説明

電子機器及び通信制御方法

【課題】近接無線通信における一時的なリンクダウンによるデータ転送の中断を管理/制御することができる電子機器及び通信制御方法を提供する。
【解決手段】近接無線通信を実行する通信モジュールと、タイマ値を記憶する記憶手段と、前記記憶手段への前記タイマ値の書き込みを許可するか否かを設定する設定手段と、前記通信モジュールと外部デバイスとが近接状態である場合、前記設定手段による設定に応じて、前記記憶手段への書き込みを許可するか否かを示す許可情報を付加した接続信号を前記外部デバイスへ送信する送信手段とを有する電子機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器及び通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
UWB応用の近接無線通信方式であるTransferJet(登録商標)は、高速な通信速度(375Mbps)を利用した“タッチ&ゲット”による簡易なデータ転送をコンセプトとしている。今後TransferJetの普及により、例えばデータストリーミングの様なタッチ&ゲット型ではなく、タッチし続けた状態で連続的にデータ転送を行なうデバイスが増えてくる事が考えられる。この様なデバイスでは、長時間のデータ転送中に発生し得るタッチの位置ずれや、一時的にデバイスを離して操作を行なう事などが考えられるが、現状のTransferJet仕様ではリンクの中断という概念が無く、デタッチ(=離す)操作は基本的に切断として処理される。
【0003】
一般的には例えば、特許文献1のように、無線通信回線に通信断が発生しても(一時通信不能)一定期間内に通信可能に復帰すると通信が継続できることが示されている。近接無線通信においても、一時的な言わばリンクダウンによるデータ転送の中断を管理/制御することへの要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−171258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施の形態は、近接無線通信における一時的なリンクダウンによるデータ転送の中断を管理/制御することができる電子機器及び通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、実施形態によれば電子機器は、近接無線通信を実行する通信モジュールと、タイマ値を記憶する記憶手段と、前記記憶手段への前記タイマ値の書き込みを許可するか否かを設定する設定手段と、前記通信モジュールと外部デバイスとが近接状態である場合、前記設定手段による設定に応じて、前記記憶手段への書き込みを許可するか否かを示す許可情報を付加した接続信号を前記外部デバイスへ送信する送信手段とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態の電子機器と外部デバイスとの間で実行される近接無線通信の一例を示す図。
【図2】実施形態の近接無線通信システムの構成を示すブロック図。
【図3】同実施形態の近接無線システムが適用する近接無線通信を制御するためのソフトウェアアーキテクチャを説明するための図。
【図4】実施形態の接続認証に用いる信号のデータ構造の一例を示す図。
【図5】実施形態の電子機器と外部デバイスとの間の近接無線通信の接続手順の一例を示すシーケンス図。
【図6】実施形態のリンクダウン制御手順を示すフローチャート。
【図7】ソフトウェアアーキテクチャに基づく実施形態の機能構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
本発明による第1の実施形態を図1乃至図7を参照して説明する。
まず基本的にTouch & Get を実現する上で求められるのは、タッチしたときにある程度アライメントがとれること、そしてタッチしたらつながり離れたらきれるというものである。こうした機能を実現するため,TransferJet では,特殊なアンテナ(カプラ)を使って通信している。このカプラで利用しているのは、通常の無線が使う放射電磁界ではなく、誘導電界なるものである。TransferJet のカプラを電磁界の図で表現すると微小ダイポールに近似できる。
【0009】
この微小ダイポールには,即ち縦波成分と横波成分があり,電界と磁界に分けられる。従来の一般的な無線通信は,このうちの放射電磁界を利用していた。さらに準静電界というものもあるが,TransferJet はこのうちの誘導電界,つまり誘導電磁界のうちθ=0°の縦波成分だけを利用している(式1参照)。
【0010】
【数1】

【0011】
そしてこの誘導電界のエネルギーは距離の4 乗(電界強度は距離の2 乗)に反比例して減衰する。
一方で放射電磁界は,距離の2乗に反比例して減衰する。つまり、TransferJet の場合は従来の無線に比較して,より急峻に電力が減衰する。このため,少し離れたら切れるという特性を実現しやすい。近接距離においては.放射電磁界よりも誘導電磁界のほうが電力が大きいことから、「メリハリのある通信」を実現可能である。また縦波のみの誘導電界を扱うため,偏波面などがある横波に比較して,ずれに強くなる。どういう方向につなげても安定という特性があることから,「Touch & Get」 にとって都合がいい。しかしながら急峻に電力が減衰することは、タッチの位置ずれに弱いという側面も生ずる。
【0012】
次に、本実施の形態における近接無線通信を、図1を参照しながら説明する。図1は、実施形態の電子機器と外部デバイスとの間で実行される近接無線通信の一例を示す図である。
【0013】
本実施の形態においては、電子機器としてカメラ1、外部デバイスとしてパーソナルコンピュータ2を例にして、近接無線通信を説明する。本実施の形態においては、近接無線通信を介して、カメラ1で撮影した静止画像若しくは動画像データをパーソナルコンピュータ2へ送信することを想定する。例えば、カメラ1で撮影した画像をパーソナルコンピュータ2へ送信し、パーソナルコンピュータ2が備える大きなディスプレイで表示したり、パーソナルコンピュータ2が備える記憶装置に画像データを格納したりする。また、パーソナルコンピュータ2に格納していた画像データをカメラ1に送信し、携帯性に優れるカメラ1に所望の画像データを格納することでカメラ1に設けられるディスプレイで画像データを視聴することもできる。
【0014】
本実施形態において、近接無線通信には誘導電界が用いられ、近接無線通信方式には例えばTransferJetが使用される。TransferJetはUWBを使用した近接無線通信方式であり、高速なデータ送受信を実現することができる。TransferJet対応のデバイスは、前述のカプラと称される電極を有し、誘導電界を用いた無線信号により外部デバイスとの間でデータ送受信を行う。
【0015】
外部デバイスが通信可能距離(例えば3cm)以内に接近した場合、両デバイスのカプラ間が誘導電界によって結合され、無線通信が実行可能となる。
カメラ1は、本体筺体100と、本体筺体側面100bに設けられるCCDセンサ101と、本体筺体上面100aに設けられる操作ボタン102と、本体筺体側面100dに設けられるLCD103と、本体筺体側面100cに設けられるSDカードスロット104と、本体筺体側面100cに設けられるワイヤレスコミュニケーションスイッチ105と、本体筺体底面100fに近接して近接無線通信モジュール106とを有する。
【0016】
パーソナルコンピュータ2は、コンピュータ本体3とディスプレイユニット4とが、ヒンジ5を介して回動自在に設けられている。コンピュータ本体3は、タッチパッド6と、キーボード7と、電源スイッチ8と、近接無線通信モジュール22、ワイヤレスコミュニケーションスイッチ25とを有する。ディスプレイユニット4には、中央部にディスプレイ4aが設けられている。コンピュータ本体筺体3aのパームレスト部分には近接無線通信モジュール22が内蔵され、このパームレスト部分に通信相手の外部デバイスと載置して近接無線通信を行う。本実施の形態においては、近接無線通信モジュール22の設けられているコンピュータ本体筺体3aにカメラ1を載置して、近接無線通信モジュール22とカメラ1の本体筺体底面100fに設けられる近接無線通信モジュール106との間で近接無線通信を行う。
【0017】
次に図2を用いて、カメラ1及びパーソナルコンピュータ2の機能について説明する。図2は、実施形態の近接無線通信システムの構成を示すブロック図である。
カメラ1は、CCDセンサ101と、操作ボタン102と、LCD103と、ワイヤレスコミュニケーションスイッチ105と、近接無線通信モジュール106と、メモリ109と、RAM110と、CPU112と、バッテリコントローラ113と、バッテリ114と、SDカードコントローラ115と、SDカード116とを備える。近接無線通信モジュール106は、近接無線通信アンテナ107と、近接無線通信ファームウェア108とを備える。
【0018】
CCDセンサ101は、レンズの外部の風景を検出し撮影する。操作ボタン102は、CCDセンサ101で撮影するタイミングや、撮影した画像をLCD103に表示する際の各種処理を指示する。LCD103は、CCDセンサ101で検出している風景や、撮影した画像データ等を表示する。SDカードスロット104は、画像データの複製先であるSDカードを収納するために設けられるスロットである。
【0019】
近接無線通信モジュール106は、誘導電界を用いた無線信号により外部デバイスとの間でデータ送受信を行う。外部デバイスが通信可能距離(例えば3cm)以内に接近した場合、近接無線通信アンテナ107と外部デバイスの近接無線通信アンテナとが誘導電界によって結合され、無線通信が実行可能となる。近接無線通信モジュール106は、近接無線通信アンテナ107で受信した無線信号をデジタル信号に変換したり、内部の制御に用いられるデジタル信号を無線信号に変換し近接無線通信アンテナ107から送信する。
【0020】
メモリ109は、カメラ1に備えられる記憶媒体であり、撮影した静止画像や動画像データを格納する。RAM110は、各種アプリケーションプログラムを展開するためのいわゆるワーキングメモリであり、本実施の形態においては、近接無線通信制御プログラム111が展開される。CPU112は、カメラ1の全体を制御するための制御部である。
【0021】
バッテリコントローラ113は、バッテリ114を用いてカメラ1の各コンポーネントに供給すべきシステム電源を生成する。SDカードコントローラ115は、装着されるSDカード116にアクセスし、格納した画像データの移動や複製を行ったり、画像データをLCD103に出力したりする。
【0022】
パーソナルコンピュータ2は、ディスプレイ4aと、タッチパッド6と、キーボード7と、電源スイッチ8と、CPU10と、ノースブリッジ11と、主メモリ12と、グラフィックスコントローラ13と、VRAM14と、サウスブリッジ15と、HDD16と、BIOS−ROM17と、EC/KBC18と、電源コントローラ19と、バッテリ20と、ACアダプタ21と、近接無線通信モジュール22と、ワイヤレスコミュニケーションスイッチ25とから構成される。近接無線通信モジュールは、近接無線通信アンテナ23と、近接無線通信ファームウェア24とを備える。
【0023】
CPU10は、本パーソナルコンピュータ1の動作を制御するために設けられたプロセッサであり、HDD16から主メモリ12にロードされるオペレーティングシステム(OS50)及び各種アプリケーションプログラムを実行する。またCPU10は、BIOS−ROM17に格納されたシステムBIOS51を主メモリ12にロードした後、実行する。システムBIOS51はハードウェア制御のためのプログラムである。また、CPU10は近接無線通信プログラム52を実行し、近接無線通信モジュール23で行う近接無線通信を制御する。
【0024】
ノースブリッジ11は、CPU10のローカルバスとサウスブリッジ15との間を接続するブリッジデバイスである。ノースブリッジ11には主メモリ12をアクセス制御するメモリコントローラも内蔵されている。またノースブリッジ11はAGP(Accelerated Graphics Port)バス等を介してグラフィックスコントローラ13との通信を実行する機能も有している。
【0025】
主メモリ12は、HDD16に記憶されるオペレーティングシステム(OS50)及び各種アプリケーションプログラムや、BIOS−ROM17に格納されたシステムBIOS51を展開されるためのいわゆるワーキングメモリである。
【0026】
グラフィックスコントローラ13は、本コンピュータのディスプレイモニタとして使用されるディスプレイ4aを制御する表示コントローラである。このグラフィックスコントローラ13はオペレーティングシステム/アプリケーションプログラムによってVRAM14に描画された表示データから、ディスプレイ4aに表示すべき表示イメージを形成する映像信号を生成する。
【0027】
サウスブリッジ15は、BIOS−ROM17へのアクセスや、HDD16及びODD(Optical Disk Drive)等のディスクドライブ(I/Oデバイス)の制御を行う。
【0028】
HDD16は、OS50及び各種アプリケーションプログラム等を記憶する記憶装置である。例えば、近接無線通信モジュール22で実行する近接無線通信を介して受信した画像データを格納する。
【0029】
BIOS−ROM17は、ハードウェア制御のためのプログラムであるシステムBIOS51を格納する書き換え可能な不揮発性メモリである。
EC/KBC18は、入力手段としてのタッチパッド6、キーボード7の制御を行う。EC/KBC18はパーソナルコンピュータ1のシステム状況に関わらず、各種のデバイス(周辺機器、センサ、電源回路等)を監視し制御するワンチップ・マイコンである。またEC/KBC18は、ユーザによる電源スイッチ8の操作に応じて、電源コントローラ19と共同して、本パーソナルコンピュータ2をパワーオン/パワーオフする機能を有している。
【0030】
電源コントローラ19は、外部電源がACアダプタ21を介して供給されている場合、ACアダプタ21から供給される外部電源を用いてパーソナルコンピュータ2の各コンポーネントに供給すべきシステム電源を生成する。また、電源コントローラ19は、外部電源がACアダプタ21を介して供給されていない場合、バッテリ20を用いてパーソナルコンピュータ2の各コンポーネント(コンピュータ本体3及びディスプレイユニット4)に供給すべきシステム電源を生成する。
【0031】
近接無線通信モジュール22は、誘導電界を用いた無線信号により外部デバイスとの間でデータ送受信を行う。外部デバイスが通信可能距離(例えば約3cm)以内に接近した場合、近接無線通信アンテナ23と外部デバイスの近接無線通信アンテナとが誘導電界によって結合され、無線通信が実行可能となる。近接無線通信モジュール22は、近接無線通信アンテナ23で送受信する無線信号をデジタル信号に変換し、内部に伝送する。
【0032】
次に、図3を参照して、本実施形態における近接無線通信を制御するためのソフトウェアアーキテクチャについて説明する。
図3に示すソフトウェアアーキテクチャは、近接無線通信を制御するためのプロトコルスタックの階層構造を示している。プロトコルスタックは、物理層(PHY)10、コネクション層(CNL)20、プロトコル変換層30、アプリケーション層40から構成されている。プロトコル変換層30は、PCL(Protocol Conversion Layer)コントローラ31およびPCL OBEX(OBject EXchange)アダプタ32を含み、アプリケーション層40は、アプリケーションマネージャ41およびOBEXプロトコル42を含んでいる。コネクション層(CNL)20、プロトコル変換層30、アプリケーション層40は、近接無線通信制御プログラム103aによって実現し得る。
【0033】
物理層(PHY)10は、物理的なデータ転送を制御する層であり、OSI参照モデル内の物理層に対応する。物理層(PHY)10の一部または全ての機能は、近接無線通信デバイス104内のハードウェアを用いて実現することもできる。物理層(PHY)10は、コネクション層(CNL)20からのデータを無線信号に変換する。
【0034】
コネクション層(CNL)20は、OSI参照モデル内のデータリンク層およびトランスポート層に対応しており、物理層(PHY)10を制御してデータ通信を実行する。コネクション層(CNL)20は、プロトコル変換層30(PCLコントローラ31)からの接続要求または外部デバイスからの接続要求に応じて、近接状態に設定されている近接無線通信デバイス104と外部デバイスとの間の接続(CNL接続)を確立する処理を実行する。
【0035】
プロトコル変換層30は、OSI参照モデル内のセッション層およびプレゼンテーション層に対応しており、アプリケーション層40とコネクション層(CNL)20との間に位置する。PCLコントローラ31は、コネクション層(CNL)20によるCNL接続の確立および解除を制御する。PCL OBEXアダプタ32は、通信プログラムである各種アプリケーションプログラム103bが扱うアプリケーションプロトコルに対応したデータ(ユーザデータ)を特定の伝送用データ形式に変換するための変換処理を実行する。この変換処理により、どのアプリケーションプロトコルを扱う通信プログラムにより送受信されるデータであっても、コネクション層(CNL)20が扱うことが可能なパケット(特定の伝送用データ形式のデータ)に変換される。つまり、プロトコル変換層30のPCL OBEXアダプタ32は、様々なアプリケーションプロトコルを近接無線通信で利用することを可能にする。
【0036】
また、プロトコル変換層30のPCLコントローラ31は、通信相手の外部デバイスとの間でサービス情報(各デバイスが提供可能なサービスを示す情報)およびセッション情報(確立/切断対象のセッションに関する情報)を交換する処理、さらに、アダプタの起動、コネクションの管理、およびセッションの管理等を行う。このPCLコントローラ31の働きにより、キャプチャ要求の受信を契機に、キャプチャ画像の転送処理を行うためのキャプチャアプリケーションプログラムが自動的に起動される。このPC100側のキャプチャアプリケーションプログラムも、各種アプリケーションプログラム103bの1つとして存在する。
【0037】
アプリケーション層40は、プログラム間でのデータ転送を制御する層であり、OSI参照モデル内のアプリケーション層に対応する。ここでは、OBEXプロトコル42によってデータが送受信される場合について説明する。
【0038】
OBEXプロトコル42は、アプリケーションマネージャ41で制御されるPCLコントローラ31により確立されたCNL接続を用い、PCL OBEXアダプタ32を通して通信を行う。OBEXプロトコル42では、OBEXアプリケーションが相互にデータの送受信を実行可能とするためのアプリケーション規定(プロトコルクラス)が定義されている。各種アプリケーションプログラム103bは、このプロトコルクラスに従ったOBEXプロトコル手順を利用することで、データファイル等のオブジェクトの送受信を行うことができる。本実施形態におけるOBEXプロトコル42では、基本プロトコルクラスとして、ファイルトランスファープロトコルクラス421とプッシュプロトコルクラス422とが定義されている。図示のように、ファイルトランスファープロトコルクラス421は、プッシュプロトコルクラス422を包含する関係にある。
【0039】
プッシュプロトコルクラス422は、クライアントからサーバへ1つまたは複数のファイルを送信するために使用される。プッシュプロトコルクラス422では、クライアント(ここでは携帯電話機200)が任意のファイルをPUTし、サーバ(ここではPC100)に渡すための手続きが定義されている。プッシュプロトコルクラス422では、近接無線通信(TransferJet)によってファイルを送信する前に必要な手続きを簡略化して、ユーザによる操作負担を軽減すると共に、高速なデータ通信を実現することができる。プッシュプロトコルクラス422におけるINBOXサービス422aは、既知の「IrDA Object Exchange Protocol Version 1.4」の仕様書に記載のINBOXサービス(INBOX Service)をベースにした手続きを実行するものとして詳細な説明を省略する。キャパビリティサービス422bは、サーバ側の能力を示すデータを取得するために使用される。
【0040】
また、ファイルトランスファープロトコルクラス421は、クライアントとサーバとの間で1つまたは複数のファイルの送信/受信を行うために使用される。ファイルトランスファープロトコルクラス421は、FTP(File Transfer Protocol)相当のファイル転送およびファイル・フォルダ操作をサポートするための手続きが規定されている。
【0041】
ファイルトランスファープロトコルクラス421では、プッシュプロトコルクラス422を利用したファイルの転送とは異なり、ファイルを送信する前にファイルの送信先(サーバ)のフォルダおよびファイルを示すデータ(フォルダ情報)を、フォルダブラウジングサービス421aによりサーバから取得する。そして、フォルダ情報に基づきファイルの送信先に対してフォルダの移動(作成)を行い、ファイルを送信することができる。ファイルトランスファープロトコルクラス421は、既知の「IrDA Object Exchange Protocol Version 1.4」に記載のフォルダブラウジングサービス(Folder Browsing Service)をベースにした手続きを実行するものとして詳細な説明を省略する。
【0042】
なお、前述したように、ファイルトランスファープロトコルクラス421は、プッシュプロトコルクラス422を包含する関係にあり、ファイルトランスファープロトコルクラス421を利用したファイルの送信時においても、INBOXサービス422aおよびキャパビリティサービス422bを使用することが可能である。
【0043】
OBEXプロトコル42に対応する各種アプリケーションプログラム103bは、このOBEXプロトコル42を通じて、プロトコル変換層30のPCLコントローラ31に対してセッションの開始/終了を要求する処理と、プロトコル変換層30のPCL OBEXアダプタ32を介してデータを送受信する処理とを実行する。つまり、各種アプリケーションプログラム103bは、OBEXプロトコル42のファイルトランスファープロトコルクラス421を利用して1つまたは複数のファイルをサーバとの間で送信/受信し、または、OBEXプロトコル42のプッシュプロトコルクラス422を利用して1つまたは複数のファイルをサーバに送信する。本実施形態の近接無線通信システムにおけるキャプチャ画像の転送処理は、OBEXプロトコル42のプッシュプロトコルクラス422に規定された手続きを利用することによって実現される。
【0044】
図7は、上記ソフトウェアアーキテクチャに基づく実施形態の機能構成図である。
図7において、CNL(Connection Layer)ドライバ27はコネクション層20で、PCL(Protocol Conversion Layer)コントロールドライバ37はプロトコル変換層30で、上位層ユーティリティ47はアプリケーション層40で、夫々機能を発現する。
【0045】
また、CNLドライバ27はLink Control機能271とTime Control機能272を、PCLコントロールドライバ37はConnection Management Service機能371とDevice Authentication Service機能372を、上位層ユーティリティ47はコネクションステータス表示機能471と強制切断機能472を、夫々含んでいる。これらについては後述する。
【0046】
次に図4を用いて、リンクダウン制御に用いるメッセージ200のデータ構造について説明する。図4は、実施形態の接続認証に用いる信号のデータ構造の一例を示す図である。
【0047】
Request type201は、メッセージの種類を示す情報が含まれている。例えば、メッセージが、リクエストメッセージなのか否かを示す。Operation code202には、メッセージを用いる処理を示す情報が含まれている。例えば、メッセージが認証処理やデータ交換処理に用いることを示す。Reserved203は、メッセージに設けられる空き領域である。本実施の形態においては、このReserved203の後の図示せぬData領域に後述のタイマ値を付加する。
【0048】
次に、図5を用いて、近接無線通信を介してカメラ1からパーソナルコンピュータ2へデータ送信を行うまでの流れを説明する。図5は、実施形態の電子機器と外部デバイスとの間の近接無線通信の接続手順の一例を示すシーケンス図である。
【0049】
まず、ユーザは、近接無線通信アプリケーションプログラムをカメラ1上で選択し、カメラ1とパーソナルコンピュータ2とを近づけて(タッチ操作)、近接状態にする(ステップS1)。次に、カメラ1とパーソナルコンピュータ2との間でCNL接続を確立するための処理(認証処理)を実行する(ステップS2)。例えばカメラ1はパーソナルコンピュータ2へ接続要求を送信する。この接続要求を受信したパーソナルコンピュータ2は、接続要求に対する応答をカメラ1へ送信する。以上の処理により、カメラ1とパーソナルコンピュータ2との間でCNL接続が確立する。
【0050】
CNL接続を確立させたカメラ1とパーソナルコンピュータ2とは、モード調停を行う(ステップS3)。本実施の形態においては、カメラ1側で近接無線通信アプリケーションプログラムを選択しておいカメラ1がプロアクティブモードに設定されているため、パーソナルコンピュータ2は自身のモードをリアクティブモードに遷移させる。
【0051】
次に、プロアクティブモードのカメラ1からリクエストメッセージを送信する(ステップS4)。このリクエストメッセージには、上述の通り近接無線通信制御プログラム111によりリンクダウン制御のタイマ値が付加されている。
【0052】
次に、リクエストメッセージを受信したパーソナルコンピュータ2からレスポンスメッセージを送信する(ステップS5)。このレスポンスメッセージには近接無線通信制御プログラム52によりリンクダウン制御のタイマ値が付加されている。
【0053】
次にカメラ1とパーソナルコンピュータ2との間で実行するサービスの同期を実行する(ステップS6)。これにより、カメラ1とパーソナルコンピュータ2との間でサービスの実行が開始される。
【0054】
上述のネゴシエーション処理が完了すると、カメラ1とパーソナルコンピュータ2との間でサービスが実行され、データの送受信等の通信が行われる(ステップS7)。
【0055】
次に、本実施の形態における近接無線通信制御プログラムによるリンクダウン制御の手順を説明する。図6は、実施形態のリンクダウン制御を示すフローチャートである。
【0056】
まず、PCLコントロールドライバ37は自装置がプロアクティブモードであるか否かを判別する(ステップS101)。ステップS101で判別した結果、自装置がプロアクティブモードであると判別した場合(ステップS101のYes)、リンクダウン制御情報を付加したリクエストメッセージを送信する(ステップS102)。次に、PCLコントロールドライバ37は、リンクダウン制御情報に対するレスポンスメッセージを受信したか否かを判別する(ステップS103)。
【0057】
一方、ステップS101で判別した結果、自装置がプロアクティブモードでないと判別した場合(ステップS101のNo)、リンクダウン制御情報を付加したリクエストメッセージを受信したか否かを判別する(ステップS104)。ステップS104で判別した結果、リンクダウン制御情報を付加したリクエストメッセージを受信していないと判別した場合(ステップS104のNo)、処理を終了する。一方、ステップS104で判別した結果、リンクダウン制御情報を付加したリクエストメッセージを受信したと判別した場合(ステップS104のYes)、PCLコントローラ82は、リンクダウン制御情報を付加したレスポンスメッセージを送信する(ステップS105)。
【0058】
リクエストメッセージ及びレスポンスメッセージの送受信が完了すると、PCLコントロールドライバ37は、リンク確立(タッチ)時の相手デバイスがリンクダウン制御をサポートしているか否かを判別する(ステップS106)。
【0059】
本機能は、PCLCメッセージのOPコードを拡張して実装する事により、現行仕様のデバイスとの互換性を保つ様にする。1バイトからなるOPコードは0から3の値に機能が割り当てられている。4以上の値をこの拡張に用いればよい。
【0060】
タッチ時に、PCLCのHigh Priority側から拡張OPコードにより自身のリンクダウン監視タイマ設定値を含むリクエストメッセージを送信する。相手デバイスがリンクダウン制御をサポートしていない場合、Illegal Message のレスポンスコードを持ったレスポンスメッセージが返ってくるので、以後このデバイスは本機能をサポートしていないと判断する。リンクダウン制御をサポートしている場合には、レスポンスメッセージ(Success)を返す。リンクダウン制御メッセージの送信は、Device Authentication の最後に行なう。
【0061】
ステップS106で判別した結果、サポートなしに設定されている場合(ステップS106のNo)、PCL接続におけるタイマ値は維持される(ステップS108)。一方、ステップS106で判別した結果、サポートありに設定されている場合(ステップS106のYes)、メッセージ内のタイマ値を保存する(ステップS107)。本タイマ値は、パケット送信のリトライタイマ(T_Retry)のタイムアウト発生時に、新たなタイムアウト監視タイマ値として利用する。
【0062】
一例としてタッチ後の無通信状態でタッチずれ、或いはユーザが意図した一時的なデタッチが発生した場合、キープアライブタイマ(T_Keepalive)のタイムアウトによりC_Probeパケットの送信リトライが発生するが、この時 T_Retry タイマの設定を保存しているリンクダウン監視タイマ値に置き換える。
【0063】
また別の例としてデータ通信中のタッチずれ、デタッチの場合は、データパケット(CSDU)のリセンドタイマ(T_Resend)のタイムアウトにより C_Wake パケットの送信が開始されるが、この時同様にT_Retry タイマの設定を保存しているリンクダウン監視タイマ値に置き換える。これにより、タッチずれ及び一時的なデタッチ発生時に、実際のデタッチ(切断)と認識されるまでの時間が変更可能となる。
【0064】
次に、PCLコントロールドライバ37は、リンクダウンがあったか否かを判別する(ステップS109)。ステップS109で判別した結果、リンクダウンしていないと判別した場合(ステップS109のNo)、ステップS109に戻る。一方、ステップS109で判別した結果、リンクダウンしたと判別した場合(ステップS109のYes)、PCLコントロールドライバ37はT_Retry タイマの設定を保存しているリンクダウン監視タイマ値に置き換える(ステップS110)。即ち、両デバイスで共有されているデータを用いる。
【0065】
(第2の実施形態)
本発明による第2の実施形態を図1乃至図7を参照して説明する。実施形態1と共通する部分は説明を省略する。
実施形態1における一時的なリンクダウン発生時に、上位に対する通知機能を持たせる。これはLink Control機能271とコネクションステータス表示機能471とによる。Link Control機能271は、実際はPCLコントロールドライバ37を経由してコネクションステータス通知を行う。現行の仕様では、リンク確立時のサブステータスとしては Connected Sub-state 、Local Hibernate Sub-state 、Target Sleep Sub-state の3種類があるが、これに Link Down Sub-state を追加し本ステータスを上位に通知する様にする。GUIを持った上位層では、本通知を受け取る事により一時的なリンクダウンが発生している事を画面上に表示し、ユーザに対して通知を行なう。これにより、ユーザは意図しないタッチずれの発生も認識できる様になる。
【0066】
(第3の実施形態)
本発明による第3の実施形態を図1から図7を参照して説明する。実施形態1、2と共通する部分は説明を省略する。
実施形態1における一時的な中断中に再タッチが行なわれると通信が再開され、以後通常のモードに復帰する。
このとき、上位層は一時的な中断中にも強制的に切断を発生させられる様に、ユーザに対して強制切断機能を提供する。これは強制切断機能472とConnection Management Service機能371とLink Control機能271とによる。CNLレベルではCNL SERVICE DEFINITIONのConnection releaseを用いればよい。これにより、リンクダウン監視タイマ駆動中でもリンクの強制終了が行なえる。
【0067】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この外その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
また、上記した実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良いものである。さらに、異なる実施の形態に係わる構成要素を適宜組み合わせても良いものである。
【符号の説明】
【0068】
1…カメラ、2…パーソナルコンピュータ、3…本体ユニット、4…ディスプレイユニット、5…ヒンジ、6…タッチパッド、7…キーボード、8…電源スイッチ、10…CPU、11…ノースブリッジ、12…主メモリ、13…グラフィックコントローラ、14…VRAM、15…サウスブリッジ、16…HDD、17…BIOS−ROM、18…EC/KBC、19…電源コントローラ、20…バッテリ、21…ACアダプタ、22…近接無線通信モジュール、23…近接無線通信アンテナ、24…近接無線通信ファームウェア、25…ワイヤレスコミュニケーションスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接無線通信を実行する通信モジュールと、
タイマ値を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段への前記タイマ値の書き込みを許可するか否かを設定する設定手段と、
前記通信モジュールと外部デバイスとが近接状態である場合、前記設定手段による設定に応じて、前記記憶手段への書き込みを許可するか否かを示す許可情報を付加した接続信号を前記外部デバイスへ送信する送信手段と
を有する電子機器。
【請求項2】
前記許可情報の付加はPCLCメッセージのOPコードを拡張によるものである請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記タイマ値は、パケット送信のリトライタイマ(T_Retry)のタイムアウト発生時に、新たなタイムアウト監視タイマ値として利用するものである請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
リンクダウン発生時に、この旨のコネクションステータス表示を行う請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
リンクダウン発生時に、ユーザによる強制切断指示に基づいてリンクダウンの強制切断を行う請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
近接無線通信を実行する通信モジュールの通信制御方法であって、
タイマ値を記憶手段に記憶し、
前記記憶手段への前記タイマ値の書き込みを許可するか否かを設定し、
前記通信モジュールと外部デバイスとが近接状態である場合、前記設定に応じて、前記記憶手段への書き込みを許可するか否かを示す許可情報を付加した接続信号を前記外部デバイスへ送信する通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−160910(P2012−160910A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19224(P2011−19224)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】