説明

電子機器および伝送システム

【課題】磁界を用いて電力およびデータの伝送を行う際に、低コスト化や小型化を図りつつ安全性を向上させることが可能な電子機器および伝送システムを提供する。
【解決手段】電子機器は、共用コイルと、この共用コイルを利用して、磁界を用いた電力伝送により伝送された電力を受け取る受電動作部と、共用コイルを利用して、磁界を用いた相互のデータ伝送を行うデータ伝送動作部と、共用コイルと受電動作部との間の経路上に配設された第1の切替スイッチと、共用コイルとデータ伝送動作部との間の経路上に配設された第2の切替スイッチと、共用コイルによって外部から受け取った信号の周波数成分を考慮した検出結果に基づいて、第1および第2の切替スイッチにおけるオン・オフ状態の切替制御を行う切替制御部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁界を用いて電力およびデータの伝送(給電および通信)を非接触に行う伝送システム、およびそのような伝送システムに適用される電子機器(給電対象機器,受電装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば携帯電話機や携帯音楽プレーヤー等のCE機器(Consumer Electronics Device:民生用電子機器)に対し、非接触に電力供給(電力伝送)を行う給電システム(非接触給電システム、ワイヤレス充電システム)が注目を集めている。これにより、ACアダプタのような電源装置のコネクタを機器に挿す(接続する)ことによって充電を開始するのはなく、電子機器(2次側機器)を充電トレー(1次側機器)上に置くだけで充電を開始することができる。すなわち、電子機器と充電トレーと間での端子接続が不要となる。
【0003】
このようにして非接触で電力供給を行う方式は、2種類の手法に大別される。1つ目の手法は、既に広く知られている電磁誘導方式であり、送電側(1次側)と受電側(2次側)との結合度が非常に高いため、高効率での給電が可能である。2つ目の手法は、磁界共鳴方式と呼ばれる手法であり、積極的に共振現象を利用することによって送電側と受電側とで共有する磁束が少なくても良いという特徴がある。
【0004】
また、上記した非接触による電力伝送と類似する原理を持つ通信手法(データ伝送手法)として、NFC(Near Field Communication)が挙げられる。このNFCとは、無線通信の国際規格であり、省電力の無線通信技術である。また、このNFCは、日本で主に交通機関等で利用されているRFID(Radio Frequency Identification;電波による個体識別)技術における規格の一例(例えば、使用周波数=13.56MHzに限定した規格)でもある。
【0005】
このような、非接触による(磁界を用いた)電力伝送システムとデータ伝送システムとの双方を組み込んだ伝送システムは、例えば特許文献1〜3において提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−172299号公報
【特許文献2】特開2010−284065号公報
【特許文献3】特開2005−202721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1〜3の伝送システムでは、受電用コイルとデータ伝送用コイルとが単一のコイルで共用化されていることから、コイルの数(種類)が少なくて済み、低コスト化や小型化が図られている。しかしながら、上記した2つのシステム(電力伝送システムおよびデータ伝送システム)間の構成の相違に起因した問題を解決し、安全性を向上させることも望まれる。
【0008】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、磁界を用いて電力およびデータの伝送を行う際に、低コスト化や小型化を図りつつ安全性を向上させることが可能な電子機器および伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の電子機器は、共用コイルと、この共用コイルを利用して、磁界を用いた電力伝送により伝送された電力を受け取る受電動作部と、共用コイルを利用して、磁界を用いた相互のデータ伝送を行うデータ伝送動作部と、共用コイルと受電動作部との間の経路上に配設された第1の切替スイッチと、共用コイルとデータ伝送動作部との間の経路上に配設された第2の切替スイッチと、共用コイルによって外部から受け取った信号の周波数成分を考慮した検出結果に基づいて、第1および第2の切替スイッチにおけるオン・オフ状態の切替制御を行う切替制御部とを備えたものである。
【0010】
本開示の伝送システムは、1または複数の上記本開示の電子機器と、この電子機器に対して磁界を用いた電力伝送を行うと共に電子機器との間で相互にデータ伝送を行う給電装置とを備えたものである。
【0011】
本開示の電子機器および伝送システムでは、共用コイルを利用して、磁界を用いた電力伝送により伝送された電力が受け取られると共に、磁界を用いた相互のデータ伝送が行われる。すなわち、単一の共用コイルを用いて受電動作およびデータ伝送動作の双方が行われるため、これらの動作が個別の専用コイル(受電用コイルおよびデータ伝送用コイル)を用いて行われる場合と比べ、コイルの数(種類)が少なくて済む。また、共用コイルによって外部(給電装置)から受け取った信号の周波数成分を考慮した検出結果に基づいて、共用コイルと受電動作部との間の経路上の第1の切替スイッチと、共用コイルとデータ伝送動作部との間の経路上の第2の切替スイッチとのオン・オフ状態の切替制御が行われる。これにより、電力伝送の際のシステム構成とデータ伝送の際のシステム構成との相違に起因した、回路(例えば、上記データ伝送動作部内の回路等)の破損が防止される。
【発明の効果】
【0012】
本開示の電子機器および伝送システムによれば、共用コイルを利用して、磁界を用いた電力伝送により伝送された電力を受け取ると共に磁界を用いた相互のデータ伝送を行うようにしたので、コイルの数(種類)が少なくて済み、低コスト化や小型化を図ることができる。また、共用コイルによって外部(給電装置)から受け取った信号の周波数成分を考慮した検出結果に基づいて、共用コイルと受電動作部との間の経路上の第1の切替スイッチと、共用コイルとデータ伝送動作部との間の経路上の第2の切替スイッチとのオン・オフ状態の切替制御を行うようにしたので、電力伝送の際のシステム構成とデータ伝送の際のシステム構成との相違に起因した回路の破損を防止し、安全性を高めることができる。よって、磁界を用いて電力およびデータの伝送を行う際に、低コスト化や小型化を図りつつ、安全性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示の一実施の形態に係る伝送システムの外観構成例を表す斜視図である。
【図2】図1に示した伝送システムの詳細構成例を表すブロック図である。
【図3】図2に示したデータ伝送部および復調部の詳細構成例を表す回路図である。
【図4】給電周波数とデータ伝送周波数との関係について説明するための模式図である。
【図5】図2に示したインピーダンス整合回路の一例を表す回路図である。
【図6】図2に示したインピーダンス整合回路の他の例を表す回路図である。
【図7】図2に示した電圧検出部の詳細構成例を表す回路図である。
【図8】比較例1に係る伝送システムの構成例を表すブロック図である。
【図9】比較例2に係る伝送システムの構成例を表すブロック図である。
【図10】図2に示した切替制御部による切替制御動作の一例を表す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(2次側機器で信号の周波数成分を考慮して切替スイッチを制御する例)
2.変形例
【0015】
<実施の形態>
[伝送システム4の全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る伝送システム(伝送システム4)の外観構成例を表したものであり、図2は、この伝送システム4のブロック構成例を表したものである。伝送システム4は、磁界を用いて(磁気共鳴や電磁誘導等を利用して;以下同様)、非接触に電力およびデータの伝送(給電および通信)を行うシステム(非接触型の伝送システム)である。この伝送システム4は、給電装置1(1次側機器)と、給電対象機器としての1または複数の電子機器(ここでは2つの電子機器2A,2B;2次側機器)とを備えている。
【0016】
この伝送システム4では、例えば図1に示したように、給電装置1における給電面(送電面)上に電子機器2A,2Bが置かれる(または近接する)ことにより、給電装置1から電子機器2A,2Bに対して、磁界を用いた電力伝送が行われるようになっている。ここでは、複数の電子機器2A,2Bに対して同時もしくは時分割的(順次)に電力伝送を行う場合を考慮して、給電装置1は、給電面の面積が給電対象の電子機器2A,2B等よりも大きなマット形状(トレー状)となっている。この伝送システム4ではまた、給電装置1と電子機器2A,2Bとが互いに近接すると、これらの給電装置1と電子機器2A,2Bとの間で、磁界を用いた相互のデータ伝送(双方向の無線通信)が行われるようになっている。
【0017】
(給電装置1)
給電装置1は、上記したように、磁界を用いて電子機器2A,2Bに対して電力伝送を行うもの(充電トレー)であると共に、これらの電子機器2A,2Bとの間で相互のデータ伝送を行うものである。この給電装置1は、例えば図2に示したように、送電動作部11、データ伝送動作部12および共用コイルL1を有している。なお、この共用コイルL1は、送電用コイル(1次側コイル)とデータ伝送用コイルとが共用(兼用,共通化)されてなるコイルである。
【0018】
送電動作部11は、共用コイルL1を用いて、電子機器2A,2Bに対して磁界を用いた電力伝送(送電動作)を行うものである。具体的には、給電面から電子機器2A,2Bへ向けて磁界(磁束)を放射する送電動作を行うようになっている。
【0019】
データ伝送動作部12は、共用コイルL1を用いて、電子機器2A,2B(詳細には、後述するデータ伝送動作部22)との間で、磁界を用いた相互のデータ伝送を行うものである。このデータ伝送部12は、例えば図3に示したように、信号供給源120、送信アンプ121、検出回路122、抵抗素子R1および容量素子C1を含んで構成されている。信号供給源120は、送信アンプ121に対してデータ伝送のための所定の信号を供給するものである。検出回路122は、データ伝送の際に、相手側(ここでは後述するデータ伝送動作部22)からの信号の有無を検出する回路である。抵抗素子R1の一端は送信アンプ121の一方の出力端子に接続され、他端は、検出回路122の出力端子、容量素子C1の一端および共用コイルL1の一端側にそれぞれ接続されている。容量素子C1の他端は、送信アンプ121の他方の出力端子および共用コイルL1の他端側に接続されている。
【0020】
(電子機器2A,2B)
電子機器2A,2Bは、例えば、テレビ受像機に代表される据え置き型電子機器や、携帯電話やデジタルカメラに代表される、充電池(バッテリー)を含む携帯型の電子機器等からなる。これらの電子機器2A,2Bは、例えば図2に示したように、共用コイルL2、切替スイッチSW1(第1の切替スイッチ)、切替スイッチSW2(第2の切替スイッチ)、受電動作部21、データ伝送動作部22および切替制御部23を有している。
【0021】
共用コイルL2は、受電用コイル(2次側コイル)とデータ伝送用コイルとが共用(兼用,共通化)されてなるコイルである。つまり、この共用コイルL2は、図2中の矢印P1,D1で示したように、給電装置1内の共用コイルL1から伝送された電力を受け取ると共に、この共用コイルL1との間で相互のデータ伝送を行うためのコイルとなっている。
【0022】
受電動作部21は、上記した共用コイルL2を利用して、磁界を用いた電力伝送により伝送された電力を受け取る受電動作を行うものであり、インピーダンス整合回路211、充電部212およびバッテリー213を有している。インピーダンス整合回路211は、電力伝送を行う際のインピーダンス整合(インピーダンスマッチング)を行う回路であり、これにより電力伝送の際の効率(伝送効率)が向上するようになっている。充電部212は、共用コイルL2において受け取った電力に基づいて、バッテリー213に対して充電を行うものである。バッテリー213は、充電部213による充電に応じて電力を貯蔵するものであり、例えばリチウムイオン電池等の充電池(2次電池)を用いて構成されている。なお、インピーダンス整合回路211の詳細構成例については後述する(図5,図6)。
【0023】
データ伝送動作部22は、共用コイルL2を用いて、給電装置1内のデータ伝送動作部12との間で、磁界を用いた相互のデータ伝送を行うものであり、インピーダンス整合回路221および復調部222を有している。インピーダンス整合回路221は、上記したインピーダンス整合回路211と同様に、電力伝送を行う際のインピーダンス整合を行う回路である。このインピーダンス整合回路221の詳細構成例についても、後述する(図5,図6)。復調部222は、データ伝送の際の復調動作を行うものであり、例えば図3に示したように、容量素子C2、抵抗素子R21,R22、トランジスタTr2および信号供給源222Aを有している。この復調部222では、容量素子C2および抵抗素子R21,R22の各一端が共用コイルL2の一端側に接続され、容量素子C2および抵抗素子R21の各他端とトランジスタTr2のソースとが、共用コイルL2の他端側に接続されると共に接地されている。抵抗素子R22の他端はトランジスタTr2のドレインに接続され、トランジスタTr2のゲートには、信号供給源222Aから復調動作のための所定の信号が供給されるようになっている。
【0024】
切替スイッチSW1は、共用コイルL2と受電動作部21との間の経路(接続ラインLc1)上に配設されており、そのオン・オフ状態が切り替わることにより、共用コイルL2と受電動作部21との間の接続状態が切り替わるようになっている。切替スイッチSW2は、共用コイルL2とデータ伝送動作部22との間の経路(接続ラインLc2)上に配設されており、そのオン・オフ状態が切り替わることにより、共用コイルL2とデータ伝送動作部22との間の接続状態が切り替わるようになっている。なお、これらの切替スイッチSW1,SW2はそれぞれ、例えばトランジスタやMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等を用いて構成されている。
【0025】
切替制御部23は、一端側が共用コイルL2に接続された接続ラインLc3における他端側に配設されており、制御信号CTL1,CTL2を用いて、上記した切替スイッチSW1,SW2におけるオン・オフ状態の切替制御を行うものである。本実施の形態では、この切替制御部23は、共用コイルL2によって外部(ここでは給電装置1)から受け取った信号(搬送波)S2の周波数成分を考慮した検出結果に基づいて、切替スイッチSW1,SW2の切替制御を行う。具体的には、信号S2における電力伝送用およびデータ伝送用の各周波数成分の信号レベル(電圧等)の大きさに応じて、そのような切替制御を行うようになっている。なお、この切替制御部23による切替制御動作の詳細については、後述する(図10)。
【0026】
切替制御部23は、例えば図2に示したように、インピーダンス整合回路231と、2つのBPF(Band Path Filter;バンドパスフィルタ)232A,232Bと、3つの電圧検出部233,233A,233Bと、制御部234とを有している。
【0027】
インピーダンス整合回路231は、上記したインピーダンス整合回路211,221と同様に、電力伝送を行う際のインピーダンス整合を行う回路である。なお、このインピーダンス整合回路231の詳細構成例についても、後述する(図5,図6)。
【0028】
BPF232A(第1のフィルタ)は、上記した信号S2から、電力伝送用の周波数成分(給電周波数f1の成分)を抽出し、信号S21として出力するフィルタである。一方、BPF232B(第2のフィルタ)は、信号S2から、データ伝送用の周波数成分(データ伝送周波数f2の成分)を抽出し、信号S22として出力するフィルタである。
【0029】
ここで、図4(A),(B)に示したように、これらの給電周波数f1とデータ伝送周波数f2との関係は、以下のようになっている。すなわち、給電周波数f1とデータ伝送周波数f2とが互いに異なっており(f1≠f2)、例えば図4(A)に示したように、給電周波数f1がデータ伝送周波数f2よりも低くなっている(f1<f2)。あるいは、例えば図4(B)に示したように、給電周波数f1がデータ伝送周波数f2よりも高くなっている(f2<f1)。これらのうちでは、詳細は後述するが、高周波領域における効率(給電効率等)の低下度合いなどを考慮すると、図4(B)の場合(f2<f1)よりも図4(A)の場合(f1<f2)のほうが望ましいと言える。なお、図4(A)の場合(f1<f2)、給電周波数f1としては、例えば120kHz付近や6.78MHz付近の周波数であり、データ伝送周波数f2としては、例えば13.56MHzである。
【0030】
電圧検出部233(第1の検出部)は、上記した信号S2全体(全ての周波数成分を含むもの)の信号レベル(ここでは電圧)を検出し、検出結果信号J(S2)を出力するものである。一方、電圧検出部233A(第2の検出部)は、BPF232Aにより抽出された信号S21(信号S2における給電周波数f1の成分)の信号レベル(ここでは電圧)を検出し、検出結果信号J(S21)を出力するものである。また、電圧検出部233B(第3の検出部)は、BPF232Bにより抽出された信号S22(信号S2におけるデータ伝送周波数f2の成分)の信号レベル(ここでは電圧)を検出し、検出結果信号J(S22)を出力するものである。なお、これらの電圧検出部233,233A,233Bの詳細構成例については、後述する(図7)。
【0031】
制御部234は、電圧検出部233,233A,233Bによる検出結果としての検出結果信号J(S2),J(S21),J(S22)に基づいて、制御信号CTL1,CTL2を生成し出力することにより、前述した切替スイッチSW1,SW2の切替制御を実行するものである。このような制御部234は、例えばマイクロコンピュータなどを用いて構成されている。
【0032】
[インピーダンス整合回路211,221,231の詳細構成例]
図5および図6はそれぞれ、前述したインピーダンス整合回路211,221,231の詳細構成例を回路図で表わしたものである。
【0033】
図5(A)に示した例では、インピーダンス整合回路211,221,231において、容量素子C3sが共用コイルL2に対して直列接続されている。図5(B)に示した例では、インピーダンス整合回路211,221,231において、容量素子C3pが共用コイルL2に対して並列接続されている。図5(C),(D)に示した例ではそれぞれ、インピーダンス整合回路211,221,231において、容量素子C3sが共用コイルL2に対して直列接続されると共に、容量素子C3pが共用コイルL2に対して並列接続されている。
【0034】
一方、図6(A)〜(C)に示した例では、インピーダンス整合回路211,221,231内に、容量素子C3sまたは容量素子C3pの接続状態を切り替えるためのトランジスタTr3s,Tr3pが設けられている。具体的には、図6(A)に示した例では、図5(C)に示したインピーダンス整合回路211,221,231において、容量素子C3pの接続状態を切り替えるためのトランジスタTr3pが、容量素子C3pに対して直列接続されている。図6(B)に示した例では、容量素子C3s1,C3s2がそれぞれ共用コイルL2に対して直列接続されると共に、容量素子C3pが共用コイルL2に対して並列接続され、容量素子C3s1,C3s2同士は互いに並列接続されている。そして、容量素子C3s2の接続状態を切り替えるためのトランジスタTr3sが、容量素子C3s2に対して直列接続されている。図6(C)に示した例では、図5(C)に示したインピーダンス整合回路211,221,231において、容量素子C3pの接続状態を切り替えるためのトランジスタTr3pが、容量素子C3pに対して直列接続されている。また、容量素子C3sの接続状態を切り替えるためのトランジスタTr3sが、容量素子C3sに対して並列接続されている。このようなトランジスタTr3s,Tr3が設けられることにより、これらのトランジスタTr3s,Tr3pのオン・オフ状態によって容量素子C3sまたは容量素子C3pの接続状態が切り替えられ、インピーダンス整合の際の調整が可能となる。
【0035】
[電圧検出部233,233A,233Bの詳細構成例]
図7は、前述した電圧検出部233,233A,233Bの詳細構成例を回路図で表わしたものである。この例では、電圧検出部233,233A,233Bは、整流回路51と、閾値電圧出力部52と、コンパレータ(比較器)53と、2つの抵抗素子R51,R52とを有している。
【0036】
整流回路51は、共用コイルL2からインピーダンス整合回路231を介して入力された信号S2(交流信号)を整流する回路であり、これにより交流電圧から直流電圧に変換された信号が出力されるようになっている。
【0037】
閾値電圧出力部52は、後述する4つの閾値電圧Vth11,Vth12,Vth21,Vth22のうちのいずれかを、コンパレータ53における負(−)側の入力端子へ出力するものであり、例えば所定の電源回路等を含んで構成されている。
【0038】
抵抗素子R51,R52は、整流回路51から出力される直流電圧を分圧するための抵抗素子である。抵抗素子R51の一端は整流回路51の出力端子に接続され、他端は、抵抗素子R52の一端と、コンパレータ53における正(+)側の入力端子に接続されている。抵抗素子R52の他端は、ここでは接地されている(グランドに接続されている)。このような構成によりコンパレータ53の正側の入力端子には、前述した信号S2,S21,S22の検出電圧としての検出電圧V(S2),V(S21),V(S22)がそれぞれ供給されるようになっている。
【0039】
コンパレータ53は、正側の入力端子に供給される検出電圧V(S2),V(S21),V(S22)のうちのいずれかと、負側の入力端子に供給される閾値電圧Vth11,Vth12,Vth21,Vth22のうちのいずれかとの大小を比較する回路である。これによりコンパレータ53の出力端子から、比較結果としての前述した検出結果信号J(S2),J(S21),J(S22)(例えば、比較結果に応じた「L(ロー)」または「H(ハイ)」の2値化信号)が出力されるようになっている。なお、このような検出電圧V(S2),V(S21),V(S22)と閾値電圧Vth11,Vth12,Vth21,Vth22との比較動作の詳細については、後述する(図10)。
【0040】
なお、電圧検出部233,233A,233Bの構成としては、図7に示したものには限られない。具体的には、例えば、入力された信号S2(アナログ信号)をA/Dコンバータ(アナログ/デジタル変換器)によってデジタル信号に変換した後、所定のデジタル処理を行うような回路構成等であってもよい。
【0041】
[伝送システム4の作用・効果]
(1.全体動作の概要)
この伝送システム4では、給電装置1において、送電動作部11が共用コイルL1に対して、電力伝送を行うための所定の高周波電力(交流信号)を供給する。これにより、共用コイルL1において磁界(磁束)が発生する。このとき、給電装置1の上面(給電面)に、給電対象機器(充電対象機器)としての電子機器2A,2Bが置かれる(または近接する)と、給電装置1内の共用コイルL1と電子機器2A,2B内の共用コイルL2とが、給電面付近にて近接する。
【0042】
このように、磁界(磁束)を発生している共用コイルL1に近接して共用コイルL2が配置されると、共用コイルL1から発生されている磁束に誘起されて、共用コイルL2に起電力が生じる。換言すると、電磁誘導または磁気共鳴により、共用コイルL1および共用コイルL2のそれぞれに鎖交して磁界が発生する。これにより、共用コイルL1側(1次側、給電装置1側)から共用コイルL2側(2次側、電子機器2A,2B側)に対して、電力伝送(給電)が行われる(図2中に示した電力P1参照)。このとき給電装置1側では、例えば、共用コイルL1と図示しないコンデンサとを用いたLC共振動作が行われると共に、電子機器2A,2B側では、共用コイルL2と図示しないコンデンサとを用いたLC共振動作が行われる。
【0043】
すると、電子機器2A,2Bでは、共用コイルL2において受け取った電力(交流電力)に基づいて、受電動作部21において以下の充電動作がなされる。すなわち、充電部212において、例えばこの交流電力が所定の直流電力に変換された後に、バッテリー213)への充電が行われる。このようにして、電子機器2A,2Bにおいて、共用コイルL2において受け取った電力に基づく充電動作がなされる。
【0044】
すなわち、本実施の形態では、電子機器2A,2Bの充電に際し、例えばACアダプタ等への端子接続が不要であり、給電装置1の給電面上に置く(近接させる)だけで、容易に充電を開始させることができる(非接触給電がなされる)。これは、ユーザにおける負担軽減に繋がる。
【0045】
また、この給電システム4では、図2中の矢印D1で示したように、1次側機器(給電装置1)内のデータ伝送動作部12と2次側機器(電子機器2A,2B)内のデータ伝送動作部22との間で、磁界を用いて、相互の非接触によるデータ伝送が行われる。具体的には、給電装置1内の共用コイルL1と電子機器2A,2B内の共用コイルL2とが互いに近接すると、磁界を用いた相互のデータ伝送がなされる。これにより、給電装置1と電子機器2A,2Bとの間でデータ伝送用の配線等を接続させることなく、これらの給電装置1と電子機器2A,2Bとを近接させるだけで、データ伝送を行うことができる。つまり、この点でもユーザにおける負担軽減が図られる。
【0046】
(2.切替スイッチSW1,SW2の切替制御動作)
次に、本実施の形態の特徴的部分の1つである、切替制御部23による切替スイッチSW1,SW2の制御動作(切替制御動作)について、比較例(比較例1,2)と比較しつつ詳細に説明する。
【0047】
(比較例1)
図8は、比較例1に係る伝送システム(伝送システム104)のブロック構成を表したものである。この比較例1の伝送システム104は、給電装置1と、2つの電子機器102A,102Bとを備えている。
【0048】
電子機器102A,102Bはそれぞれ、受電動作部21、データ伝送動作部22、受電用コイルL21およびデータ伝送用コイルL22を有している。すなわち、本実施の形態の電子機器2A,2Bにおける共用コイルL2とは異なり、受電用コイルL21とデータ伝送用コイルL22とが別個に設けられている。
【0049】
このようにして受電用コイルL21とデータ伝送用コイルL22とが別個に設けられているのは、以下の理由に起因している。すなわち、2つの非接触による伝送システム(電力伝送システムおよびデータ伝送システム)では、基本的には同じ原理で(磁界を用いて)伝送がなされているものの、それらのシステム間には、以下の2つの大きく異なる点が存在する。
【0050】
1つ目は、適用される電力(電圧)が、システム間で大きく異なるという点である。具体的には、非接触によるデータ伝送システム(NFC)では、受電電力はIC(Integrated Circuit)を駆動する程度の電力(数mW〜数10mW程度)であるのに対し、非接触による電力伝送システムでは、受電電力は数W程度にもなる。そのため、システム内のICの耐圧等も大きく異なり、電力伝送システムに適用される電圧と同等の電圧がデータ伝送システムに印加された場合、過電圧による回路の破損等を招いてしまうおそれがある。
【0051】
2つ目は、図4(A),(B)を用いて前述したように、適用される周波数がシステム間で大きく異なる(給電周波数f1とデータ伝送周波数f2とが異なっている)という点である。具体的には、非接触によるデータ伝送システム(NFC)では、国際規格によって、例えばデータ伝送周波数f2=13.56MHzの搬送波(キャリア)を用いることが規定されている。一方、非接触による電力伝送システムでは、給電の際の電力が大きいため、法規や効率等の観点から周波数が選定されている。例えば、この非接触による電力伝送システムでは周波数(給電周波数f1)が高くなってしまうと、回路での損失(ロス)が増加して効率(給電効率等)の低下の度合いが大きくなってしまうおそれがある。このことから、現状では規格団体により、給電周波数f1としては120kHz付近や6.78MHz付近といった周波数を用いることが有力視されている。
【0052】
このような電力伝送システムとデータ伝送システムとの間のシステム構成の相違に起因して、比較例1の伝送システム104では、上記したように受電用コイルL21とデータ伝送用コイルL22とが別個に設けられている。しかしながら、これらのコイルが個別に設けられていると、製造コストや実装面積に大きな制約を加えてしまうことになる。すなわち、この比較例1では、低コスト化や小型化を図るのが困難である。
【0053】
(比較例2)
一方、図9に示した比較例2に係る伝送システム(伝送システム204)は、給電装置1と、共用コイルL2を有する2つの電子機器202A,202Bとを備えている。すなわち、この比較例2では、受電用コイルとデータ伝送用コイルとが共用されてなる共用コイルL2を採用することにより、上記比較例1と比べてコイルの数(種類)が少なくて済むようになり、低コスト化や小型化が図られている。
【0054】
電子機器202A,202Bはそれぞれ、受電動作部21、データ伝送動作部22、共用コイルL2、切替スイッチSW1,SW2および切替制御部203を有している。すなわち、本実施の形態の電子機器2A,2Bにおいて、切替制御部23の代わりに切替制御部203を設けたものとなっている。
【0055】
切替制御部203は、インピーダンス整合回路231、電圧検出部233および制御部234を有している。すなわち、切替制御部23において、BPF232A,232Bおよび電圧検出部233,233A,233Bを省いた(設けないようにした)構成となっている。したがって、この切替制御部203では、電圧検出部233による検出結果信号J(S2)(信号S2全体の検出結果)に基づいて制御信号CTL1,CTL2を生成し出力することにより、切替スイッチSW1,SW2の切替制御を実行するようになっている。
【0056】
ただし、この比較例2の伝送システム204では、以下の問題が生じ得る。すなわち、信号S2全体の検出結果だけを用いて切替制御動作を行っていることから、例えば高い信号レベル(電圧)を有する信号S2が突然印加された場合に、データ伝送動作部22内の回路が依然として有効状態(切替スイッチSW2がオン状態)となっている可能性がある。このため、例えばデータ伝送動作部22が有効状態であるときに、給電装置1側でデータ伝送モードから電力伝送モードに切り替えられた場合などに、データ伝送動作部22内の回路が過電圧によって破損してしまうおそれが生じる。
【0057】
なお、このような過電圧による回路破損を防止する手法として、例えば給電装置1と電子機器202A,202Bとの位置関係に応じて(追従して)電圧が変化するように、電子機器202A,202B内に負荷抵抗を設けて電圧を下げる(過電圧の印加を防止する)という手法が考えられる。しかしながら、この手法を採用したとしても、想定外の高い電圧が突然印加される場合には対応できず、そのような場合には電圧が追従する前に回路が破損してしまうと考えられる。
【0058】
このようにして比較例1,2では、磁界を用いて電力およびデータの伝送を行う際に、低コスト化や小型化を図りつつ安全性を向上させるのが困難である。
【0059】
(本実施の形態)
これに対して本実施の形態の電子機器2A,2Bでは、切替制御部23が、以下のようにして切替スイッチSW1,SW2の制御動作(切替制御動作)を行う。具体的には、切替制御部23は、共用コイルL2によって外部(給電装置1)から受け取った信号S2の周波数成分を考慮した検出結果に基づいて、そのような切替制御を行う。すなわち、上記比較例2のように信号S2全体の検出結果だけを用いて切替制御動作を行うのではなく、その信号S2の周波数成分をも考慮して切替制御動作を行う。
【0060】
より具体的には、切替制御部23は、信号S2における電力伝送用およびデータ伝送用の各周波数成分の信号レベルの大きさに応じて、切替制御を行う。また、その際には後述するように、電力伝送用およびデータ伝送用の各周波数成分(信号S2における給電周波数f1およびデータ伝送周波数f2の各成分)の信号レベルと、所定の閾値電圧Vth21,Vth22(キャリア閾値)との比較結果を用いて、そのような切替制御を行う。
【0061】
本実施の形態ではこのような切替制御動作がなされることにより、比較例2とは異なり、前述した電力伝送の際のシステム構成とデータ伝送の際のシステム構成との相違に起因した、回路(例えば、データ伝送動作部22内の回路等)の破損が防止される。
【0062】
図10は、本実施の形態の切替制御部23による切替制御動作の一例を流れ図で表わしたものである。
【0063】
この例では、まず切替制御部23内の電圧検出部233が、信号S2全体の信号レベルとしての、検出電圧V(S2)を検出する(ステップS101)。次いで、電圧検出部233は、この検出電圧V(S2)が所定の閾値電圧Vth11(第1の全体閾値)よりも大きいか否か(V(S2)>Vth11であるのか否か)を判断(電圧値の大小を比較)する(ステップS102)。
【0064】
ここで、検出電圧V(S2)が閾値電圧Vth11よりも大きい場合(V(S2)>Vth11)には(ステップS102:Y)、制御部234はその旨の検出結果信号J(S2)に基づいて、所定のエラー処理を行う(ステップS103)。つまり、制御部234は、この場合には電力伝送およびデータ伝送のいずれをも行うことができない高電圧が印加されていると判断し、以下説明する切替制御を行わずに最初の処理(ステップS101)に戻るように制御する。一方、検出電圧V(S2)が閾値電圧Vth11以下である場合(V(S2)≦Vth11)には(ステップS102:N)、次に電圧検出部233A,233Bがそれぞれ、信号S2における以下の周波数成分の信号レベルを検出する(ステップS104)。具体的には、電圧検出部233Aは、信号S2における給電周波数f1の成分(信号S21)の信号レベルとしての、検出電圧V(S21)を検出する。また、電圧検出部233Bは、信号S2におけるデータ伝送周波数f2の成分(信号S22)の信号レベルとしての、検出電圧V(S22)を検出する。そして、次に電圧検出部233Aは、検出電圧V(S21)が所定の閾値電圧Vth21(第1のキャリア閾値)以上であるのか否か(V(S21)≧Vth21であるのか否か)を判断(電圧値の大小を比較)する(ステップS105)。
【0065】
このように切替制御部23では、信号S2全体の信号レベル(検出電圧V(S2))が閾値電圧Vth11以下である場合(ステップS102:N)にのみ、検出電圧V(S21)と閾値電圧Vth21との比較(ステップS105)、および以下説明する切替スイッチSW1,SW2の切替制御を行う。これにより、例えば突然の高電圧印加による、受電動作部21およびデータ伝送部22内の回路等の破損等が防止される。
【0066】
ここで、検出電圧V(S21)が閾値電圧Vth21以上である場合(V(S21)≧Vth21)には(ステップS105:Y)、制御部234はその旨の検出結果信号J(S21)に基づいて、切替スイッチSW1がオン状態となるように制御信号CTL1を出力する。これにより、切替スイッチSW1がオン状態となる期間、すなわち、受電動作部21の動作が有効状態となる電力伝送モード(給電モード)となる(ステップS106)。なお、その後は最初の処理(ステップS101)へと戻る。
【0067】
一方、検出電圧V(S21)が閾値電圧Vth21未満である場合(V(S21)<Vth21)には(ステップS105:N)、制御部234は、切替スイッチSW1がオフ状態となるように制御信号CTL1を出力する(ステップS107)。そして、次に電圧検出部233Bは、検出電圧V(S22)が所定の閾値電圧Vth22(第2のキャリア閾値)以上であるのか否か(V(S22)≧Vth22であるのか否か)を判断(電圧値の大小を比較)する(ステップS108)。
【0068】
ここで、検出電圧V(S22)が閾値電圧Vth22以上である場合(V(S22)≧Vth22)には(ステップS108:Y)、次に電圧検出部233は、以下の電圧値の大小の比較を行う。すなわち、検出電圧V(S2)が所定の閾値電圧Vth12(第2の全体閾値)よりも大きいか否か(V(S2)>Vth12であるのか否か)を判断する(ステップS109)。なお、この閾値電圧Vth12は、前述した閾値電圧Vth11よりも値の小さいもの、換言すると、閾値電圧Vth11は閾値電圧Vth12よりも値の大きいものである(Vth12<Vth11)。一方、検出電圧V(S22)が閾値電圧Vth22未満である場合(V(S22)<Vth22)には(ステップS108:N)、制御部234はその旨の検出結果信号J(S22)に基づいて、切替スイッチSW2がオフ状態となるように制御信号CTL2を出力する(ステップS110)。
【0069】
ここで、検出電圧V(S2)が閾値電圧Vth12よりも大きい場合(V(S2)>Vth12)には(ステップS109:Y)、制御部234はその旨の検出結果信号J(S2)に基づいて、切替スイッチSW2がオフ状態となるように制御信号CTL2を出力する(ステップS110)。一方、検出電圧V(S2)が閾値電圧Vth12以下である場合(V(S2)≦Vth12)には(ステップS109:N)、制御部234は切替スイッチSW2がオン状態となるように制御信号CTL2を出力する。これにより、切替スイッチSW2がオン状態となる期間、すなわち、データ伝送動作部22の動作が有効状態となるデータ伝送モード(通信モード)となる(ステップS111)。なお、その後は最初の処理(ステップS101)へと戻る。
【0070】
このように切替制御部23では、検出電圧V(S22)が閾値電圧Vth22以上である場合(ステップS108:Y)において、検出電圧V(S2)が閾値電圧Vth12以下である場合(ステップS109:N)にのみ、切替スイッチSW2がオン状態となるように制御する。これにより、前述した電力伝送の際のシステム構成(受電動作部21の構成)とデータ伝送の際のシステム構成(データ伝送動作部22の構成)との相違に起因した、回路(データ伝送動作部22内の回路等)の破損が防止される。
【0071】
続いて、ステップS110の後、切替制御部23による全体の制御処理(切替制御動作)を終了させるのか否かが判断される(ステップS112)。そして、終了させないと判断された場合には(ステップS112:N)、最初の処理(ステップS101)へと戻り、終了させると判断された場合には(ステップS112:Y)、図10に示した全体の制御処理が終了となる。
【0072】
このようにして本実施の形態では、共用コイルL2を利用して、磁界を用いた電力伝送により伝送された電力が受け取られると共に、磁界を用いた相互のデータ伝送が行われる。すなわち、単一の共用コイルL2を用いて受電動作およびデータ伝送動作の双方が行われるため、上記比較例1のように、これらの動作が個別の専用コイル(受電用コイルL21およびデータ伝送用コイルL22)を用いて行われる場合と比べ、コイルの数(種類)が少なくて済む。
【0073】
また、共用コイルL2によって外部(給電装置1)から受け取った信号S2の周波数成分を考慮した検出結果に基づいて、共用コイルL2と受電動作部21との間の経路上の切替スイッチSW1と、共用コイルL2とデータ伝送動作部22との間の経路上の切替スイッチSW2とのオン・オフ状態の切替制御が行われる。これにより、上記比較例2とは異なり、電力伝送の際のシステム構成とデータ伝送の際のシステム構成との相違に起因した、回路(データ伝送動作部22内の回路等)の破損が防止される。
【0074】
具体的には、例えば前述したように、高電圧の信号S2が突然印加された場合において、データ伝送動作部22内の回路が依然として有効状態(切替スイッチSW2がオン状態)となっているような状況であっても、そのような回路の破損が回避される。すなわち、そのような場合には、給電装置1側でデータ伝送モードから電力伝送モードに切り替えられた瞬間に、信号S2におけるデータ伝送周波数f2の成分の信号レベル(電圧V(S22))が落ち込むことが想定されるため、切替スイッチSW2がオフ状態となるように切替制御がなされることになる。
【0075】
以上のように本実施の形態では、共用コイルL2を利用して、磁界を用いた電力伝送により伝送された電力を受け取ると共に磁界を用いた相互のデータ伝送を行うようにしたので、コイルの数(種類)が少なくて済み、低コスト化や小型化を図ることができる。また、この共用コイルL2によって外部(給電装置1)から受け取った信号S2の周波数成分を考慮した検出結果に基づいて、共用コイルL2と受電動作部21との間の経路上の切替スイッチSW1と、共用コイルL2とデータ伝送動作部22との間の経路上の切替スイッチSW2とのオン・オフ状態の切替制御を行うようにしたので、電力伝送の際のシステム構成とデータ伝送の際のシステム構成との相違に起因した回路の破損を防止し、安全性を高めることができる。よって、磁界を用いて電力およびデータの伝送を行う際に、低コスト化や小型化を図りつつ、安全性を向上させることが可能となる。
【0076】
また、給電周波数f1の値を選択可能とすることができると共に、電力伝送システムおよびデータ伝送システムの各回路とも、従来のICをそのまま使用することが可能となる(設計変更等を行う必要が生じない)。
【0077】
<変形例>
以上、実施の形態を挙げて本開示の技術を説明したが、本技術はこの実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0078】
例えば、上記実施の形態において挙げた各コイル(共用コイル)の構成(形状)としては、種々のものを用いることが可能である。すなわち、例えばスパイラル形状やループ形状、磁性体を用いたバー形状、スパイラルコイルを2層で折り返すように配置するα巻き形状、更なる多層のスパイラル形状、厚み方向に巻線が巻回しているヘリカル形状などによって、各コイルを構成することが可能である。また、各コイルは、導電性を有する線材により構成された巻き線コイルだけではなく、プリント基板やフレキシブルプリント基板などにより構成された、導電性を有するパターンコイルであってもよい。
【0079】
また、上記実施の形態では、給電対象機器の一例として電子機器を挙げて説明したが、これには限られず、電子機器以外の給電対象機器(例えば、電気自動車等の車両など)であってもよい。
【0080】
更に、上記実施の形態では、給電装置および電子機器の各構成要素を具体的に挙げて説明したが、全ての構成要素を備える必要はなく、また、他の構成要素を更に備えていてもよい。例えば、給電装置や電子機器内に、通信機能や何かしらの制御機能、表示機能、2次側機器を認証する機能、2次側機器が1次側機器上にあることを判別する機能、異種金属などの混入を検知する機能などを搭載するようにしてもよい。また、給電装置内において、上記実施の形態のように単一の共用コイルが設けられているのではなく、送電用コイルとデータ伝送用コイルとが個別に設けられているようにしてもよい。
【0081】
加えて、上記実施の形態では、伝送システム内に複数(2つ)の電子機器が設けられている場合を例に挙げて説明したが、この場合には限られず、伝送システム内に1つの電子機器のみが設けられているようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施の形態では、給電装置の一例として、携帯電話機等の小型の電子機器(CE機器)向けの充電トレーを挙げて説明したが、給電装置としてはそのような家庭用の充電トレーには限定されず、様々な電子機器等の充電器として適用可能である。また、必ずしもトレーである必要はなく、例えば、いわゆるクレードル等の電子機器用のスタンドであってもよい。
【0083】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
共用コイルと、
前記共用コイルを利用して、磁界を用いた電力伝送により伝送された電力を受け取る受電動作部と、
前記共用コイルを利用して、磁界を用いた相互のデータ伝送を行うデータ伝送動作部と、
前記共用コイルと前記受電動作部との間の経路上に配設された第1の切替スイッチと、
前記共用コイルと前記データ伝送動作部との間の経路上に配設された第2の切替スイッチと、
前記共用コイルによって外部から受け取った信号の周波数成分を考慮した検出結果に基づいて、前記第1および第2の切替スイッチにおけるオン・オフ状態の切替制御を行う切替制御部と
を備えた電子機器。
(2)
前記切替制御部は、前記信号における前記電力伝送用および前記データ伝送用の各周波数成分の信号レベルの大きさに応じて、前記切替制御を行う
上記(1)に記載の電子機器。
(3)
前記切替制御部は、前記電力伝送用および前記データ伝送用の各周波数成分の信号レベルと、所定のキャリア閾値との比較結果を用いて、前記切替制御を行う
上記(2)に記載の電子機器。
(4)
前記切替制御部は、
前記電力伝送用の周波数成分の信号レベルが第1のキャリア閾値以上である場合には、前記第1の切替スイッチがオン状態となるように制御し、
前記電力伝送用の周波数成分の信号レベルが前記第1のキャリア閾値未満である場合には、前記第1の切替スイッチがオフ状態となるように制御する
上記(3)に記載の電子機器。
(5)
前記切替制御部は、前記信号全体の信号レベルが第1の全体閾値以下である場合にのみ、前記電力伝送用の周波数成分の信号レベルと前記第1のキャリア閾値との比較を行う
上記(4)に記載の電子機器。
(6)
前記切替制御部は、
前記データ伝送用の周波数成分の信号レベルが第2のキャリア閾値以上である場合には、前記信号全体の信号レベルと第2の全体閾値との比較を行い、
前記データ伝送用の周波数成分の信号レベルが前記第2のキャリア閾値未満である場合には、前記第2の切替スイッチがオフ状態となるように制御する
上記(3)ないし(5)のいずれかに記載の電子機器。
(7)
前記切替制御部は、
前記データ伝送用の周波数成分の信号レベルが前記第2のキャリア閾値以上である場合において、前記信号全体の信号レベルが前記第2の全体閾値以下である場合にのみ、前記第2の切替スイッチがオン状態となるように制御する
上記(6)に記載の電子機器。
(8)
前記切替制御部は、前記信号全体の信号レベルが、前記第2の全体閾値よりも値の大きい第1の全体閾値以下である場合にのみ、前記切替制御を行う
上記(6)または(7)に記載の電子機器。
(9)
前記切替制御部は、
前記信号から前記電力伝送用の周波数成分を抽出する第1のフィルタと、
前記信号から前記データ伝送用の周波数成分を抽出する第2のフィルタと、
前記信号全体の信号レベルを検出する第1の検出部と、
前記第1のフィルタにより抽出された電力伝送用の周波数成分の信号レベルを検出する第2の検出部と、
前記第2のフィルタにより抽出されたデータ伝送用の周波数成分の信号レベルを検出する第3の検出部と、
前記第1ないし第3の検出部による検出結果に基づいて、前記切替制御を実行する制御部と
を有する上記(2)ないし(8)のいずれかに記載の電子機器。
(10)
前記第1の切替スイッチがオン状態となっている期間では、前記受電動作部の動作が有効状態となる電力伝送モードとなり、
前記第2の切替スイッチがオン状態となっている期間では、前記データ伝送動作部の動作が有効状態となるデータ伝送モードとなる
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の電子機器。
(11)
1または複数の電子機器と、
前記電子機器に対して磁界を用いた電力伝送を行うと共に、前記電子機器との間で相互にデータ伝送を行う給電装置と
を備え、
前記電子機器は、
共用コイルと、
前記共用コイルを利用して、前記電力伝送により伝送された電力を受け取る受電動作部と、
前記共用コイルを利用して前記データ伝送を行うデータ伝送動作部と、
前記共用コイルと前記受電動作部との間の経路上に配設された第1の切替スイッチと、
前記共用コイルと前記データ伝送動作部との間の経路上に配設された第2の切替スイッチと、
前記共用コイルによって前記給電装置から受け取った信号の周波数成分を考慮した検出結果に基づいて、前記第1および第2の切替スイッチにおけるオン・オフ状態の切替制御を行う切替制御部と
を有する伝送システム。
【符号の説明】
【0084】
1…給電装置(1次側機器)、11…送電動作部、12…データ伝送動作部、120…信号供給源、121…送信アンプ、122…検出回路、2A,2B…電子機器(2次側機器)、21…受電動作部、211…インピーダンス整合回路、212…充電部、213…バッテリー、22…データ伝送動作部、221…インピーダンス整合回路、222…復調部、222A…信号供給源、23…切替制御部、231…インピーダンス整合回路、232A,232B…BPF(バンドパスフィルタ)、233,233A,233B…電圧検出部、234…制御部、4…伝送システム、51…整流回路、52…閾値電圧出力部、53…コンパレータ(比較器)、L1,L2…共用コイル、Lc1,Lc2,Lc3…接続ライン、SW1,SW2…切替スイッチ、S2,S21,S22…信号(搬送波)、J(S2),J(S21),J(S22)…検出結果信号、CTL1,CTL2…制御信号、f1…給電周波数、f2…データ伝送周波数、V(S2),V(S21),V(S22)…電圧(検出電圧)、Vth11,Vth12,Vth21,Vth22…閾値電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共用コイルと、
前記共用コイルを利用して、磁界を用いた電力伝送により伝送された電力を受け取る受電動作部と、
前記共用コイルを利用して、磁界を用いた相互のデータ伝送を行うデータ伝送動作部と、
前記共用コイルと前記受電動作部との間の経路上に配設された第1の切替スイッチと、
前記共用コイルと前記データ伝送動作部との間の経路上に配設された第2の切替スイッチと、
前記共用コイルによって外部から受け取った信号の周波数成分を考慮した検出結果に基づいて、前記第1および第2の切替スイッチにおけるオン・オフ状態の切替制御を行う切替制御部と
を備えた電子機器。
【請求項2】
前記切替制御部は、前記信号における前記電力伝送用および前記データ伝送用の各周波数成分の信号レベルの大きさに応じて、前記切替制御を行う
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記切替制御部は、前記電力伝送用および前記データ伝送用の各周波数成分の信号レベルと、所定のキャリア閾値との比較結果を用いて、前記切替制御を行う
請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記切替制御部は、
前記電力伝送用の周波数成分の信号レベルが第1のキャリア閾値以上である場合には、前記第1の切替スイッチがオン状態となるように制御し、
前記電力伝送用の周波数成分の信号レベルが前記第1のキャリア閾値未満である場合には、前記第1の切替スイッチがオフ状態となるように制御する
請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記切替制御部は、前記信号全体の信号レベルが第1の全体閾値以下である場合にのみ、前記電力伝送用の周波数成分の信号レベルと前記第1のキャリア閾値との比較を行う
請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記切替制御部は、
前記データ伝送用の周波数成分の信号レベルが第2のキャリア閾値以上である場合には、前記信号全体の信号レベルと第2の全体閾値との比較を行い、
前記データ伝送用の周波数成分の信号レベルが前記第2のキャリア閾値未満である場合には、前記第2の切替スイッチがオフ状態となるように制御する
請求項3に記載の電子機器。
【請求項7】
前記切替制御部は、
前記データ伝送用の周波数成分の信号レベルが前記第2のキャリア閾値以上である場合において、前記信号全体の信号レベルが前記第2の全体閾値以下である場合にのみ、前記第2の切替スイッチがオン状態となるように制御する
請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記切替制御部は、前記信号全体の信号レベルが、前記第2の全体閾値よりも値の大きい第1の全体閾値以下である場合にのみ、前記切替制御を行う
請求項6に記載の電子機器。
【請求項9】
前記切替制御部は、
前記信号から前記電力伝送用の周波数成分を抽出する第1のフィルタと、
前記信号から前記データ伝送用の周波数成分を抽出する第2のフィルタと、
前記信号全体の信号レベルを検出する第1の検出部と、
前記第1のフィルタにより抽出された電力伝送用の周波数成分の信号レベルを検出する第2の検出部と、
前記第2のフィルタにより抽出されたデータ伝送用の周波数成分の信号レベルを検出する第3の検出部と、
前記第1ないし第3の検出部による検出結果に基づいて、前記切替制御を実行する制御部と
を有する請求項2に記載の電子機器。
【請求項10】
前記第1の切替スイッチがオン状態となっている期間では、前記受電動作部の動作が有効状態となる電力伝送モードとなり、
前記第2の切替スイッチがオン状態となっている期間では、前記データ伝送動作部の動作が有効状態となるデータ伝送モードとなる
請求項1に記載の電子機器。
【請求項11】
1または複数の電子機器と、
前記電子機器に対して磁界を用いた電力伝送を行うと共に、前記電子機器との間で相互にデータ伝送を行う給電装置と
を備え、
前記電子機器は、
共用コイルと、
前記共用コイルを利用して、前記電力伝送により伝送された電力を受け取る受電動作部と、
前記共用コイルを利用して前記データ伝送を行うデータ伝送動作部と、
前記共用コイルと前記受電動作部との間の経路上に配設された第1の切替スイッチと、
前記共用コイルと前記データ伝送動作部との間の経路上に配設された第2の切替スイッチと、
前記共用コイルによって前記給電装置から受け取った信号の周波数成分を考慮した検出結果に基づいて、前記第1および第2の切替スイッチにおけるオン・オフ状態の切替制御を行う切替制御部と
を有する伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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