭(フラット)」に斜線が引かれていることは(符号311〜315参照)、その音が単に♭が付されている場合と比較して約1/4音だけ高いことを意味している。たとえば、第1ジンスの第2音は、「E♭」より約1/4音だけ高い楽音である。したがって、全音の音の幅を「1」とすると、第1ジンスの第1音と第2音との間、第2音と第3音との間は、それぞれ、「3/4」となる。図3において、音符間の下に記載されている数字(たとえば、符号301、302参照)は、全音の幅を「1」としたときの、当該隣接する音符間の幅を示している。なお、実際の「マカーム・バヤティ」では、厳密には1/4音の変化ではないが、その変化はほぼ1/4音であることから、本明細書では、これを1/4音として表している。
【0033】
このように、アラビア音楽におけるマカームにしたがって、電子楽器を演奏する場合には、上記ジンスにしたがって、必要に応じて押鍵された鍵より1/4音高い楽音を発音すれば良い。ところが、図3に示すように、「マカーム・バヤティ」では、使用するジンスによって、同一の鍵を押鍵した場合であっても異なる音高の楽音が発音されることがある。図3に示す「マカーム・バヤティ」において、第2ジンスの第3音(符号321参照)を演奏したい場合には、演奏者は、「B♭」の鍵を押鍵して、電子楽器では、「B♭」より1/4音だけ高い音高の楽音を発音する必要がある。その一方、第5ジンスの第2音(符号322参照)を演奏したい場合にも演奏者は「B♭」の鍵を押鍵し、電子楽器は押鍵されたとおりに「B♭」の音高の楽音を発音する必要がある。
【0034】
図4は、「マカーム・バヤティ」で演奏される曲の例を示す図である。この曲では、第2小節は「ラスト」にしたがっており、その一方、第3小節は「ナハワンド」にしたがっている。したがって、第2小節の第3音の音高は、「B♭」より1/4音だけ高くなり(符号401参照)、第2小節の第1音の音高は、「B♭」となる(符号402参照)。したがって、電子楽器において、押鍵に応じて、押鍵された音高と同一の音高の楽音を発音すべきか、微分音(この場合には1/4音だけ高い音高の楽音)の楽音を発音すべきかを判断できることが望ましい。
【0035】
図5は、他のマカームにしたがった音律の例を示す図であり、図5(a)は、「マカーム・スィカ(Maquam Sikah)」、図5(b)は、「マカーム・フザム(Maquam Huzam)」を示す。図5(a)に示すように、「マカーム・スィカ」の第1小節のジンス(第1ジンス)は「スィカ(Sikah)」、第2小節のジンス(第2ジンス)は「ラスト(Rast)」、第3小節のジンス(第3ジンス)は「ラスト」、第4小節のジンス(第4ジンス)は「スィカ」、第5小節のジンス(第5ジンス)は「ナハワンド(Nahawand)」、第6小節のジンス(第6ジンス)は「スィカ」である。また、第1ジンス〜第3ジンスは上行音型であり、第5ジンス〜第6ジンスは下行音型である。ここでも、第2ジンスの第3音(符号501参照)と第5ジンスの第2音(符号502参照)との間で、同一の鍵を押鍵した場合の問題が生じ得る。
【0036】
図5(b)に示すように、「マカーム・フザム」の第1小節のジンス(第1ジンス)は「スィカ(Sikah)」、第2小節のジンス(第2ジンス)は「ヒジャーズ(Hijaz)」、第3小節のジンス(第3ジンス)は「ラスト」、第4小節のジンス(第4ジンス)は「スィカ」、第5小節のジンス(第5ジンス)は「ナハワンド(Nahawand)」、第6小節のジンス(第6ジンス)は「スィカ」である。また、第1ジンス〜第3ジンスは上行音型であり、第5ジンス〜第6ジンスは下行音型である。
【0037】
なお、「マカーム・フザム」および「マカーム・フザム」にて用いられるジンス「スィカ」は、3音音律であるトリコルドである。また、図5(a)、(b)において「スィカ」が適用される小節の末尾の休符(たとえば、符号511、512参照)は、便宜上記載したもので、「スィカ」にしたがって演奏する際に末尾に休符を入れることを意味しているものではない。
【0038】
本実施の形態にかかる電子楽器10においては、上記マカームにしたがった音高の楽音を発音するために、ジンスのデータおよびマカームのデータをROM22に格納している。
図6は、本実施の形態にかかるジンスのデータ構成の例を示す図、図7は、本実施の形態にかかるマカームのデータ構成の例を示す図である。
【0039】
図6に示すように、ジンスのデータレコード(符号600参照)は、それぞれ、ジンス番号、ジンス名称、最低音、第1音〜第2音の間隔、第2音〜第3音の間隔、第3音〜第4音の間隔、第4音〜第5音の間隔、ジンスの最低音から最高音までの間隔、および、ジンス種別という項目を有している。なお、図6に示す例では、5音音律であるペンタコルドは示されていないため、第4音〜第5音の間隔の項目(符号611参照)には、データが格納されていない。また、音の間隔は、1オクターブを「1200」とするセントで表されている。
【0040】
たとえば、ジンス番号1のデータレコード(符号601参照)には、「ラスト」のデータが格納されている。ジンス「ラスト」のデータレコードには、ジンス名称として「ラスト」、最低音として「C」、第1音と第2音との間隔として「200セント」、第2音と第3音との間隔として「150セント」、第3音と第4音との間隔として「150セント」、最低音と最高音との間の合計間隔として「500セント」、ジンス種別として「テトラコルド」が格納されている。
【0041】
また、ジンス番号5のレコード(符号602参照)には、「スィカ」のデータが格納されている。ジンス「スィカ」のデータレコードには、ジンス名称として「スィカ」、最低音として「C」、第1音と第2音との間隔として「150セント」、第2音と第3音との間隔として「200セント」、最低音と最高音との間の合計間隔として「350セント」、ジンス種別として「トリコルド」が格納されている。さらに、「ヒジャーズ」については、レコード番号6の「ヒジャーズ1」およびレコード番号7の「ヒジャーズ2」の2つのデータレコードが存在する(符号603参照)。
【0042】
図7に示すように、マカームのデータレコード(符号700参照)は、それぞれ、マカーム番号、マカーム名称、第1ジンスから第6ジンスの各ジンスについて、ジンス名称、最低音、上行/下行の種別(U/D)という項目を有する。たとえば、マカーム番号1のデータレコードについて、マカーム名称は「ラスト」であり、第1ジンスのジンス名称、最低音、上行/下行は、それぞれ「ラスト」、「C」、「上行(U)」、第2ジンスのジンス名称、最低音、上行/下行は、それぞれ、「ラスト」、「G」、「上行(U)」、第3ジンスのジンス名称、最低音、上行/下行は、それぞれ、「ラスト」、「C」、「上行(U)」、第4ジンスのジンス名称、最低音、上行/下行は、それぞれ、「ラスト」、「G」、「下行(D)」、第5ジンスのジンス名称、最低音、上行/下行は、それぞれ、「ナハワンド」、「C」、「下行(D)」、第6ジンスのジンス名称、最低音、上行/下行は、それぞれ、「ラスト」、「G」、「下行(D)」である。
【0043】
なお、上行音型(U)のときには、音律は最低音から開始して、ジンスのデータレコードの第1音、第2音、という順序で音高が決定される。その一方、下行音型(D)のときには、最高音が最終音となる。つまり、テトラコルドであれば、第4音、第3音、・・・、第1音という順序で音高が決定される。
【0044】
なお、図7の例では、ジンスを特定するためにジンス名称が用いられているが、無論、ジンス番号を用いても良いことはいうまでもない。上述したように、ジンスが上行であることは、対応するジンスのデータレコードにおける第1音から第4音(ジンス種別がテトラコルドの場合)の順であることを示し、ジンスが下行であることは、当該ジンスのデータレコードにおける第4音から第1音(ジンス種別がテトラコルドの場合)の順であることを示す。また、図7において、最低音のE♭に矢印が付加されているものは、E♭の微分音(本実施の形態では基本的にE♭より1/4だけ高い楽音)であることを示している。
【0045】
このようにマカームおよびジンスのデータをROM22に格納しておき、演奏の際に、マカームおよびジンスのデータをRAM23にコピーし、RAM23の所定のデータレコードを読み出すことにより、マカームにしたがった音高の楽音の発音が可能となる。
【0046】
以下、本実施の形態にかかる電子楽器10において実行される処理についてより詳細に説明する。図8は、本実施の形態にかかる電子楽器において実行されるメインフローの例を示すフローチャートである。電子楽器10のCPU21は、電子楽器10の電源が投入されると、RAM23中のデータや、表示部15の表示画面のクリアを含むイニシャル処理(初期化処理)を実行する(ステップ801)。イニシャル処理においては、マカームおよびジンスのデータをROM22から読み出し、RAM23の所定の領域に格納することも含まれる。
【0047】
イニシャル処理(ステップ801)が終了すると、CPU21は、スイッチ群25を構成するスイッチのそれぞれの操作を検出し、検出された操作にしたがった処理を実行するスイッチ処理を実行する(ステップ802)。図9は、本実施の形態にかかるスイッチ処理の例を示すフローチャートである。図9に示すように、CPU21は、まず、リズムスイッチ処理を実行する(ステップ901)。リズムスイッチ処理においては、演奏者のスイッチ操作により、自動伴奏パターンを規定するリズム番号を特定して、当該リズム番号を、RAM23の所定の領域に格納する。
【0048】
図10は、本実施の形態にかかるリズムデータのデータ構成例を示す図である。図10に示すように、リズムデータ1000のデータレコード(符号1001、1002参照)は、たとえば、リズム番号、リズム名称、リズム名称の日本語表記、メロディ音色の音色番号、コード音色の音色番号、テンポ、マカーム番号、伴奏パターンのパターン番号などの項目を有する。マカーム番号の項目には、マカームが規定する音律にしたがった音高の楽音を発音すべき場合に、所定のマカーム番号が格納されている(たとえば、符号1002参照)。
【0049】
リズム番号が選択されることにより、そのリズムパターン、自動伴奏におけるメロディの音色、自動伴奏におけるコードの音色、初期的なテンポ、伴奏パターンなどが特定されえる。また、マカーム番号が含まれる場合には、自動伴奏および後述するようにメロディ鍵域での演奏における音高が、マカーム番号にしたがったマカームにより決定される。
【0050】
また、CPU21は、モードスイッチ処理を実行する(ステップ902)。ステップ902においては、伴奏モード選択スイッチ(後述する図13の符号1305)の操作から、自動伴奏モードの選択の有無、および、自動伴奏モードが選択されている場合には、何れのモードが選択されているかを判断する。本実施の形態においては、自動伴奏モードには、伴奏鍵域において実際に押鍵された鍵の音高に基づいてコード名が判定され、コード伴奏が行なわれるフィンガードモード、押鍵された押鍵数および最低音の音高に基づいてコード名が判定される簡易演奏モード(いわゆる「カシオコード」の伴奏モード)、および、マカームに基づく音律を演奏するためのモード(テトラコルドモード)の何れかが選択され得る。選択された自動伴奏モードの情報は、RAM23の所定の領域に格納される。
【0051】
次いで、CPU21は、ジンス編集処理を実行する(ステップ903)。図11および図12は、本実施の形態にかかるジンス編集処理の例を示すフローチャートである。図11に示すように、CPU21は、リズムスイッチ処理で選択されたリズム番号に基づいて、ROM22に格納されたリズムデータのレコードを参照して、当該レコードに含まれるマカーム番号を取得する。また、CPU21は、当該マカーム番号で特定されるマカームのデータレコード、および、マカームのデータレコードにより特定される複数のジンスのデータレコードを、RAM23から読み出す(ステップ1101)。なお、リズムデータのレコード中、マカーム番号の値が存在しない(或いは無効値である)場合には、ジンス編集処理および引き続いて実行されるマカーム編集処理(ステップ904)は実行されない。
【0052】
CPU21は、編集スイッチがオン状態であるかを判断する(ステップ1102)。ステップ1102でYesと判断された場合には、CPU21は、編集対象としてジンスが選択されているかを判断する(ステップ1103)。図13は、本実施の形態にかかる電子楽器の表示部および編集に用いるスイッチ類の例を示す図である。図13に示すように、本実施の形態にかかる電子楽器10においては、その正面のパネル上に編集(edit)スイッチ1301、セーブ(save)スイッチ1302、伴奏モード(accomp mode)選択スイッチ1303、カーソルキー1304、および、テトラコルドメモリ(Tetracord Memory)選択スイッチ1305が配置されている。カーソルキー1304の何れかの操作によって、表示部15において編集対象を指定することができる。
【0053】
図14(a)〜(d)は、本実施の形態にかかる表示部におけるマカーム、ジンスの編集画面の例を示す図である。図14(a)において、表示部上段の右側には現在選択されているマカームが示されている。また、表示部下段には、選択されたマカームを構成する第1ジンス〜第6ジンスが表示されている。また、図14(a)において、ハッチングされた領域1401が、選択された項目を示しており、この例では、カーソルキー1304の操作により、「マカーム・ラスト」の第1ジンスが編集対象として選択されたことが示されている。
【0054】
ステップ1104においてYes、つまり、第1ジンス〜第6ジンスの何れかが選択されている場合には、CPU21は、選択されたマカームデータおよびジンスデータを参照して、選択されたジンスのレコードのデータを表示する(ステップ1104)。図14(a)の例では、「マカーム・ラスト」の第1ジンスが選択されたため、「マカーム・ラスト」の第1ジンスである「ラスト」に関するジンスデータのレコードが読み出され、その内容が表示される(図14(b)参照)。図14(b)において、表示部15の下欄に示される数字は、ジンス「ラスト」のデータレコード(図6の符号601参照)に格納された隣接された音の間隔である。
【0055】
なお、マカームデータにおいて、選択されたジンスが上行音型であった場合には、第1音(最低音)〜第2音の間隔、第2音〜第3音の間隔というように、音高の低いほうから順に、隣接する音の間隔が表示される。その一方、選択されたジンスが下行音型であった場合には、最高音〜最高音の次の音の間隔(テトラコルドであれば、第4音〜第3音の間隔)、最高音の次の音〜さらにその次の音の間隔(テトラコルドであれば、第3音〜第2音の間隔)というように、音高の高い方向から順に、隣接する音の間隔が表示される。
【0056】
次いで、CPU21は、演奏者のカーソルキー1304等の操作により修正項目が選択されたかを判断する(ステップ1105)。図14(b)においては、第1ジンスの第2音と第3音との間隔が指定されている(符号1402参照)。ステップ1105でYesと判断された場合には、CPU21は、選択された項目に修正値が入力されたかを判断する(ステップ1106)。図14(c)は、上記指定されたジンスの第2音と第3音との間隔に修正値(符号1403参照)が入力された状態を示す。CPU21は、入力された修正値が入力可能な範囲であるか否かを判断する(ステップ1107)。
【0057】
ジンスがトリコロルドである場合には、第1音と第2音との間隔、および、第2音と第3音との間隔、第3音と第4音との間隔の修正が可能である。本実施の形態においては、間隔の修正後の高音側の音(たとえば、第1音と第2音との間隔であれば、第2音)の音高が、さらに高音側に隣接する音(たとえば、第1音と第2音との間隔であれば、第3音)の音高より低ければ、入力可能な範囲であると判断する。つまり、図14(b)、(c)の例では、選択された第2音と第3音との間隔が、「300」未満であれば、入力可能な範囲となる。
【0058】
ステップ1107でNoと判断された場合には、ステップ1106に戻る。ステップ1107でYesと判断された場合には、CPU21は、入力された修正値に基づいて、他の間隔を変更する(ステップ1201)。本実施の形態においては、値が修正された間隔より一つ高音側の間隔の値が変更される(図14(c)の符号1405参照)。その後、図14(c)に示すように、CPU21は、修正された値や修正値に伴って変更された他の値を、表示部15の画面上に表示する(ステップ1202)。次いで、CPU21は、セーブスイッチ(図13の符号1302参照)がオンされたかを判断する(ステップ1203)。ステップ1302でYesと判断された場合には、CPU21は、修正値を含むジンスのデータレコードをRAM23の所定の領域に格納する(ステップ1204)。図15は、RAMにおいて、新たにレコードが追加されたジンスのデータ構成の例を示す図である。図15においては、ジンス番号「ユーザ1」として、図14(c)に示す修正値を含むレコードが格納されている(符号1501参照)。
【0059】
また、CPU21は、上述したジンス編集処理で値を変更したジンスを有するマカームのデータレコードを更新する(ステップ1205)。たとえば、図14(a)に示す例では、「マカーム・ラスト」の第1ジンスの値を変更している。したがって、マカームのデータ(図7参照)において、「マカーム・ラスト」のデータレコード中、第1ジンスのデータ項目(特に、第1ジンスの名称)が変更される。その後、CPU21は、ジンスが修正されたマカームの内容を、表示部15の画面上に表示する(ステップ1206)。図14(d)では、第1ジンスが修正されているため、第1ジンスが修正されたもの(符号1404)参照となっている。ステップ1206の後、ステップ1102に戻る。
【0060】
ステップ1102でNoと判断された場合、或いは、ステップ1102でYesであっても、ステップ1103でNoと判断された場合には、ジンス編集処理が終了する。ジンス編集処理(ステップ403)が終了すると、CPU21は、マカーム編集処理を実行する(ステップ404)。図16は、本実施の形態にかかるマカーム編集処理の例を示すフローチャートである。
【0061】
CPU21は、編集スイッチがオン状態であるかを判断する(ステップ1601)。ステップ1102でYesと判断された場合には、CPU21は、編集対象としてマカームが選択されているかを判断する(ステップ1602)。図17(a)〜(c)は、本実施の形態にかかる表示部におけるマカームの編集画面の他の例を示す図である。図17(a)においては、カーソルキー1304の操作により、「マカーム・ラスト」が選択されたことが示されている(符号1701参照)。
【0062】
ステップ1602でYesと判断された場合には、CPU21は、カーソルキー1304の操作により、マカームを構成するジンスのうち、変更するジンスの選択があったかを判断する(ステップ1603)。図17(b)においては、「マカーム・ラスト」の第2ジンスが選択されたことが示されている(符号1702参照)。
【0063】
次いで、CPU21は、カーソルキー1304等の処理により、選択されたジンスに変更があったかを判断する(ステップ1604)。図17(b)に示す例では、第2ジンスが「R」、つまり、「ラスト」であったが、カーソルキー1304等の操作により、他のジンス(たとえば、図15に示す「バヤティ」や、演奏者によるジンス編集により作られた「ラスト1」)に変更することができる。ステップ1604でYesと判断されると、CPU21は、表示部15において、選択されたジンスを示す文字等を、指定されたジンスの位置に配置した画面を表示する(ステップ1605)。図17(c)においては、第2ジンスが、ジンス編集により生成された「ジンス1(ジンス番号:ユーザ1)」に変更されたことが示されている。
【0064】
次いで、CPU21は、セーブスイッチ(図13の符号1302参照)がオンされたかを判断する(ステップ1606)。ステップ1606でYesと判断された場合には、CPU21は、修正値を含むようにマカームのデータレコードを更新する(ステップ1607)。たとえば、図17(c)に示す例では、「マカーム・ラスト」の第2ジンスの値を変更している。したがって、マカームのデータ(図7参照)において、「マカーム・ラスト」のデータレコード中、第2ジンスのデータ項目(特に、第2ジンスの名称)が変更される。
【0065】
マカーム編集処理が終了すると、CPU21は、他のスイッチ処理を実行する(ステップ905)。他のスイッチ処理においては、表示部15におけるマカーム、ジンスに関する画面以外の表示(たとえば、音色、テンポなどの表示)の更新などが含まれる。
【0066】
スイッチ処理(図8のステップ802)が終了すると、CPU21は、伴奏鍵盤処理を実行する(ステップ803)。図18は、本実施の形態にかかる伴奏鍵盤処理の例を示すフローチャートである。
【0067】
図18に示すように、CPU21は、伴奏鍵域の鍵を走査して(ステップ1801)、新規の鍵イベント(キーオン或いはキーオフ)があったかを判断する(ステップ1802)。ステップ1802でYesと判断された場合には、CPU21は、自動伴奏モードがテトラコルドモードであるかを判断する(ステップ1803)。ステップ1803でNoと判断された場合には、CPU21は、コード判定処理を実行する(ステップ1804)。ステップ1804においては、従来の電子楽器と同様に、押鍵された鍵に基づいてコードネームが決定される。
【0068】
自動伴奏モードがフィンガードモードである場合には、伴奏鍵域において実際に押鍵された鍵の音高に基づいてコード名が判定される。また、自動伴奏モードが、簡易演奏モード(カシオコードモード)である場合には、押鍵された押鍵数および最低音の音高に基づいてコード名が判定される。
【0069】
ステップ1803でYesと判断された場合には、CPU21は、ジンス判定処理を実行する(ステップ1804)。図19は、本実施の形態にかかるジンス判定処理の例を示すフローチャートである。図19に示すように、PCU21は、選択されているマカームのデータレコードを参照して、押鍵数のそれぞれに対応付けられるジンスを決定する(ステップ1901)。本実施の形態においては、押鍵数が「1」〜「4」のそれぞれにジンスが対応付けられる。押鍵数「1」〜「4」のそれぞれに対応付けられるジンスを、「第1押鍵ジンス」〜「第4押鍵ジンス」と称する。
【0070】
本実施の形態においては、CPU21は、マカームのデータレコードを参照して、第1ジンスから第6ジンスを参照して、新たなジンスが出現した場合には、そのジンスと、新たな押鍵数とを対応付ける。つまり、本実施の形態において、CPU21は、マカームの音律体系にしたがった順序で、かつ、重複が無いように、押鍵数と、ジンスとを対応付ける。
【0071】
たとえば、図7に示す「マカーム・ラスト」では、
押鍵数=1(第1押鍵ジンス):ラスト(第1ジンスとして出現)
押鍵数=2(第2押鍵ジンス):ナハワンド(第4ジンスとして出現)
となる。たとえば、第3押鍵ジンス、第4押鍵ジンスは、最後に出現したナハワンドに対応付ければ良い。
【0072】
また、図7に示す「マカーム・フザム」では、
押鍵数=1(第1押鍵ジンス):スィカ1(第1ジンスとして出現)
押鍵数=2(第2押鍵ジンス):ヒジャーズ1(第2ジンスとして出現)
押鍵数=3(第3押鍵ジンス):ラスト(第3ジンスとして出現)
押鍵数=4(第4押鍵ジンス):ナハワンド(第4ジンスとして出現)
となる。
【0073】
次いで、CPU21は、伴奏鍵域において現在押鍵中の鍵の数(押鍵数)を取得する(ステップ1902)。押鍵数が「1」であれば(ステップ1903でYes)、CPU21は、第1押鍵ジンスを、発音に用いるべき発音ジンスとして、また、押鍵された鍵の最低音(この場合には、押鍵された鍵の音高)を、当該ジンスの基準音として、第1押鍵ジンスの情報およびその最低音の情報をRAM23の所定の領域に格納する(ステップ1904)。この発音ジンスを特定する情報および基準音を、発音ジンスデータと称する。
【0074】
押鍵数が「2」であれば(ステップ1905でYes)、CPU21は、第2押鍵ジンスを、発音に用いるべき発音ジンスとして、また、押鍵された鍵の最低音を、当該ジンスの基準音として、第2押鍵ジンスの情報およびその基準音の情報をRAM23の所定の領域に格納する(ステップ1906)。押鍵数が「3」であれば(ステップ1907でYes)、CPU21は、第3押鍵ジンスを、発音に用いるべき発音ジンスとして、また、押鍵された鍵の最低音を、当該ジンスの基準音として、第3押鍵ジンスの情報およびその基準音の情報をRAM23の所定の領域に格納する(ステップ1908)。
【0075】
ステップ1907でNoと判断された場合、つまり、押鍵数が「4」以上であれば、CPU21は、第4押鍵ジンスを、発音に用いるべき発音ジンスとして、また、押鍵された鍵の最低音を、当該ジンスの基準音として、第4押鍵ジンスの情報およびその基準音の情報をRAM23の所定の領域に格納する(ステップ1909)。
【0076】
伴奏鍵盤処理(ステップ803)が終了すると、メロディ鍵盤処理が実行される(ステップ804)。図20は、本実施の形態にかかるメロディ鍵盤処理の例を示すフローチャートである。図20に示すように、CPU21は、メロディ鍵域の件を走査して(ステップ2001)、新規の鍵イベント(キーオン或いはキーオフ)があったかを判断する(ステップ2002)。ステップ2002でYesと判断された場合には、CPU21は、鍵イベントがキーオフであるかを判断する(ステップ2003)。ステップ2003でYesと判断された場合には、CPU21は、消音処理を実行して、キーオフされた鍵についての楽音を消音する(ステップ2004)。実際の消音は、音源発音処理(図8のステップ806)で実行されるため、ステップ2004ではキーオフイベントが生成されることになる。
【0077】
ステップ2003でNoと判断された場合、CPU21は、自動伴奏モードはテトラコルドモードであるかを判断する(ステップ2005)。ステップ2005でNoと判断された場合には、CPU21は、キーオンされた鍵について楽音を発音させる(ステップ2006)。実際の発音は、音源発音処理(図8のステップ806)で実行されるため、ステップ2006ではキーオンイベントが生成されることになる。その一方、ステップ2005でYesと判断された場合には、CPU21は、ジンス発音処理を実行する(ステップ2007)。
【0078】
図21は、本実施の形態にかかるジンス発音処理の例を示すフローチャートである。図21に示すように、CPU21は、RAM23に格納された発音ジンスデータを参照する。この発音ジンスデータは、図19において伴奏鍵域における押鍵に基づき生成されRAM23の所定の領域に格納されている。発音ジンスデータには、楽音の発音に際して従うべきジンスの情報(ジンスデータのデータレコード)およびその基準音が含まれる。次いで、CPU21は、押鍵された鍵において、発音ジンスデータを参照して、押鍵された鍵に対応するジンスデータのデータレコードに基づく音高を特定する(ステップ2102)。次いで、CPU21は、押鍵された鍵の音高を変更すべきであるかを判断する(ステップ2103)。
【0079】
ステップ2103では、CPU21は、まず、ジンスデータレコード中の最低音と、上記基準音との差に基づいて、ジンスを構成する楽音の音高を修正する。たとえば、データレコード中の最低音が「C」であり、基準音が「D」である場合には、ジンスを構成する楽音の音高は、1音(長2度)だけ高くされる。次いで、CPU21は、ジンスにおける修正された音高において、押鍵された鍵に対応すべき音高が、通常の白鍵或いは黒鍵の音高と異なるかを判断する。通常の白鍵或いは黒鍵の音高と異なる場合には、ステップ2103においてYesと判断される。
【0080】
ステップ2103でNoと判断された場合には、CPU21は、押鍵された鍵の鍵番号にしたがったキーオンオベントを作成する(ステップ2104)。その一方、ステップ2103でYesと判断された場合には、CPU21は、ジンスデータおよび基準音に基づいて修正された音高によるキーオンイベントを生成する(ステップ2105)。
【0081】
ステップ2004、2006、2007が終了した後、全ての鍵イベントについての処理が終了したかが判断される(ステップ2008)。ステップ2008でNoと判断された場合には、ステップ2002に戻る。ステップ2008でYesと判断された場合には、メロディ鍵盤処理を終了する。
【0082】
メロディ鍵盤処理(ステップ804)が終了すると、CPU21は、自動伴奏処理を実行する(ステップ805)。図22は、本実施の形態にかかる自動伴奏処理の例を示すフローチャートである。まず、CPU21は、電子楽器10が自動伴奏モードの下で動作しているかを判断する(ステップ2201)。ステップ2201でYesと判断された場合には、CPU21のタイマ(図示せず)を参照して、現在時刻が、自動伴奏データ中、メロディ音のデータについてのイベントの実行タイミングに達しているかを判断する(ステップ2202)。
【0083】
前述したように、自動伴奏データには、3つの種類の楽音、すなわち、メロディ音(オブリガート音を含む)、コード音、リズム音のデータが含まれる。メロディ音のデータおよびコード音のデータは、発音すべき楽音ごとに、その音高、発音タイミングおよび発音時間を含む。また、リズム音のデータは、発音すべき楽音(リズム音)ごとに、その発音タイミングを含む。
【0084】
ステップ2202でYesと判断された場合には、CPU21は、メロディ発音・消音処理を実行する(ステップ2203)。図23は、本実施の形態にかかるメロディ発音・消音処理の例を示すフローチャートである。メロディ音発音・消音処理においては、処理にかかるイベントがノートオンイベントであるかを判断する(ステップ2301)。ノートオンイベントであることは、現在時刻が、上記メロディ音のデータにおける所定の楽音の発音タイミングとほぼ一致することで判断できる。その一方、ノートオフイベントであることは、現在時刻が、当該楽音の発音タイミングに発音時間を加えた時刻とほぼ一致することで判断できる。
【0085】
ステップ2301でNoと判断された場合には、CPU21は、消音処理を実行する(ステップ2302)。その一方、ステップ2301でYesと判断された場合には、自動伴奏モードがテトラコルドモードであるかを判断する(ステップ2303)。ステップ2303でNoと判断された場合には、CPU21は、通常の発音処理を行なって、メロディ音のデータにしたがった発音処理を実行する(ステップ2306)。ステップ2303でYesと判断された場合には、CPU21は、RAM23に格納された発音ジンスデータを参照する(ステップ2304)。次いで、CPU21は、自動伴奏データ中の音高、発音ジンスデータおよびその基準音ににしたがって、ノートオンすべき音高を変更する(ステップ2305)。ステップ2305の処理はは、図21のステップ2103およびステップ2105の処理とほぼ同様である。
【0086】
すなわち、CPU21は、まず、ジンスデータレコード中の最低音と、上記基準音との差に基づいて、発音すべき楽音の音高を修正する。次いで、CPU21は、ジンスにおける修正された音高において、自動伴奏データの楽音に対応する音高が、通常の白鍵或いは黒鍵の音高と異なるかを判断する。通常の白鍵或いは黒鍵の音高と異なる場合には、発音すべき楽音の音高が修正される。
【0087】
その後、CPU21は、ステップ2305で変更された音高の楽音を発音するための発音処理を実行する(ステップ2306)。
【0088】
次いで、CPU21は、自動伴奏モードがテトラコルドモード以外であれば(ステップ2204でYes)、CPU21のタイマ(図示せず)を参照して、現在時刻が、自動伴奏データ中、コード音のデータについてのイベントの実行タイミングに達しているかを判断する(ステップ2205)。ステップ2205においてYesと判断された場合には、CPU21は、コード発音・消音処理を実行する(ステップ2206)。コード音発音・消音処理においては、発音タイミングに達したコード音についてノートオンイベントを生成し、その一方、消音タイミングに達したコード音についてはノートオフイベントを生成する。
【0089】
その後CPU21は、現在時刻が、自動伴奏データ中、リズムのデータについてのイベントの実行タイミングに達しているかを判断する(ステップ2207)。ステップ2207においてYesと判断された場合には、CPU21は、リズム音発音処理を実行する(ステップ2208)。リズム音発音処理においては、発音タイミングに達したリズム音についてノートオンイベントを生成する。
【0090】
自動伴奏処理(図8のステップ805)が終了すると、CPU21は、音源発音処理を実行する(ステップ806)。音源発音処理において、CPU21は、生成されたノートオンイベントに基づいて、発音すべき楽音の音色および音高を示すデータを音源部26に与え、或いは、消音すべき楽音の音色および音高を示すデータを音源部26に与える。音源部26は、音色、音高、音長等を示すデータにしたがって、ROM22の波形データを読み出して、所定の楽音データを生成する。これにより、スピーカ28から所定の楽音が発生する。
【0091】
音源発音処理(ステップ806)が終了すると、CPU21は、その他の処理(たとえば、表示部15への画像表示、LED(図示せず)の点灯、消灯など:ステップ807)を実行して、ステップ802に戻る。
【0092】
図24は、メロディ鍵域において押鍵された鍵と、伴奏鍵域において押鍵された鍵の押鍵数およびその最低音の音名と、発音された楽音の音高とを説明する図である。図24の例では、マカームとして「マカーム・バヤティ」が選択されている。
【0093】
図24において、メロディ鍵域においては、符号2400に示すよう音名の鍵が押鍵されている。また、第1小節〜第4小節の冒頭(符号2401〜2404参照)では、それぞれ、伴奏鍵域では、最低音がDで押鍵数1、最低音がGで押鍵数2、最低音がGで押鍵数3、並びに、最低音がDで押鍵数1という押鍵がなされている。
【0094】
図24に示す例においては、第1小節〜第4小節では、それぞれ、押鍵数にしたがって、バヤティ(符号2411参照)、ラスト(符号2412参照)、ナハワンド(符号2413参照)およびバヤティ(符号2414参照)が、ジンスとして選択されている。したがって、メロディ鍵域の押鍵は、押鍵された最低音に基づくジンスにしたがった音高の楽音となる。
【0095】
たとえば、第2小節においては、最低音Gに基づき、Gを最低音とするラストにしたがって音高が決定される。第2小節の第3音は、押鍵された鍵(B♭)より1/4音だけ高い音高の楽音が発音される(符号2421参照)。第3小節においては、最低音Gに基づき、Gを最低音とするナハワンドにしたがって音高が決定される。第3小節の第1音は、押鍵された鍵(B♭)と同じ音高の楽音が発音される(ステップ2422参照)。また、第4小節においては、最低音Dに基づき、Dを最低音とするナハワンドにしたがって音高が決定される。第4小節の第4音は、押鍵された(B♭)より1/4音だけ高い音高の楽音が発音される(符号2423参照)。
【0096】
本実施の形態においては、CPU21は、メロディ鍵域102における何れかの押鍵操作に基づいて、発音すべき楽音データの音高を決定する。CPU21は、上記メロディ鍵域102における押鍵操作について、伴奏鍵域101における押鍵状態にしたがって、音律体系データであるマカームデータから、所定の音律であるジンスを特定する。また、CPU21は、特定されたジンスの構成音に基づいて、メロディ鍵域の押鍵された鍵に対応する構成音を特定し、構成音の音高の楽音データを生成すべく、音源部26に指示を与える。伴奏鍵域102の押鍵状態によって、上記マカーム中のジンスが特定されるため、メロディ鍵域において押鍵された鍵に対応する、特定されたジンスの構成音が微分音であれば、適切に微分音の音高の楽音を生成することができ、また、上記特定するジンスの構成音が、通常の白鍵、黒鍵に対応する音高であれば、その音高の楽音を生成することができる。
【0097】
また、本実施の形態においては、伴奏鍵域において押鍵された鍵数に基づいて、音律体系データであるマカームデータから、ジンスが特定される。したがって、演奏者は複雑な操作なく、所望のジンスを指定することが可能となる。
【0098】
さらに、本実施の形態においては、CPU21は、音律体系データであるマカームデータを参照して、音律体系にしたがった順序で、かつ、重複がないように、押鍵された鍵の数と、何れかのジンスとを対応付けている。したがって、押鍵数を変更させることにより、異なるジンスにしたがった音高の楽音を生成することが可能となる。
【0099】
本実施の形態において、CPU21は、伴奏鍵域において押鍵された鍵のうち、所定の鍵の音高と、音律の基準音とに基づいて、音律の構成音の音高を修正する。したがって、同様の旋律を、異なる音高で開始させた場合にも、上記所定の鍵を変化させることにより、ジンスにしたがった適切な音高の楽音を生成することができる。たとえば、伴奏鍵域にて押鍵された鍵のうち、最低音を上記所定の鍵とすることで、演奏者は最低音を変化させることで、異なる音高で始まる旋律を演奏することが可能となる。
【0100】
また、本実施の形態において、CPU21は、音律体系であるマカームを構成する何れかのジンスの指定を受け付け、当該ジンスに対応するジンスデータを表示部12に表示し、ジンスデータにおいて修正された音高を示す情報を受け付けて、修正された音高を示す情報を含む新たなジンスデータを生成する。また、CPU21は、新たなジンスデータの生成に伴って、マカームのデータも更新する。したがって、マカームを構成するジンスの音高を変更することができるとともに、その音高が変更されたジンスを含むマカームについてマカームデータを更新する。したがって、マカームおよびジンスの音高を所望のように変更することが可能となる。
【0101】
さらに、本実施の形態において、CPU21は、音律体系であるマカームを構成する何れかのジンスの指定を受け付け、当該ジンスについて、置換される他のジンスの指定を受け付け、前記他のジンスに対応付けられたジンスデータを指定する情報を含むように、マカームデータを編集する。したがって、マカームを構成するジンスを所望のように変更することが可能である。
【0102】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0103】
たとえば、前記実施の形態においては、押鍵数と、当該押鍵に応じて発音すべき楽音が従うべきジンスについて、CPU21は、マカームの音律体系にしたがった順序で、かつ、重複が無いように、押鍵数と、ジンスとを対応付けている。しかしながら、これに限定されるものではない。本実施の形態において、マカームは基本的に6つのジンスから構成されている。したがって、CPU21は、押鍵数nと、第nジンスとを対応付けても良い。
【符号の説明】
【0104】
10 電子楽器
11 鍵盤
12、13 スイッチ
15 表示部
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 サウンドシステム
25 スイッチ群
26 音源部
27 オーディオ回路
28 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の構成音からなる音律の音高を規定する音律データであって、少なくとも音律の基準音および当該音律の構成音の音高を示す情報を含む音律データと、複数の音律の組み合わせである音律体系を規定する音律体系データであって、前記音律体系にしたがった順序で、当該音律体系を構成する複数の音律のそれぞれについて、前記音律データを指定する情報を含む音律体系データと、を記憶する記憶手段と、
演奏操作子の操作に基づいて、所定の音高の楽音データを生成する楽音データ生成手段と、を備えた電子楽器であって、
演奏操作子は、2つの領域に分割され、
前記演奏操作子における第1の領域における何れかの演奏操作子の操作に基づいて、前記発音すべき楽音データの音高を決定する制御手段を備え、
前記制御手段が、前記第1の領域における演奏操作子の操作について、前記演奏操作子における第2の鍵域における操作子の操作状態にしたがって、前記音律体系データから、所定の音律を特定する音律判定手段と、
前記特定された音律データに示す前記構成音のうち、前記第1の領域の演奏操作子に対応する構成音を特定し、前記構成音の音高の楽音データを生成すべく、前記楽音データ生成手段に指示を与える音高特定手段と、を備えたことを特徴とする電子楽器。
【請求項2】
前記音律判定手段が、前記第2の領域において操作された演奏操作子の数に基づいて、前記音律体系データから所定の音律を特定することを特徴とする請求項1に記載の電子楽器。
【請求項3】
前記音律判定手段が、前記音律体系データを参照して、前記音律体系にしたがった順序で、かつ、重複がないように、前記操作された演奏操作子の数と、何れかの音律とを対応付け、前記対応付けにしたがって、前記所定の音律を特定することを特徴とする請求項2に記載の電子楽器。
【請求項4】
前記音高特定手段が、前記第2の領域において操作された演奏操作子のうち、特定の操作子の音高と、前記基準音とに基づいて、前記構成音の音高を修正し、前記修正された構成音の音高の音高の楽音データを生成することを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の電子楽器。
【請求項5】
前記音高特定手段が、前記第2の領域において操作された演奏操作子のうち、最低音に相当する操作子の音高を、前記特定の操作子の音高とすることを特徴とする請求項4に記載の電子楽器。
【請求項6】
前記制御手段が、
前記音律体系を構成する何れかの音律の指定を受け付け、当該音律に対応する前記音律データを表示手段に表示し、かつ、前記音律データにおいて修正された音高を示す情報を受け付けて、前記修正された音高を示す情報を含む新たな音律データを生成する音律データ生成手段と、
前記新たな音律データの生成に伴って、前記音律体系データを更新する音律体系データ更新手段と、を有することを特徴とする請求項1ないし5の何れか一項に記載の電子楽器。
【請求項7】
前記制御手段が、
前記音律体系を構成する何れかの音律の指定を受け付け、当該音律に置換される他の音律の指定を受け付け、前記他の音律に対応付けられた音律データを指定する情報を含むように前記音律体系データを編集する前記音律体系データ編集手段を有することを特徴とする請求項1ないし6に記載の電子楽器。
【請求項8】
複数の構成音からなる音律の音高を規定する音律データであって、少なくとも音律の基準音および当該音律の構成音の音高を示す情報を含む音律データと、複数の音律の組み合わせである音律体系を規定する音律体系データであって、前記音律体系にしたがった順序で、当該音律体系を構成する複数の音律のそれぞれについて、前記音律データを指定する情報を含む音律体系データと、を記憶する記憶手段と、2つの領域に分割された演奏操作子の操作に基づいて、所定の音高の楽音データを生成する楽音データ生成手段と、を備えたコンピュータに、
前記演奏操作子における第1の領域における何れかの演奏操作子の操作に基づいて、前記発音すべき楽音データの音高を決定する制御ステップを実行させ、
前記制御ステップが、前記第1の領域における演奏操作子の操作について、前記演奏操作子における第2の鍵域における操作子の操作状態にしたがって、前記音律体系データから、所定の音律を特定する音律判定ステップと、
前記特定された音律データに示す前記構成音のうち、前記第1の領域の演奏操作子に対応する構成音を特定し、前記構成音の音高の楽音データを生成すべく、前記楽音データ生成手段に指示を与える音高特定ステップと、を有することを特徴とする楽音生成プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2011−158854(P2011−158854A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22736(P2010−22736)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】