説明

電子機器の冷却装置

【課題】 電子機器内の温度と電源電圧の変動とに応じてファンを制御し、効率良く電子機器内を冷却できる電子機器の冷却装置を提供する。
【解決手段】 機器内を冷却するファンと、電源トランスと、電源トランスから供給される電圧を整流平滑した電源電圧を出力する整流平滑回路と、機器の内部温度を検出して温度に応じて検出電圧を出力する温度検出回路と、電源電圧又は検出電圧のうちいずれか高い電圧を出力するOR回路と、OR回路から出力される電源電圧又は検出電圧と基準電圧とを比較し、電源電圧及び検出電圧が基準電圧未満である場合に第1比較電圧を出力し、電源電圧又は検出電圧が基準電圧以上である場合に第2比較電圧を出力する比較回路と、第1比較電圧が入力された場合にファンを第1動作モードに制御する第1駆動電圧を出力し、第2比較電圧が入力された場合にファンを第2動作モードに制御する第2駆動電圧を出力する駆動回路とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却用ファンを備える電子機器の冷却装置に関する。詳細には、電源電圧の変動と電子機器内の温度変化とを検知して冷却ファンを制御する電子機器の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器が備える冷却用ファンの制御は、アンプの出力や電子機器内の温度変化を検知することにより行っている。電子機器内の複数個所について温度のモニタリングを行えば、電子機器内の温度変化に応じてファンを制御することができ、効率良く電子機器内を冷却することができるが、その分だけ温度センサー等が必要となり、コストアップ等の問題は避けられない。従って、大抵の場合、電子機器内の温度検知は、温度上昇の激しいアンプのヒートシンクのみを対象とすることが多い。しかし、電子機器の使用条件等により、電子機器内において大きく温度上昇する箇所が他にも局所的に発生する。例えば、電子機器がオーディオアンプの場合、小音量出力時には、アンプのヒートシンクの温度上昇は低いが、商用電源の電源環境が悪く電源電圧が上昇すると、レギュレータ付近の天面カバーや、電源回路の基板面の温度が高くなる場合がある。これを想定して、アンプのヒートシンクの低い温度上昇でファンを回転させることが考えられるが、ファンの動作音等の別の問題が生じる。
【0003】
【特許文献1】特開2006−121891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、電子機器内の温度変化と電源電圧の変動とに応じてファンを制御し、効率良く電子機器内を冷却することができる電子機器の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好ましい実施形態による電子機器の冷却装置は、機器内を冷却するファンと、電源トランスと、該電源トランスから供給される電圧を整流及び平滑し、電源電圧を出力する整流平滑回路と、機器の内部温度を検出し、該温度に応じて検出電圧を出力する温度検出回路と、該電源電圧又は該検出電圧のうちいずれか高い電圧を出力するOR回路と、該OR回路から出力される該電源電圧又は該検出電圧と第1の基準電圧とを比較し、該電源電圧及び該検出電圧が該第1の基準電圧未満である場合に第1の比較電圧を出力し、該電源電圧又は該検出電圧が該第1の基準電圧以上である場合に第2の比較電圧を出力する第1の比較回路と、該第1の比較電圧が入力された場合に該ファンを第1の動作モードに制御する第1の駆動電圧を出力し、該第2の比較電圧が入力された場合に該ファンを第2の動作モードに制御する第2の駆動電圧を出力する駆動回路とを有する。
【0006】
電源電圧及び検出電圧が第1の基準電圧未満である場合と、電源電圧又は検出電圧が第1の基準電圧以上である場合とにおいて、駆動回路から出力する駆動電圧を変える。これにより、電子機器内の温度変化のみでなく、電源電圧の変動に応じてファンを制御し、効率良くかつ簡単な回路構成によって電子機器内を冷却することができる。
【0007】
さらに好ましい実施形態においては、上記OR回路から出力される上記電源電圧又は上記検出電圧と、上記第1の基準電圧よりも低い電圧である第2の基準電圧とを比較して、該電源電圧及び該検出電圧が該第2の基準電圧未満である場合に第3の比較電圧を出力し、該電源電圧又は該検出電圧が該第2の基準電圧以上である場合に第4の比較電圧を出力する第2の比較回路をさらに有し;上記駆動回路が、上記第1の比較回路から上記第1の比較電圧及び該第2の比較回路から該第3の比較電圧が入力された場合、上記ファンを第3の動作モードに制御する第3の駆動電圧を出力し、該第1の比較回路から該第1の比較電圧及び該第2の比較回路から該第4の比較電圧が入力された場合、該ファンを第4の動作モードに制御する第4の駆動電圧を出力し、該第1の比較回路から該第2の比較電圧及び該第2の比較回路から該第4の比較電圧が入力された場合、該ファンを第5の動作モードに制御する第5の駆動電圧を出力する。
【0008】
第2の比較回路をさらに有し、電源電圧及び検出電圧が第1の基準電圧未満かつ第2の基準電圧未満である場合と、電源電圧又は検出電圧が第1の基準電圧未満かつ第2の基準以上である場合と、電源電圧又は検出電圧が第1の基準電圧以上かつ第2の基準以上である場合とにおいて、駆動回路から出力する駆動電圧を変える。これにより、電子機器内の温度変化と電源電圧の変動とに応じてより細かくファンを制御し、効率良く電子機器内を冷却することができる。
【0009】
さらに好ましい実施形態においては、上記第1の比較回路が、上記電源電圧又は上記検出電圧が上記第1の基準電圧以上になった場合、基準電圧を該第1の基準電圧より所定の電圧だけ低い第3の基準電圧に設定し、該電源電圧又は該検出電圧が該第3の基準電圧未満になれば、基準電圧を該第1の基準電圧に戻す。
【0010】
さらに好ましい実施形態においては、上記第2の比較回路が、上記電源電圧又は上記検出電圧が上記第2の基準電圧以上になった場合、基準電圧を該第2の基準電圧より所定の電圧だけ低い第4の基準電圧に設定し、該電源電圧又は該検出電圧が該第4の基準電圧未満になれば、基準電圧を該第2の基準電圧に戻す。
【0011】
電源電圧又は検出電圧が基準電圧を超えれば、基準電圧を所定の電圧だけ低く設定する。その後、電源電圧又は検出電圧が、低く設定した基準電圧未満になれば基準電圧を元の基準電圧に戻す。これによって、電源電圧のリップル等のノイズ成分が原因で、基準電圧付近で 第1の比較回路及び/又は第2の比較回路の出力が細かく切り替わるチャタリングが発生することを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子機器内の温度変化のみでなく、電源電圧の変動に応じてファンを制御し、効率良く電子機器内を冷却することができる電子機器の冷却装置を簡単な回路構成によって提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態による電子機器の冷却装置について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明を援用する。
【0014】
まず、図1を参照して、本発明の電子機器の冷却装置1の回路構成を説明する。図1は、本発明の好ましい実施形態による電子機器の冷却装置1を示す概略回路図である。
【0015】
電子機器の冷却装置1は、トランス2と、整流平滑回路3と、温度検出回路4と、OR回路5と、比較回路6と、駆動回路7と、ファン8とを備える。冷却装置1は、電子機器内の温度変化と電源電圧の変動とを検知し、それらに基づいてファン8を制御する。
【0016】
トランス2は、商用交流電源に接続され一次交流電圧が入力される一次巻線2Aと、一次巻線2Aとの巻数比に基づいて一次交流電圧を二次交流電圧に変換して出力する二次巻線2B、2C、2D…とを有する。二次巻線2Bから出力される二次交流電圧は、例えば電子機器の各種回路を制御するマイコン(図示せず)に供給する電源電圧として用いられる。二次巻線2C、2D…から出力される二次交流電圧は、アンプ回路(図示せず)等の電源電圧として用いられる。
【0017】
整流平滑回路3は、トランス2の二次巻線2Bから二次交流電圧が供給され、二次交流電圧を整流及び平滑して、OR回路5に出力する直流の電源電圧(以下、単に電源電圧Vaという)を生成する。整流平滑回路3は、整流ダイオードD13、D14と平滑コンデンサC12とを有し、二次巻線2Bから供給される二次交流電圧を、二次巻線2Bと接続される整流ダイオードD13、D14によって全波整流電圧に整流し、コンデンサC12によって平滑して電源電圧Vaを出力する。整流ダイオードD13、D14のカソード側端子は互いに接続され、アノード側端子は二次巻線2Bに接続される。コンデンサC12は、正極側端子が整流ダイオードD13、D14のカソード側端子に接続され、負極側端子は接地される。
【0018】
抵抗R11、R12は、整流平滑回路3から出力される電源電圧Vaを電圧調整する役割を有し、抵抗R12の一端がダイオードD13、D14のカソード側に接続され、他端がOR回路5に接続される。抵抗R11は、その一端が抵抗R12とOR回路5との接続ノードに接続され、他端は接地される。また、コンデンサC11は、電源電圧Vaのノイズ成分をカットする役割を有し、一端が抵抗R12とOR回路5との接続ノードに接続され、他端側が接地される。
【0019】
温度検出回路4は、電子機器内の温度を検出し、検出した温度に応じて検出電圧Vbを後述のOR回路4に出力する。例えば、温度検出回路4は、温度検出素子であるサーミスタ(図示せず)を含み、サーミスタはアンプ回路が有する発熱素子であるトランジスタに取り付けられたヒートシンクに取り付けられる。そして、サーミスタはアンプ回路の温度を検出し、その温度を電圧として変換して出力する。本実施例では、検出する温度が高いほど検出電圧Vbは高くなる。
【0020】
OR回路5は、整流平滑回路3から出力される電源電圧Va、又は、温度検出回路4から入力される検出電圧Vbのうちのいずれか高い方の電圧を出力する。OR回路5は、ダイオードD10、D11を含み、ダイオードD10のアノード側端子が温度検出回路4に接続されて検出電圧Vbが入力される。また、ダイオードD11のアノード側端子は整流平滑回路3に接続されて電源電圧Vaが入力される。そして、ダイオードD10及びダイオードD11のカソード端子が互いに接続されてダイオードOR回路を構成し、比較回路6に接続される。
【0021】
抵抗R10は、回路の動作を安定させる役割を有し、その一端がOR回路5の出力端と比較回路6との接続ノードに接続され、他端が接地される。また、コンデンサC10は、OR回路5の出力電圧のノイズ成分をカットする役割を有し、一端がダイオードD10、D11のカソード端子と比較回路6との接続ノードに接続され、他端側が接地される。
【0022】
比較回路6は、OR回路5から出力される電源電圧Va又は検出電圧Vbと、基準電圧Vref1とを比較し、その比較に基づいてハイレベル又はローレベルの比較電圧Vc1を出力する。具体的には、比較回路6は、電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref1以上である場合に、ローレベルの比較電圧Vc1を出力する。また、比較回路6は、電源電圧Va及び検出電圧Vbが基準電圧Vref1未満である場合に、ハイレベルの比較電圧Vc1を出力する。比較回路6は、オープンドレイン型のコンパレータQ2を有しており、その反転入力端子にOR回路5が接続され、電源電圧Va又は検出電圧Vbが入力される。また、非反転入力端子には、基準電圧Vref1が入力される。基準電圧Vref1は、電源電圧Vd1を抵抗R5、R6によって分圧した電圧である。コンパレータQ2の出力端は、抵抗R4を介して電源電圧Vd1(例えば、+3.3V)の電源ラインと接続され、さらに抵抗R7を介して非反転入力端子と接続される。これによってコンパレータQ2はヒステリシスを有する。コンパレータQ2は、非反転入力端子に入力される電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref1未満である場合、オープン状態であり、ハイレベルの比較電圧Vc1を出力する。ここでいうハイレベルの比較電圧Vc1とは、後述の駆動回路7に含まれるトランジスタQ1をオン状態にさせることができる程度の電圧のことをいう。また、非反転入力端子に入力される電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref1以上である場合、コンパレータQ2はショート状態であり、ローレベルの比較電圧Vc1を出力する。ローレベルの比較電圧Vc1とは、駆動回路7に含まれるトランジスタQ1をオン状態にさせない程度の電圧のことをいう。
【0023】
抵抗R1、R2は、コンパレータQ2から出力される比較電圧Vc1の電圧を調整する役割を有し、抵抗R1の一端が比較回路6の出力端に接続され、他端が駆動回路7に接続される。抵抗R2は、その一端がコンパレータQ2の出力端と駆動回路7との接続ノードに接続され、他端は接地される。
【0024】
駆動回路7は、比較回路6から出力される比較電圧Vc1に応じてファン8を駆動させる駆動電圧Vfを出力する。駆動回路7は、トランジスタQ1、Q21を有する。トランジスタQ21のベース端子は、抵抗R22、R3を介して電源電圧Ve(例えば、+12V)の電源ラインと接続され、また、一端が接地されたコンデンサC22と接続される。このコンデンサC22に生じる電圧が、トランジスタQ21のベース電圧となる。トランジスタQ21のコレクタ端子もまた電源電圧Veの電源ラインと接続される。トランジスタQ21のエミッタ端子はファン8と接続される。トランジスタQ1のベース端子は比較回路6と接続され、比較電圧Vc1が入力される。トランジスタQ1のコレクタ端子は、抵抗R22と抵抗R3との接続ノードに接続され、エミッタ端子は接地される。トランジスタQ1のベース電圧がローレベルでトランジスタQ1がオフ状態である場合、電源電圧Veの電源によって生じるコンデンサC22の電圧が所定の電圧以上(ハイレベル)となり、トランジスタQ21がオン状態となる。その結果、駆動回路7はトランジスタQ21からファン8へハイレベルの駆動電圧Vfを出力する。トランジスタQ1のベース電圧がハイレベルでトランジスタQ1がオン状態である場合、コンデンサC22の電圧は所定の電圧未満(ローレベル)になり、トランジスタQ21はオフ状態となる。その結果、駆動回路7はトランジスタQ21からファン8へローレベルの駆動電圧Vfを出力する。
【0025】
抵抗R22、R3は、トランジスタQ1がオン状態のときに、トランジスタQ1に大電流が流れないようにする役割を有し、抵抗R3の一端が電源電圧Veの電源ラインに接続され、他端がトランジスタQ1のコレクタ端子に接続される。抵抗R22は、一端が抵抗R3とトランジスタQ1のコレクタとの接続ノードに接続され、他端がトランジスタQ21のベース端子に接続される。また、コンデンサC21は、駆動電圧Vfのノイズ成分をカットする機能を有し、その正極端がトランジスタQ21のエミッタ端子に接続され、他端が接地される。なお、コンデンサC22は、トランジスタQ21のベース電圧を安定させる機能を有する。
【0026】
ファン8は、電子機器内の所定の位置に取り付けられ、発熱部品の冷却や、電子機器内の温度を下げるための冷却ファンである。ファン8は、駆動回路7から出力される駆動電圧Vfに応じて回転数が変化し、高い駆動電圧ほど回転速度が速くなる。本実施例の場合、駆動回路7からハイレベルの駆動電圧Vfが入力されると、ファン8はオン状態となり所定の回転速度で回転し、ローレベルの駆動電圧Vfが入力されると、ファン8はオフ状態となり動作を停止する。
【0027】
次に、以上の構成から成る電子機器の冷却装置1の動作について図2を参照して説明する。図2は、電源電圧Va又は検出電圧Vbに応じた、コンパレータQ2、トランジスタQ1、Q21及びファン8の動作を示す図である。冷却装置1は、電子機器内の温度変化と電源電圧の変動とを検知し、電源電圧Va及び検出電圧Vbが基準電圧Vref1未満であればファン8をオフ状態にして停止し、電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref1以上であればファン8をオン状態にして所定の速度で回転させる。以下、具体的に説明する。
【0028】
電源電圧Vaが変動して検出電圧Vbよりも高くなれば、OR回路5から電源電圧Vaが出力され、比較回路6で基準電圧Vref1と比較される。電子機器内の温度が高くなり、温度検出回路4から出力される検出電圧Vbが電源電圧Vaよりも高ければ、OR回路5から検出電圧Vbが出力され、比較回路6で基準電圧Vref1と比較される。電源電圧Va及び検出電圧Vbが基準電圧Vref1未満である場合、比較回路6のコンパレータQ2はオープン状態となり、その結果比較回路6からハイレベルの比較電圧Vc1が出力される。そして、駆動回路7において、トランジスタQ1のベース電圧がハイレベルの比較電圧Vc1となるのでトランジスタQ1はオン状態となる。トランジスタQ1がオン状態になると、コンデンサC22の電圧は所定の電圧未満となり、トランジスタQ21のベース電圧がローレベルになるので、トランジスタQ21はオフ状態となる。つまり、駆動回路7が出力する駆動電圧Vfがローレベルとなり、その結果ファン8はオフ状態となり動作を停止する。電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref1以上である場合、比較回路6のコンパレータQ2はショート状態となり、その結果比較回路6からローレベルの比較電圧Vc1が出力される。そして、駆動回路7において、トランジスタQ1のベース電圧がローレベルの比較電圧Vc1となるので、トランジスタQ1はオフ状態となる。トランジスタQ1がオフ状態になると、コンデンサC22の電圧が所定の電圧以上となり、トランジスタQ21のベース電圧がハイレベルとなるので、トランジスタQ21はオン状態となる。つまり、駆動回路7が出力する駆動電圧Vfがハイレベルとなり、その結果ファン8がオン状態となり所定の速度で回転する。
【0029】
なお、コンパレータQ2はヒステリシスを有し、電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref1を超えれば、基準電圧Vref1が所定の電圧だけ低くなる。このヒステリシスは電源電圧Vaのリップル等のノイズ成分よりも大きくなるように抵抗R4、R7で調整される。その後、電源電圧Va又は検出電圧Vbがその低く設定した基準電圧未満になれば、基準電圧が元の基準電圧Vref1に戻る。これによって、電源電圧Vaのリップル等のノイズ成分が原因で、基準電圧Vref1付近で コンパレータQ2の出力が細かく切り替わるチャタリングが発生することを防止することができる。
【0030】
次に、本発明の別の実施形態である電子機器内の冷却装置10について説明する。前述の冷却装置1との違いは、冷却装置1は、比較回路6が電源電圧Va又は検出電圧Vbと基準電圧Vref1とを比較し、比較電圧Vc1に応じてファン8の駆動/停止を制御するのに対し、冷却装置10は、比較回路9をさらに有し、この比較回路9及び比較回路6で電源電圧Va又は検出電圧Vbを2つの基準電圧Vref1及びVref2と比較して、ファン8を3つの動作モードで制御する。ここでいう3つの動作モードとは、ファン8の回転速度が低速のローモード、回転速度が高速のハイモード、ローモードよりも速く、ハイモードよりも遅い回転速度のミドルモードである。
【0031】
図3を参照して、本発明の電子機器の冷却装置10の回路構成を説明する。図3は、本発明の好ましい実施形態による電子機器の冷却装置10を示す概略回路図である。冷却装置1と違う点のみを説明すると、冷却装置10は、コンパレータQ32を含む比較回路9をさらに有する。コンパレータQ32の基準電圧Vref2はコンパレータQ2の基準電圧Vref1よりも低く設定されている(Vref2<Vref1)。コンパレータQ32は、コンパレータQ2同様、反転入力端子にOR回路5が接続され、電源電圧Va又は検出電圧Vbが入力される。また、非反転入力端子には、基準電圧Vref2が入力される。基準電圧Vref2は、電源電圧Vd2を抵抗R35、R36によって分圧した電圧である。コンパレータQ32の出力端は、抵抗R34を介して電源電圧Vd2(例えば、+3.3V)の電源ラインと接続され、さらに抵抗R37を介して非反転入力端子と接続される。これによってコンパレータQ2はヒステリシスを有する。コンパレータQ32は、電源電圧Va及び検出電圧Vbが基準電圧Vref2未満である場合、オープン状態であり、ハイレベルの比較電圧Vc2を出力する。また、電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref2以上である場合、コンパレータQ32はショート状態であり、ローレベルの比較電圧Vc2を出力する。つまり、電源電圧Va及び検出電圧Vbが基準電圧Vref2未満である場合、比較回路9はハイレベルの比較電圧Vc2を出力し、電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref2以上である場合、比較回路9はローレベルの比較電圧Vc2を出力する。
【0032】
また、駆動回路7は、トランジスタQ1、Q21に加えさらにトランジスタQ31を有する。トランジスタQ31のベース端子は、比較回路9と接続され、比較電圧Vc2が入力される。トランジスタQ31のコレクタ端子は、ツェナーダイオードD31を介してトランジスタQ21のベース端子と接続されている。また、トランジスタQ1のコレクタとトランジスタQ21のベース端子との間にツェナーダイオードD1が接続されている。ここで、本実施例において、ツェナーダイオードD1のツェナー電圧Vz1は、ツェナーダイオードD31のツェナー電圧Vz2よりも大きく、電源電圧Veよりも小さいものとする(Vz2<Vz1<Ve)。
【0033】
トランジスタQ1、Q31が共にオン状態になると、トランジスタQ21は、ツェナーダイオードD31に発生するツェナー電圧Vz2(<Vz1)によってオン状態となる。トランジスタQ1がオン状態で、トランジスタQ31がオフ状態のとき、トランジスタQ21は、ツェナーダイオードD1に発生するツェナー電圧Vz1によってオン状態となる。トランジスタQ1、Q31が共にオフ状態である場合は、トランジスタQ21は、電源ラインから供給される電源電圧Veによってオン状態となる。このように、トランジスタQ1、Q31のオンオフ状態によって、トランジスタQ21のベース端子にかかる電圧が異なることにより、トランジスタQ21からの出力電圧も異なる。つまり、トランジスタQ1、Q31が共にオン状態のときにトランジスタQ21が出力する駆動電圧Vf1と、トランジスタQ1がオン状態でトランジスタQ31がオフ状態のときにトランジスタQ21が出力する駆動電圧Vf2と、トランジスタQ1、Q31が共にオフ状態のときにトランジスタQ21が出力する駆動電圧Vf3との関係は、トランジスタQ21のベース電圧の基となるツェナー電圧Vz1、Vz2及び電源電圧Veの関係がVz2<Vz1<Veであるので、Vf1<Vf2<Vf3となる。
【0034】
次に、以上の構成から成る電子機器の冷却装置10の動作について図2を参照して説明する。図2は、電源電圧Va又は検出電圧Vbに応じた、コンパレータQ2、Q32、トランジスタQ1、Q31、Q21及びファン8の動作を示す図である。冷却装置10は、電子機器内の温度変化と電源電圧の変動とを検知し、電源電圧Va及び検出電圧Vbが基準電圧Vref1未満かつ基準電圧Vref2未満であればファン8をローモードで駆動し、電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref1未満かつ基準電圧Vref2以上であればファン8をミドルモードで駆動し、電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref1以上かつ基準電圧Vref2以上であればファン8をハイモードで駆動する。以下、具体的に説明する。
【0035】
電源電圧Vaが変動して検出電圧Vbよりも高ければ、OR回路5から電源電圧Vaが出力される。そして、その電源電圧Vaが比較回路6で基準電圧Vref1と比較され、比較回路9で基準電圧Vref2と比較される。また、電子機器内の温度が高くなり、温度検出回路4から出力される検出電圧Vbが電源電圧Vaよりも高ければ、OR回路5から検出電圧Vbが出力される。そして、その検出電圧Vbが比較回路6で基準電圧Vref1と比較され、比較回路9で基準電圧Vref2と比較される。電源電圧Va及び検出電圧Vbが基準電圧Vref1未満かつ基準電圧Vref2未満である場合、比較回路6のコンパレータQ2及び比較回路9のコンパレータQ32はオープン状態となり、その結果、比較回路6からハイレベルの比較電圧Vc1が駆動回路7のトランジスタQ1へ、比較回路9からハイレベルの比較電圧Vc2が駆動回路7のトランジスタQ31へ出力される。それにより、駆動回路7のトランジスタQ1、Q31がオン状態となるので、トランジスタQ21は、ツェナーダイオードD31に発生するツェナー電圧Vz2によってオン状態となる。その結果、駆動回路7はトランジスタQ21から駆動電圧Vf1を出力して、ファン8をローモードで駆動する。
【0036】
電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref1未満かつ基準電圧Vref2以上である場合、比較回路6のコンパレータQ2はオープン状態となり、比較回路9のコンパレータQ32はショート状態となり、その結果、比較回路6からハイレベルの比較電圧Vc1が駆動回路7のトランジスタQ1へ、比較回路9からローレベルの比較電圧Vc2が駆動回路7のトランジスタQ31へ出力される。それにより、駆動回路7のトランジスタQ1がオン状態、トランジスタQ31がオフ状態となるので、トランジスタQ21は、ツェナーダイオードD1に発生するツェナー電圧Vz1によってオン状態となる。その結果、駆動回路7はトランジスタQ21から駆動電圧Vf2を出力して、ファン8をミドルモードで駆動する。
【0037】
電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref1以上かつ基準電圧Vref2以上である場合、比較回路6のコンパレータQ2及び比較回路9のコンパレータQ32はショート状態となり、その結果、比較回路6からローレベルの比較電圧Vc1が駆動回路7のトランジスタQ1へ、ローレベルの比較電圧Vc2が駆動回路7のトランジスタQ31へ出力される。それにより、駆動回路7のトランジスタQ1、Q31がオフ状態となるので、トランジスタQ21は、電源ラインから供給される電源電圧Veによってオン状態となる。その結果、駆動回路7はトランジスタQ21から駆動電圧Vf3を出力して、ファン8をハイモードで駆動する。
【0038】
なお、コンパレータQ2、Q32はヒステリシスを有し、このヒステリシスは電源電圧Vaのリップル等のノイズ成分よりも大きくなるように抵抗R4、R7、R34,R37で調整されている。従って、コンパレータQ2、Q32はヒステリシスを有することによって、電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref1、Vref2を超えれば、基準電圧Vref1、Vref2が所定の電圧だけ低くなる。その後、電源電圧Va又は検出電圧Vbがその低く設定した基準電圧未満になれば、基準電圧は元の基準電圧Vref1、Vref2に戻る。これによって、電源電圧Vaのリップル等のノイズ成分が原因で、基準電圧Vref1、Vref2付近で コンパレータQ2、Q32の出力が細かく切り替わるチャタリングが発生することを防止することができる。
【0039】
以上、本発明に係る電子機器の冷却装置は、電源電圧Va又は検出電圧Vbと基準電圧Vref1とを比較し、電源電圧Va及び検出電圧Vbが基準電圧Vref1未満である場合と、電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref1以上である場合とにおいて、駆動回路7から出力する駆動電圧Vfを変える。さらに、電源電圧Va又は検出電圧Vbと基準電圧Vref2とを比較し、電源電圧Va及び検出電圧Vbが基準電圧Vref1未満かつ基準電圧Vref2未満である場合と、電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref1未満かつ基準電圧Vref2以上である場合と、電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref1以上かつ基準電圧Vref2以上である場合とにおいて、駆動回路7から出力する駆動電圧Vfを変える。これにより、電子機器内の温度変化のみでなく、電源電圧の変動に応じてファンを制御し、効率良く電子機器内を冷却することができる電子機器の冷却装置を簡単な回路構成によって実現することができる。
【0040】
なお、本発明に係る電子機器の冷却装置1において、電源電圧Va及び検出電圧Vbが基準電圧Vref1未満である場合と、電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref1以上である場合とで、ファン8のオンオフ状態を制御するようにしたが、冷却装置10のようにトランジスタQ1のコレクタ端子にツェナーダイオードを接続すれば、電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref1未満である場合と、電源電圧Va又は検出電圧Vbが基準電圧Vref1以上である場合とで、ファン8を停止させずに回転速度を制御することもできる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の電子機器の冷却装置は、あらゆる用途の電子機器に用いられ得るが、音響機器などに好適に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の好ましい実施形態による電子機器の冷却装置を説明する回路図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態による電子機器の冷却装置の動作を示す図である。
【図3】本発明の別の好ましい実施形態による電子機器の冷却装置を説明する回路図である。
【図4】本発明の別の好ましい実施形態による電子機器の冷却装置の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1、10 冷却装置
2 トランス
2A 一次巻線
2B、2C、2D 二次巻線
3 整流平滑回路
4 温度検出回路
5 OR回路
6、9 比較回路
7 駆動回路
8 ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器内を冷却するファンと、
電源トランスと、
該電源トランスから供給される電圧を整流及び平滑し、電源電圧を出力する整流平滑回路と、
機器の内部温度を検出し、該温度に応じて検出電圧を出力する温度検出回路と、
該電源電圧又は該検出電圧のうちいずれか高い電圧を出力するOR回路と、
該OR回路から出力される該電源電圧又は該検出電圧と第1の基準電圧とを比較し、該電源電圧及び該検出電圧が該第1の基準電圧未満である場合に第1の比較電圧を出力し、該電源電圧又は該検出電圧が該第1の基準電圧以上である場合に第2の比較電圧を出力する第1の比較回路と、
該第1の比較電圧が入力された場合に該ファンを第1の動作モードに制御する第1の駆動電圧を出力し、該第2の比較電圧が入力された場合に該ファンを第2の動作モードに制御する第2の駆動電圧を出力する駆動回路とを有する、電子機器の冷却装置。
【請求項2】
前記OR回路から出力される前記電源電圧又は前記検出電圧と、前記第1の基準電圧よりも低い電圧である第2の基準電圧とを比較して、該電源電圧及び該検出電圧が該第2の基準電圧未満である場合に第3の比較電圧を出力し、該電源電圧又は該検出電圧が該第2の基準電圧以上である場合に第4の比較電圧を出力する第2の比較回路をさらに有し;
前記駆動回路が、
前記第1の比較回路から前記第1の比較電圧及び該第2の比較回路から該第3の比較電圧が入力された場合、前記ファンを第3の動作モードに制御する第3の駆動電圧を出力し、
該第1の比較回路から該第1の比較電圧及び該第2の比較回路から該第4の比較電圧が入力された場合、該ファンを第4の動作モードに制御する第4の駆動電圧を出力し、
該第1の比較回路から該第2の比較電圧及び該第2の比較回路から該第4の比較電圧が入力された場合、該ファンを第5の動作モードに制御する第5の駆動電圧を出力する、請求項1に記載の電子機器の冷却装置。
【請求項3】
前記第1の比較回路が、
前記電源電圧又は前記検出電圧が前記第1の基準電圧以上になった場合、基準電圧を該第1の基準電圧より所定の電圧だけ低い第3の基準電圧に設定し、
該電源電圧又は該検出電圧が該第3の基準電圧未満になれば、基準電圧を該第1の基準電圧に戻す、請求項1又は2に記載の電子機器の冷却装置。
【請求項4】
前記第2の比較回路が、
前記電源電圧又は前記検出電圧が前記第2の基準電圧以上になった場合、基準電圧を該第2の基準電圧より所定の電圧だけ低い第4の基準電圧に設定し、
該電源電圧又は該検出電圧が該第4の基準電圧未満になれば、基準電圧を該第2の基準電圧に戻す、請求項2に記載の電子機器の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−10633(P2010−10633A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171672(P2008−171672)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】