説明

電子機器、開回路検出システム及びその検出方法

【課題】様々な回路素子やそれらのお互いの相互作用によって生成されるノイズに関わらず、対象回路の状態を決定する。
【解決手段】本実施の形態に係る開回路検出システムは、対象回路120に接続され、対象回路120の寄生容量130の特性インピーダンスによって誘導される仮想グランドを介して電気信号を取得し、電気信号に応じて対象回路120がオープンであるかを決定するものである。開回路検出システムによって取得される電気信号は、正常な回路の寄生容量130のキャパシタンスが、開回路の寄生容量のキャパシタンスよりも大きいことを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に回路検出技術に関し、特に、電子機器、開回路の検出システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
開回路を検出する2つのシステムがあり、それらは交流電流(AC)検出システム及び直流電流(DC)検出システムである。
【0003】
開回路を検出する交流電流検出システムが図1に示される。テストされる対象回路は、等価レジスタとレジスタに直列に接続された等価キャパシタと等価である。対象回路が電気的にオープンか否かを決定するために、AC電源が対象回路の一端とグランドとの間に接続される。対象回路の他端は、検出モジュールの一端に接続される。この検出システムは、物理的なグランドループを有している。AC電源により生成されるAC信号は、対象回路を介して検出モジュールに伝送される。これにより、検出モジュールは、AC信号の周波数、大きさに基づいて対象回路の状態を決定しうる。
【0004】
開回路を検出する直流電流検出システムが図2に示される。テストされる対象回路は、等価レジスタとして表わされうる。対象回路の状態を決定するために、DC電源により発生されたDC信号が対象回路の一端に供給される。対象回路の他端は、検出モジュールの一端に接続される。DC電源の他端及び検出モジュールの他端は、グランドに接続されている。この検出システムは、物理的なグランドループを有している。検出モジュールは、DC信号の電流又はDC信号の電圧を取得することにより、対象回路がオープンであるか否かを決定しうる。
【0005】
典型的な検出システムは、物理的なグランドループを有している。システム中の様々な配線が検出システムに影響を及ぼす可能性がある。このため、検出システムは、常に対象回路の真の状態を決定できるわけではない。交流電流検出システムにおいて配線によって生成される等価抵抗は大きい場合がある。式V(noise)=I(noise)*Z(line)によれば、弱いノイズ(I(noise))は、レジスタ(Z(line))を流れる間に大きい干渉信号(V(noise))になる。この問題の解決方法の一つは、フィルターモジュールを付け加えることである。しかしながら、特定の周波数のみがフィルターモジュールによりフィルターされる。フィルターは与えられた信号から不要な周波数を取り除くのに有用であるが、信号中のいくつかの求められる周波数が当該信号から取り除かれ、求められる特徴が失われてしまう。さらに、対象回路中のキャパシタンスが小さい場合、AC信号の周波数は増加することとなる。この周波数の増加は、寄生容量とループインピーダンスによるAC信号のポテンシャルの低下をもたらす。これらの望ましくない影響を取り除くために、追加の補償回路が必要となる可能性がある。DCシステム中の長く、細い接地配線は、電圧を減少させるだけでなく、システムノイズを増加させる。高い精度を確保するためには、これらのシステムにおいて電圧の振幅及びサンプリング分解能のレベルを増加させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許出願公開第101369550号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第101699540号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらの言及した問題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、対象回路の所定の特徴を用い、様々な回路素子やそれらのお互いの相互作用によって生成されるノイズに関わらず、対象回路の状態を決定することである。
【0009】
開回路検出システムは、対象回路に接続され、前記対象回路の寄生容量の特性インピーダンスによって誘導される仮想グランドを介して電気信号を取得し、前記電気信号に応じて前記対象回路がオープンであるかを決定するものである。
【0010】
好ましい態様において、前記開回路検出システムによって取得される前記電気信号は、正常な回路の寄生容量のキャパシタンスが、開回路の寄生容量のキャパシタンスよりも大きいことを示す。
【0011】
好ましい態様において、前記対象回路に接続され、前記寄生容量のキャパシタンスをテストするテストユニットと、前記テストユニットに接続され、前記寄生容量の状態を反映するサンプリングユニットとを含む。
【0012】
好ましい態様において、前記テストユニットは、前記寄生容量を充電するバーストパルスを生成し、前記サンプリングユニットは、充電された前記寄生容量を放電させる。
【0013】
好ましい態様において、前記バーストパルスの立ち上がりエッジは、当該バーストパルスの立下りエッジの前に存在する
【0014】
好ましい態様において、前記対象回路、前記テストユニット及び前記サンプリング回路に接続され、荷電効果、放電効果を増幅する浮遊容量ブースターユニットをさらに備える。
【0015】
好ましい態様において、前記浮遊容量ブースターユニットは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、三極管、又は、ダーリントントランジスタである。
【0016】
好ましい態様において、前記サンプリングユニットは、サンプリングレジスタである。
【0017】
好ましい態様において、開回路検出システムは、前記サンプリングユニットに接続され、前記電気信号を識別信号に変換する信号処理ユニットをさらに備える。
【0018】
好ましい態様において、前記信号処理ユニットは、前記電気信号を前記寄生容量のキャパシタンスに相当するパルスに変換する。
【0019】
好ましい態様において、前記信号処理ユニットは、インバータと、前記インバータに接続されたコンパレータと、前記コンパレータに接続されたANDゲートとを有する。
【0020】
好ましい態様において、開回路検出システムは、テストユニット、浮遊容量ブースターユニット、サンプリングユニット、信号処理ユニットを備え、前記サンプリングユニットはサンプリングレジスタであり、前記信号処理ユニットはインバータ、前記インバータに接続されたコンパレータ、前記コンパレータに接続されたANDゲートを有し、前記テストユニットの一端は、電源に接続され、前記テストユニットの他端は、前記浮遊容量ブースターユニットの第1端子に接続され、前記浮遊容量ブースターユニットの第2端子は、対象回路に接続され、前記浮遊容量ブースターユニットの出力は、前記サンプリングレジスタの一端に接続され、前記サンプリングレジスタの他端は、グランドに接続され、前記インバータの入力は、前記浮遊容量ブースターユニットと前記サンプリングレジスタの共通点に接続され、前記インバータの出力は、前記コンパレータの負端子に接続され、前記コンパレータの正端子は、参照電圧を受信し、前記コンパレータの出力は、前記ANDゲートの第1入力に接続され、前記ANDゲートの第2入力は、ゲートパルスを受信し、前記ANDゲートの出力は、前記寄生容量のキャパシタンスに相当するパルスを出力する。
【0021】
開回路検出方法は、対象回路の寄生容量の特性インピーダンスによって誘導される仮想グランドを介して電気信号を取得し、前記電気信号に応じて、前記対象回路がオープンであるかを決定する。
【0022】
好ましい態様において、前記電気信号は、正常な回路の寄生容量のキャパシタンスが開回路の寄生容量のキャパシタンスよりも大きいことを示す。
【0023】
開回路検出方法は、対象回路の寄生容量を、当該寄生容量の特性インピーダンスを介して仮想グランドに接続し、前記寄生容量のキャパシタンスをテストし、当該寄生容量のキャパシタンスを示す電気信号を生成し、前記電気信号に応じて前記対象回路がオープンであるかを決定する。
【0024】
好ましい態様において、前記電気信号は、正常な回路の寄生容量のキャパシタンスが、開回路の寄生容量のキャパシタンスよりも大きいことを示す。
【0025】
好ましい態様において、前記寄生容量のキャパシタンスをテストするステップでは、前記寄生容量を充電するバーストパルスを生成し、サンプリングユニットを介して前記寄生容量を放電して前記電子信号を生成する。
【0026】
好ましい態様において、前記対象回路がオープンであるかを決定するステップでは、電気信号を識別信号に変換し、前記識別信号に応じて前記対象回路がオープンであるかを決定する
【0027】
電子デバイスは、対象回路と、前記対象回路に接続された開回路検出システムを有し、前記開回路検出システムは、前記対象回路の寄生容量の特性インピーダンスによって誘導される仮想グランドを介して電気信号を取得し、前記電気信号に応じて前記対象回路がオープンであるか、又は当該開回路検出システムに電気的に接続されていないかを決定する。
【0028】
好ましい態様において、前記開回路検出システムで取得される電気信号は、正常な回路の寄生容量のキャパシタンスが、前記対象回路が内部的にオープン又は前記開回路検出システムに電気的に接続されていないときのキャパシタンスよりも大きいことを示す。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、様々な回路素子やそれらのお互いの相互作用によって生成されるノイズに関わらず、対象回路の状態を決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図中の構成要素は、必ずしも一定の縮尺で記載されておらず、本開示の原理を明確に説明するために強調がなされている。
【図1】開回路を検出する従来の交流電流検出システムの機能ブロック図である。
【図2】開回路を検出する従来の直流電流検出システムの機能ブロック図である。
【図3】第1の実施の形態の開回路検出システムの機能ブロック図である。
【図4】第2の実施の形態の開回路検出システムの機能ブロック図である。
【図5】第3の実施の形態の開回路検出システムの機能ブロック図である。
【図6】第3の実施の形態の開回路検出システムの回路図である。
【図7】開回路検出システムのシーケンスダイアグラムである。
【図8】第1の実施の形態の開回路検出方法のフローチャートである。
【図9】第2の実施の形態の開回路検出方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示は例として説明され、同様の参照符号が同様の要素を示す添付図面の図に限定されない。本開示における一つの実施の形態の参照符号は必ずしも同じ実施の形態のものではなく、このような参照符号は少なくとも一つを意味している。
【0032】
図3を参照して、第1の実施の形態の開回路検出システム110について説明する。
【0033】
開回路検出システム110の一端はグランドに接続され、開回路検出システム110の他端は対象回路120に接続されている。開回路検出システム110は、開回路を検出する機能を有する回路又はデバイスである。
【0034】
対象回路120は、開回路が存在する可能性がある、テストを受ける回路又はデバイスである。正常な回路では、対象回路120の一端は開回路検出システム110に接続され、対象回路120の他端は寄生容量130の特性インピーダンスによって誘導される仮想グランドに接続されている。寄生容量130は、回路の導体間、導体や構成要素とグランドとの間、物理的な実体のない構成要素間に存在するキャパシタンスである。説明の便宜上、寄生容量130は、対象回路120のすべての寄生容量を表わすように作られている。
【0035】
物理法則によれば、キャパシタンスは、回路における導体の長さに比例する。正常な回路における寄生容量130は、開回路における寄生容量130よりも大きいため、正常な回路の導体は開回路の導体よりも長い。キャパシタンスが決定された場合、回路の状態は、熟練した人又は機械によって解明されうる。このため、開回路検出システム110は、電気信号を誘導するように配置され、当該電気信号は、正常な回路における寄生容量130のキャパシタンスが開回路における寄生容量130のキャパシタンスよりも大きいことを示すために用いられる。
【0036】
特定の周波数で動作する場合、寄生容量130は、特性インピーダンスによる仮想グランドに接続される。換言すると、寄生容量130は、実際にはグランドに接続されておらず、寄生容量130とグランドとの電位差はゼロである。開回路検出システム110は、参照電位下で動作し始め、対象回路120の回路がオープンであるか否かを示す電気信号を供給する。
【0037】
図4を参照して、第2の実施の形態の開回路検出システム210について説明する。寄生容量230は、回路の導体間、導体とグランドとの間、構成要素とグランドとの間、物理的な実体のない構成要素間に存在するキャパシタンスである。説明の便宜上、寄生容量230は、対象回路220のすべての寄生容量を表わすように作られている。
【0038】
物理法則によれば、キャパシタンスは、導体の長さに比例する。正常な回路における寄生容量230は、開回路における寄生容量230よりも大きいため、正常な回路の導体は開回路の導体よりも長い。キャパシタンスが決定された場合、回路の状態は、熟練した人又は機械によって解明されうる。このため、開回路検出システム210は、電気信号を誘導するように配置され、当該電気信号は、正常な回路における寄生容量230のキャパシタンスが開回路における寄生容量230のキャパシタンスよりも大きいことを示すために用いられる。正常な回路では、開回路検出システム210の一端はグランドに接続され、開回路検出システム210の他端は、対象回路220に接続される。
【0039】
開回路検出システム210は、開回路を検出する機能を有する回路又はデバイスである。開回路検出システム210は、対象回路220に接続されたテストユニット212、テストユニット212に接続されたサンプリングユニット214、サンプリングユニット214に接続された信号処理ユニット216を含む。
【0040】
テストユニット212は、寄生容量230のキャパシタンスをテストするのに用いられる。テストユニット212は、寄生容量230又は寄生容量230に含まれる共振回路を充電することにより寄生容量230のキャパシタンスをテストする。テストユニット212が同じテスト信号を供給する場合、寄生容量が異なるために、開回路及び通常の回路における充電時間定数又は放電時間定数は異なる。
【0041】
サンプリングユニット214は、寄生容量230の状態を反映する。サンプリングユニット214は、サンプリングレジスタやサンプリング機能を有する他の回路でありうる。観察が容易な電気信号が、サンプリングユニット214によってサンプリングされる。対象回路220では、開回路の充電時間定数は、正常な回路の充電時間定数よりも小さい。キャパシタンスが決定された場合、回路の状態は、熟練した人又は機械によって解明されうる。同様に、寄生容量230は、テストユニット212によって充電された後、サンプリングユニット214を介して放電する。観察容易な電気信号はサンプリングユニット214によってサンプルされる。
【0042】
対象回路220では、正常な回路における寄生容量230は、開回路の寄生容量230よりも大きい。キャパシタンスが決定された場合、回路の状態は、熟練した人又は機械によって解明されうる。同様に、共振周波数は、異なる寄生容量、同一のレジスタ、同一の導体を含む、異なる共振回路で異なる。サンプリングユニット214は、テストユニット212、寄生容量230を含む共振回路からの共振信号を取得する。キャパシタンスが決定された場合、回路の状態は、熟練した人又は機械によって解明されうる。
【0043】
自動化を実現するために、信号処理ユニット216は、電気信号を機械によって容易に認識できる識別信号へと変換するためにつけ加えられている。"AND"、"OR"、"NOT"と比較演算、又は他の信号との結合が、信号処理ユニット216により実行され、サンプリングユニット214で得られた電気信号を機械によって容易に認識される識別信号へと変換する。識別信号は、識別信号が取得された後に、演算又は表示のために、コンピュータ、デジタル信号プロセッサ(DSP:digital signal processor)、advanced RISC machineなどに送信される。
【0044】
特定の周波数で動作する場合、寄生容量230は、特性インピーダンスによる仮想グランドに接続される。換言すると、寄生容量230は実際にはグランドに接続されておらず、寄生容量230とグランドとの電位差はゼロである。開回路検出システム210は、参照電位を得た後に動作し始める。開回路検出システム210は、対象回路220をチェックし、回路がオープンであるかを解明する。テストユニット212は、寄生容量230又は寄生容量230を含む共振回路を充電することにより、寄生容量230のキャパシタンスのテストを開始する。
【0045】
対象回路220に関しては、正常な回路の寄生容量230は、開回路の寄生容量230よりも大きい。サンプリングユニット214は、寄生容量230はサンプリングユニット214を介して放電するときに電気信号を供給する。好ましくは、電気信号は、機械により容易に観測、処理される。自動化を実現するため、信号処理ユニット216は、電気信号を機械によって容易に認識できる識別信号へと変換する。"AND"、"OR"、"NOT"と比較演算、又は他の信号との結合が、信号処理ユニット216により実行され、サンプリングユニット214で得られた電気信号が機械によって容易に認識される識別信号へと変換される。識別信号は、演算又は表示のために、コンピュータに送信され、対象回路220の状態はコンピュータによってもたらされうる。
【0046】
図5、6を参照して、第3の実施の形態の開回路検出システム310について説明する。開回路検出システム310の一端は、グランドに接続されており、開回路検出システム310の他端は、対象回路320に接続されている。寄生容量330は、回路の導体間、導体とグランドとの間、構成要素とグランド、物理的な実体のない構成要素間に存在するキャパシタンスである。説明の便宜上、寄生容量330は、対象回路320のすべての寄生容量を表わすように作られている。
【0047】
検出は寄生容量330のみに関連し、説明の便宜上、図6では対象回路320を省略している。さらに、寄生容量330はそれ自体のレジスタンスを有しており、そのため、図6では、寄生容量330を表わすため等価キャパシタと等価レジスタが直列に接続されている。
【0048】
開回路検出システム310は、開回路を検出する機能を有する回路又はデバイスである。開回路検出システム310は、テストユニット312、テストユニット312及び寄生容量330に接続された浮遊容量ブースターユニット313、浮遊容量ブースターユニット313に接続されたサンプリングユニット314、サンプリングユニット314に接続された信号処理ユニット316を含む。
【0049】
テストユニット312は、バーストパルスを生成するものである。テストユニット312の一端は電源に接続されており、テストユニット312の他端は、浮遊容量ブースターユニット313の第1入力に接続されている。テストユニット312は、寄生容量330に浮遊容量ブースターユニット313を介して電気的に接続されている。このため、テストユニット312は、寄生容量330を、浮遊容量ブースターユニット313を介して充電する。
【0050】
浮遊容量ブースターユニット313は、荷電効果、放電効果を増幅するために設けられている。これは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、三極管、ダーリントントランジスタ又は増幅機能を有する他の回路でありうる。浮遊容量ブースターユニット313の第1入力はテストユニット312に接続されており、浮遊容量ブースターユニット313の第2入力は寄生容量330に接続されており、浮遊容量ブースターユニット313の出力は、サンプリングユニット314と信号処理ユニット316の共通点に接続されている。
【0051】
実施の形態では、浮遊容量ブースターユニット313は、トランジスタであり、浮遊容量ブースターユニット313の第1入力は、トランジスタのエミッタであり、浮遊容量ブースターユニット313の第2入力は、トランジスタのベースであり、浮遊容量ブースターユニット313の出力は、トランジスタのコレクタである。テストユニット312により生成されるバーストパルスは、トランジスタのエミッタ、トランジスタのベースを介して寄生容量330を充電する。エミッタ−ベースジャンクションは、寄生容量330の電圧が予め設定された電圧に達するまで、フォワードにバイアスされている。トランジスタの線形領域で動作する場合、トランジスタはアクティブモードであり、荷電効果、放電効果は増幅される。放電電流は、サンプリングユニット314を介して流れ、電圧信号を形成する。
【0052】
サンプリングユニット314は、寄生容量330の状態を反映する。サンプリングユニット314は、サンプリングレジスタやサンプリング機能を有する他の回路である。サンプリングユニット314の一端は、浮遊容量ブースターユニット313と信号処理ユニット316の共通点に接続されており、サンプリングユニット314の他端は、グランドに接続されている。寄生容量330の放電電流は、サンプリングユニット314を介して、浮遊容量ブースターユニット313からグランドに流れ、浮遊容量ブースターユニット313とサンプリングユニット314の共通点から電圧信号がサンプルされる。最後に、電圧信号は、信号処理ユニット316に送信される。
【0053】
信号処理ユニット316は、インバータ3162、インバータ3162に接続されたコンパレータ3164、コンパレータ3164に接続されたANDゲート3166を含む。
【0054】
インバータ3162の入力は、浮遊容量ブースターユニット313とサンプリングユニット314の共通点に接続されており、インバータ3162の出力は、コンパレータ3164の負端子に接続されている。インバータ3162は、サンプリングユニット314により供給された電圧信号を反転させる。インバータ3162は、相対的に高いインピーダンスを有しており、電圧信号に僅かな影響しか与えない。
【0055】
参照電圧は、コンパレータ3164の正端子に供給され、コンパレータ3164の負端子は、インバータ3162の出力に接続されている。正端子の電圧が負端子の電圧よりも高い場合、すなわち、インバータ3162の出力電圧よりも参照電圧が高い場合、コンパレータ3164の出力電圧はハイレベルになる。そうでない場合、コンパレータ3164の出力電圧はローレベルになる。
【0056】
ANDゲート3166の第1入力は、コンパレータ3164に接続されており、ANDゲート3166の第2入力はゲートパルスを受信するために用いられる。ANDゲート3166の第1入力とANDゲート3166の第2入力がともにハイレベルの場合のみ、ANDゲート3166の出力がハイレベルになる。すなわち、ANDゲート3166の第1入力がハイレベルの場合、ANDゲート3166の出力は、ゲートパルスを出力する。一方、ANDゲート3166の第1入力がローレベルの場合、ANDゲート3166はいずれの信号も出力しない。
【0057】
本実施の形態の開回路検出システム310の動作を説明するために、以下にシーケンスダイアグラムが組み合わせられる。
【0058】
図7に示すように、特定の周波数で動作する場合、寄生容量330が特性インピーダンスによる仮想グランドに接続される。換言すると、寄生容量330は、実際にはグランドに接続されておらず、寄生容量330とグランドとの電位差はゼロである。開回路検出システム310は、参照電位下で動作する。開回路検出システム310は、回路がオープンであるか否かを解明する。
【0059】
テストユニット312はバーストパルス410を生成する。バーストパルス410は、立ち上がりエッジが立ち下がりエッジの前に存在する矩形波信号である。バーストパルス410がハイレベルのとき、インバータ3162、コンパレータ3164、アンドゲート3166が有効になる。バーストパルス410は、寄生容量330を充電する。等価レジスタは小さいため、充電処理は短時間で終わる。放電電流は浮遊容量ブースターユニット313で増幅され、サンプリングユニット314へと流れる。
【0060】
そして、放電電流は、サンプリングユニット314で電圧信号を形成する。電圧信号は、インバータ3162によってインバータ出力信号420へと変化する。インバータ出力信号420は、コンパレータ3164の負端子へと送信され、コンパレータ3164の正端子に送信された参照電圧402と比較される。コンパレータ3164の正端子の参照電圧402が、コンパレータ3164の負端子のインバータ出力信号420の電圧よりも高い場合、コンパレータ3164の出力電圧はハイレベルとなり、そうでない場合、コンパレータ3164の出力電圧はローレベルになる。
【0061】
コンパレータ3164の出力信号とゲートパルスのAND演算が実行される。コンパレータ3164の出力がハイレベルのとき、ANDゲート3166はゲートパルスを出力する。そうでなく、コンパレータ3164の出力がローレベルのとき、ANDゲート3166はいずれの信号も出力しない。上述したように、正常な回路の寄生容量330は、開回路の寄生容量330よりも大きく、便宜上、正常な回路の寄生容量330を大容量と呼ぶ。反対に、開回路の寄生容量330を小容量と呼ぶ。キャパシタの放電特性のため、インバータ出力信号420はゆっくりと上昇する。インバータ出力信号420の大容量の信号線422は、インバータ出力信号420の小容量の信号線424よりもゆっくりと上昇する。
【0062】
従って、大容量コンパレータ出力信号430のデューティ比は、小容量コンパレータ出力信号440よりも大きくなる。ANDゲート3166の第1入力に送信されるコンパレータ3164の出力信号と、ANDゲート3166の第2入力に送信されるゲートパルス450のAND演算が実行される。大容量コンパレータ出力信号430のデューティ比は、小容量コンパレータ出力信号440のデューティ比よりも大きいため、大容量ANDゲート出力信号460のパルスの数は小容量ANDゲート出力信号470のそれよりも多い。パルスの数は、コンピュータ、デジタル信号プロセッサ(DSP:digital signal processor)、advanced RISC machineなどに送信され、演算、表示がなされる。
【0063】
図8を参照して、第1の実施の形態の開回路検出方法について説明する。
【0064】
ステップS810は、特性インピーダンス又は寄生容量により誘導される仮想グランドを介して電気信号を取得することを表わしている。換言すると、寄生容量は実際にはグランドに接続されておらず、寄生容量とグランドとの電位差はゼロである。開回路検出システムは参照電圧下で動作し始め、対象回路中の回路がオープンであることを示す電気信号が得られる。寄生容量は直接観察することができないため、容易に観察できる電気信号を生成するために寄生容量が充電される。
【0065】
ステップS820は、電気信号に応じて対象回路がオープンであるか決定することを示している。電気信号が測定されると、回路の状態が熟練した人又は機械により解明される。すなわち、電気信号は、正常な回路の寄生容量のキャパシタンスが開回路の寄生容量のキャパシタンスが大きいことを示している。
【0066】
図9を参照して、第2の実施の形態の開回路検出方法について説明する。
【0067】
ステップ910は、寄生容量の特性インピーダンスを介して仮想グランドへ寄生容量を接続することを示している。特定の周波数で動作する場合、寄生容量は、特性インピーダンスによる仮想グランドに接続される。換言すると、寄生容量は、実際にはグランドに接続されておらず、寄生容量とグランドとの電位差はゼロである。
【0068】
ステップS920は、寄生容量のキャパシタンスをテストし、寄生容量のキャパシタンスを表わす電気信号を生成することを示している。寄生容量は直接観察することができないため、容易に観察できる電気信号を生成するために寄生容量が充電される。
【0069】
ステップS930は、電気信号の識別信号への変換を示している。自動化を実現するために、信号処理ユニットが付加され、電気信号を識別信号に変換する。"AND"、"Or"、"NOT"及び比較演算、又は他の信号との合成が変換処理において用いられうる。
【0070】
ステップS940では、識別信号に応じて、対象回路がオープンであるかが決定される。識別信号が取得された後、演算及び表示のため、識別信号がコンピュータに送信されることが好ましい。最後に、対象回路の状態が解明される。上述したように、正常な回路の寄生容量のキャパシタンスは、開回路の寄生容量のキャパシタンスよりも大きい。
【0071】
開回路検出システム及び方法は、携帯電話やノートパソコン(laptop computers)、携帯端末(personal digital assistants)等の電子デバイスで用いられうる。開回路検出システムが電子デバイスに組み込まれた場合、対象回路は、電子デバイスのその他のパーツでありうる。開回路検出システムは、寄生容量の特性インピーダンスによって誘導される仮想グランドを介して電気信号を取得するために対象回路に接続され、当該電気信号に応じて開回路検出システムに電気的に接続された対象回路がオープンであるか否かが決定される。
【0072】
開回路検出システムで取得された電気信号は、対象回路が内部的にオープン又は開回路検出システムに電気的に接続されていない場合、正常回路の寄生容量のキャパシタンスが対象回路の寄生容量のキャパシタンスよりも大きいことを示す。例えば、タッチパネルを有する携帯電話である場合、開回路検出システムはチップに組み込まれ、対象回路はフレキシブルケーブル(flex-cable)又はガラス上の導電配線である。フレキシブルケーブル又はガラス上の導電配線が内部でオープン又はチップに電気的に接続されていない場合、寄生容量は正常状態よりも小さくなる。
【0073】
本発明は、構造的特徴及び/又は方法的動作に特有の言語で説明されたが、添付の特許請求の範囲で規定される発明が説明した特定の特徴又は動作に限定されるわけではないことが理解される。正確に言うと、特定の特徴及び動作は、クレームされた発明を実現する実施例の形態として開示される。
【符号の説明】
【0074】
110 開回路検出システム
120 対象回路
130 寄生容量
210 開回路検出システム
220 対象回路
230 寄生容量
212 テストユニット
214 サンプリングユニット
216 信号処理ユニット
310 開回路検出システム
320 対象回路
330 寄生容量
312 テストユニット
313 浮遊容量ブースターユニット
314 サンプリングユニット
316 信号処理ユニット
3162 インバータ
3164 コンパレータ
3166 ANDゲート
402 参照電圧
410 バーストパルス
420 インバータ出力信号
422 信号線
424 信号線
430 大容量コンパレータ出力信号
440 小容量コンパレータ出力信号
450 ゲートパルス
460 大容量ANDゲート出力信号
470 小容量ANDゲート出力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象回路に接続され、前記対象回路の寄生容量の特性インピーダンスによって誘導される仮想グランドを介して電気信号を取得し、前記電気信号に応じて前記対象回路がオープンであるかを決定する開回路検出システム。
【請求項2】
前記開回路検出システムによって取得される前記電気信号は、正常な回路の寄生容量のキャパシタンスが、開回路の寄生容量のキャパシタンスよりも大きいことを示すことを特徴とする請求項1に記載の開回路検出システム。
【請求項3】
前記対象回路に接続され、前記寄生容量のキャパシタンスをテストするテストユニットと、
前記テストユニットに接続され、前記寄生容量の状態を反映するサンプリングユニットと、
を備える請求項1又は2に記載の開回路検出システム。
【請求項4】
前記テストユニットは、前記寄生容量を充電するバーストパルスを生成し、
前記サンプリングユニットは、充電された前記寄生容量を放電させる、
請求項3に記載の開回路検出システム。
【請求項5】
前記バーストパルスの立ち上がりエッジは、当該バーストパルスの立下りエッジの前に存在する請求項4に記載の開回路検出システム。
【請求項6】
前記対象回路、前記テストユニット及び前記サンプリング回路に接続され、荷電効果、放電効果を増幅する浮遊容量ブースターユニットをさらに備える請求項4又は5に記載の開回路検出システム。
【請求項7】
前記浮遊容量ブースターユニットは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、三極管、又は、ダーリントントランジスタである請求項6に記載の開回路検出システム。
【請求項8】
前記サンプリングユニットは、サンプリングレジスタである請求項3〜6のいずれか1項に記載の開回路検出システム。
【請求項9】
前記サンプリングユニットに接続され、前記電気信号を識別信号に変換する信号処理ユニットをさらに備える、
請求項3〜7のいずれか1項に記載の開回路検出システム。
【請求項10】
前記信号処理ユニットは、前記電気信号を前記寄生容量のキャパシタンスに相当するパルスに変換することを特徴とする請求項9に記載の開回路検出システム。
【請求項11】
前記信号処理ユニットは、
インバータと、
前記インバータに接続されたコンパレータと、
前記コンパレータに接続されたANDゲートと、
を有する請求項9又は10に記載の開回路検出システム。
【請求項12】
テストユニット、浮遊容量ブースターユニット、サンプリングユニット、信号処理ユニットを備え、
前記サンプリングユニットはサンプリングレジスタであり、
前記信号処理ユニットはインバータ、前記インバータに接続されたコンパレータ、前記コンパレータに接続されたANDゲートを有し、
前記テストユニットの一端は、電源に接続され、
前記テストユニットの他端は、前記浮遊容量ブースターユニットの第1端子に接続され、
前記浮遊容量ブースターユニットの第2端子は、対象回路に接続され、
前記浮遊容量ブースターユニットの出力は、前記サンプリングレジスタの一端に接続され、
前記サンプリングレジスタの他端は、グランドに接続され、
前記インバータの入力は、前記浮遊容量ブースターユニットと前記サンプリングレジスタの共通点に接続され、
前記インバータの出力は、前記コンパレータの負端子に接続され、
前記コンパレータの正端子は、参照電圧を受信し、
前記コンパレータの出力は、前記ANDゲートの第1入力に接続され、
前記ANDゲートの第2入力は、ゲートパルスを受信し、
前記ANDゲートの出力は、前記寄生容量のキャパシタンスに相当するパルスを出力する、
請求項2に記載の開回路検出システム。
【請求項13】
対象回路の寄生容量の特性インピーダンスによって誘導される仮想グランドを介して電気信号を取得し、
前記電気信号に応じて、前記対象回路がオープンであるかを決定する、
開回路検出方法。
【請求項14】
前記電気信号は、正常な回路の寄生容量のキャパシタンスが開回路の寄生容量のキャパシタンスよりも大きいことを示す請求項13に記載の開回路検出方法。
【請求項15】
対象回路の寄生容量を、当該寄生容量の特性インピーダンスを介して仮想グランドに接続し、
前記寄生容量のキャパシタンスをテストし、当該寄生容量のキャパシタンスを示す電気信号を生成し、
前記電気信号に応じて前記対象回路がオープンであるかを決定する、
開回路検出方法。
【請求項16】
前記電気信号は、正常な回路の寄生容量のキャパシタンスが、開回路の寄生容量のキャパシタンスよりも大きいことを示す請求項15に記載の開回路検出方法。
【請求項17】
前記寄生容量のキャパシタンスをテストするステップでは、前記寄生容量を充電するバーストパルスを生成し、サンプリングユニットを介して前記寄生容量を放電して前記電子信号を生成することを特徴とする請求項15又は16に記載の開回路検出方法。
【請求項18】
前記対象回路がオープンであるかを決定するステップでは、電気信号を識別信号に変換し、前記識別信号に応じて前記対象回路がオープンであるかを決定する請求項15〜17のいずれか1項に記載の開回路検出方法。
【請求項19】
対象回路と、
前記対象回路に接続された開回路検出システムを有し、
前記開回路検出システムは、前記対象回路の寄生容量の特性インピーダンスによって誘導される仮想グランドを介して電気信号を取得し、前記電気信号に応じて前記対象回路がオープンであるか、又は当該開回路検出システムに電気的に接続されていないかを決定する電子デバイス。
【請求項20】
前記開回路検出システムで取得される電気信号は、正常な回路の寄生容量のキャパシタンスが、前記対象回路が内部的にオープン又は前記開回路検出システムに電気的に接続されていないときのキャパシタンスよりも大きいことを示す請求項19に記載の電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−242378(P2012−242378A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−76305(P2012−76305)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(504272327)宸鴻光電科技股▲分▼有限公司 (30)
【氏名又は名称原語表記】TPK TOUCH SOLUTIONS INC.
【住所又は居所原語表記】6F,NO.13−18,Sec.6, Min Quan E.Rd.,Neihu Dist.,Taipei,Taiwan.
【Fターム(参考)】