説明

電子機器及びプログラム

【課題】バックアップ電源の供給が不要な場合に、当該バックアップ電源の供給を停止すること。
【解決手段】実施の形態の電子機器では、電源オフ時に待機用のバックアップ電源を主要回路部に供給する電源手段と、ネットワーク上の外部装置と接続可能なコネクタ手段と、前記コネクタ手段を介して前記外部装置との間で通信を行う通信手段と、前記外部装置から送信される遠隔起動信号に応じて、電源オンとする起動処理を行う起動手段と、前記コネクタ手段に前記外部装置が接続されているか否かを判定し、接続されていないと判定した場合に、前記バックアップ電源の前記主要回路部への通電を切断する通電制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、電子機器及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
PC(Personal Computer)やPOS端末等の電子機器では、電源オフの状態であっても内部回路が動作している場合がある。例えば、外部装置から通知される起動用のパケット(マジックパケット等)に応じて起動を行う電子装置では、電源オフの状態であっても、起動用パケットを受信可能な状態(待機状態)を維持するためのバックアップ電源が供給されており、このバックアップ電源に応じた電力が待機電力として消費される。従来、この待機電力を削減するための技術が提案されており、電子機器の待機状態を維持するのに必要な最小限の電圧が供給されるよう待機電力を制御する技術が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来技術においては、バックアップ電源の供給が不要な場合にあるにもかかわらず、バックアップ電源の供給が行われてしまう場合があり、待機電力の削減において改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
実施の形態の電子機器は、電源手段と、コネクタ手段と、通信手段と、起動手段と、通電制御手段と、を備えている。電源手段は、電源オフ時に待機用のバックアップ電源を主要回路部に供給する。コネクタ手段は、ネットワーク上の外部装置と接続可能なインタフェースを提供する。通信手段は、コネクタ手段を介して外部装置との間で通信を行う。起動手段は、外部装置から送信される遠隔起動信号に応じて、電源オンとする起動処理を行う。通電制御手段は、コネクタ手段に外部装置が接続されているか否かを判定し、接続されていないと判定した場合に、バックアップ電源の主要回路部への通電を切断する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、実施形態に係る電子装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】図2は、電子機器の電源オフ移行時における通電制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】図3は、電子機器の電源オン移行時における通電制御処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1は、本実施形態に係る電子装置の構成を模式的に示すブロック図である。電子機器100は、PCやPOS端末等であって、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等の表示デバイスで構成される表示装置200に、文字列や画像を表示する機能を有している。
【0007】
電子機器100は、CPU(Central Processing Unit)11と、メモリ12と、I/Oコントローラ13と、シリアルI/O14と、ROM(Read Only memory)15と、PCI16と、HDD(Hard Disk Drive)17と、USB(Universal Serial Bus)18と、CRTコネクタ19と、AC電源ケーブル20と、電源部21と、電源コネクタ22と、LANコネクタ23と、LANコントローラ24と、リンクパルス検出回路25と、バックアップ電源切断回路26と、電源スイッチ27と、を備えている。
【0008】
CPU11は、ROM15に記憶されたBIOS151やHDD17に記憶された所定の制御プログラムを実行し、電子機器100を構成する各部の動作を統括的に制御する。
【0009】
また、CPU11には、メモリ12の読み出し及び書き出しを制御するメモリコントローラ111と、表示装置200への表示を制御するVGAコントローラ112とが搭載されている。VGAコントローラ112は、画面表示を制御する機能部であって、画面表示用の画像データを生成し、CRTコネクタ19に出力する。メモリ12は、主記憶装置であって、CPU11のワークエリアとして機能する。
【0010】
また、CPU11には、入出力を制御するI/Oコントローラ13が接続されている。CPU11は、I/Oコントローラ13を介してバックアップ電源切断回路26から入力される後述する起動指示信号に応じて、電源コネクタ22から供給される後述する通常電源をオン(電源オン)とし、電子機器100のシステムを起動する起動処理を実行する。また、CPU11は、I/Oコントローラ13を介してバックアップ電源切断回路26から入力される後述する終了指示信号に応じて、電子機器100のシステムを終了(又はサスペンド)させる終了処理を実行し、電源コネクタ22から供給される後述する通常電源をオフ(電源オフ)とする。
【0011】
I/Oコントローラ13には、シリアルI/O14、BIOS151等を記憶したROM15、拡張バスであるPCI16、補助記憶装置のHDD17、外部機器を接続するためのUSB18等が接続されている。
【0012】
BIOS151には、電子機器100が具備する各部の初期化処理に係るプログラムや設定情報が含まれている。例えば、電子機器100のオフ時において、外部装置からLANコネクタ23を介して入力される起動用のパケット(例えば、マジックパケット)に応じて、電子機器100の起動を許可するか否かを定義した遠隔起動設定が設定情報として含まれている。
【0013】
CPU11は、電子機器100の起動時にBIOS151を実行することで、CPU11に接続された各部を動作可能な状態に初期化する。即ち、CPU11は電子機器100の起動時において、BIOS151を実行する起動手段として機能する。
【0014】
CRTコネクタ19には、表示装置200が接続されている。CRTコネクタ19は、VGAコントローラ112から入力される画像データを所定の同期タイミングに従い表示装置200へ出力することで、表示装置200に表示させる。
【0015】
AC電源ケーブル20は、商用電源(AC電源)に接続され、商用電源から供給される電力を電源部21に送出する。電源部21は、AC電源ケーブル20を通じて入力された電力を用いて、通常電源とバックアップ電源とを電源コネクタ22に供給する。ここで、“通常電源”は、電子機器100のシステム起動時に供給が開始され、システムの終了(又はサスペンド)時に供給が停止される、電子機器100の通常動作を実現させるための電源である。また、“バックアップ電源”は、AC電源ケーブル20が商用電源に接続されている間常時供給を行う、電子機器100の待機状態を実現させるための電源であって、通常電源よりも低い電力となっている。なお、本実施形態では、電子機器100の電源オフ時において、遠隔起動に係る機能を維持することをバックアップ電源の主な用途としている。
【0016】
電源コネクタ22は、CPU11の制御に従い、電源部21から供給された通常電源を、図1に示した電子機器100の主要回路部となる各デバイスに供給する。また、電源コネクタ22は、電源部21から供給されたバックアップ電源を、リンクパルス検出回路25に供給するとともに、バックアップ電源切断回路26を介して各デバイスに供給する。
【0017】
LANコネクタ23は、LANコントローラ24を介してI/Oコントローラ13に接続されている。LANコネクタ23には、LANケーブル300を接続することが可能となっており、このLANケーブル300を介して接続される他の装置(外部装置)との間で、各種の信号(リンクパルス等)や各種のデータを送受信する。
【0018】
LANコントローラ24は、CPU11からI/Oコントローラ13を介して入力される各種信号やデータを、LANコネクタ23を通じて外部装置に送信する。また、LANコントローラ24は、LANコネクタ23で受信された各種信号やデータを、I/Oコントローラ13を介してCPU11に出力する。
【0019】
リンクパルス検出回路25は、LANコネクタ23とLANコントローラ24との間に接続されており、LANケーブル300に接続された外部装置からのリンクパルスを検出する。また、リンクパルス検出回路25は、リンクパルスを検出すると検出信号として、その検出結果をバックアップ電源切断回路26に出力する。
【0020】
バックアップ電源切断回路26は、ASICやCPU、ROM等から構成される制御部、各デバイスへのバックアップ電源の通電/切断を行うスイッチング素子、バックアップ電源の電位を検出する電位検出部等を有して構成される(何れも図示せず)。また、バックアップ電源切断回路26には、電子機器100の電源オン/オフを指示するための電源スイッチ27が接続されている。
【0021】
バックアップ電源切断回路26は、電子機器100の電源オン時において、電源スイッチ27から電源オフを指示する電源オフ信号を受け付けると、システムの終了(又はサスペンド)を指示する終了指示信号をI/Oコントローラ13を介してCPU11に出力する。また、バックアップ電源切断回路26は、終了指示信号を出力すると、リンクパルス検出回路25から入力される検出信号とBIOS151の遠隔起動設定とに基づいて、各デバイスへのバックアップ電源の通電(供給)と切断とを制御する。
【0022】
具体的に、バックアップ電源切断回路26は、終了指示信号の出力後、リンクパルス検出回路25から検出信号が所定時間以内に入力されない場合、LANコネクタ23に外部装置が接続されていないスタンドアロンの状態であると判定する。この場合、BIOS151の遠隔起動設定がオンであっても、外部装置から遠隔起動信号を受信することはないため、バックアップ電源切断回路26は、バックアップ電源の供給は不要と判断し、各デバイスへのバックアップ電源の通電を切断する。
【0023】
また、バックアップ電源切断回路26は、終了指示信号の出力後の所定時間以内に、検出信号の入力を受け付けた場合、I/Oコントローラ13を介してBIOS151の遠隔起動設定を参照することで、遠隔起動設定が許可か否かを判定する。ここで、遠隔起動設定が不許可の場合には、LANコネクタ23を介して外部装置から遠隔起動信号を受信する可能性はあるが、遠隔起動信号を受信しても起動を行わない設定であるため、バックアップ電源切断回路26は、バックアップ電源は不要と判断し、各デバイスへのバックアップ電源の通電を切断する。なお、遠隔起動設定が許可と判定した場合、バックアップ電源切断回路26は、各デバイスへのバックアップ電源の通電を維持する。
【0024】
さらに、バックアップ電源切断回路26は、電子機器100の電源オフ時において、電源スイッチ27から電源オンを指示する電源オン信号を受け付けると、システムの起動開始を指示する起動指示信号をI/Oコントローラ13を介してCPU11に出力する。なお、電源オン信号の受け付け時にバックアップ電源の通電が切断されていると、I/Oコントローラ13等のデバイスは動作することができないため、バックアップ電源切断回路26は、バックアップ電源の通電を開始させた後、起動指示信号を出力する。
【0025】
以下、図2及び図3を参照して、本実施形態の電子機器100の動作を説明する。ここで、図2は、電子機器100の電源オフ移行時における通電制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0026】
まず、バックアップ電源切断回路26は、電源スイッチ27から電源オフを指示する電源オフ信号を受け付けると(ステップS11)、電子機器100のシステムを終了(又はサスペンド)させる終了指示信号をI/Oコントローラ13を介してCPU11へ出力し、電子機器100を電源オフ状態に移行させる(ステップS12)。
【0027】
続いて、バックアップ電源切断回路26は、リンクパルス検出回路から入力される検出信号に基づき、LANコネクタ23に外部装置が接続されているか否かを判定する(ステップS13)。ここで、LANコネクタ23に外部装置が接続されていないスタンドアロン状態と判定した場合(ステップS13;No)、バックアップ電源切断回路26は、各デバイスへのバックアップ電源の通電を切断し(ステップS15)、本処理を終了する。
【0028】
また、ステップS13において、LANコネクタ23に外部装置が接続されていると判定した場合(ステップS13;Yes)、バックアップ電源切断回路26は、BIOS151の遠隔起動設定を参照し、この遠隔起動設定が許可か否かを判定する(ステップS14)。ここで、遠隔起動設定が不許可と判定した場合(ステップS14;No)、バックアップ電源切断回路26は、各デバイスへのバックアップ電源の通電を切断し(ステップS15)、本処理を終了する。
【0029】
一方、ステップS14において、遠隔起動設定が許可と判定した場合(ステップS14;Yes)、バックアップ電源切断回路26は、各デバイスへのバックアップ電源の通電を維持したまま(ステップS16)、本処理を終了する。
【0030】
図3は、電子機器100の電源オン移行時における通電制御処理の手順を示すフローチャートである。まず、バックアップ電源切断回路26は、電源スイッチ27から電源オンを指示する電源オン信号を受け付けると(ステップS21)、各デバイスへのバックアップ電源が切断中か否かを判定する(ステップS22)。ここで、バックアップ電源を通電(供給)中と判定した場合(ステップS22;No)、バックアップ電源切断回路26は、起動指示信号をI/Oコントローラ13を介してCPU11に出力し(ステップS26)、本処理を終了する。
【0031】
一方、ステップS22で切断中と判定した場合(ステップS22;Yes)、バックアップ電源切断回路26は、各デバイスへのバックアップ電源の通電を開始する(ステップS23)。続いて、バックアップ電源切断回路26は、バックアップ電源の電位が、各デバイスの安定動作を保証する所定値(正常電圧)に到達したか否かを判定し、正常電圧となるまで待機する(ステップS24;No)。
【0032】
バックアップ電源の正常電圧に到達したと判定すると(ステップS24;Yes)、バックアップ電源切断回路26は、さらに所定時間待機(例えば、10秒等)した後(ステップS25)、起動指示信号をI/Oコントローラ13を介してCPU11に出力し(ステップS26)、本処理を終了する。
【0033】
このように、本実施形態の電子機器100では、LANコネクタ23に外部装置が接続されていない場合、或いはLANコネクタ23に外部装置が接続されていても、BIOS151の遠隔起動設定が不許可の場合には、各デバイスへのバックアップ電源の供給が不要であるため、各デバイスへのバックアップ電源の通電を切断する。このため、電子機器100の電源オフ時において、待機電力の削減を効率的に行うことができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲での種々の変更、置換、追加等が可能である。
【0035】
例えば、上記実施形態の通電制御処理(図2及び図3参照)は、バックアップ電源切断回路26の制御部がROM等に記憶されたプログラムを実行することで、ソフトウェア的に実現する形態としてもよいし、専用回路等によりハードウェア的に実現する形態としてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、LANコネクタ23を有線型のネットワークインタフェースとしたが、これに限らず、無線型のネットワークインタフェースとしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
100 電子機器
11 CPU
111 メモリコントローラ
112 VGAコントローラ
12 メモリ
13 I/Oコントローラ
14 シリアルI/O
15 ROM
151 BIOS
16 PCI
17 HDD
18 USB
19 CRTコネクタ
20 AC電源ケーブル
21 電源部
22 電源コネクタ
23 LANコネクタ
24 LANコントローラ
25 リンクパルス検出回路
26 バックアップ電源切断回路
27 電源スイッチ
200 表示装置
300 LANケーブル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開2000−232731公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源オフ時に待機用のバックアップ電源を主要回路部に供給する電源手段と、
ネットワーク上の外部装置と接続可能なコネクタ手段と、
前記コネクタ手段を介して前記外部装置との間で通信を行う通信手段と、
前記外部装置から送信される遠隔起動信号に応じて、電源オンとする起動処理を行う起動手段と、
前記コネクタ手段に前記外部装置が接続されているか否かを判定し、接続されていないと判定した場合に、前記バックアップ電源の前記主要回路部への通電を切断する通電制御手段と、
を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記遠隔起動信号による起動を許可するか否かを定義した設定情報を記憶する記憶手段を更に備え、
前記遠隔起動手段は、前記設定情報に許可することが定義されている場合に前記起動処理を行い、
前記通電制御手段は、前記外部装置が接続されていると判定した場合であっても、前記設定情報に許可しないことが定義されていた場合には、前記バックアップ電源の前記主要回路部への通電を切断することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記通信手段と前記外部装置とを間で送受信されるリンクパルスを検出する検出手段を更に備え、
前記通電制御手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記外部装置が接続されているか否かを判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
電源オン/オフを指示する電源スイッチを更に備え、
前記通電制御手段は、前記電源スイッチによる電源オンの指示に応じて、前記バックアップ電源の前記主要回路部への通電を開始させた後、前記起動手段に起動処理の実行を指示することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記通電制御手段は、前記バックアップ電源の電位が安定するまで待機した後、前記起動手段に起動処理の実行を指示することを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
電源オフ時に待機用のバックアップ電源を主要回路部に供給する電源手段と、ネットワーク上の外部装置と接続可能なコネクタ手段と、前記コネクタ手段を介し、前記外部装置との間で通信を行う通信手段と、を備えた電子機器のコンピュータを、
前記外部装置から送信される遠隔起動信号に応じて、前記電源オンとする起動処理を行う起動手段と、
前記コネクタ手段に前記外部装置が接続されているか否かを判定し、接続されていないと判定した場合に、前記バックアップ電源の前記主要回路部への通電を切断する通電制御手段と、
して機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−238126(P2011−238126A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110436(P2010−110436)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】