説明

電子機器のアース構造

【課題】フレキシブルリードの形状が複雑化することなく、然も、従来よりも部品点数を減少させ、組立工数を削減することが出来る電子機器のアース構造を提供する。
【解決手段】本発明に係る電子機器においては、金属ベース板2に電子部品が搭載され、該電子部品から引き出されたフレキシブルリード4は、金属ベース板2の近傍位置に配備された金属部品3に沿って延びている。ここで、フレキシブルリード4の表面及び裏面には、表面及び裏面の絶縁カバー層の一部が欠如してグランドラインが露出しており、金属ベース板2に形成された凸部21がフレキシブルリード4の表面側のグランドライン露出部に圧接されると共に、金属部品3に形成された突片31がフレキシブルリード4の裏面側のグランドライン露出部に圧接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ等の電子機器におけるアース構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より各種の電子機器において、電子部品が静電気によって悪影響を受けることを防止するべく、電子部品の近傍位置に配備されている金属部品をアースすることが行なわれている(特許文献1参照)。
【0003】
例えばデジタルカメラにおいては、図7に示す様に、金属ベース板(7)の裏面側にCCD等の撮像素子(5)が接着剤(22)を用いて固定され、該撮像素子(5)から引き出されたフレキシブルリード(6)は、金属ベース板(7)の近傍位置に配備された金属部品(8)に沿って延びている。この様なデジタルカメラにおいては、金属ベース板(7)や金属部品(8)が帯電することによって撮像素子(5)が悪影響を受けることになる。
【0004】
そこで、従来のデジタルカメラにおいては、図7の如くフレキシブルリード(6)に2つのグランドリード部(61)(62)を設け、一方のグランドリード部(61)をねじ(9)によって金属部品(8)に締結すると共に、他方のグランドリード部(62)をねじ(91)によって金属ベース板(7)に締結して、金属部品(8)及び金属ベース板(7)の帯電を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−168965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図7に示す従来の静電対策では、少なくとも一方のグランドリード部(62)を図示の如くU字状に屈曲させると共に、両方のグランドリード部(61)(62)をねじ(9)(91)によって金属部品(8)及び金属ベース板(7)に締結する必要があるため、フレキシブルリード(6)の形状が複雑化するばかりでなく、部品点数が増大し、組立工数が増大する問題があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、フレキシブルリードの形状が複雑化することなく、然も、従来よりも部品点数を減少させ、組立工数を削減することが出来る電子機器のアース構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子機器においては、金属ベース板(2)に電子部品が搭載され、該電子部品から引き出されたフレキシブルリード(4)は、前記金属ベース板(2)の近傍位置に配備された金属部品(3)に沿って延びている。
ここで、前記フレキシブルリード(4)の表面及び裏面には、表面及び裏面の絶縁カバー層(44)(44)の一部が欠如してグランドライン(47)(48)が露出しており、前記金属ベース板(2)に形成された凸部(21)が前記フレキシブルリード(4)の表面側のグランドライン露出部(47a)に圧接されると共に、前記金属部品(3)に形成された突片(31)が前記フレキシブルリード(4)の裏面側のグランドライン露出部(48a)に圧接されている。
【0009】
上記本発明のアース構造によれば、金属ベース板(2)の凸部(21)がフレキシブルリード(4)の表面側のグランドライン露出部(47a)に圧接されると共に、金属部品(3)の突片(31)がフレキシブルリード(4)の裏面側のグランドライン露出部(48a)に圧接されることによって、金属ベース板(2)と金属部品(3)がアースされることになる。
【0010】
ここで、金属ベース板(2)の凸部(21)がフレキシブルリード(4)の表面側のグランドライン露出部(47a)を押圧する力と、金属部品(3)の突片(31)がフレキシブルリード(4)の裏面側のグランドライン露出部(48a)を押圧する力により、フレキシブルリード(4)に対してアース構造として適切な圧接力を得る態様となる。
【0011】
具体的態様において、前記金属部品(3)の突片(31)は、前記金属ベース板(2)の凸部(21)に対して接近離間する方向に弾性を発揮する板ばね状を呈し、前記金属ベース板(2)の凸部(21)と前記金属部品(3)の突片(31)とによって、前記フレキシブルリード(4)のグランドライン露出部(47a)(48a)が両側から挟圧されている。
【0012】
該具体的態様によれば、金属部品(3)の突片(31)が発揮する弾性によって、フレキシブルリード(4)のグランドライン露出部(47a)(48a)が金属ベース板(2)の凸部(21)と金属部品(3)の突片(31)とによって両側から挟圧され、これによって、金属ベース板(2)の凸部(21)がフレキシブルリード(4)の表面側のグランドライン露出部(47a)に圧接されると共に、金属部品(3)の突片(31)がフレキシブルリード(4)の裏面側のグランドライン露出部(48a)に圧接される。
【0013】
更に具体的な態様において、前記金属ベース板(2)と金属部品(3)は共通のフレーム(1)に固定されている。
例えば、従来より金属ベース板(2)をフレーム(1)に固定するために採用されている締結構造や、金属部品(3)をフレーム(1)に取り付けるために採用されている係合構造をそのまま利用して、金属ベース板(2)と金属部品(3)を共通のフレーム(1)に固定することが出来る。
【0014】
これにより、金属ベース板(2)と金属部品(3)との相対位置が固定されて、金属ベース板(2)の凸部(21)と金属部品(3)の突片(31)がフレキシブルリード(4)のグランドライン露出部(47a)(48a)に圧接された状態を安定的に維持することが出来る。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電子機器のアース構造によれば、フレキシブルリード(4)の形状が複雑化することなく、然も、金属ベース板(2)の凸部(21)と金属部品(3)の突片(31)がフレキシブルリード(4)のグランドライン露出部(47a)(48a)に圧接されることによってアース接続が行なわれているので、従来の締結構造によるアース接続は不要となり、これによって、従来よりも部品点数を減少させ、組立工数を削減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態であるデジタルカメラにおけるアース構造を示す平面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図3は、図2の要部を拡大して示す断面図である。
【図4】図4は、フレキシブルリードの平面図である。
【図5】図5は、フレキシブルリードの裏面図である。
【図6】図6は、金属部品の斜視図である。
【図7】図7は、従来のデジタルカメラにおけるアース構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をデジタルカメラに実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。尚、以下の説明では、便宜上、図2に示された各構成部品の姿勢における上面及び下面を各構成部品の表面及び裏面と呼ぶ。
【0018】
本発明の一実施形態であるデジタルカメラにおいては、図1に示す如く、合成樹脂製のフレーム(1)の表面に、手ぶれ防止機構(図示省略)を介して、CCDからなる撮像素子(5)が配備されている。
【0019】
撮像素子(5)は、図4及び図5に示すフレキシブルリード(4)の端部に搭載されており、図2の如く、ステンレス鋼製の金属ベース板(2)の裏面側に接着剤(22)を用いて固定されている。
【0020】
撮像素子(5)から引き出されたフレキシブルリード(4)は、図1及び図2に示す如く、金属ベース板(2)の近傍位置に配備されたステンレス鋼製の金属部品(3)の表面に沿って延び、更に、画像処理回路等を搭載した回路基板(図示省略)まで延びている。
尚、金属部品(3)は、図6の如く平板状に形成されており、撮像素子(5)から引き出されたフレキシブルリード(4)をガイドするものでる。
【0021】
フレキシブルリード(4)は、図3に示す如く、ベース層(41)と、ベース層(41)の両面に形成された導体パターン層(42)(43)と、導体パターン層(42)(43)を覆ってベース層(41)の両側に形成された絶縁カバー層(44)(44)とから構成されており、導体パターン層(42)(43)にはそれぞれ、図4及び図5に示すグランドライン(47)(48)が形成されている。
【0022】
フレキシブルリード(4)には、図3に示す如く、表面側の絶縁カバー層(44)の一部を剥離して絶縁剥離部(45)が形成され、これによって導体パターン層(42)のグランドライン(47)を露出させたグランドライン露出部(47a)が形成されている。又、フレキシブルリード(4)には、前記グランドライン露出部(47a)と重なる位置において裏面側の絶縁カバー層(44)の一部を剥離して絶縁剥離部(46)が形成され、これによって導体パターン層(43)のグランドライン(48)を露出させたグランドライン露出部(48a)が形成されている。
【0023】
金属ベース板(2)の端部には、図2に示す如くフレキシブルリード(4)の端部をフレキシブルリード(4)の絶縁剥離部(45)に向かって突出させた凸部(21)が一体に成形されている。
又、金属部品(3)には、金属部品(3)の端部をフレキシブルリード(4)の絶縁剥離部(46)に向かって突出させた突片(31)が一体に形成されている。該突片(31)は、図6に示す如くV字状に屈曲して、片持ちの板ばねを構成している。
【0024】
尚、金属ベース板(2)は図1に示すフレーム(1)にねじ等の締結機構(図示省略)を用いて固定され、金属部品(3)はフック等の係合機構(図示省略)を介してフレーム(1)に固定されている。
【0025】
図3に示す如く、金属部品(3)の突片(31)が発揮する弾性によって、フレキシブルリード(4)の表面側のグランドライン露出部(47a)と裏面側のグランドライン露出部(48a)が、金属ベース板(2)の凸部(21)と金属部品(3)の突片(31)とによって両側から挟圧されている。
これによって、金属ベース板(2)の凸部(21)は、フレキシブルリード(4)の表面側のグランドライン露出部(47a)に圧接されると共に、金属部品(3)の突片(31)はフレキシブルリード(4)の裏面側のグランドライン露出部(48a)に圧接されている。
この結果、金属ベース板(2)と金属部品(3)とがアースされることになる。
【0026】
上記デジタルカメラによれば、金属ベース板(2)の凸部(21)と金属部品(3)の突片(31)とはフレキシブルリード(4)を挟んで互いに対向しているので、金属ベース板(2)の凸部(21)がフレキシブルリード(4)の表面側のグランドライン露出部(47a)を押圧する力と、金属部品(3)の突片(31)がフレキシブルリード(4)の裏面側のグランドライン露出部(48a)を押圧する力により、フレキシブルリード(4)に対して適切な圧接力が得られる態様となる。
【0027】
又、従来より金属ベース板(2)をフレーム(1)に固定するために採用されている締結構造や、金属部品(3)をフレーム(1)に取り付けるために採用されている係合構造をそのまま利用して、金属ベース板(2)と金属部品(3)を共通のフレーム(1)に固定することが出来る。
これによって、金属ベース板(2)と金属部品(3)との相対位置が固定されることとなり、金属ベース板(2)の凸部(21)と金属部品(3)の突片(31)がフレキシブルリード(4)のグランドライン露出部(47a)(48a)に圧接された状態を安定的に維持することが出来る。
【0028】
更に、金属ベース板(2)の凸部(21)と金属部品(3)の突片(31)がフレキシブルリード(4)のグランドライン露出部(47a)(48a)に圧接されることによってアース接続が行なわれているので、従来のねじを用いたアース接続は不要となり、これによって、従来よりも部品点数を減少させ、組立工数を削減することが出来る。
【0029】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、金属部品(3)の突片(31)は単なる凸部状に形成する一方、金属ベース板(2)の凸部(21)を板ばね状に形成して、金属ベース板(2)の凸部(21)の弾性によって、金属ベース板(2)の凸部(21)と金属部品(3)の突片(31)をフレキシブルリード(4)のグランドライン露出部(47a)(48a)に圧接させることも可能である。
【0030】
又、金属ベース板(2)に形成された凸部(21)と金属部品(3)に形成された突片(31)とがフレキシブルリード(4)を挟んで互いに対向している構成に限らず、金属ベース板(2)の凸部(21)と金属部品(3)の突片(31)とが互いに僅かにずれた位置関係でフレキシブルリード(4)のグランドライン露出部(47a)(48a)にそれぞれ圧接されている構成も採用可能である。
又、本発明は、デジタルカメラに限らず、金属ベース板に電子部品が搭載されると共に該金属ベース板の近傍位置に金属部品が配備されている種々の電子機器のアース構造に実施することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
(1) フレーム
(2) 金属ベース板
(21) 凸部
(3) 金属部品
(31) 突片
(4) フレキシブルリード
(41) ベース層
(42) 導体パターン層
(43) 導体パターン層
(44) 絶縁カバー層
(45) 絶縁剥離部
(46) 絶縁剥離部
(47a) グランドライン露出部
(48a) グランドライン露出部
(5) 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ベース板に電子部品が搭載され、該電子部品から引き出されたフレキシブルリードは、前記金属ベース板の近傍位置に配備された金属部品に沿って延びている電子機器のアース構造において、
前記フレキシブルリードの表面及び裏面には、表面及び裏面の絶縁カバー層の一部が欠如してグランドラインが露出しており、前記金属ベース板に形成された凸部が前記フレキシブルリードの表面側のグランドライン露出部に圧接されると共に、前記金属部品に形成された突片が前記フレキシブルリードの裏面側のグランドライン露出部に圧接されていることを特徴とする電子機器のアース構造。
【請求項2】
前記金属部品の突片は、前記金属ベース板の凸部に対して接近離間する方向に弾性を発揮する板ばね状を呈し、前記金属ベース板の凸部と前記金属部品の突片とによって、前記フレキシブルリードのグランドライン露出部が両側から挟圧されている請求項1に記載のアース構造。
【請求項3】
前記金属ベース板と金属部品は共通のフレームに固定されている請求項1又は請求項2に記載のアース構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate